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特許7424684清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/17 20060101AFI20240123BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/884 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/233 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/8888 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/268 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/894 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/75 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K36/17
A61P31/14
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K36/484
A61K36/736
A61K33/06
A61K36/54
A61K36/884
A61K36/07
A61K36/284
A61K36/076
A61K36/233
A61K36/539
A61K36/8888
A61K36/9068
A61K36/28
A61K36/18
A61K36/268
A61K36/894
A61K36/75
A61K36/752
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/20
A61K47/36
A61P31/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022546454
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021073829
(87)【国際公開番号】W WO2021155751
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202010081961.5
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522302150
【氏名又は名称】中国中医科学院中医臨床基礎医学研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF BASIC RESEARCH IN CLINICAL MEDICINE,CHINA ACADEMY OF CHINESE MEDICAL SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛 又文
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107875278(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106132426(CN,A)
【文献】特開平09-309836(JP,A)
【文献】中医臨床,2008年,第29巻第1号,pp.56-57
【文献】中医臨床,2010年,第31巻第1号,pp.11-16
【文献】小児科診療,2004年,9号(59),pp.1431-1435
【文献】治療,2013年,Vol.95,No.10,pp.1699-1702
【文献】日本医事新報,2020年04月,No.5008,pp.44-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型コロナウィルス感染による肺炎の治療薬物の調製用の、
以下の重量部の漢方薬材料から作製されることを特徴とする、清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方
麻黄8-10部、炙甘草5-8部、杏仁8-10部、生石膏15-30部、桂枝8-10部、沢潟8-10部、猪苓8-10部、白術8-10部、茯苓15部、柴胡15-18部、オウゴン5-8部、姜半夏8-10部、生姜8-10部、紫苑8-10部、冬花8-10部、射干8-10部、細辛5-8部、山薬10-14部、枳実5-8部、陳皮5-8部、かっこう8-10部。
【請求項2】
