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  • 特許-加硫剤及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】加硫剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240123BHJP
   C07D 491/18 20060101ALI20240123BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20240123BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20240123BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240123BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20240123BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240123BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08L101/00
C07D491/18 CSP
C07D519/00
C07F7/08 C
C07F7/10 S
C08K3/011
C08L23/00
C08K5/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022540397
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2020073464
(87)【国際公開番号】W WO2021134854
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】201911418530.7
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】牛 慧
(72)【発明者】
【氏名】謝 詩▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲シュ▼慧
(72)【発明者】
【氏名】何 宗科
(72)【発明者】
【氏名】包 卓
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗英
(72)【発明者】
【氏名】華 哲
(72)【発明者】
【氏名】王 愛慧
(72)【発明者】
【氏名】尹 文静
(72)【発明者】
【氏名】王 晶
(72)【発明者】
【氏名】李 旭
(72)【発明者】
【氏名】孫 爽
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-232412(JP,A)
【文献】特開2017-052852(JP,A)
【文献】特開2008-056888(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043294(WO,A1)
【文献】特表2016-540073(JP,A)
【文献】特表2018-513329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物の少なくとも一種を含む、ことを特徴とする加硫剤。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【請求項2】
請求項1に記載の加硫剤の、重合体の加硫架橋における使用。
【請求項3】
重合体の加硫架橋反応は、重合体、加硫剤、開始剤、熱安定剤を原料として、溶融法により行われ、前記重合体と加硫剤の質量比が100:0.01~100:10であり、前記重合体と開始剤の質量比が100:0.01~100:1であり、前記重合体と熱安定剤の質量比が100:0~100:1である、ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記重合体は、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィンゴムから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記開始剤は、有機過酸化物またはアゾ系開始剤である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記熱安定剤は、ヒンダードフェノール系高分子型酸化防止剤、亜リン酸系酸化防止剤またはアルキルエステル系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項7】
前記重合体の加硫架橋方法は、
重合体、加硫剤、開始剤、熱安定剤を混合して予備混合原料を得るステップ1と、
前記予備混合原料を反応性加工機器に加えて、120℃以上で反応させるステップ2と、
生成物を押出して、冷却した後、架橋するステップ3とを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項8】
前記反応性加工機器は、一軸スクリュー押出機、双軸スクリュー押出機、開放式練りロール機、密閉式練りロール機のいずれか一種である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の加硫剤の技術分野に関し、具体的には、加硫剤及びその使用に関し、特に可逆架橋機能を有する加硫剤及びその重合体における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫は重合体を架橋する重要な手段であり、重合体が硫化して形成された3次元ネットワーク構造は、重合体材料により高い強度、温度安定性、耐化学応力亀裂性などを与えることができ、特にゴム系の重合体材料に対して、架橋改質によってのみ、使用過程で必要となる弾力性、反発弾性、強度、寸法安定性を持たせることができる。
