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特許7424686高精密ライトスルー3D印刷に適したナノ粒子銅ペースト、製造及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】高精密ライトスルー3D印刷に適したナノ粒子銅ペースト、製造及び用途
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20240123BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240123BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20240123BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20240123BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240123BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240123BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240123BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20240123BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F1/12
B22F1/05
B33Y70/00
H01B1/22 A
H05K1/09 A
H05K1/09 D
B22F10/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022558451
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2022099086
(87)【国際公開番号】W WO2022262794
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】202110681236.6
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522378292
【氏名又は名称】芯体素(杭州)科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】ENOVATE3D (HANGZHOU) TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】陳 小朋
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105802344(CN,A)
【文献】特開2017-157531(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105632587(CN,A)
【文献】特表2013-504692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0241414(US,A1)
【文献】特開2011-142052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/00
H01B 1/00-1/22
C09D 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の重量部の原料成分を含む:50~90%銅粉、7~40%有機担体、1~20%銅粉保護剤、0~2%非導電性充填剤、各原料成分の添加比率は100%であり、ここで、前記有機担体は、原料成分に対して1~15%エポキシ樹脂、5~25%有機溶媒及び1~5%硬化剤からなり、
前記銅粉保護剤は、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物のいずれかまたはそれらの組み合わせであり、<100℃で銅粉が配位し、≧100℃で酸素原子が結合してオキソホスフィン化合物を形成することを特徴とする高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項2】
前記銅粉が50nm~5μmの銅ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項3】
前記銅粉が50nm~500nmの銅ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項4】
前記非導電性充填剤は、超微細カーボンパウダー、ナノグラフェン粉末、ベントナイト又はナノシリカ粉末のいずれか又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項5】
以下のステップを含む:
