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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/20 20200101AFI20240123BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20240123BHJP
   B62K 25/04 20060101ALI20240123BHJP
   B62J 1/00 20060101ALI20240123BHJP
   B62M 3/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B62J45/20
B62J50/22
B62K25/04
B62J1/00 C
B62M3/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071549
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020168951
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤本 尚希
(72)【発明者】
【氏名】小山 諒
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132444(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135972(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/056510(WO,A1)
【文献】特開2017-047875(JP,A)
【文献】特開2018-024411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017889(US,A1)
【文献】特開平04-358985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 - 99/00
B62M 1/00 - 3/16
B62M 6/40 - 6/90
B62K 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動力が入力される入力部を含む人力駆動車に取り付けられるアクチュエータを制御する制御部を含み、
前記入力部は、前記人力駆動車に取り付けられるクランク軸の中心軸心周りに回転可能であり、
前記入力部の回転位置は第1回転位置を含み、
前記制御部は、
前記入力部に入力される前記人力駆動力のベクトルによって表される荷重方向に応じて前記アクチュエータを制御し、
第1ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向がベクトルによって表される第1荷重方向である場合に前記アクチュエータを第1制御状態で制御し、
前記第1ペダリング動作から所定時間後の第2ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向が前記第1荷重方向とは異なる向きであるベクトルによって表される第2荷重方向である場合に前記アクチュエータを第2制御状態で制御し、
前記第1荷重方向は、前記第1回転位置において前方向への荷重が前記第2荷重方向よりも大きい、または、後方向への荷重が前記第2荷重方向よりも小さく、
前記アクチュエータは、サスペンションを動作可能に構成され、
前記制御部は、前記アクチュエータの出力を制御し、前記第2制御状態において、減衰率が大きくなるように前記アクチュエータを制御する、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
人力駆動力が入力される入力部を含む人力駆動車に取り付けられるアクチュエータを制御する制御部を含み、
前記入力部は、前記人力駆動車に取り付けられるクランク軸の中心軸心周りに回転可能であり、
前記制御部は、前記入力部に入力される前記人力駆動力のベクトルによって表される荷重方向に応じて前記アクチュエータを制御し、
前記アクチュエータは、アジャスタブルシートポストを動作可能に構成され、
前記制御部は、前記アクチュエータの出力を制御し、
前記入力部の回転位置は第1回転位置を含み、
前記制御部は、
第1ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向がベクトルによって表される第1荷重方向である場合に前記アクチュエータを第1制御状態で制御し、
前記第1ペダリング動作から所定時間後の第2ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向が前記第1荷重方向とは異なる向きであるベクトルによって表される第2荷重方向である場合に前記アクチュエータを第2制御状態で制御し、
前記第2制御状態において、シートチューブに対するシートの高さが高くなるように前記アクチュエータを動作させる、人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
前記荷重方向は、少なくとも、前記入力部の回転軌道円に関する接線方向の第1荷重値、および、法線方向の第2荷重値に基づいて決定される、請求項1または2に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
前記荷重方向は、さらに、前記クランク軸の前記中心軸心に関する軸方向の第3荷重値に基づいて決定される、請求項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
人力駆動力が入力される入力部を含む人力駆動車に取り付けられるコンポーネントを制御する制御部を含み、
前記入力部は、前記人力駆動車に取り付けられるクランク軸の中心軸心周りに回転可能であり、
前記制御部は、前記入力部に入力される前記人力駆動力のベクトルによって表される荷重方向によって疲労度を決定し、前記疲労度と前記荷重方向とを対応付けたテーブル基づいて前記疲労度を決定する、人力駆動車用制御装置。
【請求項6】
前記コンポーネントは、報知装置であり、
前記制御部は、前記疲労度に関する情報を前記報知装置に出力する、請求項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項7】
前記コンポーネントは、アクチュエータであり、
前記制御部は、前記疲労度に応じて前記アクチュエータを制御する、請求項に記載の人力駆動車用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示される人力駆動車用制御装置は、運転者が鉛直方向にペダルを踏む力である踏み力を算出し、算出された踏み力に応じてアシスト制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-214151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人力駆動力の荷重方向に応じてアクチュエータを好適に制御できる人力駆動車用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動力が入力される入力部を含む人力駆動車に取り付けられるアクチュエータを制御する制御部を含み、前記入力部は、前記人力駆動車に取り付けられるクランク軸の中心軸心周りに回転可能であり、前記制御部は、前記入力部に入力される前記人力駆動力の荷重方向に応じて前記アクチュエータを制御する。
