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特許7424751工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置
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  • 特許-工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240123BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B23Q17/00 C
G01B11/00 Z
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019041272
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2019188589
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】10 2018 105 515.3
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508069615
【氏名又は名称】ハイマー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイマー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ハイマー,フランツ-ジョセフ
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102006036377(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00,17/24;
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(2)のセッティングの調整及び/又は計測のための装置であって、
基台部または底体部(3)と、
前記工具(2)を保持するための、前記基台部または底体部(3)上に配置され、中心軸(4)の周囲を旋回可能である受領部(5)と、
第1軸(8)に沿うと共に、該第1軸(8)に対して直角に延びる第2軸(11)に沿って移動できる計測要素取付部(10)と、
前記工具(2)の光学計測のための、前記計測要素取付部上に配置された計測要素(14、15)、および、
基準部(18)と、
を含み、
前記計測要素取付部(10)に専用の前記基準部(18)が、前記計測要素(14、15)の光学計測システムによる前記工具の位置の検出において、前記計測要素(14、15)と協働するために前記工具(2)の上の待機位置と計測位置の間で移動でき、前記基準部(18)は前記計測要素取付部(10)上に可動に配置されるとともに、前記基準部(18)が、前記光学計測システムによる前記工具の位置の検出において焦点に集められる光線に、明確に画定され、区別されるエッジを提供する、装置において、
前記基準部(18)が、旋回式または可動なアーム体(19)に蝶番で取り付けられている、ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記基準部(18)は前記アーム体(19)の自由端に設置されていることを特徴とする請求項1記載の工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置。
【請求項3】
前記アーム体(19)は前記計測要素取付部(10)に旋回可能に蝶番で取り付けされていることを特徴とする請求項2記載の工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置。
【請求項4】
前記アーム体(19)は保持具(24)によって前記計測要素取付部(10)に旋回可能に配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置。
【請求項5】
前記保持具(24)の位置は、調整部(25)により調整されることを特徴とする請求項4記載の工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置。
【請求項6】
前記基準部(18)は10mm未満の直径の円筒ピンを含むことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の装置を使用して工具を計測する方法であって、前記基準部(18)は前記工具(2)の計測位置に移動し、前記基準部(18)は、前記光学計測システムによる前記工具の位置の検出において焦点に集められる光線に、明確に画定され、区別されるエッジを提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前置部に従った工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの装置は、例えば、工具を予めセッティングするために使用される。一般に、このような装置は、工具ホルダー内に締め留めされている工具の刃部又はカット面の位置を検出することを可能にする光学計測システムを含んでいる。工作作業のために、計測後に刃部の位置は工作機械の制御装置に伝達が可能である。
【0003】
DE102013218411A1は、工具のセッティングを調整及び/又は計測するための汎用装置を開示する。この装置は、互いに直交して配置されている2本の軸に沿って移動でき、工具の光学計測のための計測手段がそこに設置されている計測要素取付部を含んでいる。実質的にU形状である計測要素取付部の片方の脚部上には光源が配置されており、カメラ又は別な好適形態の吸光部(光吸収部)が他方の脚部に配置されている。このような装置のおかげで、明確に画定された刃部又はカットエッジを有した工具を非常に正確に計測することができ、予備セッティングできる。大抵の場合、計測は、(工具の)セッティングを調整及び/又は計測するための装置と連携しているモニター上で、ソフトウェアの助けを借りて実行される。しかしながら、例えば研磨盤のごとき平坦なカット面を有した工具が計測される場合には、そのカット面が、光学計測システムの焦点の領域内に明確に画定された基準エッジを有しないという潜在的な問題が発生する可能性がある。