(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】RNA干渉のための長鎖の二本鎖RNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240123BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240123BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240123BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7125
A61K31/713
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 111
C12N15/113 130Z
C12N15/113 140Z
(21)【出願番号】P 2019565074
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2018000330
(87)【国際公開番号】W WO2018146557
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520448843
【氏名又は名称】オリック パルマセゥティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドン キ
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0288148(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0249304(US,A1)
【文献】Ui-Tei K et al.,“RNAi induced in mammalian and Drosophila cells via transfection of dimers and trimers of small interfering RNA.”,Journal of RNAi and gene silencing,2005年10月14日,Vol. 1, No. 2,p.79-87
【文献】FEBS Letters,2014年,Vol.588,P.1037-1043
【文献】nature biotechnology,2006年,Vol.24, No.5,P.559-565
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61P 43/00
A61K 31/713
A61P 35/00
A61K 31/7125
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA干渉(RNAi)メカニズムを介して遺伝子サイレンシングを誘発可能である長鎖の二本鎖RNA(ldRNA)
及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物であって、
前記長鎖の二本鎖RNAは2つの実質的に相補的なRNA鎖からなり、1又は複数の標的mRNAに相補的な少なくとも1つのガイド配列を含み、
前記長鎖の二本鎖RNAのそれぞれは40~62ヌクレオチドの範囲内でありかつ3’末端にジヌクレオチドオーバーハングを有し、
前記長鎖の二本鎖RNAは1又は複数のホスホロチオエート結合を含
み、
前記医薬組成物は自然免疫応答の誘導を阻害する、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記RNA鎖はそれぞれ40~52ヌクレオチドの範囲内にある、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
同一の標的mRNAに相補的な2つ以上の8bp以上の配列を含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
2以上の異なる標的mRNAに相補的な2つ以上の8bp以上の配列を含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記ldRNAの一末端が、前記標的mRNAに相補的なアンチセンス配列の5’末端を含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記標的mRNAに相補的な前記配列が、8~50ヌクレオチド長である配列から独立して選択される、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記標的mRNAがウイルスmRNAである、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記標的mRNAが、
がん細胞の成長及び生存に重要な複数の経路に関与している、
同一のシグナル伝達経路において機能する、又は
共通のシグナルから発する2以上のシグナル伝達経路で機能する、
請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記標的mRNAが、酵素、転写因子、分泌シグナリングタンパク質、シグナル伝達タンパク質、キナーゼ若しくはホスファターゼ、細胞受容体若しくはイオンチャネル、又は分泌タンパク質をコードする、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記自然免疫応答がRIG-Iによって媒介される、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連する出願の参照】
