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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】マンホール構造の改築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20240123BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
E02D29/14 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023142435
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397018811
【氏名又は名称】日本ジッコウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡良
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬介
(72)【発明者】
【氏名】宮入 篤
(72)【発明者】
【氏名】長尾 達彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一宏
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-030008(JP,A)
【文献】特開2006-265938(JP,A)
【文献】特開2017-125369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に貫通している内腔を有するマンホール斜壁と、前記マンホール斜壁よりも上側に配置されている蓋と、前記マンホール斜壁と前記蓋との間に配置されており前記蓋を支持している支持部材と、を有し、前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに前記マンホール斜壁は上端から前記上端より下方に1/3の地点までの第1部分を有しているマンホール構造の改築方法であって、
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有しているマンホール構造の改築方法。
【請求項2】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程の後に、前記マンホール斜壁と前記支持部材とを固定する固定部材を取付ける工程を有している請求項1に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項3】
前記マンホール斜壁と前記支持部材とを固定する固定部材を取付ける工程の後に、前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有している請求項2に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項4】
前記マンホール構造は、前記マンホール斜壁および前記支持部材に埋め込まれているアンカーボルトを有しており、
前記第1部分をけずることにより前記アンカーボルトの一部を露出させる工程を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項5】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項6】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程の前に、前記マンホール斜壁の内腔に防食部材を配置する工程を有しており、
前記固化材は前記マンホール斜壁と前記防食部材の間に流し込まれる請求項5に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項7】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程の後に、前記固化材の表面に防食部材を配置する工程を有している請求項5に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項8】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程の後に、前記第1部分の上端部であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項9】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程は、前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分を斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって実施される請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項10】
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程は、前記マンホール斜壁の内腔に配置されているコアビットを上方に移動させることによって実施される請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項11】
前記支持部材は、前記マンホール斜壁上に配置されているリング状部材と、前記リング状部材上に配置されており前記蓋を受ける蓋受け部を有する蓋受け部材と、から構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項12】
前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに、前記マンホール斜壁は前記上端より下方に1/3の地点から前記上端より下方に2/3の地点までの第2部分を有しており、
前記第2部分のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項13】
前記第1部分における最大けずり深さは、前記第2部分における最大けずり深さよりも大きい請求項12に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項14】
前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに、前記マンホール斜壁は前記上端より下方に2/3の地点から下端までの第3部分を有しており、
前記第3部分のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
【請求項15】
