(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】シリコーン吸着フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240123BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B32B27/00 101
H01L21/304 622G
B32B27/00 L
(21)【出願番号】P 2020027897
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
(72)【発明者】
【氏名】入江 朱加
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026725(JP,A)
【文献】特開2014-108498(JP,A)
【文献】特開2014-151563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H01L 21/00
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
(a)架橋性オルガノポリシロキサン(b)架橋剤(c)非反応性MQレジン及び(d)反応性MQレジンを含む架橋性組成物の硬化物であるシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムにおいて、前記シリコーン吸着層の下記測定方法で測定した対ステンレス鋼板剥離力が350mN/25mm以上7500mN/25mm以下であり、前記シリコーン吸着層に貼り合わせるセパレータの離型層が
フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び水酸基含有ビニルエーテルからなる含弗素系共重合体とイソシアネート基を2以上有する架橋剤との反応生成物を
含有、又はフルオロシリコーンからなることを特徴とするセパレータ付シリコーン吸着フィルム。
(対ステンレス鋼板剥離力)
厚み100μmのポリエステルフィルム上に前記シリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムを長さ100mm幅25mmにカットし、前記シリコーン吸着フィルムの前記シリコーン吸着層を厚み2mmのステンレス鋼板に2
kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で約24時間放置する。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで前記シリコーン吸着フィルムの長手方向に、前記シリコーン吸着フィルムを前記ステンレス鋼板から剥離させて対ステンレス鋼板剥離力(mN/25mm)を測定する。
【請求項2】
前記基材と前記シリコーン吸着層との間に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を
含有してなるアンカー層が設けられ、前記基材の前記シリコーン吸着層を積層した面の反対面には粘着剤層が積層されていることを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ付シリコーン吸着フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層を研磨パッドと貼り合わせ、前記シリコーン吸着層を研磨装置の定盤と貼り合わせることによって、研磨パッド固定用として使用することを特徴とする請求項
2に記載のセパレータ付シリコーン吸着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン吸着フィルムに関する。具体的には、平滑面を有する被着体に貼ったり剥がしたりするリワークが可能なシリコーン吸着層を、基材フィルム上に設けたシリコーン吸着フィルムに関するもので、詳しくは、研磨パッドを定盤に固定する際に使用されるシリコーン吸着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、ハードディスク用基板、ディスプレイ用ガラス基板などの半導体部品、電子部品の製造工程では、基板表面を平坦化や鏡面化するために研磨が行われている。これらの研磨工程では、研磨パッドを研磨装置の定盤に固定し、研磨パッドの研磨層表面に研磨スラリーを供給しながら、加圧状態で被研磨部材と研磨パッドとを摺動させる。
【0003】
研磨パッドの交換・固定作業効率を向上するため、従来から特許文献1などで、基材と吸着層とからなる吸着材と、研磨層とが接合されてなる研磨パッドにおいて、吸着材の吸着層にシリコーン吸着層を用いた研磨パッドが提案されている。
【0004】
シリコーン吸着層は、被着面と平行な方向へは、被着面に対してズレ難く、被着面と垂直な方向に対しても、シリコーン吸着層全体では強く吸着する。ところが、シリコーン吸着層の端部から徐々に、被着面と垂直な方向へシリコーン吸着層を引き剥がすことにより、シリコーン吸着層は容易に引き剥がせる性質と、被着面から剥がしたシリコーン吸着層を被着面に貼り付けると、再び被着面に強く吸着する性質を合わせ持っている。これらの容易に引き剥がせる性質と、再び被着面に強く吸着する性質を合わせて、リワーク性と呼んでいる。
【0005】
このように、シリコーン吸着層がリワーク性を有しているので、研磨パッドの交換時にはシリコーン吸着層を定盤から容易に剥離することができ、さらには、研磨パッドを誤った位置に貼り付けたとしても、容易に貼りなおしができる。また、被着面(定盤)から剥がしたシリコーン吸着層でも、被着面に貼り付けると再び被着面に強く吸着して研磨中の研磨パッドを固定し続けることができる。このため、シリコーン吸着層は、研磨パッドの交換・固定作業の効率化に大きく寄与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、近年、研磨作業の効率化のために、研磨作業自体の高速化が要求されている。研磨作業を高速化した場合、研磨パッドを固定する吸着層に掛かる負荷が大きくなり、従来の研磨パッドに使用していたシリコーン吸着層では、研磨時の研磨作業の進行によって、研磨パッドの部分的な剥離が生じ易くなることが確認されている。研磨作業を高速化した場合における研磨パッドの部分的な剥離は、シリコーン吸着層の吸着力を大きくすることによって、防止することができる。
【0008】
しかしながら、シリコーン吸着層の吸着力を大きくすると、シリコーン吸着層を保護するために貼り付けていたセパレータを剥がす際に、セパレータが剥離できないことや、セパレータを剥離することができても、離型層がセパレータから剥離して、シリコーン吸着層側に転写することがあった。シリコーン吸着層表面に離型層が転写されると、シリコーン吸着層の吸着力が低下し、研磨作業を高速化した場合における、研磨パッドの部分的な剥離を防止することができなくなることがあった。一方、シリコーン吸着層の汚れや異物付着は、吸着力の低下をはじめ、被着体への貼り付け不良の原因となるため、シリコーン吸着層を保護するセパレータは必要不可欠である。このため、単にシリコーン吸着層の吸着力大きくすることだけでは、研磨作業を高速化した場合における、研磨パッドの部分的な剥離対策としては不十分であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被着体への貼り付け時のリワーク性を有するシリコーン吸着フィルムにおいて、シリコーン吸着層の吸着力を大きくしても、従来のシリコーン吸着フィルムに比べ、容易にセパレータを剥がすことができ、セパレータ剥離時の離型層のシリコーン吸着層への転写による、シリコーン吸着層の吸着力の低下を防止することができるセパレータ付シリコーン吸着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、基材上に、(a)架橋性オルガノポリシロキサン(b)架橋剤(c)非反応性MQレジン及び(d)反応性MQレジンを含む架橋性組成物の硬化物であるシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムにおいて、前記シリコーン吸着層の下記測定方法で測定した対ステンレス鋼板剥離力が350mN/25mm以上7500mN/25mm以下であり、前記シリコーン吸着層に貼り合わせるセパレータの離型層がフルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、及び水酸基含有ビニルエーテルからなる含弗素系共重合体とイソシアネート基を2以上有する架橋剤との反応生成物を含有、又はフルオロシリコーンからなることを特徴とするセパレータ付シリコーン吸着フィルムである。
