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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】セラミック粒子混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/626 20060101AFI20240123BHJP
   C04B 35/18 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C04B35/626
C04B35/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021520360
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019078014
(87)【国際公開番号】W WO2020079029
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】18200339.2
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520404573
【氏名又は名称】ベコー アイピー ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コスゾ,シャーンドル
(72)【発明者】
【氏名】マ,ボー ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】バドラン,アーマド
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-065470(JP,A)
【文献】特開2002-322118(JP,A)
【文献】特開2012-210561(JP,A)
【文献】特開昭51-057620(JP,A)
【文献】特開平03-155101(JP,A)
【文献】特開2006-089338(JP,A)
【文献】特開平05-246721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
B01J 2/00-2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4wt%~9wt%の水を含むセラミック粒子混合物であって、前記粒子の少なくとも90wt%が、80μm~600μmの粒径(ISO13320:2009に規定のレーザー回折法による粒径分析の基準を用いて、レーザー回折によって測定)を有するセラミック粒子混合物を製造するための、非噴霧乾燥式の乾式造粒方法であって、
前記方法が、
(a)前駆体物質を形成する;
(b)前駆体物質を圧縮工程にかけて、圧縮された前駆体物質を形成する;
(c)圧縮された前駆体物質を破砕工程にかけて、破砕された前駆体物質を形成する;及び
(d)破砕された前駆体物質を少なくとも2回の空気分級工程にかける、ここで、一方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から600μmを超える粒径を有する粒子を少なくとも一部除去し、他方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から80μm未満の粒径を有する粒子を少なくとも一部除去する;
工程を含む方法。
【請求項2】
破砕された前駆体物質を、重力式空気分級工程にかけ、破砕された前駆体物質から600μmを超える粒径を有する粒子を少なくとも一部除去し、且つ、破砕された前駆体物質を遠心式空気分級工程にかけ、破砕された前駆体物質から80μm未満の粒径を有する粒子を少なくとも一部除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
破砕された前駆体物質を、重力式空気分級工程にかけ、続いて、遠心式空気分級工程にかける、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
破砕された前駆体物質が、粒子の少なくとも20wt%が63μm未満である粒度分布を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
破砕された前駆体物質が、ふるい分け工程にかけられない、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
セラミック粒子混合物の少なくとも99wt%が、80μm~600μmの粒径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
セラミック粒子混合物の少なくとも90wt%が、100μm~500μmの粒径を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
セラミック粒子混合物の少なくとも99wt%が、100μm~500μmの粒径を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
セラミック粒子混合物が、少なくとも20wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
セラミック粒子混合物が、少なくとも800g/lのかさ密度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
セラミック粒子混合物が、8s/l未満の流動性を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粒子混合物を製造するための方法に関する。前記方法は、流動性などの良好な物理的特性を有するセラミック粒子混合物を製造する一方、効率が良く、環境に優しく、且つ噴霧乾燥工程を行う必要がない。得られたセラミック粒子混合物は、セラミックタイル製造方法等のセラミック製造方法で使用することができる。前記方法は効率的であり(特に、エネルギー効率が良い)、環境に優しく、噴霧乾燥工程を行う必要がなく、その一方、良好な物理的特性(流動性など)を有し、高品質のセラミック物品(床タイルなど、特に磁器質床タイル)を製造するのに適したセラミック粒子混合物を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
多くのセラミック物品(タイル等)は、現在、噴霧乾燥によって得られるセラミック粒子混合物から製造されている。そのような噴霧乾燥方法において、クレイ及び/又は長石などのセラミック原料は、水性スラリーとされ、その後噴霧乾燥されてセラミック粒子混合物を形成する。前記粒子は、その後高圧下でプレスされ、グリーン物品を形成する。このグリーン物品は、次いで、窯(キルン)内で火にかけられ、個々の一次粒子を一緒に溶融・焼結して、最終セラミック物品を形成する。
【0003】
しかしながら、噴霧乾燥によるセラミック粒子混合物の調製は、水性スラリーを乾燥するのに多量のエネルギーを必要とする。このエネルギー必要量を減らそうとする試みは、セラミック粒子混合物を調製する非-噴霧乾燥プロセス(乾式造粒プロセスなど)の発展をもたらした。これらの乾式造粒プロセスは、水性スラリーを形成する必要をなくし、それゆえ、従来型の噴霧乾燥プロセスと比べてはるかに少量の水を使用する。その結果として、これらの乾式造粒プロセスは、水性スラリーの形成に必要な過剰の水を蒸発させる必要がないことにより、噴霧乾燥と比べて少ないエネルギーを使用する。
【0004】
非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物の問題の一つは、流動性が乏しいことである。非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物にとって、良好な流動性を有することは、多数の理由から有益である。例えば、良好な流動性は、プラントにて(特に、ホッパーから適量供給する際に)、非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物の輸送を容易にする。良好な流動性は、非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物を、金型(例えば、混合物を加圧してタイルにするのに使用される金型)に適量供給する助けとしても重要である。良好な流動性は、非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物が、金型全体に均一に広がるのを助ける。これは、床タイル等の形状を作る際、非常に重要である。このようなセラミック物品はしばしば大型であり、50cmを超える長さと幅を有するが、厚みは1cm未満である。これは、このようなタイルを作るのに使用されるセラミック混合物は、金型全体に均一に広がることが必要であることを意味し、さもなければ、充填が不十分な金型の部分が、十分に圧縮されない可能性があり、加工中にグリーン物品タイルに割れ又は他の欠陥が生じ得る。良好な流動性は、金型へセラミック混合物を簡単に適量供給できるようにし、及び、金型全体に混合物を容易に且つ均一に行きわたらせるのに必須である。金型への粒子混合物の不均等な分布は、物品の場所により密度が異なるセラミック物品の形成をもたらす。これは加工中に物品に欠陥を生じさせる可能性がある。良好な流動性は、セラミック混合物の金型への容易且つ正確な適量供給を可能にするのに必要である(例えば、貯蔵ホッパーの良好な流れ)。良好な流動性は、金型全体に混合物が容易且つ均一に広がるのも確実にする。
