(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】複合金属酸化物半導体および薄膜トランジスタとその応用
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240123BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240123BHJP
H01L 21/363 20060101ALI20240123BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20240123BHJP
C01G 15/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 618F
H01L29/78 618A
H01L29/78 619A
H01L21/363
H01L21/368
C01G15/00 B
(21)【出願番号】P 2021543120
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2020114044
(87)【国際公開番号】W WO2021052219
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】201910881763.4
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】徐苗
(72)【発明者】
【氏名】徐華
(72)【発明者】
【氏名】呉偉敬
(72)【発明者】
【氏名】陳為峰
(72)【発明者】
【氏名】王磊
(72)【発明者】
【氏名】彭俊彪
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144841(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081885(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/024034(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/093625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/363
H01L 21/368
C01G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物に希土類酸化物がドーピングされた複合金属酸化物半導体であり、
前記金属酸化物は、酸化亜鉛や酸化ガリウムのいずれかまたは両方と酸化インジウムによって形成された金属酸化物半導体であり、前記希土類酸化物は、酸化プラセオジムおよび/または酸化イッテルビウムであり、希土類酸化物におけるプラセオジムおよび/またはイッテルビウムと金属酸化物とのモル比は、0.002-0.1:1であり、
前記複合金属酸化物半導体に、光生成キャリアの高速再結合中心が存在することを特徴とする、複合金属酸化物半導体。
【請求項2】
前記金属酸化物は、酸化亜鉛や酸化ガリウムのいずれかと酸化インジウムによって形成された複合金属酸化物であり、インジウムと亜鉛またはガリウムとのモル比の範囲は5:1-4であることを特徴とする、請求項1に記載の複合金属酸化物半導体。
【請求項3】
前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化ガリウムと酸化インジウムによって形成された複合金属酸化物であり、かつ3つの金属元素In、Ga、Znの原子比は、In/(In+Zn)≧0.76、0≦Ga/In≦0.8であることを特徴とする、請求項1に記載の複合金属酸化物半導体。
【請求項4】
プラセオジムおよび/またはイッテルビウムと金属酸化物のドーピングモル比は、0.02-0.10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の複合金属酸化物半導体。
【請求項5】
薄膜トランジスタであって、活性層を含み、前記活性層は、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の複合金属酸化物半導体で作製され、
光条件および非光条件下での前記薄膜トランジスタのオン電圧変化△V
on量は、2V未満であることを特徴とする、薄膜トランジスタ。
【請求項6】
基板、ゲート、ゲート絶縁層、ソース・ドレインおよびパッシベーション層をさらに有し、前記薄膜トランジスタは、エッチストップ型構造、バックチャネルエッチ型構造または自己整合型構造を採用することを特徴とする、請求項5に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記パッシベーション層は、シリカ薄膜、または窒化ケイ素とシリカからなる積層構造であることを特徴とする、請求項6に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
表示パネルまたは検出器における請求項5に記載の薄膜トランジスタの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造分野に関し、特に、フラットパネルディスプレイや検出器用途の金属酸化物半導体薄膜トランジスタのバックプレーンの製造に使用される材料およびデバイス構造に関し、具体的には、複合金属酸化物半導体および薄膜トランジスタとその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の金属酸化物半導体システムでは、In3+イオンの5s軌道が主な電子輸送チャネルである。しかし、単純なIn2O3薄膜では、InイオンがOイオンと結合した後の結合解離エネルギーが低いため、多数の酸素空孔欠陥が存在している。酸素空孔は、金属酸化物薄膜トランジスタの安定性を低下させる主な原因となっている。通常、酸素空孔を調整するために、In3+イオンと同量のGa3+イオンをドーピングする必要がある。
【0003】
同時に、半導体デバイスの性能の均一性を確保するために、金属酸化物半導体薄膜をアモルファス薄膜構造に維持する必要がある。ZnOの結晶構造は、In2O3やGa2O3とは大きく異なるため、Inイオンと同量のZnイオンを薄膜にドーピングすることで、材料の結晶化を抑制し、薄膜のアモルファス構造を維持することができる。そのため、現在の金属酸化物半導体材料の中で最も広く応用されているのは、IGZO(In:Ga:Zn=1:1:1 mol)である。しかし、IGZOでは、Ga3+やZn2+イオンを大量に添加すると、In3+の濃度が大きく希釈され、5s軌道のクロスオーバーの度合いが低下し、電子移動度が低下するという問題点がある。
【0004】
また、IGZOのような材料は、価電子帯付近に多数のトラップ状態のものを持っている。これにより、禁制帯幅以下の光エネルギーでも、光生成キャリアが生成されると同時に、価電子帯の付近で光生成正孔が生成される。しかも、これらの光生成正孔は、電界の作用によりゲート絶縁層に注入されやすく、これにより、従来の酸化物半導体に安定性が低いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を克服するために、本発明の1つ目の目的は、比較的高い移動度と高い光安定性を有する複合金属酸化物半導体を提供することである。この複合金属酸化物半導体は、金属酸化物に少量の酸化イッテルビウムや酸化プラセオジムなどの希土類酸化物をドーピングすることで、薄膜中の酸素空孔濃度を効果的に抑制するとともに、光生成キャリアの再結合中心を形成して、半導体の光に対する安定性を向上させることができる。
