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特許7424719創傷治療と洗浄のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】創傷治療と洗浄のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/7012 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240123BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240123BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240123BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240123BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240123BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20240123BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20240123BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20240123BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20240123BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20240123BHJP
   A61L 101/02 20060101ALN20240123BHJP
   A61L 101/32 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00 101
A61P17/02
A61K33/00
A61K31/4425
A61K31/7012
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/22
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/16 Z
A01N59/08 A
A01N59/20 Z
A01N43/40 101K
A01N47/44
A61L2/18
A61L101:02
A61L101:32
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020532868
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018048149
(87)【国際公開番号】W WO2019040939
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】15/686,612
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/686,617
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/660,676
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520065086
【氏名又は名称】エーゼット ソリューションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヒル、デレク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0237810(US,A1)
【文献】特表2002-524212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61L、A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷洗浄液を調整する方法であって、
遊離イオンを発生させる金属塩を含む第1流体を、酸化還元電位を上昇させる化合物を含む第2流体から容器内で分離して収容することと、
前記容器の流体帯電部において前記第1流体を前記第2流体と混合して、前記創傷洗浄液であるイオン帯電流体を形成することと、
形成された前記イオン帯電流体を、前記流体帯電部に連結された送達管を介して外部に送達することと、
を含み、
前記第1流体は、遊離イオンとして亜鉛イオン、銀イオン、及び銅イオンの少なくとも1つを発生させる金属塩を含み、かつ前記第2流体は亜塩素酸イオンを発生させる金属塩を含み、
前記第1流体と前記第2流体の少なくとも一方は、抗生物質化合物、消毒剤化合物、又はその双方を更に含み、前記消毒剤化合物は、グルコン酸クロルヘキシジン及び塩化セチルピリジニウムの少なくとも一方であり、
前記流体帯電部の直径が前記送達管の直径と略同じ大きさであって、前記流体帯電部の容積に応じた分の前記イオン帯電流体が生成される、
方法。
【請求項2】
前記イオン帯電流体が前記流体帯電部から放出された時刻からの経過時間を報知することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン帯電流体を外部に送達することは、前記イオン帯電流体を前記創傷洗浄液を貯留する洗浄スリーブに送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1流体と第2流体を混合することが、放出器を作動させて、前記流体帯電部において前記第1流体と第2流体を化合させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放出器を作動させることが、前記容器内に真空を生成して、前記第1流体と第2流体を前記流体帯電部の中に吸引することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
遊離イオンを発生させる金属塩を含む第1流体を収容する第1隔室と、
酸化還元電位を上昇させる化合物を含む第2流体を、前記第1流体とは分離して収容する第2隔室と、
前記第1隔室から供給された前記第1流体と、前記第2隔室から供給された前記第2流体とを混合して、感染抑制液であるイオン帯電流体を形成する流体帯電部と、
前記感染抑制液を潜在的な感染部位に送達管を介して放出する放出部と、
を含み、
前記第1流体は、遊離イオンとして亜鉛イオン、銀イオン、及び銅イオンの少なくとも1つを発生させる金属塩を含み、
前記第1流体及び前記第2流体の少なくとも一方は、消毒性流体、抗菌性流体、ビタミンを含む流体、タンパク質、又はそれらの混合物を含み、前記消毒性流体は、グルコン酸クロルヘキシジン及び塩化セチルピリジニウムの少なくとも一方の流体であり、
前記流体帯電部の直径が前記送達管の直径と略同じ大きさであって、前記流体帯電部の容積に応じた分の前記イオン帯電流体が生成される、
感染抑制装置。
【請求項7】
前記放出部は、前記感染抑制液をエアロゾルの形態で感染部位に供給する、請求項6に記載の感染抑制装置。
【請求項8】
前記第2流体は、亜塩素酸イオンの発生源を含む、請求項6又は請求項7に記載の感染抑制装置。
【請求項9】
前記イオン帯電流体が前記流体帯電部から放出された時刻からの経過時間を報知する報知部をさらに含む、請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載の感染抑制装置。
【請求項10】
創傷の洗浄システムであって、
遊離イオンを発生させる金属塩を含む第1流体と、
前記第1流体とは分離して収容された、酸化還元電位を上昇させる化合物を含む第2流体と、
を備え、
前記第1流体と第2流体を流体帯電部において混合することが、創傷部位の酸化電位よりも高い酸化還元電位を有する、イオン帯電流体を形成し、前記イオン帯電流体が、適用により前記創傷部位の酸化電位を上昇させ、
前記第1流体は、遊離イオンとして亜鉛イオン、銀イオン、及び銅イオンの少なくとも1つを発生させる金属塩を含み、かつ前記第2流体は、亜塩素酸イオンを発生させる金属塩を含み、
前記流体帯電部の直径が前記イオン帯電流体を創傷部位に送達する送達管の直径と略同じ大きさであって、前記流体帯電部の容積に応じた分の前記イオン帯電流体が生成され、前記創傷部位に送達される、
創傷洗浄システム。
【請求項11】
前記第1流体、前記第2流体、又はその両方が、消毒剤化合物、抗生物質化合物、ビタミン、タンパク質、又はそれらの混合物を含み、前記消毒剤化合物は、グルコン酸クロルヘキシジン及び塩化セチルピリジニウムの少なくとも一方である、