【0005】
本発明は、セラミック粒子混合物を製造するための非噴霧乾燥式の乾式造粒方法を提供することによって、この問題を克服する。前記セラミック粒子混合物は、非常に厳しく規定された水の量と粒度分布とを有し、これは良好な流動プロファイルにつながる。本発明の方法は、非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物を製造するために、圧縮及び破砕する工程、続いて、少なくとも2回の特定の空気分級工程を含む。本発明の方法は、良好な流動プロファイルと加工性につながる、非常に特殊な水の量と非常にタイトな粒度分布を有する非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物を製造することができる。さらに、本発明の方法は、良好なエネルギープロファイル(例えば、エネルギー強度の減少)を有する。
【0006】
特定の空気分級工程は、本発明に必須である。大き過ぎる粒子と微粒子を取り除くためのふるい分けは、この粒度分布について商業規模で実用化されていない。微粒子を除くのに適切なスクリーンは、その小さなサイズとそのような微粒子の凝集性のためすぐに目詰まりする。より上の粒子サイズでさえ、ふるい分けによって取り除くのは困難である(高レベルの所望の製品が、効率の悪いふるい分けにより排除されることなしに)。微粒子の除去を、流動床で達成しようとしても、これは微粒子を回収するためのフィルターユニットを必要とし、大きな資本が必要となり、手間がかかる。
【0007】
本発明は、少なくとも2つの空気分級工程を必要とし、大粒子の除去は、好ましくは重力式空気分級工程により、そして、微粒子の除去は、好ましくは遠心式空気分級による。好ましくは、大粒子の除去は、微粒子除去の前に行われる。
【0008】
重力式空気分級は、典型的には、小粒子(例えば、1~600μm、又は1~500μm)から大粒子(例えば、>600μm、又は>500μm)を分離するために使用される。遠心式空気分級は、典型的には、小粒子(例えば、<80μm、又は<100μm)から、大粒子(例えば、80~600μm、又は100~600μm、又は80~500μm、又は100~500μm)を分離するために使用される。これらの別個の空気分級工程は、別々の機械で行われてもよく、又は同一の機械内で行われてもよい。
【0009】
必要に応じて、本発明はまた、高濃度のリサイクル材料、例えば再生ケイ酸アルミニウム材、特に石炭燃焼フライアッシュに由来する再生ケイ酸アルミニウム材の、セラミック粒子混合物への組み込みを可能にする。しかしながら、乾式造粒プロセスに再生ケイ酸アルミニウム材を取り入れると、乾式造粒セラミック粒子混合物は、一層乏しい流動性を有し得る。これらの問題は、再生ケイ酸アルミニウム材が多量に使用されるほど、悪化する。
【0010】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、再生ケイ酸アルミニウム材、特に、石炭燃焼フライアッシュに由来する再生ケイ酸アルミニウム材は、クレイや長石等の他のセラミック原料成分とは異なると考える。再生ケイ酸アルミニウムは、滑らかなガラス状の球体形状で存在する傾向があるが、クレイ及び長石は、非常に不規則な形状の粒子の形状で存在する傾向がある。再生ケイ酸アルミニウム材と他のセラミック原料成分(クレイ及び/又は長石)との間の粒子形状の違いは、乾式造粒プロセスにおける均質な粒子混合物の形成を困難にする。例えば、再生ケイ酸アルミニウム材の滑らかなガラス状の球体は、ローラー圧縮等の乾式造粒プロセスの間に、不規則な形状のクレイ及び/又は長石の粒子がくっつくのを手助けする粒子:粒子インターロック機構の影響を受けにくい。これは、ロバスト性の減少、及び大きな粒子に組み込まれない微細な前駆体物質の量の増加等の問題をもたらしうる。結果として得られる乾式造粒セラミック粒子混合物の不均質性の増加は、低い流動性、及び、結果物であるセラミック物品の外観不良につながる他の品質問題をもたらす。
【0011】
本発明の方法は、再生ケイ酸アルミニウム材等のリサイクル材料、とくに、石炭燃焼フライアッシュに由来する再生ケイ酸アルミニウム材を、非噴霧乾燥型の乾式造粒セラミック粒子混合物に取り込むことを可能にし、これは良好な流動性を有する混合物をもたらす。
【0012】
かなりの量の再生ケイ酸アルミニウム材を含むセラミック粒子混合物から、磁器質床タイル等のセラミック物品をうまく製造するには、それゆえ、異なる品質要求のバランス(これは、セラミック粒子混合物の粒径範囲及び水分レベルを注意深くコントロールすることによって達成できる)が必要となる。要求されるセラミック粒子混合物を製造できる製造方法も必須である。
【0013】
US2016/053162は、40~70メッシュの範囲のサイズを有する噴霧乾燥によって製造される顆粒に関する。
【0014】
US2007/059528は、57~85の顆粒粉末度(grain fineness number)を有する顆粒に形成されるカオリン粘土(カオリンクレイ)に関する。
【0015】
US5,028,569は、ケイ酸アルミニウム材をおおよそ三分の一含むセラミック顆粒に関する。
【0016】
CN101,705,076及び「database WPI, week 201042, Thomson Scientific, London GB」は、セラミック物質を粉砕し、その後空気分級して、5~200ミクロンサイズとする方法に関する。
【0017】
Inspecデータベース、英国、スティーブニッジ、電気エンジニア協会、1973年、4月、Spray A W等「particle size classification of ceramic powders」、データベース受入番号587796、及び、米国セラミック学会の75回年次学会及び展示会、52巻、No.4、394頁は、遠心式空気分級によってセラミック粉末を所望の粒径に分級することに関する。
【0018】
CN108,046,752は、6~7wt%の水分量と、200~300メッシュのサイズを有するクレイ顆粒を製造する乾式造粒プロセスに関する。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、4wt%~9wt%の水を含むセラミック粒子混合物であって、前記粒子の少なくとも90wt%が、80μm~600μmの粒径を有するセラミック粒子混合物を製造するための非噴霧乾燥式の乾式造粒方法に関し、ここで、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)前駆体物質を形成する;
(b)前駆体物質を圧縮工程にかけて、圧縮された前駆体物質を形成する;
(c)圧縮された前駆体物質を破砕工程にかけて、破砕された前駆体物質を形成する;及び
(d)破砕された前駆体物質を少なくとも2回の空気分級工程にかける、ここで、一方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から600μmを超える粒径を有する粒子を少なくとも一部除去し、他方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から80μm未満の粒径を有する粒子を少なくとも一部除去する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
セラミック粒子混合物を製造する方法
セラミック粒子混合物を製造する方法は、以下の工程を含む:
(a)前駆体物質を形成する;
(b)前駆体物質を圧縮工程にかけて、圧縮された前駆体物質を形成する;