【0001】
本出願は、2017年2月10日に出願された米国仮特許出願第62/457,282号の利益及び優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本技術は、部分的に、遺伝子発現の阻害に有用な長鎖の二本鎖RNAに関する。
【0003】
本願には、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表が含まれており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年2月12日に作成された前述のASCIIコピーの名称はOLX-003PC_Sequence Listing_ST25.txtであり、サイズは8,192バイトである。
【背景技術】
【0004】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)が相補的ヌクレオチド配列を持つ標的メッセンジャーRNA(mRNA)を中和することにより遺伝子発現を阻害する進化的に保存された生物学的プロセスである(Hannon et al., Nature, 418:244-251, 2002)。前記RNAi経路は、Dicerエンドヌクレアーゼによって開始される。Dicerエンドヌクレアーゼは、長鎖のdsRNAを、相補的塩基対19個のヌクレオチドを持ち且つ2ヌクレオチドの3’オーバーハングを末端に持つ短い干渉RNA(siRNA)断片に切断する。siRNAは、2本の一本鎖RNA、パッセンジャー鎖及びガイド鎖へと解く。前記ガイド鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体に組み込まれる(RISC)。転写後の遺伝子サイレンシングは、前記ガイド鎖対のアンチセンス配列がmRNA中の相補的配列に対合して、前記RISC複合体の触媒成分であるArgonaute 2(Ago2)による切断を誘導する際に発生する。
【0005】
RNAiは線虫及び節足動物で最初に発見された(Fire et al., Nature, 391:806-811, 1998)。これらの門では、RNAiは0.3~1kbのdsRNAで誘導される。このRNAi過程は、免疫応答の活性化により哺乳類細胞では成立しなかった(Stark et al., Annu. Rev. Biochem., 67:227-264, 1998)。インターフェロン発現の誘導によって明示されるこの自然免疫の形態は、ウイルス感染症に通常関連するRNAの形態に結合するパターン認識受容体によって媒介される。抗ウイルス応答の活性化を回避するために、哺乳類細胞のRNAiは、ダイサーの消化産物を模倣する合成21mer siRNAを使用して誘導されることが多い(Elbashir et al., Nature, 411:494-498, 2001)。
【0006】
25~30塩基長のヌクレオチドのRNA二重鎖(duplex)は、対応する従来の21-mer siRNAよりも100倍強力になる可能性がある。これらの25~30bp二重鎖の増強された効力は、それらがダイサー基質であるという事実に起因し、siRNAの産生をRISC複合体への取り込みに直接結びつけている(Kim et al., Nat. Biotechnol. 23:222-6, 2005)。さらに長鎖のdsRNA二重鎖は、2つの異なる標的mRNA配列の発現を阻害し得る。アンチセンス配列の5’末端がdsRNAのいずれかの末端に位置する場合、単一のdsRNA構造体による2つのmRNAの同時下方制御が最も効率的であった(Chang et al., Mol. Cells 27, 689-695, 2009)。
【0007】
平滑末端dsRNAの長さを27bpに増やすと、免疫感受性T98G細胞株でインターフェロン発現が誘導された(Marques et al., Nat. Biotechnol. 24:559-65, 2006)。このような観察により、より長鎖の干渉RNAの開発が妨げられた。
【発明の概要】
【0008】
複数のmRNA又は複数のmRNA領域を選択的に標的とすることが可能な構造体など、自然免疫応答の活性化を最小限に抑えた効率的な遺伝子サイレンシング構造体が必要である。本発明は、この目的及びその他の目的に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、長さが異なる様々な平滑末端dsRNAの2つの鎖の相補的ヌクレオチド配列(すなわち、長さが19bp(上鎖は配列番号1、下鎖は配列番号2)、38bp(上鎖は配列番号3、下鎖は配列番号4)、50bp(上鎖は配列番号5、下鎖は配列番号6)、及び60bp(上鎖は配列番号7、下鎖は配列番号8)である平滑末端dsRNA)を示すグラフである。
【
図1B】
図1Bは、長さが異なる2bp 3’オーバーハングを持つ様々なdsRNAの2つの鎖の相補的ヌクレオチド配列である(すなわち、長さが19+2(上鎖は、配列番号9、下鎖は配列番号10)、38+2(上鎖は配列番号11、下鎖は配列番号12)、50+2(上鎖は配列番号13、下鎖は配列番号14)、及び60+2(上鎖は配列番号15、下鎖は配列番号16)であるdsRNA)。
【
図1C】
図1Cは、野生型RAW 264.7細胞及びRAW 264.7 RIG-Iノックアウト細胞で示されたdsRNAによって活性化された抗ウイルス応答を示すグラフである。
【
図2】
