(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】画像処理システム及び産業機械
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240123BHJP
G05B 19/19 20060101ALI20240123BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G06T1/00 300
G05B19/19 H
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2019116993
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】並木 勇太
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160820(JP,A)
【文献】特開2008-288680(JP,A)
【文献】特開2018-200680(JP,A)
【文献】特開2003-022108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G05B 19/18-19/416
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械において画像情報を取得して画像処理する画像処理システムであって、
画像を撮影する視覚センサと、
前記産業機械の作業プログラムに従って、前記視覚センサが撮影した画像データとその画像データの処理結果及び撮影時の前記産業機械の機械制御情報の少なくとも一方とを含む撮影情報を記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部よりも低速かつ大容量であり、前記第1記憶部から前記撮影情報が転送される第2記憶部と、
前記第1記憶部による前記撮影情報の記憶、及び前記第1記憶部から前記第2記憶部への前記撮影情報の転送を制御する記憶制御部と、
前記第1記憶部に記憶されている前記撮影情報を表示可能な表示部と、
を備え、
前記記憶制御部は、
前記作業プログラム中の所定の命令に応じて前記撮影情報を前記第1記憶部に記憶し、かつ、前記第1記憶部に記憶された前記撮影情報を前記第2記憶部に転送すると共に、前記第1記憶部に記憶されている前記撮影情報を削除する、画像処理システム。
【請求項2】
前記記憶制御部は、前記第1記憶部に記憶された前記撮影情報を前記第2記憶部に転送したとき、転送した前記撮影情報を前記第1記憶部から削除する、請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記記憶制御部は、前記第1記憶部から前記第2記憶部に前記撮影情報を転送するか否かを選択可能である、請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記記憶制御部は、前記第1記憶部の容量及び記録回数の少なくともいずれかが所定値を超える場合に、前記第1記憶部に記憶されている古い前記撮影情報を削除するか、前記視覚センサによる新たな撮影を禁止するか、を選択可能である、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記記憶制御部は、特定の属性を有する前記撮影情報のみを、前記第1記憶部から前記第2記憶部に転送可能である、請求項1から4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記記憶制御部は、専用通信回線又はネットワークを介して前記第1記憶部から前記第2記憶部に前記撮影情報を転送する、請求項1から5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の画像処理システムと、
前記視覚センサを位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構を制御し、前記位置決め機構の情報を前記機械制御情報として前記記憶制御部に提供する機械制御装置と、