【0006】
本発明の2つ目の目的は、この複合金属酸化物半導体を含む薄膜トランジスタを提供することである。
【0007】
本発明の3つ目の目的は、この薄膜トランジスタの応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つ目の目的は、以下のような技術的解決手段によって実現される。
【0009】
複合金属酸化物半導体であって、この複合金属酸化物半導体は、金属酸化物に希土類酸化物をドーピングしたものであり、
前記金属酸化物は、酸化亜鉛や酸化ガリウムのいずれかまたは両方と酸化インジウムによって形成された金属酸化物半導体であり、前記希土類酸化物は、酸化プラセオジムおよび/または酸化イッテルビウムであり、希土類酸化物におけるプラセオジムおよび/またはイッテルビウムと金属酸化物とのモル比は、0.002-0.4:1であり、
前記複合金属酸化物半導体に、光生成キャリアの高速再結合中心が存在する。
【0010】
すなわち、本発明が提供する複合金属酸化物半導体は、酸化インジウムに基づく複合半導体であり、酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムは、比較的低いドーピング量で酸素空孔への抑制を実現することができ、よって、半導体は高い移動度の上で、光条件下の安定性を向上させることができる。
【0011】
さらに、前記金属酸化物は、酸化亜鉛や酸化ガリウムのいずれかと酸化インジウムによって形成された複合金属酸化物であり、インジウムと亜鉛またはガリウムとのモル比の範囲は5:1-4である。例として、In2O3:Ga2O3=5:4のような酸化インジウムガリウムを選択することができ、それは、ドープされていない状態で14.8 cm2・V-1・S-1の移動度を持ち、プラセオジムまたはイッテルビウムを0.1モル比でドーピングした後も9.5 cm2・V-1・S-1の移動度に維持し、または、In2O3:ZnO=2.5:1のような酸化インジウム亜鉛の場合、50 cm2・V-1・S-1以上の高い移動度を持ち、イッテルビウムまたはプラセオジムを0.2モル比でドーピングしても33 cm2・V-1・S-1以上の移動度を持つことができ、高い電流スイッチング比を維持する上で、良好な安定性と弱い光生成電流特性が得られる。
【0012】
さらに、前記金属酸化物半導体は、酸化亜鉛、酸化ガリウムと酸化インジウムによって形成された複合金属酸化物であり、かつ3つの金属元素In、Ga、Znの原子比は、In/(In+Zn)≧0.76、0≦Ga/In≦0.8である。例として、酸化インジウムガリウム亜鉛を選択することができ、In:Ga:Zn=3.170:1.585:1 (mol)の場合、酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムのドーピング可能なモル比が高く、イッテルビウムまたはプラセオジムを0.1モル比でドーピングしても10 cm2・V-1・S-1以上の移動度を持ち、または、In:Ga:Zn=3.170:2.536:1 (mol)のものであってもよい。
【0013】
より好ましくは、希土類酸化物におけるプラセオジムおよび/またはイッテルビウムと金属酸化物とのドーピングモル比は、0.02-0.40:1である。すなわち、このドーピング範囲では、酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムを用いることで、光生成電流特性をより好ましく抑制し、同時に、金属酸化物半導体により好ましい移動度を持たせることができる。さらに好ましくは、希土類酸化物におけるプラセオジムおよび/またはイッテルビウムと金属酸化物とのドーピングモル比は、0.10-0.20:1である。この範囲では、複合金属酸化物半導体は、移動度が比較的高く、108オーダー前後の電流スイッチング比を持ち、光安定性も非常に良好である。
【0014】
本発明の2つ目の目的は、以下のような技術的解決手段によって実現される。
【0015】
薄膜トランジスタであって、活性層を含み、前記活性層は、物理気相成長法、化学気相成長法、原子層堆積法、レーザー堆積法または溶液法によって上記複合金属酸化物半導体から作製される。
【0016】
すなわち、本発明はまた、この複合金属酸化物半導体に基づく活性層によって形成された薄膜トランジスタを提供し、光条件および非光条件下でのこの薄膜トランジスタのオン電圧変化△Vonは、2V未満である。またはさらに、△Vonは、1V未満である。
【0017】
さらに、前記活性層は、マグネトロンスパッタリング法によって作製され、スパッタリング空気圧が0.1-0.6Pa、スパッタリング雰囲気における酸素の体積が10-50%、基板温度が室温-300℃である。具体的には、シングルターゲットスパッタリングまたはコスパッタリングの方法を採用する場合、このようなスパッタリング条件では、均一な質感、良好な密着性、良好な膜質の活性層を堆積することができる。
【0018】
好ましくは、シングルターゲットマグネトロンスパッタリングによって薄膜トランジスタの活性層を作製する。
【0019】
さらに、基板、ゲート、ゲート絶縁層、ソース・ドレインおよびパッシベーション層を有し、前記薄膜トランジスタは、エッチストップ型(ESL型)構造、バックチャネルエッチ型(BCE型)構造または自己整合型構造を採用する。
【0020】
さらに、前記パッシベーション層は、シリカ薄膜、または窒化ケイ素とシリカからなる積層構造である。
【0021】
さらに、基板は、硬質のアルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラスやシリコン基板であってよく、軟質のポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)または金属フレークであってもよい。
【0022】
さらに、前記ゲートは、透明導電性酸化物、グラフェン、金属-酸化物半導体積層または金属-金属積層であってもよい。ここで、透明導電性酸化物は、ITO、AZO、GZO、IZO、ITZO、FTOを含み、金属-酸化物半導体積層は、ITO/Ag/ITO、IZO/Ag/IZOを含み、金属-金属積層は、Mo/Al/Mo、Ti/Al/Tiを含む。
【0023】
ゲートは、スパッタリング法、電気めっき、熱蒸着などの堆積方法で作製することができるが、スパッタリング堆積方法で作製した薄膜や基板の密着性が良く、均一性に優れ、大面積で作製できることから、その方法が好ましい。
【0024】
ここで、ゲート上のゲート絶縁層は、シリカ、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウムまたは高分子有機膜のうちの1つ以上の層を積層したものであってよい。ここで、ゲート絶縁層は、一方ではより良い絶縁特性を形成でき、他方では活性層とゲート絶縁層の界面特性を改善できるために、複数の絶縁膜を積層したものであってよい。また、このゲート絶縁層は、物理気相成長法、化学気相成長法、原子層堆積法、レーザー堆積法、陽極酸化法や溶液法など、様々な方法で作製することができる。
