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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B39/00 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019056680
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159220
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上村 章仁
(72)【発明者】
【氏名】藤田 修一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 稔也
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】青木 良憲
【審判官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044775(WO,A1)
【文献】特開2001-342807(JP,A)
【文献】特表2009-529620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラシャフトを回転可能に支持する筒状のベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に連結されるとともに、内燃機関から排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に形成されるタービン室と、
前記タービン室に収容されるとともに前記タービン室に導入された排ガスによって前記インペラシャフトと一体的に回転するタービンインペラと、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンハウジングに流入した排ガスを前記タービン室に導く流路の一部であり、前記タービン室の周囲を取り囲むタービンスクロール流路と、
前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンスクロール流路と前記タービン室とを連通する環状の連通流路と、
前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を形成する板金製かつ環状のベアリングハウジング側流路形成プレートと、を備えたターボチャージャであって、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートは、1枚の板材で前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を構成し、
前記タービンハウジングには、複数の固定ベーン又は複数の可変ベーンを有した中実のタービンシュラウド部が設けられており、
前記複数の固定ベーン又は前記複数の可変ベーンは、前記連通流路に設けられ、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間していることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと対向配置され、前記タービンスクロール流路における前記ベアリングハウジングとは反対側の壁面を形成するタービン側流路形成プレートを備え、
前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記タービンハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記タービン側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、
前記タービン側流路形成プレートの外周側側面は、前記タービン側流路形成プレートの外周側側面と対向する第2対向部材と離間している請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記連通流路における前記ベアリングハウジングとは反対側の壁面を形成するタービンシュラウド部と、
前記連通流路に配置され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記タービンシュラウド部との間隔を保持する間隔保持部材と、を備え、
前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は、前記間隔保持部材と前記ベアリングハウジングとで挟持されることにより、前記ベアリングハウジングに対して移動不能であり、
前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記タービンシュラウド部と前記タービンハウジングとで挟持されることにより、前記タービンハウジングに対して移動不能である請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記タービンハウジングは、前記ベアリングハウジング側に開口し、
前記ベアリングハウジングは、前記タービンハウジングに当接した状態で前記タービンハウジングの開口を覆い、
前記インペラシャフトの回転軸線方向において前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記ベアリングハウジングとの間に介在されるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートを介して前記連通流路と並設され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を前記間隔保持部材に向けて付勢する付勢部材を備える請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレート及び前記間隔保持部材を介して前記タービンシュラウド部に作用する前記付勢部材の付勢力によって、前記タービンハウジングに向けて押圧される請求項4に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記インペラシャフトの回転軸線方向において、前記付勢部材と前記ベアリングハウジング側流路形成プレートとの間には、環状のヒートインシュレータが介在されている請求項4又は請求項5に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記タービンハウジングは、前記ベアリングハウジング側に開口し、
前記ベアリングハウジングは、前記タービンハウジングに当接した状態で前記タービンハウジングの開口を覆い、
前記ベアリングハウジングには、前記インペラシャフトが挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記挿通孔の内周面と前記インペラシャフトの外周面との間にはシール部材が配置され、
前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に装着されるとともに、前記インペラシャフトの回転軸線方向において前記ベアリングハウジングと前記ベアリングハウジング側流路形成プレートとの間に配置され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートを前記間隔保持部材に向けて付勢するばね状インシュレータを備える請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項8】
前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレート及び前記間隔保持部材を介して前記タービンシュラウド部に作用する前記ばね状インシュレータの付勢力によって、前記タービンハウジングに向けて押圧される請求項7に記載のターボチャージャ。
【請求項9】
前記インペラシャフトの回転軸線方向において、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記ベアリングハウジングとの間には、弾性部材が介在されている請求項1~請求項8の何れか一項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャのハウジングは、インペラシャフトを回転可能に支持するベアリングハウジングと、ベアリングハウジングの一端に連結されるとともに内燃機関から排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジングと、ベアリングハウジングの他端に連結されるとともに内燃機関へ導かれる吸気が流れるコンプレッサハウジングとを有している。
【0003】
タービンハウジング内には、タービン室が形成されている。タービン室には、インペラシャフトの一端に連結されるとともにタービン室に導入された排ガスによってインペラシャフトと一体的に回転するタービンインペラが収容されている。また、タービンハウジング内には、タービンハウジングに流入した排ガスをタービン室に導く流路の一部であるタービンスクロール流路と、タービンスクロール流路とタービン室とを連通する連通流路とが形成されている。
【0004】
コンプレッサハウジング内には、インペラシャフトの他端に連結されるとともにタービンインペラと一体的に回転するコンプレッサインペラが収容されている。そして、内燃機関から排出された排ガスによってタービンインペラが回転して、コンプレッサインペラがインペラシャフトを介してタービンインペラと一体的に回転すると、コンプレッサハウジングを流れる吸気が、コンプレッサインペラの回転によって圧縮され、圧縮された吸気が内燃機関に供給される。このようなターボチャージャによる内燃機関への吸気の過給が行われることで、内燃機関の吸気効率が高まり、内燃機関の性能が向上する。
