(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】配管の分岐構造
(51)【国際特許分類】
F16L 41/08 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
F16L41/08
(21)【出願番号】P 2019147972
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏幸
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0012533(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0037212(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第03385592(EP,A1)
【文献】特開2003-004187(JP,A)
【文献】実開平05-059083(JP,U)
【文献】実開昭62-062091(JP,U)
【文献】特開平04-119290(JP,A)
【文献】中国実用新案第205208005(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管と、前記主管の軸方向両端間に設定された複数の分岐位置に一つずつ配置された複数の分岐継手と、を有する配管の分岐構造であって、
前記主管の前記分岐位置には、横孔が形成されており、
前記分岐継手は、前記主管の外周に装着される筒部と、前記筒部の内部に通じる通路が形成されると共に分岐管が接続される分岐部と、前記主管と前記筒部との間をシールするシール部材と、を備え
、前記横孔と前記分岐部の前記通路とが連通
し且つ前記シール部材によって前記主管と前記筒部との間がシールされた状態
で前記主管の外周に装着された前記筒部が前記主管の軸方向に移動できる、配管の分岐構造。
【請求項2】
前記主管の一つの前記分岐位置には、前記主管の周方向に間隔をあけて複数の横孔が形成されている、請求項1に記載の配管の分岐構造。
【請求項3】
前記シール部材は、環状とされ、前記筒部の内周面に形成された環状のシール溝に収容されており、
前記横孔は、前記主管の外周に向けて径が拡径する拡径部を有する、請求項1又は請求項2に記載の配管の分岐構造。
【請求項4】
前記主管の軸方向の端部には、先端に向けて外径が縮径する縮径部が形成されている、請求項3に記載の配管の分岐構造。
【請求項5】
前記筒部の内径は、前記筒部の軸方向両端部側よりも前記筒部に形成された前記通路の開口側で大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の配管の分岐構造。
【請求項6】
前記筒部の内周面には、環状の連通溝が形成されており、前記連通溝の底面に前記通路の開口が形成されている、請求項5に記載の配管の分岐構造。
【請求項7】
前記筒部の軸方向両端部には、前記筒部の外周から突出する環状リブがそれぞれ形成され、
前記シール部材は、円筒状であり、前記筒部の軸方向両端部にそれぞれ配置され、
各々の前記シール部材は、一部分が前記筒部の軸方向両端部の外周にそれぞれ密着し、残りの部分が前記主管の外周に装着され、
各々の前記シール部材の前記一部分に対応する内周面には、環状の凹部が形成され、前記凹部に前記環状リブが嵌まっている、請求項1に記載の配管の分岐構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の分岐構造に関する。
【背景技術】
【0002】
主管から複数の位置で分岐する配管の分岐構造としては、T字継手を用いた分岐構造が知られている。
【0003】
また、特許文献1に開示の配管の分岐構造では、1本の主管の外周にT字の分岐継手の筒部を装着し、分岐継手の分岐部に分岐管を通して分岐管の先端を主管に形成された横孔に圧入することで、主管から分岐管を分岐させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
T字継手を用いた配管の分岐構造は、主管を構成する複数の分割管をT字継手で連結することで形成される。ここで、主管の長さ(軸方向両端間の距離)には、各分割管の長さの製造誤差やT字継手に対する分割管の接続代(挿入代)の誤差が蓄積される。このため、主管の長さは、分岐数が増えるほど誤差が大きくなり、組立毎に主管の長さが変化するという問題が生じる。また、特許文献1に開示の配管の分岐構造では、分岐管の先端を主管に形成された横孔に圧入するため、主管に分岐管を組付ける際や組付けた後に、主管に対する分岐管の位置を調整することができない。