有機担体の製造:エポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、第1温度に加熱し、一定時間保持した後、エポキシ樹脂が完全に有機溶媒に溶解して予備担体を得て、その後、硬化剤を予備担体に添加して高速分散均一にし、そして第2温度に加熱し、一定時間エージングした後、有機担体を得て、その中の第1温度は第2温度より高い、
銅ペーストの調製:銅粉、銅粉保護剤、非導電性充填剤及び前記有機担体を混合して分散し、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを一定の細さに圧延し、濾過網で濾過して銅ペースト完成品を得たことを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は熱硬化性エポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、E -44エポキシ樹脂、ビフェニレンオキシ型エポキシ樹脂の一種またはその組み合わせに選択されることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項7】
前記硬化剤は、ポリチオール硬化剤、ジシアンジアミン硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれか、またはその組み合わせで選択されることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項8】
満足≧1μm線幅の高精密ライトスルー3 D印刷の用途であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【請求項9】
銅ペースト完成品を空気雰囲気下で10日間保管した後、焼結した銅線の抵抗率は10μΩ・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペーストに関し、特に高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト、製造及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
金属3 D印刷技術は伝統技術と比べて、新製品の研究開発と実現周期を短縮し、より複雑な構造を効率的に成形でき、一体化を実現し、軽量化設計を実現し、優れた力学性能を実現するなどの面で比類のない優位性を示した。現在、金属3 D印刷技術分野において、銀ナノ粒子は最も広く応用されており、これは銀ナノ粒子が焼結しやすく、導電性が高く、酸化防止によいなどの特徴を持っているため、さらに金属3 D印刷において良好に表現されている。しかし、銀材料は金属3 D印刷の原材料として致命的な欠陥を持っている:価格が高く、これも金属3 D印刷技術の発展と応用を大きく制限している。
【0003】
対照的に、銅材料の価格は銀材料に比べてより安価であり、銀材料と同様の導電性能を有する。しかし、銅のナノ材料は空気雰囲気中で酸化されやすいため、銅ペーストの製造および銅ペーストの保管中に、銅のナノ粒子の表面がCuOまたはCu2Oに酸化されやすくなり、さらに材料の導電性が著しく低下し、これは3 D印刷分野での銅ペーストの応用を大きく制限し、さらに多くの科学研究チームが金属3 D印刷に適した銅ナノ粒子と対応する銅ペーストの研究に力を入れている。
【0004】
例えば、南京工業大学が発表したCN104505137Aの「導電性銅ペースト及びその製造方法及び用途」には、銅ペーストの製造にシュウ酸、アスコルビン酸又はグルコースの一種を還元剤として添加する導電性銅ペーストの製造方法が提供されている。CN106981324Bの「銅導電性ペースト及びその製造方法及び用途」において、系に安定剤を添加し、焼結過程で酸化銅を還元することにより、低酸化銅含有量の導線線路を得て、その中で安定剤はクエン酸、アスコルビン酸、グルタルアルデヒドなどを含む。しかし、このような還元剤または安定剤の製造により得られるのはミクロン級の銅粒子であり、依然として高精密ライトスルー3D印刷の需要を満たすことができない、言い換えれば、高精密ライトスルー3D印刷では、特に10μm以下の線幅の印刷では、必要な材料は材料として100 nm級またはそれ以下のペーストであることが多いが、銅粒子のサイズが小さいほど対応する活性が高くなり、酸化されやすくなり、対応する従来技術ではナノ級の銅ペーストの製造と保護を達成することができなかった。また、このような銅ペーストに添加された還元剤や安定剤は、銅ナノ粒子の保護効果には限りがあり、1週間以上保管すると、表面が依然として完全に酸化されるため、焼結後の抵抗が顕著に大きくなるという問題がある。
【0005】
具体的には、還元剤として「アスコルビン酸」を例にとると、一定の還元性があるが、実際にはそれ自体が酸の一種であり、ナノ銅自体の表面の銅原子の反応活性が高いため、長時間の過程に銅ナノ粒子の表面がアスコルビン酸によって分解され(鉄や酸などの活性金属による化学反応と類似)、銅ナノ粒子自体の安定性が著しく低下し、また、実際に還元効果を発揮するのは、高温時に一酸化炭素が分解され、一酸化炭素は気体の一種であり、それは実際の焼結過程において銅粒子の表面との接触が不十分であるという問題があり、さらに還元効果が悪く、ナノスケールの銅粒子を製造し保護することができないという効果をもたらす。また、その高温分解された気体は、銅導線が焼結された後に緻密ではないという問題を引き起こすこともあり、さらに導電性能に影響を与え、高精密ライトスルー3D印刷にうまく適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