を備える、産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム及び産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業製品の製造ラインに用いられるロボット等の産業機械に視覚センサを有する画像処理装置を組み込み、画像処理装置によってワークの位置等を確認してロボット等の目標位置を補正する場合がある。このような産業機械において、画像データを記憶しておき、ワークに対する処理を適切に行うことができなかった場合に、画像データを確認して原因を究明できるようすることが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像データは、容量が大きいため、比較的安価に容量を大きくできる不揮発性メモリ等の記憶装置に保存される。しかしながら、不揮発性メモリ等の大容量の記憶装置は記録速度が比較的低いため、産業機械用画像処理装置において画像データを保存すると、記憶装置に画像データを転送し終えるまでの待ち時間により産業機械のサイクルタイムが増大する場合がある。また、産業機械の構成によっては、視覚センサがロボット等に保持され、異なる位置において画像データを取得する場合がある。このような場合、産業機械の動作に不具合が生じたときには、画像データだけでなく、例えばその画像データを画像処理した結果や、画像データを撮影したときの視覚センサの位置等の産業機械の状態を確認しなければ、不具合の原因を正確に判別することができない可能性がある。このため、迅速な処理が可能であり、且つ画像データ及び画像処理結果と画像を撮影したときの産業機械の状態とを容易に確認できる画像処理システム及び産業機械が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る画像処理システムは、産業機械において画像情報を取得して画像処理する画像処理システムであって、画像を撮影する視覚センサと、前記視覚センサが撮影した画像データと画像データの処理結果及び撮影時の前記産業機械の機械制御情報の少なくとも一方とを含む撮影情報を記憶する第1記憶部と、前記第1記憶部よりも大容量であり、前記第1記憶部から前記撮影情報が転送される第2記憶部と、前記第1記憶部による前記撮影情報の記憶、及び前記第1記憶部から前記第2記憶部への前記撮影情報の転送を制御する記憶制御部と、を備え、前記記憶制御部は、前記第1記憶部に記憶された古い前記撮影情報を前記第2記憶部に転送すると共に、前記第1記憶部に記憶されている古い前記撮影情報を削除する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、迅速な処理が可能であり、且つ画像データ及び画像処理結果と画像を撮影したときの産業機械の状態とを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態の産業機械の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の産業機械において実行される撮影プログラムの手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2の撮影プログラムで撮影される画像を模式的に示す図である。
【
図4】
図2の撮影プログラムにおける撮影情報の記憶の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の産業機械において行われる撮影情報の転送の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一実施形態の産業機械1の構成を示す模式図である。
【0009】
この産業機械1は、テーブルTの上に載置されたワークWに所定の処理を行う処理ヘッド2と、処理ヘッド2を位置決めする位置決め機構3と、処理ヘッド2及び位置決め機構3を制御する機械制御装置4と、画像情報を取得、具体的にはテーブルTに載置されるワークWを撮影してその位置及び向きを特定する画像処理システム5と、を備える。
【0010】
処理ヘッド2は、例として、ワークWを移動するために把持できるハンド、ワークWに溶接、レーザ加工、切削加工等の加工を行うことができる加工ヘッドなど、ワークWに対して行うべき処理に応じて適切な構成を有する。図示する産業機械1において、処理ヘッド2は、ワークを把持するハンドである。つまり、図示する産業機械1は、ワークWを把持して移動させるハンドリング装置である。
【0011】
位置決め機構3の構成としては、特に限定されないが、例えば垂直多関節型ロボット、直交座標型ロボット、スカラ型ロボット、パラレルリンク型ロボット等とすることができる。なお、図示する位置決め機構3は、垂直多関節型ロボットであり、互いに回転可能に連接され、先端に処理ヘッド2が接続された複数の可動部材31,32,33,34を有する。
【0012】