上記第1側面の人力駆動車用制御装置によれば、制御部は、人力駆動力の荷重方向に応じてアクチュエータを好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記荷重方向は、少なくとも、前記入力部の回転軌道円に関する接線方向の第1荷重値、および、法線方向の第2荷重値に基づいて決定される。
上記第2側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力の荷重方向を精度よく決定できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の人力駆動車用制御装置において、前記入力部の回転位置は第1回転位置を含み、前記制御部は、第1ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向が第1荷重方向である場合に前記アクチュエータを第1制御状態で制御し、前記第1ペダリング動作から所定時間後の第2ペダリング動作において、前記第1回転位置の前記荷重方向が前記第1荷重方向とは異なる第2荷重方向である場合に前記アクチュエータを第2制御状態で制御する。
上記第3側面の人力駆動車用制御装置によれば、制御部は、ライダーのペダリング動作による人力駆動力の荷重方向に応じてアクチュエータを制御するため、ライダーのユーザビリティを向上できる。
【0008】
前記第1から第3側面に従う第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記アクチュエータは前記人力駆動車に推進力を付与するモータであり、前記制御部は、前記モータの出力を制御する。
上記第4側面の人力駆動車用制御装置によれば、ライダーのユーザビリティを向上できる。
【0009】
前記第3側面に従う第5側面の人力駆動車用制御装置において、前記アクチュエータは前記人力駆動車に推進力を付与するモータであり、前記制御部は、前記第1荷重方向によって第1疲労度を決定し、前記第2荷重方向によって第2疲労度を決定し、前記第2疲労度が前記第1疲労度よりも大きい場合に、前記人力駆動力に対する前記モータによって前記人力駆動車に付与される推進力の比率を大きくする。
上記第5側面の人力駆動車用制御装置によれば、制御部は、人力駆動力の荷重方向に応じて決定された疲労度によりモータを制御するためライダーのユーザビリティを向上できる。
【0010】
前記第1から第3側面に従う第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記アクチュエータは、前記人力駆動車に取り付けられるフロントディレイラ、リアディレイラ、アジャスタブルシートポスト、および、サスペンションの少なくとも1つを動作可能に構成され、前記制御部は、前記アクチュエータの出力を制御する。
上記第6側面の人力駆動車用制御装置によれば、フロントディレイラ、リアディレイラ、アジャスタブルシートポスト、および、サスペンションの少なくとも1つを好適に制御できる。
【0011】
本発明の第7側面に従う人力駆動車用ドライブユニットは、前記第4または第5側面の前記制御装置と、前記人力駆動車に推進力を付与するように構成される前記モータと、を備える。
上記第7側面のドライブユニットによれば、人力駆動車に推進力を好適に付与できる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記モータの出力軸は、前記クランク軸の中心軸心と平行に配置される。
上記第8側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、人力駆動車に推進力を好適に付与できる。
【0013】
前記第7側面に従う第9側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記モータの出力軸は、前記クランク軸の中心軸心と交差するように配置される。
上記第9側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、人力駆動車に推進力を好適に付与できる。
【0014】
前記第2側面に従う第10側面の人力駆動車用制御装置において、前記荷重方向は、さらに、前記クランク軸の前記中心軸心に関する軸方向の第3荷重値に基づいて決定される。
上記第10側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力の荷重方向を精度よく決定できる。
【0015】
本発明の第11側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動力が入力される入力部を含む人力駆動車に取り付けられるコンポーネントを制御する制御部を含み、前記入力部は、前記人力駆動車に取り付けられるクランク軸の中心軸心周りに回転可能であり、前記制御部は、前記入力部に入力される前記人力駆動力の荷重方向によって疲労度を決定する。
上記第11側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力の荷重方向によってライダーの疲労度を決定できる。このため、例えば制御部は、ライダーの疲労度に応じてコンポーネントを制御できる。
【0016】
前記第11側面に従う第12側面の人力駆動車用制御装置において、前記コンポーネントは、報知装置であり、前記制御部は、前記疲労度に関する情報を前記報知装置に出力する。
上記第12側面の人力駆動車用制御装置によれば、ライダーは、疲労度に関する情報を容易に認識できる。
【0017】
前記第11側面に従う第13側面の人力駆動車用制御装置において、前記コンポーネントは、アクチュエータであり、前記制御部は、前記疲労度に応じて前記アクチュエータを制御する。
上記第13側面の人力駆動車用制御装置によれば、ライダーのユーザビリティを向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力の荷重方向に応じてアクチュエータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態のドライブユニットを含む人力駆動車の側面図。
図2】第1実施形態のドライブユニットの電気的な構成を示すブロック図。
図3】第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時との股関節モーメントの一例を示すグラフ。
図4】第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時との膝関節モーメントの一例を示すグラフ。
図5】第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時との足関節モーメントの一例を示すグラフ。
図6】第1ペダリング動作時の回転軌道上における人力駆動力の荷重方向の一例。
図7】第2ペダリング動作時の回転軌道上における人力駆動力の荷重方向の一例。
図8】第1実施形態の制御部によって実行される処理の手順の一例を示すフローチャート。