言い換えれば、高精密ライトスルー3D印刷には100 nmレベルの銅ナノ粒子が材料として必要であり、銅粒子のサイズが小さいほど対応する活性が高くなり、その製造と保存の過程で極めて酸化しやすくなるが、現在の導電性銅ペーストの製造技術ではこのコア問題を解決することはできず、さらに高精密ライトスルー3D印刷における銅材料の応用を制限している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト、製造及び用途を提供し、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン類化合物を還元剤として用い、銅ナノ粒子をエポキシ樹脂を含む油溶性ペーストに調製し、ナノ粒子銅ペーストの製造及び保管過程で酸化されやすい問題を解決し、ナノ粒子銅ペーストの導電性を高め、高精密ライトスルー3 D印刷に適しています。
【0008】
第1の態様では、本技術案は高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペーストを提供し、前記ナノ粒子銅ペーストは、以下の重量部の原料成分を含む:50~90%銅粉、原料成分に対して1~15%エポキシ樹脂、5~25%有機溶媒及び1~5%硬化剤からなる7~40%有機担体、1~20%銅粉保護剤、0~2%非導電性充填剤、各原料成分の添加比率は100%である。
【0009】
本発明では、選択する銅粉の平均粒径を100nm~5μmに制御し、このような利点は、異なる印刷線幅要件に応じて、適切な銅ナノ粒子を選択して銅ペーストを製造することができることである。
【0010】
前記銅粉保護剤は、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物のいずれかまたはそれらの組み合わせであり、それは室温と低温で銅粉と配位し、高温で酸素原子と結合してオキソホスフィン化合物を形成する。
【0011】
前記エポキシ樹脂の種類は制限されず、熱硬化性エポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、E-44エポキシ樹脂、ビフェニレンオキシ型エポキシ樹脂のいずれかまたはそれらの組み合わせを選択することができ、反応系におけるエポキシ樹脂の役割は、その疎水性を利用して、環境中の水分子の銅ナノ粒子に対する破壊を有効に遮断し、かつエポキシ樹脂は高温で容易に固結し、銅ペーストの基板への接着性を効果的に高めることができる。
【0012】
前記有機溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、二価エステル、イソフルオロケトン、トールまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルのいずれかまたはそれらの組み合わせであり、反応系における作用はエポキシ樹脂と硬化剤を溶解することである。
【0013】
前記硬化剤は、反応系における作用は、エポキシ樹脂を高温焼結する際に、迅速に硬化させ、印刷媒体とのより良好な接着を目的として、銅線と媒体材料の接着性及び導電性の安定性を効果的に向上させるために選択されたポリチオール硬化剤、ジシアンジアミン硬化剤、酸無水物系硬化剤である。
【0014】
前記有機担体の製造方法は以下の通りである:エポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、第1温度に加熱し、一定時間保持した後、エポキシ樹脂が完全に有機溶媒に溶解して予備担体を得て、その後、硬化剤を予備担体に添加して高速分散均一にし、そして第2温度に加熱し、一定時間エージングした後、有機担体を得て、その中の第1温度は第2温度より高い。本発明の実施形態では、第1温度は75~85℃の間に制御され、80℃であってもよく、第2温度は30~35℃の間に制御される。
【0015】
前記非導電性充填剤は、超微細カーボンパウダー、ナノグラフェン粉末、ベントナイト又はナノシリカ粉末のいずれか又はそれらの組み合わせである。前記非導電性充填剤は主に導電性ペーストの粘度とチクソトロピー性を調整し、ペーストに良好なレオロジー性能を得させ、印刷品質を向上させるために用いられる。すなわち、ナノ粒子銅を長時間保管しても再凝集しないように分散することがより好ましい。
【0016】
いくつかの具体的な実施形態では、ナノ粒子銅ペーストは、以下の原料成分及び重量部を含む:
75%銅粉、5%エポキシ樹脂、8%有機溶媒及び1%硬化剤を含む14%有機担体、10%銅粉保護剤、1%非導電性充填剤。
【0017】
いくつかの具体的な実施形態では、ナノ粒子銅ペーストは、以下の原料成分及び重量部を含む:
60%銅粉、10%エポキシ樹脂、11%有機溶媒及び2%硬化剤を含む23%有機担体、15%銅粉保護剤、2%非導電性充填剤。