前記第1部分における最大けずり深さは、前記第3部分における最大けずり深さよりも大きい請求項14に記載のマンホール構造の改築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール構造の改築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設されているマンホール構造には、耐震性のない構造になっていたり、経年劣化によってコンクリートの腐食が進行していたりすることにより、地震動や車両等の上載荷重に対する耐力が充分とはいえないものがある。このような既設マンホール構造の地震動や車両等の上載荷重に対する耐力を向上させるため、既設マンホール構造を改築する方法の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献1には、既設マンホールの周りを掘削して前記既設マンホールの斜壁を露出させる工程と、前記既設マンホールの斜壁以上の部分を撤去する工程と、前記既設マンホールの内部のインバートを撤去する工程と、前記インバートの撤去により露出した既設底版の上面に新設底版を設置する工程と、前記既設マンホールの直壁の内径より小さな外径を有する新設マンホールを構成する管取付壁及び直壁を前記既設マンホールの管取付壁及び直壁の内部に挿入し、前記新設マンホールの管取付壁の下縁部を前記新設底版の上面に当接させた状態で前記管取付壁及び前記直壁を直立状に接続する工程と、前記既設マンホールの管取付壁及び直壁の内周面と、前記新設マンホールの管取付壁及び直壁の外周面と、の隙間に裏込め材を注入する工程と、前記新設マンホールの内部の前記新設底版上にインバートを設置する工程と、前記新設マンホールの直壁の上縁部に新設の斜壁及び調整リングを取り付ける工程と、前記新設マンホールの斜壁の周囲を埋め戻す工程と、前記調整リングの上面に受枠及び鉄蓋を取り付ける工程と、前記受枠の周囲を舗装する工程と、を備えたマンホール改修工法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-125369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているマンホール改修工法においては、既設マンホールの周りを掘削して斜壁部分を撤去し、新たな斜壁を設置しなければならないため、作業に要する期間が長かった。また、掘削する範囲全体の交通を規制しなければならないため、交通規制を行う範囲も広くならざるを得なかった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既設マンホール構造の外部に存在している道路舗装材や土を掘削することなくマンホール構造を改築する方法であって、マンホール斜壁の内腔の最小幅が小さくなりにくい方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決できた本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様は下記のとおりである。
[1] 鉛直方向に貫通している内腔を有するマンホール斜壁と、前記マンホール斜壁よりも上側に配置されている蓋と、前記マンホール斜壁と前記蓋との間に配置されており前記蓋を支持している支持部材と、を有し、前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに前記マンホール斜壁は上端から前記上端より下方に1/3の地点までの第1部分を有しているマンホール構造の改築方法であって、
前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有しているマンホール構造の改築方法。
【0008】
本発明の実施の形態に係るマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁の第1部分をけずる工程を有しているものであり、既設マンホール構造の外部に存在している道路舗装材や土を掘削する必要がない。このため、従来技術に比べ、作業期間を短くすることができ、交通規制しなければならない範囲も狭くすることができる。また、本発明のマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁の第1部分をけずる工程を有しているため、マンホール斜壁の内腔の最小幅が小さくなりにくくなる。
【0009】
本発明の実施の形態に係るマンホール構造の改築方法は、以下の[2]~[15]のいずれかであることが好ましい。
[2] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程の後に、前記マンホール斜壁と前記支持部材とを固定する固定部材を取付ける工程を有している[1]に記載のマンホール構造の改築方法。
[3] 前記マンホール斜壁と前記支持部材とを固定する固定部材を取付ける工程の後に、前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有している[2]に記載のマンホール構造の改築方法。
[4] 前記マンホール構造は、前記マンホール斜壁および前記支持部材に埋め込まれているアンカーボルトを有しており、
前記第1部分をけずることにより前記アンカーボルトの一部を露出させる工程を有している[1]~[3]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[5] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程を有している[1]~[4]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[6] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程の前に、前記マンホール斜壁の内腔に防食部材を配置する工程を有しており、
前記固化材は前記マンホール斜壁と前記防食部材の間に流し込まれる[5]に記載のマンホール構造の改築方法。
[7] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材を配置する工程の後に、前記固化材の表面に防食部材を配置する工程を有している[5]に記載のマンホール構造の改築方法。
[8] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程の後に、前記第1部分の上端部であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有している[1]~[7]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[9] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程は、前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分を斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって実施される[1]~[8]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[10] 前記第1部分のうち内側に位置している部分であって前記支持部材の真下に位置している部分をけずる工程は、前記マンホール斜壁の内腔に配置されているコアビットを上方に移動させることによって実施される[1]~[8]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[11] 前記支持部材は、前記マンホール斜壁上に配置されているリング状部材と、前記リング状部材上に配置されており前記蓋を受ける蓋受け部を有する蓋受け部材と、から構成されている[1]~[10]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[12] 前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに、前記マンホール斜壁は前記上端より下方に1/3の地点から前記上端より下方に2/3の地点までの第2部分を有しており、
前記第2部分のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している[1]~[11]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[13] 前記第1部分における最大けずり深さは、前記第2部分における最大けずり深さよりも大きい[12]に記載のマンホール構造の改築方法。
[14] 前記マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときに、前記マンホール斜壁は前記上端より下方に2/3の地点から下端までの第3部分を有しており、