図9】第1実施形態のドライブユニットにおけるモータの配置の一例を示す模式図。
図10】第1実施形態のドライブユニットにおけるモータ配置の一例を示す模式図。
図11】第2実施形態の制御部によって実行される処理の手順の一例を示すフローチャート。
図12】第3実施形態の人力駆動車制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
図13】変形例の人力駆動車制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1から図10を参照して、第1実施形態の人力駆動車用制御装置60を含む人力駆動車用ドライブユニット50について説明する。なお、以下では人力駆動車用制御装置60を制御装置60と記載し、人力駆動車用ドライブユニット50をドライブユニット50と記載する場合がある。ドライブユニット50は、人力駆動車10に用いられる。人力駆動車10は、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車両である。人力駆動車10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車、および、3輪以上の車輪を有する車両も含む。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。自転車は、電気モータによって駆動力が与えられる電動自転車(E-bike)を含む。電動自転車は、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、2つの車輪を有する自転車として説明する。
【0021】
図1に示されるように、人力駆動車10は、クランク12、車輪14、車体16、および、入力部22を含む。車体16は、フレーム18、および、ステアリング部20を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aを含む。車輪14は、前輪14A、および、後輪14Bを含む。フレーム18には、ステアリング部20を介して前輪14Aが取り付けられる。後輪14Bは、クランク軸12Aが回転することによって駆動される。車輪14は、フレーム18に支持される。クランク12と後輪14Bとは、駆動機構24によって連結される。駆動機構24は、クランク軸12Aに結合される第1回転体26を含む。クランク軸12Aと第1回転体26とは、一体に回転するように結合されていてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク軸12Aが前転した場合に、第1回転体26を前転させ、クランク軸12Aが後転した場合に、第1回転体26を後転させないように構成される。第1回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構24は、第2回転体28、および、連結部材30をさらに含む。連結部材30は、第1回転体26の回転力を第2回転体28に伝達する。連結部材30は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0022】
人力駆動車10は、クランク軸12Aの回転速度に対する駆動輪の回転速度の変速比率を変更するために用いられる変速機を含んでいてもよい。変速機は、例えばフロントディレイラ84(図2参照)、リアディレイラ86、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機は、フロントディレイラ84のみ、リアディレイラ86のみ、内装変速機のみ、または、フロントディレイラ84、リアディレイラ86および内装変速機のうちの任意の組合せを含んでいてもよい。本実施形態では、第1回転体26および第2回転体28の少なくとも1つは、複数のスプロケットを含む。第1回転体26のみ、第2回転体28のみ、または、第1回転体26および第2回転体28の両方が、複数のスプロケットを含んでいてもよい。本実施形態では、第1回転体26は、1枚のスプロケットを含み、第2回転体28は、複数のスプロケットを含む。変速機は、第1回転体26が複数のフロントスプロケットを含む場合、フロントディレイラ84を含み、第2回転体28が複数のリアスプロケットを含む場合、リアディレイラ86を含む。変速機が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Bのハブに設けられる。
【0023】
ステアリング部20は、フロントフォーク32、および、ハンドル部34を含む。ハンドル部34は、ステム36、および、ハンドルバー38を含む。フロントフォーク32には、ハンドルバー38がステム36を介して連結される。
【0024】
入力部22は、クランク軸12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられるクランクアーム22A、および、クランクアーム22Aに連結されるペダル22Bを含む。入力部22は、ライダーからの人力駆動力の入力を受け付ける。入力部22は、人力駆動車10に取り付けられるクランク軸12Aの中心軸心周りに回転可能である。一例では、入力部22が形成する、クランク軸12Aの中心軸心回りの回転軌道は円である。
【0025】
第2回転体28は、後輪14Bに連結される。第2回転体28は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体28と後輪14Bとの間には、第2ワンウェイクラッチが設けられることが好ましい。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体28が前転した場合に、後輪14Bを前転させ、第2回転体28が後転した場合に、後輪14Bを後転させないように構成される。図示される人力駆動車10において、後輪14Bは、駆動輪である。
【0026】
人力駆動車10は、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ40は、人力駆動車10に設けられる。バッテリ40は、電気的に接続されている他の電気部品、例えば、制御装置60に電力を供給する。一例では、バッテリ40は、充電可能な二次電池を含む。バッテリ40は、有線または無線によって通信可能に制御装置60と接続される。バッテリ40は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御装置60と通信可能である。バッテリ40は、フレーム18の外部に取り付けられてもよく、少なくとも一部がフレーム18の内部に収容されてもよい。
【0027】
人力駆動車10は、アジャスタブルシートポスト88を含んでいてもよい。アジャスタブルシートポスト88は、シート42の高さを変更するように動作する。一例では、アジャスタブルシートポスト88の駆動に伴って、シートチューブ16Aに対するシート42の高さが変更される。
【0028】
人力駆動車10は、サスペンション90を含んでいてもよい。サスペンション90は、前輪14Aが走行路面から受ける衝撃を緩和するフロントサスペンション、および、後輪14Bが走行路面から受ける衝撃を緩和するリアサスペンションを含む。サスペンション90は、動作パラメータとして、減衰率、ストローク量、および、ロックアウト状態を変更可能に構成される。
【0029】