(対ステンレス鋼板剥離力)
厚み100μmのポリエステルフィルム上に前記シリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムを長さ100mm幅25mmにカットし、前記シリコーン吸着フィルムの前記シリコーン吸着層を厚み2mmのステンレス鋼板に2kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で約24時間放置する。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで前記シリコーン吸着フィルムの長手方向に、前記シリコーン吸着フィルムを前記ステンレス鋼板から剥離させて対ステンレス鋼板剥離力(mN/25mm)を測定する。
【0011】
第2発明は、前記基材と前記シリコーン吸着層との間に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含有してなるアンカー層が設けられ、前記基材の前記シリコーン吸着層を積層した面の反対面には粘着剤層が積層されていることを特徴とする第1発明に記載のセパレータ付シリコーン吸着フィルムである。
【0012】
第3発明は、前記粘着剤層を研磨パッドと貼り合わせ、前記シリコーン吸着層を研磨装置の定盤と貼り合わせることによって、研磨パッド固定用として使用することを特徴とする第2発明に記載のセパレータ付シリコーン吸着フィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムでは、セパレータの離型層に、弗素系の離型剤を使用することにより、シリコーン吸着層の吸着力を大きくしても、従来のシリコーン吸着フィルムに比べ、容易にセパレータを剥がすことができるとともに、セパレータの離型層のシリコーン吸着層への転写も非常に少なくすることができるため、シリコーン吸着層の吸着力がほとんど低下することもない。また、本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムでは、シリコーン吸着層の対ステンレス鋼板剥離力を、350mN/25mm以上7500mN/25mm以下とすることにより、シリコーン吸着層を、研磨パッドの定盤との接合に使用した際に、研磨作業を高速化しても、研磨パッドの部分的な剥離が生じることのない性能と、定盤に糊残りすることなくシリコーン吸着層を剥離することができる性能を両立することができるとともに、研磨パッドが剥離交換し難くなることもない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムを、さらに詳しく説明する。
【0015】
本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムは、基材の一方の面に少なくともシリコーン吸着層を設け、シリコーン吸着層上にシリコーン吸着層を保護するセパレータを設けたものである。
【0016】
(基材)
本発明で使用する基材の材料としては、各種プラスチックを特に制限なく用いることができるが、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル等)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、シリコーン吸着層を形成する架橋性組成物の熱架橋時の取り扱い性、コスト等の観点から、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
【0017】
基材の厚みとしては特に限定されないが、通常5~400μm、好ましくは20~250μm、より好ましくは30~150μm、更に好ましくは40~80μmが挙げられる。
【0018】
基材の具体的な形態としては、上記の材料で形成されたフィルムが挙げられる。
【0019】
基材は、その表面が、シリコーン吸着層又は必要に応じ設けられるアンカー層との密着性を向上させること及び/又は帯電防止能を付与すること等を目的として、プラズマ処理又は火炎処理、好ましくはプラズマ処理により改質されていてもよい。
【0020】
(アンカー層)
必要に応じて設けられるアンカー層は、基材とシリコーン吸着層との接着力の向上、又は、シリコーン吸着フィルムの平滑面への貼着後に剥離する時に、基材とシリコーン吸着層との間で剥離させることなく、平滑面からスムーズに剥離させることを目的として設けることができる。アンカー層は、シリコーン吸着層と基材とが直接的に接着し難い組み合わせである場合に、特に有用である。一方で、シリコーン吸着層と基材とが直接的に接着し易い組み合わせである場合には、アンカー層を設けなくてもよいし、設けてもよい。
【0021】
アンカー層の材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。帯電防止性及び/又は被膜特性の観点から、アンカー層の材料としては、好ましくはアクリル系樹脂が挙げられ、より好ましくはアクリルポリオール樹脂が挙げられる。
【0022】
また、アンカー層の材料には、更に帯電防止能を付与することを目的として、帯電防止剤を含ませることもできる。帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等のノニオン系帯電防止剤;エチレンオキサイドを有するアクリレート化合物等のアクリレート系帯電防止剤;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体等の導電性高分子;アンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物等の導電性金属酸化物が挙げられ、好ましくは導電性高分子が挙げられ、より好ましくはポリチオフェンが挙げられる。帯電防止剤が配合されたアンカー層は、帯電防止能を有していない基材を用いる場合に、特に有用である。一方で、基材自体が帯電防止能を有する場合(例えば、表面を帯電防止処理してる場合等)は帯電防止剤が配合されたアンカー層を設けなくてもよいし、設けてもよい。
【0023】
アンカー層の厚みとしては、基材とシリコーン吸着層との接着性向上の観点、及び帯電防止能も付与する場合は帯電防止能をより効果的に得る観点から、例えば0.1μm以上、好ましくは1.0μm以上が挙げられ、シリコーン吸着フィルム全体の可撓性を保持してシリコーン吸着フィルムの平滑面に対する貼り剥がしを容易にする観点から、例えば5.0μm以下、好ましくは3.0μm以下が挙げられる。
【0024】
アンカー層は、上記の材料を含むアンカー層用樹脂組成物の塗布層を形成し、乾燥させることで製膜することができる。アンカー層用樹脂組成物の塗工方法としては、ロールコーター、バーコーター、フローティングナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ブレードコーター等が挙げられる。
【0025】
アンカー層の積層方法としては、アンカー層の製膜と積層とを同時に行うインライン法、及びアンカー層を別途フィルムとして製膜した後に積層するオフライン法が挙げられる。
【0026】
(シリコーン吸着層)
シリコーン吸着層は、(a)架橋性オルガノポリシロキサン(以下において、(a)成分とも記載する)、(b)架橋剤(以下において、(b)成分とも記載する)、(c)非反応性MQレジン(以下において、(c)成分とも記載する)及び(d)反応性MQレジン(以下において、(d)成分とも記載する)を含む架橋性組成物の硬化物である。