(c)圧縮された前駆体物質を破砕工程にかけて、破砕された前駆体物質を形成する;及び
(d)破砕された前駆体物質を少なくとも2回の空気分級工程にかけて、先行する請求項のいずれかに係る混合物を形成する。
【0021】
前記方法は、噴霧乾燥工程を含まない。
典型的には、前記方法は、湿式造粒工程を含まない。
【0022】
工程(a)前駆体物質の形成
前駆体物質は、典型的には、クレイ、長石、ガラス、フラックス剤、及びリサイクル材料等の、セラミック体組成の成分を、ドライミリング及びブレンドすることによって形成される。再生ケイ酸アルミニウム、特に石炭燃焼アッシュから派生した再生ケイ酸アルミニウム等の任意のリサイクル材料も、前駆体物質を形成するために、ミリングされる必要がある場合があり、他の成分とブレンドされる必要がある場合がある。前記物質は、別々にミリングされ、分級されてもよく、又は共にミリングされてもよい。これは、適切な前駆体物質である、微細で、ほこり状の、凝集性粉末ブレンドを形成する。任意の適切な粉砕装置及び分級装置、例えば、ロッドミルを使用することができ、これには、振動ロッドミル、空気分級ミル、インパクトミルが含まれる。Hosokawa Mikro ACMシリーズのミルが適切である。別の適切なミルは、MBE Palla振動ロッドミルである。適切な空気分級機は、ホソカワミクロン株式会社からも販売されている、前記Mikroシリーズの空気分級機である(特に、内部分級システムの無いミルを選択する場合)。
【0023】
前駆体物質は、グリーン物品の形成に十分な可塑性を付与するために、加湿を必要とする場合がある。これは、典型的には、高速で回転する工具の動きによって、水を粉末ブレンド全体に均一に分散させる高速ミキサー中で行われる。加湿工程に適切な装置は、Hosokawa BepexのSchugi Flexomixerシリーズである。
【0024】
典型的には、乾式造粒プロセスのために、工程(a)で形成された前駆体物質は、10wt%未満の水を含む。好ましくは、工程(a)で形成された前駆体物質は、10wt%未満の水を含む。一方、典型的な湿式造粒プロセスは、10wt%以上の水を含む前駆体物質を形成する。
【0025】
工程(b)前駆体物質の圧縮
前駆体物質は、その後、典型的には、近接配置され、反対に回転する2つのローラーの間に供給され、そこで、前駆体物質に十分な圧力をかけ、大きな顆粒を形成するために、定められ制御された力によってプレスされる。ローラーは、滑らか表面を有していてもよく、及び、粉末を圧縮ゾーンに引き込むのを助けるため、及び、圧縮された物質をプリフォーム形状とするため、型押し模様を有していてもよい。前駆体物質を圧縮するのに適切なローラー圧縮装置として、Hosokawa Alpine社のKompactor MS85が挙げられる。別の適切なコンパクターは、Jiangyin Shengling Machinery Manufacturing社のGF-360である。当業者は、特定の要件に応じて、粉末供給速度、圧力、及び他の操作パラメータの適切な組み合わせを、たやすく選択することができるであろう。
【0026】
圧縮工程から得られた圧縮された前駆体物質は、例えば、使用したローラーの形状に応じて、さまざまな形状と大きさを有し得る。圧縮された前駆体物質は、使用したローラーのプロファイルに応じて、ストリップ、又はブリケット、又はストリップのより小さなフラグメントの形状であってもよい。しかしながら、物質は、固体構造に形成されるものの、これらの固体構造の大きさと形状の範囲は、さらに処理してセラミック物品にするには完全に不適切であり、追加の破砕と分粒プロセスが必要となるであろう。これらの後操作は、一つのユニットに統合されてもよいが、別々のユニットで行われてもよい。これにより、分級プロセスの柔軟性が増加する。
【0027】
工程(c)圧縮された前駆体物質を破砕する
工程(b)で形成された圧縮された前駆体物質の固体構造及び粒子は、しばしば、セラミック粒子混合物へと形成されるのに適切な大きさと形状を有さない物質を高い比率で含む。大きな圧粉体、例えば、ストリップ、ブリケット、及びローラー圧縮機(ローラーコンパクター)から出てきたフラグメントなどは、破砕されることが必要かもしれない。破砕は、大きなフラグメントをより小さなフラグメントに砕いて分散させることを含む。典型的には、これは、大きな粒子の過度の破損、過度の微粒子の生成、及び一次粒子の望まないさらなる粉砕を避けるために、制御された方法で行われる必要がある。適切な装置として、Bepex BM25が挙げられ、そして当業者は、破砕機(クラッシャー)から出てくる顆粒の粒度範囲を最適化するために、適切な速度を決定することができる。
好ましくは、工程(c)において、粉砕は生じない、
【0028】
工程(d)空気分級工程
破砕された前駆体物質は、少なくとも2つの空気分級工程を受ける。
【0029】
破砕された前駆体物質は、少なくとも2つの空気分級工程にかけられ、一方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から、600μmを超える粒径、又は好ましくは500μmを超える粒径を有する粒子の少なくとも一部を除去し、他方の空気分級工程は、破砕された前駆体物質から、80μm未満の粒径、又は好ましくは100μm未満の粒径を有する粒子の少なくとも一部を除去する。
【0030】
好ましくは、破砕された前駆体物質は、重力式空気分級工程、及び遠心式空気分級工程にかけられる。
【0031】
好ましくは、破砕された前駆体物質は、重力式空気分級工程、続いて、遠心式空気分級工程を受ける。2つの空気分級工程を組み合わせることで、幅広い範囲の粒径を有する粉末を分類し、要求される粒度分布のセラミック粒子混合物を得るのに最適な能力を提供する。
【0032】
空気分級工程は、一つのユニットに統合されてもよく、あるいは別々のユニットで行われてもよい。典型的には、破砕された前駆体物質は、第一工程として、重力式空気分級工程に供給され、最も大きい特大のフラグメントを除去する。この特大のフラグメントは、破砕機に戻されてもよい。重力分離は、特大の粒子からより小さいフラクションを除去するのに適切であり、及び典型的には、前記空気分級システムは、まず、特大のフラクションからより小さいフラクションを除去し、その後、このより小さいサイズのフラクションから、微粒子を除去することによって、作用する。
【0033】
粗フラクションと微細フラクションのサイズは、分級機の操作によって決定できる。典型例は、ホソカワミクロン株式会社のMicron Separator Air Classifierである。もう一つの例は、International Innovative Technologies社(現ホソカワミクロン株式会社)のC-シリーズである。好ましいタイプの分級機は、分離をアシストするローラーを有する機械分級機である。しかしながら、機械部品を有しない他の種類の分級機、例えばサイクロンも使用できる。
【0034】
機械分級機は、空気の内向き流によって粒子に働く求心力に反して、ローターの回転によって粒子に働く遠心力を利用することによって粒子を分類することができる。分離される物質は、空気圧で吸気ダクト内へ及びローターまで運ばれ、そこで2つの相反する力がそれを分類する。より微細な粒子は、ローターの中心の真上に位置する出口に向かって動く気流によってもたらされる求心力の影響をより受けやすい。それらは、それゆえ、気流によって除去され、他方、粗い粒子は、ローターからの遠心力の影響をより受けやすく、横に飛ばされる。これらの力は、粗物質を機械の内壁の下方へ流し、その物質を粗粒子放出へと移行させて空にする一方、微細な粒子は、気流を通じてローターへと移動し、その後、上部排出ダクトを通じて放出される。内部ローターの回転速度を変更することによって、粗及び微細カットのサイズを、容易に調節することができる。ローターの速度を速めると、除去される微粒子のサイズが小さくなる。しかしながら、分級機のローター部分での大粒子の過度の崩壊を避けることが必要かもしれない(これが望まれない場合)。
【0035】
重力式空気分級工程
好ましくは、破砕された前駆体物質は、重力式空気分級工程にかけられ、破砕された前駆体物質から、600μmを超える粒径、又は好ましくは500μmを超える粒径を有する粒子の少なくとも一部を除去し、及びこの際、除去された粒子は、工程(c)の破砕機に戻されてリサイクルされてもよい。
【0036】