人力駆動車10は、報知装置92を含んでいてもよい。報知装置92は、振動、光、および、音等を発生させる。報知装置92は、例えばサイクルコンピュータ、アイウェア、スマートフォン、スマートウォッチ、ランプ、および、スピーカの少なくとも1つを含む。
【0030】
図2を参照して、ドライブユニット50の構成について説明する。
ドライブユニット50は、アクチュエータ52を含む。アクチュエータ52は、ドライブユニット50のハウジング50A内に設けられる。一例では、アクチュエータ52は人力駆動車に推進力を付与するモータ54である。ドライブユニット50は、制御装置60と、人力駆動車10に推進力を付与するように構成されるモータ54と、を備える。ハウジング50A内には、モータ54以外の構成が設けられていてもよく、モータ54の回転を減速して出力する減速機構、および、モータ54の回転を増速して出力する増速機構の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0031】
制御装置60は、制御部62を含む。制御部62は、人力駆動力が入力される入力部22を含む人力駆動車10に取り付けられるアクチュエータ52を制御する。制御部62は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部62は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部62は、複数の場所に離れて配置される複数の演算処理装置を含んでいてもよい。制御装置60は、記憶部64をさらに含む。記憶部64には、各種の制御プログラム、および、各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部64は、例えば不揮発性メモリ、および、揮発性メモリを含む。
【0032】
人力駆動車10は、人力駆動車に関する情報を検出する検出装置66をさらに含む。検出装置66は、入力部22に入力される人力駆動力を検出する第1検出部68、および、第2検出部70を含む。第1検出部68、および、第2検出部70は、入力部22に設けられる。検出装置66と制御部62とは、電力線通信によって通信可能に構成される。
【0033】
検出装置66は、ライダーによって入力部22に入力される人力駆動力を荷重値として検出する。荷重値は、入力部22の回転軌道上の接線方向における第1荷重値、および、入力部22の回転軌道上の法線方向における第2荷重値の少なくとも1つを含む。検出装置66は、例えば歪センサ、光学センサ、または磁歪センサを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。第1検出部68、および、第2検出部70が検出する荷重値は、入力部22の回転軌道上の接線方向における第1荷重値、および、入力部22の回転軌道上の法線方向における第2荷重値の両方を含む。
【0034】
検出装置66は、人力駆動車10の車速、および、加速度の少なくとも1つを検出する速度検出部、または、フレーム18に対するクランク軸12Aの回転位置、および、クランクアーム22Aの回転位置の少なくとも1つを検出するクランク回転検出部を備えていてもよい。速度検出部は、一例では、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含む。速度検出部は、フレーム18のチェーンステイに設けられ、後輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク32に設けられ、前輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。クランク回転検出部は、一例では、リードスイッチまたはホール素子を含む。クランク回転検出部は、人力駆動車10のフレーム18に設けられる磁石を検出する。別の例では、第1検出部68、および、第2検出部70をクランク回転検出部として用いてもよい。この場合、制御部62は、第1検出部68、および、第2検出部70の少なくとも1つが検出した荷重値に基づいて、クランク軸12A、および、クランクアーム22Aの回転位置を演算する。検出装置66は、さらに第3検出部72を含んでいてもよい。第3検出部72は、ライダーによって入力部22に入力される人力駆動力を荷重値として検出する。荷重値は、クランク軸12Aの軸方向における第3荷重値を少なくとも含む。第3検出部72は、例えば歪センサまたは磁歪センサを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。第1検出部68、第2検出部70、および、第3検出部72は、少なくとも2つを含むハウジング内に構成されてもよく、それぞれ個別のハウジング内に構成されていてもよい。
【0035】
人力駆動車10は、車体16の傾斜角度を検出する傾斜センサ74をさらに含む。傾斜センサ74は、例えば、ジャイロセンサを含む。ジャイロセンサは、好ましくは、3軸ジャイロセンサを含む。ジャイロセンサは、好ましくは、車体16のヨー角度、車体16のロール角度、および、車体16のピッチ角度を検出可能に構成される。ジャイロセンサの3軸は、好ましくは、水平面に前輪14A、および、後輪14Bを接地させて直立させた状態における人力駆動車10の前後方向、左右方向、および、上下方向に沿うように人力駆動車10に設けられる。ジャイロセンサは、1軸ジャイロセンサ、または2軸ジャイロセンサを含んでいてもよい。
【0036】
制御部62は、入力部22に入力される人力駆動力の荷重方向に応じてアクチュエータ52を制御する。荷重方向は、少なくとも、入力部22の回転軌道円に関する接線方向の第1荷重値、および、法線方向の第2荷重値に基づいて決定される。一例では、制御部62は、検出装置66により検出された荷重値に基づいて荷重方向を決定し、決定した荷重方向に基づいて制御を行う。別の例では、制御部62は、検出装置66が演算した荷重方向を取得し、取得した荷重方向に基づいて制御を行う。この場合、検出装置66は、演算処理装置を含む。
【0037】
図3から図7を参照して、第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時の入力部22への荷重方向について説明する。第1ペダリング動作の一例は、ライダーが入力部22に人力駆動力の入力を開始してから、所定時間が経過するより前のペダリング動作である。第2ペダリング動作の一例は、ライダーが入力部22に人力駆動力の入力を開始してから、所定時間が経過した後のペダリング動作である。
【0038】
図3の実線は、第1ペダリング動作時の股関節モーメントの一例を示す。図3の破線は、第2ペダリング動作時の股関節モーメントの一例を示す。縦軸の値が大きいほど股関節が伸展していることを示し、小さいほど股関節が屈曲していることを示す。横軸は、回転軌道円上における入力部22の位置を示し、クランク軸12Aの回転角度と対応する。第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時とを比較すると、股関節モーメントは、第2ペダリング動作時に大きくなる。第2ペダリング動作時において、ライダーが入力部22に入力する人力駆動力は、股関節由来の力が大きくなる。
【0039】