前記第3部分のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している[1]~[13]のいずれか一項に記載のマンホール構造の改築方法。
[15] 前記第1部分における最大けずり深さは、前記第3部分における最大けずり深さよりも大きい[14]に記載のマンホール構造の改築方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施の形態に係るマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁の第1部分をけずる工程を有しているものであり、既設マンホール構造の外部に存在している道路舗装材や土を掘削する必要がない。このため、従来技術に比べ、作業期間を短くすることができ、交通規制する範囲も狭くすることができるものである。また、本発明のマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁の第1部分をけずる工程を有しているため、マンホール斜壁の内腔の最小幅が小さくなりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、既設マンホール構造の一例を示す断面図を表す。
図2図2は、図1に示すマンホール構造が備えるマンホール斜壁を拡大した断面図を表す。
図3図3は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図4図4は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図5図5は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図6図6は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す平面図を表す。
図7図7は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図8図8は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図9図9は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図10図10は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図11図11は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図12図12は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図13図13は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す平面図を表す。
図14図14は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
図15図15は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0013】
本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様は、鉛直方向に貫通している内腔を有するマンホール斜壁と、マンホール斜壁よりも上側に配置されている蓋と、マンホール斜壁と蓋との間に配置されており蓋を支持している支持部材と、を有し、マンホール斜壁を鉛直方向に3等分割したときにマンホール斜壁は上端から上端より下方に1/3の地点までの第1部分を有しているマンホール構造の改築方法であって、第1部分のうち内側に位置している部分であって支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有している点に要旨を有する。
【0014】
図1図15を参照して、本発明の実施の形態に係るマンホール構造の改築方法について説明する。図1では、マンホール斜壁1と、蓋5と、支持部材2と、を有しているマンホール構造100を示す。図2図5図7図12図14図15では、マンホール構造100が備えているマンホール斜壁1と支持部材2とを示す。図6図13では、マンホール構造100が備えているマンホール斜壁1を示す。本図面においては、水平方向をx、鉛直方向をyで示している。
【0015】
図1は、既設のマンホール構造の一例を示す断面図を表す。マンホール構造は土中に埋設されている。図2は、図1に示すマンホール構造が備えているマンホール斜壁を拡大した断面図を表す。図1図5図7図12図14図15は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す断面図を表す。より詳細には、図1図5図7図12図14図15に示す断面は、マンホール斜壁の中心軸を通り、鉛直方向に沿った断面である。図6図13は、本発明のマンホール構造の改築方法の一実施態様を示す平面図を表す。図6図13では、理解を容易にするために、支持部材を省略している。なお、本発明のマンホール構造の改築方法は既設マンホール構造の外部に存在している道路舗装材や土を掘削しないで行われるものであるため、マンホール構造の改築方法を実施している間もマンホール斜壁の外部には図1に示すような土が存在していることになるが、図2図15では土を省略している。
【0016】
図1に示すように、マンホール構造100は、マンホール斜壁1と、マンホール斜壁1よりも上側に配置されている蓋5と、マンホール斜壁1と蓋5との間に配置されており蓋5を支持している支持部材2と、を有している。
【0017】
図2に示すように、マンホール斜壁1は、鉛直方向yに貫通している内腔10を有している。内腔10は、マンホール斜壁1内に存在している空間を指す。マンホール斜壁1は、鉛直方向yに対して傾いている壁を有している。鉛直方向yに対して傾いている壁は、マンホール斜壁1の周方向全体に存在していてもよい。鉛直方向yに対して傾いている壁は、マンホール斜壁1の周方向の一部のみに存在していてもよく、この場合にマンホール斜壁1の周方向の残りの部分において、マンホール斜壁1の壁は鉛直方向yと平行な方向に延在している。
【0018】
図2に示すように、鉛直方向yにおいて、マンホール斜壁1は上端14と下端15を有する。上端14とはマンホール斜壁1のうち最も上側に位置している端である。下端15とはマンホール斜壁1のうち最も下側に位置している端である。
【0019】
図2に示すように、マンホール斜壁1を鉛直方向yに3等分割したときに、マンホール斜壁1は上端14から上端14より下方に1/3の地点までの第1部分11を有している。図2において、上端14より下方に1/3の地点を破線で示している。
【0020】
図2は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施する前のマンホール斜壁1の一例を示している。そして、図3図10は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施した後のマンホール斜壁1の一例を示している。図2図3図10に示す断面において、支持部材2の真下に位置している部分を示すために二点鎖線が記載されている。
【0021】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有している。この工程においては、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分が僅かにでもけずられていればよい。図示していないが、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程において、第1部分11であって支持部材2の真下に位置している部分全体をけずってもよい。また、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程において、図3図10に示すように、第1部分11であって支持部材2の真下に位置している部分のうちの一部のみをけずってもよい。図3図10に示す断面において、けずられる前のマンホール斜壁1の形を一点鎖線で示している。