機械制御装置4は、例えば予め与えられる加工プログラム等の作業プログラムに従って処理ヘッド2、位置決め機構3及び画像処理システム5の動作を決定するプログラム制御部41と、位置決め機構3を制御する位置決め制御部42と、処理ヘッド2を制御するヘッド制御部43とを有する。機械制御装置4は、例えばプログラマブルコントローラ、数値制御装置等に適切なプログラミングを行うことによって構成することができる。機械制御装置4におけるプログラム制御部41、位置決め制御部42及びヘッド制御部43は、その機能により区別されるものであり、物理的構成及びプログラム構成において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0013】
プログラム制御部41は、加工プログラム等の作業プログラムに従って処理ヘッド2、位置決め機構3及び画像処理システム5に対して動作指令を与える。具体的には、プログラム制御部41は、処理ヘッド2にワークWを把持又は解放させる指令を与え、位置決め機構3に処理ヘッド2を移動させる位置を特定する指令を与え、画像処理システム5にワークWの位置を確認させる指令を与える。
【0014】
また、プログラム制御部41は、位置決め制御部から得られる可動部材31,32,33,34の相対関係を表す駆動量等、処理ヘッド2の位置及び向きを特定できるパラメータを、機械制御情報として画像処理システム5に入力するよう構成される。必要に応じて、ヘッド制御部43によって制御される処理ヘッド2の状態を示す情報や、処理ヘッド2によるワークWに対する処理が適切に実行されたか否かを示す情報も、機械制御情報の一部として画像処理システム5に入力してもよい。
【0015】
位置決め制御部42は、プログラム制御部41からの指令に従って、位置決め機構3の可動部材31,32,33,34を相対回転させる駆動信号を生成する。また、位置決め制御部42は、機械制御情報とされるパラメータを出力する。具体例として、位置決め制御部が出力するパラメータは、可動部材31,32,33,34を駆動する複数の駆動モータの回転位置情報や、処理ヘッド2の基準点の座標位置及び向きを示すベクトル情報等とすることができる。
【0016】
ヘッド制御部43は、処理ヘッド2の動作を制御し、ワークWに対する処理を行う。また、処理ヘッド2の状態を表す信号を、プログラム制御部41に入力するよう構成されてもよい。
【0017】
画像処理システム5は、ワークWの画像を撮影する視覚センサ51と、視覚センサ51が撮影した画像データと、その画像データの処理結果及び撮影時の機械制御情報の少なくとも一方とを含む撮影情報を記憶する比較的高速な(読み書きに必要な時間が短い)第1記憶部52と、第1記憶部52よりも低速かつ大容量であり、第1記憶部52から撮影情報が転送される第2記憶部53と、第1記憶部52による撮影情報の記憶、及び第1記憶部52から第2記憶部53への撮影情報の転送を制御する記憶制御部54と、視覚センサ51が撮影した画像データを処理してワークWの視覚センサ51に対する位置及び向きを算出する画像処理部55と、オペレータが情報を入力可能な入力部56と、オペレータに情報を提示する表示部57とを備える。
【0018】
第1記憶部52、記憶制御部54、画像処理部55、入力部56及び表示部57は、通常は視覚センサ51の近傍に配置される主処理装置5Aに設けられる。一方、第2記憶部53は、主処理装置5Aに設けられてもよいが、図示するように、主処理装置5Aと専用通信回線又はネットワークを介して主処理装置5Aに接続される外部記憶装置5Bに設けられてもよい。主処理装置5Aは、機械制御装置4と一体に構成されてもよく、機械制御装置4とは分離して構成されてもよい。外部記憶装置5B、つまり第2記憶部53は、複数の画像処理システム5、つまり複数の産業機械1に共用されてもよい。主処理装置5Aと外部記憶装置5Bとを接続する専用通信回線としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial AT Attachment)等を挙げることができ専用無線通信回線であってもよい。また、主処理装置5Aと外部記憶装置5Bとを接続するネットワークとしては、例えばイーサネット等の有線LAN、例えばWifi(登録商標)等の無線LANなどを挙げることができる。
【0019】
視覚センサ51は、被写体からの光の像を結像させる光学系と、結像した像を2次元位置毎に電気信号に変換する2次元撮像素子とを有するカメラによって構成することができる。視覚センサ51は、位置決め機構3によって位置決めされてもよい。具体的には、視覚センサ51は、処理ヘッド2又は位置決め機構3の処理ヘッド2が接続される末端の可動部材34に支持される構成とすることができる。