図4の実線は、第1ペダリング動作時の膝関節モーメントの一例を示す。図4の破線は、第2ペダリング動作時の膝関節モーメントの一例を示す。縦軸の値が大きいほど膝関節が伸展していることを示し、小さいほど膝関節が屈曲していることを示す。横軸は、回転軌道円上における入力部22の位置を示し、クランク軸12Aの回転角度と対応する。第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時とを比較すると、膝関節モーメントは、第2ペダリング動作時に小さくなる。第2ペダリング動作時において、ライダーが入力部22に入力する人力駆動力は、膝関節由来の力が小さくなる。
【0040】
図5の実線は、第1ペダリング動作時の足関節モーメントの一例を示す。図5の破線は、第2ペダリング動作時の足関節モーメントの一例を示す。縦軸の値が大きいほど足関節が伸展していることを示し、小さいほど足関節が屈曲していることを示す。横軸は、回転軌道円上における入力部22の位置を示し、クランク軸12Aの回転角度と対応する。第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時とを比較すると、足関節モーメントは、第2ペダリング動作時に大きくなる。第2ペダリング動作時において、ライダーが入力部22に入力する人力駆動力は、足関節由来の力が大きくなる。
【0041】
図6は、第1ペダリング操作時における回転軌道円上の人力駆動力の荷重方向の一例を示す。図7は、第2ペダリング操作時における回転軌道円上の人力駆動力の荷重方向の一例を示す。各矢印は、入力部22の回転軌道円に関する接線方向の第1荷重値、および、法線方向の第2荷重値により決定される荷重方向を示す。各矢印の長さは、矢印の向きの人力駆動力の大きさを示す。破線は、所定単位の人力駆動力の大きさを示す。回転軌道円は、回転位置を含む。回転位置は、回転軌道円上の任意の点である。入力部22の回転位置は第1回転位置を含む。以下、回転軌道円上の上死点と回転軌道円の中心CPとを結んだ直線、および、入力部22の回転位置と回転軌道円の中心CPとを結んだ直線とが交わる角度を、入力部22の角度またはクランク軸12Aの角度と称する場合がある。
【0042】
一例として、クランク軸12Aの角度が90度の位置を第1回転位置として、1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時とを比較する。第2ペダリング動作時は、膝関節モーメント由来の力が減少し、股関節モーメント、および、足関節モーメント由来の力が増加することにより荷重方向が回転軌道円に対して前方向から、下方向または後方向、および、それらの両方の方向に変化する傾向がある。回転軌道円に対して前方向とは、クランク軸12Aの角度が90度の位置での回転軌道円の法線方向の向きであり、かつ、回転軌道円の中心CPから離れる方向である。前方向は、人力駆動車10が前進する方向と一致する。回転軌道円に対して後方向とは、クランク軸12Aの角度が90度の位置での回転軌道円の法線の向きであり、かつ、回転軌道円の中心CPに近づく方向である。後方は、人力駆動車10が後進する方向と一致する。回転軌道円に対して下方向とは、クランク軸12Aの角度が90度の位置での回転軌道円の接線の向きであり、かつ、鉛直方向である。
【0043】
第1ペダリング動作時と第2ペダリング動作時とで、人力駆動力に占めるライダーの各関節モーメントの大きさの割合が変化することにより、第1回転位置における荷重方向が変化する。第1ペダリング動作時は、膝関節モーメント由来の人力駆動力の割合が大きく、股関節モーメント由来、および、足関節モーメント由来の人力駆動の割合が小さい。膝関節モーメント由来の人力駆動力を発生させる筋肉の一例は、大腿四頭筋である。大腿四頭筋によって発生する人力駆動力は、前方向、および、下方向の人力駆動力の割合が大きい。第2ペダリング動作時は、膝関節モーメント由来の人力駆動力の割合が小さく、股関節モーメント由来、および、足関節モーメント由来の人力駆動力の割合が大きい。股関節モーメント由来の人力駆動力を発生させる筋肉の一例は、大殿筋である。足関節モーメント由来の人力駆動力を発生させる筋肉の一例は、下腿三頭筋である。大殿筋、および、下腿三頭筋によって発生する人力駆動力は、下方向、および、後方向の人力駆動力の割合が大きい。さらに、ライダーが大殿筋と下腿三頭筋とを連動して使用することで、足関節の角度が第1ペダリング動作時から変化した状態で入力部22に対して人力駆動力を入力することで、下方向の人力駆動力の割合が増加する。
【0044】
荷重方向は、第1荷重方向、および、第2荷重方向を含む。第1荷重方向は、第1回転位置において前方向への荷重が第2荷重方向よりも大きい、または、後方向への荷重が第2荷重方向よりも小さい。
【0045】
記憶部64は、第1回転位置における荷重値と荷重方向との関係を示すテーブルを記憶する。テーブルは、予め実験等により得られたデータにより構成されていてもよく、入力部22に人力駆動力が入力されるごとに更新されてもよい。制御部62は、検出装置66によって検出された荷重値と記憶部64に記憶されるテーブルとを参照することで第1回転位置における荷重方向を判定する。制御部62は、第1ペダリング動作時の荷重方向を第1記憶情報として記憶部64に記憶させる。第1記憶情報を取得する所定時間は、任意に設定される。第1例では、ライダーが人力駆動車10の入力部22に人力駆動力を入力し始めてから所定時間の間である。第2例では、ライダーが人力駆動車10に設けられる操作部を操作してから所定時間の間である。第1記憶情報は、予め実験等により得られたデータであってもよい。
【0046】
制御部62は、第1ペダリング動作において、第1回転位置の荷重方向が第1荷重方向である場合にアクチュエータ52を第1制御状態で制御し、第1ペダリング動作から所定時間後の第2ペダリング動作において、第1回転位置の荷重方向が第1荷重方向とは異なる第2荷重方向である場合にアクチュエータ52を第2制御状態で制御する。制御部62は、第1記憶情報と第2記憶情報とを比較することで、第2荷重方向であるか否かを判定する。一例では、第1制御状態と第2制御状態とは、アクチュエータ52が動いているか否かが異なる。制御部62は、第1制御状態である場合にアクチュエータ52を動作させない。制御部62は、第2制御状態である場合にアクチュエータ52を動作させる。別の例では、第1制御状態と第2制御状態とは、アクチュエータ52の出力の大きさが異なる。制御部62は、第1制御状態である場合に第1出力を出力するようにアクチュエータ52を制御する。制御部62は、第2制御状態である場合に第1出力とは異なる第2出力を出力するようにアクチュエータ52を制御する。第1例では、第1出力は第2出力よりも大きい。第2例では、第1出力は第2出力よりも小さい。アクチュエータ52は人力駆動車10に推進力を付与するモータ54である。制御部62は、モータ54の出力を制御する。制御部62は、モータ54のトルク出力、および、回転量の少なくとも1つを制御する。
【0047】