【0025】
また、バックチャネルエッチ型構造のデバイスの作製では、ソース・ドレイン電極と活性層のエッチング選択比を適切にする必要があり、そうでない場合はデバイスの作製ができないことに注意する必要がある。好ましいエッチング液は、過酸化水素系のエッチング液であり、その主な理由として、本発明の金属酸化物半導体材料は、過酸化水素系のエッチング液によるウェットエッチングに効果的に耐えることができ、且つ金属(モリブデン、モリブデン合金、モリブデン/銅、チタン/銅など)とのエッチング選択比が高く、この金属酸化物半導体層は、エッチング液の影響をほとんど受けず、従って、作製したデバイスは優れた性能と良好な安定性を有する。
【0026】
本発明の3つ目の目的は、以下のような技術的解決手段によって実現される。
【0027】
前記の薄膜トランジスタが表示パネルまたは検出器に応用される。
【0028】
本発明の原理は、以下のとおりである。
【0029】
本発明の複合金属酸化物半導体は、酸化インジウム系半導体に、O2-イオンとの間の結合エネルギーがそれぞれ753.0(ΔHf298、kJ/mol)、715.1(ΔHf298、kJ/mol)と高い酸化プラセオジムおよび酸化イッテルビウムをドーピングしたものであり、従来の酸化インジウムガリウム亜鉛半導体では、酸素空孔濃度を抑制するために濃度の高いガリウムが必要であったことに対し、本発明では、少量の希土類イオンをドーピングするだけで、酸化物半導体薄膜における酸素空孔濃度を効果的に制御することができる。したがって、相当量の酸素空孔濃度の条件で、ドーピング濃度を大幅に下げることができ、Inイオンの5s軌道の重なりを増やして材料の移動度を向上させるのに有利である。従来のIGZO材料と比較して、移動度が10 cm2/vsのみであり、プラセオジムイオンとイッテルビウムイオンをドーピングした新しい金属酸化物半導体の場合、デバイス移動度が50 cm2/vsと高い。
【0030】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0031】
本発明が提供する酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムをドーピングした酸化インジウム半導体は、比較的低いドーピング濃度で、薄膜中の酸素空孔を効果的に低減することができ、本発明の酸化インジウム半導体は、酸化インジウム亜鉛、酸化インジウムガリウムまたは酸化インジウムガリウム亜鉛半導体であってよく、従来の酸化インジウムガリウム亜鉛半導体と比較して、デバイスの移動度が実質的に影響を受けない。
【0032】
本発明が提供する複合金属酸化物半導体は、酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムをドーピングすると、エネルギーバンドのフェルミ準位付近にドーピングレベルを導入し、フェルミ準位付近の±0.3eV範囲に光生成キャリアの再結合中心を形成することができる。これらの再結合中心は、光生成キャリアの高速再結合チャネルを提供し、I-V特性や安定性への影響を回避することができる。さらに、金属酸化物半導体デバイスの光に対する安定性を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例9および実施例10の薄膜トランジスタの構造を示す模式図である。
【
図2】実施例11の薄膜トランジスタの構造を示す模式図である。
【
図3】実施例12の薄膜トランジスタの構造を示す模式図である。
【
図4】実施例9の光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレス(NBIS)を示す図である。
【
図5】実施例10の光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを示す図である。
【
図6】実施例11の光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを示す図である。
【
図7】実施例12の光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを示す図である。
【
図8】実施例7のプラセオジムアンドープ(y=0)、およびドープ(y=0.1)の酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜に対してPLスペクトルと寿命試験を行った特性評価結果を示す。
【符号の説明】
【0034】
01、基板;02、ゲート;03、ゲート絶縁層;04、活性層;05、エッチストップ層;06-1、ソース;06-2、ドレイン;07、パッシベーション層;08、バッファ層;09、スペーサ層。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面と具体的な実施形態と併せて本発明をさらに説明し、なお、矛盾しない前提下で、以下に説明する各実施例の間、または各技術的特徴の間で任意の組み合わせをして新しい実施例を形成することができる。
以下は、本発明の具体的な実施例であり、以下の実施例で採用されている原材料、設備などは、特に限定されない限り購入して入手することができる。
【0036】
実施例1:酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウム半導体材料
金属酸化物半導体材料群であって、この群の金属酸化物半導体材料では、酸化インジウムガリウム(IGO)に光安定剤として酸化イッテルビウムをドーピングすることにより、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウム(Yb:IGO)の半導体材料が形成される。
【0037】
ここで、酸化インジウムガリウムにおいて、In、Gaのモル比はIn:Ga=5:4であり、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウムにおいて、イッテルビウムと酸化インジウムガリウムのモル比は、順次0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60である。
【0038】
実施例2:酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛半導体材料
金属酸化物半導体材料群であって、この群の金属酸化物半導体材料では、酸化インジウム亜鉛(IZO)に光安定剤として酸化イッテルビウムをドーピングすることにより、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛(Yb:IZO)の半導体材料が形成される。
【0039】
酸化インジウム亜鉛において、In、Znのモル比はIn:Zn=5:1であり、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛において、イッテルビウムと酸化インジウム亜鉛のモル比は、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60である。
【0040】
実施例3:酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体材料
