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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】機体および作業機械
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20240123BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240123BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F01N3/18 A
F01N3/08 B
E02F9/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020039040
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139346
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元幸
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185552(WO,A1)
【文献】特開平9-221789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/18
F01N 3/08
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板を有するフレームと、
エンジンと、
このエンジンの排ガス中の所定の酸化物を還元処理する液状還元剤を噴射する排ガス浄化装置と、
液体還元剤を貯留する還元剤タンクと、
この還元剤タンクに貯留された液体還元剤を排ガス浄化装置に送る還元剤ポンプと、
冷却ファンと、
フレームの底板に配置され、冷却ファンの駆動により還元剤ポンプを冷却する外気を取り込む開口部と、
この開口部から取り込まれた外気を冷却ファンに導くダクト部と、を備え
還元剤ポンプは、開口部から冷却ファンに至る外気の流路に配置されている
ことを特徴とする機体。
【請求項2】
開口部は、還元剤ポンプにアクセス可能なアクセス用開口部である
ことを特徴とする請求項1記載の機体。
【請求項3】
流体を貯留するタンクを備え、
ダクト部は、タンクの側面により一部の壁部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の機体。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一記載の機体と、
この機体に搭載された作業装置と、
を具備したことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤タンクに貯留された液体還元剤を排ガス浄化装置に送る還元剤ポンプを有する機体およびこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルなどの作業機械のエンジンには、ディーゼルエンジンが用いられる。ディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、窒素酸化物が多く含まれるため、尿素水などの液体還元剤を排気ガスに噴射することで窒素酸化物を窒素に還元する排ガス浄化装置が設置される。
【0003】
液体還元剤を貯留する還元剤タンクと排ガス浄化装置の噴射装置であるインジェクタとは、配管により接続され、この配管を通じて、還元剤タンクから排ガス浄化装置のインジェクタへと還元剤ポンプにより液体還元剤が供給される。
【0004】
大型の作業機械などの場合には、レイアウト上、還元剤タンクから排ガス浄化装置までの距離が長くなることがある。例えば、還元剤タンクが機体の前端右側に配置され、排ガス浄化装置が機体の後端左側に配置された作業機械が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。そのため、還元剤タンクと排ガス浄化装置との中間に還元剤ポンプを配置することで、既存の標準的な還元剤ポンプを使用できるようにする。その場合、液体還元剤の品質を保つためには、還元剤ポンプを冷却することが望ましい。
【0005】
この点、例えば、エアクリーナのフィルタの交換などメンテナンスのために、エアクリーナの下方からエアクリーナにアクセスできるように、旋回フレームの底部のボトムガードに開口部を形成する作業機械が知られている。この作業機械では、エアクリーナのアクセス用の開口部を利用し、この開口部を着脱可能に覆うカバーに穴部を形成して、この穴部から外気を取り込み、ラジエータに外気を導けるようになっている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5501534号公報
