(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】運転シミュレータプログラム、運転シミュレータ方法及び運転シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 9/05 20060101AFI20240123BHJP
G09B 9/04 20060101ALI20240123BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G09B9/05 F
G09B9/04 A
G09B19/00 H
(21)【出願番号】P 2020095024
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和1年10月12日に日刊自動車新聞社発行の 日刊自動車新聞 令和1年10月12日付朝刊,第4面にて発表。 (2)令和1年10月16日に https://www.sompo-japan.co.jp/▲~▼/media/SJNK/files/news/2019/20191016_1.pdfにて発表。 (3)令和1年10月16日に https://www2.sls-net.co.jp/news及び https://www.slds.jp/slds-sj/index.htmlにて発表。 (4)令和1年10月17日に https://sega.jp/topics/191017_4/にて発表。 (5)令和1年11月6日に保険毎日新聞社発行の 保険毎日新聞 令和1年11月6日付朝刊,第6面にて発表。 (6)令和1年11月27日に綜合ユニコム株式会社発行の 月刊シニアビジネスマーケット2019年12月号にて発表。 (7)令和2年2月1日に https://www.segasammy.co.jp/japanese/etc/report/202001/にて発表。 (8)令和2年1月30日に ドライビングアナライザ体験会にて発表。 (9)令和2年3月23日に 損害保険ジャパン日本興亜株式会社、ネッツトヨタ愛知株式会社及びスズキ自販佐賀にて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】000132471
【氏名又は名称】株式会社セガ
(73)【特許権者】
【識別番号】520191743
【氏名又は名称】朝田 隆
(73)【特許権者】
【識別番号】520191754
【氏名又は名称】堀川 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】岩城 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】高濱 誠
(72)【発明者】
【氏名】朝田 隆
(72)【発明者】
【氏名】堀川 悦夫
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292908(JP,A)
【文献】特開2010-175904(JP,A)
【文献】特開2018-45066(JP,A)
【文献】特開2019-171022(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0128919(KR,A)
【文献】「SDLアプリコンテスト2019 グランプリ「優良ドライバーチェッカー」」,YouTube[online][video],2019年11月25日,[2023年12月12日検索], <https://www.youtube.com/watch?v=BJ9Msgxcg0Q>,1:53-2:25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
17/00-19/26
A63F 13/00-13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに運転シミュレータの処理を実行させる運転シミュレータプログラムであって、
前記運転シミュレータの処理は、
運転手が視聴する運転状況の動画内に認知機能検査の画像が表示され、運転シミュレーション後に前記画像について検査が行われることを、運転手に事前に告知し、
運転手の運転操作に基づいて前記運転状況を更新して前記動画を生成しながら、前記認知機能検査の画像を前記動画内に含める運転シミュレーションを実行し、
前記運転シミュレーション後に、前記認知機能検査を実施し、
前記認知機能検査の評価結果と運転技能の評価結果とを出力する
ことを有し、
前記認知機能検査の画像は、前記動画内に現れるオブジェクトであり、
前記認知機能検査は、前記オブジェクトの属性についての前記運転手の記憶力を評価する検査である、運転シミュレータプログラム。
【請求項2】
前記オブジェクトは、動物、仮想の動物、仮想のキャラクタのいずれかであり、
前記オブジェクトの属性は、前記オブジェクトの形状、模様、色彩、及びそれらの結合のいずれかである、請求項1に記載の運転シミュレータプログラム。
【請求項3】
前記評価結果は、前記認知機能検査で評価された前記記憶力のレベルと、前記運転状況において要求される複数の運転技能のレベルとを含み、更に、前記複数の運転技能に対応する心理学用語を前記運転技能に関連付けて前記運転手に示す、請求項1に記載の運転シミュレータプログラム。
