(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度に含有する加熱殺菌済み容器詰め飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20240123BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240123BHJP
A23F 5/20 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/00 B
A23F5/20
(21)【出願番号】P 2019160188
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】野中 翔太
(72)【発明者】
【氏名】宗口 瑛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛之
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-277260(JP,A)
【文献】特開2015-164401(JP,A)
【文献】国際公開第2015/034068(WO,A1)
【文献】特開2015-112033(JP,A)
【文献】特開2016-042817(JP,A)
【文献】GNPD - Coconut Oil MCT Superdrink with Cold Brewed Coffee,ID# 4813927,2017年
【文献】食品成分表,2016年,p.212-213 食品番号「16045」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
A23F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.0g/100ml~32g/100mlの中鎖脂肪酸トリグリセリド、及び
10mg/100ml~120mg/100mlのカフェイン
を含有し、
無脂乳固形分を含まない、加熱殺菌済み容器詰め飲料。
【請求項2】
中鎖脂肪酸トリグリセリドの量が5.0g/100ml~20g/100mlである、請求項1に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
【請求項3】
中鎖脂肪酸トリグリセリドにおける中鎖脂肪酸が、炭素数8の飽和脂肪酸及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸である、請求項1又は2に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
【請求項4】
加熱殺菌が、85℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行われたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度に含有し、かつ、加熱殺菌されて容器詰めされている飲料に関する。詳細には、高濃度の中鎖脂肪酸トリグリセリドを加熱することにより生じる不快な後味の問題を解消した加熱殺菌済み容器詰め飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
中鎖脂肪酸トリグリセリドは、天然ではヤシ油やパーム核油などに見出される油脂である。中鎖脂肪酸トリグリセリドは、小腸から吸収された後、門脈を経由して直接に肝臓に送られ、肝臓で急速に代謝されることから、効率の良いエネルギー補給源として利用されている。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、一般的な長鎖脂肪酸からなる油脂に比べて、体脂肪として蓄積されにくいことが知られている。例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドを、ダイエットや糖質制限をしている人、また、高齢や病気が原因で食が細い人の通常の食事に加えることで、エネルギーを良好に補給することができる。
【0003】
上記の他にも、中鎖脂肪酸トリグリセリドについて、各種の効果が報告されている。例えば、特許文献1には、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を、神経疾患並びに脳エネルギー欠乏に関する状態及び疾患を含む広範囲の疾患を治療するために使用することが記載されている。
【0004】
生体内以外の効果として、例えば、特許文献2には、従来の乳脂肪を含む飲料に、中鎖脂肪酸トリグリセリドを飲料全体に対して0.01~1重量%添加することにより、乳脂肪由来の白色浮遊物の発生が抑制され、乳入り飲料中で乳脂肪が安定化されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-537091号公報