制御部62は、傾斜センサ74が検出する車体16の傾斜角度に応じて、回転軌道円上における第1回転位置を決定する。一例では、制御部62は、人力駆動車10の車体16が鉛直方向の第1仮想面と平行になるように加えて、第1仮想面と垂直で、かつ、地平線と平行な第2仮想面に対して、人力駆動車の前輪14Aの回転軸心と後輪14Bの回転軸心とを結んだ車輪軸仮想線が平行になるように配置した状態でのクランク軸12Aの上死点に位置する回転位置を0度とし、人力駆動車10の前方向にクランクが90度回転した位置を第1回転位置として決定してもよい。制御部62は、車輪軸仮想線と第2仮想面との関係に応じて、所定角度分第1回転位置を変更する。制御部62は、車輪軸仮想線が第2仮想面に対して前方向に傾いている場合、第1回転位置を90度から、角度が大きくなる方向に所定角度変更する。制御部62は、車輪軸仮想線が第2仮想面に対して後方向に傾いている場合、第1回転位置を90度から、角度が小さくなる方向に所定角度変更する。一例では、制御部62は、傾斜センサ74が検出する人力駆動車10の車体16のピッチ角の変化に応じて所定角度を変更する。制御部62は、車輪軸仮想線と第2仮想面とによる鋭角の角度が、5から10度である場合に、第1回転位置を5度変更するように構成されていてもよい。
【0048】
図8を参照して、第1実施形態の制御部62が実行する制御の一例について説明する。
一例では、制御部62は、バッテリ40からの給電によりステップS11の処理を実行する。バッテリ40からの給電が停止されるまで、制御部62は、図8に記載のステップS11からステップS20の制御を所定の時間間隔で実行する。
【0049】
制御部62は、ステップS11において、人力駆動車10が傾斜しているか否かを判定する。人力駆動車10が傾斜していると判定した場合、制御部62は、ステップS12の処理を実行する。人力駆動車が傾斜していないと判定した場合、制御部62は、ステップS13の処理を実行する。
【0050】
制御部62は、ステップS12において、第1回転位置の補正を実行する。ステップS12の終了後、制御部62は、ステップS13の処理を実行する。
【0051】
制御部62は、ステップS13において、第1回転位置を決定する。ステップS13の終了後、制御部62は、ステップS14の処理を実行する。
【0052】
制御部62は、ステップS14において、第1回転位置における荷重方向の演算を実行する。ステップS14の終了後、制御部62は、ステップS15の処理を実行する。
【0053】
制御部62は、ステップS15において、第1ペダリング動作か否かを判定する。一例では、制御部62は、ペダリング動作が開始されてから所定時間が経過したか否かに基づいて第1ペダリング動作か否かを判定する。一例では、制御部62は、記憶部64に第1記憶情報が記憶されていない場合は第1ペダリング動作と判定し、第1記憶情報が記憶されている場合は第2ペダリング動作であると判定する。第1ペダリング動作であると判定した場合、制御部62は、ステップS16の処理を実行する。第1ペダリング動作ではないと判定した場合、制御部62は、第2ペダリング動作であると判定し、ステップS18の処理を実行する。
【0054】
制御部62は、ステップS16において、第1回転位置における荷重方向を第1記憶情報として記憶部64に記憶させる。荷重方向は、第1荷重方向を含む。ステップS16の終了後、制御部62は、ステップS17の処理を実行する。
【0055】
制御部62は、ステップS17において、第1制御状態でアクチュエータ52を制御する。ステップS17の終了後、制御部62は、処理を終了する。
【0056】
制御部62は、ステップS18において、第1回転位置における荷重方向を第2記憶情報として記憶部64に記憶させる。荷重方向は、第2荷重方向を含む。ステップS18の終了後、制御部62は、ステップS19の処理を実行する。
【0057】
制御部62は、ステップS19において、第1記憶情報と第2記憶情報とが一致しているか否かを判定する。制御部62は、第1記憶情報に含まれる第1荷重方向と第2記憶情報に含まれる第2荷重方向が所定の閾値以上異なる場合に、一致していないと判定する。第1記憶情報と第2記憶情報とが一致していると判定した場合、制御部62は、ステップS17の処理を実行する。第1記憶情報と第2記憶情報とが一致していないと判定した場合、制御部62は、ステップS20の処理を実行する。
【0058】
制御部62は、ステップS20において、第2制御状態でアクチュエータ52を制御する。ステップS20の終了後、制御部62は、処理を終了する。
【0059】
図9、および、図10は、ドライブユニット50におけるモータ54の配置の一例を示す。モータ54は、ドライブユニット50のハウジング50Aの内部に設けられる。モータ54は、ステータ54Aと出力軸54Bを含む。出力軸54Bはモータ54のロータである。図9に示されるモータ54の出力軸54Bは、クランク軸12Aの中心軸心CLと平行に配置される。図10に示されるモータ54の出力軸54Bは、クランク軸12Aの中心軸心CLと交差するように配置される。ドライブユニット50は、例えば遊星歯車機構56をさらに含む。モータ54は、遊星歯車機構56を介して、第1回転体26に推進力を付与する。
【0060】
<第2実施形態>
図1図6図7、および、図11を参照して、第2実施形態のドライブユニット50について説明する。第2実施形態のドライブユニット50は、第1実施形態のドライブユニット50と比較して、人力駆動力の荷重方向に基づいてライダーの疲労度を決定する点が異なる。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
記憶部64は、荷重方向と疲労度とを対応付けるテーブルを記憶する。荷重方向と疲労度とは、図6および図7に示される関係により対応付けられる。荷重方向と疲労度とを対応付けるテーブルは、任意に設定される。第1例では、第1回転位置における荷重方向と疲労度とが対応したテーブルが設定される。第2例では、基準となる荷重方向と入力部22に入力される荷重方向との差異と疲労度とを対応付けるテーブルが設定される。基準となる荷重方向は、予め実験等により設定されていてもよく、第1ペダリング動作時の荷重方向を基準となる荷重方向として設定してもよい。
【0062】
制御部62は、第1荷重方向によって第1疲労度を決定し、第2荷重方向によって第2疲労度を決定する。制御部62は、入力部22に入力される第1荷重方向、および、第2荷重方向と記憶部64に記憶されているテーブルとを参照することで疲労度を決定する。第1荷重方向と第1疲労度との関係を予め定めておいてもよい。この場合、制御部62は第2荷重方向のみを記憶部64に記憶されているテーブルと参照することで疲労度を決定する。制御部62は、ライダーの疲労度が第1疲労度であると判定した場合に第1制御状態でアクチュエータ52を制御する。制御部62は、ライダーの第2疲労度が第1疲労度よりも大きいと判定した場合に、第2制御状態でアクチュエータ52を制御する。一例では、制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、人力駆動力に対するモータ54によって人力駆動車10に付与される推進力の比率を大きくする。制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、人力駆動車10に付与される推進力を変化させるようにモータ54を制御してもよい。第1例では、制御部62は、人力駆動車10に付与される推進力を大きくするようにモータ54を制御する。第2例では、制御部62は、人力駆動車10に付与される推進力を小さくするようにモータ54を制御する。
【0063】
図11を参照して、制御部62が実行する制御の一例について説明する。