【文献】特許第5636512号公報
【文献】特開平9-221789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載されているようにアクセス用の開口部を利用して単に外気を取り込むだけでは還元剤ポンプを十分に冷却できないことがある。そのため、取り込んだ外気によって効率よく還元剤ポンプを冷却することが望まれる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、還元剤ポンプを効率よく冷却できる機体およびこれを備えた作業機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、底板を有するフレームと、エンジンと、このエンジンの排ガス中の所定の酸化物を還元処理する液状還元剤を噴射する排ガス浄化装置と、液体還元剤を貯留する還元剤タンクと、この還元剤タンクに貯留された液体還元剤を排ガス浄化装置に送る還元剤ポンプと、冷却ファンと、フレームの底板に配置され、冷却ファンの駆動により還元剤ポンプを冷却する外気を取り込む開口部と、この開口部から取り込まれた外気を冷却ファンに導くダクト部と、を備え、還元剤ポンプが、開口部から冷却ファンに至る外気の流路に配置されている機体である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の機体における開口部が、還元剤ポンプにアクセス可能なアクセス用開口部である機体である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の機体において、流体を貯留するタンクを備え、ダクト部が、タンクの側面により一部の壁部が形成されている機体である。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか一記載の機体と、この機体に搭載された作業装置と、を具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、還元剤ポンプを開口部から冷却ファンに至る冷却風の流路に配置したので、還元剤ポンプを効率よく冷却できる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、外気を取り込むための別途の開口部を形成する必要がないとともに、還元剤ポンプへのアクセス性の向上と、還元剤ポンプの冷却効率とを両立できる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、タンクの側面を有効に利用してダクト部の壁部を形成するための別途の部材を減らし、ダクト部を安価に、かつ、容易に形成できる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、還元剤ポンプの冷却によって液体還元剤の品質を長期に保ち、エンジンから排出される排気ガスを排ガス浄化装置によって液体還元剤で効率よく還元できる作業機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る機体の一実施の形態を示す断面図である。
図2】同上機体を示す斜視図である。
図3】同上機体を示す平面図である。
図4】同上機体を備える作業機械を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0019】
図4に示されるように、油圧ショベル形の作業機械10は、機体11が、下部走行体12と、この下部走行体12に旋回可能に設けられた上部旋回体13とを備え、この機体11の上部旋回体13に、各種作業用の作業装置14、および、カウンタウエイト15が搭載されている。図示される例では、作業装置14は、バケット形であるが、これに限らず、ブレーカなどが搭載されたものでもよい。
【0020】
上部旋回体13は、フレームである旋回フレーム16上に、オペレータの運転席が設けられたキャブ18が搭載されているとともに、図3に示されるように、コントロールバルブ、エンジン20、ポンプ、タンク、クーリングパッケージ23、および、排ガス浄化システム(排ガス後処理システム)24などが搭載されて構成されている。旋回フレーム16の側部は、図4に示される外装カバー25により覆われている。以下、前後方向、左右方向、および、上下方向は、運転席に着座したオペレータから見た方向を基準とする。各図中では、矢印FR,RRを前後方向、矢印L,Rを左右方向、矢印U,D方向を上下方向とする。
【0021】
