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特許7424727ヘテロダイマー免疫グロブリン構造体及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ヘテロダイマー免疫グロブリン構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240123BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240123BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/63
A61K39/00 H
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P1/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P5/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P29/00 101
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P37/08
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2019516702
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2017104044
(87)【国際公開番号】W WO2018059502
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】201610863814.7
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513311664
【氏名又は名称】ベイジン・ハンミ・ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HANMI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、 チアワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ナンメン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ドンジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ヤピン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 メンスプ
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533243(JP,A)
【文献】特表2016-508117(JP,A)
【文献】特表2014-530891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/
C12P 21/
C12N 5/
C12N 15/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc受容体(FcR)結合構成員、及び前記FcR結合構成員に共有結合で連結された1以上の認識モイエティを含むヘテロダイマーであり、前記FcR結合構成員は、1以上の二硫化結合によって互いに結合された第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、それぞれ免疫グロブリン重鎖不変領域の少なくとも一部を含み、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、Kabat
EUインデックスによる下記位置に少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、
前記第1ポリペプチド内のT366及びD399、並びに前記第2ポリペプチド内のL351、Y407及びK409;
ここで、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、自体より互いにさらに高い二量体化親和性を有するヘテロダイマーであり、
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチドの免疫グロブリン重鎖不変領域のCH3ドメイン及び前記第2ポリペプチドの免疫グロブリン重鎖不変領域のCH3ドメインの2個のCH3ドメインで発生することを特徴とし、下記グループVのa)~h)の構成員のうちいずれか一つを含むことを特徴とする、ヘテロダイマー:
グループV:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びK409V;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G、Y407L及びK409C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y、Y407A及びK409P;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399N、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V、Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D、Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P、Y407F及びK409F;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びD399T、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K、Y407T及びK409Q;及び
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399A、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W、Y407H及びK409R。
【請求項2】
前記FcR結合構成員は、Fcドメインを含むことを特徴とする請求項1に記載のヘテロダイマー。
【請求項3】
前記Fcドメインは、免疫グロブリンG(IgG)Fcドメインに由来することを特徴とする請求項2に記載のヘテロダイマー。
【請求項4】
前記IgGFcドメインは、IgG1Fcドメイン、IgG2Fcドメイン、IgG3Fcドメイン及びIgG4Fcドメインで構成された群から選択される一つを含むことを特徴とする請求項3に記載のヘテロダイマー。
【請求項5】
前記1以上の認識モイエティは、抗原結合断片(Fab)、一本鎖可変断片(scFv)、膜受容体の細胞外ドメイン、細胞膜受容体のペプチドリガンド、サトカイン、凝固因子、親和性タグ、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
【請求項6】
前記1以上の認識モイエティは、2個の認識モイエティを含み、前記2個の認識モイエティは、それぞれFab断片を含むことを特徴とする請求項5に記載のヘテロダイマー。
【請求項7】
前記Fab断片は、同一ではないことを特徴とする請求項6に記載のヘテロダイマー。
【請求項8】
前記ヘテロダイマーは、免疫グロブリン類似分子を含むことを特徴とする請求項7に記載のヘテロダイマー。
【請求項9】
前記ヘテロダイマーは、二重特異性抗体を含むことを特徴とする請求項7または8に記載のヘテロダイマー。
【請求項10】
前記1以上の認識モイエティは、2個の認識モイエティを含み、前記2個の認識モイエティは、Fab断片及びscFv断片を含むことを特徴とする請求項5に記載のヘテロダイマー。
【請求項11】
1mMジチオトレイトールを含む生理学的条件下の水溶液であって、前記第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドのうち一つ、及びその同質の認識モイエティ以外のポリペプチドは、根本的に含まない水溶液において、水溶液内のポリペプチドの全重量に対して、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチド、並びに前記第1ポリペプチドまたは前記第2ポリペプチドの同質認識モイエティとして存在するホモダイマー型のそれぞれの重量が50%未満であることを特徴とする請求項1~10のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
【請求項12】
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びK409Vであることを特徴とする請求項1~11のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
【請求項13】
前記ヘテロダイマーは、第1重鎖及び第2重鎖、及び第1軽鎖及び第2軽鎖を含み、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同一ではないことを特徴とする請求項7に記載のヘテロダイマー。
【請求項14】
前記Fab断片及び前記scFv断片は、グループVIIのa)~d)から選択される認識モイエティ対から選択されることを特徴とする請求項10に記載のヘテロダイマー:グループVII:
a)HER2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
b)Trop2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
c)CD20に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;及び
d)PD-L1に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv。
【請求項15】
前記同一ではない2個のFab断片は、HER2に特異的に結合する第1Fab断片、及びCD20に特異的に結合する第2Fab断片であることを特徴とする請求項7に記載のヘテロダイマー。
【請求項16】
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうち一方は、配列番号16、18、20、22、24、26、28、又は30に記載されたアミノ酸配列を含み、及びもう一方のポリペプチドは、配列番号17、19、21、23、25、27、29、又は31に記載されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1~15のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
【請求項17】
前記FcR結合構成員は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcεRI、FcεRII、FcαRI、Fcα/μR、FcRn、及びその組み合わせからなる群から選択されるFc受容体に結合可能であることを特徴とする請求項1~16のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
【請求項18】
前記FcR結合構成員は、FcRnに結合可能であることを特徴とする請求項17に記載のヘテロダイマー。
【請求項19】
前記Fc受容体への結合は、ADCCを誘発することを特徴とする請求項17に記載のヘテロダイマー。
【請求項20】
第1重鎖、第2重鎖、第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含むヘテロダイマーを製造する方法であって、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同じではなく、前記第1重鎖及び前記第2重鎖の一部が、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成し、前記方法は、
1)第1宿主細胞及び第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階と、
3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、グループXの構成員a)~h)のうちいずれか一つを含むものである方法:
グループX(アミノ酸残基の位置はKabat EUインデックスによる):
a)前記第1重鎖内のT366L及びD399R、並びに前記第2重鎖内のL351E
、Y407L及びK409V;
b)前記第1重鎖内のT366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351G、Y407L及びK409C;
c)前記第1重鎖内のT366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351Y、Y407A及びK409P;
d)前記第1重鎖内のT366P及びD399N、並びに前記第2重鎖内のL351V、Y407P及びK409S;
e)前記第1重鎖内のT366W及びD399G、並びに前記第2重鎖内のL351D、Y407P及びK409S;
f)前記第1重鎖内のT366P及びD399I、並びに前記第2重鎖内のL351P、Y407F及びK409F;
g)前記第1重鎖内のT366V及びD399T、並びに前記第2重鎖内のL351K、Y407T及びK409Q;及び
h)前記第1重鎖内のT366L及びD399A、並びに前記第2重鎖内のL351W、Y407H及びK409R。
【請求項21】
前記1以上の核酸は、ベクターまたはベクター系内に含有されたものである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクターまたはベクター系は、1つの細胞または多くの細胞に導入したものであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つの細胞または多くの細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293FまたはCHO、CHO-S、CHO-dhfr-、及びCHO/DG44のうちいずれか一つを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記還元させる段階は、
i)2-アミノエタンチオール、ジチオトレイトール(DTT)、トリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン、その誘導体、及びその組み合わせのうちいずれか一つを含む還元剤を追加する段階と、
ii)4℃で少なくとも3時間還元させる段階と、
iii)前記還元剤を除去する段階と、
を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記還元剤は、DTTを0.1mM以上の濃度で含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記還元剤は、脱塩カラムを介して除去されることを特徴とする請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化させる段階は、少なくとも5時間空気で酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項20及び請求項2426のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化させる段階は、
i)L-ジヒドロアスコルビン酸、その誘導体、またはその組み合わせを含む酸化剤を追加する段階と、
ii)4℃で少なくとも5時間酸化させる段階と、
iii)前記酸化剤を除去する段階と、
を含むことを特徴とする請求項20及び請求項2426のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記酸化剤は、L-ジヒドロアスコルビン酸を0.5mM以上の濃度で含むものであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、分離させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項20~27のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~19のうちいずれか1項に記載の第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの両方をコーディングする核酸。
【請求項32】
前記核酸は、配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67から選択される一つを含むことを特徴とする請求項31に記載の核酸。
【請求項33】
請求項31または32に記載の核酸を含むベクターまたはベクター系。
【請求項34】
請求項33に記載の前記ベクターまたはベクター系を含む細胞。
【請求項35】
前記細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293FまたはCHO、CHO-S、CHO-dhfr-、及びCHO/DG44のうちいずれか一つを含むことを特徴とする請求項34に記載の細胞。
【請求項36】
薬学的に許容可能な担体と、
下記のうちいずれか一つと、含む薬学的組成物:
i)請求項1~19のうちいずれか1項に記載の前記ヘテロダイマー、
ii)請求項31または32に記載の核酸、
iii)請求項33に記載のベクターまたはベクター系、
iv)請求項34または35に記載の細胞、及び
v)その組み合わせ。
【請求項37】
薬剤製造のための、下記のうちいずれか一つの使用:
i)請求項1~19のうちいずれか1項に記載の前記ヘテロダイマー、
ii)請求項31または32に記載の核酸、
iii)請求項33に記載のベクターまたはベクター系、
iv)請求項34または35に記載の細胞、及び
v)その組み合わせ。
【請求項38】
前記薬剤は、疾病または障害の治療または予防のための薬剤であり、
前記疾病または障害は、自家免疫疾患、移植片に対する免疫反応、アレルギー反応、感染、神経変性疾患、腫瘍疾患及び細胞増殖性障害、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症(MS)、潰瘍性大腸カタル、クローン病、全身紅斑性ループス(SLE)、糸球体腎炎、拡張型心筋病症類似疾病、シェーグレン症候群、アレルギー接触皮膚炎、多発筋肉炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、白班、インシュリン依存性糖尿病、ベーチェット症候群、慢性甲状腺炎、パーキンソン病、ハンチントン病、マチャド・ジョ
セフ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト・ヤコブ病、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頚部扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫、及びその任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項37に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、天然IgG抗体の望ましい特性は、維持しながら、望ましくない重鎖-軽鎖ミスペアリング(mispairing)のない安定しており、非常に特異的な免疫グロブリン構造体に関する。
【0002】
本出願は、その開示が参照として本明細書に含まれた2016年9月29日付けで出願された中国特許出願一連番号CN2016108638147に優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
単一特異性を有し、標的抗原上の単一抗原決定基とのみ相互作用する単一クローン抗体(mAb)は、癌、感染疾患及び自家免疫疾患及び感染性疾患のような多くの疾病治療に使用されてきた。しかし、これまで、そのような治療分子のうちいかなるものも、シグナルカスケード間の混線はもとより、疾病媒介分子伝達経路の重複性と係わる、癌または感染疾患のような疾病の内在的な複合性により、単一作用剤として十分な効能を示すことができなかった。そのようなmAbが単一標的抗原とのみ相互作用するために、最適の治療効果を提供し難かったのである。多重標的、または1つの標的への多重部位の同時遮断は、向上した治療効能を示すのである。さらには、多重抗原/抗原決定基をして、単一の多重特異性分子を標的化させることは、治療法が単一分子からなるために、新薬開発の複雑さを低減させる。2以上の単一特異性分子組み合わせを使用する場合と比較し、患者及び医療従事者のいずれにもさして複雑ではない。
【0004】
二重特異性抗体(BsAb)または多重特異性分子は、当該技術分野で周知されている。二重特異性抗体を作るための初期試みにおいては、二作用結合試薬を利用し、2個の現存IgG分子、2個のFab’、または2個の(Fab’)2断片の化学的接合体と係わりがあった。しかし、そのような種類の化学的接合BsAbは、二重特異性分子の生成のための労動強度、ヘテロダイマー精製の困難さ、ホモダイマー、及び本来の単一クローン抗体の除去、及び低い収率における制限があった。
【0005】
他種のBsAb分子は、ハイブリッド融合細胞、または異なる抗体を分泌する2個の融合細胞の体細胞交雑によって生成されたクアドローマ(quadroma)である。Ig重鎖及びIg軽鎖の任意的対合により、可能な対のIgG混合物の約1/10のみが作用可能なBsAbを生産する。それにより、精製化が複雑であって生産収率が低い。
【0006】
WO/2013060867は、混合された2個のホモダイマー免疫グロブリンの還元を介したヘテロダイマー二重特異性抗体の量産方法を記載する。その結果、ホモダイマーのCH3ドメイン内への非対称変異の導入によって起きたFab-arm交換後の鎖間二硫化結合の再酸化が起こる。
【0007】
WO/2009089004は、静電気の観点からホモダイマー形成に有利ではないが、静電気の観点からヘテロダイマー形成には有利なCH3-CH3界面内への1以上の帯電されたアミノ酸変異の導入を介したヘテロダイマータンパク質製造方法を扱う。
【0008】
US5,173,168は、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」戦略を使用したヘテロダイマーIgG製造方法を記載する。比較的小さいアミノ酸側鎖を、比較的大きいアミノ酸側鎖で代替することにより、第1鎖のCH3ドメイン界面にある「ノブ(knob)」がまず生成される。そして、比較的大きいアミノ酸側鎖を、比較的小さいアミノ酸側鎖で代替することにより、第2鎖のCH3界面内のホール(hole)が生成される。「ノブ及びホール」相互作用は、ヘテロダイマーIgG形成に有利であり、ホモダイマー形成には有利ではない。
【0009】
WO/2012058768は、構造的及び計算的なモデリング誘導タンパク質工学技術と共に、陰性及び陽性のデザインを含むIgG1CH3ドメインに導入された突然変異に由来するヘテロダイマーIgGの生成方法を開示する。
【0010】
新生児Fc受容体であるFcRnは、その2つがいずれも非共有相互作用と結合し、主用組織的合成複合体I系列(MHCI)ファミリーと相同性を共有する1つの膜貫通重鎖(P51サブユニットα鎖)、及び1つの可溶軽鎖(P14サブユニットβ鎖)のヘテロダイマー受容体を含む。FcRnは、いくつかの重要な生物学的機能を有している。FcRnは、輸送受容体であり、IgG及びアルブミンと結合し、多様な細胞障壁を通過する。例えば、FcRnは、母親IgG抗体を胎児に移し、妊娠期間の間、新生児体液免疫を提供する。FcRn及びIgGとアルブミンとのpH依存的相互作用は、周期蓄積、及びタンパク質の分解減少を介して、血清半減期延長に重要である(Adv Drug Deliv Rev. 2015 Aug 30; 91:109-24; J Immunol. 2015 May 15; 194(10): 4595-603; Nat Rev Immunol. 2007 Sep; 7(9): 715-25)。FcRn及びIgGの結合部位は、CH2ドメインとCH3ドメインとの界面にあり、アミノ酸残基253,310及び435を含む(Immunol Rev. 2015 Nov; 268(1): 253-68 and Mol Immunol. 2015 Oct; 67(2 Pt A): 131-41)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、ヘテロダイマー免疫グロブリン構造体、その製造及びその利用方法に係り、例えば、上昇された安定性及び特異性を有する変形された不変領域を有する二重特異性抗体に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それにより、第1様態において、本開示は、Fc受容体(FcR)結合構成員、及び前記FcR結合構成員に共有結合で連結された1以上の認識モイエティを含むヘテロダイマーに係わるものである。前記FcR結合構成員は、1以上の二硫化結合によって互いに結合された(joined)第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む。前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、それぞれ免疫グロブリン重鎖不変領域の少なくとも一部を含む。前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、下記位置に少なくとも5個のアミノ酸置換を含む:
【0013】
1)前記第1ポリペプチド内の366及び399、並びに前記第2ポリペプチド内の351,407及び409、または
2)前記第1ポリペプチド内の366及び409、並びに前記第2ポリペプチド内の351,399及び407;
ここで、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、自体より互いにさらに高い二量体化親和性を有する。
【0014】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記置換のうち少なくとも一つを含む:
a)前記第2ポリペプチド内L351の、グリシン、チロシン、バリン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシンまたはトリプトファン;
b)前記第1ポリペプチド内T366の、ロイシン、プロリン、トリプトファンまたはバリン;
c)前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチド内のD399の、システイン、アスパラギン、イソロイシン、グリシン、アルギニル、トレオニンまたはアラニン;
d)前記第2ポリペプチド内Y407の、ロイシン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニンまたはヒスチジン;及び
e)前記第1ポリペプチド及び/または前記第2ポリペプチド内K409の、システイン、プロリン、セリン、フェニルアラニン、バリン、グルタミン酸またはアルギニン。
【0015】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループIのa)~h)、及びグループIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0016】
グループI:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T366W、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H。
【0017】
グループII:
a)前記第1ポリペプチド内D399R及び前記第2ポリペプチド内K409V;
b)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409C;
c)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409P;
d)前記第1ポリペプチド内D399N及び前記第2ポリペプチド内K409S;
e)前記第1ポリペプチド内D399G及び前記第2ポリペプチド内K409S;
f)前記第1ポリペプチド内D399I及び前記第2ポリペプチド内K409F;
g)前記第1ポリペプチド内D399T及び前記第2ポリペプチド内K409Q;並びに
h)前記第1ポリペプチド内D399A及び前記第2ポリペプチド内K409R。
【0018】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループIIIのa)~h)、及びグループIVのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0019】