【請求項4】
前記運転シミュレータの処理は、更に、
前記運転技能の評価結果を出力するときに、前記評価結果で低下した運転技能に対応する前記心理学用語の認知機能向上トレーニングの実行を前記運転手に推奨することを有する、請求項3に記載の運転シミュレータプログラム。
【請求項5】
前記運転シミュレータの処理は、更に、
運転状況の動画を生成中に所定の運転操作を指示する運転操作指示画像を前記動画内に複数回含め、
前記運転操作指示画像に応答して前記運転手が行った前記運転操作指示画像に対する運転操作の反応時間を評価し、
前記運転操作の評価結果を出力することを有し、
前記動画内に、前記運転操作指示画像を表示の順に並べて表示するとともに、残りの表示回数を表示する、請求項1に記載の運転シミュレータプログラム。
【請求項6】
前記運転操作の評価結果の出力は、前記運転操作指示画像を表示の順に並べて表示し、前記運転操作指示画像に対応付けて前記運転操作の正誤を表示する、請求項5に記載の運転シミュレータプログラム。
【請求項7】
運転手が視聴する運転状況の動画内に認知機能検査の画像が表示され、運転シミュレーション後に前記画像について検査が行われることを、運転手に事前に告知し、
運転手の運転操作に基づいて前記運転状況を更新して前記動画を生成しながら、前記認知機能検査の画像を前記動画内に含める運転シミュレーションを実行し、
前記運転シミュレーション後に、前記認知機能検査を実施し、
前記認知機能検査の評価結果と運転技能の評価結果とを出力する
ことを有し、
前記認知機能検査の画像は、前記動画内に現れるオブジェクトであり、
前記認知機能検査は、前記オブジェクトの属性についての前記運転手の記憶力を評価する検査である、運転シミュレータ方法。
【請求項8】
プロセッサと、
前記プロセッサがアクセスするメモリとを有し、
前記プロセッサは、
運転手が視聴する運転状況の動画内に認知機能検査の画像が表示され、運転シミュレーション後に前記画像について検査が行われることを、運転手に事前に告知し、
運転手の運転操作に基づいて前記運転状況を更新して前記動画を生成しながら、前記認知機能検査の画像を前記動画内に含める運転シミュレーションを実行し、
前記運転シミュレーション後に、前記認知機能検査を実施し、
前記認知機能検査の評価結果と運転技能の評価結果とを出力し、
前記認知機能検査の画像は、前記動画内に現れるオブジェクトであり、
前記認知機能検査は、前記オブジェクトの属性についての前記運転手の記憶力を評価する検査である、運転シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転シミュレータプログラム、運転シミュレータ方法及び運転シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
運転シミュレータは、運転手が視聴する運転状況の動画を生成し、動画を視聴する運転手によるハンドル、アクセル、ブレーキ等の運転操作手段の操作に基づいて運転状況を更新する。運転シミュレータは、運転手に実際の車を運転させず、模擬的に生成された運転状況下で運転操作手段を模擬的に操作させる。運転シミュレータは、交差点での右折、左折などの基本的な運転操作が必要な運転状況や、事故が発生しやすい運転状況を生成し、それぞれの運転状況で運転手が行う運転操作に基づいて更新される運転状況に基づき、運転技能が適正か否かを評価し、運転技能の向上に寄与する。運転シミュレータについては、以下の特許文献に記載される。
【0003】
一方、近年、認知機能が低下する認知症は、高齢者から若年層までその症状があらわれ、認知機能の低下が運転技能の低下につながる場合がある。特に高齢者の事故発生件数の増大に伴い、高齢者ドライバーには運転免許証の更新時に認知機能検査の受講が義務付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-148952号公報
【文献】特開2009-237104号公報
【文献】特開2015-45826号公報
【文献】特開2018-45066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、医学的には、認知機能の低下と運動機能の低下の間には相関関係は見当たらず、認知機能が低下していても運転技能は低下していない事例や、逆に、認知機能が低下していないのに運転技能が低下している事例が見受けられる。そして、運転技能の低下は生活の質の低下を招くので、運転技能の低下を防止することが求められている。
【0006】
そこで、本実施の形態の第1の側面の目的は、認知課題の下で運転技能検査を行うと共に認知機能検査を行う運転シミュレータプログラム、運転シミュレータ方法及び運転シミュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の第1の側面は、コンピュータに運転シミュレータの処理を実行させる運転シミュレータプログラムであって、
前記運転シミュレータの処理は、
運転手が視聴する運転状況の動画内に認知機能検査の画像が表示され、運転シミュレーション後に前記画像について検査が行われることを、運転手に事前に告知し、
運転手の運転操作に基づいて前記運転状況を更新して前記動画を生成しながら、前記認知機能検査の画像を前記動画内に含める運転シミュレーションを実行し、