典型的には、重力式空気分級機は、落下シート(気流が通過する)として、入ってくる粉末を供給することによって、作用する。ベーン(羽根)はよく、気流の方向に変化をもたらし、取り除かれ運び去られるには重すぎるより大きな粒子の重力分離を増強するために使用される。これらはその後、ユニットの底で放出される。重力式空気分離器は、スクリーンを用いたふるい分けより効率的に、より大きな粒子を除去することができる(特に、密着する傾向があり、過剰な量の微粒子を含み、スクリーンを目詰まりさせうる破砕された前駆体物質のような物質の場合)。600μm、好ましくは500μmのサイズカットは、大規模製造でふるいわけを実施可能とするには、細かすぎる。適切な重力式分離器が、米国、ペンシルバニア州の、Metso Minerals Industries社によって供給されている。
当業者は、所望のサイズカットを得るために、気流及び供給速度などを選択することができる。
【0037】
遠心式空気分級工程
好ましくは、破砕された前駆体物質は、遠心式空気分級工程にかけられ、粒径80μm未満、あるいは好ましくは100μm未満の粒子の少なくとも一部を、破砕された前駆体物質から除去し、この際、除去された粒子は、工程(b)の圧縮機に戻されてリサイクルされてもよい。これは、特に、粒径が600μmより大きい、あるいは好ましくは500μmより大きい粒子の少なくとも一部を、破砕された前駆体物質から除去するために、破砕された前駆体物質を重力式空気分級工程にもかける場合に好ましく、この際、重力式空気分級工程から除去された粒子は、工程(c)の破砕機に戻されてリサイクルされる。
【0038】
遠心式空気分離器への供給流中に微粒子だけでなく、大きなフラグメントも存在すると、物質が装置の内側に蓄積しやすくなる可能性があり、粒子-ブレードの衝突に起因するリジェクターブレード(rejector blades)の摩耗が増加しやすくなる可能性があるので、重力分離工程は、好ましくは、遠心分離工程に先行する。
【0039】
遠心式空気分級機は、分級機の外側ケーシングの方へ供給材料を流す遠心力と、ローター部分の中心のトップにある出口のほうに粒子を引き寄せる、気流からの抗力とのコンビネーションに、粉末混合物をさらすことによって、作用する。遠心力は、ローターブレード(リジェクターブレード)の回転によって生じ、ローターの速度の変更は、遠心力を変化させるため、ゆえに、気流に巻き込まれ微粒子として除去される粒子のサイズを変更するために使用することができる。当業者は、供給速度と入ってくる供給材料を巻き込むために使用される気流とを考慮に入れながら、所望のサイズカットを提供するためにローター速度を調節することができるであろう。適切な遠心式分級機は、ホソカワミクロン株式会社製のMicron Separator Air Classifiersである。
【0040】
前駆体物質
前駆体物質は、一般的には、ミリングされ、分級され、ブレンドされ、その後任意で加湿されたセラミック成分の混合物である。適切なセラミック成分は、再生ケイ酸アルミニウム材(典型的には、20wt%~80wt%の濃度);クレイ、特にベントナイト・クレイ(典型的には、10wt%~50wt%);長石(典型的には、4wt%~50wt%);及び任意で他の添加剤、例えばフラックス材料(典型的には、0wt%~10wt%、又は1wt%~10wt%)を含む。当業者は、様々な適切なセラミック体組成を認識するであろう。
【0041】
圧縮された前駆体物質:
圧縮された前駆体物質は、粒子から固体構造まで、例えば、ストリップ(最大で数センチメートル)、あるいはより大きなサイズまで、サイズに幅があってもよい。圧縮された前駆体物質は、軽く圧縮された物質から、高度に圧縮された物質まで及んでもよい。圧縮された前駆体物質は、高度に圧縮された領域と、軽く圧縮された領域とを有する物質であってもよい。
【0042】
破砕された前駆体物質:
典型的には、破砕された前駆体物質は、少なくとも20wt%の粒子が、63μm未満である粒度分布を有する。
典型的には、破砕された前駆体物質は、ふるい分け工程にかけられていない。
【0043】
セラミック物品を製造するプロセス
セラミック物品を製造するプロセスは、以下の工程を含む:
(e)上述したプロセスで得られたセラミック粒子混合物を加圧して、グリーン物品を形成する;
(f)任意で、グリーン物品を初回熱処理工程にかける;
(g)グリーン物品を、窯(キルン)内で熱処理工程にかけて、溶融物品を形成する;及び
(h)溶融物品を冷却して、セラミック物品を形成する。
【0044】
工程(e)、(f)及び(g)は、連続したプロセス工程であることが好ましい場合がある。このようにして、プロセスは効率的に最適化される。
【0045】
工程(h)は、工程(e)、(f)及び(g)とともに、連続したプロセス工程であってもよい。あるいは、工程(h)は、バッチ工程であってもよい。
【0046】
典型的には、任意工程(f)は、熱処理工程(g)の前に、グリーン物品を乾燥する。
【0047】
さらなるコントロールが必要である場合、前記プロセスは、任意で、空気分級工程の後に、ふるい分け又はダスティングあるいはさらなる加湿などの、追加のプロセス工程を含んでもよい。
【0048】
任意の加湿工程:
前駆体物質は、加湿されてもよい。添加された水は、混合物の可塑性を増加させ、混合物を圧縮して、タイルの圧縮体を形成するのに役立つ。前駆体物質の加湿は、焼成前の加圧タイルの強度を増加させる。しかしながら、通常、添加する水の量及び混合物中の水の分散の両方を注意深くコントロールすることが非常に重要である。例えば、水の量が多すぎると、物品内からの蒸気が逃げることにより、乾燥中にグリーン物品にクラックが発生し得る。粒子混合物の取り扱いやすさ、加工性、及び/又は均質性は、水の量が多いと悪影響を受けることもある。形成及び加圧工程を行いやすくするための多量の添加水は、乾燥工程をより難しくする可能性があり、欠陥が生じやすくなる場合がある。水の量が十分に多くない場合、加湿混合物は、圧縮して十分なグリーン強度を有する所望の形状にするのに十分な可変性を有さないかもしれない。それゆえ、水の量は、通常、様々な要求の間のバランスであり、注意深くコントロールする必要がある。
【0049】
典型的には、前駆体物質の可塑性を増加させるのに有効である場合、前駆体物質に添加される水は、混合物全体に十分に分散される必要がある。水が前駆体物質全体に十分に分散していない場合、物質は、湿りすぎた凝集塊と、湿っていない材料の混合物を含みうる。通常、この種の混合物は、特に、混合物が乾燥しすぎていて強固な構造へとうまく圧縮されないグリーン物品の領域において、加圧の間の挙動が非常に悪く、複数の欠陥を伴う。
【0050】
高レベルの分散を確実にするため、水は通常、ドライミリング工程の後、乾式造粒プロセスの前に、高せん断ミキサー中で前駆体物質に添加される。このために適切なミキサーとして、ホソカワミクロン株式会社のSchugi Flexomixシリーズが挙げられる。
【0051】
工程(e)セラミック粒子混合物を加圧する:
セラミック粒子混合物については、先により詳細に記載している。
【0052】
工程(e)において、セラミック粒子混合物を加圧する前に、セラミック粒子混合物を加湿してもよい。この任意の加湿工程については、先により詳細に記載している。
【0053】
好ましくは、セラミック粒子混合物は、先により詳細に記載したプロセス工程(a)~(d)によって得られる。混合物を得るために、プロセス工程(a)~(d)が使用される場合、いかなる加湿工程も必要ない場合がある。これは、いかなる追加の加湿工程も必要とせずに混合物の目標水分量を得ることができるよう、プロセス工程(a)~(d)によって混合物の水のレベルを十分に制御することができるためである。
【0054】
セラミック粒子混合物は、通常、加圧前に金型に供給される。各金型に入れられる物質の量は、目標量であるように、且つ金型のエリアに均一に広がるように制御されることが必要となり得る。もしこれが生じなければ、タイルのパーツは、加圧の間に異なる力を受ける可能性があり、これは欠陥の可能性を高めるであろう。金型への均一な供給及び粉体層のフラットで均一な厚みを確実にするために、イタリア、イーモラのSACMI製DCP 160のような、専用の粒子混合物フィーダーを使用することができる。加湿混合物は、その後典型的には15~50MPaの間の圧力にてプレス機中で圧縮され、粒子混合物の組成及び特性に応じたグリーン物品を形成する。適切なプレス機には、SACMIによって供給されている液圧プレスのIMOLAシリーズが含まれる。当業者は、特定の要件に応じて、粉末フィーダー及びプレス機の適切な組み合わせを容易に選択することができるであろう。
【0055】
工程(f)任意の初回熱処理工程:
グリーン物品は、任意で、窯での焼成前にグリーン物品を少なくとも部分的に乾燥、又はグリーン物品を乾燥するための初回加熱工程にかけられてもよい。この工程は、窯での焼成とは別々であっても、又は一体化されてもよい。この初回乾燥工程の間の温度は、クラッキングを避けるため、通常110℃を超えない。
【0056】
任意でグリーン物品をグレージング(光沢仕上げ)する
典型的な高温焼成工程の前に、物品をグレージングしてもよい。典型的には、グレージングは、物質の層(単数又は複数)を塗布し、これは、焼成サイクルの間にガラス化して、セラミック物品の表面に接合された薄いガラス質層を形成する。典型的には、このガラス質層は、タイルの表面に不浸透性のバリアを形成し、且つ、ガラス質層内に組み込まれる装飾的なパターン、色彩及びイメージを付与するための有色鉱物又は色素(顔料)を含むことができる。グレージングは、焼成の前又は焼成工程の後、一段階又は多段階で付与することができる。多段階グレージングプロセスにおいて、例えば、複雑な「bicuttura」タイルを作るために、第一のグレーズ組成物が、物品の表面に塗布され、これはその後焼成されて、第一のガラス質層を形成する。典型的には、部分的にグレーズされた物品を、その後冷却し、その後さらなるグレーズを塗布して、物品を再焼成する。これを必要に応じて繰り返すことができる。そのようなプロセスは、非常に複雑で装飾的なグレーズパターンとイメージを作るために使用することができるが、物品の強度を弱める傾向がある。例えば、「bicuttura」タイルは、一般的に、床タイルとして使用するのに十分な強度を有していない。
【0057】
未焼成物品にグレーズを塗布し、その後一段階でグレーズ物品を焼成するプロセスが、より強度の高い物品を通常製造する。典型的には、このようなプロセスは、例えば、床タイルとして使用されるのに十分頑強な「monocuttura」タイルを作るために使用される。それゆえ、床タイル等のグレーズドセラミック物品を製造するためには、一段階のグレージング及び焼成プロセスを使用することが好ましい。
【0058】
グレーズは、非常に微細に粉砕された鉱物及び色素(特に金属酸化物)の水性懸濁液として、又は微細粉末として、塗布することができる。好ましくは、グレーズ(単数又は複数)は、水性懸濁液として塗布され、これは、イメージ又は装飾パターンが、物品の表面上にペイントされる又はプリントされることを可能にする。非常に高い品質のイメージをセラミック物品の表面上にプリントし、焼成後にそのようなイメージをグレーズ層内で保つために、高速インクジェット式プリンターを使用することが可能である。典型的には、使用するグレーズの組成及び特性を正確にコントロールすることが必要である。例えば、溶融グレーズ物質の粘度は、焼成中に物品の表面からグレーズが流れ落ちないように、あるいは、色が混ざって広がり、ぼやけた低品質のイメージを作り出さないように、十分高い必要がある。典型的には、グレーズ(単数又は複数)の性質は、例えば、焼成サイクル中に収縮差に起因するグレーズのクラック形成を避けるために、セラミック物品と十分な適合性を有する必要がある。
【0059】
典型的には、水性懸濁液グレーズは、様々な鉱物、色素及び他の物質(フラックスなど)をスラリー中で併せ、及びこのスラリーを十分にすりつぶして、非常に微細な固形粒子を形成することによって作られる。このようなグレーズは、調製するのに多くの粉砕時間がかかり得る。もし粉砕が不十分であれば、例えば、インクジェット技術を使用してそれらを塗布することが難しくなるかもしれず、グレーズ層の一貫性及び均一性が損なわれる。セラミックスのグレージングとプリンティングの分野では、非常に広範な知識と経験があり、当業者は、必要に応じてグレーズを選択し調製することが可能である。EFI等の企業が、印刷に使用できる有色グレーズである適切な「セラミックインク」を提供している。EFI社は、セラミックタイルの印刷のための「Cretaprint」インクを提供している。EFI社によって製造されるCretaprintシリーズのCretaprint P4などの現代のセラミックタイルプリンターは、グリーンタイルがプリンターを通過する際、複数のスプレーバーを使用して複数のインクと仕上げ剤(フィニッシュ)を塗布し、最終イメージとグレーズ層を作り上げる。Cretaprintセラミックインク及び仕上げ剤、及びCretaprint P4は、上述した粒子混合物を使用して製造された物品にグレーズ層を塗布するのに適している。
【0060】
工程(g)熱処理工程:
典型的には、グリーン物品は窯の中で焼かれ、粒子状セラミック混合物の粒子焼結を生じさせ、高強度のガラス化した構造をもたらす。
【0061】
この焼成工程は、バッチ式の窯あるいは連続式の窯の中で行うことができ、好ましくは連続工程が使用される。工業的には、「トンネルキルン」が最も重要である。典型的には、このような窯の中で、セラミック物品は、加熱された長いトンネルの長さに沿ってゆっくりと動かされる。典型的には、窯内の異なるゾーンの温度は一定に保たれ、物品はこれらのゾーンを通って動かされる。この方法では、セラミック物品が経験するコンディションを、非常に正確にコントロールすることができ、全加熱及び冷却サイクルは、大型バッチ式窯で必要とされる非常に長い時間と比較して、2時間もかからない場合がある。典型的には、このようなトンネルキルンの最も熱い部分は、中央ゾーンであり、セラミック物品が経験する温度は、徐々に増加し、その後減少する。これは、品質問題を最小限に抑える:例えば、加熱又は冷却プロセス中の応力形成に起因するクラックの発生。しばしば、冷却が急激すぎると、タイルのボディ内に内部応力がたまっていき、これは反りや破損を生じさせる。段階的で、制御された加熱プロファイルは、「膨張」などの問題を引き起こすことなく、気体が孔を通って排出される制御された様式にて、不純物(炭素など)の焼失も可能にする。典型的には、トンネルキルンの加熱は、ガスバーナー又は電気ヒーター又はマイクロ波加熱及びそれらの組み合わせを使用することによって達成される。トンネルキルン内での加熱のためのガスバーナーの使用は、しばしば窯内部の雰囲気の酸素濃度が低いことを意味し、これはグレーズ及び物品内で生じる化学変化に影響を与える。
【0062】
窯の全長にわたる温度プロファイルは、典型的には、セラミック粒子混合物の組成によって決まる。異なる物質は、異なる温度で融解し、焼結し始める。例えば、「フラックス」と表記される物質は、他の物質と比べて、より低い温度でセラミックボディを融解させる。例えば、「フラックス」と表記される物質は、他の物質より低い融点を有する。大きな粒子は、より小さな粒子と比較して、より遅い焼結キネティクスを有するので、焼結挙動は一般的に、粒子混合物の粒径によっても決まる。典型的には、焼成の間に過剰量の混合物が溶けるような高温を避けることが重要である。これは強度の低下及び、「スランピング(slumping)」として知られる現象(セラミック物品がその形状を保つための内部強度を有さず、ゆえに変形する)を引き起こし得る。
【0063】
セラミック物品製造、例えば、セラミックタイル製造のための典型的な窯は、窯の中央ゾーンで1000℃~1250℃の間の最高温度を有する。最高温度は、混合物の正確な組成によって決まり得る。フラックスの量が多い混合物は、一般的に、より低い最高温度を必要とする。より大きな粒子を有する混合物は、典型的には、より遅い焼結キネティクスに起因して、最高温度でのより長い時間を必要とする。窯の長さに沿った温度プロファイルは、焼成物品内で特定の構造及び鉱物相を作り出すために変化し得る。加熱及び冷却の全サイクルは、典型的には1時間未満である。
【0064】
多くの窯に関連する問題は、窯の熱慣性が大きく、コンディションを素早く変えることができないことである。大型の工業窯炉は冷却に数日かかる可能性がある。それゆえ、窯のコンディションを素早く調節して、セラミック物品を作るのに使用される粒子混合物の性質の変化を相殺することはできず、他の方法を使用することが必要である。
【0065】
20分間にわたって、周囲温度から約1250℃まで着実に上昇させる様式によって、グリーン物品を加熱し、その後3~10分の間その温度を維持し、続いて、30分間にわたる連続的な様式で、周辺温度に戻るように温度を下げていくことによって、上述の物品を焼成して、最終製品であるセラミックタイルを形成することができた。
【0066】
工程(h)冷却工程:
典型的には、溶融物品は冷却される。典型的には、セラミックタイルなどの物品を徐冷却することが、内部応力に起因する欠陥を避けるために有益である場合が多く、製造業者によっては、窯から出した熱いタイルを積み重ねて、それらを数時間放置して、周囲条件までの非常に段階的な冷却工程を経るようにするかもしれない。典型的には、問題を生じさせずに冷却速度を増加させることができる組成及びプロセスが、生産率を高めるために有益である。