図3に示されるように、旋回フレーム16は、両側方向である左右方向の中央部に、センタフレーム26を有する。センタフレーム26は、前後方向に直線状に形成されている。センタフレーム26は、一対の側板である縦板26a,26aを左右方向に離れて備え、これら縦板26a,26aの前部の間に作業装置14(図4)の基端部が軸支持される。
【0022】
また、旋回フレーム16は、センタフレーム26の左右に、サイドフレーム27,28を有する。サイドフレーム27,28は、センタフレーム26に対して左右方向に延びる梁部材が溶接され、梁部材の先端部に枠体が溶接されるとともに、支持部材が溶接されて構成されている。サイドフレーム27,28は、それぞれ前後方向に延びている。
【0023】
左側のサイドフレーム27にキャブ18(図4)が配置されている。タンク、コントロールバルブ、エンジン20、ポンプ、クーリングパッケージ23、および、排ガス浄化システム24は、旋回フレーム16のスペースに応じて任意に配置される。本実施の形態において、センタフレーム26にコントロールバルブおよびエンジン20が配置され、左側のサイドフレーム27にポンプ、および、排ガス浄化システム24の一部が配置され、右側のサイドフレーム28にタンクの少なくとも一部、クーリングパッケージ23、および、排ガス浄化システム24の残りの他部が配置される。
【0024】
例えば、コントロールバルブは、作業装置14(図4)の後方にてセンタフレーム26に支持されている。コントロールバルブは、図4に示される下部走行体12の走行用、上部旋回体13の旋回用、および、作業装置14の作業用にアクチュエータに給排する作動油の流量および方向を制御する。
【0025】
図3に戻って、エンジン20は、コントロールバルブの後方にてセンタフレーム26に支持されている。エンジン20は、旋回フレーム16の後端部に位置する。エンジン20は、機械室に収容されている。
【0026】
ポンプは、油圧ポンプであり、エンジン20と連結され、エンジン20により駆動されて、作動油をコントロールバルブなどに供給する。このポンプは、機械室の左側方に隣接するポンプ室に収容されている。ポンプ室の内部には、その他に、各種の油圧機器などが収容されていてもよい。
【0027】
タンクは、流体であるエンジン20の燃料を貯留する燃料タンク30、および、流体である作動油を貯留する作動油タンクを含む。本実施の形態において、燃料タンク30は、右側のサイドフレーム28に配置されている。図示されない作動油タンクは、任意のスペースに配置することが可能であるが、例えばセンタフレーム26、あるいは左側のサイドフレーム27などに配置されている。
【0028】
クーリングパッケージ23は、エンジン冷却水などの冷却用のラジエータ、アクチュエータからの戻り油すなわち作動油冷却用のオイルクーラ、過給機冷却用のインタクーラなどの熱交換器を集合させたものである。クーリングパッケージ23は、エンジン20またはモータにより駆動される冷却ファン33(図1)により、上部旋回体13(図4)の側面に形成された換気口より吸引される冷却風の流路中に配置されている。本実施の形態において、クーリングパッケージ23は、右側のサイドフレーム28の後部に配置されている。また、クーリングパッケージ23は、エンジン20に隣接して機械室に収容されている。さらに、クーリングパッケージ23は、上部旋回体13(図4)の側部に面して配置されている。
【0029】
そして、排ガス浄化システム24は、液体還元剤を用いてエンジン20の排気系に対して排ガスを浄化する。排ガス浄化システム24は、液体還元剤を貯留する還元剤タンク35、エンジン20の排ガスを処理する排ガス浄化装置36、および、還元剤タンク35に貯留された液体還元剤を汲み上げ吐出することで排ガス浄化装置36へと液体還元剤を供給する還元剤ポンプ37を備え、これらが配管38(図1)により接続されている。
【0030】
還元剤タンク35は、排ガス浄化装置36に使用される尿素水などの液状還元剤が貯留される。本実施の形態において、還元剤タンク35は、右側のサイドフレーム28の前端部に配置されている。還元剤タンク35は、例えば工具などを収納するストレージボックスの内部に収容されている。つまり、図示される例では、還元剤タンク35は、旋回フレーム16の右側前端部に配置されている。また、還元剤タンク35は、燃料タンク30の前方に配置されている。さらに、還元剤タンク35は、旋回フレーム16の下部寄りに配置されている。
【0031】