前記漢方薬材料の重量部は、以下の通りであることを特徴とする、請求項1に記載の漢方薬複合処方
麻黄9部、炙甘草6部、杏仁9部、生石膏15-30部、桂枝9部、沢潟9部、猪苓9部、白術9部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜9部、紫苑9部、冬花9部、射干9部、細辛6部、山薬12部、枳実6部、陳皮6部、かっこう9部。
【請求項3】
前記漢方薬複合処方の剤型は、水煎剤、顆粒剤、膏剤、丸剤、散剤、丹剤又は錠剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の漢方薬複合処方
【請求項4】
請求項1又は2に記載の漢方薬複合処方にしたがって各々の漢方薬材料を秤量し、そのうちの生石膏に先に水を加えて煎じて煮出してから、残りの漢方薬材料を投入して合わせて煎じて煮出すことにより、煎煮液として得られることを特徴とする、清肺排毒湯剤の調製方法
【請求項5】
清肺排毒顆粒剤の調製方法であって
(1)煎煮:請求項1又は2に記載の漢方薬複合処方にしたがって各々の漢方薬材料を秤量し、そのうちの生石膏に先に水を加えて煎じて煮出してから、残りの二十種の漢方薬材料を加え、さらに水を加えて煎じて煮出し、煎煮液が得られること、
(2)濃縮:得られた煎煮液をろ過し、濃縮して水抽出濃縮物を得ること、
(3)造粒成型:水抽出濃縮物を原料とし、ステビオシド及び適量のデキストリンを加え、一括で造粒し、清肺排毒顆粒剤を得ること
を含むことを特徴とする、清肺排毒顆粒剤の調製方法
【請求項6】
清肺排毒の効果を有する薬物の調製に用いられる、請求項13のいずれか一項に記載の漢方薬複合処方
【請求項7】
ウィルス感染による肺炎の治療薬物の調製に用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の漢方薬複合処方
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬組成物に関し、具体的には、清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルス肺炎(Viral pneumonia)は、上気道がウィルスに感染した後、下へ下気道、ひいては気管支、肺部まで広がっている炎症であり、最もよく見られるのはインフルエンザウィルスの感染である。
【0003】
しかしながら、2020年1月12日に世界保健機関により2019-nCoVと正式に命名された2019新型コロナウィルスは、人体で発見されたコロナウィルスの新種の株である。当該ウィルスの症状は、一般的に発熱、無力、空咳であり、次第に呼吸困難などのウィルス肺炎の症状が現れ、重症者は、急性呼吸窮迫症候群、膿毒症ショック、及び是正しにくい代謝性酸中毒と凝血機能障害と表現される。このウィルスには人から人への感染が確認されており、潜伏期に感染性があり、それによる疾患には特異的治療方法がない。
【0004】
本願の出願日までに、複数の国で新型コロナウィルスの新型変異株が発見されてきたが、現在開発されている新型コロナウィルスワクチンは、変異新型コロナウィルスに対する有効性が確認されていない。そのため、新型コロナウィルス肺炎を効果的に治療できる薬物の研究開発は極めて必要がある。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に存在する問題を解決するために、本発明の目的は、ウィルス肺炎に対する治療を実現するように、清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方及びその応用を提供すること、特に2019新型コロナウィルス及びその変異ウィルスによるウィルス肺炎に対して有効な治療方案を提供することである。
【0006】
本発明の目的を実現するために、本発明の技術方案は以下の通りである。
【0007】
第一の側面において、本発明は、原料が以下の重量部の漢方薬材料を含む、清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方を提供する。
【0008】
麻黄8-10部、炙甘草5-8部、杏仁8-10部、生石膏15-30部、桂枝8-10部、沢潟8-10部、猪苓8-10部、白術8-10部、茯苓15部、柴胡15-18部、オウゴン5-8部、姜半夏8-10部、生姜8-10部、紫苑8-10部、冬花8-10部、射干8-10部、細辛5-8部、山薬10-14部、枳実5-8部、陳皮5-8部、かっこう8-10部。
【0009】
本発明に記載の漢方薬複合処方の組方は、漢方医の経典著作である漢代の張仲景著の「傷寒雑病論」を参考にし、必要に応じて麻黄杏仁甘草石膏湯(麻杏甘石湯と略称し、傷寒論63)、小柴胡湯(傷寒論96)、五苓散(傷寒論71)、射干麻黄湯(