【0067】
セラミック物品:
好ましくは、セラミック物品はセラミックタイルであり、好ましくは、セラミック磁器質床タイルである。セラミックタイルは、1cm未満の厚み、少なくとも20cm、好ましくは少なくとも30cmの幅、及び少なくとも20cm、好ましくは少なくとも30cmの長さを有し得る。セラミック物品は、グレーズドセラミック物品(グレーズドセラミックタイルなど)であってもよく、好ましくは、グレーズドセラミック磁器質床タイルである。
【0068】
グリーン物品:
典型的には、セラミック粒子混合物から製造されるグリーン物品は、破損なくそれを取り扱うことができ、且つ、窯及び/又は任意のグレージングユニットへ輸送できるように、十分な機械的強度を有する必要がある。これは、「グリーン強度」と称される。典型的には、必要とされるグリーン強度は、グリーン物品の形状と寸法、及びそれが経験する取扱作業によって決まる。典型的には、グリーン強度は、粒子混合物の組成と、グリーン強度を増加させてハンドリングを可能にするために粒子混合物に添加されうる物質(水、ポリマー及び高塑性クレイ)の組成によって決まる。
【0069】
グレーズ:
グレーズは、典型的には、細かく微粉化した鉱物、色素及び他の物質、例えばフラックス及びフィルム形成剤の水性懸濁液である。一般的には、それらはスラリーを十分にすりつぶして水性懸濁液を形成することによって調製される。グレーズの正確な組成は、一般的には、要求される特性によって決定され、当業者によって選択される。
【0070】
グレーズドグリーン物品
典型的には、グレーズドグリーン物品は、グレージングされたグリーン物品である。好ましくは、グレーズドグリーン物品は、グレージングされた乾燥グリーン物品である。
【0071】
セラミック粒子混合物:
典型的には、粒子混合物は、セラミック物品の製造に使用するのに適している。セラミック物品の製造プロセスは、後により詳細に記載される。
【0072】
セラミック粒子混合物は、少なくとも20wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含んでもよい。典型的には、前記混合物は、20wt%~80wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含む。典型的には、前記混合物は、40wt%~80wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含む。典型的には、前記混合物は、50wt%より多く80wt%以下の再生ケイ酸アルミニウム材を含む。前記混合物は、60wt%~80wt%の、あるいは70wt%~80wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウムは、後により詳細に記載される。セラミック粒子混合物中に存在するより多量の再生ケイ酸アルミニウム材は、発明の背景に記載した問題を深刻化させる。
【0073】
セラミック粒子混合物は、4wt%~9wt%の水、好ましくは4wt%~8wt%の水、あるいは好ましくは5wt%~8wt%の水を含む。
【0074】
粒子混合物は、20wt%~70wt%、又は20wt%~50wt%、又は20wt%~40wt%、又は20wt%~30wt%の、クレイ、頁岩(シェール)、長石、ガラス及びそれらの任意の組み合わせから選択される物質を含んでもよい。好ましい物質は、クレイと長石の組み合わせである。適切なクレイは、ウクライナクレイ(Ukrainian clay)等の標準的なクレイである。好ましいクレイは、標準的なクレイと高塑性クレイの組み合わせである。標準的なクレイと高塑性クレイの重量比は、2:1~5:1の範囲内であってもよい。適切なクレイは、ベントナイトクレイ等の高塑性クレイである。典型的には、高塑性クレイは、25.0より高いAtterburg塑性指数を有する。典型的には、標準的なクレイは、25.0以下のAtterburg塑性指数を有する。高塑性クレイの量は、セラミック粒子混合物、特に再生ケイ酸アルミニウム材を含むセラミック粒子混合物に十分なロバスト性と流動性を付与するために選択することができる。
【0075】
粒子混合物は、バインダーを、典型的には0.1wt%~3.0wt%のバインダー、又は0.5wt%~2.0wt%のバインダーを含んでもよい。適切なバインダーは、後により詳細に記載される。典型的には、粒子混合物へのバインダーの組み込みは、粒子混合物から形成される(例えば、セラミック製造プロセスの間に加圧によって得られる)グリーン物品に、十分な強度を付与する。
【0076】
好ましくは、粒子混合物は、5.0wt%未満の酸化カルシウムを含む。
【0077】
乾式造粒プロセスが解膠剤の必要性を打ち消すため、乾式造粒プロセスによって製造されるセラミック粒子混合物は、通常、いかなる解膠剤も含まない。
【0078】
セラミック粒子混合物は、粒子の少なくとも90wt%が、80μm~600μmの粒径を有する粒度分布を有する。好ましくは、粒子の少なくとも95wt%、又は少なくとも99wt%が、80μm~600μmの粒径を有する。好ましくは、粒子の少なくとも90wt%、又は少なくとも95wt%、あるいは少なくとも99wt%が、100μm~500μmの粒径を有する。好ましくは、実質的に全ての粒子が80μm~600μmの粒径を有する。好ましくは、実質的に全ての粒子が100μm~500μmの粒径を有する。
【0079】
粒子混合物の粒度分布は、分級によってコントロールすることができる。粒子混合物の粗フラクション(又はカット)及び微細フラクション(又はカット)への分離は、空気分級によって都合よく行うことができ、この際、機械篩で使用されるスクリーンを目詰まりさせうるより小さな粒子がある。粗フラクションと微細フラクションのサイズは、分級機の操作によって決定できる。典型例は、ホソカワミクロン株式会社のMicron Separator Air Classifierである。機械類は、ローターの遠心力と空気の求心力のバランスをとることによって、粒子を分類することができる。分離される物質は、ファンにより吸気ダクト内へ及びローターまで引き込まれ、そこで2つの相反する力がそれを分類する。より微細な粒子は、より求心力の影響を受けやすく、他方、粗い粒子は、遠心力の影響をより受けやすい。これらの力は、粗物質を機械の内壁の下方へ流し、その物質を粗粒子放出へと移行させて空にする一方、微細な粒子は、気流を通じてローターへと移動し、その後、上部排出ダクトを通じて放出される。内部ローターの回転速度を変更することによって、粗及び微細カットのサイズを、容易に調節することができる。ローターの速度を速めると、粗フラクション及び微細フラクション間のスプリット(split)サイズが大きくなる。
【0080】
典型的には、前記混合物は、少なくとも800g/lのかさ密度を有する。
典型的には、前記混合物は、10s/l未満、又は8s/l未満の流動性を有する。
典型的には、前記混合物は、噴霧乾燥されない。
【0081】
再生ケイ酸アルミニウム材:
典型的には、任意の再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物に由来する。
【0082】
典型的には、再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物(アッシュ等)を、選鉱プロセスにかけることによって得られる。再生ケイ酸アルミニウムは、典型的には、選鉱されたフライアッシュである。再生ケイ酸アルミニウムが、クラスFのフライアッシュに由来する選鉱されたフライアッシュであることが好ましいことがある。
【0083】
典型的には、再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物(アッシュ等)を、初回粒径スクリーン(1mmスクリーン等)にかけて、大きな物体を取り除き、その後、1又は複数のより小さな粒径スクリーン(250μm及び/又は125μm等)にかけて、大きな粒子を取り除くことによって得られる。この選別された物質は、典型的には、その後、酸化鉄含量を減らすために磁気分離工程にかけられる。この磁気分離工程は、第一の磁気分離工程(例えば、8,000ガウス又は8,000付近のガウスにて)、続いて第二の磁気分離工程(例えば、30,000ガウス又は30,000付近のガウスにて)を含んでもよい。あるいは1つの磁気分離工程(例えば、8,000ガウス又は8,000付近のガウスにて)のみが使用されてもよい。この物質はその後、典型的には、炭素削減工程、例えばか焼又は浮遊選鉱、好ましくはか焼にかけられる。物質は、静電選別技術にかけられてもよい。