【0006】
本発明は、主管と該主管の外周に装着される分岐継手を有する配管の分岐構造において、組立毎に主管の長さを変化させず、かつ主管に対する分岐管の位置を調整可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の配管の分岐構造は、主管と、前記主管の軸方向両端間に設定された複数の分岐位置に一つずつ配置された複数の分岐継手と、を有する配管の分岐構造であって、前記主管の前記分岐位置には、横孔が形成されており、前記分岐継手は、前記主管の外周に装着される筒部と、前記筒部の内部に通じる通路が形成されると共に分岐管が接続される分岐部と、前記主管と前記筒部との間をシールするシール部材と、を備え、前記横孔と前記分岐部の前記通路とが連通する状態で前記筒部が前記主管の外周に装着されている。
なお、ここでいう「分岐部に分岐管が接続される」には、分岐部に分岐管を直に接続する形態と、分岐部に他の部材を介して分岐管を間接的に接続する形態を含む。
【0008】
第1態様の配管の分岐構造では、分岐継手の筒部を主管の外周に装着して、主管の複数の分岐位置に一つずつ分岐継手を配置している。このため、上記配管の分岐構造では、例えば、主管を複数に分割した分割管とT字継手とを用いて主管を分岐させる構造と比べて、組立毎に主管の長さが変化しないため、主管の長さを一定にできる。
【0009】
また、上記配管の分岐構造では、主管の横孔と分岐部の通路とが主管と筒部との間の隙間を介して連通する状態で分岐継手の筒部が主管の外周に装着されている。ここで、上記配管の分岐構造では、分岐継手の分岐部に分岐管が接続されるため、例えば、主管の横孔に分岐管の先端が圧入されて主管と分岐管が接続される分岐構造と比べて、主管に対して分岐継手の筒部を主管の軸方向に移動させることができる。これにより、分岐部に接続された分岐管を主管の軸方向に位置調整することができる。また、主管に対して分岐継手の筒部を主管の軸回りに回転させることもできる。これにより、分岐部に接続された分岐管を主管の周方向に位置調整することができる。
【0010】
本発明の第2態様の配管の分岐構造は、第1態様の配管の分岐構造において、前記主管の一つの前記分岐位置には、前記主管の周方向に間隔をあけて複数の横孔が形成されている。
【0011】
第2態様の配管の分岐構造では、主管の一つの分岐位置には、主管の周方向に間隔をあけて複数の横孔が形成されているため、例えば、主管の一つの分岐位置に一つの横孔を形成する構造と比べて、分岐部の通路と主管の横孔の位置が主管の周方向でずれていても、流体を主管と分岐管との間でスムーズに流すことができる。
【0012】
本発明の第3態様の配管の分岐構造は、第1態様又は第2態様の配管の分岐構造において、前記シール部材は、環状とされ、前記筒部の内周面に形成された環状のシール溝に収容されており、前記主管の外周に向けて径が拡径する拡径部を有する。
【0013】
第3態様の配管の分岐構造では、主管の横孔が主管の外周に向けて径が拡径する拡径部を有することから、例えば、横孔が一定径とされた主管を用いる分岐構造と比べて、分岐継手の筒部を主管の軸方向に移動させる際に、横孔の外縁部(主管の外周側の縁部)によってシール部材の内周に傷が付くのを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4態様の配管の分岐構造は、第3態様の配管の分岐構造において、前記主管の軸方向の端部には、先端に向けて外径が縮径する縮径部が形成されている。
【0015】
第4態様の配管の分岐構造では、主管の軸方向の端部に先端に向けて外径が縮径する縮径部が形成されていることから、主管を分岐継手の筒部に挿入する際に、主管の縮径部にシール部材の内周側が当接するため、シール部材の内周側に傷が付くのが抑制される。
【0016】
本発明の第5態様の配管の分岐構造は、第1態様~第4態様のいずれか一態様の配管の分岐構造において、前記筒部の内径は、前記筒部の軸方向両端部側よりも前記筒部に形成された前記通路の開口側で大きい。
【0017】