【0022】
本発明の実施の形態に係るマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の第1部分11をけずる工程を有しているものであり、既設マンホール構造100の外部に存在している道路舗装材や土を掘削する必要がない。このため、従来技術に比べ、作業期間を短くすることができ、交通規制しなければならない範囲も狭くすることができる。また、本発明のマンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の第1部分11をけずる工程を有しているため、マンホール斜壁1の内腔10の最小幅が小さくなりにくくなる。
【0023】
マンホール構造100は、地下の下水道・暗渠、埋設された電気・通信ケーブルなどの管理を目的として作業員が地上から出入りできるようにするために土300中に埋設されているものである。
【0024】
マンホール斜壁1は、例えばコンクリートで構成することができる。
【0025】
マンホール斜壁1の形状は、中空円錐台状、中空多角錐台状などにすることができる。
【0026】
図2に示すように、マンホール斜壁1を鉛直方向yに3等分割したときに、マンホール斜壁1は上端14より下方に1/3の地点から上端14より下方に2/3の地点までの第2部分12を有していてもよい。また、マンホール斜壁1を鉛直方向yに3等分割したときに、マンホール斜壁1は上端14より下方に2/3の地点から下端15までの第3部分13を有していてもよい。図2において、上端14より下方に2/3の地点を破線で示している。
【0027】
支持部材2は、蓋5を支持する部材である。支持部材2の形状は、蓋5を支持することができる形状であれば特に限定されるものではないが、例えば中空円柱状、リング状、中空多角柱状などにすることができる。
【0028】
図1に示すように、支持部材2は、マンホール斜壁1上に配置されているリング状部材3と、リング状部材3上に配置されており蓋5を受ける蓋受け部を有する蓋受け部材4と、から構成されていてもよい。図示しないが、支持部材2は、マンホール斜壁1上に配置されており、蓋5を受ける蓋受け部を有する蓋受け部材4のみによって構成されていてもよい。リング状部材3は、マンホール構造100を土300中に埋設する際に、鉛直方向yにおける蓋5の位置と鉛直方向yにおけるマンホール構造100の外部に存在している道路舗装材や土の表面の位置とを調整する必要がある場合に、マンホール斜壁1と蓋受け部材4との間に配置されるものである。このため、リング状部材3は、0個であってもよいし、1個以上であってもよいし、2個以上であってもよい。リング状部材3の上限は特に限定されるものではないが、例えば、10個以下、5個以下であってもよい。
【0029】
リング状部材3が複数設けられる場合、それぞれのリング状部材3の鉛直方向yにおける長さは全て同じであってもよいし、それぞれのリング状部材3の鉛直方向yにおける長さはそれぞれ異なっていてもよい。
【0030】
支持部材2を構成する材料としては、例えば、コンクリート、鉄、その他の金属、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。支持部材2がリング状部材3と蓋受け部材4とから構成される場合は、例えば、リング状部材3がコンクリートで構成されており、蓋受け部材4が金属で構成されていてもよい。
【0031】
蓋5は、金属で構成されていることが好ましい。特に、鉄に炭素やシリコン、マンガンなどを添加した合金で構成されていることが好ましい。
【0032】
蓋5は板状であることが好ましい。マンホール構造100を上方から観察したときの蓋5の形状は、例えば円形状、多角形状などであってもよい。
【0033】
図1に示すように、マンホール構造100は、マンホール斜壁1を下から支持しているマンホール直壁6を有していてもよい。マンホール直壁6は、鉛直方向yに貫通している内腔を有しており、鉛直方向yと平行な方向に延在している壁を有していることが好ましい。
【0034】
マンホール直壁6の形状は、中空円柱状、中空多角柱状などにすることができる。
【0035】
マンホール直壁6は、マンホール斜壁1を構成することができる材料として挙げた材料から構成することができる。
【0036】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程の前に、マンホール構造100から蓋5を取り外す工程を有していてもよい。これにより、作業員がマンホール構造100の中に入ったり、作業用の工具をマンホール構造100の中に入れたりすることができる。
【0037】
第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程については、種々の方法を用いて実施することができる。
【0038】
例えば、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分を斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって実施されてもよい。斫り機または鑿を用いて斫る場合には、作業員がマンホール構造100の中に入って作業を行うことが好ましい。高圧洗浄機を用いて斫る場合には、作業員がマンホール構造100の中に入って高圧水をマンホール斜壁1のうち内側に位置している部分に当ててもよいし、マンホール構造100の外にいる作業員がマンホール斜壁1のうち内側に位置している部分に高圧水を当ててもよい。斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって、第1部分11がけずられた後のマンホール斜壁1の一例を図3図4で示している。なお、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて第1部分11をけずった後の形状は、図3図4に示した形状に限定されるものではない。例えば、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって、図10に示すような形にけずってもよいし、図11に示すような形にけずってもよい。
【0039】
また、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程は、マンホール斜壁1の内腔10に配置されているコアビット200を上方に移動させることによって実施されてもよい。より詳細には、図9に示すようにコアビット200をマンホール斜壁1の内腔10に配置した後に、当該コアビット200を上方に移動させる。これにより、図10に示すように、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずることができる。コアビット200を用いる場合には、作業員がマンホール構造100の中に入ってけずる作業をする必要がなくなるため、安全性が向上する。なお、コアビット200を用いて第1部分11をけずった後の形状は、図10に示した形状に限定されるものではない。例えば、マンホール斜壁1の内腔10に配置されているコアビット200を上方に移動させることによって、図3に示すような形にけずってもよい。
【0040】
図9に示すように、コアビット200は、例えば掘削ビット201と軸202とを有していてもよい。掘削ビット201は、掘削方向とは反対側に底部を有している有底円筒状であって、掘削方向に延在している内腔を有しており、掘削方向側の端に掘削用の刃203を有していることが好ましい。掘削ビット201は、その周方向に回転しながらマンホール斜壁1をけずることが好ましい。掘削ビット201によってマンホール斜壁1を目的の深さまでけずり、けずりとられたコアを掘削ビット201の内腔に取り込み、そのコアを地上に回収する。マンホール斜壁1の第1部分11がけずられることによる支持部材2の落下を防止する観点から、図9に示すように、掘削ビット201の外径は支持部材2の外径よりも短いことが好ましい。支持部材2の軸202は、掘削ビット201の回転軸となる部材である。