【0084】
再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、主にケイ酸アルミニウムである。再生ケイ酸アルミニウムは、典型的には、可燃性炭素及び酸化鉄を含み;及びさらに、微量の他の物質、例えば、ナトリウム塩及び/又はマグネシウム塩、及び酸化鉄以外の金属酸化物を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、少なくとも88wt%のケイ酸アルミニウム、好ましくは少なくとも90wt%のケイ酸アルミニウムを含む。可燃性炭素と酸化鉄の量によっては、再生ケイ酸アルミニウムは、少なくとも92wt%、又は少なくとも94wt%、又は少なくとも96wt%、又は少なくとも98wt%のケイ酸アルミニウムを含んでもよい。
【0085】
再生ケイ酸アルミニウム材は、0.5wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~7.0wt%、又は1.0wt%~6.0wt%、又は1.0wt%~5.0wt%、又は1.0wt%~4.0wt%、又は1.0wt%~3.0wt%の可燃性炭素を含んでもよい。
【0086】
好ましい再生ケイ酸アルミニウム材の一例は、石炭燃焼生成物から可燃性炭素のすべてを除去し、次いでこの無-可燃性炭素材料に、可燃性炭素を添加することによって得られる。このようにして、再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する可燃性炭素の量を、注意深く、且つ確実に制御することができる。
【0087】
再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する可燃性炭素の量は、か焼、静電除去、及び浮遊選鉱技術(例えば、泡沫-空気(froth-air)浮遊選鉱技術)などの技術によって、コントロールすることができ、典型的には低減することができる。
可燃性炭素レベルをコントロールするこのようなプロセスは、当該分野で十分に知られている。
【0088】
物質をか焼して炭素レベルを低下させる適切な装置として、サウスカロライナ州、レキシントンのSEFA Groupによって供給されているStaged Turbulent Air Reactorsが挙げられる。これらのリアクタは、さらに残留炭素を燃やし尽くすために、入ってきたアッシュを加熱する。
【0089】
よく使用される別の技術は、摩擦静電(triboelectrostatic)選別であり、これにより、特に粉砕後、静電分離器を通過させることによって、炭素粒子を、バルクアッシュ材から除去することができる。炭素粒子を、非炭素粒子とは反対の電荷を有するように帯電させることができ、その後、アッシュ材を静電分離器に通すことによって、除去することができる。このために適切な装置として、マサチューセッツ州、ニーダムのST Equipment and Technologies社によって供給されているSTETセパレーターが挙げられる。
【0090】
適切な泡沫浮遊選鉱装置として、FLSmidthによって供給されているDorr-Oliver and Wemcoユニットが挙げられる。
【0091】
これらのプロセスは全て、過度に高い炭素レベルを低下させることができる。か焼プロセスにおいて、作動温度を上昇させると、炭素レベルはさらに低下するであろう。静電選別において、分離ユニットで使用される電圧を上昇させること、及び分離器に入る物質の粉砕の程度を上げることは、炭素レベルをさらに減らすために利用可能である。
【0092】
泡沫浮遊選鉱プロセスにおいて、流入材料のミリングの程度を増加させて、未燃焼炭素粒子をさらにリリースすること、使用する空気の量を増加させること、及び界面活性剤などの添加剤を使用することは、いずれも、炭素レベルの減少を制御するために利用可能である。
【0093】
炭素レベルは、微細に粉砕した可燃性炭素リッチ材料を、粒子混合物に添加することによって増加させることができる。粒子混合物の調製に関与する任意の破砕工程に、可燃性炭素リッチ材料を添加することが特に好ましいと思われる。可燃性炭素リッチ材料が、可燃性炭素リッチのアッシュから前もって抽出された材料であることも、好ましい。これは効率を最大化する。粉砕した石炭及び/又は炭質頁岩(coal shale)等の他の原料も、当然使用できる。好ましくは、粒子混合物中の可燃性炭素リッチ材料の粒径は、粒子混合物中に存在する他の材料の粒径と同程度である。
【0094】
再生ケイ酸アルミニウム材は、0.5wt%~12.0wt%、又は0.5wt%~11.0wt%、又は0.5wt%~10wt%、又は0.5wt%~9.0wt%、又は0.5wt%~8.0wt%、又は0.5wt%~7.0wt%、又は0.5wt%~6.0wt%、又は0.5wt%~5.0wt%、又は0.5wt%~4.0wt%、又は0.5wt%~3.0wt%、又は0.5wt%~2.0wt%の酸化鉄を含んでもよい。
【0095】
好ましい再生ケイ酸アルミニウム材の一例は、石炭燃焼生成物から酸化鉄のすべてを除去し、次いでこの無-酸化鉄材料に、酸化鉄を添加することによって得られる。このようにして、再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する酸化鉄の量を、注意深く、且つ確実に制御することができる。
【0096】
再生ケイ酸アルミニウム中の酸化鉄の量は、典型的には、粒子混合物中の酸化鉄レベルを検出し、もしそれが規格外あれば、次に再生ケイ酸アルミニウムから除去する酸化鉄の量を増加させるか、又はケイ酸アルミニウムに酸化鉄リッチ材料を添加するプロセスによってコントロールされる。
【0097】
酸化鉄量は、再生ケイ酸アルミニウムを、1又は複数の磁気選別機に通すことによって低下させることができる。これらは、再生ケイ酸アルミニウムの通過流に磁場をかけ、これにより、酸化鉄等の磁気の影響を受けやすい物質をバルク流から除去する。マグネタイト等の磁性物質は、10,000ガウス(=1テスラ)以下の強度の低い磁場を使用して除去することができる。ヘマタイト(赤鉄鉱)等の磁気の影響を受けにくい鉱物も、磁気分離を使用して取り出せるが、通常、最大で2又は3テスラのはるかに高い磁場強度を必要とする。しばしば磁気分離プロセスは、低強度の分離工程、続いて高強度の分離工程を使用する。再生ケイ酸アルミニウムから酸化鉄を取り出すのに適切な装置として、中国、広東省、フォーシャン市のFoshan Wandaye Machinery Equipment社製の磁気選別機のWDY種が挙げられる。WD-7A-300モデルが使用できた。磁気分離は、ウェットスラリーでも行うことができるが、これは、二次乾燥工程を必要とするため、再生ケイ酸アルミニウムを処理する好ましいルートではない。
【0098】
再生ケイ酸アルミニウム中の酸化鉄量は、再生ケイ酸アルミニウムへ酸化鉄リッチ材料を制御しながら添加することによって増加できる。マグネタイト又はヘマタイト等の酸化鉄鉱物が最も好ましいが、他の供給源も使用できる。特に好ましい供給源は、過剰に高いレベルの酸化鉄を有する再生ケイ酸アルミニウムの前処理によって取り出された酸化鉄の再利用である。好ましくは、酸化鉄リッチ粒子は、均一性を確保するために、再生ケイ酸アルミニウムと同程度の大きさを有する。酸化鉄リッチ材料は、均一性を補助するため、任意の混合又は破砕工程前に、再生ケイ酸アルミニウムに添加されてもよい。
【0099】
可燃性炭素:
一般的に、可燃性炭素は、強熱減量(LOI:loss on ignition)法によって測定できる炭素である。この可燃性炭素は、粒子混合物中で注意深く制御される必要がある。再生ケイ酸アルミニウム材は、不燃性炭化物等の不燃性炭素を、一般的には非常に低濃度(微量)で含んでもよい。
【0100】
酸化鉄:
典型的には、酸化鉄含量は、蛍光X線分光法(XRF)によって測定される。
【0101】
バインダー:
適切な任意のバインダーは、有機バインダーである。適切な有機バインダーとして、ポリビニルアルコール、流動化剤(superplasticizer)、メチルセルロース、カルボメトキシセルロース、又はデキストリンが挙げられる。当業者は、他のバインダーを認識できるであろう。有機バインダーは液状であってもよい。
【0102】