【0018】
いくつかの具体的な実施形態では、ナノ粒子銅ペーストは、以下の原料成分及び重量部を含む:
80%銅粉、4%エポキシ樹脂、10%有機溶媒及び1%硬化剤を含む15%有機担体、5%銅粉保護剤。
【0019】
第2の態様では、本技術案は高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペーストを提供し、以下のステップを含む:
有機担体の製造:
エポキシ樹脂を有機溶媒に溶解し、第1温度に加熱し、一定時間保持した後、エポキシ樹脂が完全に有機溶媒に溶解して予備担体を得て、その後、硬化剤を予備担体に添加して高速分散均一にし、そして第2温度に加熱し、一定時間エージングした後、有機担体を得て、その中の第1温度は第2温度より高い。
銅ペーストの調製:
銅粉、銅粉保護剤、非導電性充填剤及び前記有機担体を混合して分散し、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを一定の細さに圧延し、濾過網で濾過して銅ペースト完成品を得た。
【0020】
本技術案が提供する製造方法では、初期ペーストを<1μmの細さまで10μm-20μmの濾過網を用いて濾過し、銅ペースト完成品を得た。予備担体段階を得る際に1時間、有機担体を得る段階を得る際に2時間保持し、十分なエージングタイムを提供する。
【0021】
以上の技術案に従って製造されたナノ粒子銅ペーストは満足≧1μm線幅の高精密ライトスルー3 D印刷。銅ペースト完成品を空気雰囲気下で10日間保管した後、焼結した銅線抵抗率は10μΩ・cm以下である。
【0022】
また、本技術案で製造されたナノ粒子銅ペーストは高精密ライトスルー3 D印刷に使用でき、ディスプレイパネル、電子部品、太陽電池パネルなどの電子業界の高精細導線の印刷に使用できる。
【0023】
本技術案は高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペースト、製造及び用途を提供し、製造したナノ粒子銅ペーストは高精密ライトスルー3 D印刷に適し、特に10μm以下の線幅印刷の場合、高精密ライトスルー3 D印刷に必要な材料は往々にして100 nm級またはそれ以下のサイズのペーストであるが、銅ペーストの粒度が小さいほど結果として生じるのは、銅粒子の界面活性が増加し、酸化されやすくなる、また、ナノ粒子の銅ペーストは印刷中に長時間空気中の水と酸素に接触する問題があり、長時間の環境暴露は銅ナノ粒子の表面が徐々に酸化され、最終的な導電性に影響を与えることもある。
【0024】
そこで、本技術案は銅ペーストの製造過程において、還元剤としてトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物を導入し、銅ナノ粒子をエポキシ樹脂を含む油溶性ペーストとして配置することにより、油溶性ペーストによって銅ナノ粒子に対する外部水分子の破壊を遮断することができ、そして銅ペーストの基板への接着性を向上させることができ、2つ目はトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物を用いてナノ粒子の銅表面に配位する原理、従来の一酸化炭素気体接触方式に比べて、銅表面保護の効率が向上し、また、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物は酸素原子と結合してホスフィン化合物を形成することができ、銅ナノ粒子の焼結時に形成される導電の性能に影響を与えない。言い換えれば、本技術案が提供する還元剤は室温で長時間安定し、空気中の酸素に酸化されにくく、それは銅ナノ粒子の製造及び印刷中の酸化の問題を効果的に抑制し、還元剤のペースト中の保存安定性を保証することができる。一方、焼結過程において、焼結温度の上昇に伴い、還元剤の還元性が徐々に上昇し、焼結雰囲気中に残留した酸素及び銅ナノ粒子表面が酸化されて形成された酸化物を効果的に消費することができ、製造によって得られたナノ粒子銅ペーストを長時間保管でき、印刷中も外部環境の影響を受けないようにする。
【0025】
本技術案で製造されたナノ粒子銅ペーストは満足≧1μm線幅の高精密ライトスルー3 D印刷。銅ペースト完成品を空気雰囲気下で10日間保管した後、焼結した銅線抵抗率は10μΩ・cm以下である。トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物は、室温または比較的低温では、ナノ銅表面が酸化されにくいように保護することができ、高温焼結時に表面が酸化された銅を、単体の銅に還元することができ、焼結後の銅線に良好な導電性を与えることができる。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1、高精密ライトスルー3 D印刷に適したナノ粒子銅ペーストを製造して銀ペーストの代わりにし、銀ペーストを材料とする場合に比べて、ナノ粒子銅ペーストは印刷材料のコストを大幅に削減でき、良好な導電性を保証することができる。
2、本技術案は、銅ナノ粒子をエポキシ樹脂を含む油溶性ペーストとして配置する、エポキシ樹脂は疎水性材料の一種として、銅ナノ粒子に対する水分子の破壊を効果的に遮断することができ、エポキシ樹脂は高温で硬化しやすい材料の一種として、銅ペーストの基板への接着性能を効果的に向上させることができる。