グループIII:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T366W、並びに前記第2ポリペプチド内Lの351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H。
【0020】
グループIV:
a)前記第1ポリペプチド内K409V及び前記第2ポリペプチド内D399R;
b)前記第1ポリペプチド内K409C及び前記第2ポリペプチド内D399C;
c)前記第1ポリペプチド内K409P及び前記第2ポリペプチド内D399C;
d)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399N;
e)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399G;
f)前記第1ポリペプチド内K409F及び前記第2ポリペプチド内D399I;
g)前記第1ポリペプチド内K409Q及び前記第2ポリペプチド内D399T;並びに
h)前記第1ポリペプチド内K409R及び前記第2ポリペプチド内D399A。
【0021】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVのa)~h)の構成員のうちいずれか一つを含む:
【0022】
グループV:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E,Y407L及びK409V;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G,Y407L及びK409C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y,Y407A及びK409P;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399N、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V,Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D,Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P,Y407F及びK409F;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びD399T、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K,Y407T及びK409Q;そして
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399A、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W,Y407H及びK409R。
【0023】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVIのa)~h)の構成員のうちいずれか一つを含む:
【0024】
グループVI:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E,Y407L及びD399R;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G,Y407L及びD399C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y,Y407A及びD399C;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V,Y407P及びD399N;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D,Y407P及びD399G;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409F、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P,Y407F及びD399I;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びK409Q、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K,Y407T及びD399T;そして
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W,Y407H及びD399A。
【0025】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399Rを含む。一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第2ポリペプチド内のL351E,Y407L及びK409Vを含む。一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E,Y407L及びK409Vを含む。
【0026】
一部実施例において、前記FcR結合構成員は、Fcドメインを含む。一部実施例において、前記Fcドメインは、IgGFcドメインに由来するものである。一部実施例において、前記Fcドメインは、IgG1Fcドメイン、IgG2Fcドメイン、IgG3Fcドメイン及びIgG4Fcドメインのうちいずれか一つである。
【0027】
一部実施例において、前記FcR結合構成員は、Fc受容体に特異的に結合することができる。一部実施例において、前記Fc受容体は、新生Fc受容体(FcRn)である。一部実施例において、前記Fc受容体は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcεRI、FcεRII、FcαRI、Fcα/μR、FcRn、及びその組み合わせのうちいずれか一つである。一部実施例において、前記Fc受容体への結合は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘発する。
【0028】
一部実施例において、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうち少なくとも1つの配列は、配列番号16~31,33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71を含む。
【0029】
一部実施例において、前記FcR結合構成員に共有結合で連結された前記1以上の認識モイエティは、抗原結合断片(Fab)、一本鎖可変断片(scFv)、膜受容体の細胞外ドメイン、細胞膜受容体のペプチドリガンド、サトカイン、及び親和性タグのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、Fab断片及びscFv断片を含む。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティ2個のscFv断片を含む。一部実施例において、前記2個のscFv断片は、同一ではない。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティ2個のFab断片を含む。一部実施例において、前記2個のFab断片は、同一ではない。一部実施例において、前記ヘテロダイマーは、2個の同一ではないFab断片を有する免疫グロブリン(Ig)類似分子を含む。
【0030】
一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、HER2を認識する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、PD-L1を認識する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、Trop2を認識する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、CD3を認識する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、CD20を認識する。
【0031】
一部実施例において、認識は、特異的結合を含む。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、特異的にHER2に結合する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、特異的にPD-L1に結合する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、特異的にTrop2に結合する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、特異的にCD3に結合する。一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、特異的にCD20に結合する。
【0032】
一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、下記グループVIIのa)~d)から選択される認識モイエティ対を含む:
【0033】
グループVII:
a)HER2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
b)Trop2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
c)CD20に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;並びに
d)PD-L1に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv。
【0034】
一部実施例において、前記1以上の認識モイエティは、HER2に特異的に結合するFab、及びCD20に特異的に結合するFabを含む。
【0035】
一部実施例において、前記ヘテロダイマーは、同一ではない第1重鎖、及び同一ではない第2重鎖、並びに同一ではない第1軽鎖、及び同一ではない第2軽鎖を含む。
【0036】
他の一様態において、本開示は、ヘテロダイマーを製造する方法に係わるものである。一部実施例において、前記方法は、1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1ポリペプチドをコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2ポリペプチドをコーディングする1以上の核酸を発現させる段階、2)分離された前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを還元させる段階、3)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを組み合わせ、結果混合物を生成する段階、4)前記結果混合物を酸化させる段階、並びに5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階を含む。
【0037】
他の一様態において、本開示は、ヘテロダイマーを製造する方法に係わり、前記ヘテロダイマーは、同一ではない第1重鎖及び第2重鎖、及び同一ではない第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含む。一部実施例において、前記方法は、1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階、2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階、3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階、4)前記結果混合物を酸化させる段階、そして5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階を含む。一部実施例において、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成する。
【0038】
一部実施例において、前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVIIIのa)~h)、及びグループIXのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0039】
グループVIII:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H。
【0040】
グループIX:
a)前記第1重鎖内D399R及び前記第2重鎖内K409V;
b)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409C;
c)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409P;
d)前記第1重鎖内D399N及び前記第2重鎖内K409S;
e)前記第1重鎖内D399G及び前記第2重鎖内K409S;
f)前記第1重鎖内D399I及び前記第2重鎖内K409F;
g)前記第1重鎖内D399T及び前記第2重鎖内K409Q;並びに
h)前記第1重鎖内D399A及び前記第2重鎖内K409R。
【0041】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、グループXのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つを含む:
【0042】
グループX:
a)前記第1重鎖内のT366L及びD399R、並びに前記第2重鎖内のL351E,Y407L及びK409V;
b)前記第1重鎖内のT366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351G,Y407L及びK409C;
c)前記第1重鎖内のT366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351Y,Y407A及びK409P;
d)前記第1重鎖内のT366P及びD399N、並びに前記第2重鎖内のL351V,Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2重鎖内のL351D,Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2重鎖内のL351P,Y407F及びK409F;
g)前記第1重鎖内のT366V及びD399T、並びに前記第2重鎖内のL351K,Y407T及びK409Q;そして
h)前記第1重鎖内のT366L及びD399A、並びに前記第2重鎖内のL351W,Y407H及びK409R。
【0043】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、グループXIのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つを含む:
【0044】
グループXI:
a)前記第1重鎖内のT366L及びK409V、並びに前記第2重鎖内のL351E,Y407L及びD399R;
b)前記第1重鎖内のT366L及びK409C、並びに前記第2重鎖内のL351G,Y407L及びD399C;
c)前記第1重鎖内のT366L及びK409P、並びに前記第2重鎖内のL351Y,Y407A及びD399C;
d)前記第1重鎖内のT366P及びK409S、並びに前記第2重鎖内のL351V,Y407P及びD399N;
e)前記第1重鎖内のT366W及びK409S、並びに前記第2重鎖内のL351D,Y407P及びD399G;
f)前記第1重鎖内のT366P及びK409F、並びに前記第2重鎖内のL351P,Y407F及びD399I;
g)前記第1重鎖内のT366V及びK409Q、並びに前記第2重鎖内のL351K,Y407T及びD399T;そして
h)前記第1重鎖内のT366L及びK409R、並びに前記第2重鎖内のL351W,Y407H及びD399A。
【0045】
他の一様態において、本開示は、ヘテロダイマーを製造する方法に係わり、前記ヘテロダイマーは、同一ではない第1重鎖及び第2重鎖、及び同一ではない第1軽鎖及び第2軽鎖を含む免疫グロブリンヘテロダイマーを含む。一部実施例において、前記方法は、1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階、2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階、3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階、4)前記結果混合物を酸化させる段階、及び5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階を含む。一部実施例において、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成する。
【0046】
一部実施例において、前記Fcドメインは、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXIIのa)~h)、及びグループXIIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0047】
グループXII:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H。
【0048】
グループXIII:
a)前記第1重鎖内K409V及び前記第2重鎖内D399R;
b)前記第1重鎖内K409C及び前記第2重鎖内D399C;
c)前記第1重鎖内K409P及び前記第2重鎖内D399C;
d)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399N;
e)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399G;
f)前記第1重鎖内K409F及び前記第2重鎖内D399I;
g)前記第1重鎖内K409Q及び前記第2重鎖内D399T;並びに
h)前記第1重鎖内K409R及び前記第2重鎖内D399A。
【0049】
他の一様態において、本開示は、ヘテロダイマーを製造する方法に係わり、前記ヘテロダイマーは、重鎖、軽鎖、及びFc鎖に連結されたscFv断片を含む二価非相同タンパク質を含み、前記重鎖、及び前記scFv断片に連結された前記Fc鎖の一部がFc領域を形成する。一部実施例において、前記方法は、1)宿主細胞内において、前記重鎖及び前記軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び前記Fc鎖に連結された前記scFv断片をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階、並びに2)形成されたヘテロダイマーを回収する段階を含む。
【0050】
一部実施例において、前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXIVのa)~h)、及びグループXVのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0051】
グループXIV:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H。
【0052】
グループXV:
a)前記第1重鎖内D399R及び前記第2重鎖内K409V;
b)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409C;
c)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409P;
d)前記第1重鎖内D399N及び前記第2重鎖内K409S;
e)前記第1重鎖内D399G及び前記第2重鎖内K409S;
f)前記第1重鎖内D399I及び前記第2重鎖内K409F;
g)前記第1重鎖内D399T及び前記第2重鎖内K409Q;並びに
h)前記第1重鎖内D399A及び前記第2重鎖内K409R。
【0053】
一部実施例において、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXVIのa)~h)、及びグループXVIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含む:
【0054】
グループXVI:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T、または
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H。
【0055】
グループXVII:
a)前記第1重鎖内K409V及び前記第2重鎖内D399R;
b)前記第1重鎖内K409C及び前記第2重鎖内D399C;
c)前記第1重鎖内K409P及び前記第2重鎖内D399C;
d)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399N;
e)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399G;
f)前記第1重鎖内K409F及び前記第2重鎖内D399I;
g)前記第1重鎖内K409Q及び前記第2重鎖内D399T;並びに
h)前記第1重鎖内K409R及び前記第2重鎖内D399A。
【0056】
ヘテロダイマーを製造する方法に係わる本様態の一部実施例において、前記核酸は、ベクターまたはベクター系に位置する。一部実施例において、前記ベクターまたはベクター系は、pCDNAベクターから変形されたプラスミドベクターpX0GCを含む。
【0057】
ヘテロダイマーを製造する方法に係わる本様態の一部実施例において、前記宿主細胞は、ヒト胚芽腎臓細胞(HEK293)、またはHEK293から変形されたHEK293T、HEK293E及びHEK293F、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはCHOから変形されたCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44及びExpiCHO、並びにその組み合わせを含む。
【0058】
ヘテロダイマーを製造する方法に係わる本様態の一部実施例において、還元を含む前記段階は、2-アミノエタンチオール、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド、その化学的誘導体、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む1以上の還元剤を含む。一部実施例において、前記方法は、約2゜C~8゜C、例えば、3゜C~6゜C、及び4゜Cで還元する段階をさらに含み、選択的に、およそ少なくとも3時間(例えば、3~8時間、4~7時間、及び5~6時間)遂行される。さらなる実施例において、前記方法は、1以上の還元剤を除去する段階を含む。一部実施例において、前記1以上の還元剤を除去する段階は、脱塩方法を含む。
【0059】
ヘテロダイマーを製造する方法に係わる本様態の一部実施例において、酸化を含む前記段階は、L-ジヒドロアスコルビン酸、その化学的誘導体、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む1以上の酸化剤と関連する。一部実施例において、前記方法は、約2゜C~8゜C、例えば、3゜C~6゜C、及び4゜Cで酸化する段階をさらに含み、選択的に、およそ少なくとも5時間(例えば、5時間~4日、5時間~3日、及び5時間~1日)遂行される。一部実施例において、前記方法は、回収段階及び/または精製段階をさらに含む。
【0060】
他の一様態において、本開示は、本開示の任意様態によるヘテロダイマーの一部分をコーディングする核酸に係わるものである。一部実施例において、前記核酸配列は、配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67のうちいずれか一つ、または配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67のうち1以上と、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する配列を含む。一部実施例において、前記核酸配列は、厳格な条件下において、配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67のうち1以上と混成される配列を含む。一部実施例において、前記核酸配列は、配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67のうち1以上と相補的な配列を含む。
【0061】
他の一様態において、本開示は、本開示の任意様態によるヘテロダイマーの一部分をコーディングする少なくとも1つの核酸を含むベクターまたはベクター系に係わるものである。一部実施例において、前記ベクターまたはベクター系は、pCDNAベクターから変形されたプラスミドベクターpX0GCを含む。
【0062】
他の一様態において、本開示は、本開示の任意様態によるヘテロダイマーの一部分をコーディングする任意の核酸を含むベクターまたはベクター系を含む宿主細胞に係わるものである。一部実施例において、前記宿主細胞は、HEK293またはHEK293から変形されたHEK293T、HEK293E及びHEK293F、並びにCHO、またはCHOから変形されたCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44及びExpiCHOのうちいずれか一つである。
【0063】
他の一様態において、本開示は、本開示の任意様態によるヘテロダイマーの一部分を再構築的に製造する方法に係わるものである。一部実施例において、前記方法は、少なくとも本開示の任意様態によるヘテロダイマーの第1重鎖及び第2重鎖をコーディングする1以上の核酸を含むベクターまたはベクター系を含む宿主細胞を提供する段階、前記核酸を発現させる段階、及び再構築的に製造したヘテロダイマーを回収する段階を含む。
【0064】
他の一様態において、本開示は、前記ヘテロダイマー、及び薬学的に許容可能な担体、防腐剤または賦形剤を含む組成物に係わるものである。
【0065】
他の一様態において、本開示は、前記ヘテロダイマーを必要とする個体に投与する方法に係わるものである。一部実施例において、前記個体は、疾病または疾患を治療するために、ヘテロダイマーを投与される。他の実施例において、前記個体は、疾病または疾患を予防するために、ヘテロダイマーを投与される。一部実施例において、前記個体は、哺乳類である。一部実施例において、前記個体は、ヒトである。
【0066】
一部実施例において、前記疾病または疾患は、自家免疫疾患、移植片に対する免疫反応、アレルギー反応、感染、神経変性疾患、腫瘍疾患及び細胞増殖性障害、またはその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記自家免疫疾患は、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症(MS)、潰瘍性大腸カタル、クローン病、全身紅斑性ループス(SLE)、糸球体腎炎、拡張型心筋病症類似疾病、シェーグレン症候群、アレルギー接触皮膚炎、多発筋肉炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、白班、インシュリン依存性糖尿病、ベーチェット症候群、慢性甲状腺炎、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マチャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト・ヤコブ病、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記腫瘍疾患及び細胞増殖性障害は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頚部扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【0067】
他の一様態において、本開示は、 医学における使用のための前記ヘテロダイマ に係わるものである。
【0068】
他の一様態において、本開示は、ヘテロダイマーの疾病または疾患の治療への用途に係わるものである。一部実施例において、前記疾病または疾患は、自家免疫疾患、移植片に対する免疫反応、アレルギー反応、感染、神経変性疾患、腫瘍疾患及び細胞増殖性障害、またはその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【0069】