図2は、30、40、50、及び60塩基対の長さのサバイビン遺伝子を標的とする平滑末端dsRNAによる相対的ISG発現量と、野生型RAW 264.7細胞、RAW 264.7 RIG-Iノックアウト細胞、及びRAW 264.7 MDA5ノックアウト細胞における2ヌクレオチドの3’オーバーハングを持つサバイビン遺伝子を標的とするdsRNAの相対的ISG発現を示す。
【
図3】
図3は、40bp及び60bpの長さのサバイビン遺伝子を標的とする平滑末端dsRNAをトランスフェクトした細胞におけるIFN-β及びIFIT1(ISG56)の遺伝子発現を示すグラフである。
【
図4】
図4は、サバイビンの従来のsiRNAと比較して、30bp、30+2、40bp、40+2、50bp、50+2、及び60bpを有するサバイビンを標的とするdsRNAが標的サバイビンmRNAをノックダウンすることを示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、サバイビンを標的とする40+2、50+2、及び60+2dsRNAのヌクレオチド配列を示す表である。
【
図5B】
図5Bは、dsRNAを標的とする30bp、30+2、40bp、40+2、50bp、50+2、及び60bpのサバイビンのゲルバンドを示す画像である。
【
図6A】
図6Aは、実施例1のルシフェラーゼ-GFPを標的とするdsRNAのヌクレオチド配列を示す表である。
【
図6B】
図6Bは、実施例2のサバイビンを標的とするdsRNAのヌクレオチド配列を示す表である(すなわち、30bp、30+2、40bp、40+2、50bp、50+2、60bp、及び60+2)。
図6Bは、従来のサバイビンsiRNAのヌクレオチド配列も示す(si-survivin:si-sur 19+2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、顕著な抗ウイルス応答を誘導することなく哺乳類細胞における遺伝子発現を阻害可能な長鎖の二本鎖RNA(ldRNA)、及びそれを使用した遺伝子サイレンシング方法を提供する。驚くべきことに、平滑38-mer dsRNAはインターフェロン発現を強く誘導することが示されていたが、この細胞応答は、50又は60塩基対、及び所望により1又は複数の3’ジヌクレオチドオーバーハングを含む構築物を含め、平滑dsRNAの長さが増加した場合には観察されなかった。これらのより長い構築物は、効率的な遺伝子サイレンサーであり得、複数のmRNA又はmRNA領域をサイレンシングする能力を提供し得る。
【0011】
実施形態によれば、ldRNAの各末端は平滑化されている場合もあれば、3’オーバーハングを持つ場合もある。一部のldRNAは両末端が平滑化されている。ダイサー切断事象のsiRNA産物は、両末端に2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。これらの3’オーバーハングは、RNAヘリカーゼ活性を持つパターン認識受容体であるRIG-Iの認識を阻害する(Marques et al., Nat. Biotechnol. 24:559-65, 2006)。対照的に、一部のウイルスは平滑末端を有するdsRNAを生成する。これらの外来dsRNAは、自然免疫に特徴的なインターフェロン及びその他の遺伝子の発現を誘導しうる。しかし、本発明の実施形態による様々なldRNAは、抗ウイルス応答の活性化をほとんどまたは全く引き起こさない。
【0012】
本発明の様々なldRNAは、少なくとも40bp、少なくとも45bp、少なくとも50bp、少なくとも60bp、少なくとも80bp、又は少なくとも100bpの長さである二重鎖を含む。様々な実施形態では、前記ldRNAは、200bp以下、150bp以下、又は100bp以下の長さである二重鎖を含む。例えば、本発明の実施形態による様々なldRNAは、長さが40~200bp、40~150bp、若しくは40~100bp、又は50~200bp、50~150bp、若しくは50~100bpである二重鎖を含む。いくつかの実施形態では、前記ldRNAは、長さが40~80bp、45~80bp、50~80bp、40~60bp、45~60bp、又は50~60bpである二重鎖を含む。
【0013】
様々な実施形態では、前記二重鎖は、実質的に相補的な2本のRNA鎖を有する。いくつかの実施形態では、前記二重鎖は、完全な相補性を持つ標準塩基対のみを含む。いくつかの実施形態では、前記RNAは、10個以下、又は5個以下(例えば、1、2、又は3個)のミスマッチ塩基又は非標準塩基対を含む(例えば、G:U塩基対)。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ldRNAの両末端は平滑化されている。いくつかの実施形態では、一方又は両方の末端は、3’末端のオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、前記オーバーハングは、ジヌクレオチドオーバーハング(例えば、dTdT)である。
【0015】