前記運転シミュレーション後に、前記認知機能検査を実施し、
前記認知機能検査の評価結果と運転技能の評価結果とを出力する
ことを有し、
前記認知機能検査の画像は、前記動画内に現れるオブジェクトであり、
前記認知機能検査は、前記オブジェクトの属性についての前記運転手の記憶力を評価する検査である、運転シミュレータプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
第1の側面によれば、認知課題の下で運転技能検査を行い同時に認知機能検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態における運転シミュレータの構成例を示す図である。
【
図2】運転シミュレータプログラムの処理の概略を示すフローチャート図である。
【
図3】認知課題付き運転訓練プログラムの処理を示すフローチャート図である。
【
図4】運転適性検査プログラムの処理を示すフローチャート図である。
【
図5】認知課題付き運転訓練の開始画面例を示す図である。
【
図8】運転訓練中の運転状況の動画の一つの画面例を示す図である。
【
図9】事故が発生しやすい場面の動画の画面例を示す図である。
【
図10】認知課題である記憶力の検査を行う画面の一例を示す図である。
【
図11】認知課題付き運転訓練での認知機能及び運転訓練評価の出力例1を示す図である。
【
図12】運転適性検査の開始画面の一例を示す図である。
【
図13】運転適性検査(1)の画面の一例を示す図である。
【
図14】運転適性検査(1)の検査結果の画面の一例を示す図である。
【
図15】運転適性検査(2)の画面の一例を示す図である。
【
図16】運転適性検査(2)の検査結果の画面の一例を示す図である。
【
図17】運転適正検査での評価結果の出力例1を示す図である。
【
図18】運転シミュレータによる認知課題付き運転訓練をPDCAサイクルに組み込んだ運転技能改善サイクルの一例を示す図である。
【
図19】認知課題付き運転訓練での認知機能及び運転訓練評価の出力例2を示す図である。
【
図20】運転適正検査での評価結果の出力例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施の形態における運転シミュレータの構成例を示す図である。運転シミュレータ1は、中央処理装置であるプロセッサ10と、プロセッサがアクセスするメインメモリ12と、外部のネットワークNWとのインターフェース14と、内部のバス16と、大容量のストレージ20を有する情報処理装置である。ストレージ20には、運転シミュレータのメインプログラム22と、認知課題付き運転訓練プログラム24及び運転適性検査プログラム26などのサブプログラムと、運転シミュレータで運転した運転手の評価結果の履歴データ28が記憶される。プロセッサは、運転シミュレータのメインプログラム22と認知課題付き運転訓練プログラム24と運転適性検査プログラム26を、メインメモリ12に展開し、実行する。
【0011】
運転シミュレータ1は、運転シミュレータ端末30、32からネットワークNWを介してアクセスされる。運転シミュレータ1は、運転シミュレータ端末からの運転訓練要求に応答して、運転シミュレータのメインプログラム22と、認知課題付き運転訓練プログラム24と、運転適性検査プログラム26を順番に実行する。運転シミュレータ端末には、模擬運転席と、模擬ハンドルと、模擬ブレーキと、模擬アクセルが配置される。模擬運転席に座った運転手が、模擬ハンドル、模擬ブレーキ、模擬アクセルを操作することに応答して、運転シミュレータ端末30、32が操作内容を運転シミュレータ1に送信し、プロセッサが操作内容に基づいて運転状況を更新し、運転状況に対応した運転席から視聴する動画を生成し、運転シミュレータ端末に表示する。
【0012】
運転シミュレータメインプログラム22、認知課題付き運転訓練プログラム24及び運転適性検査プログラム26を実行するプロセッサは、通常のゲームプログラムを実行する場合と同様に、運転手の運転操作に基づいて運転状況を更新する。プロセッサは、例えば、仮想の運転空間内に、道路、信号機、ビルなどの建物、道路を走行する車、歩道をあるく人物、認知課題に使用するオブジェクトなどのポリゴンを配置して運転状況を作成し、運転手の運転操作に基づいて運転する車を仮想の運動空間内で移動させ、その車の移動に対応して他のポリゴンの位置や方向を変更するなどして、運転状況を更新する。そして、プロセッサは、刻一刻変化する運転状況において、運転手の視点と視線の方向に基づいて運転手が視聴する動画を生成する。
【0013】
運転シミュレータ1は、複数の運転シミュレータ端末で運転訓練を受けるようにしているが、運転シミュレータ1がスタンダローンで運転シミュレータとして動作するようにしてもよい。
【0014】
[運転シミュレータ]
図2は、運転シミュレータプログラムの処理の概略を示すフローチャート図である。運転シミュレータのプロセッサ10は、運転シミュレータのメインプログラム22とそのサブプログラムを実行して、以下の処理を実行する。以下の説明では、プロセッサが運転シミュレータのメインプログラム22とそのサブプログラムを実行することを省略して、単に、プロセッサが処理を実行する、と記載する。
【0015】