【0003】
硫黄加硫は人類が最初に発見したゴムの架橋技術であり、加硫過程はゴム制品の物理的性能と化学的性能を極めて大きく改善させることができる。ここ二百年ぐらいの発展を経て、加硫技術として、過酸化物加硫、放射線加硫、官能基加硫などの方法が開発されていたが、硫黄加硫は原料の安価で、依然として最も経済的な方法としている。硫黄加硫系に硫化促進剤と活性剤を加えることで、さらに硫黄の使用量を減らし、加硫時間を縮め、加硫温度を下げることができる。有機過酸化物加硫とは、構造に1つまたは複数のペルオキシ結合(-O-O-)を含む化合物を利用し、そのホモリシスにより生成されるフリーラジカルにより、重合体分子間のフリーラジカル反応を起こし、架橋ネットワーク構造を形成することであり、過酸化物の架橋が飽和重合体の中で行われることができるので(通常、重合体に2wt%以上の過酸化物を加える必要がある)、飽和重合体(例えばエチレンプロピレンゴム)の硫黄加硫が難しいという問題が克服できる。放射線加硫は、高エネルギー放射線を利用して重合体分子を架橋させるという技術であり、過酸化物または硫黄等の硫化物の添加を省略することができ、その基本原理は、高エネルギー放射線が重合体基材を通過すると、重合体分子を活性化させてフリーラジカルを形成し、さらにこれらのフリーラジカル同士の結合により架橋ネットワークを形成することである。その以外、重合体の側基に反応基を導入することで架橋を実施することもでき、そのうち、ビニルシロキサンはポリオレフィンの架橋によく使われる一種の温和で効率的な機能性単量体であり、水の存在下で架橋反応を実施することができ、高度に架橋された材料が得られる。ジオレフィン加硫剤(例えばジビニルベンゼン)を用いて重合体を直接に架橋することも加硫方法の一種であり、ポリオレフィン樹脂の架橋改質に多く用いられている。
【0004】
加硫架橋は、現在、重合体材料の主な架橋技術として、その形成された架橋共有結合が不可逆性であって、架橋重合体の再加工が不可能となるので、材料に優れた性能を与える一方、重合体材料の回収と再利用が難しいという問題点がある。この背景下で、ゴムの脱硫回収技術もともに開発されて、天然ゴムやブチルゴムなどに代表される重合体ゴムの回収処理に用いられている。章明秋らは加硫天然ゴムの回収に対して大量の研究を行い、架橋ゴム中のジスルフィド結合の動的交換可逆反応を利用することで加硫天然ゴムの固相回収を実現できることを見出し(非特許文献1)、章氏らはメタクリル酸銅(MA-Cu)または塩化銅(CuCl)をジスルフィド結合の交換反応の触媒としてゴムに添加して、架橋ネットワークに動的特性を持たせ、これにより、120℃以上の温度で加硫天然ゴムの回収と再加工を実現し、既存の大量の加硫天然ゴム制品の再利用の方案を提供し、長期的な社会的意義がある。しかしながら、過酸化物架橋、放射線架橋、シラン架橋、ジビニルベンゼン架橋等の方法により生成されたのはより安定なC-C結合であるため、このような重合体の脱硫(脱架橋)がもっと困難になる。通常、熱処理と機械処理との組み合わせにより加硫架橋結合を破壊させるが、この過程により重合体の主鎖が切断され、脱硫して得られた生成物の25%しか再利用できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】高分子学術雑誌,2017,7,1130-1140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
架橋重合体の再利用を実現することは研究者と産業界の共通目標であり、重要な経済効果だけでなく、長期的な社会効果もある。しかし、全般的には、現在の技術は脱硫段階に集中していて、加硫架橋の元から架橋方法に対しての可逆化設計が求めていない。製造された架橋重合体が高温になると脱架橋し、冷却すると再び架橋するとの特性を有する新型の加硫剤を提供できれば、材料に繰り返し加工が可能な機能を持たせることができ、架橋重合体の回収が難しいという課題を根本的に解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は新型の加硫剤を提供することを目的とする。その加硫剤は、二つのα-オレフィン構造を少なくとも有し、[4+2]環の付加反応による生成物であり、前記加硫剤は例えば下記式(I)~(VI)のいずれか1つで表され、
【化1】

式中、
、Rが同一又は異なっていてもよく、アクリル酸エステル基、スチリル基またはビニルシリル基であり、または1~12個の炭素原子を含有する置換基で置換されたアクリル酸エステル基、スチリル基、ビニルシリル基であり、
、Rが同一又は異なっていてもよく、-O-、-NH-、-N(CH)-、または-N(C)-であり、
が脂肪族基、芳香族基、エステル基またはエーテル基であり、
が脂肪族基である場合、式Iまたは式IIにおいては-C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化2】

で表され、
が芳香族基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化3】

で表され、
がエステル基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C(C2m)(COO)-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化4】

で表され、
がエーテル基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化5】

で表され、
mが1~18の整数であり、xが1~8の整数であり、yが0~8の整数であり、
、Rが同一又は異なっていてもよく、-Hまたは-CHであり、