【0027】
シリコーン吸着層は、ゴムのような可撓性及び自己粘着性を有しており、上記の架橋性組成物の硬化物で構成されることで、平滑面への吸着性と、剥離後における平滑面への糊残り抑制性との両方において優れた効果を発揮する。
【0028】
((a)架橋性オルガノポリシロキサン)
(a)成分である架橋性オルガノポリシロキサンとしては、架橋性基を有するオルガノポリシロキサンであれば特に限定されず、好ましくは、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0029】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンにおいて、ジオルガノシロキサン部分の構造としては、ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる主鎖を有する直鎖状、又は場合により、ジオルガノシロキサン又はジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる分岐鎖を更に有する分岐状が挙げられる。また、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基の結合場所としては、特に限定されないが、ジオルガノシロキサン部分の末端が挙げられ、より具体的には、直鎖状ジオルガノポリシロキサンの両末端のみ;分岐状ジオルガノポリシロキサンの主鎖の両末端のみ;又は、分岐状ジオルガノポリシロキサンの主鎖の両末端及び側鎖の末端が挙げられる。
【0030】
本発明で用いられる1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンの具体例は、下記式(1-1)~(1-3)及び(2)で表される。下記式(1-1)~(1-3)は、1分子中に2個のアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンの例であり、下記式(2)は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンの例である。
【0031】
【0032】
式(1-1)~(1-3)及び(2)中、R1は、互いに同じ又は異なっていてよい有機基を表し、Xはアルケニル基を表し、n、m及びlは整数を表す。
【0033】
R1の好ましい例としては、炭素数1~10、好ましくは1~6、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロアルキル基;シクロぺンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部がフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ等で置換された基が挙げられ、好ましくはアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基が挙げられる。特に、式(1-1)~(1-3)及び(2)の化合物は、1分子中、少なくとも50%のR1がメチル基で占められていることが好ましい。
【0034】
Xの好ましい例としては、炭素数2~8のアルケニル基、好ましくは、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基が挙げられ、より好ましくはビニル基が挙げられる。なお、式(2)の化合物は、ポリオルガノシロキサン部分が分岐状であることを除いて、一端あたり1個のアルケニル基を有している点は直鎖状の式(1-1)と同様であるが、式(1-2)、式(1-3)と同様に、一端あたり2又は3個のアルケニル基を有するよう変更されてもよい。
【0035】
nは、0以上の整数(式(1-1)~(1-3)の場合)又は1以上の整数(式(2)の場合)であり、mは0以上の整数であり、lは1以上の整数である。また、好ましくは、n及びmは、10≦n+m≦10,000、より好ましくは50≦n+m≦2,000を満足する。
【0036】
これらの架橋性オルガノポリシロキサンは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
架橋性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)としては、硬化性及び粘着力を好ましく得る観点から、20,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上が挙げられ、製造時における撹拌を容易にする高すぎない粘度を確保する観点から、例えば600,000以下、好ましくは300,000以下、より好ましくは100,000以下が挙げられる。なお、重量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した、ポリスチレン換算分子量とする。Mn、Mwの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978年)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算可能である(以下において同様)。
【0038】
((b)架橋剤)
(b)成分である架橋剤としては、(a)成分を架橋するためのヒドロシリル基(SiH基)を有していれば特に限定されない。架橋により、シリコーン吸着層はゴムのような可撓性が備わり、この可撓性がシリコーン吸着層と被着体との優れた密着性を奏する。
【0039】
架橋剤としては、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含有し、直鎖状、分岐状、環状、又は三次元網状構造の樹脂状物のいずれであってもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例は、下記平均組成式(3)で表される。
【0040】
【0041】
式(3)中、R2は同じ又は異なっていてよい、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、a及びbは、それぞれ、0<a<2、及び0.8≦b≦2で、且つ0.8<a+b≦3を満たす数である。
【0042】
脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、前記式(1-1)~(1-3)及び式(2)においてR1として例示したものが挙げられる。
【0043】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(b)成分は、その総量100重量%当たり、2個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを50重量%以下と、その残余として少なくとも3個のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含む。
【0044】
架橋剤の重量平均分子量(Mw)としては、付加反応を進行し易くする観点から、例えば200以上、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上が挙げられ、シリコーン吸着層が柔らかくなりすぎないようにする観点から、例えば15,000以下、好ましくは5,000以下、より好ましくは1,500以下が挙げられる。
【0045】
(b)成分の使用量としては、(a)成分1モル当たり、(b)成分中の水素原子が例えば0.5~4モルとなるような量、好ましくは1~2.5モルとなるような量が挙げられる。
【0046】
((c)非反応性MQレジン)
(c)成分である非反応性MQレジンは、M単位(R3