3、本技術案は還元剤としてトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物を用い、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物が銅ナノ粒子表面に配位することは銅を保護する効果を発揮し、銅粒子と反応する可能性は存在しない、また、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン系化合物の還元性は酸素原子と結合して酸素ホスフィン化合物を形成することができ、銅ナノ粒子の焼結時に形成する導電の性能に影響を与えない、しかし、従来技術の銅ペーストは、ライトスルー3 Dで印刷された銅線の導電性がスクリーン印刷後に焼結された銅線の問題より明らかに劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本技術案の実施例1で製造された銅ペースト完成品Aの保管1週間後焼結後の銅膜の抵抗率が85℃/85 RH環境下でのエージングデータである。
図2】本技術案の実施例1で製造された100~200 nmサイズの銅ペースト完成品Aの焼結前の走査電子顕微鏡図ある。
図3】本技術案の実施例1で製造された100~200 nmサイズの銅ペースト完成品Aの焼結後の走査電子顕微鏡図ある。
図4】本技術案は、実施例1と比較して製造された100~200 nmサイズの銅ペースト完成品Dの焼結前の走査電子顕微鏡図ある。
図5】本技術案は、実施例1と比較して製造された100~200 nmサイズの銅ペースト完成品Dの焼結後の走査電子顕微鏡図ある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の最良の実施形態
以下、本発明の実施例における図面と関連して、本発明の実施例における技術案を明確に、完全に説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が獲得した他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0029】
理解できることは、「1」という用語は、「少なくとも1つの「または」1つまたは複数の」と理解されるべきであり、すなわち、1つの実施例では、1つの要素の数は1つであってもよく、別の実施例では、要素の数は複数であってもよく、「1」という用語は、数の制限として理解されない。
【0030】
以下、特定の実施例を用いて本発明の実施形態を説明する。この技術に詳しい人は、本明細書で開示された内容から本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明の保護範囲は以下の特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。本発明の実施例で使用される用語は、本発明の保護範囲を制限するためではなく、特定の具体的な実施形態を記述するために使用されることも理解されるべきである。以下の実施例に具体的な条件が記載されていない試験方法は、通常、従来の方法、または各メーカーが提案する条件に従っている。
【0031】
実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂8 gを秤量し、15 gの酢酸ブチル溶媒に溶解し、80℃に加熱して1時間保持し、完全に溶解して予備担体を得て、酸無水物系硬化剤1 gを秤量し、予備担体に添加し、高速分散機で高速分散を行い、均一に分散した後、30-35℃に加熱して2時間エージングし、有機担体を得て、100~200 nmの銅粉末70 g、還元剤トリフェニルホスフィン5 g、非導電性充填剤ナノグラフェン粉末0.2gと50 nmのシリカ粉末0.8 gを秤量し、前記有機担体と混合機で十分に混合し、さらに高速分散機を用いて高速分散を行い、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを3ロール機で6回のロール圧延を行い、<1μmの細さまで、そして10μmの濾過網を用いて濾過し、得られた銅ペースト完成品A。
【0032】
本発明の実施形態
実施例2
E-44エポキシ樹脂6 gを秤量し、10 gのポリエチレングリコール溶媒に溶解し、80℃に加熱して1時間保持し、完全に溶解して予備担体を得て、ポリチオール硬化剤0.5 gを秤量し、予備担体に添加し、高速分散機で高速分散を行い、均一に分散した後、30-35℃に加熱して2時間エージングし、有機担体を得て、500~600 nmの銅粉70 g、還元剤トリオクチルホスフィン5 g、非導電性充填剤ナノグラフェン粉末0.2gと50 nmのシリカ粉末0.8 gを秤量し、前記有機担体と混合機で十分に混合し、さらに高速分散機を用いて高速分散を行い、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを3ロール機で6回のロール圧延を行い、<1μmの細さまで、そして10μmの濾過網を用いて濾過し、得られた銅ペースト完成品B。