nが3または4である。
【0008】
本発明の式(I)で表される構造は、ビスマレイミドと置換フランまたは置換ピロールとのディールス・アルダー(Diels-Alder)反応([4+2]環付加反応)により直接的に製造して得られたものであり、または、ビスマレイミドと置換フランまたは置換ピロールとがディールス・アルダー反応した後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0009】
本発明の式(II)で表される構造は、ジエンと置換フランまたは置換ピロールとのディールス・アルダー反応により直接的に製造して得られたものであり、または、ジエンと置換フランまたは置換ピロールとがディールス・アルダー反応した後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0010】
本発明の式(III)で表される構造は、アルケニル基で置換されたシクロペンタジエン化合物自身がディールス・アルダー反応により二量化されて得られたものであり、またはアルケニル基で置換されたシクロペンタジエン化合物がディールス・アルダー反応により二量化された後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0011】
本発明の式(IV)で表される構造は、トリマレイミドまたはテトラマレイミドとアルケニル基置換のフランまたはアルケニル基置換のピロールとのディールス・アルダー反応により製造して得られたものであり、またはトリマレイミドまたはテトラマレイミドと置換フランまたは置換ピロールとがディールス・アルダー反応した後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0012】
本発明の式(V)で表される構造は、トリエンまたはテトラエンとアルケニル基置換のフランまたはアルケニル基置換のピロールとのディールス・アルダー反応により製造して得られたものであり、または、トリエンまたはテトラエンと置換フランまたは置換ピロールとがディールス・アルダー反応した後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0013】
本発明の式(VI)で表される構造は、置換マレイミドと置換フランまたは置換ピロールとのディールス・アルダー反応により直接的に製造して得られたものであり、または、置換マレイミドと置換フランまたは置換ピロールとがディールス・アルダー反応した後、置換基を修飾して製造して得られたものである。
【0014】
本発明は、上記新型加硫剤の重合体加硫架橋における使用を提供することを他の目的とし、重合体、加硫剤、開始剤を原料として、溶融法により実施する。前記重合体と加硫剤の質量比は100:0.01~100:10であり、前記重合体と開始剤の質量比は100:0.01~100:1であり、熱安定剤を加えてもよく、前記重合体と熱安定剤の質量比は100:0~100:1であり、熱安定剤の添加量が0であってもよい。
【0015】
前記重合体は、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィンゴムから選ばれる少なくとも一種である。
【0016】
好ましくは、前記重合体と加硫剤の質量比は100:0.1~100:5であり、前記重合体と開始剤の質量比は100:0.05~100:0.5であり、前記重合体と熱安定剤の質量比は100:0.1~100:0.5である。
【0017】
好ましくは、前記開始剤は、有機過酸化物またはアゾ系開始剤から選ばれる。
【0018】
さらに、好ましくは、前記有機過酸化物は、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド(dicumyl peroxide)、ジベンゾイルペルオキシド(Benzoyl peroxide)、tert-ブチルヒドロペルオキシドまたは2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである。
【0019】
さらに、好ましくは、前記アゾ系開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルまたは2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(2,2’-azobis(2,4-dlmethylvaleronitrile)である。
【0020】
好ましくは、前記熱安定剤は、ヒンダードフェノール系高分子型酸化防止剤、亜リン酸系酸化防止剤またはアルキルエステル系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種である。
【0021】
さらに、好ましくは、前記熱安定剤は、前記ヒンダードフェノール系高分子型酸化防止剤と亜リン酸系酸化防止剤の組み合わせである。
【0022】
最も好ましくは、前記熱安定剤は、酸化防止剤1010(テトラ[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸]ペンタエリスリトールエステル)と酸化防止剤168(トリ[2.4-ジ-tert-ブチルフェニル]亜リン酸エステル)である。好ましくは、前記酸化防止剤1010と酸化防止剤168の質量比は1:0.5~1:2である。
【0023】
好ましくは、前記重合体は、飽和ポリオレフィン樹脂または飽和ポリオレフィンゴムから選ばれる少なくとも一種である。
【0024】
さらに好ましくは、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン( poly(1-butene)等の単独重合体またはその共重合体樹脂等から選ばれる。
【0025】
さらに好ましくは、前記ポリオレフィンゴムは、エチレンプロピレンゴム、エチレン/高級α-オレフィン共重合体エラストマ、ブチルゴム、スチレン/イソブチレン共重合体ゴム等から選ばれる。