プロセッサは、運転手である利用者の登録処理を実行する(S10)。利用者登録では、利用者の生年月日、性別、免許取得時の年齢などを登録する。
【0016】
次に、プロセッサは、認知課題付き運転訓練の処理を実行し(S11)、認知機能の評価と運転訓練での運転技能の評価を実行する(S12)。これらの処理S11、S12は、プロセッサが認知課題付き運転訓練プログラム24を実行することにより行われる。詳細は後述する。次に、プロセッサは、運転適性検査を実行し(S13)、運転適性評価を行う(S14)。これらの処理S13、S14は、プロセッサが運転適性検査プログラム26を実行することにより行われる。この詳細も後述する。
【0017】
そして、プロセッサは、認知機能及び運転技能の評価と運転適性評価の結果を出力する(S15)。更に、プロセッサは、評価が低かった運転技能に対応する認知機能トレーニングを運転手に推奨する出力を行う(S16)。認知機能トレーニングは、認知症学会などにより開発済みの様々な認知機能を向上または改善するトレーニングであり、認知機能トレーニングを受けることで対応する認知機能が向上または改善することが確認済みのトレーニングである。
【0018】
[認知課題付き運転訓練プログラム]
図3は、認知課題付き運転訓練プログラムの処理を示すフローチャート図である。プロセッサは、運転訓練を開始する前に、認知課題の説明の動画を生成し出力する(S20)。
【0019】
図5は、認知課題付き運転訓練の開始画面例を示す図である。
図6は、認知課題の説明の画面例を示す図である。
図5の開始画面には、「あなたの運転技能をチェック」「これから4つの場面で運転技能を診断します」と表示される。「4つの場面」とは、事故を起こしやすい場面である。予め所定数の場面のシミュレーションデータが作成済みであり、プロセッサは、所定数の場面からランダムに選択した例えば4つの場面のシミュレーションデータに基づいて、4つの場面の運転状況を再現する。
【0020】
図6の認知課題の説明の画面には、3種類の画面例SMPL_1~SMPL_3とともに、「運転中、街のどこかにカラフルな豚が現れます。運転終了後に、運転中に遭遇した豚の色を選択するクイズがあります。」という説明文が含まれる。
【0021】
3つの画面例SMPL_1~SMPL_3は、運転訓練中に運転手が視聴する運転状況の動画内に、認知機能検査の画像が含められた画面例である。3つの画面例は、運転手の視点から見える運転状況の動画の画面である。運転状況の動画内の運転経路沿いに、認知機能検査の画像例としてオブジェクトの「豚」が配置された画像が表示される。すなわち、認知機能検査の画像は、運転状況の動画内の運転経路沿いに現れるオブジェクトの画像である。オブジェクトとして、画面SMPL_1には歩道を歩く豚が、画面SMPL_2にはビルの屋根に登った豚が、画面SMPL_3には信号機にぶら下がる豚がそれぞれ表示されている。
【0022】
オブジェクトは、動物、仮想の動物、仮想のキャラクタなどのいずれかであり、任意の動物、生物、物などでも良い。オブジェクトには、例えば、異なる色が付けられ、運転終了後のクイズでは、運転中に遭遇した豚の色の記憶をチェックすることが行われる。但し、記憶力のクイズでは、オブジェクトの色の記憶に限定されず、オブジェクトの何らかの属性、例えば、オブジェクトの形状、模様、色彩、それらの結合のいずれかでもよい。例えば、オブジェクトが「ライオン」の場合、ライオンのオスまたはメスの形状の記憶を問うクイズでも良い。また、オブジェクトが「動物」の場合、「豚」「馬」「牛」のいずれかの記憶を問うクイズでも良い。
【0023】
図3に戻り、プロセッサは、運転訓練開始画面を生成して運転訓練を開始する(S21)。そして、プロセッサは、運転操作に基づいて運転状況を更新し、更新した運転状況の動画を生成する(S22)。運転状況の動画には、認知課題の画像が含まれる。また、運転状況の動画には、事故を起こしやすい場面の動画が含まれる。1つの場面の運転訓練が終了すると、プロセッサは、認知課題の検査の動画を生成する(S23)。プロセッサは、運転状況の更新とその動画の生成S22と認知課題の検査の動画の生成S23を、例えば4つの場面の運転訓練が全て終了するまで、繰り返す(S24)。運転訓練の動画内の主な画面について以下説明する。
【0024】
図7は、運転訓練開始の画面例を示す図である。運転訓練開始画面は、「運転技能・記憶力を鍛えよう」「カラフルな豚を探し出して記憶しましょう。それでは開始します。」というメッセージを有する。運転訓練開始の画面に続いて、プロセッサは、運転状況の動画内で、運転する車が事故の場面に向かうようにナビゲーション音声を流し、運転手にナビゲーション音声に従うよう運転操作をさせる。プロセッサは、運転操作に基づいて運転状況を更新し、運転中の仮想の車を、運転訓練という仮想空間内の経路に沿って進行させ、事故の場面に向わせる。そして、プロセッサは、刻一刻と変化する運転状況で運転席から視聴される動画及び音声を生成する。
【0025】
図8は、運転訓練中の運転状況の動画の一つの画面例を示す図である。この例では、運転手から見える運転状況の動画内の運転経路の道路左側に、「豚」のオブジェクトOBJが表示されている。例えば、この豚にはある色(図示しない)が付けられている。運転手は、