金属酸化物半導体材料であって、この金属酸化物半導体材料では、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)に光安定剤として酸化プラセオジムをドーピングすることにより、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛(Pr:IGZO)の半導体材料が形成される。
【0041】
酸化インジウムガリウム亜鉛において、In、Ga、Znのモル比はIn:Ga:Zn=3.170:1.585:1であり、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛において、プラセオジムと酸化インジウムガリウム亜鉛のモル比は、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60である。
【0042】
実施例4:酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体材料
金属酸化物半導体材料群であって、この群の金属酸化物半導体材料では、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)に光安定剤として酸化プラセオジムをドーピングすることにより、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛(Pr:IGZO)の半導体材料が形成される。
【0043】
酸化インジウムガリウム亜鉛において、In、Ga、Znのモル比はIn:Ga:Zn=3.170:2.536:1であり、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛において、プラセオジムと酸化インジウムガリウム亜鉛のモル比は、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60である。
【0044】
実施例5:酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウム薄膜
金属酸化物半導体薄膜群であって、この群の金属酸化物半導体薄膜は、実施例1の酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウム半導体材料をマグネトロンスパッタリングしてなったものである。
【0045】
この群の金属酸化物半導体薄膜では、酸化インジウムガリウム(IGO、y=0)および酸化イッテルビウムをドーピングした酸化インジウムガリウム(Yb:IGO、y=0.60)の2つのセラミックターゲットを用いて、コスパッタリングの方法によって薄膜を作製する。2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで、組成比の異なる薄膜を作製することができる。
【0046】
ここで、酸化インジウムガリウムターゲットの組成比はIn2O3:Ga2O3=5:4 (mol)であり、In(5)Ga(4)と記され、酸化イッテルビウムをドーピングした酸化インジウムガリウムターゲットの組成比はYb:In(5)Ga(4)=0.60:1.00 (mol)であり、すなわち、上記2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで、様々なイッテルビウム含有量の薄膜を得ることができ、本実施例におけるイッテルビウムと酸化インジウムガリウムのドーピングモル比yは、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60に等しい。
【0047】
膜厚はいずれも40 nmであり、スパッタリング雰囲気中の酸素含有量は20%であり、スパッタリング空気圧は0.5 Paであり、薄膜は、パターニングの前に、空气雰囲気下で350℃の高温オーブンで30分間アニールされた。薄膜の組成比は、X線光電子分光法と透過型電子顕微鏡などによる特性評価結果を組み合わせることにより標定され、ごく少量の薄膜はスパッタリングパワーによって推測され得る。
【0048】
実施例6:酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛薄膜
金属酸化物半導体薄膜群であって、この群の金属酸化物半導体薄膜は、実施例2の酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛半導体材料をマグネトロンスパッタリングしてなったものである。
【0049】
この群の酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛薄膜では、酸化インジウム亜鉛(IZO、y=0)および酸化イッテルビウムをドーピングした酸化インジウム亜鉛(Yb:IZO、y=0.60)の2つのセラミックターゲットを用いて、コスパッタリングの方法によって薄膜を作製する。2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで、組成比の異なる薄膜を作製することができる。ここで、酸化インジウム亜鉛ターゲットの組成比はIn2O3:ZnO=2.5:1 (mol)であり、In(5)Zn(1)と記され、酸化イッテルビウムをドーピングした酸化インジウム亜鉛のターゲット比例はYb:In(5)Zn(1)=0.60:1.00 (mol)であり、すなわち、上記2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで、様々なイッテルビウム含有量の薄膜を得ることができ、本実施例におけるイッテルビウムと酸化インジウム亜鉛のドーピングモル比yは、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60に等しい。
【0050】
なお、膜厚はいずれも20 nmであり、スパッタリング雰囲気中の酸素含有量は20%であり、スパッタリング空気圧は0.5 Paであり、薄膜は、パターニングの前に、空气雰囲気下で350℃の高温オーブンで30分間アニールされた。薄膜の組成比は、X線光電子分光法と透過型電子顕微鏡などによる特性評価結果を組み合わせることにより標定され、ごく少量の薄膜はスパッタリングパワーによって推測され得る。
【0051】
実施例7:酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜
金属酸化物半導体薄膜群であって、この群の金属酸化物半導体薄膜は、実施例3の酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体材料をマグネトロンスパッタリングしてなったものである。
【0052】
この群の酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜では、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO、y=0)と酸化プラセオジムをドーピングした酸化インジウムガリウム亜鉛(Pr:IGZO、y=0.60)の2つのセラミックターゲットを用いて、コスパッタリングの方法によって、2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで異なる組成比の薄膜を作製する。ここで、酸化インジウムガリウム亜鉛ターゲットの組成比はIn:Ga:Zn=3.170:1.585:1 (mol)であり、In(3.170)Ga(1.585)Zn(1)と記され、酸化プラセオジムをドーピングした酸化インジウムガリウム亜鉛のターゲット比例は、Pr:In(3.170)Ga(1.585)Zn(1)=0.60:1.00 (mol)であり、すなわち、上記2つのターゲットのスパッタリングパワーを調整することで、様々なプラセオジム含有量の薄膜を得ることができ、プラセオジムドーピング酸化インジウムガリウム亜鉛のモル比yは、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60に等しい。