【0026】
好ましくは、前記重合体の加硫架橋方法は以下のステップを含む。
1)重合体、加硫剤、開始剤、熱安定剤を混合して予備混合原料を得るステップと、
2)前記予備混合原料を反応性加工機器に入れて、120℃以上で反応させるステップと、及び
3)生成物を押し出し、冷却した後、架橋を実施するステップとを含む。
【0027】
好ましくは、前記方法で使用される反応性加工機器は、一軸スクリュー押出機、双軸スクリュー押出機、開放式練りロール機、密閉式練りロール機のいずれか一種である。
【0028】
加硫剤が固体の形態である場合、加硫剤を溶媒で溶解させた後、重合体を混合する方法で均一に混合させる。なお、使用される溶媒は一般的に揮発しやすく且つ加硫剤または重合体と反応しないアセトン、エチルアルコール等であり、自然に発揮させて溶媒を除去する。
【0029】
本発明に係る新型の加硫剤は、可逆的共有結合を有する化合物であって、その分子中の官能基が高温下で(100~200℃の範囲内で、構造によって温度が異なる)、逆向ディールス・アルダー反応(逆向[4+2]環化付加反応)により二つの部分に分解され、その後、低温下で(0~120℃の範囲内で、構造によって温度が異なる)、ディールス・アルダー反応([4+2]環化付加反応)により、再結合して元の官能基になることができ、即ち、熱可逆的反応特性を有する。
【0030】
それと同時に、本発明に係る新型の加硫剤は、その分子末端基の二つまたは複数の二重結合が開始剤の作用下で重合体を化学的に架橋して、ネットワーク構造を形成し、重合体を強化させることができ、同時にディールス・アルダー反応の熱可逆性を利用して、重合体を加熱すると材料の脱架橋を実現して、材料に熱可塑性を持たせることができ、冷却後、再架橋してネットワーク構造を形成して、材料に繰り返し加工性と回収可能性を与えることができる。
【0031】
本発明は、上記加硫剤の、回収可能な架橋重合体材料の製造における使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例4で製造した架橋ゴム製品を細切した後、再び熱圧成形した図であり、そのうち、図(1)は本発明の加硫剤を加えた架橋ゴムサンプルであり、図(2)は該ゴムサンプルを細切した後の細切れであり、図(3)は細切れを再加工して成形した後、その性能が回復できたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の非制限的な実施例は、当業者に本発明をより完全に理解させることができるが、いかなる形態で本発明を限定するものではない。
【0034】
[実施例1]
新型の加硫剤の製造:
1.式(I)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Aの構造式は、以下の通りである。
【化6】
【0035】
合成方法を反応式1により示す。
反応物(1)の合成:フルフリルアルコール(6.43g,0.07mol)を20mlの水酸化ナトリウム(40wt%)の水溶液に入れて、攪拌しながら1時間反応させた。その後、上記混合液に10mlのトルエンを加え、5gの4-塩化ビニルベンジル(4-Vinylbenzyl chloride)と4.25gの水酸化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium hydroxide)水溶液(40wt%)を触媒として、室温下で、48時間反応させた。反応完了後、反応液に過剰の水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥してから、ろ過し、最後に回転蒸発して有機溶媒を除去して反応物(1)を得、収率が76%であった。
【0036】
反応物(2)のN,N’-(4,4’-メチレンジフェニル)ビスマレイミドは、商品であり(CAS 13676-54-5)、本実施例で使用したのは、安耐吉化学会社から購入したものである。
【0037】
加硫剤Aの合成:反応物(1)(8.00g,0.04mol)と反応物(2)(7.14g,0.02mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、窒素ガス雰囲気下で、60℃で24時間反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、反応液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、有機相を抽出し、有機相生成物を減圧蒸留して溶媒を除去した後、加硫剤Aを粘性の液体として得た。
【化7】
【0038】
2.式(II)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Bの構造式は、以下の通りである。
【化8】
【0039】
合成方法を反応式2により示す。
反応物(1)のフルフリルアルコールは商品(CAS 98-00-0)であり、本実施例で使用したのは、安耐吉化学会社から購入したものである。
【0040】
反応物(2)の1,4-ブタンジオールジアクリラート(1,4-butanediol diacrylate)は商品(CAS 1070-70-8)であり、本実施例で使用したのは、安耐吉化学会社から購入したものである。
【0041】
加硫剤Bの合成:反応物(1)(3.92g,0.04mol)と反応物(2)(3.96g,0.02mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、窒素ガス雰囲気下で、室温下で72時間反応させた。反応完了後、減圧して低沸点の液体を除去し、中間生成物Mを得た。中間生成物Mをジクロロメタンに溶解させ、3mLのトリエチルアミンを加え、窒素ガス雰囲気下で0.04molのメタクリルコリンクロリド(Methacryloyl chloride)を加え、室温で攪拌しながら4時間反応させ、反応完了後、減圧して低沸点の液体を除去し、最後に塩酸水溶液で生成物中の残りのトリエチルアミンを溶液のpH値が中性になるまで中和させ、洗浄液を分液して除水した後、加硫剤Bを得た。