抗ウイルス(自然免疫)応答の誘導は、相対的インターフェロン活性化を測定することによって決定される。本発明の様々なldRNAは、細胞株における模擬トランスフェクションにより誘導される発現レベルの15倍以下、10倍以下、又は5倍以下のインターフェロン又はIRFの発現を誘導する。前記細胞株として、野生型RAW 264.7細胞、RAW 264.7 RIG-Iノックアウト細胞、及びRAW 264.7 MDA5ノックアウト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の様々なldRNAは、RNAi経路を介して標的遺伝子の発現を低下させう。これらのldRNAは、標的mRNAに相補的である、少なくとも8bpのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記ldRNAは、単一mRNA内の異なるセグメントに相補的な、2,3,4、又はそれ以上のガイド配列を含む。他の実施形態では、本発明のldRNAは、2、3、4、又はそれ以上の異なる標的mRNAに相補的なガイド配列を有する。いくつかの実施形態では、mRNAに相補的な前記配列は、8~50個の範囲内のヌクレオチド、8~40個の範囲内のヌクレオチド、8~30個の範囲内のヌクレオチド、又は8~20個の範囲内のヌクレオチドである配列から独立して選択される。いくつかの実施形態では、mRNAに相補的な前記配列は、15~50個の範囲内のヌクレオチド、15~40個の範囲内のヌクレオチド、15~30個の範囲内のヌクレオチド、又は15~20個の範囲内のヌクレオチドである配列から独立して選択される。例えば、前記相補的配列は、約15nt、約16nt、約17nt、約18nt、約19nt、又は約20ntであり得る。
【0017】
ldRNAにおける前記ガイド配列は、アンチセンス配列である。それらの配列は、5’非翻訳領域、開始部位、コード配列、停止部位、又は3’非翻訳領域のmRNAに結合しうる。優先的に、それらの配列は標的とされたmRNA内のアクセス可能なセグメントに結合する。
【0018】
ldRNAは、2本の鎖が互いに相補的であり、反対方向に配向しているdsRNAである。したがって、1つのRNA鎖の5’末端ともう一方RNA鎖の3’末端は、ldRNAの同一末端に位置する。いくつかのldRNAは、ガイド配列を含み、前記ガイド配列の5’末端がldRNAの1つのRNA鎖の5’末端に位置する。他のldRNAは、2つのガイド配列を含み、前記2つのガイド配列の5’末端は2つのRNA鎖の5’末端に位置し、それぞれ互いに反対側のldRNA末端に位置する。
【0019】
ldRNAのRNAi活性は、ノーザンブロット法、定量的rtPCR、及び当技術分野で周知の他の手法などの従来の方法を使用して、標的mRNAレベルを測定することにより決定しうる。ldRNAにRNAi活性がある場合、標的mRNAレベルは低下する。ldRNAのRNAi活性が標的とされたmRNAに特異的である場合、非標的とされていないmRNAのレベルは低下しない。あるいは、RNAi活性は、標的とされたmRNAによってコードされるタンパク質の発現又は活性を定量化することにより間接的に測定可能である。タンパク質の発現及び活性は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び酵素アッセイなど、当技術分野で知られている従来の方法によって決定される。
【0020】
ldRNAのRNA鎖は、修飾された骨格、修飾されたヌクレオチド、及び/又は他の化学修飾を有してもよい。
【0021】
ldRNAの一方又は両方のRNA鎖のリン酸骨格は、1又は複数のホスホロチオエート結合で置換し得る。自然界に見られる標準的なRNA骨格は、ヌクレオチド間のホスホジエステル結合を含む。ホスホロチオエート結合修飾は、非架橋酸素の1つを硫黄原子で置き換えることにより、リン酸結合を変更させる。この変更により、前記ポリヌクレオチドの全体的な化学特性が変化する。特に、ホスホロチオエート結合の付加により、ポリヌクレオチド骨格をヌクレアーゼ分解に対して安定化し、細胞環境での半減期を効果的に延長することができる。ホスホロチオエート結合は、ldRNAの片方又は両方の鎖に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ldRNAの少なくとも約1%、2%、4%、8%、16%、32%又は約50%のヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合により結合される。
【0022】
ldRNAは、限定されるものではないが、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン及び/又は5-メチルシチジンなどの非標準ヌクレオチドから合成可能である。そのようなヌクレオチドは、toll様受容体を介した自然免疫の活性化を低下させ得る。
【0023】
ldRNAは、ほぼすべてのmRNAを標的とするように設計しうる。例えば、様々なldRNAは、酵素、転写因子、シグナリングタンパク質、キナーゼ、ホスファターゼ、イオンチャネル、細胞質タンパク質、膜タンパク質、及び分泌タンパク質をコードするmRNAのレベルを低下させる。
【0024】
ldRNAは、ウイルスmRNAを標的とすることができる。いくつかの実施形態では、ldRNAの複数のガイド配列は、単一の標的ウイルスmRNAの異なるセグメントに相補的である。他の実施形態では、単一のldRNA内のガイド配列は、2以上のウイルスmRNA標的の配列に相補的である。
【0025】
様々なldRNAは、がん細胞の増殖及び/又は生存に重要な経路に関与するタンパク質をコードするmRNAを標的とする。そのようなタンパク質の発現を低下させると、がん細胞の成長又は生存が低減する。様々な実施形態では、本発明のldRNAは、がん細胞の成長及び/又は生存に重要な経路に関与するタンパク質の2以上のガイド配列を含む。本発明は又、がんに関与するmRNAのレベルを低下させるldRNAを用いてがん患者を治療する方法を提供する。
【0026】