排ガス浄化装置36は、排ガス中の黒煙を除去する黒煙除去装置(Diesel Particulate Filter)、排ガス中の所定の酸化物である窒素酸化物を還元処理する窒素酸化物還元装置(Selective Catalytic Reduction)、および、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst)を備えている。エンジン20の排気口に対して、エキゾースト管路の起点となる接続配管を介してディーゼル酸化触媒が接続され、このディーゼル酸化触媒に対し、接続管を介して黒煙除去装置が接続され、この黒煙除去装置に窒素酸化物還元装置が接続され、かつ、この窒素酸化物還元装置にエキゾースト管路の残りの部分が接続されている。ディーゼル酸化触媒と黒煙除去装置とを接続する接続管には、液状還元剤を噴射する噴射装置であるインジェクタが配置されている。本実施の形態において、インジェクタは、排ガス浄化装置36の後部に位置する。インジェクタには、還元剤タンク35から還元剤ポンプ37により液体還元剤を供給するための供給配管が接続されている。そして、還元剤タンク35内にある尿素水などの液状還元剤を還元剤ポンプ37により汲み上げ、供給配管を通して排ガス浄化装置36のインジェクタに供給し、このインジェクタにより黒煙除去装置の上流側に噴射する。
【0032】
本実施の形態において、排ガス浄化装置36は、左側のサイドフレーム27の後端部に配置されている。排ガス浄化装置36は、ポンプの上方に位置している。また、排ガス浄化装置36は、ポンプ室の上方の機械室の内部に収容されている。つまり、図示される例では、排ガス浄化装置36は、旋回フレーム16の左側後端部に配置されている。また、排ガス浄化装置36は、旋回フレーム16に対して上方に離れて配置されている。したがって、排ガス浄化装置36は、還元剤タンク35に対し、前後方向、左右方向、および、上下方向にそれぞれ離れて位置しており、平面視で旋回フレーム16の対角の位置にある。
【0033】
還元剤ポンプ37は、還元剤タンク35と排ガス浄化装置36との中間に配置されている。つまり、還元剤ポンプ37は、還元剤タンク35および排ガス浄化装置36のそれぞれに対して離れた位置に配置されている。本実施の形態において、還元剤ポンプ37は、旋回フレーム16の右側のサイドフレーム28の前後方向の中央部に配置されている。つまり、図示される例では、還元剤ポンプ37は、左右方向において、還元剤タンク35と同側、かつ、排ガス浄化装置36と反対側に位置し、前後方向において、還元剤タンク35と排ガス浄化装置36との中間に位置する。また、還元剤ポンプ37は、燃料タンク30の後方、かつ、クーリングパッケージ23の前方に位置する。つまり、還元剤ポンプ37は、前後方向において、燃料タンク30とクーリングパッケージ23との間に位置する。したがって、旋回フレーム16の右側(右側のサイドフレーム28)には、前方から後方へと、還元剤タンク35、燃料タンク30、還元剤ポンプ37、クーリングパッケージ23の順に配置されている。
【0034】
また、図1および図2に示されるように、還元剤ポンプ37は、旋回フレーム16の下部寄りに配置されている。本実施の形態において、還元剤ポンプ37は、旋回フレーム16に固定された取付部材39に取り付けられている。取付部材39は、例えば旋回フレーム16の外枠部であるスカート部16aの補強部材である。取付部材39は、板状に形成されている。図示される例では、取付部材39は、上下方向および左右方向に主面を沿わせて配置されており、取付部材39の前面に還元剤ポンプ37が取り付けられている。還元剤ポンプ37は、フィルタ着脱部37aが下方に向いて配置されている。図示される例では、還元剤ポンプ37は、スカート部16aよりも下方に位置している。
【0035】
さらに、還元剤ポンプ37の下部は、旋回フレーム16の底板16bに対向している。還元剤ポンプ37の下部は、底板16bと近接し、この底板16bに対して上方に離れている。底板16bには、還元剤ポンプ37にアクセス可能なアクセス用開口部42が形成されている。アクセス用開口部42は、還元剤ポンプ37のメンテナンス用の開口部である。アクセス用開口部42は、フィルタ着脱部37aに対し下方からアクセス可能となっており、アクセス用開口部42を介してフィルタ着脱部37aからフィルタを着脱(交換)可能となっている。図示される例では、アクセス用開口部42は、還元剤ポンプ37の下部、特にフィルタ着脱部37aに対向する位置を含む領域に開口されている。
【0036】