)を加減してなる。処方における山薬、枳実、陳皮及びかっこうは、今回の新型コロナウィルス感染の肺炎の臨床症状に応じて加減する。
【0010】
そのうち、麻杏甘石湯は肺を宣通して邪気を追い払い、五苓散は湿濁を除き、三焦を通利させ、湿気を小便へ導き、毛穴や小便から湿気を取り除き、小柴胡湯は少陽枢機を調和し、射干麻黄湯は表証を治して水飲を逐し、逆気を降ろして咳を止め、かっこう、枳実、陳皮は消化器の気機を調和し、気の巡りを改善して濁を除して芳香の作用があり、胸腹部の濁気を排除して呼吸を楽にする。さらに、山薬は脾腎補し、正気を助ける。処方全体は湿濁を除き、肺を清め邪気を追い払い、気機を調和する役割を足す。
【0011】
好ましくは、前記漢方薬複合処方の原料は、以下の重量部の漢方薬材料:麻黄9部、炙甘草6部、杏仁9部、生石膏15-30部、桂枝9部、沢潟9部、猪苓9部、白術9部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜9部、紫苑9部、冬花9部、射干9部、細辛6部、山薬12部、枳実6部、陳皮6部、かっこう9部を含む。
【0012】
中でも、生石膏の用量は、患者の発熱の有無に応じて調整することができ、発熱がなければ生石膏の用量が小さく、患者が熱を出したり、高熱を出したりすれば生石膏の用量を増やす。
【0013】
さらには、前記漢方薬複合処方の剤型は、水煎剤(湯剤)、顆粒剤、膏剤、丸剤、散剤、丹剤又は錠剤であってもよいが、これに限らない。
【0014】
以上の剤型の具体的な調製方法については、本分野で常用される調製方法により行うことができ、好ましくは水煎剤や顆粒剤により薬物の治療効果を発揮する。
【0015】
従って、第二の側面において、本発明は、上述した漢方薬複合処方の選択可能な剤型で、水煎剤(湯剤)及び顆粒剤を例として、清肺排毒湯剤及び清肺排毒顆粒剤の調製方法をさらに説明する。
【0016】
具体的には、清肺排毒湯(水煎剤)であって、本発明に記載の漢方薬複合処方にしたがって各々の漢方薬材料を秤量し、そのうちの生石膏を先に水を加えて煎じて煮出してから、残りの漢方薬材料を投入して合わせて煎じて煮出すことにより、煎煮液として清肺排毒湯が得られる。
【0017】
具体的には、清肺排毒顆粒剤であって、その調製方法は、
(1)煎煮:前記漢方薬複合処方にしたがって各々の漢方薬材料を秤量し、そのうちの生石膏に先に水を加えて煎じて煮出してから、残りの二十種の漢方薬材料を加え、さらに水を加えて煎じて煮出し、煎煮液が得られること、
(2)濃縮:得られた煎煮液をろ過し、濃縮して水抽出濃縮物を得ること、
(3)造粒成型:水抽出濃縮物を原料とし、ステビオシド及び適量のデキストリンを加え、一括で造粒し、清肺排毒顆粒剤を得ること
を含む。
【0018】
好ましくは、以上の具体的な薬剤を調製するときに、使用される漢方薬材料は、漢方薬飲片である。
【0019】
第三の側面において、本発明は、前記漢方薬複合処方の清肺排毒の効果を有する薬物の調製における応用、特に新型コロナウィルス感染による肺炎の治療薬における応用を提供する。
【0020】
本発明は、前記漢方薬複合処方の、ウィルス感染による肺炎の治療薬の調製における使用をさらに提供する。
【0021】
言い換えれば、本発明は、前記漢方薬複合処方のウィルス感染による肺炎の治療薬の調製における応用を提供する。
【0022】
さらには、本発明は、前記漢方薬複合処方(並びに、前記清肺排毒湯剤又は前記清肺排毒顆粒剤)の、ウィルス肺炎の治療での応用、特に新型コロナウィルス2019-nCoV感染による肺炎の治療での応用を提供する。
【0023】
客観的な実験によると、本発明に記載の漢方薬複合処方は、新型コロナウィルス2019-nCoV感染による肺炎に対して良好な治療効果を有することが証明される。
【0024】
推薦として、前記漢方薬複合処方の使用方法は、一日一服で、水で煎じ、朝晩二回に分け(食後四十分後)、暖かいうちに服用する。条件があれば、毎回薬を服用してから半碗分の米スープを飲み、舌が乾いて津液不足である者は一碗を飲んでもよい。三服で1つの服用循環とする。患者が元の処方で1つの服用循環を完了すると薦めており、もし症状好転になったがまだ全治していない場合、第二の服用循環に入る。患者は特殊な状況或いは他の基礎疾患があれば、第二の服用循環は、実情に基づいて処方を修正してもよく、症状は完全に消失すれば服用を停止する。
【0025】
また、服用前に便秘があれば、防風通聖丸を追加する必要があり、大便が快通すれば丸薬の服用を停止する。
【0026】