【0041】
コアビット200をマンホール斜壁1の内腔10に配置するため、コアビット200は複数の部品に分解することができるものであることが好ましい。例えば、掘削ビット201が2個以上、10個以下の部品に分解可能であってもよい。この場合、マンホール斜壁1の内腔10に配置されているコアビット200を上方に移動させる前に、複数の部品に分解された状態のコアビット200をマンホール斜壁1の内腔10に配置する工程と、マンホール斜壁1の内腔10においてコアビット200を組み立てる工程と、が実施されることが好ましい。
【0042】
コアビット200としては、例えばダイヤモンドコアビットを用いることができる。
【0043】
図3図10に示すように、マンホール斜壁1の中心軸を通り、鉛直方向yに沿った断面において、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分の断面形状の水平方向yにおける幅は、下方に向かって小さくなっていることが好ましい。
【0044】
図2に示すように、マンホール構造100は、マンホール斜壁1および支持部材2に埋め込まれているアンカーボルト30を有していてもよい。アンカーボルト30がマンホール斜壁1および支持部材2に埋め込まれていることにより、マンホール斜壁1に対する支持部材2の位置の変動を抑制することができる。なお、マンホール構造100がアンカーボルト30を有していない態様も許容される。
【0045】
アンカーボルト30の形状は、棒状、円柱状、多角柱状などにすることができる。アンカーボルト30を中空構造とすることもできるが、剛性を高める観点からアンカーボルト30は中実構造であることが好ましい。
【0046】
アンカーボルト30を構成する材料は、金属であることが好ましい。
【0047】
一のマンホール構造100に設けられているアンカーボルト30は、1個以上であってもよいし、2個以上であってもよい。一のマンホール構造100に設けられているアンカーボルト30は、10個以下であってもよいし、5個以下であってもよい。一のマンホール構造100に設けられているアンカーボルト30は、3個であることが好ましい。
【0048】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11をけずることによりアンカーボルト30の一部を露出させる工程を有していてもよい。図3図4では、第1部分11をけずることによりアンカーボルト30の一部を露出させる工程を実施した後の一例が示されている。これにより、既設のアンカーボルト30を再利用しやすくすることができる。
【0049】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程の後に、第1部分11の上端部であって支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を有していることが好ましい。図3図10では、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施した後の一例が示されている。図4図11では、第1部分11の上端部であって支持部材の真下に位置している部分をけずる工程を実施した後の一例が示されている。図4図11では、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施した後であり、第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施する前のマンホール斜壁1の形を一点鎖線で示している。第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有していることにより、マンホール斜壁1のうち、支持部材2の荷重がかかる部分についても更生しやすくすることができるため、地震動に対する耐力を向上させやすくなる。この効果をより高める観点からは、第1部分11の上端であって支持部材2の真下に位置している部分については、その全体がけずられることがより好ましい。なお、第1部分11の上端部は、第1部分11のうちの上端と上端の周辺を含んでいる。
【0050】
図4図11に示すように、マンホール斜壁1の中心軸を通り、鉛直方向yに沿った断面において、第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分の断面形状の水平方向yにおける幅は、下方に向かって小さくなっていることが好ましい。
【0051】
第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程の後に、第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を行う際には、例えば下記のようにすることができる。まず、図9に示すようにコアビット200をマンホール斜壁1の内腔10に配置した後に、当該コアビット200を上方に移動させる。これにより、図10に示すように、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずることができる。この後に、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分を斫る。斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて斫ることによって第1部分11がけずられた後のマンホール斜壁1の一例を図11で示している。図11では、コアビット200の上方への移動によってマンホール斜壁1がけずられた後であって、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いてけずられる前のマンホール斜壁1の形を一点鎖線で示している。他の方法としては、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分を図3に示すようにけずった後に、斫り機、鑿および高圧洗浄機の少なくともいずれか1つを用いて第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分を図4に示すようにけずることとしてもよい。
【0052】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程の後に、マンホール斜壁1と支持部材2とを固定する固定部材20を取付ける工程を有していてもよい。例えば、図2に示すマンホール斜壁1は、第1部分11をけずって固定部材20を取り付けることにより、図5および図6に示すような態様になってもよい。図2に示すマンホール斜壁1は、第1部分11をけずって固定部材20を取り付けることにより、図12および図13に示すような態様になってもよい。マンホール構造の改築方法が固定部材20を取り付ける工程を有していることにより、マンホール斜壁1の第1部分11がけずられることによる支持部材2の落下を防止しやすくすることができる。図4図10は、第1部分11がけずられた後であって固定部材20が取り付けられる前のマンホール斜壁1の一例を示している。図5図12は、けずられた後の第1部分11に固定部材20が取り付けられた後のマンホール斜壁1の一例を示している。より詳細には、図5は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程と第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を行った後で固定部材20を取り付けた態様を示している。図12は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を行った後に、第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施することなく固定部材20を取り付けた態様を示している。図6は、図5に示すマンホール斜壁1と固定部材20とを上方から観察したときの態様を示している平面図である。図13は、図12に示すマンホール斜壁1と固定部材20とを上方から観察したときの態様を示している平面図である。