【0053】
この群の酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜の膜厚はいずれも30 nmであり、スパッタリング雰囲気中の酸素含有量は20%であり、スパッタリング空気圧は0.5 Paであり、基板温度は200℃にされ、薄膜は、パターニングの前に、空气雰囲気下で350℃の高温オーブンで30分間アニールされた。薄膜の組成比は、X線光電子分光法と透過型電子顕微鏡などによる特性評価結果を組み合わせることにより標定され、ごく少量の薄膜はスパッタリングパワーによって推測され得る。
【0054】
実施例8:酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜
【0055】
金属酸化物半導体薄膜群であって、この群の金属酸化物半導体薄膜は、実施例4の酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体材料から、溶液法によって作製されたものである。
【0056】
この群の酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜は、溶液法によって作製され、具体的な方法は以下のとおりである。
【0057】
(1)まず、一定量の硝酸インジウム、硝酸亜鉛および硝酸ガリウム(三者の原子モル比はIn:Ga:Zn=3.170:2.536:1 molである)を比例的に秤量して、酸化インジウムガリウム亜鉛マトリックス溶液を調製し、In(3.170)Ga(2.536)Zn(1)と記し、すなわち、y=0、その後、特定の実験ニーズに応じて一定量の硝酸プラセオジムをドーピングし、異なるプラセオジム含有量のプラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛混合溶液を調製し、本実施例では、プラセオジムとIn(3.170)Ga(2.536)Zn(1)のドーピングモル比yは、それぞれ0.002、0.020、0.100、0.200、0.40および0.60に等しい。次に、各混合溶液にエタノールアミン、酢酸および溶媒のエチレングリコールモノメチルエーテルをそれぞれ加え、室温で12 h撹拌し、12 h静置して熟成させた後、ろ過して前駆体溶液(インジウム、ガリウム、亜鉛とプラセオジムの合計濃度が0.08 mol/L、エタノールアミンの濃度が1.2 mol/L、酢酸の濃度が1.4 mol/Lの淡黄色透明溶液)を得て、
(2)活性層を作製する必要がある基板をUVで30min処理し、表面の密着性を高めた後、シートをスピンコーターに載せ、ステップ(1)で得られた前駆体溶液60 μLをピペットガンで吸い取ってシートに滴下塗布し、20 s静置し、スピンコーターを起動し、プリスピード500 rpmで3 s、ポストスピード3000 rpmで40 s回転させ、前駆体溶液をシートに均一に塗布し、その後、120 ℃で10 minのプリベークアニール、次に450 ℃で120 minのポストベークアニールを行い、プラセオジムをドーピングした酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜(Pr:IGZOと命名)を得て、薄膜の厚さがいずれも40 nmである。
【0058】
実施例9:薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタ群であって、エッチストップ型構造を採用し、その構造模式図は
図1に示すとおりであり、前記薄膜トランジスタ群は、基板01と、基板01の上に配置されたゲート02と、基板01およびゲート02の上に配置されたゲート絶縁層03と、ゲート絶縁層03の上面を覆い、ゲート02に対応する活性層04と、エッチストップ層05と、互いに間隔をあけて活性層04の両端に電気的に接続されたソース06-1およびドレイン06-2と、パッシベーション層07と、を備える。
ここで、活性層04は、実施例5に記載の薄膜によって形成された活性層04であり、
基板01は、シリカのバッファ層で覆われたガラス基板であり、ゲート02の材料は、マグネトロンスパッタリング方法により作製された50/200/50 nmの厚さのモリブデン-アルミニウム-モリブデン(Mo/Al/Mo)金属積層構造であり、
ゲート絶縁層03は、化学気相成長法により作製された窒化ケイ素(Si
3N
4)とシリカ(SiO
2)の積層であり、厚さが250/50 nmであり、ここで、窒化ケイ素が下層でゲート02と接触し、シリカが上層で活性層04と接触する。
【0059】
エッチストップ層05とパッシベーション層07の材料は、化学気相成長法により作製されたシリカ(SiO2)薄膜であり、厚さはいずれも300 nmであり、成長温度は300℃である。
ソース06-1およびドレイン06-2の材料は、50/200/50 nmの厚さの金属モリブデン-アルミニウム-モリブデン(Mo/Al/Mo)積層構造である。
【0060】
実施例10:薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタ群であって、エッチストップ型構造を採用し、その構造模式図は
図1に示すとおりであり、前記薄膜トランジスタ群は、基板01と、基板01の上に配置されたゲート02と、基板01およびゲート02の上に配置されたゲート絶縁層03と、ゲート絶縁層03の上面を覆い、ゲート02に対応する活性層04と、エッチストップ層05と、互いに間隔をあけて活性層04の両端に電気的に接続されたソース06-1およびドレイン06-2と、パッシベーション層07と、を備える。
【0061】
ここで、活性層04は、実施例6に記載の薄膜によって形成された活性層04であり、
基板01は、シリカのバッファ層で覆われたガラス基板である。ゲート02の材料は、マグネトロンスパッタリング方法により作製された50/200/50 nmの厚さのモリブデン-アルミニウム-モリブデン(Mo/Al/Mo)金属積層構造である。
【0062】
ゲート絶縁層03は、化学気相成長法により作製された窒化ケイ素(Si3N4)とシリカ(SiO2)の積層であり、厚さが250/50 nmであり、ここで、窒化ケイ素が下層でゲート02と接触し、シリカが上層で活性層04と接触する。
【0063】
エッチストップ層05とパッシベーション層07の材料は、化学気相成長法により作製されたシリカ(SiO2)薄膜であり、厚さはいずれも300 nmであり、成長温度は230℃である。
【0064】
ソース06-1およびドレイン06-2の材料は、50/200/50 nmの厚さの金属モリブデン-アルミニウム-モリブデン(Mo/Al/Mo)積層構造である。
【0065】
実施例11:薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタ群であって、それはバックチャネルエッチ型構造であり、その構造模式図は