一例では、制御部62は、バッテリ40からの給電によりステップS21の処理を実行する。バッテリ40からの給電が停止されるまで、制御部62は、図11に記載のステップS21からステップS30の制御を所定の時間間隔で実行する。
【0064】
制御部62は、ステップS21において、人力駆動車10が傾斜しているか否かを判定する。人力駆動車10が傾斜していると判定した場合、制御部62は、ステップS22の処理を実行する。人力駆動車が傾斜していないと判定した場合、制御部62は、ステップS23の処理を実行する。
【0065】
制御部62は、ステップS22において、第1回転位置の補正を実行する。ステップS22の終了後、制御部62は、ステップS23の処理を実行する。
【0066】
制御部62は、ステップS23において、第1回転位置を決定する。ステップS23の終了後、制御部62は、ステップS24の処理を実行する。
【0067】
制御部62は、ステップS24において、第1回転位置における荷重方向の演算を実行する。ステップS24の終了後、制御部62は、ステップS25の処理を実行する。
【0068】
制御部62は、ステップS25において、第1ペダリング動作か否かを判定する。一例では、制御部62は、ペダリング動作が開始されてから所定時間が経過したか否かに基づいて第1ペダリング動作か否かを判定する。一例では、制御部62は、記憶部64に第1疲労度が記憶されていない場合は第1ペダリング動作と判定し、第1疲労度が記憶されている場合は第2ペダリング動作であると判定する。第1ペダリング動作であると判定した場合、制御部62は、ステップS26の処理を実行する。第1ペダリング動作ではないと判定した場合、制御部62は、第2ペダリング動作であると判定し、ステップS28の処理を実行する。
【0069】
制御部62は、ステップS26において、荷重方向から決定される疲労度を第1記憶情報として記憶部64に記憶させる。疲労度は、第1疲労度を含む。ステップS26の終了後、制御部62は、ステップS27の処理を実行する。
【0070】
制御部62は、ステップS27において、第1制御状態でアクチュエータ52を制御する。ステップS27の終了後、制御部62は、処理を終了する。
【0071】
制御部62は、ステップS28において、荷重方向から決定される疲労度を第2記憶情報として記憶部64に記憶させる。疲労度は、第2疲労度を含む。ステップS28の終了後、制御部62は、ステップS29の処理を実行する。
【0072】
制御部62は、ステップS29において、第1記憶情報と第2記憶情報とが一致しているか否かを判定する。制御部62は、第1記憶情報に含まれる第1疲労度と第2記憶情報に含まれる第2疲労度とが所定の閾値以上異なる場合に、一致していないと判定する。第1記憶情報と第2記憶情報とが一致していると判定した場合、制御部62は、ステップS27の処理を実行する。第1記憶情報と第2記憶情報とが一致していないと判定した場合、制御部62は、ステップS30の処理を実行する。
【0073】
制御部62は、ステップS30において、第2制御状態でアクチュエータ52を制御する。ステップS30の終了後、制御部62は、処理を終了する。
【0074】
<第3実施形態>
図1、および、図12を参照して、第3実施形態の制御装置60について説明する。第3実施形態の制御装置60は、第1実施形態または第2実施形態の制御装置60と比較して、検出装置66の荷重方向の決定方法、および、制御する対象となる人力駆動車10のコンポーネント80が異なる。第1実施形態または第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態または第2実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
12に記載の制御装置60は、人力駆動力が入力される入力部22を含む人力駆動車10に取り付けられるコンポーネント80を制御する制御部62を含む。制御部62は、入力部22に入力される人力駆動力の荷重方向によって疲労度を決定する。一例では、コンポーネント80は、アクチュエータ82である。制御部62は、疲労度に応じてアクチュエータ82を制御する。検出装置66は、第3検出部72をさらに備える。荷重方向は、さらに、クランク軸12Aの中心軸心に関する軸方向の第3荷重値に基づいて決定される。制御部62は、コンポーネント80と電力線通信によって通信可能に構成される。
【0076】
制御部62は、アクチュエータ82の出力を制御する。アクチュエータ82は、人力駆動車10に取り付けられるフロントディレイラ84、リアディレイラ86、アジャスタブルシートポスト88、および、サスペンション90の少なくとも1つを動作可能に構成される。
【0077】
制御部62は、フロントディレイラ84に設けられるアクチュエータ82を動作させることで変速比を変更する。変速比は、フロントスプロケットとリアスプロケットとの丁数の比率である。制御部62は、第2制御状態において、連結部材30によって連結されるフロントスプロケットとリアスプロケットとの丁数差が小さくなるように、フロントディレイラ84に設けられるアクチュエータ82を動作させる。連結部材30によって連結されるフロントスプロケットとリアスプロケットとの丁数差が小さくなることで変速比が小さくなる。第1例では、制御部62は、荷重方向が第1荷重方向と異なる第2荷重方向である場合に、変速比が小さくなるようにアクチュエータ82を制御する。第2例では、制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、変速比が小さくなるようにアクチュエータ82を制御する。
【0078】
制御部62は、リアディレイラ86に設けられるアクチュエータ82を動作させることで変速比を変更する。第1例では、制御部62は、荷重方向が第1荷重方向と異なる第2荷重方向である場合に、変速比が小さくなるようにアクチュエータ82を制御する。第2例では、制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、変速比が小さくなるようにアクチュエータ82を制御する。
【0079】
制御部62は、アジャスタブルシートポスト88に設けられるアクチュエータ82を動作させることで、シートチューブ16Aに対するシート42の高さを変更する。制御部62は、第2制御状態において、シートチューブ16Aに対するシート42の高さが高くなるようにアクチュエータ82を動作させる。第1例では、制御部62は、荷重方向が第1荷重方向と異なる第2荷重方向である場合に、シートチューブ16Aに対するシート42の高さが高くなるようにアクチュエータ82を制御する。第2例では、制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、シートチューブ16Aに対するシート42の高さが高くなるようにアクチュエータ82を制御する。
【0080】
制御部62は、サスペンション90に設けられるアクチュエータ82を動作させることで、サスペンション90のパラメータを変更する。一例では、制御部62は、第2制御状態において、減衰率が大きくなるようにアクチュエータ82を制御する。第1例では、制御部62は、荷重方向が第1荷重方向と異なる第2荷重方向である場合に、減衰率を大きくするようにアクチュエータ82を制御する。第2例では、制御部62は、第2疲労度が第1疲労度よりも大きい場合に、減衰率を大きくするようにアクチュエータ82を制御する。