請求項10に記載の創傷洗浄システム。
【請求項12】
前記第1流体と第2流体から分離されて収容され、消毒剤化合物、抗生物質化合物、ビタミン、タンパク質、又はそれらの混合物を含む、第3流体を更に備え、第1流体、第2流体、及び第3流体を前記流体帯電部において混合することによりイオン帯電流体が形成される、請求項10に記載の創傷洗浄システム。
【請求項13】
前記ビタミンは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1-6、ビタミンB12、又はそれらの混合物を含む、請求項11又は請求項12に記載の創傷洗浄システム。
【請求項14】
前記イオン帯電流体が前記流体帯電部から放出された時刻からの経過時間を報知する報知部をさらに含む、請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の創傷洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月25日出願の米国特許出願シリアル番号第15/686,612号、2017年8月25日出願の米国特許出願シリアル番号第15/686,617号、及び2018年4月20日出願の米国仮特許出願シリアル番号第62/660,676号の利益を主張し、参照によりこれらの開示の全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、創傷及び外科用の洗浄のためのシステム、方法及び組成に関し、より具体的には、感染の治療、制御又は予防を促進する、イオン化した化学組成に関する。
【背景技術】
【0003】
手術部位、組織、体液、関節、人工関節、電気又は金属又は合成のインプラント、腹膜、臓器、体腔、組織、膿瘍、及び外傷性又は熱性又は糖尿病若しくは血管性下肢潰瘍などの慢性創傷などの創傷は、手術中に接種されたり、周辺組織に蔓延して損傷を及ぼし得る細菌や他の感染性生物に感染されたりする可能性がある。本明細書では、以降これらを、皮膚、創傷又は上に挙げた領域の任意のものとして、交換可能に参照する。さらに、インプラントされた医療器具、これには除細動器、腰及び膝の人工関節、乳房インプラント、脊柱器具及び代替椎間板、ペースメーカ、脊髄刺激器、冠動脈及び血管ステント、耳チューブ、義眼レンズ、その他が含まれるが、これらもまたインプラント中又はその後で接種又は感染される可能性がある。創傷及び手術部位は、医療現場などにおいて人の間で感染しやすい。また、獣医現場などにおいて動物間でもそうである。感染の予防及び/又は治療のための予防処置は、細菌のコロニー形成、又は体腔、臓器、組織、皮膚部位、創傷又は手術部位の汚染を撲滅することにより提供可能である。さらに、創傷、手術部位又は慢性創傷の、感染、接種又はコロニー化の予防は、継続的な抗菌活性を提供する、非中毒性洗浄液内の持続性抗菌活性によって与えることが可能である。このことは、洗浄液が創傷の内部又は周囲、あるいは上記の領域の上に留まって、持続的な抗菌活性を引き出せば、達成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願シリアル番号第15/686,612号明細書
【文献】米国特許出願シリアル番号第15/686,617号明細書
【文献】米国特許出願シリアル番号第62/660,676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書において、患者の創傷、手術部位、体腔、臓器、組織又は皮膚を洗浄する、態様、特徴、要素、実装及び実施形態の実行が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、創傷の洗浄方法が、有効な遊離イオンを有するイオンの多い化合物を含む第1流体を酸化還元電位上昇化合物を含む第2流体から容器の中で分離することと、容器の流体帯電部において第1流体を第2流体と混合して、イオンで帯電した、又はイオン化した、又は活性化した流体、以下では「帯電した」又は「イオン帯電した」と称するが、を形成することと、イオン帯電した流体を創傷に適用して、創傷における抗菌活性を高めることと、を含む。
【0007】
1つ以上の実施形態によれば、第1流体は、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン、又はそれらの混合物の発生源を含み、かつ第2流体は亜塩素酸イオンの発生源を含んでよい。一つ又は複数の実施形態において、第1流体及び/又は第2流体は、抗生物質化合物か消毒剤化合物、又はその双方を更に含んでよい。少なくとも1つの実施形態において、この方法は、消毒剤特性及び/又は抗生物質特性を有する第3流体を第1と第2の流体から分離したままにすることと、流体帯電部において第3流体を第1と第2の流体に混合してイオンで帯電した流体を生成することを更に含んでよい。いくつかの実施形態において、消毒剤は、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウ又はそれらの混合物を含んでよい。特定の実施形態において、イオン帯電流体を適用することが、少なくとも部分的に創傷を囲むように構成された洗浄スリーブを介して創傷へイオン帯電流体を送達することを含んでよい。少なくとも1つの実施形態において、第1流体と第2流体を混合することが、放出器を作動させて、流体帯電部において第1流体と第2流体を化合させることを含んでよい。さらに、放出器を作動させることは、容器内に真空を生成して、第1と第2の流体を流体帯電部の中に吸引することを含んでよい。
【0008】
別の実施形態によれば、感染抑制方法が、有効な遊離イオンを有するイオンの多い流体と、酸化還元電位上昇流体とを分離して収容し、イオンの多い流体と酸化還元電位上昇流体を潜在的な感染部位に適用することによって、潜在的な感染部位の酸化還元電位を上昇させて細菌の増殖を低減することと、を含む。
【0009】
1つ以上の実施形態によれば、第1流体は、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン又はそれらの混合物の発生源を含んでよい。少なくとも1つの実施形態において、第2流体は亜塩素酸イオンの発生源を含んでよい。いくつかの実施形態において、混合物を適用することが、イオンの多い流体と酸化還元電位上昇流体を別々に潜在的な感染部位に送達して、潜在的な感染部位に帯電流体を形成することを含んでよい。他の実施形態において、混合物を適用することが、イオンの多い流体と酸化還元電位上昇流体を帯電部に送達して混合物を形成することと、潜在的な感染部位に混合物を放出することとを含んでよい。少なくとも1つの実施形態において、混合物はさらに、消毒性流体、抗菌性流体、ビタミンが豊富な流体、タンパク質又はそれらの混合物を含んでよい。
【0010】
一実施形態によれば、創傷洗浄システムが、有効な遊離イオンを有するイオンの多い化合物を含む第1流体と、第1流体とは分離して収容された、酸化還元電位上昇化合物を含む第2流体と、を含む。第1と第2の流体を帯電領域で混合することで、創傷部位の酸化還元電位よりも高い酸化還元電位を有する、イオンで帯電した流体が形成される。イオンで帯電した流体を適用することにより、創傷の抗菌活性が増加する。
【0011】
1つ以上の実施形態によれば、第1流体は、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン、又はそれらの混合物の発生源を含み、かつ第2流体は亜塩素酸イオンの発生源を含んでよい。少なくとも1つの実施形態において、第1流体、第2流体、又はその両方が、消毒剤化合物、抗生物質化合物、ビタミンの豊富な化合物、タンパク質又はそれらの混合物を含んでよい。他の実施形態によれば、創傷洗浄システムは、第1流体と第2流体からは分離されて収容され、消毒剤化合物、抗生物質化合物、ビタミンの豊富な化合物、タンパク質又はそれらの混合物を含み得る第3の流体を更に備えてもよく、第1、第2、第3の流体を帯電領域において混合することによりイオンで帯電した流体が形成される。少なくとも1つの実施形態において、消毒剤化合物は、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウ又はそれらの混合物を含んでよい。1つ以上の実施形態によれば、ビタミンが豊富な化合物は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1-6、ビタミンB12、又はそれらの混合物を含んでよい。
【0012】