第5態様の配管の分岐構造では、筒部の内径が筒部の軸方向両端部側よりも筒部に形成された通路の開口側で大きいことから、主管と筒部との間の隙間が筒部の軸方向両端部側よりも筒部に形成された通路の開口側で大きくなる。このため、上記配管の分岐構造では、主管に対する分岐管の位置を調整することによって分岐部の通路と主管の横孔の位置がずれていても、流体を主管と分岐管との間でスムーズに流すことができる。
【0018】
本発明の第6態様の配管の分岐構造は、第5態様の配管の分岐構造において、前記筒部の内周面には、環状の連通溝が形成されており、前記連通溝の底面に前記通路の開口が形成されている。
【0019】
第6態様の配管の分岐構造では、筒部の内周面に連通溝を形成し、この連通溝の底面に分岐部の通路の開口を形成する簡単な構造で、流体を主管と分岐管との間でスムーズに流すことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明は、主管と該主管の外周に装着される分岐継手を有する配管の分岐構造において、組立毎に主管の長さを変化させず、かつ主管に対する分岐管の位置を調整可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る配管の分岐構造の主管及び該主管に装着された複数の分岐継手の縦断面図である。
【
図1B】
図1Aに示される主管の両端に継手が圧入される前の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1Aの矢印2Xで指し示す部分の拡大図である。
【
図4】
図1Aに示される分岐継手の部分縦断面図である。
【
図5A】
図1Aに示される主管の矢印5AXで指し示す部分の拡大図である。
【
図5B】
図5Aに示される主管を矢印5BXの方向から見た側面図である。
【
図6】本発明に係る分岐継手の第1変形例の縦断面図である。
【
図7】本発明に係る分岐継手の第2変形例の縦断面図である。
【
図8】本発明に係る分岐継手の第3変形例の縦断面図である。
【
図9】本発明に係る分岐継手の第4変形例の縦断面図である。
【
図10】本発明に係る分岐継手の第5変形例の縦断面図である。
【
図11】
図10に示される分岐継手を主管に装着した状態の縦断面図である。
【
図13】本発明に係る主管の変形例に、
図3に示される分岐継手を装着した状態の横断面図(
図3に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に係る一実施形態の配管の分岐構造について説明する。
【0023】
図1Aには、本実施形態の配管の分岐構造(以下、適宜「分岐構造」)Sが示されている。本実施形態の配管の分岐構造Sは、車両の配管系等に適用される分岐構造である。具体的には、電気自動車(EV)やハイブリット車(HEV)などでバッテリーのセル毎に熱交換器を配置する様な車両において、各熱交換器に冷却水を分配する配管系の分岐構造として用いられる。なお、本発明の分岐構造Sの用途は、上記用途に限定されるものではない。
【0024】
図1Aに示されるように、配管の分岐構造Sは、1本の主管20と、複数の分岐継手30とを有している。
【0025】
(主管)
主管20は、図示しない車両の配管系の一部を構成する管状部材である。この主管20は、樹脂材料で形成されており、弾性変形可能とされている。主管20の両端20AEにはクイックコネクタ等の継手が圧入されており、主管20にはその継手を介して不図示の配管が接続される。
図1Bは主管20の両端20AEに継手が圧入される前の状態を示している。
図1Bに示すように、主管20の長さLは、主管20が用いられる配管系において主管20に必要とされる長さに設定されている。なお、ここでいう主管20の長さLとは、主管の20の軸方向(
図1A及び
図1Bにおける矢印X1方向)に沿った長さである。
【0026】
図1Bに示されるように、主管20の軸方向の両端20AE間には、主管20を分岐させるための分岐位置が主管20の軸方向に間隔をあけて複数設定されている。なお、ここでいう主管20の分岐位置とは、主管20が用いられる配管系において主管20を分岐させる位置を指している。主管20の複数の分岐位置には、分岐継手30が一つずつ配置されている。
【0027】
図5A及び
図5Bに示されるように、主管20の軸方向の両端部20Aには、それぞれの先端20AEに向けて外径が縮径する縮径部21が形成されている。言い換えると、主管20の軸方向両端部20Aは、それぞれ先細り形状とされており、この先細り形状部分が縮径部21とされている。
【0028】