3SiO1/2)及びQ単位(SiO4・1/2)からなり、分子内にビニル基、水酸基等の反応性官能基を有さないシリコーン樹脂である。(c)成分を配合すると、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる反面、架橋性組成物の硬化時において(a)成分の架橋性基と(b)成分のヒドロシリル基との反応を阻害することで未反応のヒドロシリル基が残存し、この未反応のヒドロシリル基が糊残りを生じさせる。しかしながら、本発明においては、シリコーン吸着層は、(c)成分を含みながらも優れた糊残り抑制性を奏する。
【0047】
非反応性MQレジンを構成するM単位において、R3は、同じ又は異なっていてよい、炭素数1~10の非置換又は置換の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられ、好ましくはアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基が挙げられる。
【0048】
非反応性MQレジンにおいて、Q単位に対するM単位のモル比(M単位/Q単位)としては、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる観点から、0.6以上が挙げられ、糊残り抑制性を向上させる観点から、1.8以下が挙げられる。
【0049】
これらの非反応性MQレジンは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
非反応性MQレジンの重量平均分子量(Mw)としては、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる観点から、例えば100,000以上、好ましくは150,000以上、より好ましくは170,000以上が挙げられ、シリコーン吸着層の塑性変形を防止する観点から、例えば300,000以下、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下が挙げられる。
【0051】
架橋性組成物中、(c)成分の含有量としては、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部当たり、43~100重量部が挙げられる。(c)成分の含有量が43重量部以上であることは、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる観点から好ましく、100重量部以下であることは、糊残り抑制性を向上させる観点から好ましい。これらの効果をより一層好ましく得る観点、又は更に易剥離性を向上させる観点から、好ましくは61~100重量部、より好ましくは78~100重量部、さらに好ましくは90~100重量部が挙げられる。
【0052】
((d)反応性MQレジン)
(d)成分である反応性MQレジンは、M単位及びQ単位からなり、分子内にシラノール基を有するMQレジンである。架橋性組成物に(d)成分を配合することで、架橋性組成物の硬化時において(c)成分の存在により残存させられる未反応のヒドロシリル基が(d)成分のシラノール基と反応することで減少するため、(c)成分によって向上したシリコーン吸着層の吸着力を低下させることなく、糊残りを防止することができる。また、(d)成分は、(c)成分ほどではないものの、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる効果も奏する。
【0053】
反応性MQレジンは、M1単位((OH)cR4
(3-c)SiO1/2)及び場合によりM2単位(R5
3SiO1/2)とQ単位(SiO4・1/2)とからなるシリコーン樹脂である。M1単位において、R4は、同じ又は異なっていてよい、炭素数1~10の非置換又は置換の炭化水素基であり、M2単位において、R5は、同じ又は異なっていてよい、炭素数1~10の非置換又は置換の炭化水素基であり、R4及びR5の具体例としては、いずれも、(c)成分である非反応性レジンにおけるR3として例示したものが挙げられる。また、cは、1~3の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0054】
反応性MQレジンにおいて、M1単位のOH基及びR4基とM2単位のR5基との総量当たりのOH基の割合としては、糊残り防止効果をより一層好ましく得る観点から、0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上が挙げられ、シリコーン吸着層の吸着性を一層好ましく得る観点から、10モル%以下、好ましくは5モル%以下が挙げられる。
【0055】
反応性MQレジンにおいて、Q単位に対するM1単位及びM2単位の総量モル比((M1単位+M2単位)/Q単位)としては、糊残り防止効果をより一層好ましく得る観点から、0.5以上、好ましくは0.6以上が挙げられ、シリコーン吸着層の吸着性を一層好ましく得る観点から、1.2以下、好ましくは0.9以下が挙げられる。
【0056】
これらの反応性MQレジンは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
反応性MQレジンの重量平均分子量(Mw)としては、吸着性と糊残り抑制性とを好ましく得る観点から、例えば100~30,000、好ましくは3,000~20,000、より好ましくは6,000~10,000が挙げられる。
【0058】
架橋性組成物中、(d)成分の含有量としては、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部当たり、1.1~10.6重量部が挙げられる。(d)成分の含有量が1.1重量部以上であることは、糊残り抑制性を向上させる観点から好ましく、10.6重量部以下であることは、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる観点から好ましい。
【0059】
また、架橋性組成物中、(c)成分100重量部当たりの(d)成分の含有量としては、糊残り抑制性を向上させる観点から1重量部以上が挙げられ、シリコーン吸着層の吸着性を向上させる観点から11重量部以下が挙げられる。これらの効果をより一層好ましく得る観点から、(c)成分100重量部当たりの(d)成分の含有量としては、好ましくは1~2重量部又は8~11重量部が挙げられ、より好ましくは1~1.5重量部又は9~11重量部が挙げられる。
【0060】
(他の成分)
架橋性組成物には、上記(a)成分~(d)成分の他、必要に応じて、付加反応用触媒、溶剤等が含まれていてもよい。
【0061】
付加反応用触媒としては、白金系触媒が挙げられる。白金系触媒の具体例としては、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸等の塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩等が挙げられる。これらの付加反応用触媒は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。付加反応用触媒の使用量としては、(a)成分及び(b)成分の総量100重量部当たり、例えば1.5~2.5重量部が挙げられる。
【0062】
溶剤は、架橋性組成物の粘度調節などの観点で用いることができ、具体例として、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。溶剤の使用量としては、架橋性組成物中、例えば25~45重量%、好ましくは30~45重量%が挙げられる。なお、架橋性組成物は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型のいずれであってもよいため、無溶剤であってもよい。
【0063】
(厚み)
シリコーン吸着層の厚みは、被着体に対するシリコーン吸着層の密着面方向の剪断力を確保できる厚みを、当業者が適宜設定することができる。また、シリコーン吸着層の厚みは、10μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。吸着性を向上させる観点からは10μm以上が好ましく、糊残り抑制性を向上させる観点からは100μm以下が好ましい。