セラミック粒子混合物、特に再生ケイ酸アルミニウム材を含むセラミック粒子混合物の流動性及び全体的なロバスト性を向上させるための一つの選択肢は、バインダー(粘性ポリマー等)を使用し、個々の粒子同士の接着を促進することである。あるいは、セラミック粒子混合物は、バインダーを含まなくてもよい。セラミック粒子混合物は、粘性ポリマーからなるバインダーを含まなくてもよい。セラミック粒子混合物は、故意に添加されたバインダーを含まなくてもよい。セラミック粒子混合物は、故意に添加された粘性ポリマーからなるバインダーを含まなくてもよい。そのようなバインダー、特に粘性ポリマーからなるバインダーを、セラミック粒子混合物の全体にわたって均一に分散させることは、特に乾式造粒プロセスを用いる場合、困難である場合がある。さらに、このようなバインダーの存在は、さらなるコストや、複雑さをもたらし、後続の処理を複雑にし得る。セラミック粒子混合物、特に再生ケイ酸アルミニウム材を含むセラミック粒子混合物の流動性と、処理のために必要とされる他の物理的特性とのバランスをとることが必要となる場合もある。
【0103】
粒径の測定方法:
粒度分布は、レーザー回析によって測定される。レーザー回析による粒径分析の望ましい基準は、ISO 13320:2009に示されている。適切な粒径分析機は、Malvern Instruments社のMastersizer 2000及び3000機器である。試験物質が初めに液体に分散されるウェット法ではなく、サンプルを圧縮空気によって分散することが好ましく(通常、Scirocco 2000ユニットによる)、その際、物質は粉末流として試験される。しかしながら、これらのセラミック混合物を、非水性液体中に分散し、試験することも可能である。測定は、通常、製造者の取扱説明書及び試験手順に従って行われる。
結果は典型的には、ISO 9276-2に準拠して表される。
【0104】
かさ密度の測定方法:
かさ密度は、ISO 697-1981に従って測定することができる。
【0105】
流動性の測定方法:
流動性は、100gのセラミック粒子混合物が、ISO 2431:2011に適合する修正フォード粘度カップ(Ford viscosity cup)から流れ出る時間を計ることによって測定できる。前記粘度カップは、多くの液体粘度測定で一般的に使用される4mmのオリフィスではなく、10mmの円形出口オリフィスに修正される。オリフィスは閉鎖され、容器は100gの粉末で満たされる。オリフィスはその後開口され、粉末がオリフィスを通って落ちるのに要した時間が測定される。
【0106】
可燃性炭素含量の測定方法:
可燃性炭素のレベルは、ASTM D7348による強熱減量(LOI)試験によって測定される。この試験では、サンプルを乾燥するために、まず1gのフライアッシュを110℃で乾燥する。このサンプルをその後冷却し、秤量する。次に、サンプルを2時間かけて段階的に950℃に達するまで加熱する。
【0107】
酸化鉄含量の測定方法:
酸化鉄のレベルは、蛍光X線によって測定される。再生ケイ酸アルミニウムの典型的な粒径は十分に小さく、この技術は精密測定に適している。この技術は、高エネルギーガンマ線又はX線を使用してサンプルを励起することで機能する。これは、存在する原子のイオン化を引き起こし、これは次いで原子の種類によって決まる固有周波数EM放射線を放射する。異なる周波数の強度分析は、元素分析を行うことを可能にする。適切な装置は、オリンパスによって供給されているXRF分析計のVartaシリーズである。この装置は、元素鉄を検出し、結果は最も一般的には、対応するFe23レベルに換算される。
【実施例
【0108】
前駆体物質の形成:
長石の砂(1.5%の水を含む)、クレイ(2.5%の水を含む)、及び石炭燃焼フライアッシュ由来の再生ケイ酸アルミニウム(0.1%の水を含む)を、粉砕システム中で、すりつぶして、5/45/50の重量比にてブレンドした。
【0109】
得られた混合物は、以下の組成を有する(ドライべースで):
長石物質 4.925 wt%
クレイ 43.875 wt%
再生ケイ酸アルミニウム 49.95 wt%
水 1.25 wt%
【0110】
粉砕後、上記組成物の99重量%より多くが、75μm未満の粒径を有した。
【0111】
次いで、上記組成物を、垂直型の高速ミキサーに、7000kg/hrの速度にて供給する。ミキサーの内径は0.6mで、入り口から出口までの高さは1.2mである。中心シャフトは、4対のミキサーブレード及び4対のノズルを有し、これらはシャフトの長さに沿って均一に、交互となるよう取り付けられている。垂直型ミキサーは、2000rpmで回転しており、235kg/hrの水がノズルを通じてミキサー内に注入され、部分的に加湿された混合物を作り出す。水分レベルは、オンラインでチェックされる。次いで、部分的に加湿された混合物は、2000rpmで作動する第二の同様のミキサーに通され、ここで、さらに235kg/hrの水が、加湿前駆体物質を形成するために注入される。加湿前駆体物質は、その後粗くふるいにかけられ、形成された大きなフラグメントを除去する。除去されるべきオーバーサイズの量は、1%未満である。
【0112】
加湿された前駆体物質は、以下の組成を有する。
長石物質 4.6 wt%
クレイ 41.1 wt%
再生ケイ酸アルミニウム 46.8 wt%
水 7.5 wt%
【0113】
前駆体物質を圧縮する:
前駆体物質を集めて容器に入れ、その後、GF-360ローラー圧縮機中に、300kg/hrで供給する。ローラー圧縮機は、約25kNのローラー推力及び30rpmの回転速度で作動する。前駆体物質を圧縮して、圧縮された前駆体物質を形成し、収集した。
【0114】
圧縮された前駆体物質を破砕する:
収集された、圧縮された前駆体物質を、次いでTWLY-4クラッシャー(2000rpmで作動し、1.1mmのギャップを有し、速度は最大で15t/hr)に供給し、次いでそれを破砕し、ばらばらにする。圧縮された前駆体物質を、破砕し、破砕された圧縮前駆体物質を形成する(あるいは破砕された前駆体物質として知られる)。この物質は、28%が600ミクロンより大きく、21%が100ミクロン未満であることが確認された。この物質を、その後、分級のための特大の袋に集めた。
【0115】
この物質は、「現状のまま」では、しばしばジャム状であり、流動性試験装置から全く流れ出さない。600ミクロンより大きい物質のフラクションを除去すると、流動性は~45s/100gとなる。
【0116】
破砕された前駆体物質を空気分級する:
次いで、破砕された前駆体物質を、1t/hrの速度で特大の袋の外に出し、25~30m/sの間の速度で、修正C-Series空気分級機内に、空気圧によって搬送する。C-Series空気分級機は、遠心式空気分級工程からの大きな粒子が、この装置の標準設計におけるように、重力式空気分離器からの特大サイズのもの(オーバーサイズ)とブレンドされないように修正されている。代わりに、遠心式空気分級工程からのオフテイクが、所望する最終製品である。遠心式空気分級機のローターは、粒子の崩壊を最小限にするため、及び100μ未満の物質の除去を最大化するために、低速で作動する。破砕された物質の約25%が、微粒子として除去され、23%がオーバーサイズとして除去される。
【0117】
得られた最終製品は、非噴霧乾燥式の乾式造粒セラミック粒子混合物であり、その92wt%が、80μmと600μmの間の粒径を有する。
前記非噴霧乾燥式の乾式造粒セラミック粒子混合物のかさ密度は、1050g/lである。
前記非噴霧乾燥式の乾式造粒セラミック粒子混合物は、本明細書に記載の方法で測定した際、9s/100gの流動性を有する。
【0118】
セラミック物品の製造プロセス:
次いで、前記非-噴霧乾燥式の乾式造粒セラミック粒子混合物は、以下のようにして、セラミックタイルに加工される。
【0119】
大きな粒子の影響を実証するために、「現状のまま」の破砕された圧縮前駆体物質から、グリーン物品タイルを作る。350gを、11cm・23cm及び深さ2cmの金型に入れる。次いで、それを7トンの力でプレスし、グリーンセラミック物品を形成する。タイルの表面は、本発明の仕様を満たす物質から製造された同様のタイルより、著しく粗い。
【0120】
本発明の仕様を満たす物質から作られたタイルを、その後、200℃の温度で1時間の期間にわたって加熱する。次いで、グレージング工程を行い、加圧された物品の上面にグレーズを塗布する。次いで、グレーズドグリーン物品を、1時間の間、1200℃まで連続的に増加する温度勾配にかけ、続いて20分間1200℃の温度にかけ、続いて1時間かけて90℃まで連続的に温度を減少する。その後、温度を周囲温度まで下げるために、さらに24時間、周囲条件に置く。