また、主管20の分岐位置には、横孔22が形成されている。この横孔22は、主管20の周壁を径方向内側から外側へ貫通する孔である。また、本実施形態では、主管20の分岐位置に一つの横孔22が形成されている。
【0029】
図5A及び
図5Cに示されるように、横孔22は、主管20の外周に向けて径が拡径する拡径部22Bを有している。具体的には、横孔22は、主管20の内周面から外周面側に向けて延びる径が一定の一定径部22Aと、一定径部22Aから主管20の外周面に向けて径が拡径する拡径部22Bとを有している。
【0030】
(分岐継手)
図2~
図4に示されるように、分岐継手30は、筒部32と、分岐部34と、シール部材36とを備えている。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、筒部32は、円筒状とされており、内側に主管20が挿入されるようになっている(
図2及び
図3参照)。言い換えると、筒部32は、内部に主管20を挿入することで、主管20の外周に装着されるようになっている。また、筒部32の内径は、軸方向(
図4における矢印X2方向)で一定とされている。
【0032】
図4に示されるように、筒部32の内周面には、後述する分岐部34の通路38が開口している。また、筒部32の内周面には、通路38の開口38Aを挟んで筒部32の軸方向両側に環状のシール溝40がそれぞれ形成されている。これらのシール溝40は、筒部32の内周面に筒部32の周方向に沿って連続して形成された凹状部分である。
【0033】
本実施形態では、主管20に分岐継手30を装着した状態では、主管20の軸方向X1と筒部32の軸方向X2が略一致するため、主管20に分岐継手30が装着された図面においては、筒部32の軸方向X2については図示省略している。
【0034】
図4に示されるように、分岐部34は、筒部32の外周から筒部32の軸方向と交差する方向(本実施形態では、直交する方向)に突出する断面円形状の突出部である。この分岐部34には、突出方向の先端から基端に向けて流体(本実施形態では、冷却水)が通る通路38が形成されている。この通路38は、前述のように筒部32の内周面に開口しており、この開口38Aを介して筒部32の内部に通じている。
【0035】
また分岐部34の突出方向の先端側には、分岐管50が接続される配管接続部42が設けられている。具体的には、
図2に示されるように、分岐管50が配管接続部42の外周に装着されるようになっている。なお、分岐管50は、樹脂材料で形成されており、弾性変形可能とされている。また、分岐管50は、図中二点鎖線で示している。
【0036】
図4に示されるように、配管接続部42は、分岐部34の先端側に位置するシール溝44と、シール溝44よりも分岐部34の基端側(言い換えると、突出方向において分岐部34の先端側と反対側)に位置する返し部46とを有している。
【0037】
シール溝44は、分岐部34の外周面に沿って分岐部34の周方向に連続して形成された凹状部分である。このシール溝44には、シール材としてのOリング48が収容されている。
【0038】
返し部46は、分岐部34の外周面に沿って分岐部34の周方向に連続して形成された凸状部分であり、断面形状が略三角形状とされている。
【0039】
ここで、分岐管50を配管接続部42の外周に装着させると、分岐管50の内周面にOリング48の外周面が密着して、分岐管50と分岐部34との間がシールされる。また、分岐管50の内周面においてOリング48との接触部よりも先端側では、返し部46の突出端46Aが分岐管50の内周面を径方向外側へ押圧し、分岐管50が分岐部34に対して抜去方向に移動するのが抑制される。
【0040】
また、本実施形態では、筒部32と分岐部34とで構成される継手本体が樹脂によって形成されている。なお、継手本体は、樹脂の一体成形品であってもよいし、複数の樹脂部品を組み立てた組立品であってもよい。組立品としては、一例として、継手本体の半割り部品を接合(接着、溶着等)して組み立てたものがある。
【0041】
図4に示されるように、シール部材36は、環状とされており、前述の筒部32の内周面に形成されたシール溝40に収容されている。なお、本実施形態では、シール部材36として円環状のOリングを用いている。ここで、主管20の外周に筒部32が装着されると、
図2に示されるように、主管20の外周面にシール部材36の内周面が密着して、主管20と筒部32との間がシールされる。
【0042】