図6の認知課題の説明画面で告知されたとおり、刻一刻と変化する運転状況の中に現れるオブジェクトOBJを探しながら、運転操作を行う。つまり、運転手は、運転訓練中、認知課題のオブジェクトを探しその特徴を記憶することを求められ、気を逸らされた状態に置かれる。そのため、運転手は、オブジェクトの「豚」を探すことに意識が向いてしまい運転訓練に集中できない状況におかれる。
【0026】
図9は、事故が発生しやすい場面の動画の画面例を示す図である。
図9の画面の場面は、交差点で信号が青に変わり右側の他車につられて発進しようとしたところ、大型車の死角から歩行者が現れた場面である。この場面では、死角からの歩行者を予測せずに青信号で急発進すると、突然現れた歩行者と接触する事故につながる。運転操作が不適切で車両が歩行者と接触すると、プロセッサは、動画を停止し、「事故発生」の文字を表示する。運転手は、認知課題である運転経路沿いに現れるオブジェクトを探すことで気を散らされると、死角からの歩行者を正しく予測できなくなる傾向がある。事故が発生しなかった場合、一場面を含む運転訓練が終了に達すると、プロセッサは、運転訓練の運転状況の更新と運転状況の動画の生成を終了する。
【0027】
図10は、認知課題である記憶力の検査を行う画面の一例を示す図である。プロセッサは、一場面の運転訓練が終了すると、認知課題の検査の動画を生成し表示する。
図10には、運転訓練中に動画中に現れた「豚」の色を選択する検査画面の例が示される。画面には、「豚は何色?」「運転中に写真の場所で遭遇した豚は何色でしたか?正しいと思う写真を選んでください。」「十字パッドの左右で写真を選択し、○ボタンで決定します。」というメッセージが表示される。また、画面には、異なる色の豚が現れた複数の静止画像の写真が表示される。
【0028】
運転手は、入力パッドの十字パッドの左右で2つの写真のいずれかを選択し、○ボタンで決定する。プロセッサは、運転手による選択操作に基づいて、運転手が選択した写真が正解か否かを判定する。
【0029】
アメリカ自動車協会の交通安全部の研究によると、自動車事故全体の25~50%は注意散漫な運転が原因と報告されている。つまり、運転手が気を逸らされる状況(distruction)におかれることが自動車事故を起こしやすくする。
【0030】
この研究結果に基づいて、本実施の形態の運転シミュレータは、認知課題付き運転訓練を運転手に提供する。つまり、運転シミュレータは、単に運転手の運転技能を評価するだけでなく、運転中に運転シミュレータの動画中に現れるオブジェクトを探し、運転後にオブジェクトの属性の記憶力を問うクイズを受けるという課題を、運転手に課す。認知課題を課すことで、運転手を、事故が多発する場面で事故を起こしやすい状況におき、運転手の事故多発場面での運転技能のレベルの評価を高い精度で行うことができる。
【0031】
認知課題を課すことで、運転シミュレータという非現実のゲームの世界に、実世界に存在する気を逸らされる要因を持ち込み、実世界と同等の運転状況を作り出すことができる。この効果は、高齢者だけでなく若年層を含む全年齢層にもあらわれる。
【0032】
上記の点に加えて、本実施の形態の運転シミュレータは、運転訓練後に、認知課題に関連する記憶力を問うクイズを実施し、認知課題に対応する認知機能の検査も行うことができる。そして、以下に示すとおり、運転シミュレータは、運転技能のレベルに加えて認知機能のレベルも評価結果に含める。このような評価結果を運転手に示すことで、運転手は認知課題に対応する認知機能の改善だけでなく、運転技能に対応する認知機能の改善にも取り組むインセンティブを与えられる。
【0033】
図11は、認知課題付き運転訓練での認知機能及び運転訓練評価の出力例1を示す図である。
図2に示すとおり、プロセッサは、認知課題の検査で運転手が選択した写真が正解か否かを判定し、認知機能の評価を行う(S12)。また、プロセッサは、認知課題付き運転訓練での事故が発生しやすい場面での運転操作に基づいて事故が発生したか否かを判定し、運転訓練での運転技能の評価を行う(S12)。そして、プロセッサは、認知機能の評価結果と運転技能の評価結果とを記載した評価結果を出力する(S15)。
【0034】
図11の認知機能及び運転訓練評価の出力例は、登録情報、総合評価、危険場面解説1~4を含む。登録情報では、利用者IDと、性別、生まれた年、運転免許取得年齢が示される。総合評価では、記憶力、注意の持続、視空間機能、推論機能、判断力・対応力、巧緻性のレーダーチャートが示される。
【0035】
総合評価には、認知課題に対する検査で評価された認知機能である記憶力のレベルと、運転訓練中の様々な運転状況において要求される運転技能である、注意の持続、視空間機能、推論機能、判断力・対応力、巧緻性のレベルとがレーダーチャートで示される。
【0036】
記憶力のレベルは、
図10に示した認知課題の検査でのクイズに正解したか否かに基づいて算出される。4つの場面それぞれの運転訓練で記憶力のクイズが行われるので、例えば正解率に基づいて記憶力のレベルが算出される。一方、運転技能のレベルは、運転訓練中の運転手の運転操作に基づいて所定の算出方法で算出される。
【0037】
図11に示される総合評価は、5種類の運転技能について、心理学用語と運転技能の説明とを対応付けて出力する。以下の通り、左側が心理学用語であり、右側が運転技能の説明である。なお、認知機能である記憶力も心理学用語である。
心理学用語: 運転技能の説明