アクセス用開口部42は、開閉部材44により開閉可能である。開閉部材44は、例えば板状に形成されたボトムガードである。本実施の形態において、開閉部材44は、底板16bに対し、ボルトなどの固定部材45により着脱可能に固定される。つまり、開閉部材44を取り外すことで、アクセス用開口部42が開口されるようになっている。開閉部材44には、単数または複数の開口部46が形成されている。すなわち、開口部46は、旋回フレーム16の底板16bに配置される。開口部46は、アクセス用開口部42と連通し、外気を旋回フレーム16内(旋回フレーム16の上方)に取り込む開口である。開口部46は、アクセス用開口部42よりも開口面積が狭くなっている。本実施の形態において、開口部46は、少なくとも還元剤ポンプ37の下部に対向する位置にある。図示される例では、開口部46は、還元剤ポンプ37の下部に対向する位置にある主開口部46aと、主開口部46aに対して離れた位置にある補助開口部46bとを有する。本実施の形態において、主開口部46aは、前後方向に並んで複数配置されている。補助開口部46bは、還元剤ポンプ37の下部から車幅方向外側に離れた位置、つまり主開口部46aに対して右側に離れた位置に、前後方向および車幅方向に並んで複数配置されている。
【0037】
そして、開口部46から取り込んだ外気は、ダクト部48を介してクーリングパッケージ23または冷却ファン33へと導かれる。ダクト部48は、還元剤ポンプ37を含む空間部として形成されている。ダクト部48は、開口部46およびアクセス用開口部42とクーリングパッケージ23または冷却ファン33側とを連通して形成される。ダクト部48は、還元剤ポンプ37を配置した位置に応じて、その位置の周囲のスペースを用い、任意の形状に形成してよい。本実施の形態において、ダクト部48は、概略として、還元剤ポンプ37から上方に延びて形成されている。また、ダクト部48は、機械室に隣接して形成されている。ダクト部48は、クーリングパッケージ23の前部と燃料タンク30の後部との間に形成されている。また、ダクト部48は、旋回フレーム16の旋回中心より後方にある。
【0038】
ダクト部48の壁部(外壁)は、一以上の仕切り部材50により形成されている。本実施の形態において、ダクト部48の壁部の一部である前部は、タンクである燃料タンク30の側面である後側面30aにより形成されている。さらに、本実施の形態において、ダクト部48の壁部の一部である右側部は、外装カバー25により形成されている。本実施の形態のダクト部48は、断面四角形状の流路を区画している。図示される例において、ダクト部48内は、還元剤ポンプ37を収容するとともに開口部46およびアクセス用開口部42と直接連通する収容空間S1と、収容空間S1からクーリングパッケージ32または冷却ファン33へと外気を導く導風空間S2とを有する一連の流路として区画されている。本実施の形態において、導風空間S2は、収容空間S1に対し、車幅方向外方である左側の上方に配置されている。導風空間S2は、機体11の側面に沿って形成されている。
【0039】
仕切り部材50は、ダクト部48を形成可能な任意の個数、および、任意の形状としてよい。本実施の形態において、仕切り部材50は、第一仕切り部材51と、第二仕切り部材52と、第三仕切り部材53と、第四仕切り部材54とを有する。
【0040】
第一仕切り部材51は、ダクト部48内において、主として収容空間S1を区画する。本実施の形態において、第一仕切り部材51は、還元剤ポンプ37の上方から後方および車幅方向内方つまり左方を覆っている。つまり、本実施の形態において、第一仕切り部材51は、還元剤ポンプ37の上部に対向する上面部51aと、還元剤ポンプ37の後部に対向する後面部51bと、還元剤ポンプ37の車幅方向内方である左部に対向する左側面部51cとを有する。
【0041】
上面部51aは、収容空間S1の上部、かつ、ダクト部48の車幅方向内方、つまり左側の壁部の一部を形成している。上面部51aは、還元剤ポンプ37の上部に対して上方に離れて位置する。上面部51aは、旋回フレーム16の底板16bと平行または略平行に位置する。本実施の形態において、上面部51aは、旋回フレーム16のスカート部16aよりも上方に位置する。後面部51bは、ダクト部48の後部の壁部の一部を形成している。後面部51bは、収容空間S1の後部を形成している。左側面部51cは、ダクト部48の車幅方向内方、本実施の形態では左側の壁部の一部を形成している。左側面部51cは、収容空間S1の左側部を形成している。
【0042】
また、本実施の形態において、第一仕切り部材51は、第二仕切り部材52と、支持部材55との間に亘り配置されている。支持部材55は、燃料タンク30の後側面30aに隣接して配置されている。支持部材55は、下端部が旋回フレーム16(右側のサイドフレーム28)に固定されて上下方向に立ち上がって形成されている。
【0043】