また、分岐継手30は、主管20の横孔22と分岐部34の通路38とが連通する状態で筒部32が主管20の外周に装着されている。具体的には、主管20は、
図2に示されるように、分岐継手30に設けられた一対のシール部材36によって支持されているため、主管20の外周面と筒部32の内周面との間には隙間が形成されている。この隙間によって一対のシール部材36間には、閉鎖空間CS(
図3及び
図4参照)が形成されている。この閉鎖空間CSを通じて分岐部34の通路38と主管20の横孔22が連通している。
【0043】
次に、本実施形態の分岐構造Sの作用並びに効果について説明する。
【0044】
本実施形態の分岐構造Sでは、分岐継手30の筒部32を主管20の外周に装着して、主管20の複数の分岐位置に一つずつ分岐継手30を配置している。このため、上記分岐構造Sでは、例えば、主管を複数に分割した分割管と複数のT字継手とを用いて主管を分岐させる構造と比べて、各分割管の長さの製造誤差やT字継手に対する分割管の接続代(挿入代)の誤差等が主管20の長さに影響を与えないため、組立毎に主管20の長さLが変化しない。これにより、主管20の長さを一定にできる。
【0045】
また、分岐構造Sでは、主管20の横孔22と分岐部34の通路38とが主管20と筒部32との間に形成される閉鎖空間CSを介して連通する状態で分岐継手30の筒部32が主管20の外周に装着されている。ここで、分岐構造Sでは、分岐継手30の分岐部34の配管接続部42に分岐管50が接続されるため、例えば、主管の横孔に分岐管の先端が圧入されて主管と分岐管が接続される分岐構造と比べて、主管20に対して分岐継手30の筒部32を主管20の軸方向に移動させることができる。これにより、分岐部34に接続された分岐管50を主管20の軸方向に位置調整することができる。また、主管20に対して分岐継手30の筒部32を主管20の軸回りに回転させることもできる。これにより、分岐部34に接続された分岐管50を主管20の周方向に位置調整することができる。
【0046】
また、分岐構造Sでは、主管20の横孔22が拡径部22Bを有することから、例えば、横孔が一定径とされた主管を用いる分岐構造と比べて、横孔22の外縁部(主管20の外周側の縁部)の角度が大きくなる(緩やかになる)。このため、分岐継手30の筒部32を主管20の軸方向に移動させる際に、横孔22の外縁部によってシール部材36の内周に傷が付くのを抑制することができる。
【0047】
さらに、分岐構造Sでは、主管20の軸方向の両端部20Aには、縮径部21が形成されていることから、主管20を分岐継手30の筒部32に挿入する際に、主管20の縮径部21にシール部材36が当接する。シール部材36は、主管20の縮径部21によって徐々に内径を拡径されながら、主管20の外周面に乗り上げる。このように主管20を分岐継手30の筒部32に挿入する際に、縮径部21にシール部材36が当接するため、シール部材36の内周側に傷が付くのが抑制される。
【0048】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、主管20の分岐位置に横孔22を予め形成している(言い換えると、分岐継手30の装着前に形成している)が、本発明はこの構成に限定されない。主管20の分岐位置に分岐継手30を装着した後で、主管20に横孔22を形成してもよい。
【0049】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、主管20を樹脂材料で形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、主管20を金属材料で形成してもよい。
【0050】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、主管20の軸方向両端部20Aにそれぞれ縮径部21を形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、主管20の軸方向片側の端部20Aにのみ縮径部21が形成されてもよい。ここで、縮径部21が形成された主管20の端部20Aを分岐継手30の筒部32に挿入することで、シール部材36の傷付きを抑制する効果を得ることができる。
【0051】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、