開示した実施形態の一態様は、患者の皮膚、創傷又は組織を洗浄するためのシステムである。システムは、第1隔室と第2隔室を含む流体容器であって、第1隔室は仕切りの第1の側に第1流体を貯留するように適合され、第2隔室は仕切りの第2の側に第2流体を貯留するように適合される。システムはまた、患者の皮膚の一部を覆うように適合された洗浄スリーブを含む。システムはまた、第1流体の一部と第2流体の一部を受けるように適合された流体帯電部を含み、第1流体の一部が第2流体の一部と反応して、流体帯電部内に帯電化合物を生成する。システムはまた化合物送達部を含み、これは化合物送達部の第1端部において流体帯電部から延在する。化合物送達部は、流体帯電部から洗浄スリーブへ帯電化合物を送達するように適合されている。
【0013】
開示した実施形態の別の態様は、患者の皮膚、創傷又は組織を洗浄するための方法である。この方法は、仕切りの第1の側に第1流体を貯留し、仕切りの第1の側の反対側に配置された、仕切りの第2の側に第2流体を貯留し、患者の皮膚の一部を洗浄スリーブで覆い、第1流体の一部と第2流体の一部を受けて、そこで第1流体の一部が第2流体の一部と反応して帯電化合物を生成し、帯電化合物を流体帯電部から洗浄スリーブに送達する、ことを含む。
【0014】
開示した実施形態の別の態様は、患者の皮膚、創傷又は組織を洗浄するためのシステムである。システムは、患者の皮膚、創傷又は組織の一部を覆うように適合された洗浄スリーブを含む。システムはまた、第1流体の一部と第2流体の一部を受けるように適合された流体帯電部を含み、第1流体の一部が第2流体の一部と反応して流体帯電部内に帯電化合物を生成する。システムはまた、帯電化合物が帯電している間に、帯電化合物を流体帯電部から洗浄スリーブへ送達するように適合された化合物送達部を含む。
【0015】
本開示は、添付の図面と併せて読めば、以下の詳細な説明から最もよく理解されるであろう。図面の様々な特徴は一般的な慣行により縮尺通りではないことに注意されたい。逆に、様々な特徴の寸法は、明確化するために任意に拡大又は縮小がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の洗浄システムの概略図である。
図2】本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の洗浄システムの概略図である。
図3】本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の代替洗浄システムの概略図である。
図4】本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の代替洗浄システムの概略図である。
図5】本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の洗浄方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示される。ただし、開示の実施形態は本発明の単なる例であって、本発明は様々な代替の形式で実現可能であることを理解されたい。図面は必ずしも縮尺通りではない。いくつかの特徴を誇張又は最小化して、特定の構成要素の詳細を示す場合がある。したがって、本明細書に開示の特定の構造及び機能の詳細はそれに限定されるものではなく、本発明を当業者に様々に使用するように教示する、単なる代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0018】
手術部位、体液、関節、組織、臓器、体腔、膿瘍、及び急性又は慢性の創傷は、好気性若しくは嫌気性の細菌又は他の微生物により生じる感染の予防及び/又は治癒を助けるために、洗浄を必要とすることがある。以下においては手術部位又は創傷部位を議論するが、これに限定することを意図するものではなく、開放創傷、火傷、体液、外傷性創傷、慢性創傷、移植部位(例えば皮膚移植)、また、これに限らないが、皮膚外傷又は感染、組織感染及び人体又は動物のそれ以外の感染領域などのあらゆる種類の感染、が含まれる。手術創傷又は慢性創傷は、細菌やその他の感染性微生物、例えば嫌気性細菌、好気性細菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウィルス、プリオン、菌類、寄生虫若しくは他の病原体など、によって感染される場合がある。感染の予防方法及び/又は治癒方法は、接種や汚染を防止することによって提供可能である。さらに、手術創傷又は慢性創傷の感染、接種若しくはコロニー形成の防止又は治療は、持続性の抗菌活性を与える創傷洗浄液内の永続する抗菌活性によって提供可能である。これは、洗浄液が創傷内又はその周りに残存して、持続的な抗菌活性を引き出すことができる場合に達成可能である。
【0019】
例えばそのような創傷において、酸化還元電位(Eh)が低下すると、細菌の代謝及び成長は上昇し得る。細菌の機構又は創傷領域の特性のそのほかの変化に応答して、例えば創傷領域における酸素が減少するとき、そのような創傷領域におけるEは低下し得る。反対に、創傷領域のEを上昇させることにより、細菌の代謝及び成長が低下し、それにより創傷領域の感染の予防及び治癒が可能な場合がある。特定の例では、創傷又は感染領域を洗浄することで、微生物の代謝及び成長が、創傷部位の酸化還元(レドックス)電位(すなわちE)の上昇によって阻止され得る。さらには、洗浄が創傷部位におけるバイオフィルムの形成を根絶及び/又は防止する助けとなり得る。バイオフィルムは、宿主の防御及び抗生物質に対する微生物の耐性であって、それらの成長又は生産を防止又は根絶することにより、微生物の感染、接種、コロニー形成又は他の病変の根絶又は排除を可能とする。
【0020】
創傷領域におけるEを増加させることには、例えば、有効な亜鉛の遊離イオンを有する帯電亜鉛化合物や、少なくとも1つのE上昇化合物のような、1つ以上の電子又はイオンを多く含む化合物で創傷領域を洗浄することが含まれ得る。したがって、帯電化合物(または創傷洗浄剤または帯電流体)を帯電させ、例えば体腔、関節、組織、臓器、創傷若しくは術部位、及び/又は患者の皮膚(以後これらは互換的に参照される)などの創傷領域に帯電化合物を供給するシステムが望まれる。
【0021】
本開示の一つ又は複数の実施形態によれば、創傷部位の酸化還元電位を上昇させるために、有効な遊離イオンと、少なくとも1つの酸化還元電位上昇成分を有する、イオンで帯電された化学組成(例えば亜鉛、銅又は銀)などの、電子又はイオンを多く含む1つ以上の化合物を使用して、創傷又は組織を洗浄してもよい。創傷部位を洗浄して、感染の予防/制御/治癒のために酸化還元電位を上昇させるための適切な溶液としては、これに限るものではないが、Zn2+、Ag又はCu2+イオンを形成する溶液、又は亜鉛イオン、銅イオン及び銀イオンの任意の組み合わせを有する溶液がある。特定の実施形態においては、溶液は、帯電化合物内に有効な遊離イオンを提供する弱酸性の塩を含む。少なくとも1つの実施形態において、弱酸は水に可溶である。有効な亜鉛の遊離イオンを有する溶液を形成する亜鉛化合物の例には、これに限るものではないが、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛アンモニウム、クロム酸亜鉛、クエン酸亜鉛、ジチオン酸亜鉛、ケイフッ化亜鉛、酒石酸亜鉛、蟻酸亜鉛、ヨウ化亜鉛、フェノールスルフォン酸亜鉛、コハク酸亜鉛、グリセロリン酸亜鉛、又はその他のハロゲン化亜鉛がある。有効な銅の遊離イオンを有する溶液を形成する銅化合物の例には、これに限るものではないが、酢酸銅、ぎ酸銅、クエン酸銅、乳酸銅、蓚酸銅、プロピオン酸銅、安息酸銅、コハク酸銅、マロン酸銅、ステアリン酸銅、グルコン酸銅、硫酸銅アンモニウム、クロム酸銅、ジチオン酸銅、ケイフッ化銅、酒石酸銅、ヨウ化銅、硝酸銅、フェノールスルフォン酸銅、サリチル酸銅、硫酸銅、グリセロリン酸銅、又はその他のハロゲン化銅がある。有効な銀の遊離イオンを有する溶液を形成する銀化合物の例には、これに限るものではないが、硫酸銀、酸化銀、酢酸銀、硝酸銀、クエン酸銀、塩化銀、乳酸銀、りん酸銀、ステアリン酸銀、チオシアン酸銀、サッカリン酸銀、アントラニル酸銀、炭酸銀、又はその他のハロゲン化銀がある。イオンを供与する溶液、あるいはそのような溶液と混合された溶液は、選択された特定のイオンに対する好適な溶解度を有し、また酸化還元電位を望ましくない水準まで低下させることなく、効果的な量のイオンを供与し得る。以下においては、溶液の化合により形成される創傷洗浄剤は、「帯電創傷洗浄液」、「帯電流体」、「イオン帯電流体」、または「帯電化合物」と称する場合がある。例えば、亜鉛イオンの生成のために、ZnClとNaClOを2つの溶液として使用して、帯電創傷洗浄液を形成してもよい。2つの溶液は、帯電領域で化合させて、有効な遊離イオンと少なくとも1つの酸化還元電位上昇化合物を有する帯電化合物を生成してもよい(例えば、NaClOは、酸化還元電位を上昇させる亜塩素酸イオンの発生源であり、またZnClとも相互作用する)。