【0005】
ところで、ターボチャージャのタービンハウジングよりも排ガスの流れ方向の下流には、排ガスを浄化する触媒が設けられている。触媒は、活性化温度以上に温度が上昇することで、排ガスの浄化能力を発揮するため、例えば、排ガスの温度が低いときには、触媒の温度が活性化温度以上に上昇していないことがあり、触媒による排ガスの浄化が十分に行われない虞がある。
【0006】
一般的に、タービンハウジングは、剛性を確保する必要があることから、鋳造により肉厚に形成されているため、質量が大きく、熱容量が大きい。このため、タービンハウジング内を流れる排ガスは、タービンハウジング内を流れる間に熱が奪われて、温度が低下し易く、その結果として、触媒の温度が活性化温度以上に上昇するまでの時間が長くなってしまう。よって、例えば、内燃機関の冷間始動時などの触媒の早期暖機が要求される運転条件の時に、触媒の温度を早期に活性化温度以上に上昇させることができなくなってしまう。
【0007】
そこで、例えば特許文献1のターボチャージャでは、タービンスクロール流路におけるベアリングハウジング側の壁面を、板金製かつ環状のベアリングハウジング側流路形成プレートによって形成している。ベアリングハウジング側流路形成プレートは、タービンハウジングへの排ガスの熱の伝達を抑制する。その結果、排ガスがタービンハウジング内を流れる間に、排ガスの温度が低下してしまうことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-156279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1では、ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周縁は、タービンスクロール流路におけるベアリングハウジングとは反対側の壁面を形成するタービン側流路形成部材に固定されている。また、ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周縁は、ハウジングに固定されている。この場合、ベアリングハウジング側流路形成プレートが排ガスの熱によって暖められたときに生じるベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸びが許容され難い。よって、ベアリングハウジング側流路形成プレートに過大な応力が局所的に作用し、ベアリングハウジング側流路形成プレートが変形する虞がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸びを許容できるターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するためのターボチャージャは、インペラシャフトを回転可能に支持する筒状のベアリングハウジングと、前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に連結されるとともに、内燃機関から排出された排ガスが内部を流れるタービンハウジングと、前記タービンハウジング内に形成されるタービン室と、前記タービン室に収容されるとともに前記タービン室に導入された排ガスによって前記インペラシャフトと一体的に回転するタービンインペラと、前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンハウジングに流入した排ガスを前記タービン室に導く流路の一部であり、前記タービン室の周囲を取り囲むタービンスクロール流路と、前記タービンハウジング内に形成されるとともに前記タービンスクロール流路と前記タービン室とを連通する環状の連通流路と、前記タービンスクロール流路及び前記連通流路における前記ベアリングハウジング側の壁面を形成する板金製かつ環状のベアリングハウジング側流路形成プレートと、を備えたターボチャージャであって、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は前記ベアリングハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面と対向する第1対向部材と離間していることを要旨とする。
【0012】
タービンスクロール流路を流れる排ガスは高温であるため、タービンスクロール流路の壁面の一部を構成するベアリングハウジング側流路形成プレートは熱伸びする。このとき、ベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸び量は、内周側よりも外周側で多くなる。ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位はタービンハウジングに対して移動不能な固定部位であり、ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側端部は自由端である。また、ベアリングハウジング側流路形成プレートの外周側側面は、第1対向部材と離間している。よって、ベアリングハウジング側流路形成プレートにおける熱伸び量の多い外周側で、ベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸びを許容できる。
【0013】
また、上記ターボチャージャについて、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと対向配置され、前記タービンスクロール流路における前記ベアリングハウジングとは反対側の壁面を形成するタービン側流路形成プレートを備え、前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記タービンハウジングに対して移動不能な固定部位であるとともに、前記タービン側流路形成プレートの外周側端部は自由端であり、前記タービン側流路形成プレートの外周側側面は、前記タービン側流路形成プレートの外周側側面と対向する第2対向部材と離間しているのが好ましい。
【0014】
タービンスクロール流路を流れる排ガスは高温であるため、タービンスクロール流路の壁面の一部を構成するタービン側流路形成プレートは熱伸びする。このとき、タービン側流路形成プレートの熱伸び量は、内周側よりも外周側で多くなる。タービン側流路形成プレートの内周側部位はタービンハウジングに対して移動不能な固定部位であり、タービン側流路形成プレートの外周側端部は自由端である。また、タービン側流路形成プレートの外周側側面は、第2対向部材と離間している。よって、タービン側流路形成プレートにおける熱伸び量の多い外周側で、タービン側流路形成プレートの熱伸びを許容できる。
【0015】
また、上記ターボチャージャについて、前記連通流路における前記ベアリングハウジングとは反対側の壁面を形成するタービンシュラウド部と、前記連通流路に配置され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記タービンシュラウド部との間隔を保持する間隔保持部材と、を備え、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位は、前記間隔保持部材と前記ベアリングハウジングとで挟持されることにより、前記ベアリングハウジングに対して移動不能であり、前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記タービンシュラウド部と前記タービンハウジングとで挟持されることにより、前記タービンハウジングに対して移動不能であるのが好ましい。
【0016】
これによれば、ベアリングハウジング側流路形成プレートをベアリングハウジングに溶接することなく、ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を固定部位とすることができる。また、タービン側流路形成プレートをタービンハウジングに溶接することなく、タービン側流路形成プレートの内周側部位を固定部位とすることができる。
【0017】
また、上記ターボチャージャについて、前記タービンハウジングは、前記ベアリングハウジング側に開口し、前記ベアリングハウジングは、前記タービンハウジングに当接した状態で前記タービンハウジングの開口を覆い、前記インペラシャフトの回転軸線方向において前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記ベアリングハウジングとの間に介在されるとともに、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートを介して前記連通流路と並設され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を前記間隔保持部材に向けて付勢する付勢部材を備えるのが好ましい。
【0018】
付勢部材が設けられていない場合にベアリングハウジングの外周側部位とタービンハウジングとを当接させると、ベアリングハウジングの寸法公差によっては、ベアリングハウジングと間隔保持部材との隙間がベアリングハウジング側流路形成プレートの板厚よりも大きくなり、ベアリングハウジングと間隔保持部材とでベアリングハウジング側流路形成プレートを十分に挟持できないことがある。これに対し、ベアリングハウジング側流路形成プレートとベアリングハウジングとの間に介在された付勢部材が、ベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を間隔保持部材に向けて付勢する場合、ベアリングハウジングの寸法公差に依らず、付勢部材を介してベアリングハウジングと間隔保持部材とでベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を挟持できる。