【文献】特開2007-61053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような各種の効果を有する中鎖脂肪酸トリグリセリドを日常的に気軽に摂取できるように、高濃度の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有し、かつ、嗜好性の高い容器詰め飲料を開発することは望ましいと考えられる。しかしながら、本発明者らが検討した結果、中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度で含有し、かつ、容器詰め及び加熱殺菌を行った場合には、後味がすっきりとせず、特に、のどで「イガイガ感」を感じるような、ざらざらした細かい砂を飲み込んでいるかのような、のど越しの悪い飲料となることがわかった。さらに検討を進めた結果、こうした後味の悪さやのどの不快感は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを低濃度で(例えば0.5g/100mlで)含む場合には、たとえ加熱殺菌を行ったとしても、感じられず、一方で、加熱殺菌を行わない場合には、たとえ中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度で(例えば2.4g/100mlまたは10g/100mlで)含んでいても、ほとんど感じられないことがわかった。すなわち、中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度で含有しながら、かつ、加熱殺菌して容器詰め飲料とした場合に初めて、後味の悪さ(すっきりとしない後味)や、のどの不快感(イガイガ感、ざらざらした細かい砂を飲み込んでいるかのようなのど越しの悪さ)の問題が生じることを見出した。
【0007】
本発明は、この高濃度の中鎖脂肪酸トリグリセリドと加熱殺菌の組み合わせにより生じる後味の悪さ及びのどの不快感を解消した、容器詰め飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、高濃度の中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有し、加熱殺菌を行って製造する容器詰め飲料に、特定範囲のカフェインを含有させることで、後味の悪さ(すっきりしない後味)とのどの不快感(イガイガ感)の問題を解消することができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]1.2g/100ml~32g/100mlの中鎖脂肪酸トリグリセリド、及び
10mg/100ml~120mg/100mlのカフェイン
を含有する、加熱殺菌済み容器詰め飲料。
[2]中鎖脂肪酸トリグリセリドの量が2.4g/100ml~20g/100mlである、[1]に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
[3]中鎖脂肪酸トリグリセリドにおける中鎖脂肪酸が、炭素数8の飽和脂肪酸及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸で構成されており、炭素数8の飽和脂肪酸及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸で構成されている中鎖脂肪酸トリグリセリドの量が1.2g/100ml~32g/100mlである、[1]又は[2]に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
[4]加熱殺菌が、85℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行われたものである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
[5]無脂乳固形分が2質量%未満である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の加熱殺菌済み容器詰め飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中鎖脂肪酸トリグリセリドを高濃度に含有しながら後味の悪さやのどの不快感が低減された加熱殺菌済み容器詰め飲料を提供することができる。このような嗜好性の高い中鎖脂肪酸トリグリセリド高含有の容器詰め飲料は、中鎖脂肪酸トリグリセリドの効果を期待して日常的に摂取する人にとって、中鎖脂肪酸トリグリセリドの便利な摂取源となると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<中鎖脂肪酸トリグリセリド>
本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料は、高濃度の中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTと略すこともある。)を含有する。本明細書において、MCTは、炭素数8の飽和脂肪酸(カプリル酸)及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸(カプリン酸)を構成脂肪酸とするトリグリセリドをいう。1つのMCT分子は、は単一の種類の飽和脂肪酸からなっていてもよいし(例えば、炭素素8の飽和脂肪酸のみ、または炭素数10の飽和脂肪酸のみ)、炭素数8の飽和脂肪酸と炭素数10の飽和脂肪酸の両方からなっていてもよい。このような複数の種類のMCT分子が混合されたものを用いてよい。
【0012】
MCT全体における炭素数8の飽和脂肪酸(C8)と炭素数10の飽和脂肪酸(C10)との割合(質量比)は、特に限定されないが、好ましくはC8:C10=5:95~95:5、さらに好ましくは40:60~75:25、さらに好ましくは50:50~60:40である。MCT全体における構成脂肪酸の量の測定方法は後述する。
【0013】
MCTとしては、天然物から得られたものや、化学合成により製造されたものなどを使用することができる。MCTは市販されている。市販のMCT製品(MCTオイルなど)には、MCT以外にも副成分として、中鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸のジグリセリド及びモノグリセリド、また、短鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸グリセリドなどが含まれることがあるが、下記で定義するMCTの量が本発明の範囲を満たすならば、これらが多少共存するものを用いてもよい。