【0064】
(形成方法)
シリコーン吸着層は、前記基材を構成する基材フィルム上に、上記の架橋性組成物の塗布層を形成し、架橋反応を行うことにより形成することができる。
【0065】
架橋性組成物の塗工方法としては、ロールコーター、バーコーター、フローティングナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ブレードコーター等が挙げられる。
【0066】
架橋反応条件としては、(a)成分と(b)成分とを付加反応により熱架橋できる条件であれば特に限定されず、例えば、160℃以下の熱架橋条件が挙げられ、好ましくは100~160℃、より好ましくは130~150℃が挙げられる。
【0067】
本発明のシリコーン吸着層の剥離力は、350mN/25mm以上7500mN/25mm以下であることが好ましい。剥離力を350mN/25mm以上とすることにより、シリコーン吸着層を、研磨パッドの定盤との接合に使用した際に、研磨作業を高速化しても、研磨パッドの部分的な剥離が生じることのない性能と、定盤に糊残りすることなくシリコーン吸着層を剥離することができる性能を両立することができる。一方、研磨パッドの部分的な剥離を防止するためには、シリコーン吸着層の剥離力は、7500mN/25mmで十分であり、7500mN/25mmを超えると、研磨パッドを剥離交換し難くなる。
【0068】
ここで規定するシリコーン吸着層の剥離力は、対ステンレス鋼板剥離力であり、下記に示す方法で測定することができる。
【0069】
(対ステンレス鋼板剥離力)
厚み100μmのポリエステルフィルム上に前記シリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムを長さ100mm幅25mmにカットし、前記シリコーン吸着フィルムの前記シリコーン吸着層を厚み2mmのステンレス鋼板(JISG4305に規定するSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)の鋼板を使用し、表面粗さは、JIS B0601に規定するRa:50±25nmのものとする)に2kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で約24時間放置する。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで前記シリコーン吸着フィルムの長手方向に、前記シリコーン吸着フィルムを前記ステンレス鋼板から剥離させて対ステンレス鋼板剥離力(mN/25mm)を測定する。
【0070】
(セパレータ)
本発明では、シリコーン吸着層を保護するために、シリコーン吸着層を覆うセパレータを設ける。セパレータは、シリコーン吸着層の表面の汚れや異物付着を防ぐためや、シリコーン吸着フィルムのハンドリングを向上させるための樹脂フィルム製のセパレータである。セパレータは、シリコーン吸着層の表面に貼り合わされて使用される。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ポリプロピレン等よりなる剥離性の高い樹脂フィルムよりなる。本発明では、シリコーン吸着層を覆う表面に弗素系離型剤を塗工して、離型層を形成したものを使用する。離型層に弗素系離型剤を使用することにより、シリコーン吸着層の吸着力を大きくしても、従来のシリコーン吸着フィルムに比べ、容易にセパレータを剥がすことができ、セパレータ離型層のシリコーン吸着層への転写も防止することができる。
【0071】
(弗素系離型剤)
セパレータに使用する弗素系離型剤としては、任意の弗素系離型剤を使用することができる。弗素系離型剤としては、弗素系樹脂、弗素系オイル、弗素系界面活性剤が挙げられるが、貼り合わせたシリコーン吸着層へ移行がなく、シリコーン吸着層の吸着力を低下させないという点においては、これらの中でも弗素系樹脂が好ましい。上記弗素系樹脂としては、フルオロ基、パーフルオロ基、フルオロアルキル基、又はパーフルオロアルキル基を有するシリコーン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリレート、オレフィン等が挙げられる。これらは、市販されたものを用いてもよい。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
基材への密着性を考慮すると、弗素系離型剤としての弗素系樹脂の中でも、下記一般式(化3)で表せられるフルオロオレフィン、下記一般式(化4)で表せられるシクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、下記一般式(化5)で表せられる水酸基含有ビニルエーテルからなる含弗素系共重合体とイソシアネート基を2以上有する架橋剤との反応生成物を用いることが好ましい。セパレータの離型剤として、前記反応生成物を用いることにより、シリコーン吸着層の吸着力を従来に比べて大きな7500mN/25mm程度にしても、セパレータを剥がす際にシリコーン吸着層からセパレータを容易に剥がすことができる。
【0073】
前記含弗素系共重合体を構成する各成分の好ましい共重合割合はフルオロオレフィンが40モル%~90モル%であり、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルが1モル%~30モル%であり、水酸基含有ビニルエーテルが1モル%~30モル%である。前記含弗素系共重合体のフルオロオレフィンの共重合割合が40モル%未満になると、セパレータを剥がす際にシリコーン吸着層がセパレータから剥がれ難くなるおそれがある。一方、前記含弗素系共重合体のフルオロオレフィンの共重合割合が90モル%を超えると、弗素系離型剤の基材密着力が低下し、弗素系離型剤が基材から剥離しやすくなる。シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルの共重合割合が1モル%より少ないと、樹脂溶液としたときの保存安定性が低下して好ましくなく、30モル%より多い場合には重合時における重合速度が低下して好ましくない。水酸基含有ビニルエーテルの共重合割合が1モル%より少ないと、硬化反応が起こりにくくなり、30モル%より多い場合には共重合反応が困難となる。
【0074】
イソシアネート基を2以上有する架橋剤としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のジイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等のトリイソシアネート、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネート等が挙げられる。
【0075】
フルオロオレフィンとしては、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
シクロヘキシル基含有アクリル酸エステルの具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等を挙げることが出来るが、シクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。
【0077】
水酸基含有ビニルエーテルの具体例としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられるが、特にヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルが好適である。これらの水酸基含有ビニルエーテルはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
【0079】
(式中、XはF又はH、YはH、Cl、F、CF3
のいずれかである。)
【0080】
【0081】
(式中、R1は水素又はメチル基である。)
【0082】
【0083】
(式中、R2は炭素数2~5のアルキレン基、又はシクロヘキシレン基である。)