第二仕切り部材52は、ダクト部48内において、主として導風空間S2を区画する。また、第二仕切り部材52は、ダクト部48と機械室とを仕切る板状の部材である。第二仕切り部材52は、ダクト部48の後部の壁部の残りの他部を形成している。第二仕切り部材52は、導風空間S2の後部を形成している。第二仕切り部材52は、主面が上下方向および左右方向に沿うように配置されている。
【0044】
第二仕切り部材52は、機械室の支柱57に取り付けられている。支柱57は、下端部が旋回フレーム16(右側のサイドフレーム28)に固定されて上下方向に直線状に延びている。本実施の形態において、支柱57は、機械室の右側前端に位置する。
【0045】
また、第二仕切り部材52には、ダクト部48とクーリングパッケージ23または冷却ファン33側、つまり機械室との間を連通する連通口58が形成されている。すなわち、連通口58は、導風空間S2から外気をクーリングパッケージ23または冷却ファン33に送る。連通口58は、第二仕切り部材52を貫通して形成されている。連通口58は、複数配置され、上下方向に互いに離れて位置している。
【0046】
第三仕切り部材53は、ダクト部48内において、主として導風空間S2を区画する。また、第三仕切り部材53は、ダクト部48の車幅方向内方、本実施の形態では左側の壁部の残りの他部を形成している。第三仕切り部材53は、導風空間S2の左側部を形成する。第三仕切り部材53は、外装カバー25(図4)に対して車幅方向内方、本実施の形態では左側に離れて位置し、外装カバー25(図4)と対向する。第三仕切り部材53は、主面が前後方向および上下方向に沿うように配置されている。すなわち、第二仕切り部材52と第三仕切り部材53とは、主面が互いに交差するように配置されている。第三仕切り部材53は、第二仕切り部材52の前部から前方に延びている。また、第三仕切り部材53は、上下方向に長手状となっている。第三仕切り部材53は、第二仕切り部材52と支持部材55との間に亘り配置されている。
【0047】
第四仕切り部材54は、ダクト部48内において、導風空間S2を区画する。また、第四仕切り部材54は、ダクト部48および導風空間S2の上部を形成している。第四仕切り部材54は、第三仕切り部材53の上部に取り付けられ、第二仕切り部材52と支持部材55との間に亘り配置されている。
【0048】
なお、第一仕切り部材51乃至第四仕切り部材54の少なくともいずれかは、一体的に形成されていてもよいし、さらに複数の部材に分割されていてもよい。また、第一仕切り部材51の少なくとも一部は、第二仕切り部材52、または、第三仕切り部材53と一体的に形成されていてもよい。同様に、第二仕切り部材52の少なくとも一部は、第一仕切り部材51乃至第四仕切り部材54の少なくともいずれかと一体的に形成されていてもよいし、第三仕切り部材53の少なくとも一部は、第一仕切り部材51、第二仕切り部材52、または、第四仕切り部材53と一体的に形成されていてもよいし、第四仕切り部材54の少なくとも一部は、第二仕切り部材52または第三仕切り部材53と一体的に形成されていてもよい。要するに、仕切り部材50をどのように分割または一体化して形成するか、および、仕切り部材50の形状については、ダクト部48が設置されるスペースの大きさや所望のダクト部48の形状に応じて任意に設定してよい。
【0049】
ダクト部48の壁部の前部を構成する燃料タンク30の後側面30aは、平面状に形成され、上下方向および左右方向に沿うように配置されている。この燃料タンク30の後側面30aは、ダクト部48の収容空間S1および導風空間S2に亘りそれぞれの前部を形成している。
【0050】
そして、作業機械10の動作時には、オペレータの操作に応じて、エンジン20から動力を得て駆動されたポンプにより作動油タンクから作動油を汲み上げて吐出し、コントロールバルブによって各種アクチュエータに作動油が給排されることで、走行、旋回、各種作業などを行う。
【0051】
エンジン20の排ガスは、排ガス浄化システム24により浄化される。つまり、排ガス浄化システム24では、還元剤タンク35内にある尿素水などの液状還元剤を還元剤ポンプ37により汲み上げ、配管38を通して排ガス浄化装置36のインジェクタに供給し、このインジェクタにより黒煙除去装置の上流側に噴射することで、エンジン20の排ガスに含まれる窒素酸化物を窒素に還元する。
【0052】
冷却ファン33の駆動によりクーリングパッケージ23に換気口から外気を取り込むことで、エンジン20やインジェクタの冷却水、アクチュエータからの戻り油、あるいは、エンジン20の過給機の圧縮により温度が上がった空気などをそれぞれ冷却する。
【0053】