図2に示すとおりであり、前記薄膜トランジスタ群は、基板01と、基板01の上に配置されたゲート02と、基板01およびゲート02の上に配置されたゲート絶縁層03と、ゲート絶縁層03の上面を覆い、ゲート02に対応する活性層04と、互いに間隔をあけて活性層04の両端に電気的に接続されたソース06-1およびドレイン06-2と、パッシベーション層07と、を備える。
【0066】
基板01は、シリカのバッファ層で覆われた硬質の無アルカリガラス基板である。
【0067】
ゲート02の材料は、マグネトロンスパッタリング方法により作製された250/20 nmの厚さの金属銅/モリブデン(Cu/Mo)積層構造である。
【0068】
ゲート絶縁層03は、化学気相成長法により作製された窒化ケイ素(Si3N4)とシリカ(SiO2)の積層であり、厚さが250/50 nmであり、ここで、窒化ケイ素が下層でゲート02と接触し、シリカが上層で活性層04と接触する。
【0069】
活性層04は、実施例7で得られた薄膜であり、
ソース06-1およびドレイン06-2の材料は、250/20 nmの厚さの金属銅/モリブデン(Cu/Mo)積層構造であり、それは、活性層04へのダメージが少なく、エッチング残渣が目立たない市販の過酸化水素系エッチング液を用いてパターニングされる。
【0070】
パッシベーション層07の材料は、化学気相成長法により作製されたシリカ(SiO2)であり、厚さは300nmであり、成長温度は250℃である。
【0071】
実施例12:薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタ群であって、それは自己整合型構造であり、その構造模式図は
図3に示すとおりであり、前記薄膜トランジスタ群は、基板01と、バッファ層08と、活性層04と、活性層04の上に配置されたゲート絶縁層03およびゲート02と、活性層04およびゲート02の上面に覆われたスペーサ層09と、スペーサ層09の上に配置され、活性層04の両端に電気的に接続されたソース06-1およびドレイン06-2と、を備える。
【0072】
基板01は硬質のガラス基板である。
【0073】
バッファ層08は、プラズマ化学気相成長法により作製されたシリカである。
【0074】
活性層04の材料は、実施例8の薄膜である。
【0075】
ゲート絶縁層03は、300nmの厚さのシリカであり、ゲート02は、マグネトロンスパッタリング方法により作製された200/20 nmの厚さの銅/モリブデン(Cu/Mo)積層構造である。
【0076】
スペーサ層09は、シリカ/窒化ケイ素の積層構造であり、厚さは200/100 nmである。
【0077】
ソース06-1およびドレイン06-2の材料は、マグネトロンスパッタリング方法により作製された200/20 nmの厚さの銅/モリブデン(Cu/Mo)積層構造である。
【0078】
実施例9-12では、薄膜トランジスタの各機能層の材質と作製方法は以下のとおりである。
【0079】
本発明における基板は、特に限定されるものではなく、本分野で周知されている基板を使用することができる。例えば、硬質のアルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、シリコン基板などのほか、曲げ可能なポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)または金属フレークなどがある。
【0080】
本発明におけるゲート材料は、特に限定されるものではなく、本分野で周知されている材料から任意に選択することができる。例えば、透明導電性酸化物(ITO、AZO、GZO、IZO、ITZO、FTOなど)、グラフェン、金属(Mo、Al、Cu、Ag、Ti、Au、Ta、Cr、Niなど)およびそれらの合金、ならびに金属と酸化物(ITO/Ag/ITO、IZO/Ag/IZOなど)、金属と金属(Mo/Al/Mo、Ti/Al/Ti等)を積層して形成された複合導電薄膜がある。
【0081】
ゲート薄膜は、スパッタリング法、電気めっき、熱蒸着などの堆積方法で作製することができるが、スパッタリング堆積方法で作製した薄膜や基板の密着性が良く、均一性に優れ、大面積で作製できることから、その方法が好ましい。
【0082】
ここで、ゲート電極の具体的な構造は、達成すべき技術的パラメータに応じて決定する必要があり、例えば、透明なディスプレイには透明な電極を使用する必要がある場合、ゲート電極として単層のITOを使用してよく、ITO/Ag/ITOを使用してもよい。また、特殊分野の応用では高温のプロセスが要求されているが、ゲート電極は、高温に耐えられる金属合金薄膜を選択することができる。
【0083】
本発明におけるゲート絶縁層材料は、特に限定されるものではなく、本分野で周知されている材料から任意に選択することができる。例えば、シリカ、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、および高分子有機膜層などがある。
【0084】
なお、これらのゲート絶縁層薄膜の成分は、理論的な化学量論比とは一致しなくてもよいことに注意する必要がある。また、ゲート絶縁層は、一方ではより良い絶縁特性を形成し、他方では活性層とゲート絶縁層の界面特性を改善するために、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。また、このゲート絶縁層は、物理気相成長法、化学気相成長法、原子層堆積法、レーザー堆積法、陽極酸化法や溶液法など、様々な方法で作製することができる。
【0085】
実施例9-12の活性層の厚さの範囲は、5 nm-100 nmから選択できる。活性層を形成する金属酸化物半導体薄膜のキャリア濃度は、5×1019 cm-3未満である。
【0086】
活性層薄膜のパターニングプロセスは、フォトリソグラフィープロセスとウェットエッチングを組み合わせて行われる。ウェットエッチングに使用されるエッチング液には、リン酸、硝酸と氷酢酸の混合液、市販のシュウ酸系エッチャント、希塩酸系エッチャント、およびフッ化水素酸などのエッチング液がある。
【0087】
ソース・ドレイン電極薄膜のパターニング工程は、フォトリソグラフィープロセスとウェットまたはドライエッチングを組み合わせて行われる。ウェットエッチングに使用されるエッチング液には、リン酸、硝酸と氷酢酸の混合液、または過酸化水素による混合液などがある。ドライエッチングの例としては、プラズマエッチングプロセスを選択することができ、エッチングガスには塩素系ガスまたはフッ素系ガスが含まれる。
【0088】
金属酸化物半導体材料は、真空マグネトロンスパッタリングプロセスにおいて、シングルターゲットスパッタリングまたはマルチターゲットコスパッタリングを選択することができ、好ましくはシングルターゲットスパッタリングを選択する。
【0089】
その理由として、コスパッタリング薄膜では、スパッタリング粒子が再結合の過程でより多くの要因に妨害されるのに対して、シングルターゲットスパッタリングでは、再現性の高い安定した薄膜が得られ、薄膜の微細構造をより容易に制御する。
【0090】
真空スパッタリング堆積時の電源として、高周波電流(RF)、直流電流(DC)または交流電流(AC)から選択でき、産業界で一般的に使用されている交流電流が好ましい。
【0091】
スパッタリング堆積時のスパッタリング空気圧は、0.1 Pa-10 Paから選択でき、好ましくは0.2 Pa-0.7Paである。