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示の原理によれば、そのような創傷領域の治療に適した、イオン又は電子の多い化合物は、帯電領域において第1流体と第2流体を化合させることにより生成可能である。例えば、いくつかの実施形態において、患者の皮膚を洗浄するシステムが、点滴バッグすなわち点滴スタンドに吊るされたバッグなどの流体容器を含むことができる。流体容器には、第1流体用隔室と第2流体用隔室が含まれるか、あるいは2つの流体が別々の容器に保持されてもよい。いくつかの実施形態において、塩化亜鉛(ZnCl)などの第1流体が第1の流体隔室に貯留され、亜塩素酸イオンの発生源である亜塩素酸ナトリウム(NaClO)などの第2流体が第2の流体隔室に貯留される。患者の皮膚を洗浄する前に、第1流体の一部と第2流体の一部が、それぞれ第1流体隔室と第2流体隔室から放出されて流体帯電部に入る。その第1流体の一部と第2流体の一部が、流体帯電部において混合、及び/又は相互作用して、帯電化合物を生成する。例えば、ZnClの一部がNaClOの一部と相互作用して、有効な亜鉛の遊離イオンを有する帯電亜鉛化合物及び少なくとも1つのE上昇成分を形成する(例えば、NaClOは亜塩素酸イオンを有し、ZnClと相互作用するとE上昇成分のように作用する)。帯電化合物を創傷領域に付与することにより、有効な遊離亜鉛イオンと、少なくとも1つのE上昇成分とが、創傷領域のE水準の低下を防ぐことが示された。それにより細菌の代謝及び成長が抑制され、創傷領域の感染の予防及び治癒が可能である。
【0023】
ここで亜塩素酸ナトリウムを参照するが、安定した亜塩素酸塩の発生源として、二酸化塩素への減成を防止可能な酸塩化物などの、その他の酸化還元電位上昇化合物も本開示には想定されており、亜塩素酸ナトリウムを有する実施形態を例として説明することを理解されたい。NaClO(亜塩素酸ナトリウム)の二酸化塩素は抗菌性を有し、味、臭気、金属イオン酸化の制御と共に、細菌汚染の消毒及び制御に使用されてきた。高温レベルでの二酸化塩素はアミノ酸と化合して潜在的な変異原物質を形成する可能性があるので、亜塩素酸ナトリウムを二酸化塩素の発生源としてではなく酸化還元電位上昇化合物として使用することが非常に重要である。亜塩素酸ナトリウムの減成を避けるために、NaClOを提供する化合物を中性又は塩基性のpHに維持することによって、二酸化塩素をより低い、制御されたレベルで使用可能にできる。さらに、中性のpH又は塩基性のpHは亜塩素酸イオンに安定性を付与する。これに限らないが、例えば過酸化水素などの追加成分が、イオンの安定化、並びに分離された溶液及び帯電創傷洗浄液のpH制御のために、帯電創傷洗浄液に含まれてもよい。
【0024】
帯電創傷洗浄液はまたグルコン酸クロルヘキシジンも含む。これは細菌を減少させ、バイオフィルム形成を防止するために使用される消毒剤又は殺菌剤である。グルコン酸クロルヘキシジンは帯電創傷洗浄液に任意の有効量で提供することができる。例えばグルコン酸クロルヘキシジンは、体積で帯電創傷洗浄液の約0.01%~2%であってよい。一実施形態では、グルコン酸クロルヘキシジンは、体積で帯電創傷洗浄液の約0.05%であってよい。帯電創傷洗浄液は、代替又は追加として塩化セチルピリジニウムを含んでもよい。これもまた組織及び創傷内の細菌及び微生物を殺菌するための消毒剤である。グルコン酸クロルヘキシジン及び/又は塩化セチルピリジニウムは、帯電創傷洗浄液を形成するための溶液の片方、又は両方に、その化合の前に含まれてもよいし、あるいは帯電創傷洗浄液に追加するための別の溶液中に含まれてもよい。グルコン酸クロルヘキシジン及び/又は塩化セチルピリジニウムの追加により、帯電創傷洗浄液に追加的な抗菌特性が付与されて、特に細菌を減少しかつバイオフィルム形成を防止する。
【0025】
さらに、帯電創傷洗浄液は、抗生物質製剤、抗ウィルス剤、抗真菌剤、他の抗菌剤又はそれらの組合せを、片方又は両方の溶液に、化合させて帯電創傷洗浄液を形成する前に、更に含んでもよい。あるいは、抗生物質製剤、抗ウィルス剤、抗真菌剤、他の抗菌剤又はそれらの組合せを帯電創傷洗浄液に追加するための別の溶液内に含んでもよい。いくつかの実施形態において、帯電創傷洗浄液は1つ以上の抗生物質製剤、抗ウィルス剤、抗真菌剤、他の抗菌剤又はそれらの組合せを含む。抗生物質製剤、抗ウィルス剤、抗真菌剤、他の抗菌剤又はそれらの組合せは、洗浄/治療をすべき、創傷、手術部位、感染又は組織の種類ごとに選択されてもよい。帯電創傷洗浄液は、創傷の治癒を促進するために、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)タンパク質などのタンパク質もまた含んでもよい。TGF-β添加剤は、3つのアイソフォームTGF-β(β1、β2、β3)のいずれか又はその組み合わせであってよい。
【0026】
創傷洗浄液を形成する溶液は、創傷洗浄液の帯電特性が一時的であり得るので、使用時まで別々に保管されてもよい。すなわち、帯電創傷洗浄液は、その有効な遊離イオンが時間とともに失われて電荷を失い、創傷部位の酸化還元電位を上昇させる(あるいは酸化還元電位の低下を妨げる)ことができなくなる。溶液は、中性、酸性又は塩基性のpHに別々に保管されて、使用するときに化合される。例えば、亜塩素酸ナトリウムを中性又は塩基性のpHに保管することは、二酸化塩素の顕著な減成を防止できる。塩化亜鉛を酸性のpHに保管することは、亜鉛イオンの可用性の確保に役立つ。また、酸性のpHは、硫黄の陽イオンを酸性形に変換して、より高いEをもたらすことが可能である。硫化水素の場合には、硫化水素が揮発性であるために、その形成は硫黄の陽イオンによって運ばれる電子の効果的な除去手段として作用し、特にEの低下をもたらす。第3に、過酸化水素のカタラーゼ分解は、酸性のpHで抑制され得る。酸性のpHと塩化物イオンの存在により、組成内の過酸化水素が保管により劣化しないことが保証され、したがってその有効性が保持される。
【0027】
帯電創傷洗浄液は、帯電部の別々の隔室に貯留された2つの溶液を先ず化合させて帯電化合物を形成し、次に、洗浄スリーブ、エアロゾル灌注器又は他の適切な灌注器を介して分配することにより適用可能である。帯電創傷洗浄液のための分配及び適用システムの例は、米国特許出願第15/686,612号明細書、及び米国特許出願第15/686,617号明細書に提供されており、参照によりこれらの全体を本明細書に援用する。
【0028】
開示の創傷洗浄液は、創傷又は組織における代謝及び細菌の成長を減じ、かつバイオフィルム形成を減少または根絶するために、酸化還元電位を上昇させることを目的として、様々な種類の手術部位及び感染部に使用され得る。創傷洗浄液は、創傷、手術部位又は組織の種類に適切な任意の機構を介して適用されてよい。好適な分注機構の例は、米国特許出願第15/686,612号明細書に開示されており、その全体を本明細書に援用する。例えば、帯電創傷洗浄液は挫創洗浄剤として皮膚に適用され、ポンプ付きの2室容器が含まれて、2つ(又はそれ以上)の溶液を使用直前に化合させて帯電創傷洗浄液を構成してもよい。そうしてこれで皮膚を濯いで洗うことにより適用することができる。挫創洗浄剤として、帯電創傷洗浄液は挫創を軽減することを助け、挫創により皮膚及び皮下組織の開放創傷の感染を防ぐ。例えば、エアロゾル化された創傷洗浄液は、肺炎(より具体的には、医療ケア関連肺炎HCAP、院内肺炎HAP又は人工呼吸器関連肺炎VAP)、及び気管支炎のようなその他の呼吸器感染症、などの特定の肺疾患への適用に使用可能である。帯電創傷洗浄液を散布するためのエアロゾル化器は、これに限らないが、ネブライザ、アトマイザ、霧吹き、又は他のエアロゾルディスペンス装置であってよい。他の例では、膀胱洗浄に使用して、帯電創傷洗浄液をカテーテル(留置カテーテル又は灌注専用カテーテルなど)を介して膀胱及び/又は尿道へ分配して、これに限らないがカテーテル関連尿路感染症(CAUTIs)を含む、尿路感染症又は細菌のコロニー形成の治療及び/又は予防に使用してもよい。
【0029】