【0020】
第1記憶部52は、特に限定されないが、例えばDRAM、SRAM等の揮発性メモリによって構成することができる。第1記憶部52は、少なくとも1つ好ましくは複数の過去の撮影情報を記憶できる容量を有する。これにより、視覚センサによって撮影された現在の画像データを処理すると同時に、過去の撮影情報の第2記憶部53への転送及び第1記憶部52からの消去を行うことができるので、第1記憶部52に係る処理が産業機械1の動作を遅延させることを抑制できる。
【0021】
第2記憶部53は、特に限定されないが、例えばフラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ等の不揮発性メモリによって構成することができる。第2記憶部53は、産業機械1の比較的長期間の運転に際して取得される撮影情報を記憶できる容量を有する。
【0022】
第2記憶部53は、撮影情報を第1記憶部52とは異なる形式のデータとして記憶してもよい。つまり、記憶制御部54は、第1記憶部52から読み出した撮影情報を異なる形式のデータに変換して第2記憶部53に書き込んでもよい。例として、第2記憶部53は、第1記憶部52における撮影情報のテキストデータを圧縮したデータファイルとして記憶してもよい。
【0023】
記憶制御部54は、視覚センサ51から提供される画像データと機械制御装置4から提供される機械制御情報とを紐づけた撮影情報を生成し、この撮影情報を第1記憶部52に記憶させる。また、記憶制御部54は、第1記憶部52に記憶された古い撮影情報を第2記憶部53に転送すると共に、第1記憶部52に記憶されている古い撮影情報を削除する。この記憶制御部54は、CPU等の演算装置に適切なプログラムを実行させることにより実現することができる。
【0024】
記憶制御部54は、機械制御装置4からの要求に従って撮影を行うたびに撮影情報を第1記憶部52に記憶させてもよいが、プログラム制御部41からの指示に応じて、必要な撮影情報だけを第1記憶部52に記憶させるように構成されてもよい。
【0025】
第1記憶部52から第2記憶部53に転送される撮影情報は、第1記憶部52が記憶している全ての撮影情報の中で最も古い撮影情報とされてもよい。第1記憶部52が記憶している撮影情報を古いものから順番に第2記憶部53に転送することによって、第1記憶部52が一時的に記憶した撮影情報を漏れなく第2記憶部53に記憶させて保存することができる。
【0026】
また、第1記憶部52から第2記憶部53に転送される撮影情報は、オペレータが入力部56を用いて選択又は作業プログラムにおいて選択される特定の属性を有する撮影情報の中で最も古い撮影情報とされてもよい。特定の属性を有する撮影情報のみを第1記憶部52から第2記憶部53に転送することによって、第1記憶部52から第2記憶部53に撮影情報を転送するために必要な時間を短縮し、第1記憶部52から第2記憶部53への撮影情報を転送が産業機械1の動作に待ち時間を生じさせることを抑制できる。
【0027】
第2記憶部53への転送の要否を定める属性としては、例えば視覚センサ51が作業プログラムのどの命令に従って撮影を行ったかを等を挙げることができる。産業機械1が作業プログラムに従って動作をする際に、作業プログラムの特定の命令により位置決め機構3が位置決めする視覚センサ51の位置の設定が適切か否かを確認することが重要であると予め分かっている場合がある。この場合、その特定の命令により位置決めされた視覚センサ51が撮影した画像データとその時の位置決め機構の状態を特定する機械制御情報とを含む制御情報を第2記憶部53に転送して保存することで、作業プログラムが適切であるがどうかを確認することができる。
【0028】
記憶制御部54による第1記憶部52に記憶されている古い撮影情報の削除は、撮影情報を第2記憶部53に転送したときに、続けてその転送した撮影情報を削除するようにしてもよい。また、記憶制御部54による第1記憶部52に記憶されている古い撮影情報の削除は、第1記憶部52の容量及び記録回数の少なくとも何れかが所定値を超えた場合に、最も古い撮影情報から順番に削除するようにしてもよい。また、上述のように特定の属性を有する撮影情報のみを第2記憶部53に転送する場合には、撮影情報を転送したときに転送した撮影情報と転送した撮影情報よりも古い他の属性の撮影情報とを同時に消去してもよく、撮影情報を転送したときに転送した撮影情報だけを消去し、第1記憶部52の容量及び記録回数の少なくとも何れかが所定値を超えたときに他の属性の撮影情報を古いものから順番に削除してもよい。