【0019】
また、上記ターボチャージャについて、前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレート及び前記間隔保持部材を介して前記タービンシュラウド部に作用する前記付勢部材の付勢力によって、前記タービンハウジングに向けて押圧されるのが好ましい。
【0020】
これによれば、付勢部材の付勢力により、ベアリングハウジングと間隔保持部材とによるベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位の挟持に加えて、タービンシュラウド部とタービンハウジングとによるタービン側流路形成プレートの内周側部位の挟持が可能になる。
【0021】
また、上記ターボチャージャについて、前記インペラシャフトの回転軸線方向において、前記付勢部材と前記ベアリングハウジング側流路形成プレートとの間には、環状のヒートインシュレータが介在されているのが好ましい。
【0022】
これによれば、環状のヒートインシュレータにより、連通流路を流れる排ガスの熱がベアリングハウジング側流路形成プレートを介して付勢部材に伝わることが抑制される。よって、付勢部材の熱変形が抑制され、付勢部材は、ベアリングハウジング側流路形成プレートに対し安定的に付勢力を加えることができる。その結果、ベアリングハウジングと間隔保持部材とでベアリングハウジング側流路形成プレートを安定的に挟持できる。
【0023】
また、上記ターボチャージャについて、前記タービンハウジングは、前記ベアリングハウジング側に開口し、前記ベアリングハウジングは、前記タービンハウジングに当接した状態で前記タービンハウジングの開口を覆い、前記ベアリングハウジングには、前記インペラシャフトが挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記挿通孔の内周面と前記インペラシャフトの外周面との間にはシール部材が配置され、前記ベアリングハウジングにおける前記インペラシャフトの回転軸線方向の一端に装着されるとともに、前記インペラシャフトの回転軸線方向において前記ベアリングハウジングと前記ベアリングハウジング側流路形成プレートとの間に配置され、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートを前記間隔保持部材に向けて付勢するばね状インシュレータを備えるのが好ましい。
【0024】
これによれば、ばね状インシュレータにより、タービン室を流れる排ガスの熱がベアリングハウジングを介してシール部材に伝わることが抑制される。よって、シール部材が熱変形することによる挿通孔の内周面とインペラシャフトの外周面との間のシール性の低下を抑制できる。また、ばね状インシュレータが設けられていない場合にベアリングハウジングの外周側部位とタービンハウジングとを当接させると、ベアリングハウジングの寸法公差によっては、ベアリングハウジングと間隔保持部材との隙間がベアリングハウジング側流路形成プレートの板厚よりも大きくなり、ベアリングハウジングと間隔保持部材とでベアリングハウジング側流路形成プレートを十分に挟持できないことがある。これに対し、ベアリングハウジング側流路形成プレートとベアリングハウジングとの間に介在されたばね状インシュレータがベアリングハウジング側流路形成プレートを間隔保持部材に向けて付勢する場合、ベアリングハウジングの寸法公差に依らず、ばね状インシュレータを介してベアリングハウジングと間隔保持部材とでベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位を挟持できる。
【0025】
また、上記ターボチャージャについて、前記タービン側流路形成プレートの内周側部位は、前記ベアリングハウジング側流路形成プレート及び前記間隔保持部材を介して前記タービンシュラウド部に作用する前記ばね状インシュレータの付勢力によって、前記タービンハウジングに向けて押圧されるのが好ましい。
【0026】
これによれば、ばね状インシュレータの付勢力により、ベアリングハウジングと間隔保持部材とによるベアリングハウジング側流路形成プレートの内周側部位の挟持に加えて、タービンシュラウド部とタービンハウジングとによるタービン側流路形成プレートの内周側部位の挟持が可能になる。
【0027】
また、上記ターボチャージャについて、前記インペラシャフトの回転軸線方向において、前記ベアリングハウジング側流路形成プレートと前記ベアリングハウジングとの間には、弾性部材が介在されているのが好ましい。
【0028】
これによれば、弾性部材は、ベアリングハウジング側流路形成プレートの振動を吸収する。その結果、ベアリングハウジング側流路形成プレートが振動してベアリングハウジングに接触することで生じる騒音の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ベアリングハウジング側流路形成プレートの熱伸びを許容できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態のターボチャージャを示す側断面図。
図2】ターボチャージャの一部を拡大して示す側断面図。
図3】ターボチャージャの別例を示す側断面図。
図4】ターボチャージャの別例を示す側断面図。
図5】ターボチャージャの別例を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、ターボチャージャを具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ10のハウジング11は、ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40を有している。ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40は、鋳鉄製である。タービンハウジング30の内部には、内燃機関Eから排出された排ガスが流れる。コンプレッサハウジング40の内部には、内燃機関Eへ導かれる吸気が流れる。本実施形態では、内燃機関Eはガソリンエンジンである。
【0032】
ベアリングハウジング20は、筒状であり、インペラシャフト12を回転可能に支持する。インペラシャフト12の回転軸線方向の一端には、タービンインペラ13が連結されている。詳しくは、インペラシャフト12における回転軸線方向の一端面には、嵌合凹部12aが形成され、タービンインペラ13には、インペラシャフト12に向けて突出するとともに嵌合凹部12aに嵌合可能な嵌合凸部13aが形成されている。そして、タービンインペラ13は、嵌合凸部13aがインペラシャフト12の嵌合凹部12aに嵌合された状態で、インペラシャフト12と一体的に回転可能となるように、溶接などによりインペラシャフト12に取り付けられている。インペラシャフト12の回転軸線方向の他端には、コンプレッサインペラ14が連結されている。
【0033】
タービンハウジング30は、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連結されている。コンプレッサハウジング40は、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の他端に連結されている。
【0034】
ベアリングハウジング20は、インペラシャフト12が挿通される挿通孔21hが形成された筒状の本体部21を有している。本体部21は、挿通孔21hに挿通されたインペラシャフト12を、ラジアル軸受15を介して回転可能に支持している。本体部21の軸線方向は、インペラシャフト12の回転軸線方向に一致する。
【0035】
本体部21は、大径部211と、大径部211におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連続するとともに、大径部211よりも外径が小径の小径部212とを有している。小径部212は、インペラシャフト12の回転軸線方向においてタービンハウジング30側に位置している。本体部21は、小径部212におけるインペラシャフト12の回転軸線方向に位置する小径側端面21aから突出する筒状の突出部22を有している。突出部22は、インペラシャフト12の回転軸線方向において小径部212から離れるほど外径が縮径する形状である。挿通孔21hは、突出部22の先端面22aに開口している。突出部22における挿通孔21hの内周面とインペラシャフト12の外周面との間には、シール部材としてのCリング17が介在している。突出部22の先端面22aにおける挿通孔21hの周囲には、突出部22の先端面22aから突出する環状の凸部22bが形成されている。
【0036】
大径部211におけるインペラシャフト12の回転軸線方向に位置する大径側端面21bには、収容凹部23が形成されている。挿通孔21hは、収容凹部23の底面に開口している。収容凹部23の孔径は、挿通孔21hの孔径よりも大きい。収容凹部23の軸心は、挿通孔21hの軸心に一致している。収容凹部23内には、スラスト軸受16が収容されている。スラスト軸受16は、収容凹部23の底面に接した状態で収容凹部23内に収容されている。
【0037】
ベアリングハウジング20は、小径部212の外周面からインペラシャフト12の径方向外側に突出する小径側フランジ部24と、大径部211の外周面における小径部212とは反対側の端部からインペラシャフト12の径方向外側に突出する大径側フランジ部25とを有している。小径側フランジ部24及び大径側フランジ部25はそれぞれ、円環状である。
【0038】