【0053】
図10に示すように、第1部分11の上端のうち支持部材2の真下に位置している部分が一部けずられずに残っている場合には、残っている第1部分11の上端が支持部材2を支持することができる。このため、マンホール斜壁1と支持部材2とを固定する固定部材20を取付ける工程を実施しなくても構わない。第1部分11の上端のうち支持部材2の真下に位置している部分が一部けずられずに残っている場合であっても、図12図13に示すように固定部材20を取り付けることによって補強してもよい。
【0054】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程およびマンホール斜壁1と支持部材2とを固定する固定部材20を取付ける工程の後に、さらに、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有していてもよい。
【0055】
例えば、図2に示すマンホール斜壁1に対して、図5および図6に示すように、固定部材20として第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24を取り付ける場合には、下記のような手順で第1部分11をけずって固定部材20を取り付けることができる。まず、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって第1固定部材21を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第1固定部材21を固定する。次に、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって第2固定部材22を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第2固定部材22を固定する。そして、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって第3固定部材23を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第3固定部材23を固定する。さらに、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって第4固定部材24を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第4固定部材24を固定する。他の手順としては、下記のようなものもある。まず、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24を取り付けようとしている部分をそれぞれけずる。次に、当該けずった部分に第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24をそれぞれ取り付け、第1部分11のうち内側に位置している部分と第1部分11の上端部であって固定部材20を取り付けた部分の周辺をけずる。上記のようにして固定部材20が取付けられることにより、支持部材2の落下を防止しながらマンホール斜壁1の第1部分11をけずることができる。
【0056】
図2に示すマンホール斜壁1に対して、図12および図13に示すように、固定部材20として第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24を取り付ける場合には、下記のような手順で第1部分11をけずって固定部材20を取り付けることができる。まず、第1部分11のうち内側に位置している部分であって第1固定部材21を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第1固定部材21を固定する。次に、第1部分11のうち内側に位置している部分であって第2固定部材22を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第2固定部材22を固定する。そして、第1部分11のうち内側に位置している部分であって第3固定部材23を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第3固定部材23を固定する。さらに、第1部分11のうち内側に位置している部分であって第4固定部材24を取り付けようとしている部分とその周辺をけずった後に第4固定部材24を固定する。他の手順としては、下記のようなものもある。まず、第1部分11のうち内側に位置している部分であって第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24を取り付けようとしている部分をそれぞれけずる。次に、当該けずった部分に第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24をそれぞれ取り付け、第1部分11のうち内側に位置している部分であって固定部材20を取り付けた部分の周辺をけずる。
【0057】
第1部分11の上端のうち支持部材2の真下に位置している部分が一部けずられずに残っている場合、マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1と支持部材2とを固定する固定部材20を取付ける工程の後に、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有していなくてもよい。例えば、第1部分11のうち内側に位置している部分を図10に示すようにけずった後に、図12図13に示すように、第1固定部材21と第2固定部材22と第3固定部材23と第4固定部材24を取り付けてもよい。図10に示すように、第1部分11の上端のうち支持部材2の真下に位置している部分が一部けずられずに残っている場合には、残っている第1部分11の上端が支持部材2を支持することができるためである。
【0058】
固定部材20は、図5図6図12図13に示すように、板状の金属がくの字状やL字状に曲げられることで形成されている金具であってもよい。板状の金属は、支持部材2とけずられた後の第1部分11の形状に合わせて曲げられているものであることが好ましい。板状の金属が曲げられていない状態を0°とした場合に、板状の金属が曲げられる角度は、例えば、30°以上、35°以上、40°以上、170°以下、165°以下、160°以下などにすることができる。
【0059】
固定部材20として上述したような金具を用いる場合、金具を構成する材料としては、例えばSUS304やSUS430などのステンレス、スチール、真鍮、亜鉛合金、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0060】
具体的に図示はしないが、固定部材20として急結モルタルを用いてもよい。
【0061】
取付けられる固定部材20の数は、1個以上であってもよいし、2個以上であってもよいし、3個以上であってもよい。取付けられる固定部材20の数は、10個以下であってもよいし、8個以下であってもよいし、5個以下であってもよい。支持部材2の落下防止精度向上と作業負荷軽減の観点からは、図6図13に示すように、取付けられる固定部材20の数は4個であることが好ましい。取付けられる固定部材20の数が2個以上である場合は、マンホール斜壁1の周方向において隣り合う固定部材20同士は等間隔で配置されていることが好ましい。
【0062】