創傷洗浄システムには灌注器が含まれ得る。例えば、システムには洗浄スリーブ、エアロゾル灌注器又は他の適切な灌注器が含まれ得る。帯電化合物は、流体帯電部から灌注器へ送達されてよい。次に灌注器を使用して、創傷部位に帯電化合物を適用可能である。例えば、医療専門家は灌注器を使用して、慢性創傷、手術創傷及び/又は術後手術創傷、外傷性創傷に対して、創傷を含まない患者の皮膚上の領域へ直接、又は患者の皮膚の他の適切な領域へ、又はそれらの組合せで、帯電化合物を適用することができる。慢性創傷としては、糖尿病潰瘍、褥瘡潰瘍、静脈うっ血潰瘍、湿疹による皮膚、乾癬による皮膚、慢性皮膚感染、その他の適応する慢性創傷、又はそれらの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態においては、ツタウルシやウルシへの接触による皮膚、他の皮膚刺激物による皮膚、アレルギー反応による皮膚などの非慢性創傷、又は他の適応する非慢性創傷、又はこれらの組合せに対して帯電化合物が適用されてよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、帯電化合物が帯電されていないときには、システムは、患者の皮膚及び/又は創傷領域の洗浄を防止するようになっている。例えば、ある時間が経過すれば帯電化合物は電荷を失い、帯電化合物内の有効な亜鉛イオンの量が減少する。これにより、帯電化合物は、細菌や他の病原体の根絶、及び創傷領域におけるEの降下の防止に対して効力がなくなる。他の実施形態では、帯電流体がその電荷をなくした後も創傷部位に留められて、抗生物質、消毒剤、ビタミン又はタンパク質を創傷に引き続き提供する。少なくとも1つの実施形態において、流体を創傷部位に保持することが、その電荷をなくした後であっても、創傷領域のEの降下を防止し続ける。
【0031】
いくつかの実施形態において、システムには流体帯電部又はその近くに配置された弁が含まれる。弁は手動又は自動で制御されて、灌注器への帯電化合物の流れを制御することができる。例えば、システムを操作する医療専門家が弁を開いて、流体帯電部から帯電化合物を放出することができる。流体帯電部から帯電化合物が所定の時間及び/又は所定の量だけ放出された後、医療専門家は弁を閉じることができる。所定の時間の長さ及び/又は帯電化合物の所定の量は、電荷がなくなる前にその灌注器が帯電化合物を創傷領域及び/又は患者の皮膚に適用できる帯電化合物の量に対応してよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、システムにはストップウォッチ、カウンタ又はその他の適切なタイマーなどのタイマーが含まれてよい。タイマーは、システムを操作する医療専門家から見えやすいシステムの部分に配置されてよい。例えば、容器若しくはその近く、灌注器若しくはその近く、あるいはシステム上のそのほかの適切な位置に時間は配置されてよい。タイマーは、帯電化合物がその電荷をなくすか、なくし始める時間を操作者が判定するための視覚的なガイドとなり得る。その時間に基づいて、医療専門家は創傷領域及び/又は患者の皮膚の洗浄を停止することができる。いくつかの実施形態において、時間はカウントダウンの時間であってもよい。例えば、タイマーは帯電化合物が流体帯電部から放出されたときにスタートしてもよい。タイマーは、帯電化合物が創傷領域のEを効果的に上昇させるのに十分な有効な遊離亜鉛イオンを保持し続ける時間の長さに設定することができる。タイマーがゼロになると、医療専門家は創傷領域及び/又は患者の皮膚の洗浄を停止してもよい。他の実施形態では、創傷部位に抗菌効果、抗生物質効果又は消毒効果を与えるか、創傷部位の酸化還元電位の低下を防止するために、流体が電荷を有するか否かに拘わらず、帯電流体が長時間流し続けられる。そうして、医療専門家が洗浄を終了した後でさえも感染のリスクを低減する。
【0033】
図1図2は、本開示の原理による創傷及び/又は皮膚の洗浄システム100の概略図である。システムは、容器102、灌注器又は洗浄スリーブ104及びタンク106を含む。いくつかの実施形態において、容器102は点滴バッグ、円筒形若しくは他の適切な外形をしたキャニスタ、又は他の適切な容器を含む。容器102は1つ以上の流体を受容するようになっている。例えば、容器102には第1部分又は上部108がある。上部108には、1つ以上の流体を受けるようになった開口及び/又はアダプタがある。いくつかの実施形態において、上部108には流体を受けるようになった複数の開口及び/又はアダプタがある。
【0034】
いくつかの実施形態において、容器102には少なくとも1つの仕切り110がある。仕切り110は容器102の内部に配置され、容器102を、仕切り110の第1の側に配置された第1隔室112と、仕切り110の第1の側の反対側である、仕切り110の第2の側に配置された第2隔室114とに分割するようになっている。ここでは1つだけの仕切り110を説明するが、本開示の原理は、任意の適切な数の仕切り110を有する容器102に適用される。さらに、本開示の原理は、ここで説明するよりも多いか、少ない隔室を有する容器102にも適用される。仕切り110は、第1隔室112の流体を第2隔室114の流体から隔離して、第1隔室112の流体が第2隔室114の流体と混合及び/又は相互作用しないようにする。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1隔室112は第1流体を貯留するようになっている。例えば、上述したように容器102には1つ以上の流体を受けるようになった1つ以上の開口及び/又はポートがある。いくつかの実施形態において、第1の開口及び/又はポートは第1隔室112に対応してよい。例えば、第1の開口及び/又はポートは、第1流体を受けて、第1流体を第1隔室112へ向かわせるようになっている。第2隔室114は第2流体を貯留するようになっている。例えば、第2の開口及び/又はポートは第2隔室114に対応することができる。例えば、第2の開口及び/又はポートは、第2流体を受けて、第2流体を第2隔室114へ向かわせるようになっている。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1流体は第2流体とは異なる流体である。第1流体は、第2流体と化学的に相互作用して帯電化合物を形成することができる流体を含む。例えば、第1流体が塩化亜鉛(ZnCl2)を含み、第2流体が亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)を含む。第1流体と第2流体は交換可能であることを理解されたい。例えば、第1流体が亜塩素酸ナトリウムを含み、第2流体が塩化亜鉛を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1流体が塩化銀(II)(AgCl)を含み、第2流体が亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む。いくつかの実施形態では第1流体が硝酸銀(AgN0)を含み、第2流体が生理食塩水を含む。いくつかの実施形態において、第1流体が塩化銅(CuCl)を含み、第2流体が亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む。追加又は代替として、容器102には1つ以上の追加の流体隔室があってもよい。追加の1つ以上の流体隔室は、1つ以上の追加流体の貯留に適合され得る。例えば、1つ以上の追加流体は、抗菌性流体(塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン又はその他の消毒剤など)、ビタミン流体、他の適切な流体、あるいはそれらの組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ビタミン流体には、ビタミンA流体、ビタミンC流体、ビタミンD流体、ビタミンE流体、他の適切なビタミン流体又はそれらの組合せが含まれてよい。いくつかの実施形態において、第1流体及び/又は第2流体には、1つ以上の抗生物質、1つ以上のビタミン又はそれらの組合せが注入されてもよい。
【0037】
一実施形態では、創傷洗浄液はビタミンC成分を含んでもよい。ビタミンCは、これに限るものではないが、アスコルビン酸、コルビン酸金属塩などのアスコルビン酸塩、フラボノイド、又は抗酸化剤特性を有するそれらの混合物又は変形物などの、ビタミンCの任意の形態であってよい。ビタミンC成分は、抗酸化剤特性の他に、創傷の治癒特性を有し得る。いくつかの例では、ビタミンC成分は抗菌特性を有し得る。ビタミンC成分は、帯電前にいずれか又は双方の溶液に含まれてもよいし、あるいは、別の溶液に含まれて、帯電洗浄液に化合されてもよい。ビタミンC成分は、ビタミンC成分の種類と提供される溶液とで決定される、任意の有効濃度で含まれてよい。例えば、ビタミンC成分は、イオン化した亜鉛溶液の約1mM~10mM、約2mM~8mM又は3mM~7mMであってよい。一実施形態では、ビタミンC成分は、創傷洗浄液の約1mMである。別の例では、移植組織の治癒のために、ビタミンC成分が創傷洗浄液に約3mg/ml含まれてもよい。さらにいくつかの実施形態において、帯電創傷洗浄液には、これに限らないが、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1-6、ビタミンB12など、及びそれらの混合物などの、他のビタミンが更に含まれてもよい。例えばBビタミンは、宿主組織の潜在的毒性、及び/又は創傷洗浄液成分の酸化損傷に対する、予防特性を提供し得る。