【0033】
実施例3
ビフェニレンオキシド型エポキシ樹脂5 gを秤量し、7 gのジエチレングリコールエチルエーテルアセテート溶媒に溶解し、80℃に加熱して1時間保持し、完全に溶解して予備担体を得て、ジシアンジアミン硬化剤0.5 gを秤量し、予備担体に添加し、高速分散機で高速分散を行い、均一に分散した後、30-35℃に加熱して2時間エージングし、有機担体を得て、1~2μmの銅粉末70 gと還元剤トリメチルフェニルホスフィン5 gを秤量し、前記有機担体と混合機で十分に混合し、さらに高速分散機を用いて高速分散を行い、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを3ロール機で6回のロール圧延を行い、<1μmの細さまで、そして10μmの濾過網を用いて濾過し、得られた銅ペースト完成品C。
【0034】
対照実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂8 gを秤量し、15 gの酢酸ブチル溶媒に溶解し、80℃に加熱して1時間保持し、完全に溶解して予備担体を得て、酸無水物系硬化剤1 gを秤量し、予備担体に添加し、高速分散機で高速分散を行い、均一に分散した後、30-35℃に加熱して2時間エージングし、有機担体を得て、100~200 nmの銅粉70 g、還元剤アスコルビン酸5 g、非導電性充填剤ナノグラフェン粉末0.2gと50 nmのシリカ粉末0.8 gを秤量し、前記有機担体と混合機で十分に混合し、さらに高速分散機を用いて高速分散を行い、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを3ロール機で6回のロール圧延を行い、<1μmの細さまで、そして10μmの濾過網を用いて濾過し、得られた銅ペースト完成品D。
【0035】
対照実施例2
有機担体として酢酸ブチル24 gを秤量し、100~200 nmの銅粉末70 g、還元剤トリフェニルホスフィン5 g、非導電性充填剤ナノグラフェン粉末0.2gと50 nmのシリカ粉末0.8 gを秤量し、前記有機担体と混合機で十分に混合し、さらに高速分散機を用いて高速分散を行い、均一な初期ペーストを得て、初期ペーストを3ロール機で6回のロール圧延を行い、<1μmの細さまで、そして10μmの濾過網を用いて濾過し、得られた銅ペースト完成品E。
【0036】
抵抗率測定実験
製造した導電性銅ペーストを3 D印刷装置を通じてシリコンシートなどの基板に印刷し、100℃で乾燥した後、炉に入れて窒素雰囲気で焼結し、焼結手順は30~300℃の昇温速度は10℃/min、300℃で30 min焼結した。焼結後に導電性銅膜を得て、硬化後の銅膜に対して四プローブ抵抗試験器(Advance Riko、型番ZEM-3 M10)を用いて抵抗率試験を行った。
【0037】
得られた実験結果は以下の表1の通りである:
表1銅ペースト完成品の抵抗率の測定
【表1】
【0038】
表1のデータから、銅ペースト完成品A/B/Cの抵抗率は銅ペースト完成品Dと銅ペースト完成品Eよりはるかに低く、本技術方案が提供した条件で銅ペーストを製造して得た導電性もより良いことを説明した。
【0039】
保管時間測定実験:
本特許で開発された銅ペースト完成品の保存安定性が実際の商業応用の需要を満たすことができることを検証するために、異なる銅ペースト完成品を室温で一定の時間放置し、上述の同じプロセスに基づいて、焼結後に相応の銅膜を製造し、抵抗率測定試験を行った。
【0040】
得られた実験結果を下表2に示し、10日間保管した後の銅ペースト完成品A焼結後の銅膜の抵抗率85℃/85 RH環境下でのエージングデータを図1に示す。
表2銅ペースト完成品の保管時間と抵抗率の関係
【表2】
【0041】
表2のデータから、銅ペースト完成品A/B/Cは長時間保管時の安定性もより良く、かつ銅ペースト完成品は空気雰囲気下で10日間保管し、焼結した銅線抵抗率は10μΩ・cm以下。
【0042】
走査電子顕微鏡実験:
実施例1で得られた銅ペースト完成品Aと対照実施例1で得られた銅ペースト完成品Dを試験サンプルとし、銅ペースト完成品Aの銅ペースト焼結前の走査電子顕微鏡図と焼結後の走査電子顕微鏡図を図2図3に、銅ペースト完成品Dの銅ペースト焼結前の走査電子顕微鏡図と焼結後の走査電子顕微鏡図を図4図5に示す。図から明らかに見える:銅ペースト完成品Aは焼結後に形成された銅膜は非常に緻密で、表面はより滑らかである;これに対応して、銅ペースト完成品Dの銅ペーストは表面が酸化されることによりCuOまたはCu2Oを形成し、同じ焼結温度では緻密な銅膜を形成することができないため、走査電子顕微鏡には依然として明らかな銅ナノ粒子が見られ、銅ペースト完成品Aの焼結後の結果よりも導電性が明らかに劣っている。
【0043】
本発明は上述した最良の実施形態に限定されるものではなく、誰もが本発明の啓示の下で他の様々な形態の製品を得ることができるが、その形状や構造にいかなる変化があっても、本出願と同じまたは類似した技術案を有するものは、本発明の保護範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5