図4に示されるように、筒部32に一つの分岐部34を設けた分岐継手30を用いているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、筒部32に複数の分岐部34を設けた分岐継手を用いてもよい。また、複数の分岐部34は、筒部32の軸方向に間隔をあけて形成してもよいし、筒部32の周方向に間隔をあけて形成してもよいし、筒部32の軸方向に間隔をあけると共に筒部32の周方向に間隔をあけて形成してもよい。また、筒部32の軸方向に間隔をあけて複数の分岐部34を形成する場合に、筒部32の軸方向に隣接する分岐部34の突出方向をそれぞれ異ならせてもよい。
【0052】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、
図4に示されるように、分岐継手30の分岐部34に配管接続部42を設けて、その配管接続部42を介して分岐管50を分岐部34に接続しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図6に示される第1変形例の分岐継手60のように、分岐部62に配管接続部64を設けて、配管接続部64に嵌り合う雌ジョイント67を介して分岐管50が分岐部62に接続されてもよい。
図7に示される第2変形例の分岐継手70のように、分岐部72に配管接続部74を設けて、配管接続部74を受け入れるクイックコネクタ77を介して分岐管50が分岐部72に接続されてもよい。
図8に示される第3変形例の分岐継手80のように、分岐部82に配管接続部84を設けて、配管接続部84に嵌り合う雄ジョイント87を介して分岐管50が
分岐部82に接続されてもよい。これらの変形例のように、雌ジョイント67、クイックコネクタ77や雄ジョイント87等の継手を介して分岐管が分岐部に接続される構成で実施することができる。
図6に示されるように、分岐継手60の配管接続部64は、分岐部62の突出方向の先端側に位置するシール溝66と、シール溝66よりも分岐部62の基端側に位置し、分岐部62の径方向外側に張り出す段差部68とを有している。このシール溝66には、Oリング48が収容されている。このOリング48は、雌ジョイント67が配管接続部64の外周に装着されると、雌ジョイント67の内周面に密着して
分岐部62と雌ジョイント67との間をシールする。また、段差部68は、雌ジョイント67を配管接続部64の外周に装着する際に、雌ジョイント67の端部と当接することでストッパとして機能する。なお、雌ジョイント67は、配管接続部64が嵌る嵌合部67Aと、配管接続部64に装着(外装)された状態で分岐部62の通路38と連通する通路67Bと、分岐管50が装着(外装)される配管接続部67Cとを有している。
図7に示されるように、分岐継手70の配管接続部74は、分岐部72の径方向外側に張り出す環状の張出部76を有している。この張出部76は、クイックコネクタ77が配管接続部74の外周に装着されると、リテーナ79と係合する。この係合により、配管接続部74とクイックコネクタ77の装着状態が維持される。なお、クイックコネクタ77は、配管接続部74が挿入される挿入部77Aと、張出部76と係合することで配管接続部74を挿入部77A内に保持するリテーナ79と、挿入部77Aに配置され、挿入部77Aに挿入された配管接続部74の外周面に密着するOリング77Bと、配管接続部74に装着(外装)された状態で分岐部72の通路38と連通する通路77Cと、分岐管50が装着(外装)される配管接続部77Dと、を有している。
図8に示されるように、分岐継手80の配管接続部84は、分岐部82の突出方向の先端から基端側に向けて凹む凹状部分であり、雄ジョイント87の端部が嵌るようになっている。また、配管接続部84の径は通路38の径よりも大きいため、配管接続部84と通路38との間には段差部86が形成されている。この段差部86は、雄ジョイント87を配管接続部84の内側に装着(内装)する際に、雄ジョイント87の端部と当接することでストッパとして機能する。なお、雄ジョイント87は、配管接続部84に嵌る嵌合部87Aと、配管接続部84に装着(内装)された状態で分岐部82の通路38と連通する通路87Bと、分岐管50が装着(外装)される配管接続部87Cとを有している。
【0053】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、分岐継手30の筒部32の内周面にシール溝40を形成し、このシール溝40にシール部材36を収容しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図9に示される第4変形例の分岐継手90のように、筒部92と主管20との間を略円筒状のシール部材94でシールしてもよい。