様々なldRNAは、シグナル伝達タンパク質をコードするmRNAを標的とする。ldRNAは、シグナル伝達タンパク質をコードするmRNAの2以上の異なるセグメントを標的としうる。あるいは、単一の多機能ldRNA内のガイド配列は、関連するシグナル伝達タンパク質をコードする2以上のmRNAを標的としうる。関連するシグナル伝達タンパク質は、同じシグナル伝達経路、並行するシグナル伝達経路、又は共通の起源から分岐するシグナル伝達経路において機能してもよい。多機能ldRNAは又、独立したシグナル伝達経路で作用するタンパク質をコードするmRNAを標的としてもよい。
【0027】
本発明は、本発明のldRNAを細胞、組織又は動物に投与することにより、標的遺伝子の発現を低下させる方法を含む。対象は、疾患又は状態の治療を必要とするか、疾患又は状態のリスクがあるヒト又は動物の被験体又は患者であり得る。前記組成物は、エクス・ビボ又はイン・ビボで投与可能である。
【0028】
哺乳類細胞はいずれも、dsDNAによる自然免疫の誘導に対して感受性又は非感受性のいずれであっても、ldRNA治療に適している。例えば、ldRNAは免疫感受性T98G膠芽腫細胞及び免疫非感受性HeLaがん細胞に投与可能である。両方の細胞タイプで標的遺伝子の発現を阻害することができ、インターフェロンの発現は、平滑末端38bp dsRNAの投与後よりも、ldRNA投与後の方が低くなる。ldRNAとの接触によりタンパク質を発現するように誘導可能な細胞型の非限定的な例には、ケラチノサイト、メラニン細胞、マクロファージ、肝細胞、肺細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、及びリンパ球(例えば、B細胞若しくはT細胞又はその前駆細胞)が挙げられる。さらに、ldRNAは、増生細胞、悪性細胞、及び幹細胞によるタンパク質発現を誘導しうる。様々な実施形態では、標的細胞は、抗原提示細胞、樹状細胞、マクロファージ、神経細胞、脾臓細胞、リンパ系細胞、肺細胞(例えば、肺胞細胞)、皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト又は線維芽細胞)、内皮細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、間葉系細胞、上皮細胞、又は造血細胞から選択される。
【0029】
ldRNAは、皮膚、網膜、肺、肝臓、心臓などを含む様々な組織に投与可能である。さらに、ldRNAは動物全体に全身投与可能である。全身投与は、免疫感受性細胞及び免疫抵抗性細胞の両方による取り込みに至ることが予想される。ldRNAは、他のdsRNAよりも免疫原性が低いため、免疫感受性細胞を含む混合細胞集団に安全に投与可能である。
【0030】
様々な実施形態では、本発明のldRNAは、医薬製剤に組み込まれてもよい。医薬製剤の非限定的な例には、局所クリーム若しくは軟膏又は所望により安定化剤を含む水溶液若しくは緩衝液が含まれる。医薬製剤は、細胞及び組織による細胞取り込みを促進するためのビヒクルをさらに含んでもよい。
【0031】
医薬的に許容される担体又は希釈剤は、当業者に周知である。前記担体又は希釈剤は、様々な実施形態において、固体製剤用の固体担体若しくは希釈剤、液体製剤用の液体担体若しくは希釈剤、又はそれらの混合物であり得る。
【0032】
別の実施形態では、固体担体/希釈剤としては、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、前ゲル化デンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ある実施形態では、前記医薬組成物は、制御放出性組成物、すなわち、投与後一定期間にわたってldRNAが放出される組成物である。制御放出性又は持続放出性の組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)の製剤が含まれる。別の実施形態では、前記組成物は即時放出性組成物、すなわち、投与直後に化合物全体が放出される組成物である。
【0034】
ldRNAは、別の実施形態では、中和された医薬的に許容される塩形態として前記組成物に製剤化される。
【0035】
ldRNAを対象に投与する様式は、標的とされるmRNA、標的細胞、治療される疾患又は状態、及び医薬製剤の形態に依存するであろうことを、当業者は理解するであろう。
【0036】
ldRNAは、当技術分野で公知の種々の方法により投与可能である。例えば、ldRNAは、吸入、静脈内注射、又は局所投与可能である。いくつかの実施形態では、前記ldRNAは、例えば皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、眼内注射、腫瘍内注射、又は他の形態の非経口投与により、有効量で患者に投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、ldRNAは経口投与され、したがって、経口投与に適した形態で、すなわち固体又は液体製剤として製剤化される。適切な固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレットなどが含まれる。適切な液体経口製剤には、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油などが含まれる。本発明の別の実施形態では、前記ldRNAはカプセルに製剤化される。本実施形態に従って、本発明の組成物は、活性化合物及び不活性担体又は希釈剤に加えて、硬ゼラチンカプセルを含む。
【0038】