【0084】
セパレータ離型層用塗液は、含弗素共重合体とイソシアネート基を2以上有する架橋剤、有機溶剤とから調整することができる。塗液に用いる溶剤としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、n-ブタノール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、市販の各種シンナー類等が挙げられる。
【0085】
セパレータ離型層の塗工方法としては、ロールコーター、バーコーター、フローティングナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ブレードコーター等が挙げられる。
【0086】
セパレータ離型層の乾燥後の塗工厚みは、0.1~1.5μmが好ましく、より好ましくは0.1~1.0μmである。塗工厚みが0.1μm未満の場合には弗素が本来持つ良好な剥離強度が得られにくく、塗工厚みを1.5μmより厚くしてもそれ以上の性能の向上はなく、コストアップとなり好ましくない。
【0087】
セパレータのシリコーン吸着フィルムからの剥離力、すなわちセパレータ離型層のシリコーン吸着層からの剥離力は、10mN以上1000mN以下が好ましく、より好ましくは20mN以上800mN以下である。セパレータのシリコーン吸着フィルムからの剥離力が10mN未満になると、セパレータがはがれ易く、使用者が意図しないときにセパレータが剥がれて、シリコーン吸着層を傷つけるおそれがある。一方セパレータのシリコーン吸着フィルムからの剥離力が1000mNを超えると、セパレータをシリコーン吸着層フィルムから剥がすときに、シリコーン吸着層がセパレータ側に転写されるおそれがある。
【0088】
(セパレータの剥離力)
ここで規定するセパレータのシリコーン吸着フィルムからの剥離力(以下、セパレータの剥離力と言う)は、以下に示す方法で測定することができる。
【0089】
厚み100μmのポリエステルフィルム上にシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルム上に、セパレータ離型層面を貼りあわせた評価用試料を準備する。評価用試料のセパレータを貼り合わせた状態のままで、長さ100mm幅25mmにカットし、2kgのローラーを1往復させる方式で、シリコーン吸着層とセパレータの離型層を圧着し、圧着後室温で約24時間放置する。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで評価用試料の長手方向に、前記シリコーン吸着層からセパレータを剥離させて、セパレータの剥離力を測定する。
【0090】
本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムは、シリコーン吸着層を積層した基材のもう一方の面に粘着剤層を積層することが好ましい。粘着剤層を介して本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムと研磨パッドを貼り合わせることにより、シリコーン吸着フィルムが強固に接合された研磨パッドを作製することができる。また、このようにして作製したシリコーン吸着フィルム付研磨パッドのシリコーン吸着層を研磨装置の定盤と貼り合わせることによって、研磨パッドを研磨装置に装着することができる。
【0091】
(粘着剤層)
粘着剤層は、研磨部材(研磨パッド)を接着して固定する目的で設けられる。
【0092】
粘着剤層の材料としては、(メタ)アクリル系樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを含む粘着剤組成物が挙げられる。
【0093】
(メタ)アクリル系樹脂としては、水酸基を有しないアルキル(メタ)アクリレート及び水酸基を有するモノマーの共重合物が挙げられる。
【0094】
水酸基を有しないアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基としては、炭素数1~18、好ましくは1~8、より好ましくは1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、水酸基を有しないアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0095】
水酸基を有するモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びそれ以外の他の水酸基を有するモノマーが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基としては、炭素数1~18、好ましくは1~8、より好ましくは1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基が挙げられ、水酸基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートに代表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。他の水酸基を有するモノマーとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0096】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、例えば100,000~1,000,000、好ましくは300,000~800,000、より好ましくは400,000~600,000が挙げられる。
【0097】
イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等のトリイソシアネート、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネート等が挙げられる。
【0098】
粘着剤層の厚みとしては、例えば30~150μm、好ましくは40~80μmが挙げ得られる。
【0099】
粘着剤層の積層方法においては、シリコーン吸着層を積層した基材上に粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて塗布層を形成してもよいし、基材及びシリコーン吸着層のシリコーン吸着積層物を用意し、別途、カバーフィルムを用意し、カバーフィルムの離型層上に粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて塗布層を形成し、当該塗布層に、シリコーン吸着積層物の基材側を対向させて積層してもよい。
【0100】
前記粘着剤の希釈剤としては一般的な有機溶剤を特に制限無く用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明の粘着剤層のコーティング法としては、溶剤型、無溶剤型いずれもコンマナイフコーター、ダイコーター、リーバースコーターなどが挙げられる。無溶剤型ならば押出法、カレンダー法でも構わないが、気泡混入防止の点からからダイコーターが好適である。
【0102】
(カバーフィルム)
本発明の粘着剤層面には、ポリエステル系樹脂フィルムをカバーフィルムとして貼り合わせることが好ましい。カバーフィルムとして使用されるポリエステル系樹脂フィルムとしては、寸法安定性、透明性、硬さの点で、二軸延伸ポリエステル系フィルムの使用が好ましい。カバーフィルムとなるポリエステル系樹脂フィルムの厚みは10~200μmの範囲、硬さと断裁加工性から25~100μmの範囲のものが好ましい。カバーフィルムの厚みが10μmより薄いとフィルム強度が不足し、カバーフィルム剥離時に破れ易くなり、アクリル粘着剤層に貼り合わせる際に、シワが入り易い。また、カバーフィルムの厚みが200μmより厚いと、フィルム自体が高価になる。
【0103】