光学計測システムがそれを基準にして配向処理又は焦点処理される明確な基準エッジは存在しない。このようなことは、この光学計測システムがそこでオペレータによって人力で配向処理されるような機器において発生し、自動化されており、画像処理装置と共に機能する機器においてもまた発生する。よって、その結果、計測の不正確度は百分の数ミリ単位となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって解決されるべき課題は、異なる形態の工具であっても計測可能にするような、上述タイプの工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置を活用可能にすることである。理想的には、計測の不正確度は100分の1ミリ未満に低減される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本願請求項1の特徴を備えたセッティングの調整装置及び/又は計測装置の手段によって解消される。本発明の有利な実用的実施態様並びにさらに進化した改良態様は本願の従属請求項において特定されている。
【0006】
本発明によって開示されているような工具のセッティング(設定、設置)の調整及び/又は計測のための装置は、複数本の軸に沿って移動できて、工具の光学計測のための計測手段が配置されている計測要素取付部を含んでいる。加えて、基準部が計測要素取付部に提供されている。それは、工具上の待機位置と計測位置の間で移動することができ、計測手段と相互作用するように提供されている。工具上の計測位置にまで移動できるこの基準部は、明確に画定された特徴的なエッジを光線に与える。この光線は、光学装置によって正確に焦点処理でき、例えば、正確な位置を決定するために使用することもできる。このように、光学計測システムは、この基準部に対して正確に配向処理でき、さらに基準部に対して焦点処理できる。未画定である表面とは異なり、この基準部はこの光学システムによって明確に検出でき、よって、この計測プロセスを大いに容易化できる。
【0007】
特に有利な改良態様では、この基準部は計測要素取付部に可動式に設置できる。よって、計測要素取付部を動かすことで、基準部は、例えば、計測対象の表面に沿って配置できる。しかしながら、この基準部は、工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置の別な可動部上に配置することも可能である。
【0008】
1つの可能な実用的な態様では、基準部は、例えば、旋回可能なアーム体の自由端に配置できる。そのアーム体は複数本の軸に沿って移動する計測要素取付部に旋回式に設置できる。しかしながら、基準部は、後退した待機位置と延び出た計測位置の間で移動するように計測要素取付部に設置することもできる。
【0009】
本発明の安定した実施態様では、基準部は、旋回可能又は移動可能なアーム体に頑丈に配置できる。異なる配向性を有した表面に容易に適合させるには、基準部を蝶番でアーム体に取り付けることもできる。
【0010】
特に有利な改良態様においては、基準部はアーム体上に離心状態で保持されることができ、グリップ部の手段で移動させることができる。
【0011】
アーム体は保持具の手段によって計測要素取付部に旋回式に取り付けが可能である。この保持具は調整具の手段によって調整できる。さらに、好適にはアーム体は、アーム体に設置されているグリップ部と相互作用するバネ構造を含むこともできる。
【0012】
ユーザの便宜性を向上させるため、基準部と工具の間の接触が完了したことを知らせる表示装置が利用できる。よって、発光ダイオード又は他の表示要素(素子)を使用して、例えば、基準部が工具と接触したことを知らせることが可能である。そのような表示装置は、自動計測が実行される場合や、基準部が工具に向かって自動的に移動する際にも有用である。1つの自動計測改良態様では、計測器具と出力器具の間にデジタル形態にて信号を出力することも可能である。
【0013】
本発明の追加の特徴及び利点は、添付図面に示す以下の好適実施例に基づいて以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工具の計測をセッティングの調整及び/又は計測するための装置の概略的な斜視図である。
図2】計測位置に基準部を備えた計測要素取付部の詳細図である。
図3】基準部を備えた計測要素取付部上に配置されているアーム体の詳細図である。
図4】上方に折り曲げられている待機位置にある基準部を備えた計測要素取付部の詳細図である。
図5】異なる計測位置にある基準部を備えた計測要素取付部の詳細図である。
図6】保持具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に概略的に図示されている工具2のセッティングの調整及び/又は計測のための装置1は、工具2を保持する受領部5がその上に配置されている基台部または底体部3を含み、その受領部は中心軸4の周囲を旋回する。図示されている実用的な実施態様例では、工具2を備えた工具ホルダー6は受領部5に挿入される。受領部5の中心軸4並びに工具ホルダーの中心軸も垂直に配向されるように受領部5は配置されている。
【0016】
基台部又は底体部3には、垂直立脚部7が、受領部5の中心軸4に垂直な第1軸(x軸)8に沿って移動式にガイド(案内)される。この第1軸(x軸)に沿って移動する立脚部7のガイド溝9に沿い、第1軸8に対して直角方向に延びる第2軸11(z軸)に沿って計測要素取付部10が移動式に設置されている。よって、計測要素取付部10は、受領部5の中心軸4に平行で、さらなる軸(x軸)に沿って直角方向にて水平に延びる軸(z軸)に沿って垂直方向に移動できる。基台部または底体部3の立脚部7と、立脚部7の上の計測要素取付部10は、スピンドル機構又はその他の適した駆動機構を介し、モータの手段を利用して、知られた形態で移動できる。しかし、立脚部7と計測要素取付部10をグリップ柄12の手段で手動的に移動させることもできる。
【0017】