【0038】
一実施形態では、皮膚移植用途において帯電創傷洗浄液を使用して、感染の予防/撃退を助け、宿主拒絶を減らし、成長を促進させてもよい。そのようなものとして、ビタミンC成分、グルコン酸クロルヘキシジン/塩化セチルピリジニウム及び任意で抗生物質を含むイオン化した亜鉛溶液を、亜鉛イオン、ビタミンC成分、消毒剤及び/又は抗生物質の有効量に基づいて、例えば1日に2回、皮膚移植片上にスプレー又は噴霧してもよい。
【0039】
別の実施形態では、火傷用途における皮膚の治癒/上皮再形成及び感染の予防/撃退を促進するために、帯電創傷洗浄液を使用して抗菌性効果を提供してもよい。ビタミンC成分は、火傷部位における苦痛と膨潤を減少させるための抗酸化特性と抗炎症性効果を提供し得る。
【0040】
さらに別の実施形態では、帯電創傷洗浄液を外科手術の準備のための開放創傷の洗浄に使用してもよい。開放創傷には、ヨード、クロルヘキシジン、アルコール、及び過酸化水素などの毒性洗浄液を使用した準備はできない。帯電創傷洗浄液は、プレップスティック(prep-stick)を用いて供給してもよい。開放創傷部位への適用の前にこれを割って溶液を化合させる。2つの溶液の間のセパレータを破断することで、溶液を混合してイオン化した組成を形成することができる。帯電創傷洗浄液は、皮膚及び周辺組織の細菌のコロニー再形成を阻害する、酸化還元電位上昇成分の有効量に基づいて、手術時間及びそれを超えて持続し得る、永続性のある耐細菌効果を与えることが可能である。
【0041】
第2流体に対する第1流体の比は、得られる帯電化合物の用途及び/又は使用法に基づいて変わり得る。あるいは、所望の帯電化合物が第1流体と第2流体の間の相互作用から生じるように、第1流体と第2流体の様々な特性が変更及び/又は制御されてもよい。そのような比及び/又は特性は、米国特許第6,409,992号明細書に記述されており、それを参照により本明細書に援用する。
【0042】
上記のように、第1流体と第2流体が互いに相互作用するとき、第1流体と第2流体は帯電化合物を形成する。システム100は流体帯電部118を含む。流体帯電部118は容器102の下部120又はその近くに配置される。第2の部分又は下部120は、容器102の上部108の反対側に配置される。
【0043】
いくつかの実施形態において、1つ以上の流体移送部122が下部120から流体帯電部118へ延びる。例えば、第1流体移送部122Aが下部120から流体帯電部118へ延び、第2流体移送部122Bが下部120から流体帯電部118へ延びる。第1流体移送部122Aは第1隔室112に連通し、第2流体移送部122Bは第2隔室114に連通する。ここでは、第1と第2の移送部122A、122Bのみが記述されているが、本システム100は、容器102の対応する隔室に連通する、任意の数の適切な移送部122を含んでよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1流体の一部は第1隔室112から流体帯電部118へ第1流体移送部122Aを経由して移動し、第2流体の一部は第2隔室114から流体帯電部118へ第2流体移送部122Bを経由して移動する。例えば、各流体移送部122は、図2に概略を示すように、弁124を含んでもよい。弁124は流体を容器102から流体帯電部118内へ放出するようになっている。例えば、それぞれの弁124は、流体を容器102から流体帯電部118へ移動させるように選択的に開放される遮断弁を含んでもよい。いくつかの実施形態において、システム100を操作する医療専門家は、流体を容器102から流体帯電部118へ移動させるために、弁124に付属するレバー又はノブなどの制御器を動作させてもよい。その逆に、医療専門家は、容器102から流体帯電部118への流体の移動を阻止するために、制御器を動作させてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、流体は流体に作用する重力によって容器102から流体帯電部118へ移動する。容器102は流体帯電部118より上部の位置に配置されてよい。例えば、容器102は点滴スタンド又は他の適切なスタンドに吊るされてもよい。いくつかの実施形態において、容器102内の流体に重力を作用させるために、医療専門家が容器102を流体帯電部118より上に保持してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、図2に概略的に示すようなポンプ126が容器102から流体帯電部118への流体移動を促進してもよい。例えば、ポンプ126は、容器102又はシステム100のその他の適切な構成要素と連通していてもよい。ポンプ126は容器102から流体帯電部118への流体の移動を促進する流れ及び/又は力を生成してもよい。この力は、正圧、真空効果の生成、又は搾乳効果のいずれの形態であってもよい。
【0047】
上記のように、第1流体の一部と第2流体の一部が流体帯電部118にあるとき、第1隔室112から移動した第1流体の一部が第2隔室114から移動した第2流体の一部と相互作用して帯電化合物を形成する。いくつかの実施形態において、帯電化合物は流体帯電部118から、流体帯電部118に接する化合物送達部128の第1の端部から延びる、化合物送達部128へ移動する。
【0048】
いくつかの実施形態において、化合物送達部128には、可撓性のポリマーチューブ若しくはホース、波付きのチューブ若しくはホース、又はその他の適切なチューブ若しくはホースの少なくともいずれかを含む。化合物送達部128は、直径と長さを有するほぼ円形の外形を含む。いくつかの実施形態において、この直径と長さが、帯電化合物が化合物送達部128を所定の速度で流れることを可能とする。例えば、直径が大きいほど、直径が小さい場合よりも帯電化合物が化合物送達部128をより高速で流れることができる。追加又は代替として、長さが長いほど、短い場合よりも帯電化合物が化合物送達部128をより低速で流れることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、図2に概略的に示す調節器130が、化合物送達部128の流体帯電部118又はその近くに配置されてよい。調節器130は、上で述べた弁124と同様の特徴を含んでもよい。システム100を操作する医療専門家が調節器を作動させて、帯電化合物を流体帯電部118から化合物送達部128へ移動させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、帯電化合物に作用する重力と、電化合物を化合物送達部128に押し込むポンプ126の少なくとも一方の結果として、帯電化合物が化合物送達部128に引き込まれる。いくつかの実施形態において、化合物送達部128の第2の端部は洗浄スリーブ104に、接続、結合、取り付け、及び/又は連通するようになっている。
【0051】
例えば、洗浄スリーブ104には、洗浄スリーブ104の上部134の近くに配置された第1開口132が含まれる。いくつかの実施形態において、化合物送達部128の第2の端部が第1開口132に挿入されるようになっている。いくつかの実施形態において、第1開口132には、化合物送達部128の第2端部を受けるように適合されたポートが含まれてよい。追加又は代替として、化合物送達部128の第2の端部は、本明細書に記載のものとは違う適切な方法で、第1開口132に、接続、結合、取り付け、及び/又は連通するようになっていてもよい。
【0052】
上記のように、帯電化合物は流体帯電部118から化合物送達部128へ移動する。帯電化合物は、化合物送達部128の第2端部において化合物送達部128を出て、第1開口132から洗浄スリーブ104に入る。いくつかの実施形態において、図2に概略を示すように、第1開口132にはフィルタ136が含まれてよい。フィルタ136は、スクリーン又は他の適切なフィルタを含むことができ、帯電化合物が創傷領域及び/又は患者の皮膚を洗浄する前に、帯電化合物から粒子を濾過するようになっている。
【0053】
いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は外形を有している。この外形は、患者の解剖学的構造の一部に対応する外形であってよい。例えば、図1及び図2に概略を示すように、外形は患者の足に対応する外形であってよい。洗浄スリーブ104は、一般的な外形を有して、その外形が様々な患者を受容できるようになっていてもよい。いくつかの実施形態において、外形は特定の患者に合うようになっていてもよい。例えば、洗浄スリーブ104が一患者の足に対応する外形であってもよい。患者の足は、計測及び/又は検査されてもよい。洗浄スリーブ104は患者の足の計測及び/又は検査に一致するように製造されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、外形には、円筒などの一般的形状が含まれ得る。一般的形状である外形を有する洗浄スリーブ104は、腕や足などの患者の解剖学的構造の一部の周りに包囲されてよい。いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104には取付け部(図示せず)が含まれてもよい。例えば、洗浄スリーブ104の一部が開放されて患者の解剖学的構造の対応部分を受容してもよい。洗浄スリーブ104には、患者の解剖学的構造の対応部分の周りに洗浄スリーブ104を閉鎖するように適合された閉鎖機構が含まれてもよい。閉鎖機構には、ストラップ、テープ、面ファスナあるいはその他の適切な閉鎖機構が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は患者の解剖学的構造の対応部分上を滑動してもよい。例えば、図1及び図2に概略を示す洗浄スリーブ104は、患者の足の上へ靴下のように滑動してもよい。いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は締め付けの特徴を含んでもよい。例えば、洗浄スリーブ104は、洗浄スリーブ104を患者に締め付け及び/又は圧迫する、ひも、ストラップ又はその他の特徴を含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は、1つ以上の流体シールを含んでもよい。流体シールは、帯電化合物などの流体が1つ以上の開口から洗浄スリーブ104の外へ出ないようにするために、洗浄スリーブ104の1つ以上の開口に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は、上部134の周りに配置された流体シールを含んで、洗浄スリーブ104を患者に装着したときに、上部134に液密シールが形成されるようになっていてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は1つ以上の手動又は自動のポンプを含み、それでスリーブから空気を取り除いて潜在的な空間を低減してもよい。これにより、対象とする解剖学的構造を包囲し、所望の表面に係合するために、より少ない量の流体の使用が可能となる。
【0057】
いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は患者の1つ以上の創傷領域を覆う。非限定的な例としてのみであるが、洗浄スリーブ104は1つ以上の糖尿病による足部潰瘍を覆うように適合されてよい。本明細書において限定的な実施例のみを記述するが、洗浄スリーブ104は、任意の適切な創傷領域又は患者の皮膚部分を覆うように適合されてもよい。帯電化合物が第1開口132を経由して洗浄スリーブ104に入ると、帯電化合物は1つ以上の創傷領域へ向けられる。帯電化合物は、1つ以上の創傷領域においてより高いレベルのEを促進するために、1つ以上の創傷領域及び/又は患者の皮膚を洗浄する。これにより、1つ以上の創傷領域における嫌気性細菌の代謝及び/又は成長が減少する。1つ以上の創傷領域において細菌の代謝及び/又は成長が減少することにより、1つ以上の創傷領域における感染が予防及び/又は治癒され得る。コロニー形成もまた減少され、それによってその領域における創傷の治癒ポテンシャルを増加させることができる。
【0058】
前述したように、帯電化合物の電荷は時間とともに減少する。帯電化合物の電荷が、帯電閾値より下がると、帯電化合物は残留化合物に変換される。残留化合物は、時間とともに1つ以上の創傷領域のEをより高いレベルに上げる効果がなくなる可能性がある。1つ以上の創傷領域に対する残留化合物の洗浄を防止するために、調節器130にはタイマーが含まれてもよい。タイマーは、医療専門家が帯電化合物が電荷を失った、あるいは失い始めた時を判定する視覚的なガイドとして作用することが可能である。医療専門家は、タイマーに基づいて、創傷領域又は患者の皮膚の洗浄を停止可能である。いくつかの実施形態において、タイマーはカウントダウン時間を含んでもよい。例えば、タイマーは帯電化合物が流体帯電部118から放出されたときにスタートしてもよい。タイマーは、抗菌性効能を維持するか又は1つ以上の創傷領域においてEを効果的に上昇させるために、帯電化合物が十分な遊離有効イオンを保持する時間の長さに設定してもよい。タイマーがゼロになると、医療専門家は1つ以上の創傷領域及び/又は患者の皮膚の洗浄を停止してもよい。本明細書において限定的な実施例のみを記述するが、タイマーは任意の適切なタイマーであってよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、残留化合物は洗浄スリーブ104から放出されてもよい。いくつかの実施形態において、洗浄スリーブ104は第2開口138を含む。第2開口138は洗浄スリーブ104の下部140に配置されてもよい。下部140は洗浄スリーブ104の上部134の反対側に配置される。いくつかの実施形態において、弁が第2開口138又はその近くに配置されてよい。医療専門家は弁を作動させて、洗浄スリーブ104内に真空効果を生成することができる。真空効果により、残留化合物を第2開口138に向かって吸引してもよい。いくつかの実施形態において、残留化合物に作用する重力が残留化合物を第2開口138に向かって吸引してもよい。残留化合物は第2開口138を経由して洗浄スリーブ104から出てもよい。いくつかの実施形態において、第2開口138又はその近くにフィルタ142が配置されてもよい。フィルタ142は、フィルタ136と同様の特徴を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、排水部144は、その排水部144の第1端部が第2開口138に接続、結合、取り付け、又は連通される。排水部144は、チューブ又はホースを含み、化合物送達部128と同様の特徴を含んでもよい。排水部144は、排水部144の第1端部から排水部144の第2端部に至るまで、第2開口138から延在する。排水部144の第2端部は、タンク106に接続、結合、取り付け、又は連通されてよい。
【0061】
タンク106は、ほぼ円筒形の外形を有する金属容器であってよい。いくつかの実施形態において、タンク106は、円筒形以外の外形を有する金属容器、バッグ、入れ物又は他の適切な貯水槽であってよい。タンク106は、排水部144を介して残留化合物を受けるようになっている。いくつかの実施形態において、タンク106は、複数の洗浄スリーブ104から残留化合物を受けてもよい。残留化合物がタンク106内に収容された後、タンク106内の残留化合物は廃棄されてもよい。
【0062】
図3は、本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の代替洗浄システム200の概略図である。いくつかの実施形態において、医療専門家は、患者の手術中(術中創傷)及び/又は手術後(術後創傷)に手術創傷を洗浄する場合がある。医療専門家はシステム200を操作して、帯電化合物を術中創傷及び/又は術後創傷に向け、創傷部における手術中及び/又は手術後の感染を予防及び/又は治療するために創傷部のEを上昇させる。システム200は、容器202を含む、携帯型又は実質的に携帯型の洗浄システムを含み得る。容器202は、ほぼ円筒形の外形又は他の適切な外形を含んでよい。容器202は1つ以上の流体を受けるようになっており、かつ容器102と同様の特徴を含む。いくつかの実施形態において、容器202には仕切り204が含まれる。仕切り204は仕切り110と同様の特徴を含む。仕切り204は、仕切り204の第1の側に配置された第1隔室206と、仕切り204の第2の側に配置された第2隔室208とを画定する。仕切り204の第2の側は、仕切り204の第1の側の反対側に配置される。
【0063】
第1隔室206は第1隔室112と同様の特徴を含み、第2隔室208は第2隔室114と同様の特徴を含む。第1隔室206は第1流体を受けて貯留するようになっている。第1流体は、上で図1及び図2に関して説明した第1流体と同様の特徴を含む。第2隔室208は第2流体を受けて貯留するようになっている。第2流体は、上で図1及び図2に関して説明した第2流体と同様の特徴を含む。ここでは第1隔室206と第2隔室208のみを説明したが、システム200は任意の適切な数の隔室を含んでもよく、また任意の適切な数の流体を受けて貯留してもよい。
【0064】