コンプレッサハウジング40は、有底筒状のコンプレッサ本体部41を有している。コンプレッサ本体部41は、略円板状の底壁41aと、底壁41aの外周縁からインペラシャフト12の回転軸線方向に立設される筒状の周壁41bとを有している。周壁41bにおける底壁41aとは反対側の一面は開口している。コンプレッサハウジング40は、周壁41bにおける開口側の端部と大径側フランジ部25とが図示しないボルトにより取り付けられることにより、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の他端に連結されている。周壁41bの開口は、本体部21の大径側端面21b及び大径側フランジ部25における小径側フランジ部24とは反対側の端面によって閉塞されている。つまり、周壁41bの開口は、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の他端に位置する端面によって閉塞されている。
【0039】
また、コンプレッサハウジング40は、底壁41aから周壁41bとは反対側に突出するコンプレッサ筒状部42を有している。コンプレッサ筒状部42は、吸気口42aを有している。吸気口42aは、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。吸気口42aの軸心は、インペラシャフト12の回転軸線に一致している。
【0040】
コンプレッサハウジング40内には、コンプレッサインペラ室43、ディフューザ流路44、及びコンプレッサスクロール流路45が形成されている。コンプレッサインペラ室43は、吸気口42aに連通するとともにコンプレッサインペラ14を収容する。コンプレッサスクロール流路45は、コンプレッサインペラ室43の外周を渦巻状に周回している。ディフューザ流路44は、コンプレッサインペラ室43の周囲で環状に延びるとともに、コンプレッサインペラ室43とコンプレッサスクロール流路45とを連通する。
【0041】
コンプレッサハウジング40内には、筒状のコンプレッサシュラウド部46が設けられている。コンプレッサシュラウド部46は、コンプレッサ筒状部42の内周面に沿って延びる筒部46aと、筒部46aに連続するとともに底壁41aの内底面に沿って環状に延びる環状部46bとを有している。コンプレッサインペラ室43は、コンプレッサシュラウド部46の筒部46aとベアリングハウジング20の収容凹部23とで囲まれた空間である。
【0042】
コンプレッサインペラ14は、インペラシャフト12の回転軸線方向に延び、かつインペラシャフト12が挿通可能なシャフト挿通孔14hを有している。インペラシャフト12の回転軸線方向の他端部は、コンプレッサインペラ室43に突出している。そして、コンプレッサインペラ14は、インペラシャフト12におけるコンプレッサインペラ室43に突出している部分がシャフト挿通孔14hに挿通された状態で、インペラシャフト12と一体的に回転可能となるように、ナットなどを介してインペラシャフト12に取り付けられている。コンプレッサインペラ14におけるベアリングハウジング20側の端部は、図示しないシールリングカラーやスラストカラーなどを介してスラスト軸受16により支持されている。スラスト軸受16は、コンプレッサインペラ14に作用するスラスト方向の荷重を受ける。
【0043】
コンプレッサシュラウド部46の環状部46bにおけるベアリングハウジング20と対向する対向面46cは、インペラシャフト12の径方向に延びる平坦面状である。そして、ディフューザ流路44は、環状部46bの対向面46cと、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の他端に位置する端面であって、かつ環状部46bの対向面46cとインペラシャフト12の回転軸線方向で対向する部分との間に形成されている。
【0044】
コンプレッサハウジング40内には、環状のスクロール部材47が設けられている。スクロール部材47は、コンプレッサシュラウド部46の周囲に延びている。コンプレッサスクロール流路45は、コンプレッサシュラウド部46の環状部46bの外周面、コンプレッサ本体部41の底壁41aの内底面、及びスクロール部材47の内周面によって形成されている。なお、スクロール部材47及びコンプレッサシュラウド部46が、コンプレッサハウジング40と別部材ではなく、コンプレッサハウジング40に一体形成されている構成であってもよい。
【0045】
図2に示すように、タービンハウジング30は、タービンインペラ13を取り囲む環状のタービン本体部31を備える。タービン本体部31は、外周壁31a、内周壁31b、及び接続壁31cを有している。外周壁31a及び内周壁31bはそれぞれ、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。内周壁31bは、外周壁31aの内側に位置している。接続壁31cは、外周壁31aにおけるインペラシャフト12の回転軸線方向のベアリングハウジング20とは反対側の端部と、内周壁31bにおけるインペラシャフト12の回転軸線方向のベアリングハウジング20とは反対側の端部とを接続する。接続壁31cは、ベアリングハウジング20とは反対側に向けて凸となる弧状に湾曲した形状である。タービン本体部31は、ベアリングハウジング20側に開口している。
【0046】
タービン本体部31は、インペラシャフト12の回転軸線方向におけるベアリングハウジング20側に外周側端面31d及び内周側端面31eを有している。外周側端面31dは、外周壁31aの端面である。内周側端面31eは、内周壁31bの端面であり、外周側端面31dの内側に位置している。インペラシャフト12の回転軸線方向において、外周側端面31dは、内周側端面31eよりもベアリングハウジング20側に突出している。タービン本体部31は、外周壁31aの外面におけるベアリングハウジング20側の端部から、インペラシャフト12の径方向外側に向けて突出する連結突出部31fを有している。また、タービン本体部31の外周側端面31dの内周部には、溝部31gが凹設されている。溝部31gは、外周壁31aの内面に開口している。溝部31gは、インペラシャフト12の径方向に延びる内底面311と、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びる内周面312とによって形成されている。
【0047】
図1に示すように、タービンハウジング30は、タービン本体部31の内周壁31bからタービン本体部31の開口とは反対側に向けて延びるタービン筒状部32を有している。タービン筒状部32は、タービン本体部31から離れるにつれて拡径する形状である。タービン筒状部32内には、吐出口33が形成されている。吐出口33は、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。吐出口33の軸心は、インペラシャフト12の回転軸線に一致している。タービン筒状部32には、図示しない下流側排気管が接続されている。下流側排気管は、ターボチャージャ10と、タービンハウジング30よりも排ガスの流れ方向の下流に設けられる図示しない触媒とを接続する。触媒は、排ガスを浄化する。触媒は、活性化温度以上に温度が上昇することで、排ガスの浄化能力を発揮する。
【0048】
図2に示すように、ベアリングハウジング20は、タービン本体部31の開口を覆う円環状の閉塞プレート26を備える。閉塞プレート26におけるインペラシャフト12の回転軸線方向のタービン本体部31側に位置する第1端面26aには、タービン本体部31に向けて突出する円環状の第1突出部261及び第2突出部262が形成されている。第1突出部261は、閉塞プレート26の外周縁寄りに形成され、第2突出部262は、閉塞プレート26の内周縁寄りに形成されている。また、閉塞プレート26におけるインペラシャフト12の回転軸線方向のタービン本体部31とは反対側の第2端面26bには、円環状の第3突出部263が形成されている。第3突出部263は、閉塞プレート26の内周縁寄りに形成されている。閉塞プレート26は、第3突出部263の先端面の外周縁からインペラシャフト12の径方向に立設される連結突起264を有している。
【0049】
閉塞プレート26は、クランプ部材18の締結力によって、本体部21の小径側フランジ部24と連結突起264とが挟み込まれることにより、本体部21に連結されている。閉塞プレート26が本体部21に連結された状態において、閉塞プレート26は、本体部21の突出部22の周囲を取り囲むように位置している。
【0050】
インペラシャフト12の径方向において、本体部21の突出部22の外面と閉塞プレート26の内周面との間には、被覆部材27が配置されている。被覆部材27は、ヒートインシュレータである。被覆部材27は、本体部21の突出部22の外面に沿う形状であり、突出部22の外面から離間して配置されている。被覆部材27の内周部は、突出部22の先端面22aに固定されるとともに、被覆部材27の内周縁は、凸部22bの外周面に対向している。被覆部材27の外周部は、第3突出部263の先端面と本体部21の小径側端面21aとで挟み込まれている。被覆部材27の外周縁は、連結突起264の内周面と対向している。
【0051】
閉塞プレート26における第1突出部261よりも径方向外側に位置する外周側部位は、インペラシャフト12の回転軸線方向において、タービン本体部31の溝部31gの内底面311とワッシャWの一端面との間に配置されている。閉塞プレート26の第1端面26aにおける外周側部位を構成する部分は、タービン本体部31の溝部31gの内底面311と当接し、閉塞プレート26の第2端面26bにおける外周側部位を構成する部分は、ワッシャWの一端面の一部と当接している。また、ワッシャWの一端面は、タービン本体部31の外周側端面31dと当接している。閉塞プレート26の外周縁は、タービン本体部31の溝部31gの内周面312と対向している。
【0052】