【0092】
スパッタリング空気圧が低すぎると、安定したグロースパッタリングを維持することができず、スパッタリング空気圧が高すぎると、スパッタリング粒子が基板に堆積する際の散乱が著しく増加し、エネルギー損失が増加し、基板に到達する際の運動エネルギーが減少し、形成される薄膜の欠陥が増加するため、デバイスの性能に重大な影響を与える。
【0093】
スパッタリング堆積時の酸素分圧は0-1 Paから選択でき、好ましくは0.001-0.5 Pa、より好ましくは0.01-0.1 Paである。酸素体積比は、好ましくは0.1-0.5、より好ましくは0.2-0.3である。
【0094】
一般に、スパッタリングで酸化物半導体を作製する場合、酸素分圧は薄膜のキャリア濃度に直接な影響があり、また、酸素空孔に伴ういくつかの欠陥も発生する。酸素含有量が低すぎると、薄膜内の酸素不整合がひどくなり、キャリア濃度が増加する可能性があり、一方で、酸素空孔が高すぎると、より多くの弱結合を引き起こし、デバイスの信頼性を低下させる。
【0095】
スパッタリング堆積時の基板温度は、好ましくは室温-300℃、より好ましくは200-300℃である。
【0096】
活性層薄膜の堆積時に、特定の基板温度にすることで、スパッタリング粒子が基板に到達した後の結合方法を効果的に改善し、弱結合が存在する可能性を減らし、デバイスの安定性を高めることができる。もちろん、その後のアニール処理などのプロセスによっても同様の効果が得られる。
【0097】
活性層の厚さは2-100 nmから選択でき、好ましくは5-50 nm、より好ましくは20-40 nmである。
【0098】
本発明におけるソース・ドレイン電極材料は、特に限定されるものではなく、所望の構造を持つデバイスの実現に影響を与えることなく、本分野で周知されている材料から任意に選択することができる。例えば、透明導電性酸化物(ITO、AZO、GZO、IZO、ITZO、FTOなど)、グラフェン、金属(Mo、Al、Cu、Ag、Ti、Au、Ta、Cr、Niなど)およびそれらの合金、ならびに金属と酸化物(ITO/Ag/ITO、IZO/Ag/IZOなど)、金属と金属(Mo/Al/Mo、Ti/Al/Ti等)を積層して形成された複合導電薄膜がある。
【0099】
ソース・ドレイン電極薄膜は、スパッタリング法、熱蒸着などの堆積方法で作製することができるが、スパッタリング堆積方法で作製した薄膜や基板の密着性が良く、均一性に優れ、大面積で作製できることから、その方法が好ましい。
【0100】
ここで、特別に説明しておきたいものとして、バックチャネルエッチ型構造のデバイスの作製において、ソース・ドレイン電極と活性層のエッチング選択比を適切にする必要があり、そうでなければデバイスの作製は実現できない。
【0101】
本発明の実施例におけるウェットエッチングに使用されるエッチング液は、産業界における一般的な金属によるエッチング液(過酸化水素系のエッチング液など)であってよく、その主な理由として、本発明の金属酸化物半導体材料は、ウェット過酸化水素系のエッチング液のエッチングに効果的に耐えることができ、且つ金属(モリブデン、モリブデン合金、モリブデン/銅、モリブデン/チタンなど)とのエッチング選択比が高く、この金属酸化物半導体層は、エッチング液の影響をほとんど受けず、従って、作製したデバイスは優れた性能と良好な安定性を有する。
【0102】
また、本発明の実施例におけるドライエッチングは、産業界における一般的なエッチングガス(塩素系ガス、フッ素系ガスなど)に基づいており、本発明の酸化物半導体層への影響が非常に少なく、作製したデバイスは優れた性能と良好な安定性を有する。本発明におけるパッシベーション層材料は、特に限定されるものではなく、本分野で周知されている材料から任意に選択することができる。例えば、シリカ、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、および高分子有機膜層などがある。
【0103】
なお、これらの絶縁薄膜の成分は、理論的な化学量論比とは一致しなくてもよいことに注意する必要がある。また、ゲート絶縁層は、一方ではより良い絶縁特性を形成し、他方では活性層とパッシベーション層の界面特性を改善するために、複数の絶縁膜を積層したものであってよい。また、このパッシベーション層は、物理気相成長法、化学気相成長法、原子層堆積、レーザー堆積または溶液法など、様々な方法で作製することができる。
【0104】
以下、本発明で実施する薄膜トランジスタの作製における処理プロセスをさらに説明する。
【0105】
相対的に言えば、スパッタリングで作製した薄膜は、高エネルギーのプラズマが関与するため、一般的に薄膜の堆積速度が速く、且つ、薄膜の堆積中の緩和プロセスを行う時間が十分でないため、一定の割合でのズレや薄膜での応力残留が引き起こされる。このため、所望の相対的な定常状態と改善された薄膜の性能の達成を継続しながら、後に加熱アニール処理を行う必要がある。
【0106】
本発明の実施形態では、アニール処理は、活性層の堆積後、およびパッシベーション層の堆積後に設定されることがほとんどである。一方では、活性層を堆積した後にアニール処理を行うと、活性層中のin-situ欠陥を効果的に改善し、その後のプロセスで発生可能なダメージに対する活性層の耐性を高めることができる。他方では、その後のパッシベーション層の堆積では、プラズマの関与と反応性基の改質作用により、界面状態や一部のドナードーピングなどの影響をさらに排除するために、「活性化」の過程を必要とする可能性がある。
【0107】
また、本発明の実施形態では、処理は、単なる加熱処理ではなく、プラズマ処理界面(ゲート絶縁層/半導体界面、活性層/パッシベーション層界面など)を含んでもよい。
【0108】
上記の処理プロセスにより、デバイスの性能を効果的に改善し、デバイスの安定性を高めることができる。
【0109】
実施例9および10の薄膜トランジスタについては、基板、ゲート、ゲート絶縁層、活性層、エッチストップ層、ソースとドレイン、パッシベーション層のみを含む閉じた構造であってよいし、さらに平坦層、反射電極、画素定義層などを含んでもよく、さらに、他のデバイスなどと一体化してもよい。
【0110】
実施例11の薄膜トランジスタについては、基板、ゲート、ゲート絶縁層、活性層、ソースとドレイン、パッシベーション層のみを含む閉じた構造であってよいし、さらに平坦層、反射電極、画素定義層などを含んでもよく、さらに、他のデバイスなどと一体化してもよい。
【0111】
実施例12の薄膜トランジスタについては、基板、活性層、ゲート絶縁層、ゲート、スペーサ層、ソースとドレインのみを含む閉じた構造であってよいし、さらにパッシベーション層、および画素定義層などを含んでもよく、さらに、他のデバイスなどと一体化してもよい。
【0112】
実施例9-12で得られた薄膜トランジスタは、表示パネルに適用することができ、この場合、この薄膜トランジスタは、表示パネル内の表示ユニットを駆動するために用いられる。または、検出器に応用することもでき、この場合、この薄膜トランジスタは、検出器の検出ユニットを駆動するために用いられる。
性能検出と効果テスト
【0113】
1、光応答特性の評価