【化9】
【0042】
3.式(III)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Cの構造式は以下の通りである。
【化10】
【0043】
合成方法を反応式3により示す。
反応物の合成:氷水浴の条件下で、2mlの新たに蒸留したシクロペンタジエン(1.6g,24.3mmol)をn-ブチルリチウム(24.2mmol)のn-ヘキサン溶液(100ml)に徐々に滴下して加え、室温の条件下で混合液を3時間反応させた。その後、溶媒を除去し、n-ペンタンで洗浄した後(3×50mL)、真空乾燥させた。-78℃の条件下で、上記製造されたLi(C)をテトラヒドロフラン(75mL)に溶解させ、ビニルジメチルクロロシラン(Vinyldimethylchlorosilane)(2.7g,22.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液に徐々に滴下して加え、0℃の条件下で、30分間反応させた後、室温で一晩反応させた。減圧蒸留して、発揮しやすい成分を除去し、n-ペンタンで抽出し(3×50mL)、ろ過して乾燥した後、最終的に反応物を得、収率が60%であった。
【0044】
加硫剤Cの合成:反応物(12.0g,0.08mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、室温で48時間反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、減圧蒸留して加硫剤Cを得た。
【化11】
【0045】
4.式(IV)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Dの構造式は以下の通りである。
【化12】
【0046】
合成方法を反応式4により示す。
反応物(1)の合成:窒素ガス雰囲気下で、TMEDA(14.33g,0.123mol)と1-メチルピロール(10g,0.123mol)を80mLの無水テトラヒドロフランに溶かし、77mLのn-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(1.6M)を徐々に滴下して加えて、30分間攪拌した後、0.123molのビニルジメチルクロロシランを加え、室温で12時間反応させた。水で洗浄してから、ジエチルエーテルで抽出して減圧蒸留した後、反応物(1)を得、収率が70%であった。
【0047】
反応物(2)の合成:30gの無水マレイン酸と25gのフランを300mlのトルエンに溶解させ、室温で36時間攪拌してから、ろ過した後、フランにより保護されている無水マレイン酸を白色固体粉末として得、収率が79%であった。かくはん棒、定圧ホッパー、戻り管を含む500mLのフラスコの中に150mLのメチルアルコールを加え、且つ上記のフランにより保護されている無水マレイン酸(5.66g,34mmol)を入れ、マグネットかくはん機を起動させて、全部溶解された後、0℃の条件下で、その定圧ホッパーに50mlのメチルアルコールで溶解された4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(triaminotriphenyl methane)(1.98g,6.85mmol)を徐々に滴下して加え、30分間で滴下完了した。3時間還流した後、混合液が黄色くなり、混合液を75mLまで濃縮して、4℃で結晶させた。ろ過して浅黄色の結晶体を得、50mLの酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥させた後、中間体Mを収率24%として得た。かくはん棒、戻り管を含む100mLのフラスコに30mLのトルエン、中間体M(0.5g,0.85mmol)を加え、マグネットかくはん機を起動させ、全部溶解された後、混合液を7時間冷却還流した。回転蒸発して乾燥した後、反応物(2)を得、収率が84%であった。
【0048】
加硫剤Dの合成:反応物(1)(4.96g,0.03mol)と反応物(2)(3.86g,0.01mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、窒素ガス雰囲気下で、60℃で48時間反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、減圧蒸留して低沸点液体を除去し、加硫剤Dを得た。
【化13】
【0049】
5.式(V)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Eの構造式は以下の通りである。
【化14】
【0050】
合成方法を反応式5により示す。
加硫剤Eの合成:ペンタエリトリトールテトラアクリラート(Pentaerythritol tetraacrylate)(3.52g,0.01mol)とフルフリルアルコール(3.92g,0.04mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、窒素ガス雰囲気下で、室温で72時間反応させた。反応完了後、減圧して低沸点の液体を除去し、中間生成物Mを得た。中間生成物Mをジクロロメタンに溶解させ、3mLのトリエチルアミンを加え、窒素ガス雰囲気下で0.04molのメタクリルコリンクロリドを加え、室温で攪拌しながら4時間反応させ、反応完了後、減圧して低沸点の液体を除去し、最後に塩酸水溶液で生成物中の残りのトリエチルアミンを溶液pH値が中性になるまで中和させ、洗浄液を分液して除水した後、加硫剤Eを得た。
【化15】
【0051】
6.式(VI)で表される構造を有する加硫剤