ベアリングハウジング20とタービンハウジング30とは、ボルトBによって連結される。ボルトBは、閉塞プレート26がタービン本体部31とワッシャWとの間に配置された状態で、ワッシャWを貫通し、外周壁31aの連結突出部31fに螺合される。タービンハウジング30は、閉塞プレート26の外周側部位がワッシャWとタービン本体部31とによってインペラシャフト12の回転軸線方向に挟み込まれることにより、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連結されている。
【0053】
タービンハウジング30のタービン本体部31内には、タービン室34、連通流路35、及びタービンスクロール流路36が形成されている。タービンインペラ13は、タービン室34に収容されている。タービンスクロール流路36は、タービン室34の外周を渦巻状に周回している。よって、タービンスクロール流路36は、タービン室34の周囲を取り囲む。タービンスクロール流路36は、図示しない吸入口からタービンハウジング30に流入した排ガスをタービン室34に導く流路の一部である。連通流路35は、タービン室34の周囲で環状に延びるとともに、タービンスクロール流路36とタービン室34とを連通する。
【0054】
タービンハウジング30のタービン本体部31の内側には、タービンシュラウド部51が設けられている。タービンシュラウド部51は、タービン筒状部32の内周面に沿って延びる筒部51aと、筒部51aに連続するとともにタービン本体部31の内周側端面31eに沿って環状に延びる環状部51bとを有している。タービンシュラウド部51は、環状部51bにおける筒部51aとは反対側の一端面511に固定された複数の固定ベーン52を有している。複数の固定ベーン52は、環状部51bの周方向において互いに間隔を置いてそれぞれ配置されている。環状部51bに対する各固定ベーン52の配置角度は、連通流路35における流路断面積に対応している。連通流路35の流路断面積は、タービン室34に導かれる排ガスの流速が所望の流速になるように予め設定され、各固定ベーン52の配置角度は、設定された連通流路35の流路断面積となるように設定されている。
【0055】
ターボチャージャ10は、タービンハウジング30のタービン本体部31内に設けられた環状の第1流路形成プレート53を有している。第1流路形成プレート53は、板金製であり、第1流路形成プレート53の厚みは、タービンハウジング30の厚みよりも薄い。第1流路形成プレート53は、タービン本体部31の外周壁31a、内周壁31b、及び接続壁31cによって囲まれた空間に収容されている。第1流路形成プレート53は、タービン室34の外周を渦巻状に周回している。第1流路形成プレート53は、タービンスクロール流路36の壁面の一部を形成する流路形成部位54を有している。流路形成部位54は、外周部54aと、外周部54aの内側に位置する内周部54bと、外周部54aと内周部54bとを接続する接続部54cを有している。
【0056】
詳しくは、外周部54aは、タービン本体部31の外周壁31aの内面に沿った形状であり、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。内周部54bは、タービン本体部31の内周壁31bにおける外周壁31a側の内面に沿った形状である。接続部54cは、外周部54aにおけるインペラシャフト12の回転軸線方向のベアリングハウジング20とは反対側の端部と、内周部54bにおけるインペラシャフト12の回転軸線方向のベアリングハウジング20とは反対側の端部とを接続する。接続部54cは、タービン本体部31の接続壁31cの内面に沿った形状である。つまり、接続部54cは、ベアリングハウジング20とは反対側に向けて凸となる弧状に湾曲した形状である。流路形成部位54は、ベアリングハウジング20側に開口している。外周部54aにおける開口側の端部には、インペラシャフト12の径方向外側に突出する環状リブ53aが形成されている。環状リブ53aは、第1流路形成プレート53における外周側端部であり、環状リブ53aの先端面53bは、第1流路形成プレート53における外周側側面である。
【0057】
流路形成部位54の外周部54aは、インペラシャフト12の径方向において、タービン本体部31の外周壁31aの内側に位置している。外周部54aと外周壁31aとの間には隙間が設けられている。流路形成部位54の内周部54bは、インペラシャフト12の径方向において、タービン本体部31の内周壁31bよりも外側に位置している。内周部54bと内周壁31bとの間には隙間が設けられている。流路形成部位54の接続部54cは、インペラシャフト12の回転軸線方向において、タービン本体部31の接続壁31cよりもベアリングハウジング20側に位置している。つまり、流路形成部位54は、タービン本体部31と離間した状態でタービン本体部31内に収容されている。流路形成部位54とタービン本体部31との間の空間は、第1断熱層55となっている。インペラシャフト12の径方向において、環状リブ53aの先端面53bは、タービン本体部31の外周壁31aの内面と隙間S1を空けて対向している。言い換えると、環状リブ53aの先端面53bは、タービン本体部31の外周壁31aと離間している。
【0058】
インペラシャフト12の径方向において、流路形成部位54の外周部54aと、タービン本体部31の外周壁31aとの間には、弾性部材としての第1弾性部材61が介在されている。第1弾性部材61は、環状であり、流路形成部位54の外周部54aに取り付けられている。本実施形態では、第1弾性部材61は、ワイヤーメッシュであり、マイクロスポット溶接により流路形成部位54の外周部54aに溶接されている。第1弾性部材61は、流路形成部位54の外周部54aとタービン本体部31の外周壁31aとの間に押し潰された状態で配置されている。流路形成部位54の外周部54aは、第1弾性部材61を介してタービン本体部31に支持されている。
【0059】
また、第1流路形成プレート53は、流路形成部位54の内周部54bにおける開口側の端部からインペラシャフト12の径方向内側に突出するとともにインペラシャフト12の径方向に沿って平面状に延びる環状の平板部53cを有している。平板部53cは、第1流路形成プレート53の内周側部位である。平板部53cは、インペラシャフト12の回転軸線方向において、タービンシュラウド部51の環状部51bにおける筒部51a側の他端面512と、タービン本体部31の内周側端面31eとの間に位置している。
【0060】
ターボチャージャ10は、タービンスクロール流路36の壁面の一部を形成する環状の第2流路形成プレート56を有している。第2流路形成プレート56は、板金製であり、第2流路形成プレート56の厚みは、タービンハウジング30の厚みよりも薄い。インペラシャフト12の径方向において、第2流路形成プレート56は、タービンインペラ13の外側に位置している。また、インペラシャフト12の回転軸線方向において、第2流路形成プレート56は、閉塞プレート26と第1流路形成プレート53との間に位置している。第2流路形成プレート56の第1端面56aは、閉塞プレート26の第1端面26aと対向し、第2流路形成プレート56の第2端面56bは、一部が第1流路形成プレート53の流路形成部位54の接続部54cと対向している。第2流路形成プレート56は、内周側端部が第1端面56a側に向けて突出するリブ561を有している。第2流路形成プレート56におけるリブ561以外の部分は平板状である。
【0061】
第2流路形成プレート56の外周側端部56cは、閉塞プレート26の第1突出部261の先端面と、第1流路形成プレート53の環状リブ53aとの間に位置している。第2流路形成プレート56の外周側端部56cは、閉塞プレート26の第1突出部261の先端面と離間し、第1流路形成プレート53の環状リブ53aと当接している。環状リブ53aは、第2流路形成プレート56とは反対側では第1弾性部材61と離間している。上述した第1流路形成プレート53の環状リブ53a、及び第2流路形成プレート56の外周側端部56cはそれぞれ、自由端である。また、インペラシャフト12の径方向において、第2流路形成プレート56の外周側側面56dは、タービン本体部31の外周壁31aの内面と隙間S2を空けて対向している。言い換えると、第2流路形成プレート56の外周側側面56dは、タービン本体部31の外周壁31aと離間している。本実施形態では、タービン本体部31の外周壁31aは、インペラシャフト12の径方向において第2流路形成プレート56の外周側側面56dと対向する第1対向部材であり、かつインペラシャフト12の径方向において第1流路形成プレート53の環状リブ53aの先端面53bと対向する第2対向部材である。
【0062】
インペラシャフト12の回転軸線方向において、第2流路形成プレート56の第1端面56aと閉塞プレート26の第1端面26aとの間には、弾性部材としての第2弾性部材62が介在されている。第2弾性部材62は、インペラシャフト12の径方向において第1突出部261よりも内側に位置している。第2弾性部材62は、環状であり、第2流路形成プレート56の第1端面56aに取り付けられている。本実施形態では、第2弾性部材62は、ワイヤーメッシュであり、マイクロスポット溶接により第2流路形成プレート56の第1端面56aにおける外周側端部56c寄りの部分に溶接されている。第2弾性部材62は、閉塞プレート26の第1端面26aと、第2流路形成プレート56の第1端面56aとの間に押し潰された状態で配置されている。第2流路形成プレート56の外周側端部56c寄りの部分は、第2弾性部材62を介して閉塞プレート26に支持されている。
【0063】