【0029】
また、記憶制御部54は、入力部56を用いたオペレータの指示又は作業プログラムに従って、第1記憶部52から第2記憶部に撮影情報を転送するか否かを選択可能であってもよい。産業機械1の予定された動作の中で、一次的に第1記憶部52から第2記憶部53への撮影情報の転送を行わないようにすることで、その間だけは第1記憶部52への撮影情報の記録に起因する産業機械1の動作遅延を防止して作業効率を向上することができる。また、不必要な撮影情報の転送を行わないことによって、第2記憶部53の容量を節約することができる。
【0030】
また、記憶制御部54は、第1記憶部52の容量及び記録回数の少なくともいずれかが所定値を超える場合に、第1記憶部52に記憶されている古い撮影情報を削除するか、視覚センサ51による新たな撮影を禁止するか、を選択可能であってもよい。第1記憶部52の使用量が上限に達した場合に視覚センサ51による新たな撮影を禁止することによって、例えば新たな作業プログラムを作成して産業機械1の動作を確認する場合等に、撮影情報を第2記憶部53から第1記憶部52に書き戻すことなく、表示部57等により迅速に撮影情報を確認することができる。
【0031】
画像処理部55は、公知の画像処理技術によって視覚センサ51が撮影した画像データを解析し、ワークWの位置及び向きを判別する。この画像処理部55は、CPU等の演算装置に適切なプログラムを実行させることにより実現することができる。なお、画像処理部55と記憶制御部54とは機能的に区別されるものであって、同一の演算装置により実現されてもよい。
【0032】
入力部56は、オペレータが操作可能な例えばキーボード、スイッチ等の入力装置を有することができる。また、入力部56は、通信回線等を介して他の制御装置やコンピュータからの入力を受け付けるものであってもよい。
【0033】
表示部57は、オペレータに対して情報を表示するディスプレイパネル等を有する構成とすることができる。また、表示部57は、入力部56と一体に形成されるタッチパネル等であってもよい。
【0034】
続いて、産業機械1の動作の一例について、以下に順を追って説明する。産業機械1は、次のような作業プログラムに従って動作することができる。
【0035】
[作業プログラム]
1: MOVE_TO P1
2: VISION_FIND “VP1”
3: MOVE_TO P2
4: VISION_FIND “VP2”
【0036】
この作業プログラムでは、1行目の命令により、位置決め機構3が処理ヘッド2をP1として定義された位置に移動する。2行目の命令では、VP1という名前の撮影プログラムを実行する。この撮影プログラムVP1では、視覚センサ51による撮影及び撮影した画像データに基づくワークWの位置及び向きの算出が行われ、記憶制御部54による撮影情報の第1記憶部52への書き込みがなされる。
【0037】
図2に、撮影プログラムVP1における撮影情報に関係する処理の流れを示す。この例において、撮影プログラムVP1では、ステップS01において第1の露光時間で第1の画像を撮影し、ステップS02において第2の露光時間で第1の画像と画角が等しい第2の画像を撮影する。次に、ステップS03において第1の画像からワークWの第1の特徴点C1を検出し、ステップS04において第2の画像からワークWの第2の特徴点C2を検出する(
図3に例示する撮影画像を参照)。そして、ステップS05において画角が等しい第1の画像及び第2の画像における2つの特徴点C1,C2の位置から、ワークW全体の位置(座標及び向き)を算出し、ステップS06において機械制御情報が示す撮影時の視覚センサ51の位置を考慮して、位置決め機構3の座標系におけるワークWの位置を算出する。さらに、ステップS07において、記憶制御部54によって、例えば次のようなフォーマットの撮影情報を第1記憶部に記憶させる。
【0038】
[撮影情報]
{
datetime: “2017/01/04 10:53:30”,
program: “VP1”,
command: “SNAPFIND”,
images: [
{
file: “img00001.png”,
snap_pos: [2.3, 1.1, 10.6, 0.1, 0.2, 10],
binning: 1,
},
{
file: “img00002.png”,
snap_pos: [2.3, 1.1, 10.6, 0.1, 0.2, 10],
binning: 1
}
],
found_pos: [
[2.3, 1.1, 10.6, 0.1, 0.2, 10],
[5.2, -2.3, 10.2, 0.1, 0.2, -1]