市販の白色LED光源を用いて、5000nitsの光強度で実施例9-12の薄膜トランジスタデバイスの活性層04に照射し、光照射時と無光照射時のデバイスの転送特性を評価し、デバイスのオン電圧の変化を抽出してその強度を評価し、ここで、デバイスのオン電圧は、ソース・ドレイン電極の両端に10-9Aの電流が流れるときに対応するゲート電圧と定義される。光応答特性は、光照射時と無光照射時のデバイスのオン電圧の変化範囲△Vonで表され、値が大きいほどその光生成電流特性が強く、逆に、値が小さいほど光生成電流特性が弱いことを示している。
【0114】
2、負ゲートバイアス光照射ストレスの評価
市販の白色LED光源を用いて、5000nitsの光強度で実施例9-12の薄膜トランジスタデバイスの活性層04に照射するとともに、デバイスのゲートに-30Vの電圧を印加し、ソース・ドレイン電極の両端に0Vのバイアスを印加し、一定の時間後のテストデバイスの転送特性曲線を調べることで、デバイスの光照射時の負バイアス安定特性を得ることができる。デバイス特性の変化範囲が大きいほど、その安定性が悪く、逆に、小さいほど安定性が優れる。
【0115】
3、フォトルミネッセンス分光法と寿命試験
原理的には、光は試料に照射されると、試料に吸収されて光励起現象が発生する。光励起により、電子は高い励起状態にジャンプし、その後、緩和プロセスを経てエネルギーを放出し、低いエネルギーレベルに戻る。このプロセスにおける光の放射または発光をフォトルミネッセンス、すなわちPLという。市販のPLテストシステムを用いて、本発明のドーピングされていない、およびドーピングされた薄膜試料に対してPL特性を評価し、照射後の薄膜における光生成キャリアの輸送を調べる。また、その寿命をテストして特性を明らかにすることで、その複合メカニズムをさらに評価する。
【0116】
実施例9の薄膜トランジスタ群のデバイス1-7の具体的なパラメータとデバイス性能を下表に示し、また、y=0.1のときのデバイスの光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを
図4(a)および4(b)に示す。
【0117】
実施例10の薄膜トランジスタ群のデバイス1-7の具体的なパラメータとデバイス性能を下表に示し、また、y=0.1のときのデバイスの光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを
図5(a)および5(b)に示す。
【0118】
実施例11の薄膜トランジスタ群のデバイス1-7の具体的なパラメータとデバイス性能を下表に示し、また、y=0.1のときのデバイスの光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを
図6(a)および6(b)に示す。
【0119】
実施例12の薄膜トランジスタ群のデバイス1-7の具体的なパラメータとデバイス性能を下表に示し、また、y=0.1のときのデバイスの光生成電流特性と負ゲートバイアス光照射ストレスを
図7(a)および7(b)に示す。
【0120】
表1-4からわかるように、希土類酸化物のドーピングは、デバイスの性能に非常に顕著な影響を与え、希土類酸化物がドーピングされていないデバイス(y=0に対応)は、比較的高い移動度、小さなサブスレッショルドスイングおよび負の閾値電圧を持っているが、その光生成電流特性は非常に強く、すなわち、光照射条件下でデバイスの特性が非常に大きく変化し、閾値電圧のマイナスシフトやサブスレッショルドスイングの激しい劣化が見られる。しかし、酸化イッテルビウムまたは酸化プラセオジムを一定量ドーピングすると、デバイスの光生成電流特性が大きく抑制される。もちろん、プラセオジムまたはイッテルビウムの含有量の増加に伴い、デバイスの移動度などの特性もさらに低下し、光応答特性△Vonは低下し、光生成電流特性はさらに向上する。プラセオジムまたはイッテルビウムを過剰にドーピングすると、デバイスの移動度は著しく低下し、デバイスの光生成電流特性が極めて弱くなるが、その応用分野が大きく制限される。したがって、実際の応用では、適当なドーピング量を選択するために、両者の関係にバランスを取る必要がある。表1-4からわかるように、希土類酸化物ドープ金属酸化物半導体のモル比、すなわち、y値は、閾値電圧、サブスレッショルドスイング、安定性と正の相関があり、移動度、電流スイッチング比、光生成電流特性と負の相関がある。
【0121】
図4-7からわかるように、希土類酸化プラセオジムまたは酸化イッテルビウムを一定量ドーピングすると、デバイスの光生成電流特性および負ゲートバイアス光照射ストレスが非常に優れており、その実用化の可能性が大きく高まっている。
【0122】
図8は、本発明の実施例7におけるプラセオジムアンドープ(y=0)およびドープ(y=0.1)酸化インジウムガリウム亜鉛薄膜に対してPLスペクトルと寿命試験を行った特性評価結果を示す。
図8(a)からわかるように、アンドープ試料の発光スペクトルの強度は弱く、プラセオジムをドーピングした後は全体の強度がさらに低下する。
図8(b)からわかるように、その寿命試験の結果から、キャリアの寿命はいずれも数ナノ秒であり、大きく変化していないことが示される。以上のことから、薄膜におけるキャリアの緩和プロセスは、非放射遷移の再結合過程であること、すなわち、薄膜には光生成キャリアの高速再結合中心が存在することが推測される。
【0123】
総合性能から考えると、表1からわかるように、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウムガリウム半導体薄膜によって形成された活性層では、yが0.02-0.40のときにデバイスの総合性能が好ましく、yが0.02-0.20のときにデバイスの総合性能がより好ましく、yが0.1-0.20のときにデバイスの総合性能が最も好ましく、表2からわかるように、酸化イッテルビウムドープ酸化インジウム亜鉛半導体薄膜によって形成された活性層では、yが0.02-0.40のときにデバイスの総合性能が好ましく、yが0.02-0.20のときにデバイスの総合性能がより好ましく、yが0.10-0.20のときにデバイスの総合性能が最も好ましく、表3からわかるように、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体薄膜によって形成された活性層では、yが0.02-0.40のときにデバイスの総合性能が好ましく、yが0.02-0.20のときにデバイスの総合性能がより好ましく、yが0.10-0.20のときにデバイスの総合性能が最も好ましく、表4からわかるように、酸化プラセオジムドープ酸化インジウムガリウム亜鉛半導体薄膜によって形成された活性層では、yが0.02-0.40のときにデバイスの総合性能が好ましく、yが0.02-0.20のときにデバイスの総合性能がより好ましく、yが0.10-0.20のときにデバイスの総合性能が最も好ましい。
【0124】
要約すると、本発明では、金属半導体材料に希土類酸化物がドーピングされるモル比は、好ましくは0.02-0.40、より好ましくは0.02-0.20、最も好ましくは0.10-0.20である。最も好ましい状態では、デバイスの閾値電圧が4V未満であり、サブスレッショルドスイングが0.40V/decade未満であり、電流スイッチング比が108ー109オーダーの間にあり、光生成電流特性が弱く、安定性に優れる。
【0125】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、当業者が本発明に基づいて行う実質的でない変更や置換は、本発明が特許請求している保護範囲内にある。