また、インペラシャフト12の回転軸線方向において、第2流路形成プレート56の第1端面56aと閉塞プレート26の第1端面26aとの間には、付勢部材としての環状の板ばね57が介在されている。板ばね57は、インペラシャフト12の径方向において第2弾性部材62よりも内側に位置している。板ばね57は、原形状に対してインペラシャフト12の回転軸線方向に圧縮された状態で閉塞プレート26と第2流路形成プレート56とによって挟まれている。また、板ばね57の外周側部位は、閉塞プレート26の第1端面26aに接触し、板ばね57の内周側部位は、第2流路形成プレート56の第1端面56aと接触している。板ばね57は、原形状に戻ろうとする反力により、第2流路形成プレート56の内周側部位56eの一部をベアリングハウジング20とは反対側に向けて付勢する。第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、ベアリングハウジング20と、固定ベーン52におけるタービンシュラウド部51とは反対側の端面52aとの間に位置している。インペラシャフト12の回転軸線方向での第2流路形成プレート56の第2端面56bとタービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511との間隔は、固定ベーン52により保持されている。つまり、本実施形態の固定ベーン52は、第2流路形成プレート56の第2端面56bとタービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511との間隔を保持する間隔保持部材でもある。
【0064】
板ばね57が第2流路形成プレート56の内周側部位56eの一部をベアリングハウジング20とは反対側、すなわち固定ベーン52に向けて付勢することにより、第1流路形成プレート53の平板部53c、タービンシュラウド部51の環状部51b、固定ベーン52、及び第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、タービン本体部31の内周側端面31eに押圧された状態で内周側端面31eに支持されている。第1流路形成プレート53の平板部53cは、タービンシュラウド部51の環状部51bの他端面512と、タービン本体部31の内周側端面31eとで挟み込まれる。よって、第1流路形成プレート53において平板部53cは、タービンハウジング30に対して移動不能な固定部位である。また、第2流路形成プレート56の内周側部位56eの一部は、板ばね57を介して閉塞プレート26と固定ベーン52とで挟持される。よって、第2流路形成プレート56において内周側部位56eは、ベアリングハウジング20に対して移動不能な固定部位である。
【0065】
タービン室34は、タービンシュラウド部51の筒部51aの内周面と、被覆部材27の外面とによって囲まれた空間である。連通流路35は、タービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511と第2流路形成プレート56の第2端面56bにおける内周側部位56eを構成する部分との間に形成される空間である。よって、第2流路形成プレート56の第2端面56bにおける内周側部位56eを構成する部分は、連通流路35におけるベアリングハウジング20側の壁面を形成している。タービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511は、連通流路35におけるベアリングハウジング20とは反対側の壁面を形成している。連通流路35には、複数の固定ベーン52が設けられている。
【0066】
タービンスクロール流路36は、第1流路形成プレート53の流路形成部位54の外周部54a、内周部54b、及び接続部54cと、第2流路形成プレート56の第2端面56bとによって囲まれた空間である。第2流路形成プレート56の第2端面56bは、タービンスクロール流路36におけるベアリングハウジング20側の壁面を形成している。よって、第2流路形成プレート56は、タービンスクロール流路36及び連通流路35におけるベアリングハウジング20側の壁面を形成するベアリングハウジング側プレートである。また、第1流路形成プレート53は、タービンスクロール流路36におけるベアリングハウジング20とは反対側の壁面を形成するタービン側プレートである。板ばね57における第2流路形成プレート56に接触する内周側部位は、第2流路形成プレート56を介して連通流路35と並設されている。図示は省略するが、第1流路形成プレート53の流路形成部位54は、吸入口から連通流路35に向けてタービンスクロール流路36を周回するにつれて、タービンスクロール流路36の流路断面積が徐々に小さくなるような形状である。
【0067】
ターボチャージャ10は、タービン筒状部32の内側に配置され、吐出口33の壁面を形成する筒状の吐出口形成部材59を備えている。吐出口形成部材59は、板金製であり、吐出口形成部材59の厚みは、タービンハウジング30の厚みよりも薄い。吐出口形成部材59の外周面は、タービン筒状部32の内周面から離間している。吐出口形成部材59の外周面とタービン筒状部32の内周面との間の空間は、第2断熱層60となっている。吐出口形成部材59の外周面におけるタービン室34側の端部とタービン筒状部32の内周面との間には、第3弾性部材63が介在されている。第3弾性部材63は、環状であり、吐出口形成部材59の外周面に取り付けられている。本実施形態では、第3弾性部材63は、ワイヤーメッシュであり、マイクロスポット溶接により吐出口形成部材59の外周面に溶接されている。第3弾性部材63は、吐出口形成部材59の外周面とタービン筒状部32の内周面との間に押し潰された状態で配置されている。吐出口形成部材59は、第3弾性部材63を介してタービン筒状部32に支持されている。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
内燃機関Eから排出された排ガスは、吸入口を介してタービンスクロール流路36に導かれる。タービンスクロール流路36に導かれた排ガスは、連通流路35を介してタービン室34に導かれる。排ガスがタービンスクロール流路36を流れる際、第1断熱層55によってタービンハウジング30のタービン本体部31への排ガスの熱の伝達が抑制されている。タービン室34に排ガスが導入されると、タービンインペラ13は、タービン室34に導入された排ガスによって回転する。そして、タービンインペラ13に回転に伴って、コンプレッサインペラ14がインペラシャフト12を介してタービンインペラ13と一体的に回転する。コンプレッサインペラ14が回転すると、吸気口42aを介してコンプレッサインペラ室43に導入された吸気が、コンプレッサインペラ14の回転によって圧縮されるとともに、ディフューザ流路44を通過する際に減速され、吸気の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換される。そして、高圧となった吸気がコンプレッサスクロール流路45に吐出され、内燃機関Eに供給される。このようなターボチャージャ10による内燃機関Eへの吸気の過給が行われることで、内燃機関Eの吸気効率が高まり、内燃機関Eの性能が向上する。タービン室34を流れる排ガスは、吐出口33から下流側排気管を通過して触媒に導かれ、触媒によって浄化される。排ガスが吐出口33を流れる際、第2断熱層60によってタービンハウジング30のタービン筒状部32への排ガスの熱の伝達が抑制されている。
【0069】
ところで、タービンスクロール流路36を流れる排ガスの温度は、例えば900~950度と高温である。このため、タービンスクロール流路36を構成する第2流路形成プレート56は熱伸びする。このとき、第2流路形成プレート56の熱伸び量は、内周側よりも外周側で多くなる。本実施形態では、第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、板ばね57を介して閉塞プレート26の第1端面26aと複数の固定ベーン52とで挟持されることにより、ベアリングハウジング20に対して移動不能な固定部位である。その一方、第2流路形成プレート56の外周側端部56cは、自由端である。また、第2流路形成プレート56の外周側側面56dは、タービン本体部31の外周壁31aの内面と離間している。よって、第2流路形成プレート56における熱伸び量の多い外周側で第2流路形成プレート56の熱伸びが許容される。
【0070】
本実施形態の効果について説明する。
(1)タービンスクロール流路36を流れる排ガスは高温であるため、タービンスクロール流路36を構成する第2流路形成プレート56は熱伸びする。このとき、第2流路形成プレート56の熱伸び量は内周側よりも外周側で多くなる。第2流路形成プレート56の内周側部位56eはベアリングハウジング20に対して移動不能な固定部位であり、第2流路形成プレート56の外周側端部56cは自由端である。また、第2流路形成プレート56の外周側側面56dは、タービン本体部31の外周壁31aの内面と離間している。よって、第2流路形成プレート56における熱伸び量の多い外周側で第2流路形成プレート56の熱伸びを許容できる。
【0071】
(2)タービンスクロール流路36を流れる排ガスは高温であるため、タービンスクロール流路36を構成する第1流路形成プレート53は熱伸びする。このとき、第1流路形成プレート53の熱伸び量は、内周側よりも外周側で多くなる。第1流路形成プレート53の平板部53cは、タービンハウジング30に対して移動不能な固定部位であり、第1流路形成プレート53の外周側端部である環状リブ53aは自由端である。また、環状リブ53aの先端面53bは、タービン本体部31の外周壁31aの内面と離間している。よって、第1流路形成プレート53における熱伸び量の多い外周側で第1流路形成プレート53の熱伸びを許容できる。
【0072】