【0014】
本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料中のMCTの量は、1.2g/100ml~32g/100mlである。MCTの量が1.2g/100ml未満である場合には、加熱殺菌を行ってもそもそも本発明の課題である後味の悪さやのどの不快感の問題が生じない可能性があり、一方で、MCTの量が32g/100mlを超える場合には、本発明によっても上記の課題を解決できない可能性がある。MCTの量の下限は、より好ましくは2.4g/100ml以上であり、さらに好ましくは5.0g/100ml以上である。MCTの量が2.4g/100ml以上であると、通常は加熱殺菌により後味の悪さやのどの不快感が強く感じられるようになるが、以下に記載する特定量のカフェインを共存させることにより、これらを顕著に低減させることができるようになる。MCTの量の上限は、より好ましくは20g/100ml以下である。ここで、「MCTの量」とは、炭素数8の飽和脂肪酸(カプリル酸)及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸(カプリン酸)を構成脂肪酸とするトリグリセリドの量をいう。容器詰め飲料中のMCTの量は、まず、容器詰め飲料を開栓し、飲料から脂質を適切な方法で抽出した後、トリグリセリド含量をAOCS Ce5-86に準じて測定し、また、各脂肪酸の量をAOCS Ce1f-96に準じて測定し、これらの値から炭素数8の飽和脂肪酸(カプリル酸)及び/又は炭素数10の飽和脂肪酸(カプリン酸)を構成脂肪酸とするトリグリセリドの量を算出することにより得ることができる。
【0015】
<カフェイン>
本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料には、上記の濃度のMCTに加えて、カフェインを含有させることにより、高濃度のMCTと加熱殺菌の組み合わせにより生じる後味の悪さ(すっきりしない後味)とのどの不快感(のどのイガイガ感、ざらざらした細かい砂を飲み込んでいるかのようなのど越しの悪さ)を低減させて、良好に飲用することができる加熱殺菌済み飲料を提供することができるようになる。本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料におけるカフェインの濃度は、10mg/100ml~120mg/100mlである。カフェインの濃度が10mg/100ml未満であると、高濃度のMCTを含む飲料の加熱殺菌により生じる後味の悪さやのどの不快感の問題を解消することができないことがある。一方、カフェインの濃度が120mg/100mlを超えると、カフェイン自体の後味が強くなり、飲用に適さない飲料となることがある。カフェインの濃度の下限は、より好ましくは20mg/100ml以上であり、さらに好ましくは30mg/100ml以上である。カフェインの濃度が20mg/100ml以上であると、高濃度のMCTを含有する加熱殺菌済み容器詰め飲料における後味の悪さとのどの不快感の低減効果をさらに高めることができ、30mg/100ml以上であるとさらに高めることができる。また、カフェインの濃度の上限は、より好ましくは90mg/100ml以下であり、さらに好ましくは80mg/100ml以下である。これらの範囲であると、カフェイン自体の持つ強い後味が飲料に影響しにくくなる。
【0016】
加熱殺菌済み容器詰め飲料におけるカフェインの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定及び定量できる。
本発明に用いられるカフェインは、特に制限されないが、市販の試薬、純品(カフェイン含量98質量%以上の精製品)、粗精製品(カフェイン含量50~98質量%)の他、カフェインを含有する植物(コーヒー豆、茶葉、コーラの実等)の抽出物又はその濃縮物の形態でも用いることができる。カフェインを植物の抽出物又はその濃縮物の形態で用いる場合、抽出する原料としては、これらに限定されないが、例えば、アカネ科コフィア属に属するコーヒー豆類;緑茶、紅茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)に属する茶葉類などを用いることができる。
【0017】
<加熱殺菌済み容器詰め飲料>
本発明は、高濃度のMCTと加熱殺菌との組み合わせにより生じる後味の悪さ(すっきりしない後味)とのどの不快感(イガイガ感)の問題を解決するものである。本発明の飲料は、加熱殺菌と容器詰めの両方を行われたもの(「加熱殺菌済み容器詰め飲料」)である。「加熱殺菌済み容器詰め飲料」において、加熱殺菌と容器詰めの順序は特に限定されず、通常の容器詰め飲料を製造する手順にしたがって行えばよい。例えば、缶飲料とする場合には、調合液を缶に所定量充填し、レトルト殺菌を行ってもよいし、ペットボトルや紙パック、カップ、瓶飲料とする場合には、例えばUHT殺菌等を行ってから、所定量をホットパック充填或いは低温で無菌充填してもよい。
【0018】
本明細書において、「加熱殺菌」とは、85℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法をいう。より好ましくは、加熱殺菌は、120℃で4分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法である。「同等以上の効力」における温度と時間の計算方法については、「清涼飲料水の製造における衛生管理計画手引書 2018年11月 (一社)全国清涼飲料連合会」に記載されている。