本発明で言及される漢方薬材料の原料は、いずれも普通の市販品であり、また、本発明で言及される操作は、特に断りのない限り、いずれも本分野におけるルーチン操作である。
【0027】
本分野における常識にかなうことを基に、上述した好ましい各条件は、互いに組み合わせて具体的な実施形態を得てもよい。
【0028】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0029】
本発明では、今回の「新型コロナウィルス肺炎」の疾患症状の表現によると、新型コロナウィルス(2019-nCoV)感染による肺炎が漢方医における「寒疫」に属し、湿邪が多い。主な病位は肺に、次の病位は表衛、脾胃にある。主な病因は伏燥と湿寒邪気の混在することである。主な機構は疫毒の湿寒と伏燥が連合し、気の巡りが閉鎖され、昇降が失調すると考えられる。
【0030】
それによって、本発明は、前記漢方薬複合処方を提供し、多種の漢方薬を最適に組み合わせて治療を行う。現在、中国の数多くの省での年齢の異なる確診患者の治療状況によると、治療効果が確実である。関連する臨床観察研究は継続中である。
【0031】
本発明で提供される漢方薬複合処方(清肺排毒湯)は、中国国家漢方医薬管理局の応急科学研究専門項目である「漢方医薬による新型コロナウィルス感染肺炎の予防と治療での有効な漢方薬複合処方の臨床的スクリーニング研究」で使用される漢方薬複合処方であり、現在臨床治療に合わせて臨床的観察を行っており、関連研究は進め続けている。当該処方は、軽型、一般型、重型の患者に適用され、危重型患者の治療においても患者の実際の状況を把握して合理的に使用してもよく、良好な社会的利益がある。
【実施例
【0032】
(具体的な実施形態)
以下、実施例により本発明における好ましい実施形態について詳しく説明する。以下の実施例は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限する意図はないことが理解される。当業者であれば、本発明の趣旨及び精神から逸脱することなく、本発明を様々に修正や置換することができる。
【0033】
以下の実施例で使用される実験方法は、特に断りのない限り、いずれも常法である。
また、以下の実施例で使用される材料、試薬などは、特に断りのない限り、いずれも商業的に入手できる。
【0034】
実施例1
本実施例により、清肺排毒湯(水煎剤)及びその調製方法を説明する。
【0035】
一、原料(重量部で):
麻黄9部、炙甘草6部、杏仁9部、生石膏15-30部、桂枝9部、沢潟9部、猪苓9部、白術9部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜9部、紫苑9部、冬花9部、射干9部、細辛6部、山薬12部、枳実6部、陳皮6部、かっこう9部。
【0036】
中でも、生石膏の用量は、患者の発熱の有無に応じて、上述した用量の範囲で調整し、発熱がなければ生石膏の用量が小さく、患者が熱を出したり、高熱を出したりすれば、生石膏の用量を増やす。
【0037】
二、調製方法
上述した重量比で、漢方薬材料(漢方薬飲片)を秤量し、生石膏を先に水に加えて煎じて煮出してから、残りの漢方薬材料(漢方薬飲片)を投入して合わせて煎煮を行った。
【0038】
煎煮が完了した後、清肺排毒湯が得られた。
【0039】
実施例2
本実施例は、実施例1との違いが以下の通りである。
【0040】
原料(重量部で):
麻黄8部、炙甘草7部、杏仁10部、生石膏15-30部、桂枝8部、沢潟10部、猪苓10部、白術8部、茯苓14部、柴胡15部、オウゴン7部、姜半夏10部、生姜8部、紫苑10部、冬花8部、射干10部、細辛5部、山薬13部、枳実5部、陳皮7部、かっこう10部。
【0041】
実施例3
本実施例は、実施例1との違いが以下の通りである。
【0042】
原料(重量部で):
麻黄10部、炙甘草6部、杏仁8部、生石膏15-30部、桂枝10部、沢潟8部、猪苓8部、白術10部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜9部、紫苑8部、冬花9部、射干10部、細辛6部、山薬12部、枳実6部、陳皮5部、かっこう8部。
【0043】
実施例4
本実施例は、実施例1との違いが以下の通りである。
【0044】
原料(重量部で):
麻黄9部、炙甘草6部、杏仁10部、生石膏15-30部、桂枝9部、沢潟9部、猪苓10部、白術10部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜8部、紫苑9部、冬花10部、射干9部、細辛6部、山薬12部、枳実5部、陳皮6部、かっこう9部。
【0045】
実施例5
本実施例により、清肺排毒顆粒剤及びその調製方法を説明する。