(3)第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、板ばね57を介して閉塞プレート26の第1端面26aと複数の固定ベーン52とで挟持されることにより、ベアリングハウジング20に対して移動不能な固定部位とされる。よって、第2流路形成プレート56をベアリングハウジング20に溶接することなく、第2流路形成プレート56の内周側部位56eを固定部位とすることができる。また、第1流路形成プレート53の平板部53cはタービンシュラウド部51の環状部51bとタービン本体部31の内周壁31bとによって挟持されることにより、タービンハウジング30に対して移動不能な固定部位とされる。よって、第1流路形成プレート53をタービンハウジング30に溶接することなく、第1流路形成プレート53の平板部53cを固定部位とすることができる。
【0073】
(4)インペラシャフト12の回転軸線方向において第2流路形成プレート56と閉塞プレート26との間には、板ばね57が介在されている。板ばね57が設けられていない場合、閉塞プレート26の第1端面26aにおける外周側部位を構成する部分とタービン本体部31の溝部31gの内底面311とを当接させると、閉塞プレート26の寸法公差によっては、閉塞プレート26の第1端面26aと固定ベーン52の端面52aとの隙間が第2流路形成プレート56の板厚よりも大きくなり、閉塞プレート26と固定ベーン52とで第2流路形成プレート56の内周側部位56eを十分に挟持できないことがある。これに対し、板ばね57が第2流路形成プレート56の内周側部位56eを固定ベーン52に向けて付勢する場合、閉塞プレート26の寸法公差に依らず、板ばね57を介して閉塞プレート26と固定ベーン52とで第2流路形成プレート56の内周側部位56eを挟持できる。
【0074】
(5)タービンシュラウド部51の環状部51bには、第2流路形成プレート56及び固定ベーン52を介して、タービン本体部31の内周壁31bに向けた板ばね57の付勢力が作用する。第1流路形成プレート53の平板部53cは、タービンシュラウド部51の環状部51bに作用した付勢力によって、タービン本体部31の内周壁31bに向けて押圧される。よって、板ばね57の付勢力により、ベアリングハウジング20と固定ベーン52とによる第2流路形成プレート56の内周側部位56eの挟持に加えて、タービンシュラウド部51とタービンハウジング30とによる第1流路形成プレート53の平板部53cの挟持が可能になる。
【0075】
(6)インペラシャフト12の回転軸線方向において、第2流路形成プレート56の外周側端部56c寄りの部分と閉塞プレート26との間には第2弾性部材62が介在されている。第2弾性部材62は、第2流路形成プレート56の振動を吸収する。その結果、第2流路形成プレート56が振動して閉塞プレート26に接触することで生じる騒音の発生を抑制できる。
【0076】
(7)ベアリングハウジング20の突出部22は、被覆部材27によって覆われている。被覆部材27は、タービン室34を流れる排ガスの熱がベアリングハウジング20を介してCリング17に伝わることを抑制する。よって、Cリング17が熱変形することによる挿通孔21hの内周面とインペラシャフト12の外周面との間のシール性の低下を抑制できる。
【0077】
(8)タービンスクロール流路36の壁面を板金製の第1流路形成プレート53及び第2流路形成プレート56によって形成することで、鋳鉄製のベアリングハウジング20やタービンハウジング30によって形成する場合と比較して、タービンスクロール流路36の壁面の表面の粗さが低減される。よって、ターボチャージャ10の効率を向上できる。
【0078】
(9)第1流路形成プレート53の流路形成部位54とタービン本体部31との間には第1断熱層55が設けられている。このため、タービンスクロール流路36を流れる排ガスの熱がタービン本体部31に伝わることを抑制できる。また、タービン筒状部32と吐出口形成部材59との間には第2断熱層60が設けられている。このため、吐出口33を流れる排ガスの熱がタービン筒状部32に伝わることを抑制できる。よって、タービンハウジング30の材料に、鋳鋼よりも耐熱性は劣るものの安価な鋳鉄を採用できる。その結果、ターボチャージャ10の製造コストを低減できる。
【0079】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図3に示すように、インペラシャフト12の回転軸線方向において、板ばね57と第2流路形成プレート56との間には、環状プレート71が介在されていてもよい。環状プレート71は、ヒートインシュレータである。環状プレート71は、内周側部位がベアリングハウジング20側に向けて突出する第1リブ71aと、外周側部位がベアリングハウジング20側に向けて突出する第2リブ71bとを有している。よって、環状プレート71は、第2流路形成プレート56に向けて凸となる湾曲形状である。環状プレート71における第1リブ71a及び第2リブ71bとは反対側の端面71cは、第2流路形成プレート56の第1端面56aと当接している。
【0080】
板ばね57の外周側部位は、上記実施形態と同様、閉塞プレート26の第1端面26aに接触し、板ばね57の内周側部位は、環状プレート71における第1リブ71a及び第2リブ71bが突出する側の端面71dと接触している。板ばね57は、環状プレート71を介して第2流路形成プレート56の内周側部位56eの一部を固定ベーン52に向けて付勢する。これにより、第1流路形成プレート53の平板部53c、タービンシュラウド部51の環状部51b、固定ベーン52、第2流路形成プレート56の内周側部位56e、及び環状プレート71は、タービン本体部31の内周側端面31eに押圧された状態で内周側端面31eに支持されている。
【0081】
この場合、環状プレート71により、連通流路35を流れる排ガスの熱が第2流路形成プレート56を介して板ばね57に伝わることが抑制される。このため、板ばね57の熱変形が抑制され、板ばね57は、第2流路形成プレート56に対し安定的に付勢力を加えることができる。よって、閉塞プレート26と固定ベーン52とで第2流路形成プレート56を安定的に挟持できる。
【0082】
図4に示すように、ターボチャージャ10は、被覆部材27及び板ばね57に代えて、ばね状インシュレータ72を備えていてもよい。インペラシャフト12の回転軸線方向において、ばね状インシュレータ72は、ベアリングハウジング20の突出部22の先端面22a及び閉塞プレート26の第1端面26aと、第2流路形成プレート56の第1端面56aとの間に介在されている。ばね状インシュレータ72の内周側部位は、ベアリングハウジング20の突出部22の先端面22aに装着され、ばね状インシュレータ72の外周側部位は、第2流路形成プレート56の第1端面56aと接触している。
【0083】
ばね状インシュレータ72は、第2流路形成プレート56を固定ベーン52に向けて付勢している。これにより、第1流路形成プレート53の平板部53c、タービンシュラウド部51の環状部51b、固定ベーン52、及び第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、タービン本体部31の内周側端面31eに押圧された状態で内周側端面31eに支持されている。
【0084】
この場合、閉塞プレート26の寸法公差に依らず、閉塞プレート26と固定ベーン52とで第2流路形成プレート56の内周側部位56eを挟持できる。また、ばね状インシュレータ72は、タービン室34を流れる排ガスの熱がベアリングハウジング20を介してCリング17に伝わることを抑制する。このため、Cリング17が熱変形することによる挿通孔21hの内周面とインペラシャフト12の外周面との間のシール性の低下を抑制できる。つまり、ばね状インシュレータ72は、上記実施形態における被覆部材27と同等の機能を有するヒートインシュレータと、板ばね57と同様の機能を有する付勢部材とを兼ねている。
【0085】
また、第1流路形成プレート53の平板部53cは、ばね状インシュレータ72からタービンシュラウド部51の環状部51bに作用した付勢力によって、タービン本体部31の内周壁31bに向けて押圧される。よって、ばね状インシュレータ72の付勢力により、ベアリングハウジング20と固定ベーン52とによる第2流路形成プレート56の内周側部位56eの挟持に加えて、タービンシュラウド部51とタービンハウジング30とによる第1流路形成プレート53の平板部53cの挟持が可能になる。
【0086】
図5に示すように、ターボチャージャ10は、タービンシュラウド部51に固定された複数の固定ベーン52に代えて、タービンシュラウド部51及び第2流路形成プレート56によって回動可能に支持された複数の可変ベーン73を備えていてもよい。
【0087】
インペラシャフト12の回転軸線方向において、タービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511と第2流路形成プレート56の第2端面56bとの間には、複数の可変ベーン73と、複数の柱状のスペーサ74とが配置されている。複数の可変ベーン73及び複数のスペーサ74は、連通流路35の周方向において互いに間隔を置いてそれぞれ配置されている。インペラシャフト12の径方向において、複数のスペーサ74は、複数の可変ベーン73よりも外側に位置している。インペラシャフト12の回転軸線方向でのタービンシュラウド部51の環状部51bの一端面511と、第2流路形成プレート56の第2端面56bとの間隔は、複数のスペーサ74により保持されている。よって、スペーサ74は、タービンシュラウド部51と第2流路形成プレート56との間隔を保持する間隔保持部材である。タービンシュラウド部51は、第2流路形成プレート56と協働して複数の可変ベーン73を回動可能に支持する。
【0088】