システム200は1つ以上の流体移送部210を含む。例えば、システム200は、第1隔室206に配置された第1流体移送部210Aと、第2隔室208に配置された第2流体移送部210Bとを含む。第1流体移送部210Aは、第1隔室206から第1流体の一部を引き出すように適合され、また、第2流体移送部210Bは、第2隔室208から第2流体の一部を引き出すように適合されている。
【0065】
いくつかの実施形態において、システム200は容器202の上部又はその近くに配置された灌注器212を含む。灌注器212は帯電化合物を手術創傷に適用するように適合されている。例えば、灌注212は、灌注器212の内部に配置された流体帯電部214を含む。流体帯電部214は、流体帯電部118と同様の特徴を含む。流体帯電部214は、第1流体の一部と第2流体の一部を受けるようになっている。流体帯電部118に関して前述したように第1流体の一部と第2流体の一部は相互作用して、流体帯電部214内に帯電化合物を形成する。
【0066】
いくつかの実施形態において、灌注器212はアクチュエータ216を含む。アクチュエータ216には、トリガー又は他の適切なアクチュエータが含まれてよい。医療専門家がアクチュエータ216を作動させると、容器202内に、真空及び/又は吸引効果が生成される。第1流体の一部と第2流体の一部が、真空及び/又は吸引効果に応答して流体帯電部214内に吸引される。
【0067】
灌注器212は複合アプリケータ218を含む。複合アプリケータ218は、アクチュエータ216により生成された真空及び/又は吸引効果に応答して、流体帯電部214から帯電化合物を押し出すことにより手術創傷へ帯電化合物を適用するようになっている。複合アプリケータ218には、選択的に調節可能なヘッド220が含まれてよい。ヘッド220は、化合物の適用範囲を狭めたり、広げたりするように調節可能である。医療専門家がアクチュエータ216を作動させて帯電化合物が手術創傷に当たる方向に灌注器212を照準することにより、医療専門家は帯電化合物を手術創傷に向けることができる。
【0068】
図4は、本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の代替洗浄システム300の概略図である。医療専門家はシステム300を操作して、帯電化合物を手術創傷及び/又は術後創傷に向けて、創傷部における手術中及び/又は手術後の感染を予防及び/又は治療するために創傷部のEを上昇させる。システム300は、容器302を含む、携帯型又は実質的に携帯型の洗浄システムであってよい。容器302は、図1及び図2に関して説明した容器102の特徴と同様の特徴を含む。システム300は流体帯電部304を含む。流体帯電部304は、図1及び図2に関して説明した流体帯電部118の特徴と同様の特徴を含む。システムは化合物送達部306を含む。化合物送達部306は、図1及び図2に関して説明した化合物送達部128の特徴と同様の特徴を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、システム300は灌注器308を含む。灌注器308は、図3に関して説明した灌注器212の特徴と同様の特徴を含んでよい。いくつかの実施形態において、灌注器308は、連続又は実質的に連続して洗浄する灌注器を含む。例えば、灌注器308は、帯電化合物を手術創傷へ連続又は実質的に連続して適用できるようになった、動力付き及び/又はモータ駆動の灌注器を含んでもよい。医療専門家は、灌注器308に付属のアクチュエータを作動させることが可能である。アクチュエータが作動している間、灌注器308は、医療専門家が灌注器308を照準及び/又は指向させた手術創傷に向けて帯電化合物を連続又は実質的に連続して適用することが可能である。
【0070】
図5は、本開示の原理による、創傷及び/又は皮膚の洗浄方法500のフローチャートである。ステップ502において、方法500は第1流体と第2流体を提供することを含む。例えば、前述したように第1流体と第2流体は、それぞれ第1隔室と第2隔室に提供されてよい。ステップ504において、方法500は第1流体と第2流体の間に仕切りを提供することを含む。例えば、仕切りは、第1流体が2流体と相互作用しないように、第1流体と2流体とを分離させるために設けられてよい。
【0071】
ステップ506において、方法500は第1流体の一部と第2流体の一部を放出することを含む。例えば、第1流体の一部と第2流体の一部を、流体帯電部118、流体帯電部214又は流体帯電部304などの流体帯電部に放出することが可能である。ステップ508において、方法500は帯電化合物の生成を含む。例えば、第1流体の一部が第2流体の一部と相互作用して、前述したように帯電化合物を形成する。ステップ510において、方法500は帯電化合物の送達を含む。例えば、前述したように、帯電化合物は洗浄スリーブ104、灌注器212又は灌注器308に送達されてよい。
【0072】
ステップ512において、方法500は、化合物が帯電している間に、創傷領域を洗浄することを含む。例えば、前述したように、医療専門家は、帯電化合物が帯電している間に、帯電化合物を用いて、1つ以上の創傷領域、1つ以上の術中及び/又は術後の創傷、患者の皮膚の一部またはこれらの組み合わせを洗浄する。ステップ514において、方法500は、残留化合物を回収する。例えば、前述したように、帯電化合物の電荷が帯電閾値より下がると、帯電化合物は残留化合物となる。残留化合物は、タンク106により回収できる。いくつかの実施形態において、方法500はステップ514を省略してもよい。
【0073】
本開示は、(例えば、Zn2+、Ag、Ag2+、Cu2+、などの)帯電したイオン又は電子を含むイオンまたは電子で帯電した溶液とビタミンC成分を含む帯電創傷洗浄液に関する。帯電創傷洗浄液は、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、抗生物質及び/又はそれらの組合せを更に含んでよい。帯電したイオン又は電子は、例えば、ZnCl及びNaClOなどの溶液を化合させて提供され得る。帯電創傷洗浄液は創傷部位の酸化還元電位を上昇させ、それにより、創傷、手術部位、体液、関節、腹膜、臓器、体腔、膿瘍、並びに人工関節、ヘルニアメッシュ、外傷用ハードウェア、脊椎器具、刺激装置、除細動器、ペースメーカ、乳房インプラントなどの移植された非生体材料の周りの組織における、細菌の増殖を低減し、また感染を予防/治癒/撃退する。前に述べたように、帯電創傷洗浄液は、人体におけるとともに、動物も開放創傷及び手術から同様の感染リスクにさらされるので獣医環境における動物の体においても、手術部位、創傷又は感染の治療に使用され得る。
【0074】
本明細書において使用する「又は」という用語は、排他的な「又は」というより、包含的な「又は」を意味することを意図している。すなわち、特に断らない限り、また文脈から明らかでない限り、「XがA又はBを含む」ということは、任意の普通の包括的順列を示すことを意図している。すなわち、XがAを含むか、XがBを含むか、又はXがAとBの両方を含む場合には、「XがA又はBを含む」ということが、これらの例のいずれにおいても満足される。さらに、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、単数形を指すことが特に明記されるか、又は文脈から明確でない限り、「1つ以上」を意味するとものと一般的にみなされるべきである。
【0075】
さらに、説明を簡単にするために、本明細書における図及び説明は、ステップ又は段階の序列又は系列を含むが、本明細書に開示の方法の要素は様々な順序で、又は同時に起きてもよい。さらに、本明細書に開示の方法の要素は、本明細書に明らかに提示及び記述されていない他の要素と一緒に起きてもよい。さらに、本明細書で説明した要素は必ずしもすべてが、本開示に従う方法の実施に必要なわけではない。本明細書において、態様、特徴及び要素を特定の組み合わせで説明したが、それぞれの態様、特徴及び要素は、独立して使用されてもよいし、他の態様、特徴及び要素の有無に拘わらず様々な組み合わせで使用されてもよい。
【0076】
本開示を特定の実施形態に則して説明したが、本開示は開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろその逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な変更及び等価な構成を含むことが意図されることを理解されたい。この特許請求の範囲は、法律の下で許可されるそのようなすべての変更及び等価な構造を包含するように、最も広義の解釈が与えられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5