【0046】
一、原料(重量部で):
麻黄9部、炙甘草6部、杏仁9部、生石膏15-30部、桂枝9部、沢潟9部、猪苓9部、白術9部、茯苓15部、柴胡16部、オウゴン6部、姜半夏9部、生姜9部、紫苑9部、冬花9部、射干9部、細辛6部、山薬12部、枳実6部、陳皮6部、かっこう9部。
【0047】
二、調製方法
【0048】
(1)煎煮:前記漢方薬複合処方にしたがって各々の漢方薬材料を秤量し、そのうちの生石膏に先に水を加えて煎じて煮出してから、残りの二十種の漢方薬材料を加え、さらに水を加えて煎じて煮出し、煎煮液が得られた。
【0049】
(2)濃縮:得られた煎煮液をろ過し、濃縮して水抽出濃縮物を得た、
【0050】
(3)造粒成型:水抽出濃縮物を原料とし、ステビオシド及び適量のデキストリンを加え、一括で造粒し、清肺排毒顆粒剤を得た。
【0051】
本実施例で調製された清肺排毒顆粒剤は、前記水煎剤に比べ、工業的生産でより良い見通しがあり、保存や輸送に有利で、より広い範囲の普及応用を実現しやすい。
【0052】
実験例1 本発明に記載の漢方薬複合処方による新型コロナ肺炎に対する治療効果
新型コロナウィルス感染による肺炎確診ケースに清肺排毒湯を投与して治療を行った。
【0053】
実施例1に記載の調製方法により前記清肺排毒湯を調製し、各服で、各漢方薬材料を重量部あたり1gとして秤量した。
【0054】
一日一服で、水で煎じ、朝晩二回に分け(食後四十分後)、暖かいうちに服用した。三服で1つの服用循環とした。条件があれば、毎回薬を服用してから半碗分の米スープを飲み、舌が乾いて津液不足である者は一碗を飲んでもよい。
【0055】
2020年12月1日まで、本発明に記載の漢方薬複合処方で調製された清肺排毒湯は、すでに中国の12省54都市60病院で、新型コロナウィルス感染による肺炎確診ケースの計1137名に投与された。無力、発熱、咳、咽頭痛、食欲不振及び映像学的などの症状変化を総合的に観察したデータから、以下のことが示された
【0056】
1137名の患者が服用した後、総有効率が約96.66%であった。中でも、1099名の患者が服用した後、症状が改善又は消失し、核酸検出の結果が陰性となり、完治で退院し、総観察ケースの約96.66%を占めた。また、残りの38名の患者は病勢が改善されず、総観察ケースの約3.34%を占めた。
【0057】
実験例2 本発明に記載の漢方薬複合処方による非新型コロナウィルスによる肺炎に対する治療効果
【0058】
非新型コロナウィルス感染(新型コロナウィルスの検出結果が陰性)のその他のウィルス肺炎ケースに清肺排毒湯を投与して治療を行った。
【0059】
実施例1に記載の調製方法により前記清肺排毒湯を調製し、各服で、各漢方薬材料を重量部あたり1gとして秤量した。
【0060】
一日一服で、水で煎じ、朝晩二回に分け(食後四十分後)、暖かいうちに服用した。三服で1つの服用循環とした。条件があれば、毎回薬を服用してから半碗分の米スープを飲み、舌が乾いて津液不足である者は一碗を飲んでもよい。
【0061】
2020年3月11日まで、本発明に記載の漢方薬複合処方で調製された清肺排毒湯は、2省2都市2病院(陝西省伝染病病院及びハルビン市伝染病院)の入院したウィルス肺炎(非新型コロナ肺炎)ケースの計62名に投与された。無力、発熱、咳、咽頭痛、食欲不振及び映像学的などの症状変化を総合的に観察したデータから、以下のことが示された。
【0062】
服用した59名の患者に有効であり、総有効率が約95.16%であった。中でも、59名の患者は服用した後、症状が改善又は消失し、総観察ケースの約95.16%を占めた。また、残りの3名の患者は服用した後、咳、無力などの症状があるが、最終的に何方も完治で退院し、総観察ケースの約4.84%を占めた。
【0063】
本発明に記載の漢方薬複合処方は、ウィルス肺炎に対して良好な治療効果があることを示した。
【0064】
実験例3 薬物安全性試験
本実験例では、本発明に記載の漢方薬複合処方の安全性を証明するために、実施例5で調製された清肺排毒顆粒剤を用い、薬物安全性試験を行った。
【0065】
1、試験の目的:
マウスに清肺排毒顆粒剤を経口投与して急性毒性の評価を行った。被検物が投与された動物の死亡状況を観察し、その最大耐量を測定した。そして、14日間での毒性症状及びその程度、毒性の出現と消失の時間を観察し続け、その他の安全性評価試験及び臨床試験に参考を提供する。
【0066】
2、試験方法:
体重18-21gのICRマウス140匹を、絶食体重で一群20匹ずつ、雄雌各半で、対照群及び清肺排毒顆粒剤104.5、122.9、144.6、170.1、200.2、235.5 g生薬/kgの6つの用量群という7群にランダムに分けた。約15h絶食した後、各投与群に対して、投与体積40mL/kgでいずれも1回経胃投与したのに対して、1回/日で対照群に等体積の純水を経胃投与し、投与後14日間観察し続け、15日目に絶食後の生存動物の剖検を行った。
【0067】
投与した後すぐに動物の毒性反応の有無、毒性症状及びその程度、毒性の出現と消失の時間を観察し、不良反応の具合を記録し、死亡動物に対して、動物の皮毛、眼、耳、口、鼻、生殖孔、肛門及びその粘膜の観察、主な組織器官として心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、胸腺、副腎、気管、食道、脳、精巣、精巣上体、子宮、卵巣などの観察を含む肉眼剖検を行った。そして、投与後1、2、3、5、7、10、14日目にマウスの体重及び飼料量を秤量し、14日目に観察期が終了した後絶食させ、以上と同様に生存動物に対して剖検を行った。
【0068】
3、試験結果:
清肺排毒顆粒剤を、104.5、122.9、144.6、170.1、200.2、235.5 g生薬/kg用量で、1回/日動物に経胃投与し、主な毒性反応として下痢、活動異常(自発活動の減少又は増加、静止などを含む)、おどろき反射、震顫及び急性死亡を観察した。
【0069】
144.6g生薬/kg及びそれ以上の用量群では、投与後動物死亡が認められたが、122.9g生薬/kg及びそれ以下の用量群では動物死亡が認められていなかった。また、動物死亡はいずれも投与後24h内で発生し、死亡のピークが投与後の120-370min内に現れた。上述した6つの用量群での動物の死亡率がそれぞれ0%、0%、5%、15%、10%及び15%であった。
【0070】
急性死亡以外、その他の肉眼で見える不良反応は、主に下痢、活動異常及びおどろき反射として表現された。144.6、170.1、200.2、235.5g生薬/kg用量群ではいずれも前記兆候に異なる変化が生じ、発生率がそれぞれ65%、75%、90%及び70%であり、投与後10min-410min内で発生し、かついずれも24h内で回復した。また、122.9g生薬/kg用量群では、軟便/下痢のみが現れ、投与後70-370min内で生じ、かつ40-310min内で回復し、発生率が30%であった。また、104.5g生薬/kg用量群では、肉眼で見える不良反応が認められなかった。ここから14日間の観察期が終わるまで、動物の一般的状況、活動、歩様、呼吸、摂食、摂水、二便、皮毛などのいずれにも異常が認められなかった。
【0071】
対照群と比較して、投与後14日間内で、清肺排毒顆粒剤の雄性動物170.1、200.2g生薬/kg用量群、雌性動物144.6、170.1、200.2、235.5g生薬/kg用量群では、投与後D1の体重が対照群よりも著しく低下した。また、雌性動物170.1、200.2、235.5g生薬/kg用量群では、摂食量D1も対照群よりも著しく減少した。また、投与後D2から14日間の観察期が終わるまで、各用量群では、各時点で体重及び摂食量が対照群に比べていずれも有意な統計的差異が認められなかった。
【0072】
14日後、すべての生存動物に対して剖検を行ったところ、顕著な肉眼病変が認められなかった。
【0073】
4、試験の結論:
用量の異なる清肺排毒顆粒剤を、投与体積40 mL/kgで、マウスに1回経口経胃投与すると、肉眼で見える不良反応は主に下痢、活動異常(自発活動の減少又は増加、静止などを含む)、おどろき反射、震顫及び急性死亡として表現され、また動物の不良反応はいずれも投与後24h内で生じ、すべての生存動物は投与後2日目に回復した。また、その最大耐用量が122.9g生薬/kgで、臨床上での最大使用量(196g生薬/人)の44倍であった。また、最大の無毒反応用量が104.5g生薬/kgで、臨床上での最大使用量の37倍であった。
【0074】
以上、一般的説明及び具体的な実施形態により本発明を詳しく説明したが、本発明を基に、いくつかの修正や改善を行っても良いことは、当業者であれば自明である。したがって、本発明の精神から逸脱することなく行った修正又は改善は、いずれも本発明で保護される範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に記載の清肺排毒機能を有する漢方薬複合処方は、漢方医の経典著作である漢代の張仲景著の「傷寒雑病論」を参考にし、必要に応じて麻黄杏仁甘草石膏湯(麻杏甘石湯と略称し、傷寒論63)、小柴胡湯(傷寒論96)、五苓散(傷寒論71)、射干麻黄湯(
)を加減してなり、多種の漢方薬を最適に組み合わせて治療を行い、新型コロナウィルス肺炎COVID-19の症状に対して顕著な治療効果がある。