また、インペラシャフト12の回転軸線方向において、ベアリングハウジング20と第2流路形成プレート56との間には、複数のリンク部材75と板ばね76とが配置されている。複数のリンク部材75は、連通流路35の周方向において互いに間隔を置いてそれぞれ配置されている。各リンク部材75は、各可変ベーン73を駆動させ、環状部51bに対する可変ベーン73の配置角度を変更する。これにより、連通流路35の流路断面積が変更され、タービン室34に導かれる排ガスの流速を調整できる。インペラシャフト12の径方向において板ばね76は、複数のリンク部材75よりも外側に位置している。板ばね76は、第2流路形成プレート56の内周側部位56eをスペーサ74に向けて付勢する。これにより、第1流路形成プレート53の平板部53c、タービンシュラウド部51の環状部51b、スペーサ74、及び第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、タービン本体部31の内周側端面31eに押圧された状態で内周側端面31eに支持されている。第1流路形成プレート53の平板部53cは、タービンシュラウド部51の環状部51bの他端面512と、タービン本体部31の内周側端面31eとで挟み込まれる。また、第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、板ばね76を介して閉塞プレート26とスペーサ74とで挟持される。
【0089】
なお、第2流路形成プレート56における板ばね57によって付勢力が加えられる部分と、スペーサ74と、タービンシュラウド部51の環状部51bは、一直線上に配置されているのが好ましい。この場合、板ばね76によって第2流路形成プレート56を付勢した際の第2流路形成プレート56の撓みが抑制される。
【0090】
○ 板ばね57を省略し、閉塞プレート26の第2突出部262と固定ベーン52とで第2流路形成プレート56を挟み込んでもよい。この場合、閉塞プレート26の寸法公差によっては、閉塞プレート26の外周側部位とタービン本体部31との間に僅かな隙間が生じることがある。このため、インペラシャフト12の回転軸線方向においてタービン本体部31の外周壁31aと閉塞プレート26との間にOリング等のシール部材を介在させて、ハウジング11の内外をシールするのが好ましい。
【0091】
○ 第1流路形成プレート53を省略してもよい。この場合、タービンスクロール流路36におけるベアリングハウジング20とは反対側の壁面は、タービンハウジング30のタービン本体部31の外周壁31aの内面、内周壁31bの内面、及び接続壁31cの内面によって形成される。
【0092】
○ 第1流路形成プレート53は、平板部53cがタービンシュラウド部51の環状部51bとタービンハウジング30とによって挟持されるとともに、環状リブ53aがベアリングハウジング20とタービンハウジング30とによって挟持されることにより、ハウジング11に取り付けられていてもよい。この場合、第1流路形成プレート53において平板部53c及び環状リブ53aの両方が固定部位となる。
【0093】
また、第1流路形成プレート53は、平板部53cが省略されるとともに、環状リブ53aのみがベアリングハウジング20とタービンハウジング30とによって挟持されることによりハウジング11に取り付けられていてもよい。この場合、第1流路形成プレート53において環状リブ53aが固定部位であり、内周部54bにおける接続部54cとは反対側の端部が自由端となる。
【0094】
○ 第1流路形成プレート53において環状リブ53aを省略してもよい。この場合、第1流路形成プレート53の外周側端部は、外周部54aにおける接続部54cとは反対側の端部となる。
【0095】
○ 第1流路形成プレート53の環状リブ53aは、第2流路形成プレート56の外周側端部56cと離間していてもよい。また、第1流路形成プレート53の環状リブ53aが自由端であれば、環状リブ53aは、第2流路形成プレート56の外周側端部56cとは反対側で第1流路形成プレート53の周辺部材と当接していてもよい。つまり、「第1流路形成プレート53の外周側端部が自由端である」には、第1流路形成プレート53の環状リブ53aが周辺部材と当接するが、周辺部材に対して環状リブ53aが摺動可能であり、第1流路形成プレート53の外周側で、第1流路形成プレート53の熱伸びが妨げられない状態が含まれる。
【0096】
○ 第2流路形成プレート56の外周側端部56cは、第1流路形成プレート53の環状リブ53aと離間していてもよい。また、第2流路形成プレート56の外周側端部56cが自由端であれば、外周側端部56cは第2流路形成プレート56の周辺部材、例えば閉塞プレート26の第1突出部261と当接していてもよい。つまり、「第2流路形成プレート56の外周側端部56cが自由端である」には、第2流路形成プレート56の外周側端部56cが周辺部材と当接するが、周辺部材に対して外周側端部56cが摺動可能であり、第2流路形成プレート56の外周側で、第2流路形成プレート56の熱伸びが妨げられない状態が含まれる。
【0097】
○ 第2流路形成プレート56の形状やタービンハウジング30内の部材配置によっては、第2流路形成プレート56の外周側側面56dと対向する第1対向部材は、タービン本体部31の外周壁31aでない場合もある。ただし、第2流路形成プレート56の外周側側面56dは、第1対向部材と離間しているものとする。また、第2流路形成プレート56の外周側側面56dと第1対向部材とが対向する方向は、インペラシャフト12の径方向に限定されず、例えばインペラシャフト12の回転軸線方向であってもよい。
【0098】
○ 第1流路形成プレート53の形状やタービンハウジング30内の部材配置によっては、第1流路形成プレート53の環状リブ53aの先端面53bと対向する第2対向部材は、タービン本体部31の外周壁31aでない場合もある。また、第1流路形成プレート53の環状リブ53aの先端面53bと第2対向部材とが対向する方向は、インペラシャフト12の径方向に限定されず、例えばインペラシャフト12の回転軸線方向であってもよい。
【0099】
○ 第2流路形成プレート56の形状は適宜変更してもよい。例えば、第2流路形成プレート56は、リブ561以外の部分でも湾曲していてもよい。
○ インペラシャフト12の径方向において、タービン本体部31の外周壁31aと第1流路形成プレート53の外周部54aとの間に設けられた第1弾性部材61を省略してもよい。
【0100】
○ 第1弾性部材61は、ワイヤーメッシュに限定されず、他の弾性部材であってもよい。
○ 第1流路形成プレート53の流路形成部位54の外周部54aに対する第1弾性部材61の固定方法は、マイクロスポット溶接に限定されず、例えば、接着剤による接着やかしめでもよい。
【0101】
○ インペラシャフト12の回転軸線方向において、第2流路形成プレート56の第1端面56aと閉塞プレート26の第1端面26aとの間に設けられた第2弾性部材62を省略してもよい。
【0102】
○ 第2弾性部材62は、ワイヤーメッシュに限定されず、他の弾性部材であってもよい。
○ 第2流路形成プレート56の第1端面56aに対する第2弾性部材62の固定方法は、マイクロスポット溶接に限定されず、例えば、接着剤による接着やかしめでもよい。
【0103】
○ インペラシャフト12の径方向において、吐出口形成部材59の外周面におけるタービン室34側の端部とタービン筒状部32の内周面との間に設けられた第3弾性部材63を省略してもよい。
【0104】
○ 第3弾性部材63は、ワイヤーメッシュに限定されず、他の弾性部材であってもよい。
○ 吐出口形成部材59の外周面に対する第3弾性部材63の固定方法は、マイクロスポット溶接に限定されず、例えば、接着剤による接着やかしめでもよい。
【0105】
○ タービンシュラウド部51、固定ベーン52、及び板ばね57を省略してもよい。
この場合、第1流路形成プレート53の平板部53cは、例えば、タービン本体部31の内周壁31bに溶接されることにより、タービンハウジング30に対して移動不能な固定部位とされてもよい。また、第2流路形成プレート56の内周側部位56eは、例えば、閉塞プレート26の第2突出部262に溶接されることにより、ベアリングハウジング20に対して移動不能な固定部位とされてもよい。
【0106】
○ ベアリングハウジング20は、閉塞プレート26が本体部21と別部材でなく、本体部21に一体形成されている構成であってもよい。
○ タービンシュラウド部51は、タービンハウジング30と別部材ではなく、タービンハウジング30に一体形成されている構成であってもよい。この場合、連通流路35におけるベアリングハウジング20とは反対側の壁面は、タービンハウジング30によって形成される。
【0107】
○ 内燃機関Eは、ガソリンエンジンに限定されず、ディーゼルエンジンであってもよい。
○ ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40は、鋳鉄製に限定されず、例えば鋳鋼製でもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…ターボチャージャ、11…ハウジング、12…インペラシャフト、13…タービンインペラ、17…シール部材としてのCリング、20…ベアリングハウジング、21h…挿通孔、30…タービンハウジング、31a…第1対向部材及び第2対向部材としての外周壁、34…タービン室、35…連通流路、36…タービンスクロール流路、51…壁面としてのタービンシュラウド部、52…間隔保持部材としての固定ベーン、53…タービン側流路形成プレートとしての第1流路形成プレート、53a…外周側端部としての環状リブ、53b…外周側側面としての先端面、53c…内周側部位としての平板部、56…ベアリングハウジング側流路形成プレートとしての第2流路形成プレート、56c…外周側端部、56d…外周側側面、56e…内周側部位、57…付勢部材としての板ばね、62…弾性部材としての第2弾性部材、71…ヒートインシュレータとしての環状プレート、72…ばね状インシュレータ、E…内燃機関。
図1
図2
図3
図4
図5