加硫剤Fの構造式は以下の通りである。
【化16】
【0052】
成方法を以下の反応式6により示す。
反応物(1)の合成:フルフリルアルコール(6.43g,0.07mol)を20mlの水酸化ナトリウム(40wt%)の水溶液に加え、攪拌しながら1時間反応させた。その後、上記混合液に10mlのトルエンを加え、5gの4-塩化ビニルベンジルと4.25gの水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(40wt%)を触媒として、室温で48時間反応させた。反応完了後、反応液に過剰の水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥してから、ろ過し、最後に回転蒸発して有機溶媒を除去した後、反応物(1)を得、収率が76%であった。
【0053】
反応物(2)の合成:無水マレイン酸とp-ビニルアニリンを酢酸エチルに溶かし、0℃で攪拌しながら1時間反応させた。その後、無水酢酸とトリエチルアミンを上記溶液に加え、55℃で1時間反応させた後、冷却して反応物(2)を得、収率が80%であった。
【0054】
加硫剤Fの合成:反応物(1)(8.00g,0.04mol)と反応物(2)(7.95g,0.04mol)を50mlのテトラヒドロフランに溶かし、窒素ガス雰囲気下で、60℃で24時間反応させる。反応完了後、室温まで冷却し、反応液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、有機相を抽出し、有機相生成物を減圧蒸留して溶媒を除去して、加硫剤Fを粘性の液体として得た。
【化17】
【0055】
[実施例2]
質量部で計算して、ポリプロピレン(メルトインデックスMFR=2.0g/10min,230℃,下記実施例でも同じである)100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.1質量部、本発明の加硫剤A2質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機(倍隆科亜南京機械有限会社)に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃で、スクリュー設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0056】
[実施例3]
質量部で計算して、ポリプロピレン100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤A5質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃で、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0057】
[実施例4]
質量部で計算して、エチレンプロピレンゴム(ムーニー粘度ML1+4=40,100℃,下記実施例でも同じである)100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、ジクミルペルオキシド(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤B5質量部を混合し、その後、混合物を開放式練りロール機(X(S)K-160,上海双翼椽塑機械有限会社)に入れて、ロール間隔0.7mm、ロール温度60℃の条件下で、ロールの通過及び三角の包みを5回行った後、2時間静置して、最終生成物を得た。
【0058】
[実施例5]
質量部で計算して、エチレンプロピレンゴム100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、ジクミルペルオキシド(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤C8質量部を混合し、その後、混合物を開放式練りロール機(X(S)K-160)に入れて、ロール間隔0.7mm、ロール温度60℃の条件下で、ロールの通過及び三角の包みを5回行った後、2時間静置して、最終生成物を得た。
【0059】
[実施例6]
質量部で計算して、エチレンプロピレンゴム100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、ジクミルペルオキシド(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤E5質量部を混合し、その後、混合物を開放式練りロール機(X(S)K-160)に入れて、ロール間隔0.7mm、ロール温度60℃の条件下で、ロールの通過及び三角の包みを5回行った後、2時間静置して、最終生成物を得た。
【0060】
[実施例7]
質量部で計算して、ポリプロピレン50質量部、ポリエチレン(メルトインデックスMFR=3.0g/10min,230℃,下記実施例でも同じである)50質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤C4質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃で、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0061】
[実施例8]
質量部で計算して、ポリプロピレン50質量部、ポリエチレン50質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤D5質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0062】
[実施例9]