同様に、冷却ファン33の駆動により、開口部46から外気をダクト部48の収容空間S1に取り込み、この外気によって還元剤ポンプ37を冷却する。主として開口部46の主開口部46aから取り込まれた外気が、還元剤ポンプ37に直接吹き付けられて還元剤ポンプ37を冷却し、開口部46の補助開口部46bから取り込まれた外気が、導風空間S2に流れてダクト部48内に取り込まれる外気の風量を確保する。取り込まれた外気は、さらにダクト部48の導風空間S2から連通口58を介してクーリングパッケージ23に吸い込まれた後、クーリングパッケージ23を通過してクーリングパッケージ23を冷却する。
【0054】
このように、旋回フレーム16の底板16bに配置した開口部46から、冷却ファン33の駆動により還元剤ポンプ37を冷却する外気を取り込み、この開口部46から取り込んだ外気を冷却ファン33へとダクト部48によって導くことで、還元剤ポンプ37を開口部46から冷却ファン33に至る冷却風の流路に配置することができ、還元剤ポンプ37を効率よく冷却できる。
【0055】
そのため、大型の作業機械10のように、還元剤ポンプ37を還元剤タンク35や排ガス浄化装置36から離れて配置する場合であっても、還元剤ポンプ37を効率よく冷却できることで、還元剤ポンプ37の過熱による液体還元剤の劣化を抑制でき、液体還元剤の品質を保つことができる。つまり、液体還元剤の品質を維持しつつ、還元剤タンク35、排ガス浄化装置36、および、還元剤ポンプ37を含む排ガス浄化システム24のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0056】
また、作業機械10の停止時において、還元剤ポンプ37をメンテナンスする際には、開閉部材44を旋回フレーム16の底板16bから取り外し、開口されたアクセス用開口部42から還元剤ポンプ37にアクセスする。例えば、還元剤ポンプ37は、フィルタ着脱部37aでフィルタを交換できる。このように、還元剤ポンプ37にアクセス可能なアクセス用開口部42を介して開口部46とダクト部48とを連通することで、アクセス用開口部42を有効利用し、還元剤ポンプ37へのアクセス性と還元剤ポンプ37の冷却効率とを両立できる。
【0057】
さらに、開口部46からダクト部48へと取り込まれた外気は、クーリングパッケージ23を通過してクーリングパッケージ23を冷却するので、開口部46がクーリングパッケージ23の冷却用の外気を取り込む換気口としても作用する。つまり、本実施の形態の開口部46は、クーリングパッケージ23の冷却用の外気の取り込み量を増加させることができる。
【0058】
また、ダクト部48は、仕切り部材50を組み付けることで、還元剤ポンプ37の周囲の構造物を利用して容易に形成できる。
【0059】
ダクト部48の一部の壁部をタンク、本実施の形態では燃料タンク30の側面により形成したので、燃料タンク30の側面を有効に利用してダクト部48の壁部を形成するための別途の部材を減らし、ダクト部48を安価に、かつ、容易に形成できる。
【0060】
そして、上記のような機体11を備えることで、還元剤ポンプ37の冷却によって液体還元剤の品質を長期に保ち、エンジン20から排出される排気ガスを排ガス浄化装置36によって液体還元剤で効率よく還元できる作業機械10を提供できる。
【0061】
なお、上記一実施の形態においては、燃料タンク30の側面をダクト部48の壁部の一部として利用したが、これに限らず、ダクト部48が形成される位置に隣接するタンクであれば、作動油タンクなど、他のタンクの側面をダクト部48の壁部の一部として利用してもよい。同様に、タンクの側面をダクト部48の壁部の一部として利用する他に、ダクト部48に隣接または近接して位置する他の構造物の側面をダクト部48の壁部の一部として利用してもよい。
【0062】
アクセス用開口部42の大きさによっては、アクセス用開口部42を、外気をダクト部48に取り込む開口部46として用いてもよい。このように、アクセス用開口部42を開口部46として利用することで、外気を取り込むための別途の開口部を形成する必要がないとともに、還元剤ポンプ37へのアクセス性の向上と、還元剤ポンプ37の冷却効率とを両立できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、排ガス浄化装置に還元剤を供給する還元剤ポンプを有する機体および作業機械の製造業などに関わる事業者にとって利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 作業機械
11 機体
14 作業装置
16 フレームである旋回フレーム
16b 底板
20 エンジン
30 タンクである燃料タンク
30a 側面である後側面
33 冷却ファン
35 還元剤タンク
36 排ガス浄化装置
37 還元剤ポンプ
42 アクセス用開口部
46 開口部
48 ダクト部
図1
図2
図3
図4