別の実施形態では、前記ldRNAは体表面に局所的に投与されるため、局所投与に適した形に製剤化される。適切な局所製剤には、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、液滴剤などが含まれる。局所投与の場合、組成物又はそれらの生理学的に許容される誘導体は、医薬的担体を含む又は含まない生理学的に許容される希釈剤中の溶液、懸濁液、又はエマルジョンとして調製及び適用される。
【0039】
別の実施形態では、前記ldRNAは、座薬、例えば、直腸座薬又は尿道座薬として投与される。別の実施形態では、前記医薬組成物は、ペレットの皮下移植により投与される。別の実施形態では、前記ペレットにより、ある期間にわたる薬剤の制御放出が提供される。
【0040】
様々な実施形態では、投与量は、1日量、1週間量、1か月量、又は1年量である。いくつかの実施形態では、用量は、単回用量であるか、前記組成物は少なくとも10回投与される。いくつかの実施形態では、前記組成物は、1年あたり6回以上又は12回以上、複数年の間投与される。
【0041】
本発明は、ldRNAを投与することにより、様々な疾患又は状態を治療する方法を提供する。前記ldRNAは、1又は複数の有害な標的遺伝子の発現を低下させ、それによって疾患又は状態を治療するものである。例えば、皮膚に影響を及ぼす疾患又は状態を、ldRNAで治療可能である。ldRNAでの治療に適した皮膚疾患又は状態としては、皮膚の白斑、色素沈着、又は瘢痕、アトピー性皮膚炎、乾癬、強皮症、脱毛又はしわの寄った皮膚が挙げられる。ldRNAは、線維症によって現れる疾患又は状態の治療にも投与可能である。ldRNAで治療し得る線維性疾患又は状態は、肝線維症、網膜線維症、及び肺線維症(例えば、特発性肺線維症など)である。ldRNAで治療しうる眼の状態としては、黄斑変性(ウェット型又はドライ型のAMD)が挙げられる。ldRNAで治療しうる炎症性疾患には、関節リウマチやクローン病が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記状態は、神経因性疼痛である。いくつかの実施形態では、前記状態は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、又は心臓病である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記ldRNAは、複数のmRNAを標的とする。例示的な標的には、CTGFをコードするmRNA及びMYD88をコードするmRNAが含まれる。
【0043】
ldRNAは負に帯電した核酸ポリマーである。細胞の取り込みを促進するために、ldRNAは、核酸を細胞内に輸送するビヒクルとともに製剤化可能である。適切なビヒクルとしては、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、ポリエチレンイミン、及びタンパク質ベースのトランスフェクション試薬が挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記トランスフェクション試薬はリポソームを形成する。リポソームは、細胞内の安定性を高め、取り込み効率を高め、生物活性を向上させうる。リポソームは、細胞膜を構成する脂質と同様の方法で配置された脂質で構成される中空の球状小胞である。前記リポソームは、水溶性化合物を捕捉するための内部水性空間を有し、0.2ミクロンから数ミクロンの直径サイズの範囲であり得る。Langer, Science 249:1527-1533 (1990)、Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989)、Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327)を参照。
【0045】
親油性部分を、ldRNAの1又は複数のヌクレオチドにコンジュゲートすることができる。前記親油性部分は、優先的に、ldRNAのRNA鎖の1つの5’末端に結合する。親油性部分の非限定的な例としては、コレステロール、トコフェロール、及びステアリン酸又はパルミチン酸などの10個以上の炭素原子を有する長鎖脂肪酸が挙げられる。共有結合した親油性部分は、細胞へのldRNAの侵入を促進可能である。そのような方法は公知であり、例えば、PCT/KR2013/004463及びUS2015/0111948に記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する一当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法は周知であり、当技術分野で一般的に使用されている。
【実施例】
【0047】
実施例1:様々なdsRNAに対する免疫応答
免疫応答を測定するために、RAW 264.7細胞を、10%ウシ胎児血清、100μg/mlノルモシン(Normocin)(InvivoGen社)、及び200μg/mlゼオシン(Zeocin)(InvivoGen社)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Gibco社)で増殖した。細胞を96ウェルプレートに1.0x104細胞/cm2の密度で播種し、抗生物質なしで24時間培養した。RNAiMAXトランスフェクション剤(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、細胞に10nM dsRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後と48時間後に、上清の10μlアリコートを96ウェル白色プレートにサンプリングした。50μlのQuanti-Lucルシフェラーゼ基質(InvivoGen社)を各ウェルに添加し、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社)を使用してプレートにおけるルシフェラーゼ活性を直ちに読み取った。