他の一様態において、本開示は、薬剤製造において、前記ヘテロダイマーの用途に係わるものである。
【0070】
他の一様態において、本開示は、疾病または疾患の治療のための薬剤製造において、前記ヘテロダイマーの用途に係わるものである。一部実施例において、前記ヘテロダイマーは、本開示の任意様態によるヘテロダイマーである。一部実施例において、前記疾病または疾患は、自家免疫疾患、移植片に対する免疫反応、アレルギー反応、感染、神経変性疾患、腫瘍疾患及び細胞増殖性障害、またはその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】例示的なpDis3ベクターを示す。Cmvは、サイトメガロウイルスプローモーター、spは、信号ペプチド、SUMOは、小さいユビキチン関連変更遺伝子タグ(small ubiquitin-related modifier tag)、Fcは、結晶性断片、BGHは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bgh-ポリA:bovine growth hormone polyadenylation)信号、HAは、ヒトインフルエンザ血球凝集素、PUCoriは、pUCの複製原点、Hygroは、ハイグロマイシンB耐性遺伝子、AmpRは、アンピシリン耐性遺伝子、oriPは、エプスタイン・バールウイルス複製原点である。
図2】ヘテロダイマーFcライブラリーの構造を示す。
図3】ホモダイマー及びヘテロダイマーのペアリングを示す。
図4図4は抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの一般的な構造を示す。
図5】抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの溶出ピークを示す。
図6】抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーのSDS-PAGE分析を示す。
図7】抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの純度分析を示す。
図8】10mg/mL及び40゜C(A)、並びに1mg/mL及び40゜C(B)の異なる濃度での抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの安定性を示す。
図9】FcRnへの抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの結合親和度を示す。
図10】抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの、SK-BR-3及びJurkat:イソタイプ(A)、抗HER2mAb(B)、抗HER2/CD3四価ホモダイマーBsAb(C)または抗HER2/CD3二価ヘテロダイマーBsAb(D)への同時結合を示す。
図11】異なる標的細胞:SK-BR3(A)及びBT-474(B)に対する抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの生体外細胞毒性を示す。
図12】腹腔内に投与された抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの1回投与量の薬物動力学的(PK:pharmacokinetic)プロファイルを示す。
図13】抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーのSDS-PAGE分析を示す。
図14】抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーのTrop-2結合親和度を示す。
図15】抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの、BxPC-3及びJurkat:イソタイプ(A)、抗CD3mAb(B)、抗Trop-2mAb(C)または抗Trop-2/CD3ヘテロダイマーBsAb(D)への同時結合を示す。
図16】H1650(A)及びBxPC-3(B)に対する抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの生体外細胞毒性を示す。
図17】腹腔内に投与された抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの1回投与量の薬物動力学的(PK)プロファイルを示す。
図18】抗CD20/抗CD3-scFvヘテロダイマーのSDS-PAGE分析を示す。
図19】10mg/mL及び40゜C(A)及び1mg/mL及び40゜C(B)の異なる濃度での抗CD20/抗CD3-scFvヘテロダイマーの安定性を示す。
図20】抗PD-L1/抗CD3-scFvヘテロダイマーのSDS-PAGE分析を示す。
図21】抗PD-L1/抗CD3-scFvヘテロダイマーのPD-L1結合親和度を示す。
図22】抗PD-L1/抗CD3-scFvヘテロダイマーの、H460及びJurkat:イソタイプ(A)、抗PD-L1mAb(B)、抗CD3mAb(C)または抗PD-L1/CD3ヘテロダイマーBsAb(D)への同時結合を示す。
図23】異なる細胞:HCC827(A)及びH1650(B)に対する抗PD-L1/抗CD3-scFvヘテロダイマーの生体外細胞毒性を示す。
図24】抗CD20発現結果物の溶出ピークを示す。
図25】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの一般的な構造を示す。
図26】ハーフマーの一般的な構造を示す。
図27】還元結果物のSDS-PAGE分析を示す。
図28】還元結果物の大きさ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC:size exclusion-high performance liquid chromatography)分析を示す。
図29】酸化結果物のSDS-PAGE分析を示す。
図30】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの溶出ピークを示す。
図31】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーのSDS-PAGE分析を示す。
図32】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの純度テスト結果を示す。
図33】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの分析を示す。
図34A】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの質量スペクトル(図34A)を示す。
図34B】抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの関連配列整列(図34B)を示す。太線は、二次MSで予測したところと同一アミノ酸を示し、点線は、一次MSで予測したところと同一ペプチドを示し、暗い部分ではないアミノ酸は、「見い出されない」ということを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示は、ヘテロダイマー免疫グロブリン類似構造体に係り(必ずしも、そうであるばかりではない)、例えば、向上された安定性及び治療効果を構造体に付与する変形された重鎖不変領域(例えば、Fc領域)を有する二重特異性抗体に係わるものである。そのような構造体は、天然IgGの有益な特性を維持し、軽鎖と重鎖との不一致がない。本開示は、追加して、前記免疫グロブリン構造体を製造する方法に係り、一般的に、ヘテロダイマーを生産するための2個の「半抗体(half bodies)」または「ハーフマー」の間の還元反応及び後続酸化反応を介して行われる。本開示のヘテロダイマーは、1以上の二硫化結合によって互いに結合された(joined)2個の同一ではない半抗体またはハーフマーによって構成されると見られる。ハーフマーは、変異された免疫グロブリン重鎖、またはその断片の一本鎖、及びそれに結合された認識モイエティ(鎖に対する「同質の」認識モイエティと記載)を含み、一般的な生理学的条件下で、共有結合によって結合される。そのようなハーフマーは、重鎖不変領域に変形を有するように設計されるが、それにより、ホモダイマー形成が、一般的に、好まれたり支持されたりする還元条件下において、非共有結合力によるホモダイマーへの形成が抑制される一方、ヘテロダイマー結合は、還元条件下において、同一に2個の相補的に設計されたハーフマー間で好まれる。「ヘテロダイマー結合」により、共有結合力はもとより、結合の非共有結合力も含まれると理解される。本明細書において、「半抗体」または「ハーフマー」は、一般的な生理学的条件下において、Fc受容体結合構成員、及び1つのポリペプチド鎖と結合した認識モイエティを一般的に形成する普通の2個のうち、ただ1つのポリペプチド鎖を有するという意味において、全体免疫グロブリンヘテロテトラマーの「半分」、または免疫グロブリン(例えば、scFvs)の誘導体を含む分子または分子複合体を意味する。例えば、前述の半抗体またはハーフマーは、特定の変異を含む免疫グロブリン重鎖(または、その断片)、並びに共有結合、または疎水力及び水素結合のような非共有相互作用を介して互いに結合された免疫グロブリン軽鎖(または、その断片)によっても構成され、「一価」とも考慮される。また、そのような「一価」の半抗体またはハーフマーは、ヒンジ領域を含む一本鎖及び非Fab認識モイエティ、例えば、一本鎖可変断片(scFv)、または受容体の結合ドメインに、例えば、共有結合を介して連結された特定の変異を有する免疫グロブリン重鎖のCH2領域及びCH3領域でも構成される。既存の例に該当する例示的な「ハーフマー」または「半抗体」は、1本の免疫グロブリン重鎖、及び1本の軽鎖が存在する図26に示されている通りである。
【0073】
本開示のヘテロダイマーの生成物収率は、天然抗体の収率と類似しており、前記方法は、簡便であって扱いが容易である。一実施例において、前記ヘテロダイマーは、2個の異なる「半抗体」から構成され、それぞれの半抗体は、特定変異を有する完全なIg重鎖、及び完全なIg軽鎖によって構成される。一般的に、前記半抗体は、別途に発現されるが、例えば、異なる2個の細胞において別途に精製され、還元剤追加によって別途に還元され、共に混合されて酸化され、ヘテロダイマーを形成する。他の一実施例において、前記ヘテロダイマーは、2個の異なるハーフマーで構成され、1つのハーフマーは、特定変異を有する完全な重鎖、及び完全な軽鎖から構成され、他の1つのハーフマーは、非Fab認識モイエティに連結された特定変異を有するFcR結合重鎖断片である。本開示のヘテロダイマーは、単一細胞株を使用しても、発現及び精製される。例示的な還元試薬は、例えば、2-アミノエタンチオール、ジチオトレイトール(DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド、及びその化学的誘導体を含むが、それらに制限されるのではない。例示的な酸化試薬は、例えば、L-ジヒドロアスコルビン酸及びその化学的誘導体を含むが、それらに制限されるものではない。
【0074】
本開示のヘテロダイマーは、前記ヘテロダイマー上のCH3ドメインの5個の特定、非システイン変異で特徴づけられる。5個の変異は、T366、D399、L351、Y407及びK409である。本明細書において、アミノ酸残基のナンバリングは、Kabat EUインデックスによるものであり、例えば、その開示が参照として本明細書に含まれたEdelmanら, 1969, Proc Natl Acad Sci USA 63: 78-8に記載された通りである。Kabat EUインデックスナンバリングは、例えば、標的抗体を、Kabat EUインデックスにより、共通配列と比較することができる。例えば、前記5個の変異は、T366L、D399R、L351E、Y407L及びK409Vを含んでもよい。しかし、本発明が、それに厳格に制限されるものではない。例えば、T366における変異は、非制限的な例示としても、下記を含んでもよい:T366L、T366P、T366C、T366V、T366S、T366R及びT366W。D399における変異は、非制限的な例示としても、下記を含んでもよい:D399R、D399C、D399H、D399V、D399T、D399A、D399P、D399N、D399I、D399H、D399S、D399G及びD399M。L351における変異は、非制限的な例示としても、下記を含んでもよい:L351E、L351G、L351R、L351Y、L351T、L351K、L351W、L351V、L351P及びL351D。Y407における変異は、非制限的な例示としても、下記を含んでもよい:407L、Y407P、Y407A、Y407R、Y407V、Y407T、Y407H及びY407F。K409における変異は、非制限的な例示としても、下記を含んでもよい:K409V、K409C、K409P、K409A、K409F、K409Q、K409R、K409T、K409S、K409M、K409Y及びK409N。
【0075】
例示的な実施例において、T366及びD399における変異は、第1ポリペプチド上、すなわち、第1重鎖のCH3ドメインにおいてであり、L351、Y407及びK409における変異は、第2ポリペプチド上、すなわち、第2重鎖のCH3ドメインにおいてでもある。本発明は、それに明確に制限されるものではないが、そのような組み合わせは、良好な安定性及び結合活性を有した最適の自発的なヘテロダイマー形成を算出する。各ハーフマーは、その相補的なハーフマー「パートナー」または鎖に対して、強い引力を有し、自体に対しては強い反発力を有する。そして、ヘテロダイマー形成が非常に強く誘発され、ホモダイマー形成があまり強く誘発されない。十分に酸化可能な生理学的条件下の水溶液に、2個の構成ハーフマーのうち、ただ一つだけ存在する場合、存在する実際ポリペプチド型は、ハーフマー型、2個のハーフマーが非共有力によって結合され、折り畳まれていないホモダイマー型を含んでもよい。そのような溶液において、前記水溶液が相補的な「他の」ハーフマーのような前述のハーフマー以外のポリペプチドは、根本的に含まれない場合、ホモダイマー型である前記ポリペプチド型部分は、顕著に抑制される。言い方を変えれば、十分な量の還元剤を含む生理学的条件下において、第1ポリペプチド鎖または第2ポリペプチド鎖、及びそれに結合された認識モイエティ(ポリペプチド鎖に対する「同質の」認識モイエティ)のうち、ただ一つだけ水溶性媒体に導入される場合、そのようなポリペプチド鎖、及びその同質の認識モイエティは、ホモダイマーを形成する傾向がなく、溶液の他のポリペプチドは、根本的に含まれていない場合、水溶液内において、ハーフマーとして維持される傾向がある。水溶液におけるそのような導入は、例えば、宿主細胞における発現を含む。同様に、十分な量の還元剤を含む生理学的条件下において、2個のそのようなポリペプチド鎖と、その同質の認識モイエティとが水溶液に導入される場合、相応するヘテロダイマーだけではなく、その構成ハーフマーも、存在することができるが、ホモダイマー形成は、抑制される。還元剤の存在下において、ホモダイマー形成の比率は、一般的に、前記水溶液の他のポリペプチドが根本的に含まれていない場合、水溶液に存在する全体ポリペプチド型(ハーフマー、ホモダイマー、ヘテロダイマー、折り畳まれていない種など)の重量基準で、50%未満である。例えば、還元剤の存在下において、前記第1ポリペプチド、前記第2ポリペプチド、認識モイエティに共有結合に結合された前記第1ポリペプチド、または認識モイエティに共有結合で連結された第2ポリペプチドによって形成されたホモダイマーの(重量)の比率は、50%未満である。例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%未満、またはそれ未満でもある。
【0076】
特定実施例において、前記還元剤は、グルタチオン、2-メルカプトエタノール、2-メルカプトエチルアミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、システイン、システインヒドロクロリド、ジチオトレイトール(DTT)、システインジチオトレイトール、ジチオールブチルアミン、ジチオエリトリトール(DTE)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)、及び/またはその組み合わせによって構成された群から選択される。一部実施例において、還元剤濃度は、タンパク質濃度に比べ、モル超過1~100倍(例えば、20~50倍)である。一部実施例において、還元剤の濃度は、約0.1mM~約20mMでもある。十分な量でも使用される代表的な還元剤は、ジチオトレイトール1mM以上、2-メルカプトエチルアミン50mM以上及びシステイン50mM以上を含む。一部実施例において、タンパク質酸化に先立ち、タンパク質とのインキュベーションに続いて、還元剤は、除去される。
【0077】
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、共有結合または柔軟なリンカを介して、認識モイエティにも別途に連結され、前記認識モイエティは、以下に制限されるものではないが、抗原結合断片、一本鎖抗体断片(scFv)、受容体認識リガンドまたはリガンド認識受容体を含む。共有結合は、外の電子殻を共有する二つ、またはそれ以上の原子間化学的連結を含む。そのような電子が飽和状態に至る場合、安定して形成される化学的構造は、共有結合と知られている。言い方を変えれば、共有結合は、互いに同一であるか、あるいは異なる元素からの原子間の電子対共有による相互作用を含む。本開示において、前記第1ポリペプチドと前記第2ポリペプチドとの共有結合は、以下に制限されるものではないが、1つのアミノ酸のアミノ基が他のアミノ酸のカルボキシ基と反応するときに合成される水(HO)分子の放出を誘発するアナミド(anamido)アミド結合、または1アミノ酸分子のアミノ基と相互作用する他の化合物、及びそのポリマーのエチレングリコール基、ポリエチレングリコール基またはアルデヒド基によって合成されるアナミド結合またはアミド結合を含む。前記柔軟なリンカは、短いアミノ酸配列またはポリマーを含んでもよい。そのようなアミノ酸配列は、以下に制限されるものではないが、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号72)を含む。
【0078】
T366、D399、L351、Y407及びK409における変異の他の組み合わせは、明らかに本発明の範囲内に属する。例えば、下記グループIのa)~h)、及びグループIIのa)~h)からの組み合わせのうちいずれか一つである:
【0079】
グループI:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T366W、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H。
【0080】
グループII:
a)前記第1ポリペプチド内D399R及び前記第2ポリペプチド内K409V;
b)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409C;
c)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409P;
d)前記第1ポリペプチド内D399N及び前記第2ポリペプチド内K409S;
e)前記第1ポリペプチド内D399G及び前記第2ポリペプチド内K409S;
f)前記第1ポリペプチド内D399I及び前記第2ポリペプチド内K409F;
g)前記第1ポリペプチド内D399T及び前記第2ポリペプチド内K409Q;並びに
h)前記第1ポリペプチド内D399A及び前記第2ポリペプチド内K409R。
【0081】
下記グループIIIのa)~h)、及びグループIVのa)~h)からの組み合わせのうちいずれか一つである:
【0082】
グループIII:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T66W、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;そして
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H。
【0083】
グループIV:
a)前記第1ポリペプチド内K409V及び前記第2ポリペプチド内D399R;
b)前記第1ポリペプチド内K409C及び前記第2ポリペプチド内D399C;
c)前記第1ポリペプチド内K409P及び前記第2ポリペプチド内D399C;
d)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399N;
e)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399G;
f)前記第1ポリペプチド内K409F及び前記第2ポリペプチド内D399I;
g)前記第1ポリペプチド内K409Q及び前記第2ポリペプチド内D399T;並びに
h)前記第1ポリペプチド内K409R及び前記第2ポリペプチド内D399A。
【0084】
グループVのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つである:
グループV:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びK409V;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G、Y407L及びK409C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y、Y407A及びK409P;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399N、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V、Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D、Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P、Y407F及びK409F;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びD399T、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K、Y407T及びK409Q;そして
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399A、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W、Y407H及びK409R。
【0085】
グループVIのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つである:
グループVI:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びD399R;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G、Y407L及びD399C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y、Y407A及びD399C;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V、Y407P及びD399N;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D、Y407P及びD399G;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409F、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P、Y407F及びD399I;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びK409Q、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K、Y407T及びD399T;そして
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W、Y407H及びD399A。
【0086】
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、それぞれ重鎖を含んでもよい。前記本発明のヘテロダイマー構造体は、二重特異性抗体を含んでもよいが、それに特別に制限されるものではない。例えば、前記ヘテロダイマー構造体は、1以上のscFv断片、1以上のFab断片、例えば、scFv断片及びFab断片、または2個のFab断片を含んでもよい。前記ヘテロダイマーのポリペプチドの例示的な配列は、特別に制限されるものではないが、下記の配列番号のうち一つを含む:配列番号16~31、配列番号33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71。下記の配列番号のうち一つと、少なくとも70%配列同一性を有する変異型配列も含まれる(生物学的活性は、維持する):配列番号16~31、配列番号33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71。例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上の配列同一性を有することができる。追加して、配列番号16~31、配列番号33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71のうちいずれか一つは、1以上の保存的置換を有するが、依然として、本開示の範囲内にある。
【0087】
本開示の二重特異性ヘテロダイマー抗体は、第1重鎖と第2重鎖との1以上の二硫化結合を形成する。該二硫化結合は、同一細胞における発現中に形成されるか、あるいは生体外において、酸化剤追加による酸化反応を介しても形成される。そのような二硫化結合形成は、ハーフマーが発現されて精製され、還元剤追加によって還元され、共に混合されて酸化され、ヘテロダイマーを形成する実施例でなされる。
【0088】
本発明のヘテロダイマーは、Fc受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcεRI、FcεRII、FcαRI、Fcα/μR及びFcRnのうち1に結合可能である。例示的な実施例において、該ヘテロダイマーは、FcRnに対する結合力を維持することができる。本明細書において、FcRnは、MHCクラスIヘテロダイマー受容体ファミリーと構造的に相同であるということを示すが、非共有相互作用によって共に組み合わされるクラスI膜貫通重鎖(p51サブユニット、アルファ鎖)及び溶解性軽鎖(p14サブユニット、ベータ鎖)を含む。IgG上のFcRnの結合部位は、CH2-CH3界面に位置する。最も重要なアミノ酸部位は、253、310及び435である。
【0089】
それらの自然な構造により、本発明のヘテロダイマーは、(必ずしもその限りではないが)1以上の抗原に同時に標的する。例示的な実施例において、該抗原は、HER2、PD-L1、TROP2、CD3及び/またはCD20のうち一つを含む。しかし、本発明は、それに厳格に制限されるものではない。それは、本開示が、安定性、血清半減期、及び治療効果向上のための抗体/免疫グロブリン構造体の不変領域(CH3)の変形に係わるものであるからである。従って、本開示の根本的な技術は、ただ1つの標的抗原に結合する単一クローン抗体に適用される。それは、例えば、公知の治療抗体を含んでもよい。そのような抗体は、変形された不変領域を有することによる向上された安定性の利点を有する。そのような場合、前記第1ポリペプチド上及び前記第2ポリペプチド上(または、連結された)の認識モイエティは、同一に維持され、「半抗体」または「ハーフマー」の間の差は、 排他的に CH3領域にあるもよい。
【0090】