また、本発明のセパレータ付シリコーン吸着フィルムを研磨パッドに粘着剤層を介して貼着する場合には、カバーフィルムを剥離して使用するものであり、粘着剤層からカバーフィルムを剥離する際の剥離力を調整するために、カバーフィルムの粘着剤層貼合面に、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等を塗布して離型層を形成しておくことが好ましい。カバーフィルムの離型層の厚みとしては、0.05~0.5μmが好ましく、より好ましくは、0.1~0.3μmである。
【0104】
(使用方法)
本発明のシリコーン吸着フィルムは、研磨装置の定盤と研磨部材(研磨パッド)の間に介在させることで研磨パッドを固定するために用いられる。研磨部材の研磨対象としては、半導体部品及び電子部品の製造工程で研磨される、半導体ウェーハ、ハードディスク用基板、及びディスプレイ用ガラス基板等の基板表面が挙げられる。本発明のシリコーン吸着フィルムは吸着性に優れているため、高速研磨を行う場合に特に好ましく用いられる。高速研磨の程度としては、研磨部材が固定された研磨定盤の回転数として、例えば80~100rpm、好ましくは85~95rpmが挙げられ、研磨対象が固定されたヘッドの回転数として、例えば80~100rpm、好ましくは85~95rpmが挙げられる。研磨部材が固定された研磨定盤と、研磨対象が固定されたヘッドとは、同じ方向に回転させる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。また、重量平均分子量は、Waters社製GPC測定機(型番:Waters410)を用いて測定して算出した、ポリスチレン換算値である。
【0106】
1.シリコーン吸着フィルムの材料
1-1.基材
両面がプラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。このポリエチレンテレフタレートフィルムの表面抵抗率は5.1×1011Ω/□であった。
【0107】
1-2.シリコーン吸着層用架橋性組成物
表1に示す組成のシリコーン吸着層用架橋性組成物を調製した。なお、(a)成分である「架橋性オルガノポリシロキサン」としては、重量平均分子量77,844の1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンを用い、(b)成分である「架橋剤」としては、重量平均分子量1,240のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用い、(c)成分である「非反応性MQレジン」としては、重量平均分子量175,000の非反応性MQレジンを用い、(d)成分である「反応性MQレジン」としては、重量平均分子量6,610の反応性MQレジンを用い、溶剤としてはトルエンを用い、白金触媒としてはCAT.PL-56を用いた。
【0108】
1-3.アンカー層用樹脂組成物
以下の組成のアンカー層用樹脂組成物を調製した。
・アクリルポリオール樹脂 20部
(東レファインケミカル製、コータックス(登録商標)LH455、固形分50%)
・ポリチオフェン 27部
(信越ポリマー製、セプルジーダ(登録商標)OC-SC100、固形分3%)
・MEK 40部
・トルエン 13部
【0109】
1-4.粘着剤組成物
以下の組成の粘着剤組成物を調製した。
・アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ブチル共重合物、重量平均分子量Mw:約500,000、固形分37%)
・ヘキサメチレンジイソシアネート 0.05部
(固形分37.5%)
【0110】
2.セパレータの材料
2-1.基材
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0111】
2-2.離型層用樹脂組成物
表2に示す各組成の離型層用樹脂組成物を調製した。
【0112】
3.カバーフィルムの材料
3-1.基材
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0113】
3-2.離型層用樹脂組成物
表2に示すシリコーン系離型剤(セパレータC用)を用いた。
【0114】
4.セパレータの作製
基材用のフィルム(セパレータの材料)の片面に、表2に示す各離型層用樹脂組成物(セパレータの材料)を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工した後、ドライヤー温度にて150℃、滞留時間100秒で架橋させて0.15μmの離型層を形成し、セパレータA、B及びCを作製した。
【0115】
5.カバーフィルムの作製
基材用のフィルム(カバーフィルムの材料)の片面にシリコーン系離型剤を塗布して0.15μmの離型層を形成し、カバーフィルムを作製した。
【0116】
6.シリコーン吸着フィルムの作製
(実施例4)
基材用のフィルム(シリコーン吸着フィルムの材料)の片面に直接、表1の実施例4に示すシリコーン吸着層用架橋性組成物を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、表1の実施例4に示す厚みのシリコーン吸着層を形成した。これによって、基材に直接シリコーン吸着層が積層されたシリコーン吸着フィルムを作製した。
【0117】
シリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層面に、表1の実施例4に示すセパレータの離型層面を対向させた状態で、2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら貼り合わせた。これによって、セパレータ付シリコーン吸着フィルムを得た。
【0118】
カバーフィルムの離型層上に粘着剤組成物をダイコーターで塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、50μm厚みの粘着剤層を形成した。
【0119】
セパレータ付シリコーン吸着フィルムの基材面に、カバーフィルム上に形成した粘着剤層を対向させた状態で、2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら貼り合わせた。これによって、粘着剤層が更に積層された構成のシリコーン吸着フィルムを得た。このシリコーン吸着フィルムは、シリコーン吸着層側にセパレータが積層され、粘着剤層側にカバーフィルムが積層された態様である。
【0120】
(実施例1~3及び5~7、並びに比較例1~4)
基材用のフィルム(シリコーン吸着フィルムの材料)の片面に、アンカー層用樹脂組成物をグラビアコーターで塗工、乾燥して、厚み2μmのアンカー層を形成した。形成されたアンカー層上に、表1に示す各実施例、各比較例のシリコーン吸着層用架橋性組成物を23℃50%RHの環境下でダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、表1に示す厚みのシリコーン吸着層を形成した。これによって、基材にアンカー層を介してシリコーン吸着層が積層されたシリコーン吸着フィルムを作製した。
【0121】
シリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層面に、表1の各実施例、各比較例に示すセパレータの離型層面を対向させた状態で、2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら貼り合わせた。これによって、セパレータ付シリコーン吸着フィルムを得た。
【0122】
カバーフィルムの離型層上に粘着剤組成物をダイコーターで塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、50μm厚みの粘着剤層を形成した。
【0123】
セパレータ付シリコーン吸着フィルムの基材面に、カバーフィルム上に形成した粘着剤層を対向させた状態で、2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら貼り合わせた。これによって、粘着剤層がシリコーン吸着フィルムに更に積層された構成のシリコーン吸着フィルムを得た。このシリコーン吸着フィルムは、シリコーン吸着層側にセパレータが積層され、粘着剤層側にカバーフィルムが積層された態様である。