【0048】
平滑末端dsRNAを、19、38、50、及び60塩基対の長さで合成した(
図1A及び
図6A)。これらのdsRNAに対する抗ウイルス応答を、相対IRF活性度を測定することにより決定した(
図1C)。予想通りに、38bp dsRNAは強い抗ウイルス応答を誘導し、短い19bp dsRNAは誘導しなかった。驚いたことに、50bp dsRNAに対する抗ウイルス応答は、38merに対する応答と比較して、>80%減少し、60merではさらに低い応答が観察された。これらの抗ウイルス応答は全て、RIG-Iノックアウト細胞では実質的に排除されており、RIG-Iが平滑dsRNAを認識するdsRNAセンサーであることが確認された。追加の試験では、陽性コントロールpolyICに対する抗ウイルス応答が示され、模擬処理された細胞では応答が示されなかった。さらに、dsRNAへの2ヌクレオチドの3’オーバーハングの付加(
図1B及び
図6A)によっても、抗ウイルス応答が排除され、これは3’オーバーハングを有するdsRNAによってRIG-1が活性化されないことを示す以前の研究と一致する(Marques et al., Nat. Biotechnol. 24:559-65, 2006)。
【0049】
実施例2:長鎖のdsRNAの免疫応答とノックダウン効果
サバイビン遺伝子を標的とする平滑末端dsRNAを、30、40、50、及び60塩基対の長さで合成した(
図6Bを参照)。2ヌクレオチドの3’オーバーハングdsRNAも合成した(すなわち、30+2、40+2、50+2、及び60+2)。
図5A及び
図6Bを参照。上記に開示されたサバイビンを標的とするdsRNAの同定を
図5Bに示す。これらのdsRNAに対する抗ウイルス応答を、相対ISG発現を測定することにより決定した(
図2)。前記dsRNAを、野生型(WT)、RIG-I陰性(RIG-I(-/-))、又はMDA5陰性(MDA5(-/-))であるRAW 264.7細胞で試験した。
【0050】
結果は、40bp dsRNA及び50bp dsRNAにおいて、ある程度の免疫刺激(相対ISG発現で測定)が発生したことを示す(
図2)。しかしながら、従来の概念に反して、40bp dsRNA及び50bp dsRNAは、60bp dsRNAによって生成された相対ISGと比較して、より多くの相対ISGを発現した(
図2)。
【0051】
40+2 ldRNA、50+2 ldRNA、及び60bp ldRNAが示したISG発現は、ごくわずかであった(
図2)。このデータは、3’末端の2つのヌクレオチドRNAのオーバーハングが(例:40+2及び50+2)、自然免疫系を効率的に回避することを示す(
図2)。
【0052】
この結果により、RIG-I欠損細胞(RIG-I(-/-))がISGタンパク質の発現を誘導しないことも示され、これは、RIG-Iが化学合成された長鎖のdsRNAを認識するパターン認識受容体(PRR)であることを意味する(
図2)。
【0053】
図3は、IFN-β及びIFIT1(ISG56)遺伝子発現が60bp dsRNAのトランスフェクションによって上方制御されないことを示す。この結果は、ISG54が60bp dsRNAによって上方制御されない理由が、PKRによる翻訳阻害によるものではなく、60bp dsRNAが自然免疫系を活性化しないためであることを示す。
【0054】
図4は、上記開示された30bp、30+2、40bp、40+2、50bp、50+2、及び60bpのサバイビンを標的とするdsRNAが、サバイビンに対する従来のsiRNAと同じ有効性でサバイビン遺伝子発現をサイレンシングしうることを示す(si-sur 19+2)。
【0055】
均等物
以上本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、さらなる改変が可能であり、本出願が、一般に本発明の原理に従い、本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、又は適応を網羅することを意図し、本発明が関係する技術分野内の既知の又は慣習的な慣行の範囲内で、添付の特許請求の範囲内において前述及び以下の本質的な特徴に適用され得るものであることは理解されよう。
【0056】
当業者は、本明細書に具体的に記載された特定の実施形態に対する多数の均等物を、通常の実験のみを使用して認識又は確認することが可能であろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
40塩基対以上の二本鎖長を有する2つの実質的に相補的なRNA鎖及び少なくとも1つのガイド配列を含む、RNA干渉(RNAi)メカニズムを介して遺伝子サイレンシングを誘発可能である長鎖の二本鎖RNA(ldRNA)。
<2>
1又は複数の修飾ヌクレオチドを含む、<1>に記載のldRNA。
<3>
1又は複数のホスホロチオエート結合ヌクレオチドを含む、<2>に記載のldRNA。
<4>
Toll様受容体によるRNA認識を抑制する1又は複数の修飾ヌクレオチドを含む、<2>又は<3>に記載のldRNA。
<5>
前記修飾ヌクレオチドがシュードウリジンを含む、<4>に記載のldRNA。