マンホール構造の改築方法は、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程を有していてもよい。図7図10図14には、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程が実施された後のマンホール斜壁1が示されている。なお、図7図10図14では、けずられる前のマンホール斜壁1の形を一点鎖線で示している。例えば、図7に示すように第2部分12のうち内側に位置している部分を薄くけずってもよいし、図10図14に示すように第2部分12のうち内側に位置している部分のうち一部を深くけずって残りの部分を薄くけずってもよい。
【0063】
第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程よりも前に実施されてもよいし、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程よりも後に実施されてもよいし、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程と同時に実施されてもよい。
【0064】
第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施するための手段として例示したものを用いることができる。
【0065】
第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程において、第2部分12のうち、内腔10に面していた部分全体をけずってもよいが、内腔10に面していた部分のうちの一部のみをけずってもよい。
【0066】
図3図4図10図11には、けずられた後の第1部分11の一例が示されている。図7図14には、けずられた後の第2部分12の一例が示されている。図3図4図7図10図11図14に示すように、第1部分11における最大けずり深さは、第2部分12における最大けずり深さよりも大きいことが好ましい。なお、最大けずり深さとは、水平方向xにおけるけずり深さのうち、最も深くけずられている部分の長さをいう。
【0067】
マンホール構造の改築方法は、第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程を有していてもよい。図7図14には、第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程が実施された後のマンホール斜壁1が示されている。なお、図7図14では、けずられる前のマンホール斜壁1の形を一点鎖線で示している。例えば、図7図14に示すように、第3部分13のうち内側に位置している部分を薄くけずってもよい。
【0068】
第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程よりも前に実施されてもよいし、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程よりも後に実施されてもよいし、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程と同時に実施されてもよい。第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程は、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程よりも前に実施されてもよいし、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程よりも後に実施されてもよいし、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程と同時に実施されてもよい。
【0069】
第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を実施するための手段として例示したものを用いることができる。
【0070】
第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程において、第3部分13のうち、内腔10に面していた部分全体をけずってもよいが、内腔10に面していた部分のうちの一部のみをけずってもよい。
【0071】
図7図14には、けずられた後の第3部分13の一例が示されている。図3図4図7図14に示すように、第1部分11における最大けずり深さは、第3部分13における最大けずり深さよりも大きいことが好ましい。
【0072】
第2部分12における最大けずり深さは第3部分13における最大けずり深さよりも大きくてもよいし、第2部分12における最大けずり深さは第3部分13における最大けずり深さよりも小さくてもよいし、第2部分12における最大けずり深さと第3部分13における最大けずり深さは同じであってもよい。
【0073】
本図面では、第2部分12のうち内側に位置している部分と第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程を含む実施態様のみが示されているが、マンホール構造の改築方法において、第2部分12のうち内側に位置している部分と第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程は行われなくてもよい。但し、マンホール斜壁1のうち内側に位置している部分を更生する観点からは第2部分12のうち内側に位置している部分と第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程が実施されることが好ましい。
【0074】
マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程を有していることが好ましい。図8図15には、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程が実施された後の一例が示されている。マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置することにより、固化材40が配置された部分の地震動や車両等の上載荷重に対する耐力を向上させやすくすることができる。
【0075】
固化材40は、所定の場所に配置される際には流動性を有しており、時間経過とともに固化するものであることが好ましい。固化材40としては、例えば、モルタルを用いることが好ましい。
【0076】
マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程として、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程を有していることが好ましい。マンホール構造の改築方法が第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有している場合、マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程として、第1部分11の上端部であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程も有していることが好ましい。また、マンホール構造の改築方法が第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している場合、マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程として、第2部分12のうち内側に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程も有していることが好ましい。さらに、マンホール構造の改築方法が第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程を有している場合、マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に固化材40を配置する工程として、第3部分13のうち内側に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程も有していることが好ましい。