図9に示される分岐継手90は、内径が一定とされ、主管20が挿入される円筒状の筒部92と、筒部92の軸方向両端部92Aにそれぞれ形成され、筒部92の外周から突出する環状リブ96と、一部分が筒部92の軸方向両端部92Aの外周にそれぞれ密着し、残りの部分が主管20の外周に装着する略円筒状のシール部材94とを備えている。このシール部材94の上記一部分に対応する内周面には、環状リブ96に対応する形状とされた環状の凹部が形成されており、この凹部に環状リブ96が嵌ることで、シール部材94が筒部92から脱落するのが抑制される。また、シール部材94の上記残りの部分の外周にシールバンド等を装着してシール部材94と主管20との密着性を高めてもよい。
【0054】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、筒部32の内径を一定としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図10~
図12に示される第5変形例の分岐継手100のように、筒部102の内径を筒部102の軸方向両端部102A側よりも通路38の開口38A側で大きくしてもよい。具体的には、筒部102の内周面に筒部102の周方向に連続して延びる環状の連通溝104を形成し、この連通溝104の底面104Aに通路38の開口38Aを形成してもよい。この場合には、筒部102の内径が筒部102の軸方向両端部102A側よりも通路38の開口38A側で大きくなることから、主管20と筒部102との間の隙間が筒部102の軸方向両端部102A側よりも通路38の開口38A側で大きくなる。このため、主管20に対する分岐管50の位置を調整することで通路38の開口38Aと主管20の横孔22の位置がずれても、上記隙間と同様に閉鎖空間CS(
図11及び
図12参照)が大きくなっているため、流体を主管20と分岐管50との間でスムーズに流すことができる。
【0055】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、主管20の分岐位置に一つの横孔22を形成しているが本発明はこの構成に限定されない。例えば、主管20の分岐位置に複数の横孔22を形成してもよい。具体的には、
図13に示されるように、主管20の分岐位置において主管20の周方向に間隔をあけて複数の横孔108を形成してもよい。また、主管20の分岐位置において主管20の軸方向に間隔をあけて複数の横孔108を形成してもよい。さらに、主管20の分岐位置において主管20の周方向及び軸方向にそれぞれ間隔をあけて複数の横孔108を形成してもよい。なお、
図13中における符号108Aは、横孔108の一定径部を示し、符号108Bは、横孔108の拡径部を示している。
【0056】
前述の実施形態の分岐構造Sでは、筒部32の開口38Aを挟んで軸方向両側にそれぞれシール溝40を設けてシール部材36を収容しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、筒部32の開口38Aを挟んで軸方向両側にそれぞれ複数のシール溝40を設け、複数のシール溝40にそれぞれシール部材36を収容してもよい。
【0057】
前述の実施形態及び上記各変形例において主管20は必ずしも直管でなくてもよい。例えば、本発明は曲げ加工された主管に適用されてもよい。この場合、曲げ部の一方に続く直線部や曲げ部の両側に続く直線部に分岐継手30等を装着できる。また、曲げ部の曲率によっては、主管の弾性変形を利用して曲げ部を乗り越えるように分岐継手30等を装着することもできる。
【0058】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
20 主管
20A 主管の軸方向の端部
20AE 主管の軸方向の端
21 縮径部
22 横孔
22B 拡径部
30 分岐継手
32 筒部
34 分岐部
36 シール部材
38 通路
38A 開口
40 シール溝
50 分岐管
60 分岐継手
62 分岐部
70 分岐継手
72 分岐部
80 分岐継手
82 分岐部
90 分岐継手
92 筒部
94 シール部材
100 分岐継手
102 筒部
102A 軸方向の端部
104 連通溝
104A 底面
CS 閉鎖空間
S 配管の分岐構造
X1 主管の軸方向
X2 筒部の軸方向