<6>
前記修飾ヌクレオチドが5-メチルシチジンを含む、<4>に記載のldRNA。
<7>
前記修飾ヌクレオチドがN1-メチルシュードウリジンを含む、<5>に記載のldRNA。
<8>
さらに親油性コンジュゲートを含む、<1>~<7>のいずれか一項に記載のldRNA。
<9>
前記親油性コンジュゲートが、コレステロール、コレステン、コレスタン、コレスタジエン、胆汁酸、コール酸、デオキシコール酸、及びデヒドロコール酸から選択される、<8>に記載のldRNA。
<10>
前記親油性部分がコレステロールである、<8>に記載のldRNA。
<11>
前記親油性コンジュゲートが、ポリリボヌクレオチドの3’末端に結合している、<8>~<10>のいずれか一項に記載のldRNA。
<12>
前記ldRNAの一方又は両方の末端が平滑化されている、<1>~<11>のいずれか一項に記載のldRNA。
<13>
前記二本鎖長が45bp以上である、<1>~<12>のいずれか一項に記載のldRNA。
<14>
前記二本鎖長が50bp以上である、<1>~<12>のいずれか一項に記載のldRNA。
<15>
前記二本鎖長が60bp以上である、<1>~<12>のいずれか一項に記載のldRNA。
<16>
相対的IRF活性化度が10以下である、<1>~<15>のいずれか一項に記載のldRNA。
<17>
相対的IRF活性化度が5以下である、<1>~<15>のいずれか一項に記載の前記ldRNA。
<18>
1又は複数のmRNAに相補的な1つ又は複数の8bp以上の配列を含む、<1>~<17>のいずれか一項に記載のldRNA。
<19>
同一のmRNAに相補的な2つ以上の8bp以上の配列を含む、<18>に記載のldRNA。
<20>
2以上の異なるmRNAに相補的な2つ以上の8bp以上の配列を含む、<18>に記載のldRNA。
<21>
3以上の異なるmRNAに相補的な3つ以上の8bp以上の配列を含む、<18>に記載のldRNA。
<22>
前記ldRNAの一末端が、mRNAに相補的なアンチセンス配列の5’末端を含む、<1>~<21>のいずれか一項に記載のldRNA。
<23>
前記ldRNAの両末端が、mRNAに相補的なアンチセンス配列の5’末端を含む、<1>~<21>のいずれか一項に記載のldRNA。
<24>
mRNAに相補的な前記配列が、8~50ヌクレオチド長である配列から独立して選択される、<18>~<23>のいずれか一項に記載のldRNA。
<25>
mRNAに相補的な前記配列が、15~50ヌクレオチド長の範囲内の配列から独立して選択される、<24>に記載のldRNA。
<26>
前記mRNAがウイルスmRNAである、<18>~<25>のいずれか一項に記載のldRNA。
<27>
前記mRNAが、がん細胞の成長及び生存に重要な複数の経路に関与している、<18>~<25>のいずれか一項に記載のldRNA。
<28>
前記mRNAが同一のシグナル伝達経路において機能する、<18>~<25>のいずれか一項に記載のldRNA。
<29>
前記mRNAが、共通のシグナルから発する2以上のシグナル伝達経路で機能する、<9>~<25>のいずれか一項に記載のldRNA。
<30>
<1>~<29>のいずれか一項に記載のldRNA及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
<31>
ポリヌクレオチドの細胞への輸送を促進するビヒクルをさらに含む、<30>に記載の組成物。
<32>
前記ビヒクルが、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、ポリエチレンイミン又はタンパク質ベースのトランスフェクション試薬である、<31>に記載の組成物。
<33>
<1>~<29>のいずれか一項に記載のldRNA又は<30>~<32>のいずれか一項に記載の医薬組成物を、哺乳類の細胞、組織、又は動物に投与することを含む、1又は複数のmRNAのレベルを低下させる方法。
<34>
前記細胞がsiRNA治療に対して免疫感受性である、<33>に記載の方法。
<35>
少なくとも1つのmRNAが酵素をコードする、<33>に記載の方法。
<36>
少なくとも1つのmRNAが、転写因子をコードする、<33>に記載の方法。
<37>
少なくとも1つのmRNAが、分泌シグナリングタンパク質をコードする、<33>に記載の方法。
<38>
少なくとも1つのmRNAがシグナル伝達タンパク質をコードする、<33>に記載の方法。
<39>
少なくとも1つのmRNAが、キナーゼ又はホスファターゼをコードする、<33>に記載の方法。
<40>
少なくとも1つのmRNAが、細胞受容体又はイオンチャネルをコードする、<33>に記載の方法。
<41>
少なくとも1つのmRNAが、分泌タンパク質をコードする、<33>に記載の方法。
<42>
前記ldRNA組成物が局所投与される、<33>~<41>のいずれか一項に記載の方法。
<43>
前記ldRNA組成物が非経口投与により投与される、<33>~<41>のいずれか一項に記載の方法。
<44>
前記ldRNA組成物が吸入により投与される、<33>~<41>のいずれか一項に記載の方法。
<45>
前記ldRNA組成物が静脈内投与される、<33>~<41>のいずれか一項に記載の方法。
<46>
疾患又は状態が皮膚に影響を与えるものである、<33>~<45>のいずれか一項に記載の方法。
<47>
<30>~<32>のいずれか一項に記載のldRNA組成物を対象へ投与することを含む、前記対象の細胞における1又は複数のmRNAの発現を低下させる方法。
【配列表】