本開示の変形の利点を有する公知の治療単一クローン抗体は、下記のうち一つである非制限的な抗体を含んでもよい:3F8、8H9、3F8、8H9、アバゴボマブ、アブシキマブ、アビツズマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アファセビクマブ(Afasevikumab)、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、ペンテト酸アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトックス、アネツマブラブタンシン(Anetumab ravtansine)、アニフロールマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、アベルマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベゲロマブ(Begelomab)、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブレセルマブ(Bleselumab)、ブリナツモマブ、ブロンツベトマブ(Blontuvetmab)、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブラジクマブ(Brazikumab)、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチクツズマブ、ブロスマブ、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カロツキシマブ(Carotuximab)、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシン免疫接合体、セデリズマブ、セルグツズマブアムナロイキン、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コドリツズマブ、コルツキシマブラブタンシン、コナツムマブ、コンシズマブ、CR6261、クレネズマブ、クロテドマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブペゴル、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブマホドチン、デノスマブ、デパツキシズマブマホドチン、デルロツキシマブビオチン、デツモマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ(Diridavumab)、ドマグロズマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、ドゥシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エミシズマブ、エナバツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エンリモマブペゴル、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィバツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレチクマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガルカネズマブ(Galcanezumab)、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イダルシズマブ、イゴボマブ、IMAB362、イマルマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インデュサツマブベドチン、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラムパリズマブ、ラナデルマブ、ランドグロズマブ、ラプリツキシマブエムタンシン、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンダリズマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リファシツズマブベドチン、リゲリズマブ、リロトマブサテトラキセタン(Lilotomab satetraxetan)、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、MABp1、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マスリモマブ、マツズマブ、マブリリムマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、モガムリズマブ、モナリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナラツキシマブエムタンシン、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ナビシキズマブ(Navicixizumab)、ナビブマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パムレブルマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、プロザリズマブ、ポガリズマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プレザリズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、リババズマブペゴル、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロバルピツズマブテシリン、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、サペリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、SGN-CD19A、SGN-CD33A、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タムツベトマブ(Tamtuvetmab)、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、タレクスツマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テシドルマブ、テツロマブ、テゼペルマブ、TGN1412、チシリムマブ、チガツズマブ、チルドラキズマブ、チモルマブ、チソツマブベドチン、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ウトミルマブ、バダスツキシマブタリリン、バンドルツズマブベドチン、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボバリリズマブ、ボロシキマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、キセンツズマブ(Xentuzumab)、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブアリトクス、及びその組み合わせ。
【0091】
該標的は、下記のうち一つである非制限的な標的を含んでもよい:β-アミロイド、4-1BB、5AC、5T4、α-フェト蛋白質、アンジオポエチン、AOC3、B7-H3、BAFF、c-MET、c-MYC、C242抗原、C5、CA-125、CCL11、CCR2、CCR4、CCR5、CD4、CD8、CD11、CD18、CD125、CD140a、CD127、CD15、CD152、CD140、CD19、CD2、CD20、CD22、CD23、CD25、CD27、CD274、CD276、CD28、CD3、CD30、CD33、CD37、CD38、CD4、CD40、CD41、CD44、CD47、CD5、CD51、CD52、CD56、CD6、CD74、CD80、CEA、CFD、CGRP、CLDN、CSF1R、CSF2、CTGF、CTLA-4、CXCR4、CXCR7、DKK1、DLL3、DLL4、DR5、EGFL7、EGFR、EPCAM、ERBB2、ERBB3、FAP、FGF23、FGFR1、GD2、GD3、GDF-8、GPNMB、GUCY2C、HER1、HER2、HGF、HIV-1、HSP90、ICAM-1、IFN-α、IFN-γ、IgE、CD221、IGF1、IGF2、IGHE、IL-1、IL2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-9、IL-12IL-15、IL-15R、IL-17、IL-13、IL-18、IL-1β、IL-22、IL-23、IL23A、インテグリン、ITGA2、IGTB2、ルイスY抗原、LFA-1、LOXL2、LTA、MCP-1、MIF、MS5A1、MUC1、MUC16、MSLN、ミオスタチン、MMP上科(superfamily)、NCA-90、NFG、NOGO-A、Notch 1、NRP1、OX-40、OX-40L、P2X上科、PCSK9、PD-1、PD-L1、PDCD1、PDGF-R、RANKL、RHD、RON、TRN4、血清アルブミン、SDC1、SLAMF7、SIRPα、SOST、SHP1、SHP2、STEAP1、TAG-72、TEM1、TIGIT、TFPI、TGF-β、TNF-α、TNF上科、TRAIL上科、Toll類似受容体、WNT上科、VEGF-A、VEGFR-1、VWF、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器細胞融合ウイルス(RSV)、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザA血球凝集素、狂犬病ウイルス、HIVウイルス、単純疱疹ウイルス(herpes simplex virus)、及びその組み合わせ。
【0092】
本開示のヘテロダイマー構造体は、本明細書に記載されたCH3ドメイン内の特定5個のアミノ酸置換以外にも、1以上の置換、欠失、付加及び/または挿入を有することができる。例えば、抗原または細胞のような他のポリペプチドへの結合能が顕著に落ちていないのであるならば、特定アミノ酸は、タンパク質構造において、他のアミノ酸でも置換される。結合能及びタンパク質特性は、タンパク質の生物学的活性を決定するために、生物学的な機能または活性の著しい損失がなければ、タンパク質配列内において、特定アミノ酸配列置換がなされる。多くの場合、ポリペプチド変異体は、1以上の保存的置換を含む。
【0093】
本開示のヘテロダイマー構造体は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または溶媒を含む薬学的組成物の形態でも提供される。前記組成物は、1以上の他の抗体または治療剤のようなさらなる薬学的活性成分を選択的に含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、例えば、他の免疫刺激剤、抗癌剤、抗ウイルス剤またはワクチンなどと共に、複合治療にも投与される。特定実施例において、該組成物は、ヘテロダイマーを、少なくとも1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、150mg/mLまたは200mg/mLの濃度で含む。一部実施例において、前記ヘテロダイマーは、1mg/mL~300mg/mL、または100mg/mL~300mg/mLの濃度を有する。
【0094】
前記薬学的組成物は、任意数の賦形剤を含んでもよい。利用可能な賦形剤は、担体、表面活性剤、増粘剤または乳化剤、固体結合剤、分散剤または懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、保存剤、等張剤、及びその組み合わせを含む。適する賦形剤の選択及び利用は、参照により、その開示が本明細書に含まれたGennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)に記載されている。
【0095】
望ましくは、薬学的組成物は、(例えば、注射または注入を介する)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎または表皮への投与に適する。投与経路により、活性化合物は、酸の活性化及び不活性化が可能な他の自然条件から保護するための物質にもコーティングされる。本明細書において、「非経口投与」は、腸及び局所への投与以外の、一般的に注射による投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄腔内、皮膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、器官経由、皮下、表皮下、皮膜下、関節内、クモ膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内への注射及び注入を含む。代案として、本発明に記載された抗体は、局所、表皮または粘膜の経路投与のような非経口経路にも投与される。例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下または局所にも投与される。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な塩の形態でもある。「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の望ましい生物学的活性を維持し、望ましくない毒性効果を伝達しない塩をを意味する。そのような塩の例は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。該酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸のような無毒性無機酸に由来するものはもとより、脂肪族のモノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸のような無毒性有機酸に由来するものを含む。該塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属に由来するものはもとより、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインのような無毒性有機アミンに由来するものを含む。
【0097】
薬学的に許容可能な組成物は、液体形態または固体形態でもある。必ずしもその限りではないが、一般的に、固体剤形は、単独または数回の服用のための投与以前、凍結乾燥されて溶液に投与される。そのような剤形は、極限気温またはpHに露出されないでこそ、熱による変性を防止することができる。そのために、本開示の抗体組成物は、生物学的に適切なpH範囲内で剤形化されなければならない。保管時、適切なpH範囲を維持するために、緩衝された溶液が一般的に必要であるが、剤形化及び投与の間、期間がさらに長い液体剤形の場合に特にそうである。一般的に、液体及び固体の剤形は、さらに長い期間の間、安定性を維持するために、低温(一般的に、2゜C~8゜C)での保管が要求される。剤形化された抗体組成物、特に液体剤形は、保管時、タンパク質加水分解を予防したり最小化させたりするために、以下に制限されるものではないが、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン及び/またはプロピルパラベンを有効濃度(一般的に、<1%w/v)で含む細菌発育阻止剤を含んでもよい。該細菌発育阻止剤は、一部患者には使用が禁止される。従って、凍結乾燥された剤形は、そのような成分を含んだり含まなかったりする溶液にも再構成される。以下に制限されるものではないが、凍結保護剤として(以下に制限されるものではないが、ソルビトール、マンニトール、グリセロール及びズルシトールのようなポリヒドロキシ炭化水素、及び/またはショ糖、乳糖、麦芽糖またはトレハロースのような二糖類を含む)、糖分のようなさらなる成分は、緩衝液体または固体抗体剤形にも投入され、(以下に制限されるものではないが、NaCl、KClまたはLiClを含む)適切な塩が投入される。そのような抗体剤形、特に長期保管のために考案された液体剤形は、2℃~8℃以上の温度での長期間安定性を促進させると共に、非経口注入に有用な剤形製造に有用な範囲の総浸透圧に依存するのである。例えば、必ずしもその限りではないが、総浸透圧の有効範囲(溶液中の総分子数)は、約200mOs/L~約800mOs/Lである。ショ糖またはソルビトールのような凍結保護剤の量は、溶液の総浸透圧が適切な範囲内において維持されるように、剤形内の塩量に依存するであろう。従って、塩非含有剤形は、約5%~約25%のショ糖を含んでもよいが、必ずしもその限りではない。
【0098】
代案として、塩非含有ソルビトール系剤形は、約3%~約12%のソルビトールを含んでもよいが、必ずしもその限りではない。該塩非含有剤形は、有効浸透圧レベルを維持するために、それぞれの凍結保護剤の増大した範囲を保証するということは言うまでもない。そのような剤形は、(以下に制限されるものではないが、MgCl、CaCl及びMnClを含む)二価陽イオン、及び(以下に制限されるものではないが、ポリソルベート80(Tween 80(登録商標))、ポリソルベート60(Tween 60(登録商標))、ポリソルベート40(Tween 40(登録商標))及びポリソルベート20(Tween 20(登録商標))、以下に制限されるものではないが、Brij 58(登録商標)及びBrij 35(登録商標)のようなポリオキシエチレンアルキルエーテル類、トリトンX-100、トリトンX114、NP40、スパン85のようなその他類、及び非イオン性界面活性剤(例えば、Pluronic 121)のプルロニックシリーズを含む)非32イオン性を含んでもよい。該細菌発育阻止剤を含む任意の組み合わせは、本開示の抗体含有剤形にも有用に含まれる。本開示のヘテロダイマーは、また免疫グロブリン分子(例えば、ペギル化)の一般的な一部分ではない付加的な化学的モイエティを含む抗体である「化学的誘導体」でもある。そのようなモイエティは、塩基性分子の可溶性、半減寿命、吸水性などを向上させることができる。代案として、前記モイエティは、塩基性分子の望ましくない副作用を弱化させることができるか、あるいは塩基性分子の毒性を低減させることができる。本発明の薬学的組成物は、滅菌水溶液または分散液の形態でもある。本発明の薬学的組成物は、また高濃縮薬物濃度に適するマイクロエマルジョン、リポソーム、または他の整列された構造にも製剤化される。
【0099】
本開示のヘテロダイマー構造体は、同時に、多重標的分子に結合可能であり、それにより、複合疾病の治療にさらに効果的である。本開示のヘテロダイマー構造体は、例えば、ウイルス性感染または細菌性感染、代謝性障害または自家免疫障害、あるいは癌またはその他細胞増殖性障害のような疾病または障害の治療を必要とする個体にも投与される。一部実施例において、該自家免疫疾患は、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症(MS)、潰瘍性大腸カタル、クローン病、全身紅斑性ループス(SLE)、糸球体腎炎、拡張型心筋病症類似疾病、シェーグレン症候群、アレルギー接触皮膚炎、多発筋肉炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、白班、インシュリン依存性糖尿病、ベーチェット症候群、慢性甲状腺炎、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マチャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト・ヤコブ病、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。一部実施例において、前記腫瘍疾患及び細胞増殖性障害は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頚部扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含む。
【0100】
本開示は、さらには、本開示のヘテロダイマー構造体の1以上ポリペプチドをコーディングする1以上の核酸に係わるものである。前記1以上の核酸は、下記配列番号のうち一つをコーディングする:配列番号16~31、配列番号33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71。一部実施例において、前記1以上の核酸は、下記配列番号のうち一つを含む配列番号:32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67。下記配列番号のうち一つと、少なくとも70%配列同一性を有する変異型配列も含まれる:配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67。例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上の配列同一性を有することができる。該変異体核酸配列は、コドン最適化されたものでもある。本明細書において、コドン最適化は、合成タンパク質のアミノ酸配列の変化なしに(または、最小限の変化だけある)、すなわち、同一突然変異として、遺伝子(例えば、変形されていない核酸対比の移植遺伝子)発現の増加または最大化のための核酸の生体外突然変異誘発を意味する。コドン最適化は、特に効率的な可溶性タンパク質発現を促進するものであり、タンパク質発現を1,000倍まで上昇させることができる。変化されたコドンは、一般的に、宿主細胞解読システムによって使用されるものではない。
【0101】
本発明の範囲内において、核酸配列は、普通であるものから非常に厳格である条件下において、本開示の核酸または断片(または、相補的な配列)と混成化可能である。該混成化技術は、分子生物学分野において周知されている。例えば、テストのための適切な条件は、5×SSC,0.5% SDS,1.0mM EDTA(pH8.0)溶液での先洗浄、5×SSC、50℃~60℃での一晩混成化、0.1% SDS溶液を含む2×SSC、0.5×SSC及び0.2×SSCのそれぞれで、20分間2回洗浄する段階を含む。代案として、適切な厳格混成化条件は、例えば、混成化温度が60℃~65℃、または65℃~70℃に上昇されたことを除いては、前述の条件を含む。
【0102】
本開示の核酸は、ベクターまたはベクター系にも含有される。該ベクターは、必ずしもその限りではないが、例えば、プラスミドでもある。他の明確に非制限的な組み換えベクターは、シャトルベクター及び発現ベクターを含む。一般的に、プラスミド構造体は、複製原点(例えば、ColE1原点)及び選別マーカー(例えば、アンピシリン耐性またはテトラサイクリン耐性)を含んでもよい。該発現ベクターは、例えば、本開示によるヘテロダイマー構造体の発現に必要な制御配列または調節要素を含むベクターを含んでもよい。他の明確に非制限的な組み換えベクターは、当該技術分野で周知されており、例えば、λファージベクターのようなファージベクター、非複製アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、pSV・pCMVシリーズのプラスミドベクター、牛痘ウイルスベクター及びレトロウイルスベクターのようなその他ウイルスベクター、バクロウイルスベクター、コスミド、人工染色体を含んでもよい。該ベクターは、哺乳類発現ベクターでもある。例えば、該ベクターは、哺乳類細胞内に形質導入され、安定した形質導入の場合、DNAは、同種組み換えを介して、遺伝体にも合わせられる。または代案として、細胞は、一時的に形質導入される。一般的に、最も操作に多用されるベクターは、複製原点、多重クローニング部位及び選別マーカーを有し、前述のような系を有するベクター(例えば、多重プラスミドのようなベクター系を含む)は、本発明の範囲に含まれると見られる。哺乳類発現ベクターのための一般的なプローモーターは、CMVプロモーター及びSV40プローモーターを含む。EF-1プローモーターのような非ウイルス性プローモーターも、知られている。例示的なベクターは、pCDNAベクターから変形されたプラスミドベクターpX0GCを含む。
【0103】
本開示は、また本開示によるベクターまたはベクター系を含む宿主細胞に係わるものである。当業者は、異なる細胞種類は、異なるヘテロダイマー構造体結果物を算出することができ、結果物の治療薬効に影響を及ぼすということを理解するであろう。例えば、該宿主細胞は、(必ずしもその限りではないが、)下記の細胞種類を含んでもよい:ヒト胚芽腎臓細胞(HEK293)、またはHEK293から変形されたHEK293T、HEK293E及びHEK293F、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはCHOから変形されたCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、ExpiCHO及び関連細胞株。当該技術分野において、その他細胞株は、NS0鼠腫細胞、PER.C6ヒト細胞、S.cerevisiae、S.pombe及びP.pastorisのような酵母細胞、及びE.coliのようなバクテリア細胞を含む。細胞非含有発現系は、例えば、転写/解読に必要な細胞成分を含むE.coli細胞溶解物を基本に含む。真核細胞非含有系及び哺乳類細胞非含有系は、当該技術分野において周知されている。例えば、麦芽細胞非含有発現系、及びその開示が参照として本明細書に含まれたBrodel et al. (2015), Methods Mol Bio. 1261: 129-40に記載されたものなどがある。一部組み換え抗体生産系は、収獲前に、宿主細胞の表面上に組み換え抗体を発現させ、他のものなどは、収集用培地に抗体を単純に放出する。そのような変形は、本開示の範囲内にあると意図される。
【0104】
本明細書において、用語「抗体(Ab:antibody)」は、最も広い意味に使用され、具体的には、単一クローン抗体、多クローン抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体及び多重反応抗体)、及び抗体断片を含むが、それに制限されるものではない、任意の天然、あるいは部分的にまたは完全に合成された免疫グロブリンを含んでもよい。従って、本明細書内の任意文脈で使用される用語「抗体」は、任意の特異的結合構成員、免疫グロブリンクラス及び/またはイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、Ig、IgA1、IgA2、IgD、及びIgE)、Fab、F(ab’)2、scFv(一本鎖または関連個体)、及び(scFv)2を含むが、それらに制限されるものではない生物学的に関連した断片またはその特異的結合構成員を含むが、それらに制限されるものではない。
【0105】
本明細書において、用語「抗体断片」は、本明細書で検討されたように、公知の技術を介して得た抗体断片、及び当業者が得ることができるものを含んでもよい。そのために、前述の「抗体」の定義に加え、用語「抗体」は、完全な抗体の抗原結合領域または可変領域のような完全な抗体の一部分を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質をさらに含んでもよい。そのような抗体は、天然資源に由来したり、部分的にまたは全体的に、合成によって生産されたりもする。該抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;二重体及び線形抗体があるが、それらに制限されるものではない。
【0106】
本明細書において、用語「抗体依存性細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)」または「ADCC」は、FcRs(例えば、自然殺(NK:natural killer)細胞、好中球及び大食細胞)を発現する(例えば、非特異的)細胞毒性細胞が、標的細胞上の接合抗体を認識し、次に、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を意味する。ADCCを媒介する一次細胞、NK細胞は、FcγRIIIを発現し、単核球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。
【0107】
本明細書において、用語「二重特異性抗体」は、単一抗原上、または2個の異なる抗原上の2個の異なる抗原決定基に結合可能な抗体を意味する。該抗原決定基は、連続アミノ酸(線形抗原決定基)またはタンパク質の三次フォールディングによって並べておかれた非連続アミノ酸(配座抗原決定基(conformational epitope))からも形成される。連続アミノ酸から形成された抗原決定基は、一般的に、溶媒変性に露出されたまま維持され、三次フォールディングによって形成された抗原決定基は、一般的に、溶媒変性を伴い、治療時に失うことになる。該抗原決定基は、一般的に、独特の空間配座を有する少なくとも一般的に3個以上、少なくとも5個、または8~10個のアミノ酸を含む。本開示の二重特異性抗体は、二価、三価または四価でもある。本明細書において、「-価の」、「-街」、「-街(複数)」、またはその他文法的な変形は、抗体分子内における抗原結合部位の数を意味する。そのような抗原認識部位は、同一抗原決定基または異なる抗原決定基を認識することができる。
【0108】