質量部で計算して、ポリプロピレン80質量部、エチレンプロピレンゴム20質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.15質量部、3質量部本発明の加硫剤Dを混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0063】
[実施例10]
質量部で計算して、ポリエチレン100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤E2質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機にいれて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が170℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0064】
[実施例11]
質量部で計算して、ブチルゴム(ムーニー粘度ML1+4=75,100℃)100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、ジクミルペルオキシド(開始剤)0.1質量部、本発明の加硫剤C5質量部を混合し、その後、混合物を開放式練りロール機(X(S)K-160)に入れて、ロール間隔0.7mm、ロール温度60℃の条件下で、ロールの通過及び三角の包みを5回行った後、2時間静置して、最終生成物を得た。
【0065】
[実施例12]
質量部で計算して、ポリプロピレン40質量部、ポリエチレン40質量部、エチレンプロピレンゴム20質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部、本発明の加硫剤A5質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0066】
[実施例13]
実施例9で得られた生成物を35型双軸スクリュー押出機に再度入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0067】
[実施例14]
実施例13でえられた生成物を35型双軸スクリュー押出機に再度入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0068】
[実施例15]
質量部で計算して、ポリプロピレン80質量部、エチレンプロピレンゴム20質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.15質量部、本発明の加硫剤F8質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリュー設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0069】
[比較例1]
質量部で計算して、ポリプロピレン(メルトインデックスMFR=2.0g/10min,230℃,下記実施例でも同じである)100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.1質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機(倍隆科亜南京機械有限会社)に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0070】
[比較例2]
質量部で計算して、エチレンプロピレンゴム(ムーニー粘度ML1+4=40,100℃,下記実施例でも同じである)100質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、ジクミルペルオキシド(開始剤)0.2質量部を混合し、その後、混合物を開放式練りロール機(型番:X(S)K-160,上海双翼椽塑機械有限会社)に入れて、ロール間隔0.7mm、ロール温度60℃の条件下で、ロールの通過及び三角の包みを5回行った後、2時間静置して、最終生成物を得た。
【0071】
[比較例3]
質量部で計算して、ポリプロピレン50質量部、ポリエチレン(メルトインデックスMFR=3.0g/10min,230℃,下記実施例でも同じである)50質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.2質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0072】
[比較例4]
質量部で計算して、ポリプロピレン80質量部、エチレンプロピレンゴム20質量部、1010(酸化防止剤)0.1質量部、168(酸化防止剤)0.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(開始剤)0.15質量部を混合し、その後、混合物を35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0073】
[比較例5]
比較例4で得られた生成物を35型双軸スクリュー押出機に再度入れて溶融させた。押出機の溶融部の温度が160℃、反応部の温度が190℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃、スクリューの設定回転数が150rpmであり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、最終生成物を得た。
【0074】
上記実施形態で製造された改質ポリプロピレン樹脂の性能テスト結果を表1に示す。
【表1A】

【表1B】

表1は、改質ポリプロピレン樹脂の性能データを示す。
【0075】
まず、比較例と比べると、本発明の実施例において、重合体に本発明の加硫剤を加えたため、製造した重合体に架橋ネットワーク構造が形成される。このことは、実施例における重合体の力学的性能が著しく向上することから実証できる。実施例2と比較例1、実施例4と比較例2、実施例7と比較例3、実施例9と比較例4などを比べると、加硫剤を加えた材料の強度、曲げ弾性率等の性能が著しく向上しており、この結果は、本発明の加硫剤は顕著な架橋効果を発揮することができることを表明する。