注意の持続: 事故を起こさずに走行した距離
視空間機能: 速度に応じた先行者との適正な車間距離
推論機能: 事前に危険を予測した運転
判断力・対応力:信号や一時停止など道路状況に合わせた運転
巧緻性: ハンドル/アクセス/ブレーキ操作の滑らかさ
【0038】
つまり、運転技能の説明は、運転技能を具体的に説明する記述であるのに対して、心理学用語は、認知症学会などで正式に定められた心理学の専門用語である。一方で、認知症学会等では、心理学用語に対応して認知機能を改善するトレーニングが整備されている。そして、認知機能が低下した患者が認知機能トレーニングを受けると、その認知機能が改善されるというエビデンスが多く存在する。そこで、総合評価の欄に、複数の運転技能のレベルを示すとともに、各運転技能に関連する又は対応する心理学用語を併記することで、運転手は評価が低い運転技能を改善するために、その運転技能に対応する心理学用語の認知機能トレーニングの実行を促される。総合評価の欄に、評価結果が示される各運転技能に対応する心理学用語を併記すれば、運転手は認知機能トレーニングを実行するインセンティブを与えられ、対応する認知機能を改善できる可能性が高まる。
【0039】
図11の評価出力に、心理学用語に対応して認知機能トレーニングが受講できる機関のウエブサイトのURLアドレスを記載することで、運転手に、認知機能トレーニングを推奨できるし、運転手が認知機能トレーニングを実行しやすくできる。
【0040】
図11の評価出力には、危険場面解説1~4が記載される。危険場面解説1は、「先行車の不意な動き」という危険場面のタイトルと、「左車線走行時、右車線の先行車が、急に目の前へ進路変更してくる場面」という危険場面の簡潔な説明文を含む。更に、「自車線だけでなく、右車線の交通状況も把握してないと、接触する危険性があります。前方に右折待ち車両を発見したら、右車線の交通状況にも注意を払ってください。広く交通状況を把握していないと、他車の急な進路変更に対応できません。」という危険場面の詳細な説明文を含む。更に、危険場面解説1には、事故の場面のサムネイル画像と、「事故発生」という運転訓練結果の表示と、5段階の運転評価が示される。残りの危険場面解説2~4も同様の記載が含まれる。
【0041】
各危険場面解説1~4には、更に、運転状況の動画中に現れたオブジェクトの属性の記憶力テスト結果を含めるようにしてもよい。例えば、5段階の運転評価の5つの星に並べて、「豚」のアイコンを正解は白、不正解は黒で表示するようにしてもよい。
【0042】
図19は、認知課題付き運転訓練での認知機能及び運転訓練評価の出力例2を示す図である。
図11が1回目の運転技能診断の評価出力であるのに対して、
図19は2回目の運転技能診断の評価出力である。総合評価に示されるレーダーチャートには、1回目の総合評価が破線で示され、2回目の総合評価が実線で示される。これによれば、2回目の総合評価が80点と1回目の54点より高くなっている。このように、運転技能診断の評価の履歴が示されることで、運転手は評価の推移を知ることができる。総合評価の履歴は初回以降の複数回分が表示されても良く、直前の履歴だけが表示されても良い。
【0043】
2回目の運転技能診断では、4つの危険場面の組み合わせが
図11の1回目とは異なる。2回目の危険場面の組み合わせは「先行者の不意な動き」「住宅街でのこどものとび出し」「蒸発現象」「信号変化による先行者の急停止」である。
【0044】
[運転適性検査プログラム]
図4は、運転適性検査プログラムの処理を示すフローチャート図である。プロセッサは、運転適正検査プログラムを実行して、運転適性検査(1)の動画を生成し(S30)、運転適性検査(1)が終了後、検査結果の集計及び表示を実行する(S31)。更に、プロセッサは、運転適性検査(2)の動画を生成し(S32)、運転適性検査(2)が終了後、検査結果の集計及び表示を実行する(S33)。
【0045】
運転適性検査(1)及び(2)では、プロセッサは、運転状況の動画を生成中に所定の運転操作を指示する運転操作指示画像を複数回ランダムに動画中に表示する。運転手は、運転操作指示画像が表示されたことを検出すると、運転操作指示画面に対する運転操作を行う。プロセッサは、この運転操作の正確さ及び反応速度等を計測して評価する。
【0046】
図12は、運転適性検査の開始画面の一例を示す図である。この開始画面には、「反応力を鍛えよう」「これから、あなたの反応速度、正確性、集中力を計測することで、運転脳年齢を診断します。」「運転脳年齢とは、運転に必要な反応力を年齢として数値化したものです。あなたの実年齢と比較することで、客観的な評価ができます。」というメッセージが表示される。
【0047】
図13は、運転適性検査(1)の画面の一例を示す図である。運転適性検査(1)では、運転手がハンドル操作をせずアクセスを踏み続けて直線道路を走行する。走行中、動画の正面に、運転操作指示画像である、青い円形、黄色い逆三角形、赤い菱形の画像のいずれかがランダムに表示される。運転手は、それらの画像の表示を検出したことに応答して、以下の運転操作を行うことが要求される。
(1)画像が青い円形であれば「アクセルから足を離さずに踏み続ける」
(2)画像が黄色い逆三角形であれば「アクセルをすばやく離してすぐに踏みなおす」
(3)画像が赤い菱形であれば「アクセルをすばやく離してすぐにブレーキを踏む」