2本の軸8と軸11に沿って水平及び垂直に移動できる計測要素取付部10は、実質的にブラケット状またはU形状の形態に設計されており、工具2を包み込み、受領部5の中心軸4に対して直角方向に展開する平面内に存在する2本のアーム部13aとアーム部13bを含んでいる。第1計測要素14と、反対側の第2計測要素15を有した計測手段が、計測要素取付部10に設置されている。図示の実施例においては、光源の形態である第1計測要素14がアーム部13aに配置され、その光源の反対側の受光部の形態である第2計測要素15が他方のアーム部13bの内側に配置されている。計測ビーム(光線)は、アーム部13aに配置されている光源の形態の第1計測要素14から、他方のアーム部13bに配置されている受光部の形態の第2計測要素15に放射できるようになっている。
【0018】
平面図で示されているように計測要素取付部10は、工具2を受領するために2本のアーム部13aとアーム部13bの間にU形状の自由空間部16を有している。光源の形態である第1計測要素14と受光部の形態である第2計測要素15は、計測ビームが計測要素取付部10のアーム部13aとアーム部13bの2つの自由端間の自由空間部16内で発光されるように設計されている。よって、これで、第1計測要素14から第2計測要素15に放射される計測ビームは、工具のさらに大きな表面を通るようにガイド(案内)される。計測ビームを受領する第2計測要素15は、工具の写真を撮り、評価のために制御装置及び/又はコンピュータにそれら写真を転送することができるカメラとすることもできる。さらには、工具置部17を基台部又は底体部3上に設けることもできる。
【0019】
図4に示す待機位置と、図2に示す計測位置の間で移動するように、計測手段と相互作用する基準部18は、計測要素取付部10上に配置できる。図示の実施例においては、基準部18は10mm未満の直径を有した円筒ピン(細棒部)の形態に設計されている。このピン形状の基準部18は、計測要素取付部10に旋回式に蝶番で取り付けられているアーム体19の自由端に設置されている。これで、上方に畳まれた待機位置と下方に畳まれた計測位置の間で基準部18を動かす。しかし、アーム体19も畳むことができ、あるいは側方に移動できる。図示の実施例では、アーム体19は、図3に示す基準部18が工具2の上面20の上だけでなく、図5で示すように、下方から工具2の下面21にも隣接するよう形態化されるように設計されている。1好適実施例では、アーム体19は、例えば、停止機構または磁石である保持機構の手段によって上方の待機位置に維持される。
【0020】
アーム体19の長さは、下方に畳まれた位置の基準部18の中心軸が工具2の中心軸4と交差するように寸法化(決定)される。
【0021】
基準部18は、好適には、相対的に小さな労力で上方の停止位置と下方の停止位置の間で動かせるようにアーム体19の上に取り付けられる。このようなことは、基準部18をアーム体19の受領部隙間22内に偏心して取り付けることによって簡単に実行できる。工具の反対側に向くアーム体19の側部から延び出るグリップ部23を回転させることで、2つの停止位置間を前後に切り替えることが可能である。理想的には、グリップ部23の回転軸は基準部18の側方面線に沿って延びるように構成されている。これで、下方向及び上方向のプローブ操作(調査)時に、アーム体19が常に同一のずれた位置(偏向位置)に残ることを保証する。別例では、基準部18は、線状ガイド機構または旋回機構、等々の手段によって動くこともできる。
【0022】
図2に示されるように、基準部18の反対側を向く面でアーム体19は保持具24の上に取り付けられており、それにより、計測要素取付部10とは別に微調整することが可能になる。この微調整は基準部18の中心軸を第2軸11に平行となるように配向させるのに寄与する。この目的で、保持具24は、例えば、セッティングホイール(輪体)の形態に設計されている調整手段である調整部25を有する。このセッティングホイールを回転させることで、保持具24の上部は、保持具24の下部にまで、第1軸8と第2軸11の両方に実質的に垂直に延びる軸の周囲で旋回できる。
【0023】
さらに、軸部26の周囲を旋回するように保持具24に設置されているアーム体19は、図6で示すように、保持具24の内部に取り付けられているセッティング具28と相互作用するバネ構造(バネ要素)27を含むことができる。1つの可能な実施態様では、このセッティング具28は、回転軸に対して直角に延びるピンを有したレバーの形態に設計されている。このピンの外周は完全な円筒状ではなく、片側に平坦面を有している。第1位置では、このレバーは、ピンの円筒面が上方に指向するように設置されている。これで、バネ構造27をピンの上部に横たわらせる。この構成で、アーム体19を、回転軸に対して平行方向で下方にバネ力により予め付勢させる効果が提供される。この効果は、基準部18が計測対象物に向かって下方から移動し、自身の重量のために、その対象物と当接できないときに特に有用である。第2位置において、このレバーは、平坦側がバネ構造27の方向に指向するように設定される。このバネ構造27は、それがピンの手前側に当接することがないことを確実にすべく寸法化されている(大きさが決められている)。
【0024】
本発明の別実施態様では、アーム体19は、下方側と上方側の両方にバネにより付勢でき、基準部18が工具2の表面の上部に存在するときはアーム体19及び基準部18も常に一定程度の予備付勢力が与えられている。これで、基準本部18は常に加工工具2の表面に当接することが確実になる。
【0025】
アーム体19の位置及び保持具24の位置が図面に示されている領域に限定されず、アーム体19と保持具24を計測要素取付部10の異なる領域に取り付けることができるのは当然のことである。例えば、それらは、自由空間部16を囲む計測要素取付部10の領域、特に、包囲するアーム部13aとアーム部13bの間のU形状領域の中心部に取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 工具のセッティングの調整及び/又は計測のための装置
2 工具
3 基台部又は底体部
4 中心軸
5 受領部
6 工具ホルダー
7 立脚部
8 第1軸
9 ガイド溝
10 計測要素取付部
11 第2軸
12 グリップ柄
13a 第1アーム部
13b 第2アーム部
14 第1計測要素
15 第2計測要素
16 自由空間部
17 工具置部
18 基準部
19 アーム体
20 上面
21 下面
22 受領部隙間
23 グリップ部
24 保持具
25 調整部
26 軸部
27 バネ構造
28 セッティング具
図1
図2
図3
図4
図5
図6