【0124】
7.シリコーン吸着フィルムの評価
7-1.吸着性
カバーフィルムを剥離してシリコーン吸着フィルムの粘着剤層を露出させ、セパレータを剥離してシリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層を露出させ、粘着剤層側が研磨パッドPに、シリコーン吸着層側が研磨装置の定盤Sに対向するように、研磨パッドと研磨装置の定盤との間にシリコーン吸着フィルムを介在させ、研磨装置の定盤に研磨パッドを固定した。
【0125】
上記のように研磨パッドを固定した研磨装置を用いて、10枚の被研磨物の高速研磨を行った。研磨条件は以下のとおりである。
研磨装置:荏原製作所製 FREX 300E
研磨パッド:IC1000/SUBA400(ニッタハース社製)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
研磨定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:91rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物:シリカスラリー 5%水溶液
被研磨物:シリコンウェーハ(φ300mm)
研磨用組成物供給量:300ml/分
研磨時間:10分
【0126】
研磨後、研磨パッドの固定に用いたシリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層の剥離の如何を目視で確認し、以下の基準に基づいて吸着性を評価した。結果を表1に示す。
◎:シリコーン吸着層の剥離がなく、高速研磨に適した優れた吸着性を有する
○:シリコーン吸着層の端部に若干の剥離はあるが、高速研磨の実用上問題ない
×:シリコーン吸着層が剥離し、高速研磨の実用に耐えない
【0127】
7-2.糊残り抑制性
セパレータ付シリコーン吸着フィルムを、長さ100mm×幅25mmの形状にカットし評価用試料とした。23℃50%RH環境下にて前記試料からセパレータを剥がし、露出したシリコーン吸着層の表面を、研磨したステンレス鋼板(JISG4305に規定するSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)の鋼板を使用し、表面粗さは、JIS B0601に規定するRa:50±25nmのものとする)に貼り付け、2kgローラーを1往復させて圧着し、23℃雰囲気下で24時間放置した。次に、引張試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで剥離し、SUS板表面の汚染(糊残り)の如何を目視し、下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
◎:SUS板に糊残りが全く確認できず、極めて優れたリワーク性を奏する
○:SUS板への糊残りはわずかであり、リワーク性自体は良好で実用上問題ない
×:SUS板に顕著な糊残りがあり、実用に耐えない
【0128】
7-3.対ステンレス鋼板剥離力
厚み100μmのポリエステルフィルム上に、上記のアンカー層を介して、表1に示す各実施例、各比較例のシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムを作製し、このシリコーン吸着フィルムを長さ100mm×幅25mmの形状にカットし評価用試料とした。評価用試料のシリコーン吸着層を、厚み2mmの研磨したステンレス鋼板(JISG4305に規定するSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)の鋼板を使用し、表面粗さは、JIS B0601に規定するRa:50±25nmのものとする)に貼り付け、2kgローラーを1往復させて圧着し、23℃雰囲気下で24時間放置した。次に、引張試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度1200mm/minで剥離し、対ステンレス鋼板剥離力(mN/25mm)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0129】
7-4.セパレータの剥離力とセパレータの剥離性能評価
厚み100μmのポリエステルフィルム上に各実施例、各比較例で使用したアンカー層を介して、各実施例、各比較例のシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルム上に、各実施例、各比較例のセパレータ離型層面を貼り合わせた各評価用試料を準備した。各評価用試料のセパレータを貼り合わせた状態のままで、長さ100mm幅25mmにカットし、2kgのローラーを1往復させる方式で、シリコーン吸着層とセパレータの離型層を圧着し、圧着後室温で約24時間放置した。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで評価用試料の長手方向に、前記シリコーン吸着層からセパレータを剥離させて、シリコーン吸着層からセパレータが剥離可能かを確認した(剥離性能評価)。また同時に、シリコーン吸着層からのセパレータの剥離力を測定した。評価結果を表1に示す。シリコーン吸着層からのセパレータ剥離の可否(セパレータの剥離性能)については、下記評価基準で評価した。
○:問題なく剥離可能。
×:シリコーン吸着層がセパレータ側に取られる。
××:シリコーン吸着層とセパレータが固着して、セパレータが剥がれない。
【0130】
7-5.セパレータ離型層のセパレータ基材への密着性評価
セパレータA、B、Cに離型層を塗工後、23度℃雰囲気下で24時間放置した後、指で表面をこすり、離型層脱落の有無を下記評価基準に基づいて目視確認した。評価結果を表3に示す。
◎:指こすりで脱落しない。
○:指こすりで一部脱落するが、使用可能
×:指こすりで容易に脱落し、使用できない
【0131】
7-6.セパレータ剥離後の対ステンレス鋼板剥離力
厚み100μmのポリエステルフィルム上に、上記のアンカー層を介して、表1に示す各実施例、各比較例のシリコーン吸着層を積層したシリコーン吸着フィルムを作製し、次に、各シリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層面に、表1の各実施例、各比較例に示すセパレータの離型層面を対向させた状態で、2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら貼り合わせた。これによって、セパレータ付シリコーン吸着フィルムを作製した。この各セパレータ付シリコーン吸着フィルムのセパレータを貼り合わせた状態のままで、長さ100mm×幅25mmにカットし、2kgのローラーを1往復させる方式で、シリコーン吸着層とセパレータの離型層を圧着し、圧着後室温で約24時間放置した。次に、引張試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minでシリコーン吸着フィルムの長手方向に、各セパレータ付シリコーン吸着フィルムのシリコーン吸着層からセパレータを剥離させた後、各シリコーン吸着層を、厚み2mmの研磨したステンレス鋼板(JISG4305に規定するSUS304鋼板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)の鋼板を使用し、表面粗さは、JIS B0601に規定するRa:50±25nmのものとする)に貼り付け、2kgローラーを1往復させて圧着し、23℃雰囲気下で24時間放置した。次に、引張試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度1200mm/minでシリコーン吸着フィルムの長手方向に、シリコーン吸着フィルムを剥離し、セパレータ剥離後の対ステンレス鋼板剥離力(mN/25mm)を測定した。測定結果を表1に示す。
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