本明細書において、用語「担体」は、採用された服用量及び濃度で、それに露出された細胞、または哺乳類に非毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤を含んでもよい。薬学的に許容可能な担体は、一般的に、水溶性pH緩衝溶液である。生理学的に許容可能な担体の例は、以下に制限されるものではないが、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他有機酸のような緩衝液;以下に制限されるものではないが、アスコルビン酸を含む抗酸化剤;(約10残基未満)低分子量ポリペプチド;以下に制限されるものではないが、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;以下に制限されるものではないが、ポリビニルピロリジンのような親水性ポリマー;以下に制限されるものではないが、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンのようなアミノ酸;以下に制限されるものではないが、グルコース、マンノ-オスまたはデキストリンのような単糖類、二糖類、及びその他炭水化物類;以下に制限されるものではないが、EDTAのようなキレート試薬;以下に制限されるものではないが、マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;以下に制限されるものではないが、ナトリウムのような塩形成相対イオン;及び/または以下に制限されるものではないが、TWEEN.のような非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール(PEG)及びプルロニックを含む。そのような成分の任意組み合わせは、細菌発育阻止剤を含んでもよく、本開示の剤形を充填するのに有用でもある。
【0109】
本明細書において、用語「保存的配列変形」または「保存的置換」は、本発明のヘテロダイマー免疫グロブリン構造体の結合特性に、有意に影響を及ぼしたり変化させたりしない標的抗原決定基、または本発明の抗体、及びその抗原結合部分のアミノ酸変形を意味する。そのような保存的変形は、アミノ酸の置換、付加及び欠失を含む。該変形は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発のような公知の標準技術を利用し、本発明の抗体に導入することができる。該保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で代替されるものである。そのような置換は、一般的に、疎水性度、親水性度、電荷、大きさのようなアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づくものである。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。そのようなファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香性側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0110】
本明細書において、用語「細胞外ドメイン」または「膜受容体の細胞外ドメイン」は、相応する抗原またはリガンドを認識してそれに結合し、細胞表面上の膜貫通ドメインの受容体に固定し、細胞内キナーゼ活性関連細胞内ドメインまたは信号伝達経路と係わる細胞外領域を含む分子認識配列を意味する。リガンドは、膜受容体の細胞外ドメインによって認識して結合するタンパク質、小さいペプチドまたは化合物を意味する。免疫原性、類似分裂促進のような刺激剤は、多様な細胞が、低分子量可溶性タンパク質を生産するように誘導することができる。先天免疫及び適応性免疫、造血作用、細胞成長、APSC多能性細胞を調節し、損傷された組織を復旧する。サトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍懐死因子上科、コロニー刺激因子、ケモカイン、成長因子にも分類される。タンパク質発現タグは、標的タンパク質のN-末端またはC-末端に付加されたアミノ酸配列を意味し、小さいペプチドまたは長いアミノ酸でもある。タグの追加は、タンパク質の正確なフォールディングを促進することができ、タンパク質の分離及び精製にも使用される。それは、細胞において、タンパク質の分解低減に有用である。以下に制限されるものではないが、一般的に使用されるタグは、HA、SUMO、His、GST、GFP及びFlagを含む。
【0111】
本明細書において、用語「Fab断片」は、抗原結合断片(Fab)の断片である認識モイエティを意味し、それは、統合された軽鎖、並びに重鎖のVHドメイン及びCH1ドメインを含む抗体分子の両アームと同一である。
【0112】
本明細書において、用語「Fc」は、CH2及びCH3の不変ドメインで構成され、エフェクタの分子または細胞、例えば、Fc受容体と相互作用する免疫グロブリンの相互作用領域である「結晶質断片」領域を意味する。
【0113】
本明細書において、用語「Fc受容体」または「FcR」は、Fc領域(例えば、抗体または抗体断片のFc領域)に結合する受容体の記述に使用される。該用語は、母体IgGを胎児に伝達する新生児受容体であるFcRnを含む。その他のFc受容体は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcεRI、FcεRII、FcαRI及びFcα/μRのうち任意の一つを含む。
【0114】
本明細書で使用された用語「相同性」は、2つの組成物間で共有された構造の存在を意味する。タンパク質と係わって用語「相同性」は、2以上のアミノ酸間及び/またはペプチド配列間の(例えば、百分率で表示される)重畳量を意味する。核酸と係わって用語「相同性」は、2以上の核酸配列間(例えば、百分率で表示される)の重畳量を意味する。本明細書において、2個の配列間の百分率(%)相同性は、2個の配列間の百分率同一性に相応する。2個の配列間の百分率同一性は、配列によって共有される同一位置数の関数であり(%相同性=同一位置数/総位置数×100)、前記2個配列の最適整列のために導入する必要があるギャップ数、及び各ギャップの長さを考慮する。配列の比較、及び2個の配列間の百分率同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用しても得られる。そのような相同性は、配列対整列方法、多重配列整列方法、構造整列方法及び/または系統発生分析方法を含む整列ツール及び/またはアルゴリズムを介して、当該技術分野に広く公知されている。保存的置換において配列が異なる場合、百分率配列同一性は、置換の保守的性質を矯正するために、上向き調整されるが、必ずしもその限りではない。そのような調整を行うための手段は、当該技術分野において周知されている。一般的に、必ずしもその限りではないが、それは、完全な不一致ではなく、部分的なものとして、保存的置換をスコアリングすることにより、百分率配列同一性を向上させることを含む。従って、例えば、同一アミノ酸に1点を付与し、非保存的置換に0点を付与した場合、保存的置換に0と1との間の点数が付与される。
【0115】
本明細書において、用語「免疫グロブリン」は、450~550のアミノ酸残基のさらに長い配列を含み、55,000~70,000Daのさらに高い相対分子量を有する2個の重鎖、及び約210アミノ酸残基のさらに短い配列を含み、約24,000Daのさらに小さい相対分子量を有する2個の軽鎖(L鎖)を含む4個のポリペプチド鎖を有する対称構造を意味する。可変領域(V領域:variable region)と知られた異なる免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の110アミノ酸配列の終端側のN-末端と、不変領域(C領域:constant region)と知られた比較的不変のC-末端に近い残余アミノ酸配列との間には、大きい差がある。重鎖の可変領域は、全体重鎖配列の約1/4を占め、重鎖の不変領域は、全体重鎖配列の約3/4を占める。IgGは、CH1、CH2及びCH3と呼ばれるH鎖を有する3個の不変領域を有する。該不変領域は、免疫グロブリン分子及び免疫反応を活性化させる部位のうち1つの骨格である。本発明において、該不変領域は、第1ポリペプチドが第2ポリペプチドと相互作用する領域と係わり、前記領域は、CH3ドメインに位置したアミノ酸を含む。そのようなアミノ酸は、以下に制限されるものではないが、以下のものを含む:グルタミン347、チロシン349、トレオニン350、ロイシン351、セリン354、アルギニン355、アスパラギン酸356、グルタミン酸357、リシン360、セリン364、トレオニン366、ロイシン368、リシン370、アスパラギン390、リシン392、トレオニン394、プロリン395、バリン397、アスパラギン酸399、セリン400、フェニルアラニン405、チロシン407、リシン409及びリシン439。
【0116】
本明細書において、用語「精製された」または「分離され」抗体、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、自然に結合された他のタンパク質、脂質及び核酸から分離されたペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。前記ポリペプチド/タンパク質は、精製された製剤の乾燥重量を基準に、少なくとも10%(すなわち、10%~100%の任意百分率、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%及び99%)を構成することができる。純度は、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはHPLC分析のような任意の適切な標準方法によっても測定される。
【0117】
本明細書において、用語「scFv」は、単一鎖可変断片を意味する。該scFvは、リンカペプチドに連結された免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を言う。前記リンカペプチドは、約5~40長のアミノ酸、約10~30長のアミノ酸、または約5,10,15,20,25,30,35または40長のアミノ酸に由来する。例示的なリンカは、次の通りである:GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号72)。
【0118】
用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」及び「特異的に結合」は、他の抗原ではなく、選定された抗原上の抗原決定基への抗体結合を意味し、一般的に、抗体は、選定された抗原、例えば、Her2,PD-L1,Trop2,CD3及び/またはCD20上の抗原決定基を分析物として、かつ前記抗体をリガンドとして使用するビアコア(BIACORE(登録商標))2000機器による平衡透析、または表面プラズモン共鳴(SPR)技術抗原陽性細胞に対する抗体の結合に係わるスキャッチャード分析によって決定するとき、該抗体は、約10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、またはそれより以下のような約10-6M未満の平衡解離定数(K)で結合し、選定された抗原または密接した関連抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対する親和度より、少なくとも2倍さらに大きい親和度で選定された抗原に結合する。
【0119】
本明細書において、用語「個体」または「患者」は、治療が行われる生物学的系を意味する。生物学的系は、例えば、個別細胞、細胞体系(例えば、細胞培養物)、器官、組織または多細胞有機物を含んでもよい。本発明の個体は、鳥類、爬虫類、哺乳類などを含んでもよい。望ましくは、哺乳類は、齧歯類及びヒトを含む霊長類を含む。
【0120】
本明細書において、用語「治療する」または疾病の「治療」は、疾病の症状または徴候を軽減させるために、薬物を1以上の(ヒトまたはそれ以外)患者に投与する段階を含むプロトコル実行を意味する。該軽減は、疾病の症状または徴候の発生前や発生時に行われる。そのために、「治療する」または「治療」は、疾病の「予防すること」または「予防」を含む。それに加え、「治療する」または「治療」は、症状または徴候の完全な軽減を要求せず、治癒を要求せず、特異的に患者に小さい影響を有するプロトコルを含む。
【0121】
本明細書において、用語「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸変形(例えば、置換、挿入または欠失)により、重鎖サブユニット配列が異なるヘテロダイマー変異体を含む、天然配列Fc領域(その一部分)のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。例示的な本開示のアミノ酸変形は、CH3領域内のT366L、D399R、L351E、Y407L及び/またはK409Vを含む。
【0122】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において、単数形態の「ある(a)」、「及び」並びに「その(the)」は、文脈上明確に言及されない限り、複数形態も含む。
【0123】
用語「およそ」は、当業者により、基底数値から実質的に異なると見られない数値の範囲を意味する。例えば、用語「およそ」は、言及された数値の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%以内の数値はもとより、文脈で定義する言及された数値の間にある数値も意味する。
【0124】
本明細書において、用語「結合構成員」は、例えば、Fc受容体のような標的に特異的に結合するタンパク質または(抗体またはその断片のような)タンパク質複合体、小分子のような作用剤を意味する。Fc受容体結合構成員は、Fc受容体に特異的に結合する作用剤を意味する。用語「特異的結合」、「特異的に結合」などは、溶液内または反応混合物内の他の分子またはモイエティに比べ、優先的に分子に結合するものを意味する。一部実施例において、結合構成員と、それに特異的に結合する標的との親和性は、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M以下のような10-6M以下のKd(解離定数)で特徴づけられる。
【0125】
本明細書において、用語「認識モイエティ」は、高レベルの選択性でもって、標的分子(例えば、抗原、リガンド、受容体、基質)と特異的に相互作用する作用剤の領域を意味する。代表的な認識モイエティは、抗体の可変領域、抗体可変領域の構造変異体、受容体の結合ドメイン、リガンドの結合ドメイン、または酵素の結合ドメインを含む。本開示において、認識モイエティは、それに結合された鎖に係わる同質認識モイエティと確認される。該結合は、文脈及び周辺内容により、自然のこととして、共有性または非共有性でもある。例えば、本開示の二重特異性ヘテロダイマー抗体は、各鎖に共有結合で連結された認識モイエティを有し、そのような二重特異性抗体のハーフマーは、十分な還元条件下において、少なくとも部分的に構成鎖と非共有的にも結合される。
【0126】
本明細書において、用語「生理学的条件」または「生理学的条件(複数)」は、一部変数(例えば、温度)が、生きている有機物において、観察可能な一般的な範囲外にもあが、本開示の二重特異性ヘテロダイマー抗体の一部作用は、支援する有機物、細胞系または条件が自然に発生しうる周辺環境の条件または条件(複数)を意味する。該生理学的条件の非制限的な例は、哺乳類細胞のような細胞で発見される温度、イオン強度、pH及びイオン濃度(例えば、Ca2+またはMg+)である。約2゜C~40゜C(例えば、20゜C~40゜C)の温度範囲、約1大気圧、約6~8のpH、約1~20mMのグルコース濃度、大体の大気酸素濃度、及び地球重力が生理学的条件である。本明細書において、用語は、条件特定において、他の具体的制限事項とも組み合わされる。そのような場合、該用語は、特定される条件の文脈内において、適切に解釈されなければならない。例えば、記載された水溶液が、2゜C~4゜Cのリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)内の1mMジチオトレイトールのように、1mMジチオトレイトールを含む生理学的条件、及び十分な還元条件下にあるならば、該溶液が、全体的に、言葉通り、還元剤存在下でも抗体作用を支援するという意味ではなく、ジチオトレイトールを除いては、溶液内の残り要素または変数が支援する範囲内であると考慮される。
【0127】
本明細書において、用語「根本的に非含有」は、当業者に公知のウェスタンブロット、ELISA、RIA、(キラルHPLC、キラルHPLC/MS、LC/MS/MSなどを含む)HPLC、薄層クロマトグラフィ、質量分析法、偏光測定法、気体クロマトグラフィ質量分析法のような一般的な検出方法及びプロトコルでも検出が不可能なポリペプチドのような特定成分のレベルを意味する。
【0128】
本開示に公開された刊行物は、本開示出願日以前に発表されたものである。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような出版物に先駆けている資格がないということを認めると解釈されるものではない。また、提供される刊行物の日付は、実際の公開日付と異なりもし、それは、独自的に確認されるものである。
【0129】
本文に引用された各出願及び特許だけではなく、前述の出願及び特許それぞれに引用された各文献または参照文献、特許または非特許文献(それぞれ発行された特許の審査中、「出願引用文献」を含む)、それら出願及び特許のうちいずれか一つに相応し、かつ/または優先権を主張するPCT及び海外出願または特許、並びにそれぞれの出願引用文献に引用されたり参照されたりする文献のそれぞれは、本明細書に、その開示が参照として明示的に含まれる。さらに一般的には、文書または参照文献は、本明細書において、特許請求の範囲の前に、参照リストまたは本文自体に引用され、それらそれぞれの文書または参照文献(「本明細書に引用された参照文献」)だけではなく、(製造業体の仕様、指針などを含む)本明細書に引用された参照文献に引用された文書または参照文献は、その開示が参照として本明細書に明示的に含まれる。
【0130】
下記非制限的な実施例でもって、本開示を追加して説明する。
【実施例
【0131】
実施例1.ヘテロダイマースクリーニングのための変異部位
ヘテロダイマー化を促進するために、IgG1重鎖領域のCH3ドメインに、変異が導入された。2個のIgG1同種CH3ドメイン(以下、CH3-A及びCH3-Bと表記する)間の相互作用において、最も重要なアミノ酸は、その開示が参照として本明細書に含まれたJ. Biol. Chem. 2010, 285: 19637-19646に記載されている。タンパク質データバンク(PDB:Protein Data Bank)から、27抗体配列を検索し、接触基準方法による基準により、アミノ酸を選択した。界面残基は、残基の側鎖重原子が、第2鎖の任意残基重原子から、距離が4.5Å以内に制限的に位置すると定義される。
【0132】
CH3界面内アミノ酸は、付加して、アラニン変異スクリーニングされ、解離の自由エネルギー変化及びグアニジンヒドロクロリド変性によるアンフォールディング(unfolding)は、野生型と比べ、エネルギーに最も多く影響を及ぼしたアミノ酸を選別するために検出された。その結果、Thr366,Leu368,Phe405,Tyr407,Lys409内変異は、2kcal/モル超過の自由エネルギー変化を誘発した。また、その開示が参照として本明細書に含まれたBiochemistry 1998 Jun 30; 37(26): 9266-73を参照されたい。界面でのアミノ酸の距離は、さらに、Pymol及びDSソフトウェアで分析した。表1は、その結果を示す。界面間の水素結合は、イタリック体及び下線で表示されている。界面でのアミノ酸の距離、及びアラニン変異スキャニング結果に基づいて、ヘテロダイマー形成を促進する下記変異部位が選別された:前記第1ポリペプチド/CH3ドメイン内のThr366、Asp399、及び前記第2ポリペプチド/CH3ドメイン内のLeu351、Tyr407、及びLys409.
【0133】
【表1】
【0134】
実施例2.Fcヘテロダイマーに対する真核細胞ディスプレイライブラリー構築
2.1.Fcヘテロダイマーに対するディスプレイベクター構築
FcヘテロダイマーのディスプレイベクターpDis3は、ディスプレイベクターpDisplay(Invitrogen、Cat.No.V66020)から変形された。PDGFR遺伝子及びそのmyc遺伝子は、NotI(NEB、Cat.No.R-0189S)/SfiI(NEB、Cat.No.R-0123S)消化によって欠失された。pDisplayベクターのプラスミドを、下記プライマーを使用して増幅し、多重クローニング部位(MCS:multiple cloning site)を作った:TGGGGCCCAGCCGGCCAGATCT(配列番号1)及びATAAGAATGCGGCCGCGTCGACCTGCA(配列番号2)。そのようなプライマーは、それぞれNotI/SfiI制限部位を有する。MCSは、NotI/SfiI制限部位によって切断され、前述の消化されたベクターに挿入された。中間結果物であるpDisvectorをその結果として得た。
【0135】
pDis内F1 ori遺伝子は、欠失され、Oripは、下記方法によって挿入された。Orip遺伝子は、pTT5ベクター(Biovetor、Cat.No.3574108)から、SspI(NEB、Cat.No.R1032S)制限部位を含む下記プライマーを使用して増幅された:5’-ATCGAGTCAATATTAGGGTTAGTAAAAGGGTCCTAAGGAAC(配列番号3)、5’-CAGTCGATAATATTAAGAATTAATTCTCATGTTTGACAGCTTAT(配列番号4)。その後、Orip遺伝子は、Sspによって切断され、Ssp消化されたpDisベクターに結紮された。その結果、pDis1ベクターを得た。その後、新耐性(neo-resistant)遺伝子は、AvrII(NEB、Cat.No.R0174S)消化により、pDis1ベクターで欠失された。AvrII制限部位を追加するために、下記プライマーを使用し、pCEP4(Invitrogen、Cat.No.V04450)の増幅により、ハイグロ耐性遺伝子が挿入された:上流プライマー5’-TAGCCTCCCCCTAGGGTGGGCGAAGAACTCCAGCATG(配列番号5)、5’-TTTGGAGGCCTAGGCTTTTGCAAAGATCGATCAAGAGACAGGATGAGGA(配列番号6)。消化後、ハイグロ遺伝子をpDis1ベクターに挿入し、pDis2ベクターを得た。
【0136】
DNA配列(配列番号7)が中国GENEWIZによって合成された。該配列は、左側から右側に、SUMO遺伝子(ChampionTM pET SUMOベクター、Invitrogen、Cat.No.K30001)、ヒトFc遺伝子(以下、CH3-Aドメインを含むFc1と称する)、牛成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化信号、(pディスプレイベクターからの)信号ペプチド遺伝子、ヒトインフルエンザ血球凝集素(HA:hemagglutinin)遺伝子(98番~106番のアミノ酸からのジェンバンク(Genbank):NC_007362.1)及びヒトFc遺伝子(以下、CH3-Bドメインを含むFc2と称する)を含む。2個の酵素制限部位Sfi及びPstは、全体遺伝子配列の正反対に位置する。Fc配列、SUMO配列及びHA配列は、哺乳類コドン偏向によって最適化された。Fc1ドメインは、BgIII/SacII制限部位を有し、Fc2ドメインは、BsrG/SaII制限部位を有する。使用された酵素制限部位は、Fcアミノ酸配列を変化させない。DNA配列及びpDis2は、Sfi/Pstを使用して消化され、pDis2に結紮された。その結果、図1に示されているように、ベクターpDis3を得た。
【0137】
2.2.ヘテロダイマーFcライブラリーの構築
pUC57-TCZHC(GENEWIZ、中国)は、自然ヒトFc配列を含む。Fc1のアミノ酸位置366及び399を、20種の異なる自然アミノ酸で任意的に変異させ、コドンNNSを縮重させる(degenerate)縮重プライマーを使用し、pUC57-TCZHCを、増幅を介して、第1部位特異的任意のFc配列を製造した。上流プライマーは、TCCCAGCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAAGTCTCCCTCNNSTGCCTGGTCAAGGGATTCTACCCTTC(配列番号8)であり、下流プライマーは、GTCCACGGTGAGCTTGGAGTACAGGAAGAAGGATCCGTCGCTSNNCAGGACGGGGGGGGTTGTCTT(配列番号9)である。
【0138】
第2Fc遺伝子は、下記プライマーを使用し、pUC57-TCZHCから増幅された:上流プライマーTACTCCAAGCTCACCGTGGACAAGAGC(配列番号10)及び下流プライマーCGATCCAATCGATGGAAGATCTTCATCATTTGCCGGGGCTGAGGCTCAGGCT(配列番号11)。
【0139】
部位特異的任意のFc1断片は、下記プライマーを使用し、重畳延長によって共にスプライスされた:5’-CAAGGGCCAGCCGCGGGAACCTCAAGTGTATACCCTCCCTCCCAGCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAA(配列番号12)及び5’-CGATCCAATCGATGGAAGATCTTCATCATTTGCCGGGGCTGAGGCTCAGGCT(配列番号13)。
【0140】
Fc1断片は、BglII(NEB、CatNo.R0144S)及びSacII(NEB、Cat.No.R0157S)の制限部位において、pDis3ベクターにサブクローンされた。脱塩構造体は、Bio-Rad Gene Pulser Xcell電気穿孔装置を使用し、E.coli Top10菌株に形質転換された。
【0141】
形質転換体は、100mg/Lアンピシリンを含む選択的寒天培地に直接プレーティングされた。変異されたライブラリーサイズは、コロニー数によって計算された。20コロニーが任意に選択され、DNAシーケンシングによる挿入多様性を確認した。Fc1部位特異的任意の変異ライブラリーは、反復電気穿孔による10量に達するまで構造化された。
【0142】
Fc1部位特異的任意の変異ライブラリー抽出に、プラスミド抽出キット(Qiagen、Cat.No.27106)を使用する。該ライブラリーは、Fc1+Fc2部位特異的任意の変異ライブラリー構築のためのテンプレートとして使用する。部位特異的任意のFc2断片は、BsrGI制限部位及びSal制限部位の5’及び3’それぞれを追加するために、Fc1ライブラリー内において、縮重プライマーを使用してクローンされた:5’-GGCCAGCCCAGGGAACCTCAAGTGTACACCNNSCCTCCCAGCCGGGATGAGCTG(配列番号14)及び5’-GCCCTGTTGCCACCGGCTCTTGTCGACGGTGAGSNNGGASNNCAGGAAGAAGGATCCGTCGCT(配列番号15)。
【0143】
該プライマーには、BsrGI部位及びSalI部位があり、該方法は、NNSコドンを使用し、351,407及び409部位のFcに20アミノ酸を導入する。Fc2断片、及び(BsrGI(NEB、Cat.No.R3575L)消化及びSal(NEB、Cat.No.R3138L)消化による)線形化されたFc2ベクターは、Bio-Rad Gene Pulser Xcell電気穿孔装置を使用し、E.coli Top10菌株に共形質転換された。
【0144】
該形質転換体は、100mg/Lアンピシリンを含む選択的寒天培地に直接プレーティングされた。Fc1+Fc2部位特異的任意の変異ライブラリーは、反復電気穿孔による3×10量に達するまで構造化された。ヘテロダイマーFcライブラリー構築過程は、図2に示されている。Fc1+Fc2ライブラリーのプラスミドは、選択的寒天培地からの個別コロニー任意選別を介して、QIAGEN plasmid Plus 96 kits(Qiagen、Cat.No.16181)を使用して抽出された。
【0145】
精製されたプラスミドは、96ウェルプレートで、FreeStyleTM 293-F Cells(Invitrogen、Cat.No.R79007)に形質導入された。形質導入前日、293-F細胞は、サブ培養され、一晩育つように拡張された。形質導入日、細胞が遠心分離によって収集され、新鮮なFreeStyleTM 293発現培地(Gibco、Cat.No.12338001)で、200×10生細胞/mLの最終密度で再懸濁された。プラスミド(最終濃度36.67μg/mL)は、ポリエチレンイミン(25kDa、最終濃度55μg/mL、Alfa Aesar、Cat.No.43896)を使用し、定められたモル比で、一時的に共形質導入され、37℃で1時間、混合及びインキュベーションされた。新鮮な培地は、形質導入体積19倍に付加され、続けてインキュベーションされた。細胞培養上澄み液は、形質導入後、5~6日目に収獲された。
【0146】