]
}
【0039】
上記撮影情報は、機械制御情報として、撮影プログラムの名称(属性情報)、第1の画像のデータ及びその撮影時の視覚センサ51の位置、第2の画像のデータ及びその撮影時の視覚センサ51の位置を含み、画像処理結果として、算出されたワークWの位置を含む。なお、上記撮影情報のフォーマットでは、画像データは、外部ファイルを参照する形式とされているが、同じファイル内に記載されてもよい。
【0040】
さらに、上記作業プログラムでは、3行目の命令により、位置決め機構3が処理ヘッド2をP2として定義された位置に移動させる。そして、4行目の命令で、VP2という名前の撮影プログラムを実行する。ここでも、視覚センサ51による撮影及び撮影した画像データに基づくワークWの位置及び向きの算出が行われ、記憶制御部54による撮影情報の第1記憶部52への書き込みがなされる。
【0041】
図4に、記憶制御部54による撮影情報の第1記憶部52への書き込みの手順を示す。第1記憶部52による撮影情報の記憶は、先ず、ステップS11において撮影情報を取得し、ステップS12において第1記憶部52の空き容量が十分か、つまり空き容量が新たな撮影情報のサイズよりも大きいか否かを確認する。第1記憶部52の空き容量が十分でなかった場合は、ステップS13に進んで古い撮影情報を削除することにより空き容量を増やし、ステップS12に戻って再度第1記憶部52の空き容量を確認する。第1記憶部52の空き容量が十分であった場合は、ステップS14に進んで第1記憶部52による撮影情報を記憶させる。
【0042】
産業機械1では、作業プログラム2行目の撮影プログラムVP1の第2の画像の撮影が終了すれば、3行目の処理ヘッド2の移動を行う処理を実行してもよいが、撮影情報の第1記憶部52への書き込みが完了するまで新しい画像データを取り扱うことができないので、4行目の撮影プログラムVP2を実行することはできない。ここで、第1記憶部52が比較的高速であることによって、撮影プログラムVP1の実行から撮影プログラムVP2の実行までの間に待ち時間が生じることを抑制できる。
【0043】
また、産業機械1では、上記作業プログラムの実行と並列して、記憶制御部54が第1記憶部52の撮影情報を第2記憶部53に転送する。具体的には、記憶制御部54は、作業プログラムの実行により生成される新しい撮影情報を第1記憶部52に記憶させると共に、新しい撮影情報を記憶するために第1記憶部52が占有されていないときには、第1記憶部52に既に記憶されている古い撮影情報を第2記憶部53に転送する処理を行う。
【0044】
図5に、第2記憶部53への撮影情報の転送に係る制御の手順を示す。第2記憶部53への撮影情報の転送制御は、先ず、ステップS21において第1記憶部52に第2記憶部53に転送すべき撮影情報が存在するか否かを確認する。第1記憶部52に第2記憶部53に転送すべき撮影情報が存在する場合、ステップS22に進んで第1記憶部52の撮影情報を第2記憶部53に転送し、さらにステップS23において転送した撮影情報を第1記憶部52から削除する。なお、この第2記憶部53への撮影情報の転送処理中に新たな撮影情報の第1記憶部52への書き込み処理が必用となった場合には、第2記憶部53への転送処理を中断して新たな撮影情報の第1記憶部52への書き込み処理を実行してもよい。
【0045】
以上のように、産業機械1の画像処理システム5は、比較的高速な第1記憶部52と比較的大容量の第2記憶部53とを備えることによって、迅速な処理が可能であると共に、問題が生じた場合に撮影情報を確認して原因究明を行うことができる。特に、画像処理システム5は、画像データと画像処理結果と機械制御情報とを含む撮影情報を生成して記憶するため、視覚センサ51が撮影した画像だけでなく、位置決め機構3の状態を把握することができるので、不具合の原因をより容易に究明することができる。
【0046】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0047】
産業機械1は、位置決め機構によってワーク又は工具を位置決めしてワークを加工する工作機械であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 産業機械
2 処理ヘッド
3 位置決め機構
4 機械制御装置
5 画像処理システム
31,32,33,34 可動部材
41 プログラム制御部
42 位置決め制御部
43 ヘッド制御部
51 視覚センサ
52 第1記憶部
53 第2記憶部
54 記憶制御部
55 画像処理部
56 入力部
57 表示部
W ワーク