【0076】
また、本発明の加硫剤は、可逆架橋機能を有する新型加硫剤であり、製造した架橋重合体は熱可逆架橋構造を有し、すなわち溶融加工状態で、架橋ネットワークが脱架橋(逆向ディールス・アルダー反応を利用する)でき、材料に熱可塑性を持たせることができる。すべての実施例の架橋重合体のサンプルは、溶融指数測定を行うことができ、これは該材料が熱可塑性を有することを示し、例えば、比較例4と実施例9の比較結果から分かるように、実施例9の重合体は架橋構造を有するため、その性能が比較例4の重合体より明らかに優れるが、2種の重合体の溶融指数が近づいており(即ち加工性能が近い)、このことは、本発明の加硫剤は、冷却するとネットワークを形成し、高温になるとネットワークを解除するという特性を有し、従来の加硫剤により形成された永久架橋ネットワークとは全く異なり、架橋重合体に優れた熱可塑性を付与していることを表明する。これにより架橋重合体の反復加工が可能となり、図1は、実施例4で製造した架橋ゴム製品が細切れになった後、再び熱圧成形できるとの特性を示している。
【0077】
また、本発明の加硫剤を用いて製造された架橋重合体は、複数回の加工を繰り返しても性能を良好に維持することができる。比較例5のサンプルは、比較例4の重合体の再度加工によるものであり、その性能が著しく低下して、強度が低下している(その1つの原因は、重合体の再加工による部分的分解であり、もう一つの原因は、相分離による性能の弱化である)。本発明の実施例13は、実施例12の重合体の二次加工によるものであり、実施例14は、実施例13の重合体の更なる再加工によるものであり、複数回の連続した加工処理を行っても、材料性能がほぼ維持され劣化してなく、これは、本発明の加硫剤の熱可逆架橋機能から取得し得た結果であり、繰り返し加工した後、依然として架橋構造が安定して回復でき、また、二相間の架橋構造は二相分離による問題点を補うことができ、性能を維持することができる。
【0078】
上述により、本発明の加硫剤は、可逆架橋機能を有する新型加硫剤であり、重合体の加工時に本発明の加硫剤を使用すると、高温時(加工時)に脱架橋できるので加工しやすく、低温時(成形後)に架橋を形成するので、高性能を有するという特徴がある。本発明の加硫剤は、廃プラスチック、ゴム回収時の性能強化にも利用できる。
【0079】
(付記)
(付記1)
二つのα-オレフィン構造を少なくとも有し、下記式(I)~(VI)のいずれか一つで表され、
【化18】

式中、
、Rが同一又は異なっていてもよく、アクリル酸エステル基、スチリル基またはビニルシリル基であり、又は1~12個の炭素原子を含有する置換基で置換されたアクリル酸エステル基、スチリル基、ビニルシリル基であり、
、Rが同一又は異なっていてもよく、-O-、-NH-、-N(CH)-、または-N(C)-であり、
が脂肪族基、芳香族基、エステル基またはエーテル基であり、
が脂肪族基である場合、式Iまたは式IIにおいては-C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化19】

で表され、
が芳香族基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化20】

で表され、
がエステル基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C(C2m)(COO)-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化21】

で表され、
がエーテル基である場合、式Iまたは式IIにおいては-(C2m-で表され、式IVまたは式Vにおいては
【化22】

表され、
mが1~18の整数であり、xが1~8の整数であり、yが0~8の整数であり、
、Rが同一又は異なっていてもよく、-Hまたは-CHであり、
nが3または4である、ことを特徴とする加硫剤。
【0080】
(付記2)
付記1に記載の加硫剤の、重合体の加硫架橋における使用。
【0081】
(付記3)
重合体の加硫架橋反応は、重合体、加硫剤、開始剤、熱安定剤を原料として、溶融法により行われ、前記重合体と加硫剤の質量比が100:0.01~100:10であり、前記重合体と開始剤の質量比が100:0.01~100:1であり、前記重合体と熱安定剤の質量比が100:0~100:1である、ことを特徴とする付記2に記載の使用。
【0082】
(付記4)
前記重合体は、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィンゴムから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする付記3に記載の使用。
【0083】
(付記5)
前記開始剤は、有機過酸化物またはアゾ系開始剤である、ことを特徴とする付記3に記載の使用。
【0084】
(付記6)
前記熱安定剤は、ヒンダードフェノール系高分子型酸化防止剤、亜リン酸系酸化防止剤またはアルキルエステル系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする付記3に記載の使用。
【0085】
(付記7)
前記重合体の加硫架橋方法は、
重合体、加硫剤、開始剤、熱安定剤を混合して予備混合原料を得るステップ1と、
前記予備混合原料を反応性加工機器に加えて、120℃以上で反応させるステップ2と、
生成物を押出して、冷却した後、架橋するステップ3とを含む、ことを特徴とする付記3に記載の使用。
【0086】
(付記8)
前記反応性加工機器は、一軸スクリュー押出機、双軸スクリュー押出機、開放式練りロール機、密閉式練りロール機のいずれか一種である、ことを特徴とする付記7に記載の使用。
図1