図3から分かるように、2個の異なるタグを有するヘテロダイマーFc上澄み液において、5種の構造を有する。ヘテロダイマーは、ELISAによって検出された。簡潔に言って、96ウェルプレートを、pH9.6炭酸塩緩衝液において、抗HA抗体(Abcam、Cat.No.ab181181)でコーティングし、PBST(Sigma、Cat.No.P-3563)で洗浄した。プレート表面上の任意非特異的結合部位は、5%脱脂乳を含むPBSTによって遮断された。前記プレートは、PBSTで洗浄した。上澄み液を、1% BSAを含むPBSTで希釈し、プレートに付加した。その後、25℃で1時間インキュベーションした。アンバウンド(unbound)サンプルを除去するために、該プレートをPBSTで洗浄した。抗SUMO抗体(Abcam、Cat.No.ab179907)ラベリングされたビオチンを、5%脱脂乳を含むPBSTで希釈し、プレートに付加した。その後、25℃で1時間インキュベーションした。前記プレートは、PBSTで洗浄した。その後、二次抗体、ストレプトマイシンアビジンラベリングされたホースラディッシュ過酸化酵素(Abcam、Cat.No.59653)を、5%脱脂乳を含むPBSTで希釈し、プレートに付加した。その後、25℃で1時間インキュベーションした。前記プレートは、PBSTで洗浄した。酵素による色相変化を観察するために、10分間、TMB(BD OptEIA、Cat.No.555214)を付加した。1M着色を中止するために、HSOを付加した。マイクロプレート読取り機で、450nmでの吸光度を読み取った。
【0147】
最も高いOD数値を有する20個のクローンを、各スクリーニングラウンドにおいて選別し、相応する細胞を96ウェルプレートで拡張させた。タンパク質-Aアガロースクロマトグラフィ(ACRO Biosystems、Cat.No.MA0422-S1)を使用し、培養上澄み液からタンパク質を精製し、SDS-PAGEで分析した。最も高いヘテロダイマー化収率を有するクローンを得て、多回のラウンドスクリーニング後、DNAシーケンシングを介して確認した。結果は、下記表2の通りである:陽性クローンのアミノ酸配列は、配列番号16~31に示された通りである。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例3.ヘテロダイマー抗体発現のためのベクター構築
抗HER2抗体の重鎖及び軽鎖をコーディングするX0GC発現ベクターが構築された。抗体可変領域配列は、http://www.drugbank.ca/drugs/DB00072で得た。使用した重鎖の不変ドメインは、ヒトIgG1(Fc1)であった。可変軽鎖(VL)をコーディングする核酸配列は、配列番号32であり、アミノ酸配列は、配列番号33であった。軽鎖の不変ドメイン(CL)をコーディングする核酸配列は、配列番号34であり、アミノ酸配列は、配列番号35であった。可変重鎖(VH)をコーディングする核酸配列は、配列番号36であり、アミノ酸配列は、配列番号37であった。不変重鎖(CH)をコーディングする核酸配列は、配列番号38であり、アミノ酸配列は、配列番号39であった。
【0150】
下記のような重合酵素連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)を介して、VL、CL、VH、CHは、増幅された。反応系は、HO 8.9μL、5×Phusion DNA重合酵素緩衝液4μl、1mM dNTP 4μL、上流プライマー1μL、下流プライマー1μL、Phusion DNA重合酵素(NEB、Cat.No.F-530L)0.1μL及びテンプレート1μLであった。1.5%アガロースゲル電気泳動で、可変断片及び不変断片のPCR結果物を分離し、DNA精製キット(Promega、Cat.No.A9282)を使用して回収した。可変断片の上流プライマー、及び不変断片の下流プライマーと共に回収した可変断片及び不変断片をテンプレートにし、次ラウンドのPCRを行った。軽鎖または重鎖の完全な長さの断片を回収以後に得た。断片及びX0GCベクターは、同一のcoRI(NEB、Cat.No.R3101L)制限部位/HindIII(NEB、Cat.No.R3104L)制限部位を使用し、それぞれ消化及び連結した。該消化系は、10×反応緩衝液32μL、EcoRI及びHindIII 0.5μL、再生断片3μL、HO 14.5μLであった。反応は、37℃で3時間行われた。ライゲーション系は、10×T4 DNAリガーゼ緩衝液2μL、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs、Cat.No.M0202V)0.5μL、再生断片3μL、再生ベクター3μL、HO 11.5μLであった。該反応は、常温で12時間行われた。該構造体は、E.coli DH5α菌株(TIANGEN、Cat.No.CB104、中国)内に形質転換され、真核細胞内における発現のために、プラスミドは、抗体の重鎖(Fc1)または軽鎖と共に生成された。
【0151】
X0GC発現ベクターは、抗HER2抗体の重鎖をコーディングするように構築された。不変重鎖領域内の配列は、IgG1(Fc2)(配列番号40)であった。アミノ酸配列は、配列番号41であった。抗体の重鎖発現プラスミドは、真核細胞において、抗体の重鎖(Fc2)発現に使用した。
【0152】
X0GC発現ベクターは、抗CD20抗体の重鎖及び軽鎖をコーディングするように構築された。該抗体の可変配列は、その開示が参照として本明細書に含まれたUS5,736,137から得ることができる。不変重鎖領域内の配列は、ヒトIgG1(Fc1)であった。可変軽鎖(VL)をコーディングする核酸配列は、配列番号42であり、アミノ酸配列は、配列番号43であった。不変軽鎖(CL)のアミノ酸配列は、配列番号35であった。可変重鎖(VH)をコーディングする核酸配列は、配列番号44であり、アミノ酸配列は、配列番号45であった。不変重鎖(CH)をコーディングする核酸配列は、配列番号46または47であり、アミノ酸配列は、配列番号48または49であった。発現ベクターは、前述のように得た。抗体の軽鎖または重鎖の発現プラスミドは、真核細胞において、抗体の重鎖(FC1またはFc2)または軽鎖の発現に使用した。
【0153】
前述のように、X0GC発現ベクターは、抗Trop-2抗体の重鎖及び軽鎖をコーディングするように構築された。該抗体の可変配列は、その開示が参照として本明細書に含まれたWO2003-074566から得ることができる。不変重鎖内の配列は、ヒトIgG1(Fc1)であった。可変軽鎖(VL)をコーディングする核酸配列は、配列番号50であり、アミノ酸配列は、配列番号51であった。不変軽鎖(CL)のアミノ酸配列は、配列番号35であった。可変重鎖(VH)の核酸配列は、配列番号52であり、アミノ酸配列は、配列番号53であった。不変重鎖(CH)をコーディングする核酸配列は、配列番号54であり、アミノ酸配列は、配列番号55であった。
【0154】
前述のように、X0GC発現ベクターは、抗PD-L1抗体の重鎖及び軽鎖をコーディングするように構築された。該抗体の可変配列は、その開示が参照として本明細書に含まれたUS2010-0203056から得ることができる。不変重鎖領域内の配列は、ヒトIgG1(Fc1)であった。可変軽鎖の核酸配列は、配列番号56であり、可変軽鎖のアミノ酸配列銀配列番号57であり、不変軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号35であり、可変重鎖の核酸配列は、配列番号58であり、可変重鎖のアミノ酸配列は、配列番号59であり、不変重鎖の核酸配列は、配列番号60であり、不変重鎖のアミノ酸配列は、配列番号61であった。
【0155】
X0GC発現ベクターは、前述のように、抗CD3scFv及びヒトIgG1(Fc2)の融合配列をコーディングするように構築した。該抗体の可変配列は、その開示が参照として本明細書に含まれたUS7,112,324から得ることができる。不変重鎖内の配列は、ヒトIgG1(Fc2)であった。可変ドメインの核酸配列は、配列番号62であり、可変ドメインのアミノ酸配列は、配列番号63であり、不変ドメインの核酸配列は、配列番号:64~67のうちいずれか一つであり、不変ドメインのアミノ酸配列は、配列番号:68~71のうちいずれか一つであった。抗CD3scFv及びヒトIgG1(Fc2)の融合配列の発現プラスミドは、真核細胞内において、抗CD3scFv及びヒトIgG1(Fc2)の融合配列発現に使用した。
【0156】
実施例4.ヘテロダイマー抗体の発現
抗体の重鎖及び軽鎖の2個の発現ベクターを、FreeStyleTM 293-F細胞(FreeStyleTM 293-F Cells、Cat No.R79007、invitrogen)で形質導入した。形質導入前日、293-F細胞は、サブ培養され、一晩育つように拡張された。形質導入日、細胞が遠心分離で収集され、新鮮なFreeStyleTM 293発現培地(Gibco、Cat.No.12338001)で、200×10生細胞/mLの最終密度で再懸濁された。プラスミド(最終濃度36.67μg/mL)は、ポリエチレンイミン(25kDa、最終濃度55μg/mL、Alfa Aesar、Cat.No.43896)を使用し、定められたモル比で、一時的に共形質導入され、37℃で120rpmで、1時間緩く混合及びインキュベーションされた。新鮮な培地は、形質導入体積19倍に付加され、続けてインキュベーションされた。細胞培養上澄み液は、形質導入後、5~6日目に収獲された。
【0157】
そのような発現ベクターを細胞内に形質導入した。抗体Aの重鎖(ヒトIgG1-Fc1)、抗体Aの軽鎖、及び抗体B’scFv、並びにヒトIgG1-Fc2の融合配列を共に形質導入した。それらは、細胞培養上澄み液内において、Fc1ホモダイマー、scFv-Fc2ホモダイマー及びFc1/scFv-Fc2ヘテロダイマーとして存在した。Fc1とFc2との相互反発効果により、Fc1/scFv-Fc2ヘテロダイマーが主な結果物であった。さらには、Fc1及びFc2は、ヘテロダイマーを形成する傾向が強い。
【0158】
ELISAによる抗HER2-Fc1及び抗CD3-Fc2の収率は、70~100mg/Lであった。カラム精製前、細胞残骸を除去するために、上澄み液を4℃で0.22μmフィルタでフィルタリングした。
【0159】
実施例5.抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマー抗体の精製
抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマー抗体の一般的な構造は、図4に示されている。Protein-A Sepharose Fast Flow(16mm I.D.、22ml、GE Healthcare)を使用し、培養上澄み液からタンパク質を精製した。収集したタンパク質を超微細濾過チューブ(10kDa分子量カットオフ)で濃縮し、緩衝液をPBS溶液に変更した。その後、溶液の体積半分ほどに、最終濃度が1Mになるように、3M (NHSOを添加した。タンパク質を緩衝液A(20mMリン酸ナトリウム、1M (NHSO、pH7.0)で希釈した。
【0160】
AKTA explorer 100(GE Healthcare)タンパク質精製系も精製に使用した。タンパク質は、Source phenyl(16mm I.D.、22ml、GE Healthcare)で精製した。タンパク質サンプルを、緩衝液A(20mM NaPO、1M (NHSO、pH7.0)で事前に平衡化されたカラムにローディングした。流速は、3mL/分であった。前記カラムは、緩衝液Aで平衡化され、緩衝液A(0%B)から、100%緩衝液B(20mMリン酸ナトリウム、pH7.0)で180分間、勾配によって15カラム体積で洗浄した。流速は、2mL/分であった。図5に示された分画をプーリング(pooling)し、超微細濾過チューブ(10kDa分子量カットオフ)で濃縮し、緩衝液をPBS溶液に変更した。タンパク質は、0.22μmにフィルタし、4℃で保存した。精製されたタンパク質をSDS-PAGEで分析した。図6に、その結果が示されている。大きさ排除高性能液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC:size exclusion-high performance liquid chromatography)測定時、純度は、97.65%であった(図7)。
【0161】
実施例6.ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の安定性テスト
完全密封されたヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvサンプル(1mg/mL及び10mg/mL)を、40℃のインキュベータ(BINDER、KBF240)に保管した。大きさ排除高性能液体クロマトグラフィを使用し、20μgサンプルを、異なる時点(基礎線(0日)、1日、2日、5日、7日)によって安定性をテストした。大きさ排除高性能液体クロマトグラフィ条件は、下記の通りであった:(1)クロマトグラフィカラム:TSKgel G3000SWxl(Tosoh Bioscience)、5μm、7.8mm×30cm;(2)移動相:5mM PBS、150mM NaCl、pH6.7;(3)流速:0.6mL/分;(4)UV検出波長:280nm;(5)獲得時間:30分。Agilent 1200 Infinityクロマトグラフィを使用し、グラフを記録し、残留モノマー比率を計算するために、ChemStation Agilentを使用した。40℃の実験条件下において、図8に示されているように、前記ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvは、有意な凝集を示さなかった。データは、前記ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvが、良好な熱的安定性を有するということを証明した。
【0162】
実施例7.ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体とFcRnとの結合活性
ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvのFcRn結合活性を、ELISAでテストした。簡潔に言って、ELISAプレートを、抗HER2/抗CD3-scFvヘテロダイマーにコーティングし、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)内において、一晩4℃で調節した。前記プレートは、PBST(pH6.0)で5回洗浄した。プレートを遮断するために、ウェル(well)当たり300μLの0.5% BSAを含むPBSTを追加し、前記プレートは、25℃において、少なくとも1時間インキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、0.5% BSAを含むPBSTに、1μg/mLに希釈されたウェル当たり100μLのFcRn-hisタグ(Sino Biological、Cat.No.CT009-H08H)をそれぞれのウェルに付加し、前記プレートを2時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、0.5% BSAを含むPBSTに、1:5,000に希釈されたウェル当たり100μLのFcRn-hisマウス抗体(CWBIO、Cat.No.CW0228)を付加し、前記プレートを1時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、ウェル当たり100μLのホースラディッシュ過酸化酵素でラベリングされたIgG抗体(Abcam、Cat.NoAB7068)を付加し、前記プレートを、1時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、ウェル当たり100μLのTMBを付加し、常温で10分間着色した。ウェル当たり100μLの1M HSOを付加し、反応を終結させた。450nmでの光学密度をマイクロプレート読取り機で読み取った。図9に示されているように、ヘテロダイマー抗HER-2/抗CD3-scFvは、FcRnに結合する。
【0163】
実施例8-ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の生体外結合活性
流動細胞継受法(flow cytometry、FACS)を使用し、ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvのHER2高発現SK-BR-3細胞への結合活性、及びCD3高発現Jurkat細胞への結合活性をテストした。
【0164】
SK-BR-3細胞及びJurkat細胞を収集し、それぞれ2% FBS(Hyclone、Cat.No.SH30084.03)を含む冷たいPBS(GIBCO、Cat No.14190-235)である冷たい分析緩衝液で1回洗浄した。その後、SK-BR-3細胞(1×10/チューブ)の部分標本を、冷たい分析緩衝液(2% FBSを含む200μLのDPBS)に再懸濁し、それを、暗い中で30分間氷上で、0.5nMのヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv、ホモダイマー四価抗HER2/抗CD3、抗HER2またはイソタイプ対照群(ヒト免疫グロブリン、Jiangxi Boya Bio-pharmaceutical、Approval No.S19993012、中国)でインキュベーションした。Jurkat細胞の部分標本を、そのようなサンプルの濃度を5nMに変化させたことを除いては、類似して処理した。インキュベーションの終わりに、細胞を冷たい分析緩衝液で2回洗浄し、冷たい分析緩衝液に再懸濁し、50倍に希釈した抗ヒトIgG-FITC接合体(ZSGB-Bio、Cat.No.ZF0306、中国)と共に暗い中で、30分間氷上でインキュベーションした。インキュベーションの終わりに、細胞を冷たい分析緩衝液で2回洗浄し、冷たいPBSに再懸濁した。FACS Calibur(Becton Dickinson)を使用し、流動細胞継受法を遂行した。表3及び表4にその結果が示されている。該結果は、抗原HER2、及びCD3に結合されたヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv構造体の活性が良好であるということを示す。
【0165】
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
実施例9.ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体のHER2及びCD3に対する同時結合活性
SK-BR-3細胞及びJurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv構造体のHER2及びCD3に対する同時結合活性を、流動細胞継受法(FACS)でテストした。
【0168】
PKH26キット(Sigma、Cat.No.SLBH4568V)の使用マニュアルにより、SK-BR-3細胞を染色した。簡潔に言って、SK-BR-3細胞を収集し、無血清培地で1回洗浄し、SK-BR-3細胞を、2×10細胞/mLの細胞懸濁液内に準備し、PKH26を、PKH26キットのDiluent Cを使用し、4μMにそれぞれ希釈した。その後、それらを共に1:1で混合し、PKH26濃度が2μMであり、細胞密度が1×10細胞/mLである混合物を得た。その後、前記混合物を、1分間常温でインキュベーションし、染色を終了させるために、同一体積のFBSで1分間インキュベーションした。前記混合物を、400gで10分間遠心分離した後、完全培地で、2回洗浄して完全培地で再懸濁した。CFSEキット(Life technology、Cat.No.C34554)の使用マニュアルにより、Jurkat細胞を染色した。簡潔に言って、CFSEを、PBSとの作用濃度0.5μMに希釈し、37℃で予熱した。Jurkat細胞を、5分間1,000rpmで遠心分離し、予熱されたCFSE作用溶液で再懸濁した後、37℃で15分間インキュベーションした。染色したJurkat細胞を、5分間1,000rpmで遠心分離し、完全培地で再懸濁した後、30分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を完全培地で1回洗浄した後、完全培地で再懸濁した。
【0169】
前記染色されたSK-BR-3細胞及びJurkat細胞を遠心分離を介して収集した後、2% FBSを含む冷たいPBSである冷たい分析緩衝液で1回洗浄した。該細胞を、冷たい分析緩衝液に、5×10細胞/mLの細胞密度で再懸濁した。SK-BR-3細胞及びJurkat細胞を1:1比率で混合し、それぞれのチューブに、前記混合物の100μL部分標本(すなわち、2.5×10 SK-BR-3細胞及び2.5×10 Jurkat細胞)をピペッティングした。その後、100μLのヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvサンプルまたはイソタイプ対照群(ヒト免疫グロブリン、Jiangxi Boya Bio-pharmaceutical、S19993012)を付加した。分析緩衝液で希釈し、最終濃度は、5nMであった。チューブを30分間氷上でインキュベーションし、冷たい分析緩衝液で2回洗浄した後、500μLの冷たいPBSで再懸濁した。FACS Caliburを使用し、流動細胞継受法を遂行した。
【0170】
図10に示されているように、ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvは、HER2高発現SK-BR-3細胞及びCD3高発現Jurkat細胞に同時結合し、SK-BR-3細胞及びJurkat細胞の結合を誘発することができる。該結果は、前記ヘテロダイマーがT細胞を腫瘍細胞に集め、その結果、向上された癌細胞死滅活性を有するということを意味する。
【0171】
実施例10.腫瘍細胞に対するヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の生体外細胞毒性
標的細胞(BT-474及びSK-BR-3)を収集し、細胞密度2×10細胞/mLで、完全培地(10% FBSを含むRPMI 1640)に再懸濁した。標的細胞のBT-474及びSK-BR-3をそれぞれ50μL/ウェル(ウェル当たり1×10細胞)で96ウェルプレートに接種し、ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvサンプルを段階的に希釈した後、100μL/ウェル量で完全培地で培養した。先立っての実験によれば、効果対比標的の比率(E/T)は、20:1であった。エフェクタ細胞(ヒトPBMC細胞、Lonza、Cat.No.CC-2702)を完全培地で、4×10細胞/mLの細胞密度に再懸濁し、各ウェル当たり50μL(ウェル当たり2×10細胞)を接種した。培養プレートを、37℃の二酸化炭素インキュベータで4日間インキュベーションした。インキュベーション後、上澄み液を除去した後、該細胞を200μLのDPBSで2回洗浄した後、エフェクタ細胞を除去した。100μLの完全培地、及び20μLのMTSを付加した後、37℃の二酸化炭素インキュベータで、2~3時間インキュベーションした。マイクロプレート読取り機で、490nm(OD数値)での吸光度を読み取った。細胞毒性は、下記のように計算した:
【0172】
【数1】
【0173】
図11に示されているように、前記ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv構造体は、乳癌細胞SK-BR-3及びHER2高発現BT-474を、濃度依存的な方式で殺傷した。前記構造体の細胞毒性は、ハーセプチン(HER2mAb)に比べ、はるかにすぐれており、それは、強い腫瘍細胞死滅活性を示す。
【0174】
実施例11.マウスでのヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の薬物動力学的研究
ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvの薬物動力学的研究を、Beijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した8週齢雌BALB/cマウスでテストした。1週間の順化後、マウスを任意に2グループ、各グループに21マウスずつ割り当てた。単一クローン抗体ハーセプチン及びヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の1回投与量20nmol/kgを、それぞれのマウス腹膜内に投与した。血液サンプルを、抗凝固剤なしに互い違いに、下記時点で眼球裏の出血からチューブを介して収集した:事前服用、1,3,6,10,24,48,72,96,120,168,216,264,312時間後投与。各マウスを2時点ずつ出液させした。各時点で使用したマウスの数は、2匹である。血液サンプルを、常温で30分~1時間凝固させ、10分間3,000rpmで遠心分離し、血清サンプルを収穫し、検出のために-80℃で保管した。
【0175】
ハーセプチン、HER2/CD3ヘテロダイマーの濃度を決定するために、血清サンプルをELISAで分析した。簡潔に言って、96ウェルNuncMaxisorp分析プレートを、ウェル当たり100μLの組み換えヒトHER2(Sino Biological、Cat.No:10004-H08H)で1μg/mLにコーティングし、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)で一晩4℃で置いた。前記プレートは、PBST(Sigma、Cat.No:P-3563)で5回洗浄した。該プレートを遮断するために、ウェル当たり300μLの5%脱脂乳を含むPBSTを追加し、前記プレートは、25℃で少なくとも1時間インキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、10%プーリングされたマウス血清で希釈されたウェル当たり100μLの血清サンプル、1% BSAを含むPBSTを、それぞれのウェルに付加し、前記プレートを2時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、5%脱脂乳を含むPBSTに、1:2,000に希釈されたウェル当たり100μLの抗ヒトIgG-HRP接合体(Chemicon、Cat.No:AP309P)を付加し、前記プレートを、1時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、ウェル当たり100μLのTMB(BD OptEIA、Cat.No:555214)を付加し、常温で10分間着色した。ウェル当たり100μLの1M HSOを付加して反応を終結させた。450nmでの光学密度をマイクロプレート読取り機で読み取った。
【0176】
図12に示されているように、マウスにおける1回服用量の腹腔内注射(20nmol/kg)により、ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvは、ハーセプチンと類似したPKプロファイルを示した。ヘテロダイマー抗HER2/抗CD3-scFvの薬物動力学的パラメーターは、次の通りである:半減寿命t1/2は、129時間;AUClastは、30,611nM・時間;Tmaxは、3時間;Cmaxは、264nM;Vdは、85mL/kg;CLは、0.45mL/hr/kg;MRTlastは、88時間である。抗HER-2/抗CD3構造体のためのヘテロダイマー生産工程は、下記表5に要約される。
【0177】
【表5】
【0178】
実施例12.ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の精製
収穫した培養上澄み液を、実施例5に記載されているように精製した。精製された結果物を、SDS-PAGEで分析した。図13に、その結果が示されている。ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv結果物の純度は、95%以上であった。
【0179】
実施例13.ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の安定性及び生体外結合活性
ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv構造体のTrop-2結合活性をELISAでテストした。簡潔に言って、ELISAプレートを、ウェル当たり100μLの組み換えヒトTrop-2(Sino Biological、Cat.No:10428-H08H)で1μg/mLにコーティングし、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)で一晩4℃で置いた。前記プレートは、PBSTで5回洗浄した。該プレートを遮断するために、ウェル当たり300μLの1% BSAを含むPBSTを追加し、前記プレートは、25℃で少なくとも1時間インキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、1% BSAを含むPBSTで希釈されたウェル当たり100μLのサンプルdmfそれぞれのウェルに付加し、前記プレートを2時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、1% BSAを含むPBSTに、1:2,000に希釈されたウェル当たり100μLの抗ヒトIgG-HRP接合体(Chemicon、Cat.No:AP309P)を付加し、前記プレートを、1時間25℃でインキュベーションした。前記プレートを前述のように洗浄し、ウェル当たり100μLのTMB(BD OptEIA、Cat.No:555214)を付加し、常温で10分間着色した。ウェル当たり100μLの1M HSOを付加して反応を終結させた。450nmでの光学密度をマイクロプレート読取り機で読み取った。図14に示されているように、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv構造体は、Trop-2に対して高い結合親和性を有する。CD3高発現Jurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvのCD3への結合活性を、流動細胞継受法(FACS)によってテストした。FACSは、実施例8に記載されたことによって遂行した。表6に示されているように、Jurkat細胞に高い親和性で結合した前記ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv構造体は、その抗原であるCD3に良好な活性で結合する。
【0180】
【表6】
【0181】
実施例14-ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv二重特異性抗体のTrop-2、及びCD3に対する同時結合活性
BxPC3細胞及びJurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvのTrop-2及びCD3に対する同時結合活性を、流動細胞継受法(FACS)でテストした。FACSは、実施例9に記載されたところによって遂行した。PKH26キットの使用マニュアルによってBxPC3細胞を染色し、Jurkat細胞をCFSEキットで染色した。図15に示されているように、Trop-2高発現BxPC3細胞及びCD3高発現Jurkat細胞への同時結合により、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvは、BxPC3細胞及びJurkat細胞の結合を誘発することができる。該結果は、前記ヘテロダイマーが、T細胞を腫瘍細胞に集め、その結果、向上された癌細胞死滅活性を有するということを意味する。
【0182】
実施例15.腫瘍細胞に対するヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の生体外細胞毒性
標的細胞(H1650及びBxPC)を収集し、細胞密度1×10細胞/mLで、完全培地(10% FBSを含むRPMI 1640)に再懸濁した。標的細胞であるH1650及びBxPC-3を、それぞれ50μL/ウェル(ウェル当たり5×10細胞)で96ウェルプレートに接種し、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvサンプルを段階的に希釈した後、100μL/ウェルの量で完全培地に調節した。エフェクタ細胞(ヒトPBMC細胞、Lonza、Cat.No.CC-2702)を、完全培地で2×10細胞/mLまたは0.5×10細胞/mLの細胞密度に再懸濁し、各ウェル当たり50μL(ウェル当たり1×10細胞または0.25×10細胞)を接種した。培養プレートを37℃の二酸化炭素インキュベータで3日間インキュベーションした。インキュベーション後、上澄み液を除去した後、細胞を200μLのDPBSで2回洗浄した後、エフェクタ細胞を除去した。100μLの完全培地、及び20μLのMTSを付加した後、37℃の二酸化炭素インキュベータで、2~3時間インキュベーションした。マイクロプレート読取り機で、490nm(OD数値)での吸光度を読み取った。細胞毒性は、下記のように計算した:
【0183】
【数2】
【0184】
図16に(エフェクタ細胞と共に)示されているように、前記ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvは、高発現Trop-2癌細胞(非小細胞肺癌細胞H1650及びヒト膵臓癌細胞BxPC-3)を濃度依存的な方式で殺傷した。前記二重特異性抗体の死滅活性は、抗Trop-2mAbに比べ、はるかにすぐれており、それは、強い腫瘍細胞死滅活性を示す。
【0185】
実施例16.マウスにおけるヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFv二重特異性抗体の薬物動力学的研究
ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvの薬物動力学的研究を、Beijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した8週齢雌BALB/cマウスでテストした。注入、血液サンプル収集及び分析方法は、実施例11に記載されたところによって遂行した。含まれた抗Trop2/抗CD3-scFvヘテロダイマーの濃度を決定するために、血清サンプルをTrop-2(Sino Biological、Cat.No:10428-H08H)でコーティングし、ELISAで分析した。図17に示されているように、マウスへの1回服用量の腹腔内注射(20nmol/kg)により、ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvは、抗Trop-2と類似したPKプロファイルを示した。ヘテロダイマー抗Trop-2/抗CD3-scFvの薬物動力学的パラメーターは、次の通りである:半減寿命t1/2は、165時間;AUClastは、26,072nM・時間;Tmaxは、6時間;Cmaxは、203nM;Vdは、107mL/kg;CLは、0.45mL/hr/kg;MRTlastは、92時間である。
【0186】
実施例17.ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFv二重特異性抗体の精製
収穫した培養上澄み液を、実施例5に記載されているように精製した。精製された結果物を、SDS-PAGEで分析した。図18にその結果が示されている。ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFv結果物の純度は、95%以上であった。
【0187】
実施例18.ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFv二重特異性抗体の安定性及び生体外結合活性
完全密封されたヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFvサンプル(1mg/mL及び10mg/mL)を、40℃のインキュベータ(BINDER、KBF240)に保管した。大きさ排除高性能液体クロマトグラフィを使用し、20μgサンプルを、異なる時点(基礎線(0日)、1日、2日、5日、7日)によって安定性をテストした。図19に示されているように、40℃の実験条件下において、ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFvの有意な凝集は、なかった。前記ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFv構造体が良好な熱的安定性を有するということを、該結果が示した(CD20高発現)。ラージ(Raji)細胞及び(CD3高発現)Jurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFvのCD20及びCD3結合活性を、流動細胞継受法(FACS)でテストした。FACSは、実施例8に記載されたことによって遂行した。表7及び表8に示されているように、ラージ細胞及びJurkat細胞に結合した前記ヘテロダイマー抗CD20/抗CD3-scFv構造体は、抗原CD20及び抗原CD3のいずれにも結合した構造体であるということを示した。
【0188】
【表7】
【0189】
【表8】
【0190】
実施例19.ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv二重特異性抗体の精製
収穫した培養上澄み液を、実施例5に記載されているように精製した。精製された結果物を、SDS-PAGEで分析した。図20にその結果が示されている。ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv結果物の純度は、95%以上であった。
【0191】
実施例20.ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv二重特異性抗体の生体外結合活性
ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv構造体のPD-L1結合活性をELISAでテストした。ELISAは、実施例13に記載されたところによって遂行した。ELISAプレートは、PD-L1(Sino Biological、Cat.No.10084-H08H)でコーティングした。図21に示されているように、ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv構造体は、PD-L1に対して高い結合親和性を有する。
【0192】
CD3高発現Jurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー前記抗PD-L1/抗CD3-scFvのCD3への結合活性を、流動細胞継受法(FACS)によってテストした。FACSは、実施例8に記載されたところによって遂行した。表9に示されているように、Jurkat細胞に結合した前記ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFvは、その抗原であるCD3に結合することを示す。
【0193】
【表9】
【0194】
実施例21.ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv二重特異性抗体のPD-L1及びCD3に対する同時結合活性
H460細胞及びJurkat細胞を使用し、ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFvのPD-L1及びCD3に対する同時結合活性を、流動細胞継受法(FACS)でテストした。工程は、実施例9に記載されたところによって遂行した。図22に示されているように、前記ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv構造体は、(PD-L1高発現)H460細胞及び(CD3高発現)Jurkat細胞の結合を誘導することができる。該結果は、前記ヘテロダイマーが、T細胞を腫瘍細胞に集め、その結果、向上された癌細胞死滅活性を有するということを意味する。
【0195】
実施例22.ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv二重特異性抗体の生体外細胞毒性
標的細胞(H1650及びHCC827)を収集し、細胞密度1×10細胞/mLで(10% FBSを含む)RPMI 1640完全培地に再懸濁した。標的細胞H1650及び標的細胞HCC827を、それぞれ50μL/ウェル(ウェル当たり5×10細胞)で96ウェルプレートに接種し、ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFvサンプルを段階的に希釈した後、100μL/ウェル量で完全培地に調節した。エフェクタ細胞(ヒトPBMC細胞、Lonza、Cat.No.CC-2702)を完全培地で2×10細胞/mLの細胞密度に再懸濁し、各ウェル当たり50μL(ウェル当たり1×105細胞)を接種した。培養プレートを、37℃の二酸化炭素インキュベータで3日間インキュベーションした。インキュベーション後、上澄み液を除去した後、細胞を200μLのDPBSで2回洗浄した後、エフェクタ細胞を除去した。100μLの完全培地及び20μLのMTSを付加した後、37℃の二酸化炭素インキュベータで、2~3時間インキュベーションした。マイクロプレート読取り機で490nm(OD数値)での吸光度を読み取った。細胞毒性は、下記のように計算した:
【0196】
【数3】
【0197】
図23に(エフェクタ細胞と共に)示されているように、腫瘍細胞死滅活性を示した前記ヘテロダイマー抗PD-L1/抗CD3-scFv構造体は、PD-L1高発現癌細胞(非小細胞肺癌細胞H1650及び非小細胞肺癌細胞HCC827)を濃度依存的な方式で殺傷した。
【0198】
実施例23.Fab-Fabフォーマット二重特異性抗体生産のための抗Her2及び抗CD20の発現結果物精製
AKTA explorer 100系(GE Healthcare)を、親和性クロマトグラフィカラムProteinA Sepharose Fast Flow(16mm I.D.、22mL GE Healthcare)と共に、4℃で精製に使用した。前記カラムを、緩衝液A(20mM PBST;150mM NaCl、pH7.4)で初期に平衡化し、5mL/分の流速で、基本線が安定化された後、細胞上澄み液をローディングした。その後、緩衝液Aを使用し、平衡化を進めた。前記サンプルは、実施例4に記載された方式によって示されるCH3ドメイン内アミノ酸変異が起きた抗Her2及び抗CD20の発現結果物である。その後、前記カラムを、カラム体積5倍の緩衝液B1(緩衝液A+0.5Mアルギニン)で洗浄した後、所望するタンパク質の溶出ピークを収集するために、カラム体積5倍の緩衝液B2(100mMクエン酸、pH3.0)で溶出した。溶出段階の流速は、5mL/分であった。類似した結果を算出する抗Her2結果物(表示されない)と共に、抗CD20結果物に対する代表的なクロマトグラムが図24に示されている。溶出ピークは、灰色に表示されて収集され、pHを5.0に調整するために、1M酢酸ナトリウムを付加した。
【0199】
実施例24.抗Her2/抗CD20自然IgG類似ヘテロダイマー二重特異性抗体の精製
図25に、抗Her2/抗CD20ヘテロダイマーの一般的な構造が示されている。
ヘテロダイマーを形成するために、実施例23の精製結果物を体外で再構築した。まず、超微細濾過濃度(10kDa分子量カットオフ)を使用し、緩衝液を、緩衝生理食塩水(PBS)に変更した。前述の抗Her2及び抗CD20の結果物それぞれの濃度を、緩衝液内で1mg/mLに調整し、1/200体積の1Mジチオトレイトール(DTT)を付加した(DTTの最終濃度は、0.1mM、0.5mM、1mM、2mM、5mM、10mMまたは20mMであった)。その後、4℃で、3~8時間還元した。該還元過程中、抗Her2及び抗CD20の発現結果物間に存在するホモダイマーのヒンジ領域内の二硫化結合は、開かれ、図26に示されているように、1本の軽鎖、及び1つの重鎖を有する半抗体(または、ハーフマー)を形成する。還元段階後、サンプルを変性条件下において、SDS-PAGEで分析した。類似した結果を算出する抗Her2結果物(表示せず)と共に、抗CD20結果物に係わる代表的な結果が、図27に示されている。図面において、右側の2~4レーンに示される4個の主バンドは、上から下に、それぞれLC-HC-HC-LCホモダイマー、HC-LCハーフマー、HC及びLCである。図面に示されているように、DTT濃度が上昇するほど、ただ2バンド(HC及びLC)だけが示され、事実上、ホモダイマーが観察されない。PBS内の1mM DTT存在下において、SEC-HPLC分析による抗Her2クラス結果物(half product)(A)及び抗CD20クラス結果物(B)に係わる結果は、図28に示されている。図28に示されているように、DTTの濃度が1mM以上である場合、抗Her2及び抗CD20の結果物いずれも、関連ポリヘプチジル種全体重量基準で、ホモダイマーの比率が10%未満であり、半抗体分子(ハーフマー)の比率は、90%超過であった。
【0200】
還元された抗Her2及び抗CD20ハーフマーを、モル比基準1:1で混合し、4℃で0.5~24時間再構築した。該再構築過程中、前記抗Her2及び抗CD20ハーフマーは、CH2/CH3間の非共有相互作用により、2種のハーフマーがほとんどいずれも共に支える抗Her2/抗CD20ヘテロダイマーを形成した。その後、超微細濾過濃度(10kDa分子量カットオフ)を使用し、緩衝液を、緩衝生理食塩水(PBS)に変更した。前記ヘテロダイマー二重特異性抗体の鎖間二硫化結合を形成するために、還元状態は、空気または酸化剤誘発酸化で終結した。酸化条件は、空気中に1日、3日、4日間露出すること、または4℃で100mMのL-デヒドロアスコルビン酸酸化剤の付加(最終タンパク質濃度は、1mg/mLであり、最終酸化剤濃度は、0.5mM、1mM、5mMまたは10mMである)し、その後、5または24時間インキュベーションすることを含む。酸化後、結果物をSDS-PAGEで分析した。図29に、その結果が示されている。
【0201】
超微細濾過濃度(10kDa分子量カットオフ)を使用し、抗Her2ハーフマー及び抗CD20ハーフマーの還元・酸化で得た前記抗Her2/抗CD20ヘテロダイマーを濃縮し、緩衝液組成物を10mM PBST、pH5.8に変更した。AKTA explorer 100系(GE Healthcare)とイオン交換クロマトグラフィカラムSource 15S(16mm I.D.、17mL、GE Healthcare)を使用し、サンプルを4℃で精製した。前記カラムを、緩衝液A(10mM NaPO、pH7.0)で初期に平衡化し、3mL/分の流速で基本線が安定化された後、前述のように処理したタンパク質溶液をローディングした。その後、緩衝液Aを使用し、平衡化を進めた。続けて、緩衝液A(10mM NaPO、pH7.0)から緩衝液B(10mM NaPO、pH5.8)までの勾配を使用し、前記カラムを20カラム体積(170分間0%B~100%B、流速2mL/分)で洗浄した。表示された主要溶出ピークを収集した(図30)。収集したタンパク質溶液を濃縮し、その緩衝液組成物を、さらに超微細濾過チューブ(10kDa分子量カットオフ)を使用し、PBS(pH7.4)に変更した。その後、保存のために、4℃で滅菌フィルタリングした。精製された結果物を、SDS-PAGEで分析した。図31に、その結果が示されている。該結果物をSEC-HPLCによっても分析した。図32に、その結果が示されている。純度は、97.3%であった。
【0202】
実施例25.抗HER2/抗CD20ヘテロダイマー分析方法のためのセッティング
次に、5個のサンプルをHPLCで判別した:抗HER2クラス抗体、抗HER2ホモダイマー、抗CD20クラス抗体、抗CD20ホモダイマー及び抗HER2/抗CD20ヘテロダイマー。実験に係わる詳細な、内容は下記の通りである:(1)疎水性相互作用クロマトグラフィカラム(TSK-GEL Phenyl-5PW、7.5mm IDx7.5cm、10μm);(2)移動相及び勾配:緩衝液A:20mM PBS、pH7.0、1M (NHSO;緩衝液B:20mM PBS、pH7.0;勾配は、40分間40%緩衝液Bから100%緩衝液Bまで;(3)流速:0.5mL/分;(4)温度:25℃;(5)検出波長:280nm。図33に示された結果から、容易に確認することができるように、抗CD20-Fc1ホモダイマー(図33のピーク1)、抗HER2-Fc2ホモダイマー(図33のピーク5)及び抗HER2/抗CD20ヘテロダイマー(図33のピーク3)は、該方法を使用した異なる維持時間を介して、効果的に区分可能であった。それにより、実施例24の結果物が、ホモダイマーではないヘテロダイマーであるということ確認した。
【0203】
実施例26.質量スペクトルによる抗HER2/抗CD20ヘテロダイマー識別
抗HER2ホモダイマー、抗CD20ホモダイマー及び抗HER2/抗CD20ヘテロダイマー3個のサンプルを、LC-MS方法で分析し、アミノ酸カバレージをテストした。前記サンプルをトリプシンで消化させ、37℃で18時間インキュベーションした。LC-MS条件は、次の通りであった:カラム:WatersACQUITY UPLC BEH C18、300Å、1.7μm、2.1mmx100mm;カラム温度:50℃;流速:0.2mL/分;緩衝液A:0.1%ギ酸;緩衝液B:0.1%ギ酸/100%アセトニトリル;溶出勾配:90分間2~35%緩衝液B;20分間35~45%緩衝液B;電子噴霧イオン化(ESI:electrospray ionization)ソース:陽イオンモード;毛細管電圧:2.5kV;コーン電圧:25V;スキャニング範囲:100~2500Da;MSe電圧:20~40V。
【0204】
図34は、抗HER2ホモダイマー、抗CD20ホモダイマー及び抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーの基礎ピークイオン(BPI:base peak ion)クロマトグラム(図34A)、及び各サンプルに係わるアミノ酸カバレージ(図34B)である。抗CD20ホモダイマーのカバレージは、99.7%であり、抗HER2ホモダイマーのカバレージは、100%であり、抗HER2/抗C20ヘテロダイマーのカバレージは、99.4%であった。LC-MSで得た抗CD20ホモダイマーにおいて、2個の特定アミノ酸置換を含む抗CD20軽鎖及びCD20重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号73及び74である。LC-MSで得た抗HER2ホモダイマーにおいて、3個の特定アミノ酸置換を含む抗HER2軽鎖及びHER2重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号75及び76である。LC-MSで得た抗CD20/HER2ヘテロダイマーにおいて、2個の特定アミノ酸置換を含む抗CD20軽鎖及び抗CD20重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号77及び78である。LC-MSで得た抗CD20/HER2ヘテロダイマーにおいて、3個の特定アミノ酸置換を含む抗HER2軽鎖及び抗HER2重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号79及び80である。配列番号74における位置66にアミノ酸グリシン、及び位置67にリシン、配列番号78において、位置66にアミノ酸グリシン、位置67にリシン、位置218にリシン、位置343にアラニン、及び位置344にリシン、並びに配列番号80において、位置217にアミノ酸リシン、位置342にアラニン、位置343にリシンのそれぞれは、LC-MS分析で発見されなかった。該結果は、抗HER2/抗CD20ヘテロダイマーが、予想通り同一配列を有するということを示す。
【0205】
当業者は、本開示の範囲及び思想を外れずに、多様な変形がなされるということを理解するであろう。従って、本明細書に記述された本発明の多様な実施例は、ただ例示的なものであり、本発明の範囲を制限する意図ではないということを理解しなければならない。本明細書に引用された全ての文献は、その開示が参照として含まれる。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
Fc受容体(FcR)結合構成員、及び前記FcR結合構成員に共有結合で連結された1以上の認識モイエティを含むヘテロダイマーであり、前記FcR結合構成員は、1以上の二硫化結合によって互いに結合された第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、それぞれ免疫グロブリン重鎖不変領域の少なくとも一部を含み、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、Kabat EUインデックスによる下記位置に少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、
a)前記第1ポリペプチド内のT366及びD399、並びに前記第2ポリペプチド内のL351、Y407及びK409、または
b)前記第1ポリペプチド内のT366及びK409、並びに前記第2ポリペプチド内のL351、D399、及びY407;
ここで、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、自体より互いにさらに高い二量体化親和性を有するヘテロダイマー。
<2>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのいずれの前記免疫グロブリン重鎖不変領域の2個のCH3ドメインで発生することを特徴とする<1>に記載のヘテロダイマー。
<3>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする<1>または<2>に記載のヘテロダイマー:
a)L351G、L351Y、L351V、L351P、L351D、L351E、L351KまたはL351W;
b)T366L、T366P、T366WまたはT366V;
c)D399C、D399N、D399I、D399G、D399R、D399TまたはD399A;
d)Y407L、Y407A、Y407P、Y407F、Y407TまたはY407H;及び
e)K409C、K409P、K409S、K409F、K409V、K409QまたはK409R。
<4>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループIのa)~h)、及びグループIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むことを特徴とする<1>~<3>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー:
グループI:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T366W、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;及び
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H
グループII:
a)前記第1ポリペプチド内D399R及び前記第2ポリペプチド内K409V;
b)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409C;
c)前記第1ポリペプチド内D399C及び前記第2ポリペプチド内K409P;
d)前記第1ポリペプチド内D399N及び前記第2ポリペプチド内K409S;
e)前記第1ポリペプチド内D399G及び前記第2ポリペプチド内K409S;
f)前記第1ポリペプチド内D399I及び前記第2ポリペプチド内K409F;
g)前記第1ポリペプチド内D399T及び前記第2ポリペプチド内K409Q;及び
h)前記第1ポリペプチド内D399A及び前記第2ポリペプチド内K409R。
<5>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループIIIのa)~h)、及びグループIVのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むことを特徴とする<1>~<3>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー:
グループIII:
a)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E及びY407L;
b)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G及びY407L;
c)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y及びY407A;
d)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V及びY407P;
e)前記第1ポリペプチド内T366W、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D及びY407P;
f)前記第1ポリペプチド内T366P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P及びY407F;
g)前記第1ポリペプチド内T366V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K及びY407T;及び
h)前記第1ポリペプチド内T366L、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W及びY407H
グループIV:
a)前記第1ポリペプチド内K409V及び前記第2ポリペプチド内D399R;
b)前記第1ポリペプチド内K409C及び前記第2ポリペプチド内D399C;
c)前記第1ポリペプチド内K409P及び前記第2ポリペプチド内D399C;
d)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399N;
e)前記第1ポリペプチド内K409S及び前記第2ポリペプチド内D399G;
f)前記第1ポリペプチド内K409F及び前記第2ポリペプチド内D399I;
g)前記第1ポリペプチド内K409Q及び前記第2ポリペプチド内D399T;及び
h)前記第1ポリペプチド内K409R及び前記第2ポリペプチド内D399A。
<6>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVのa)~h)の構成員のうちいずれか一つを含むことを特徴とする<1>~<4>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー:
グループV:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びK409V;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G、Y407L及びK409C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y、Y407A及びK409P;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399N、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V、Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D、Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P、Y407F及びK409F;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びD399T、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K、Y407T及びK409Q;及び
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399A、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W、Y407H及びK409R。
<7>
少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVIのa)~h)の構成員のうちいずれか一つを含むことを特徴とする<1>~<3>、及び<5>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー:
グループVI:
a)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409V、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びD399R;
b)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409C、並びに前記第2ポリペプチド内のL351G、Y407L及びD399C;
c)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409P、並びに前記第2ポリペプチド内のL351Y、Y407A及びD399C;
d)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351V、Y407P及びD399N;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びK409S、並びに前記第2ポリペプチド内のL351D、Y407P及びD399G;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びK409F、並びに前記第2ポリペプチド内のL351P、Y407F及びD399I;
g)前記第1ポリペプチド内のT366V及びK409Q、並びに前記第2ポリペプチド内のL351K、Y407T及びD399T;及び
h)前記第1ポリペプチド内のT366L及びK409R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351W、Y407H及びD399A。
<8>
前記FcR結合構成員は、Fcドメインを含むことを特徴とする<1>~<7>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<9>
前記Fcドメインは、免疫グロブリンG(IgG)Fcドメインに由来することを特徴とする<8>に記載のヘテロダイマー。
<10>
前記IgGFcドメインは、IgG1Fcドメイン、IgG2Fcドメイン、IgG3Fcドメイン及びIgG4Fcドメインで構成された群から選択される一つを含むことを特徴とする<9>に記載のヘテロダイマー。
<11>
前記1以上の認識モイエティは、抗原結合断片(Fab)、一本鎖可変断片(scFv)、膜受容体の細胞外ドメイン、細胞膜受容体のペプチドリガンド、サトカイン、凝固因子、親和性タグ、及びその組み合わせのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする<1>~<10>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<12>
前記1以上の認識モイエティは、2個の認識モイエティを含み、前記2個の認識モイエティは、それぞれFab断片を含むことを特徴とする<11>に記載のヘテロダイマー。
<13>
前記2個の断片は、同一ではないことを特徴とする<12>に記載のヘテロダイマー。
<14>
前記ヘテロダイマーは、免疫グロブリン類似分子を含むことを特徴とする<13>に記載のヘテロダイマー。
<15>
前記ヘテロダイマーは、二重特異性抗体を含むことを特徴とする<13>または<14>に記載のヘテロダイマー。
<16>
前記1以上の認識モイエティは、2個の認識モイエティを含み、前記2個の認識モイエティは、Fab断片及びscFv断片を含むことを特徴とする<11>に記載のヘテロダイマー。
<17>
1mMジチオトレイトールを含む生理学的条件下の水溶液に存在下で、前記溶液が、前記第1ポリペプチドまたは第2ポリペプチドのうち一つ、及びその同質の認識モイエティ以外のポリペプチドは、根本的に含まない場合において、溶液内全体ポリペプチド型重量基準で、前記第1ポリペプチド及び第2ポリペプチド、並びに前記第1ポリペプチドまたは前記第2ポリペプチドの同質認識モイエティで存在するホモダイマー型のただ1つの重量が50%未満であることを特徴とする<1>~<16>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<18>
前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、前記第1ポリペプチド内のT366L及びD399R、並びに前記第2ポリペプチド内のL351E、Y407L及びK409Vであることを特徴とする<1>~<17>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<19>
前記ヘテロダイマーは、第1重鎖及び第2重鎖、及び第1軽鎖及び第2軽鎖を含み、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同一ではないことを特徴とする<13>に記載のヘテロダイマー。
<20>
前記Fab断片及び前記scFv断片は、グループVIIのa)~d)から選択される認識モイエティ対から選択される ことを特徴とする<16>に記載のヘテロダイマー:
グループVII:
a)HER2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
b)Trop2に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;
c)CD20に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv;及び
d)PD-L1に特異的に結合するFab、及びCD3に特異的に結合するscFv。
<21>
前記同一ではない2個のFab断片は、HER2に特異的に結合する第1Fab断片、及びCD20に特異的に結合する第2Fab断片であることを特徴とする<13>に記載のヘテロダイマー。
<22>
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうち少なくとも一つは、配列番号16~31、配列番号33,35,37,39,41,43,45,48,49,51,53,55,57,59,61,63,68,69,70及び71のうち少なくとも一つを含むアミノ酸配列を有することを特徴とする<1>~<21>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<23>
前記FcR結合構成員は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB、FcεRI、FcεRII、FcαRI、Fcα/μR、FcRn、及びその組み合わせからなる群から選択されるFc受容体に結合可能であることを特徴とする<1>~<22>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー。
<24>
前記FcR結合構成員は、FcRnに結合可能であることを特徴とする<23>に記載のヘテロダイマー。
<25>
前記Fc受容体への結合は、ADCCを誘発することを特徴とする<23>に記載のヘテロダイマー。
<26>
<1>~<25>のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマーの製造する方法であり、前記方法は、:
1)第1宿主細胞及び第2宿主細胞は、互いに分離されており、前記第1宿主細胞内において、前記第1ポリペプチドをコーディングする1以上の核酸、及び前記第2宿主細胞内において、前記第2ポリペプチドをコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)分離された前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを還元させる段階と、
3)前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドを組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含む方法。
<27>
第1重鎖、第2重鎖、第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含むヘテロダイマーの製造する方法であり、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同じではなく、前記第1重鎖及び前記第2重鎖の一部が、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成し、前記方法は、
1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階と、
3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループVIIIのa)~h)、及びグループIXのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むものである方法:
グループVIII:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;及び
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H
グループIX:
a)前記第1重鎖内D399R及び前記第2重鎖内K409V;
b)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409C;
c)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409P;
d)前記第1重鎖内D399N及び前記第2重鎖内K409S;
e)前記第1重鎖内D399G及び前記第2重鎖内K409S;
f)前記第1重鎖内D399I及び前記第2重鎖内K409F;
g)前記第1重鎖内D399T及び前記第2重鎖内K409Q;及び
h)前記第1重鎖内D399A及び前記第2重鎖内K409R。
<28>
第1重鎖、第2重鎖、第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含むヘテロダイマーの製造する方法であり、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同じではなく、前記第1重鎖及び前記第2重鎖の一部が、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成し、前記方法は、
1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階と、
3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXIIのa)~h)、及びグループXIIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むことである方法:
グループXII:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;及び
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H
グループXIII:
a)前記第1重鎖内K409V及び前記第2重鎖内D399R;
b)前記第1重鎖内K409C及び前記第2重鎖内D399C;
c)前記第1重鎖内K409P及び前記第2重鎖内D399C;
d)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399N;
e)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399G;
f)前記第1重鎖内K409F及び前記第2重鎖内D399I;
g)前記第1重鎖内K409Q及び前記第2重鎖内D399T;及び
h)前記第1重鎖内K409R及び前記第2重鎖内D399A。
<29>
重鎖、軽鎖、及びFc鎖に連結されたscFv断片を含む二価非相同タンパク質を含むヘテロダイマーを製造する方法であり、前記重鎖、及び前記scFv断片に連結された前記Fc鎖の一部がFc領域を形成し、前記方法は、
1)宿主細胞内において、前記重鎖及び前記軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び前記Fc鎖に連結された前記scFv断片をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXIVのa)~h)、及びグループXVのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むものである方法:
グループXIV:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T;及び
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H
グループXV:
a)前記第1重鎖内D399R及び前記第2重鎖内K409V;
b)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409C;
c)前記第1重鎖内D399C及び前記第2重鎖内K409P;
d)前記第1重鎖内D399N及び前記第2重鎖内K409S;
e)前記第1重鎖内D399G及び前記第2重鎖内K409S;
f)前記第1重鎖内D399I及び前記第2重鎖内K409F;
g)前記第1重鎖内D399T及び前記第2重鎖内K409Q;及び
h)前記第1重鎖内D399A及び前記第2重鎖内K409R。
<30>
重鎖、軽鎖、及びFc鎖に連結されたscFv断片を含む二価非相同タンパク質を含むヘテロダイマーの製造する方法であり、前記重鎖、及び前記scFv断片に連結された前記Fc鎖の一部がFc領域を形成し、前記方法は、
1)宿主細胞内において、前記重鎖及び前記軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び前記Fc鎖に連結された前記scFv断片をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、下記グループXVIのa)~h、)及びグループXVIIのa)~h)それぞれからのいずれか1つの構成員の組み合わせのうちいずれか一つを含むものである方法:
グループXVI:
a)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351E及びY407L;
b)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351G及びY407L;
c)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351Y及びY407A;
d)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351V及びY407P;
e)前記第1重鎖内T366W、並びに前記第2重鎖内のL351D及びY407P;
f)前記第1重鎖内T366P、並びに前記第2重鎖内のL351P及びY407F;
g)前記第1重鎖内T366V、並びに前記第2重鎖内のL351K及びY407T、または
h)前記第1重鎖内T366L、並びに前記第2重鎖内のL351W及びY407H
グループXVII:
a)前記第1重鎖内K409V及び前記第2重鎖内D399R;
b)前記第1重鎖内K409C及び前記第2重鎖内D399C;
c)前記第1重鎖内K409P及び前記第2重鎖内D399C;
d)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399N;
e)前記第1重鎖内K409S及び前記第2重鎖内D399G;
f)前記第1重鎖内K409F及び前記第2重鎖内D399I;
g)前記第1重鎖内K409Q及び前記第2重鎖内D399T;及び
h)前記第1重鎖内K409R及び前記第2重鎖内D399A。
<31>
第1重鎖、第2重鎖、第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含むヘテロダイマーの製造する方法であり、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同じではなく、前記第1重鎖及び前記第2重鎖の一部が、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成し、前記方法は、
1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階と、
3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、グループXのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つを含むものである方法:
グループX:
a)前記第1重鎖内T366L及びD399R、並びに前記第2重鎖内のL351E、Y407L及びK409V;
b)前記第1重鎖内T366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351G、Y407L及びK409C;
c)前記第1重鎖内T366L及びD399C、並びに前記第2重鎖内のL351Y、Y407A及びK409P;
d)前記第1重鎖内T366P及びD399N、並びに前記第2重鎖内のL351V、Y407P及びK409S;
e)前記第1ポリペプチド内のT366W及びD399G、並びに前記第2重鎖内のL351D、Y407P及びK409S;
f)前記第1ポリペプチド内のT366P及びD399I、並びに前記第2重鎖内のL351P、Y407F及びK409F;
g)前記第1重鎖内T366V及びD399T、並びに前記第2重鎖内のL351K、Y407T及びK409Q;及び
h)前記第1重鎖内T366L及びD399A、並びに前記第2重鎖内のL351W、Y407H及びK409R。
<32>
第1重鎖、第2重鎖、第1軽鎖及び第2軽鎖を有する二価非相同免疫グロブリンを含むヘテロダイマーの製造する方法であり、前記第1重鎖及び前記第2重鎖は、同じではなく、前記第1軽鎖及び前記第2軽鎖は、同じではなく、前記第1重鎖及び前記第2重鎖の一部が、前記二価非相同免疫グロブリンのFc領域を形成し、前記方法は、
1)前記第1宿主細胞及び前記第2宿主細胞は、互いに分離されており、第1宿主細胞内において、前記第1重鎖及び前記第1軽鎖をコーディングする1以上の核酸、及び第2宿主細胞内において、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖をコーディングする1以上の核酸を発現させる段階と、
2)前記第1重鎖及び前記第1軽鎖を共に、かつ前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を共に還元させる段階と、
3)前記第1重鎖、前記第1軽鎖、前記第2重鎖及び前記第2軽鎖を組み合わせ、結果混合物を生成する段階と、
4)前記結果混合物を酸化させる段階と、
5)形成されたヘテロダイマーを回収する段階と、を含み、
前記Fc領域は、少なくとも5個のアミノ酸置換を含み、前記少なくとも5個のアミノ酸置換は、グループXIのa)~h)よる構成員のうちいずれか一つを含むものである方法:
グループXI:
a)前記第1重鎖内T366L及びK409V、並びに前記第2重鎖内のL351E、Y407L及びD399R;
b)前記第1重鎖内T366L及びK409C、並びに前記第2重鎖内のL351G、Y407L及びD399C;
c)前記第1重鎖内T366L及びK409P、並びに前記第2重鎖内のL351Y、Y407A及びD399C;
d)前記第1重鎖内T366P及びK409S、並びに前記第2重鎖内のL351V、Y407P及びD399N;
e)前記第1重鎖内T366W及びK409S、並びに前記第2重鎖内のL351D、Y407P及びD399G;
f)前記第1重鎖内T366P及びK409F、並びに前記第2重鎖内のL351P、Y407F及びD399I;
g)前記第1重鎖内T366V及びK409Q、並びに前記第2重鎖内のL351K、Y407T及びD399T;及び
h)前記第1重鎖内T366L及びK409R、並びに前記第2重鎖内のL351W、Y407H及びD399A。
<33>
前記1以上の核酸は、ベクターまたはベクター系内に含有されたものである<26>~<32>のうちいずれか1項に記載の方法。
<34>
前記ベクターまたはベクター系は、pCDNAベクターから変形されたプラスミドベクターpX0GCを含むことを特徴とする<33>に記載の方法。
<35>
前記ベクターまたはベクター系は、1つの細胞または多くの細胞に導入したものであることを特徴とする<34>に記載の方法。
<36>
前記1つの細胞またはさまざまな細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293FまたはCHO、CHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44及びExpiCHO細胞のうちいずれか一つを含むことを特徴とする<35>に記載の方法。
<37>
前記還元させる段階は、
i)2-アミノエタンチオール、ジチオトレイトール(DTT)、トリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン、その誘導体、及びその組み合わせのうちいずれか一つを含む還元剤を追加する段階と、
ii)約4℃で少なくとも約3時間還元させる段階と、
iii)前記還元剤を除去する段階と、を含むことを特徴とする<26>~<28>、並びに<31>及び<32>のうちいずれか1項に記載の方法。
<38>
前記還元剤は、DTTを約0.1mM以上の濃度で含むことを特徴とする<37>に記載の方法。
<39>
前記還元剤は、脱塩カラムを介して除去されることを特徴とする<37>または<38>に記載の方法。
<40>
前記酸化させる段階は、少なくとも約5時間空気で酸化させる段階を含むことを特徴とする<26>~<28>、<31>、<32>、及び<37>~<39>のうちいずれか1項に記載の方法。
<41>
前記酸化させる段階は、
i)L-ジヒドロアスコルビン酸、その誘導体、またはその組み合わせを含む酸化剤を追加する段階と、
ii)約4℃で少なくとも約5時間酸化させる段階と、
iii)前記酸化剤を除去する段階と、を含むことを特徴とする<26>~<28>、<31>、<32>、及び<37>~<39>のうちいずれか1項に記載の方法。
<42>
前記酸化剤は、L-ジヒドロアスコルビン酸を約0.5mM以上の濃度で含むものであることを特徴とする<41>に記載の方法。
<43>
前記方法は、分離させる段階をさらに含むことを特徴とする<26>~<40>のうちいずれか1項に記載の方法。
<44>
<1>~<25>のうちいずれか1項に記載の第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドのうち少なくとも一つをコーディングする核酸。
<45>
前記核酸は、配列番号32,34,36,38,40,42,44,46,47,50,52,54,56,58,60,62、及び配列番号64~67のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする<44>に記載の核酸。
<46>
<44>または<45>に記載の核酸を含むベクターまたはベクター系。
<47>
前記ベクターまたはベクター系は、pCDNAベクターから変形されたプラスミドベクターpX0GCを含むことを特徴とする<46>に記載のベクターまたはベクター系。
<48>
<46>または<47>の前記ベクターまたはベクター系を含む細胞。
<49>
前記細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293FまたはCHO、CHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、及びExpiCHO細胞のうちいずれか一つを含むことを特徴とする<35>に記載の細胞。
<50>
薬学的に許容可能な担体と、
下記のうちいずれか一つと、含む薬学的組成物:
i)<1>~<26>のうちいずれか1項に記載の前記ヘテロダイマー、
ii)<44>または<45>に記載の核酸、
iii)<46>または<47>に記載のベクターまたはベクター系、
iv)<48>または<49>による細胞、及び
v)その組み合わせ。
<51>
それを必要とする個体において、疾病または障害の治療または予防の方法であり、前記方法は、<50>に記載の薬学的組成物を前記個体に投与する段階を含むものである方法。
<52>
前記疾病または障害は、自家免疫疾患、移植片に対する免疫反応、アレルギー反応、感染、神経変性疾患、腫瘍疾患及び細胞増殖性障害、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症(MS)、潰瘍性大腸カタル、クローン病、全身紅斑性ループス(SLE)、糸球体腎炎、拡張型心筋病症類似疾病、シェーグレン症候群、アレルギー接触皮膚炎、多発筋肉炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、白班、インシュリン依存性糖尿病、ベーチェット症候群、慢性甲状腺炎、パーキンソン病、ハンチントン病、マチャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト・ヤコブ病、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頚部扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫、及びその組み合わせを含むことを特徴とする<51>に記載の方法。
<53>
前記個体は、ヒトであることを特徴とする<51>または<52>に記載の方法。
図1
図2
図3
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図29
図30
図31
図32
図33
図34A
図34B
【配列表】
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