【0048】
図13の例には、黄色い逆三角形の図形が表示されている。この運転操作指示画像の場合、運転手は、アクセルをすばやく離してすぐに踏みなおす運転操作を行う。プロセッサは、この運転操作の正確さと応答時間と反応むらを計測する。黄色い逆三角形の図形内には図形が表示されてからの時間が0:00から始まり運転操作までの時間が計測表示される。この様に図形内に時間表示することで、運転手は図形表示から運転操作までに要した時間を直観的に把握できる。ハンドル操作を行う必要がないので、運転手は、運転操作指示画像の表示に応答して対応する運転操作を行うことに集中することができる。
【0049】
図13の例では、一回の運転適性検査(1)で運転操作指示画像が15回表示される。運転手にとって、運転操作指示画像の表示の検出と表示に応答して対応する運転操作の実行とに集中することは、単純で退屈である。そこで、
図13に示すとおり、画面の上端に、15回の運転操作指示画像が順番に表示され、更に、残りの運転操作指示画像の表示位置に小さい黒丸が表示される。これにより、運転手は、現在まで何回の運転操作指示画像が表示され、今後さらに何回表示されるかを知ることができ、退屈さを紛らわすことができる。また、誤った運転操作を行った場合に運転操作画像にバツ印を表示することで、表示された運転操作画像に対する運転操作の正誤が運転手に通知される。
【0050】
図14は、運転適性検査(1)の検査結果の画面の一例を示す図である。この画面には、タイトル「結果発表」の下、「マーク」のラベルの右側に、15回の運転操作指示画像が表示順に並べて表示される。そして、誤った運転操作が行われた運転操作指示画像には、バツ印が表示される。更に、「アクセル」「ブレーキ」のラベルそれぞれの右側に、各運転操作指示画像の下に、アクセスとブレーキの操作履歴が、紙幣方向に並ぶ複数の縦線の太さで示される。
【0051】
また、この画面には、評価結果表が表示され、評価結果表には、「分析項目」の列の「正確さ」「反応時間」「反応むら」に対応して、「あなたの結果」の列に5段階評価と計測値が表示され、「同世代の平均」の列に平均値が表示される。計測値については、正確さは、正解率=正解数/運転操作指示画像数の%、反応時間は、画像の表示後運転操作が行われるまでに要した時間、そして、反応むらは、反応時間のばらつき時間、である。評価結果表の右側には、
図13のサムネイル画像が表示される。
【0052】
図15は、運転適性検査(2)の画面の一例を示す図である。運転適性検査(2)では、運転手がアクセルを踏み続け、蛇行した道路に対応してハンドル操作を行い、車を走行させる。走行中に、動画の周囲またはいずれかの位置に、運転操作指示画像である、青い円形、黄色い逆三角形、赤い菱形の画像のいずれかがランダムに表示される。運転手は、それらの画像の表示を検出したことに応答して、運転適性検査(1)と同じ運転操作を行うことが要求される。
【0053】
図15の画面例では、赤い菱形の画像が画面の左下隅に表示されている。運転適性検査(2)では、運転手は、前方の道路の変化に応じてハンドル操作を行いながら、運転操作指示画像の表示の検出と対応する運転操作の実行に集中する必要がある。よって、運転適性検査(1)とは異なり、ハンドル操作を行うという負荷をかけられた状態での運転操作の反応力が検査される。赤い菱形内には表示されてから運転操作までの時間が計測され表示され、運転手は図形表示から運転操作までに要した時間を直観的に把握できる。
【0054】
また、運転適性検査(1)と同様に、一回の運転適性検査(2)で運転操作指示画像が15回表示される。
図15に示すとおり、画面の上端に、15回の運転操作指示画像が順番に表示されると共に、残りの運転操作指示画像の表示位置に小さい黒丸が表示される。また、誤った運転操作を行った場合に運転操作画像にバツ印を表示することで、各運転操作画像に対する運転操作の正誤が運転手に通知される。
【0055】
図16は、運転適性検査(2)の検査結果の画面の一例を示す図である。運転適性検査(1)の検査結果の画面と同様に、
図16の画面には、タイトル「結果発表」の下に、「マーク」のラベルの右側に、15回の運転操作指示画像が表示順に並べて表示され、誤った運転操作が行われた運転操作指示画像にバツ印が表示される。
【0056】
更に、「アクセル」「ブレーキ」のラベルそれぞれの右側で、それぞれの運転操作指示画像の下に、アクセスとブレーキの操作履歴が、水平方向に並んだ複数の縦線の太さで示される。そして、「ハンドル」「ふらつき」のラベルそれぞれの右側に、ハンドル操作の左右の動きの履歴と、車の左右のフラつきの履歴が、波形で示される。
【0057】
また、評価結果表には、運転適性検査(1)の検査結果(
図14)と同様に、「分析項目」の列の「正確さ」「反応時間」に対応して、「あなたの結果」の列に5段階評価と計測値が表示され、「同世代の平均」の列に平均値が表示される。また、運転適正検査(1)と異なり、「分析項目」の列に「ハンドル操作」が加えられている。ハンドル操作の計測値は、運転経路から車が外れた長さである。更に、評価結果表の右側に、
図15の画面のサムネイル画像が表示される。
【0058】
図17は、運転適正検査での評価結果の出力例1を示す図である。
図2に示したとおり、プロセッサは、運転適性検査の評価を行い(S14)、その評価結果を出力する(S15)。評価内容は、