【0077】
マンホール構造の改築方法が、第1部分11をけずることによりアンカーボルト30の一部を露出させる工程を有している場合には、図8に示すように、アンカーボルト30を固化材40で埋めるように固化材40を配置することが好ましい。これにより、既設のアンカーボルト30を、マンホール斜壁1に対する支持部材2の位置の変動を抑制する機能を持つものとして再利用することができる。
【0078】
マンホール構造の改築方法は、マンホール斜壁1の内腔10に防食部材50を配置する工程を有していることが好ましい。図8図15には、マンホール斜壁1の内腔10に防食部材50を配置する工程が実施された後の一例が示されている。マンホール斜壁1の内腔10に防食部材50を配置することにより、防食部材50が配置された部分の耐腐食性を向上させやすくすることができる。
【0079】
防食部材50は、所定の場所に配置され、配置された場所を覆って保護することにより防食機能を奏することができる部材のことを指す。
【0080】
防食部材50の形状は特に限定されるものではないが、例えば、シート状、フィルム状、板状、円筒状、中空円錐台状であることが好ましい。
【0081】
配置された場所を覆って保護することにより防食機能を奏することができるものであれば、防食部材50を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば樹脂や金属を含む材料から構成されていてもよい。防食機能をより向上させやすくする観点からは、防食部材50の少なくとも一部または全体が繊維強化プラスチック(FRP)で構成されていることが好ましい。また、FRPを構成する樹脂として、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの薬品に対して耐性を有するものが含まれていることがより好ましい。FRPに含まれる繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、金属繊維、セラミックス繊維などが挙げられる。
【0082】
固化材40と防食部材50については、どちらを先にマンホール斜壁1の内腔10に配置しても構わない。
【0083】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程の前に、マンホール斜壁1の内腔10に防食部材50を配置する工程を有していてもよい。この場合、固化材40として、固化のときに膨張して乾燥後に収縮しない無収縮モルタルであることが好ましく、無収縮モルタルの中でもグラウトを用いることが好ましい。グラウトとしては、セメント系、ガラス系、合成樹脂系のものを用いることができる。上記の工程を採用する場合には、固化材40はマンホール斜壁1と防食部材50の間に流し込まれることが好ましい。このため、固化材40は、所定の場所に配置される際にはホースなどを介して流し込むことができる程度の粘度を有しているものであることが好ましい。なお、防食部材50には、固化材40を流し込むための穴が形成されていることが好ましい。固化材40が流し込まれた後で当該穴は塞がれることが好ましい。
【0084】
マンホール構造の改築方法は、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程の後に、固化材40の表面に防食部材50を配置する工程を有していてもよい。この場合、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程によってけずられた部分に固化材40を配置する工程は、固化材40が第1部分11に塗布されることによって実施されることが好ましい。このため、この工程で用いられる固化材40は、所定の場所に配置される際には外力が加わることがなければその位置が変わらない程度の粘度を有しているものであることが好ましい。
【0085】
図2では、マンホール構造の改築方法を実施する前のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L1が示されている。図8図15では、マンホール構造の改築方法を実施したことで固化材40と防食部材50が配置された後のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L2が示されている。マンホール構造100に対してマンホール構造の改築方法を実施したことで固化材40と防食部材50が配置された後のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L2は、マンホール構造100に対してマンホール構造の改築方法を実施する前のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L1±5cm以内であることが好ましく、±3cm以内であることがより好ましく、±1cm以内であることがさらに好ましい。これにより、マンホール斜壁1の内腔10の幅が維持されやすくなる。マンホール斜壁1の内腔10の幅が小さくなると作業員がマンホール構造100に出入りしにくくなるが、マンホール斜壁1の内腔10の最小幅が維持されることでマンホール構造100へ作業員が出入りしにくくなるのを防ぐことができる。なお、この効果を高める観点からは、マンホール構造100に対してマンホール構造の改築方法を実施したことで固化材40と防食部材50が配置された後のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L2が、マンホール構造100に対してマンホール構造の改築方法を実施する前のマンホール斜壁1の内腔10の最小幅L1と同じであることが特に好ましい。
【0086】
最小幅L1と最小幅L2について上記構成とするために、マンホール斜壁1をけずる際には、後の工程でマンホール斜壁1の内腔10に配置される固化材40と防食部材50の水平方向xにおける厚みを考慮することが好ましい。例えば、後の工程でマンホール斜壁1の内腔10に配置される固化材40と防食部材50の水平方向xにおける厚みと同じ深さだけマンホール斜壁1をけずってもよい。
【符号の説明】
【0087】
100:マンホール構造
1:マンホール斜壁
10:マンホール斜壁の内腔
11:第1部分
12:第2部分
13:第3部分
14:マンホール斜壁の上端
15:マンホール斜壁の下端
2:支持部材
3:リング状部材
4:蓋受け部材
5:蓋
6:マンホール直壁
20:固定部材
21:第1固定部材
22:第2固定部材
23:第3固定部材
24:第4固定部材
30:アンカーボルト
40:固化材
50:防食部材
200:コアビット
201:掘削ビット
202:軸
203:刃
300:土
【要約】
【課題】既設マンホール構造の外部に存在している道路舗装材や土を掘削することなくマンホール構造を改築する方法であって、マンホール斜壁の内腔の最小幅が小さくなりにくい方法を提供する。
【解決手段】鉛直方向yに貫通している内腔10を有するマンホール斜壁1と、マンホール斜壁1よりも上側に配置されている蓋と、マンホール斜壁1と蓋との間に配置されており蓋を支持している支持部材2と、を有し、マンホール斜壁1を鉛直方向yに3等分割したときにマンホール斜壁1は上端14から上端14より下方に1/3の地点までの第1部分11を有しているマンホール構造の改築方法であって、第1部分11のうち内側に位置している部分であって支持部材2の真下に位置している部分をけずる工程を有しているマンホール構造の改築方法。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15