【0081】
別の例では、コンポーネント80は、報知装置92である。制御部62は、疲労度に関する情報を報知装置92に出力する。疲労度に関する情報は、ライダーの現在の疲労度に関する情報、ライダーの疲労度に応じて実行される人力駆動車10のアクチュエータ82の制御に関する情報、および、ライダーに休息を促す情報の少なくとも1つを含む。
【0082】
<変形例>
各実施形態に関する説明は、本発明に従うドライブユニットおよび制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うドライブユニットおよび制御装置は、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
・第1実施形態、および、第2実施形態において、制御部62は、人力駆動力の他の要素も参照して制御を行う構成としてもよい。例えば、制御部62は、人力駆動力の絶対値を参照する。制御部62は、人力駆動力の絶対値が所定値未満である場合に、第2制御状態を実行するように構成される。
【0084】
・第1実施形態から第3実施形態において、記憶部64は、ライダーの第1ペダリング動作時、および、第2ペダリング動作時の少なくとも1つにおける荷重方向に関する情報を記憶するように構成されていてもよい。制御部62は、記憶部64に保存される上記の情報をアクチュエータ52、および、アクチュエータ82の制御に利用できる。一例では、記憶部64は、ライダーの第1ペダリング動作時の第1荷重値、および、第2荷重値を基準値として記憶する。制御部62は、基準値と走行時の第1荷重値、および、第2荷重値とを比較して制御を行うように構成される。制御部62は、基準値と走行時の第1荷重値、および、第2荷重値とが所定以上異なる場合に、第2制御状態でアクチュエータ52、82を制御する。
【0085】
・第3実施形態において、リアディレイラ86に設けられるアクチュエータ82の構成は、磁性流体を含む。制御部62は、磁性流体に流れる電流値を制御することにより、第2回転体28に含まれる複数のスプロケット間における連結部材30の移動しやすさを変更する。
【0086】
・第3実施形態において、サスペンション90に設けられるアクチュエータ82の構成は、磁性流体を含む。制御部62は、磁性流体に流れる電流値を制御することにより、サスペンション90の動作パラメータを変更する。
【0087】
・第3実施形態において、制御部62が制御するコンポーネント80は、例えば制動装置を含んでいてもよい。制動装置は、電気的に動作するリムブレーキを含む。一例では、制御部62は、第2制御状態において、リムブレーキによる制動力が高くなるようにアクチュエータを制御する。
【0088】
・第1から第3実施形態において、傾斜センサ74を省略してもよい。この場合、制御部62は、ペダリング動作において所定時間ごとの荷重方向を検出するように構成されていてもよい。所定時間において荷重方向が所定以上変化していた場合に、制御部62は、人力駆動車10が傾斜していると判定する。
【0089】
・第1実施形態、および、第2実施形態において、モータ54は回生可能に構成されていてもよい。モータ54によって発電された電力は、例えばバッテリ40に蓄電される。
【0090】
・第1から第3実施形態において、制御部62は、フロントディレイラ84、および、リアディレイラ86を他のパラメータを含めて制御するように構成されていてもよい。例えば、制御部62は、荷重方向、または、ライダーの疲労度に加えて、記憶部64に保存されるケイデンス、または、トルクと変速閾値との関係を示すテーブルを参照して変速を行う。テーブルは、第1制御状態時に参照する第1テーブルと第2制御状態時に参照する第2テーブルとを含む。テーブルは、人力駆動車10の傾斜角度に基づいて設定されていてもよい。
【0091】
・制御部62が第1ペダリング動作か否かを判定するための手段は、第1実施形態、および、第2実施形態で開示された手段に限らない。第1例では、制御部62は、記憶部64に第1ペダリング動作が実行されたことが記憶されているか否かに基づいて判定する。制御部62は、第1ペダリング動作が実行されたことが記憶されている場合、ペダリング動作が開されてからの時間によらず、第2ペダリング動作であると判定する。第2例では、制御部62は、第1荷重方向、または、第1疲労度が記憶部64に記憶されているか否かを判断する。制御部62は、第1荷重方向が記憶部64に保存されている場合、ペダリング動作が開始されてからの時間によらず、第2ペダリング動作であると判定する。
【0092】
図13に示されるように、制御装置60、ドライブユニット50、および、コンポーネント80の少なくとも1つは、無線通信部94を含んでいてもよい。コンポーネント80は、フロントディレイラ84、リアディレイラ86、アジャスタブルシートポスト88、サスペンション90、および、報知装置92の少なくとも1つを含む。無線通信部94が行う無線通信の規格の一例は、ANT+(登録商標)またはBluetooth(登録商標)である。無線通信部94は、制御装置60に設けられる無線通信部94A、ドライブユニット50に設けられる無線通信部94B、および、コンポーネント80に設けられる無線通信部94Cの少なくとも1つを含む。制御部62は、無線通信部94Aを介して、ドライブユニット50、および、コンポーネント80の少なくとも1つに対して、制御を実行するための制御信号を送信する。無線通信部94B、および、無線通信部94Cは、無線通信部94Aからの制御信号を受信する。ドライブユニット50、および、コンポーネント80の両方を制御する場合、制御部62は、第1制御状態、または、第2制御状態に基づいて制御信号を出力し、ドライブユニット50、および、コンポーネント80を同時に制御する。コンポーネント80の少なくとも1つがさらに演算処理装置を含み、他のコンポーネント80と通信可能に構成されていてもよい。
【0093】
・制御装置60、ドライブユニット50、および、コンポーネント80の少なくとも1つは、バッテリ96を含んでいてもよい。一例では、バッテリ96は、キャパシタである。バッテリ96は、ドライブユニット50に電力を供給するバッテリ96A、および、コンポーネント80に電力を供給するバッテリ96Bの少なくとも1つを含む。ドライブユニット50は、バッテリ40、および、バッテリ96Aの少なくとも1つから電力が供給される。ドライブユニット50は、電力線を介して、バッテリ40と電気的に接続される。コンポーネント80は、バッテリ40、および、バッテリ96Bの少なくとも1つから電力が供給される。コンポーネント80は、電力線を介して、バッテリ40と電気的に接続される。
【0094】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0095】
10…人力駆動車、12A…クランク軸、22…入力部、50…人力駆動車用ドライブユニット、52,82…アクチュエータ、54…モータ、60…人力駆動車用制御装置、80…コンポーネント、84…フロントディレイラ、86…リアディレイラ、88…アジャスタブルシートポスト、90…サスペンション、92…報知装置。
図1
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図13