図14、
図16に示される評価結果表に加えて、運転手の運転脳年齢と世代別順位が含まれる。
【0059】
図17の運転適性評価の出力例には、登録情報、運転脳年齢、世代別順位、テスト1及びテスト2の評価結果表、そして、総評が示される。登録情報は、
図11と同じである。
【0060】
運転脳年齢には、運転脳年齢分布グラフと運転手の運転脳年齢(44歳)及び5段階評価が表示される。運転脳年齢とは、運転適性検査(1)(2)の検査結果が何歳の平均値または中央値に対応するかを示す数である。
図17の「運転脳年齢」の欄には「運転脳年齢分布グラフ」と、運転年齢が「44歳」であることと、5つの星の図形による5段階評価の4番目であることが示される。「運転脳年齢分布グラフ」には、運転脳年齢「44歳」の位置が、運転手の年齢「50歳」の位置と「22歳」の位置との間に黒丸(矢印)で示される。運転脳年齢分布グラフでは、過去の検査の履歴が受検回数毎に表示される。運転手は、今回の受検での運転脳年齢を過去の受検での運転脳年齢と比較することができる。但し、
図17の例では、受検回数が「1回目」であることが示される。
【0061】
図17の「世代別順位」の欄には、運転手と同世代の運転脳年齢分布グラフが示される。このグラフは、運転手と同世代の所定人数(例えば2000人)の運転脳年齢のヒストグラムであり、運転手の運転脳年齢のビンがハイライト化して表示される。また、同世代の運転脳年齢の若い方から数えたの順位が示される。この順位は、100人中の順位であり、正規化された順位で示される。
【0062】
図17の「テスト1」及び「テスト2」の各評価結果表は、
図14、
図16の運転適性検査(1)及び(2)の評価結果表と同じである。「テスト1」のラベルの右側に「選択反応検査」と表示され、「テスト2」のラベルの右側に「注意配分・複数作業検査」と表示される。「選択反応検査」「注意配分・複数作業検査」は、それぞれ法規で定められた運転機能の検査用語である。
【0063】
そして、総評には、運転適性検査(1)(2)の結果にも基づく総評(コメント)が示される。
図17の例では、総評は、「マークに対する反応の誤りが少しありました。」「動作の決断と実行にやや時間を要しています。」「コースに対してかなり正確な位置を走行できました。」となっている。
【0064】
図20は、運転適正検査での評価結果の出力例2を示す図である。
図17は1回目の運転適性検査での評価結果の出力例1であり、
図20は2回目の出力例2である。
図20の運転脳年齢の欄には、運転脳年齢分布グラフに1回目の運転脳年齢と2回目の運転脳年齢が示される。そして、2回目の脳年齢が42歳と1回目の44歳より若返っている。運転脳年齢分布グラフには、初回検査以降の複数回の運転脳年齢の推移が示されても良い。また、
図20の世代別順位の欄でも、同世代での順位が39位と1回目の48位より上がっていて、同欄の同世代の運転脳年齢分布グラフでも該当する年齢が若返っている。
【0065】
図20では、テスト1の選択反応検査とテスト2の注意配分・複数作業検査における操作時間の計測結果は、ハンドル操作を除くと1回目と同等または向上している。
【0066】
[運動技能改善サイクル]
本実施の形態の運転シミュレータによる運転訓練を、認知症予防のPDCAサイクルの最初に組み込むことで、認知症予防と運転技能の改善の両方が期待できる。認知症予防のPDCAサイクルは、認知症の啓発(Plan)、認知トレーニング、運動、食生活改善の実行(Do)、医療的検査(Check)、医療機関での診療や介護施設の利用(Action)で構成される。
【0067】
図18は、運転シミュレータによる認知課題付き運転訓練をPDCAサイクルに組み込んだ運転技能改善サイクルの一例を示す図である。この運転技能改善サイクルによれば、まず、ユーザは、本実施の形態による運転シミュレータで認知課題付き運転訓練を体験する(S41)。認知課題付き運転訓練の結果を示されたユーザは、運転技能が低下していた場合、運転技能を改善しようとするインセンティブが向上する。この状態で、ユーザは、認知症の啓発授業を受ける(Plan)(S42)。そして、ユーザは、低下した運転技能と関連のある認知機能改善トレーニングを実行する(Do)(S43)。また、ユーザは、認知機能の医学的検査を受ける(Check)(S44)。更に、ユーザは、医学的検査結果に対応する行動を起こす(Action)(S45)。
【0068】
運転シミュレータで認知課題付き運転訓練を体験したユーザは、低下した運転技能の改善を目指して、高い意識で認知トレーニングに取り組むことになる。これにより、認知機能の改善と共に運転技能の改善が期待できる。
【0069】
以上の通り、本実施の形態における運転シミュレータは、認知課題付き運転訓練を提供し、認知課題により気を逸らされた状態で運転訓練を実施でき、事故が頻発する場面での運転技能を高精度に判定することができる。それと共に、認知課題により運転手の認知機能の検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1:運転シミュレータ
10:プロセッサ
22:運転シミュレータメインプログラム
24:認知課題付き運転訓練プログラム
26:運転適性検査プログラム
OBJ:オブジェクト
CRS:カーソル