【0019】
本発明の飲料を充填する容器の種類は特に限定されず、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器、カップなど、通常用いられる容器を例示することができる。本発明の飲料は、これらの容器に充填された後、閉栓される。
【0020】
<その他>
その他、本発明の飲料には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の飲料と同様に、各種添加剤、例えば、甘味料などの調味料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、安定化剤、保存料、pH調整剤、品質安定剤などを配合してもよい。また、飲料の種類に応じて、コーヒー抽出液、茶抽出液、炭酸ガス、果汁、乳類、アルコールなどを配合してもよい。しかし、乳由来の固形分、特に無脂乳固形分(例えば脱脂粉乳など)は、飲料に多めに含まれると加熱されたMCT由来のイガイガ感をそれだけでマスキングし、本発明の課題がそもそも生じない可能性がある。したがって、本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料は、無脂乳固形分の含有量が2質量%未満であることが好ましく、無脂乳固形分を含まないことがさらに好ましい。ここで無脂乳固形分とは、牛乳から水分と乳脂肪を除いた成分(牛乳由来のもの)をいう。また、本発明の加熱殺菌済み容器詰め飲料は、脱脂粉乳の含有量が2質量%未満であることが好ましく、脱脂粉乳を含まないことがさらに好ましい。
【0021】
本発明の飲料の種類は、特に限定されない。例えば、コーヒー飲料、茶飲料、エナジードリンク、炭酸飲料、ココア飲料、果汁飲料、スポーツ飲料、乳飲料、アルコール飲料などを挙げることができる。これらの中では、コーヒー飲料や茶飲料は特に好ましい態様である。ここで「コーヒー飲料」とは、焙煎コーヒー豆の抽出物を含有する飲料であり、「茶飲料」とは、茶葉の抽出物や穀類の抽出物を主成分として含有する飲料である。
【0022】
<方法>
本発明は、別の側面では飲料の製造方法であり、具体的には、高濃度のMCTと特定量の範囲のカフェインとを含有し、加熱殺菌及び容器詰めを行って得られる飲料の製造方法である。当該方法は、以下の工程:
飲料に1.2g/100ml~32g/100mlの中鎖脂肪酸トリグリセリドを添加する工程、
飲料中のカフェインの濃度を10mg/100ml~120mg/100mlに調整する工程、
得られた飲料を加熱殺菌する工程、及び
得られた飲料を容器詰めする工程
を含む。
【0023】
飲料中のカフェインの濃度は、上述したようなカフェイン製剤またはカフェインを含有する植物由来の抽出物などを飲料中に添加したり、また、必要に応じて公知の手法で飲料からカフェインを除去する処理(デカフェ処理)を行うことにより、調整することができる。MCTを添加する工程とカフェインの濃度を調整する工程は、どちらを先に行ってもよく、また同時に行ってもよい。加熱殺菌工程と容器詰め工程は、MCTを添加する工程とカフェインの濃度を調整する工程が終わった後に行う。加熱殺菌工程と容器詰め工程は、どちらを先に行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0024】
上記の製法により得られる加熱殺菌済み容器詰め飲料は、高濃度のMCTと加熱殺菌の組み合わせにより生じるMCT由来の後味の悪さ(すっきりしない後味)とのどの不快感(のどのイガイガ感、ざらざらした細かい砂を飲み込んでいるかのようなのど越しの悪さ)が低減されている。したがって、当該製法は、別の側面では、高濃度のMCTを含有する加熱殺菌済み容器詰め飲料における、高濃度のMCTと加熱殺菌の組み合わせにより生じる後味の悪さとのどの不快感を低減させる方法ともいえる。
【実施例】
【0025】
以下、実験例及び実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<参考例>
市販のデカフェコーヒー(カフェイン含有量5mg/100ml)に、MCT(日清オイリオ社製、商品名:スコレー(登録商標)64G、脂肪酸組成:C8脂肪酸60質量%、C10脂肪酸40質量%)を下記の表1に記載の濃度となるように添加し、参考例1に関しては缶に充填した後に125℃で5分間の加熱殺菌を行い、一方、参考例2及び3に関しては缶に充填したが加熱殺菌を行わなかった。得られた各飲料を5℃で保存した後、翌日開栓し、3人の訓練された専門パネラーがそれぞれ飲用し、以下の評価基準で「後味の悪さとのどの不快感」について評価した。なお、「後味の悪さ」とは「すっきりした後味が感じられないこと、飲み込んだ後に好ましくない後味が残留すること」を意味し、「のどの不快感」とは具体的には「のどに感じるイガイガ感、ざらざらとした細かい砂を飲み込んでいるかのようなのど越しの悪さ」を意味し、評価を行う前に、後味の悪さとのどの不快感について、パネラー間で各評価点の基準のすり合わせを行った。パネラー3名の評価点の平均点を表1に示す。平均点3.0点以上のものは、のどの不快感がなく、飲料として合格であるといえる。評価の結果、パネラー間で評価点のばらつきは、ほとんどみられなかった。パネラーによる代表的なコメントも表1に示す。
【0026】
・評価基準:
4点:すっきりした後味であり、のどの不快感はない
3点:すっきりした後味はやや弱まるが、のどの不快感はない
2点:後味のすっきり感が弱く、また、のどの不快感がある
1点:後味が悪く、のどの不快感も強い
【0027】
【0028】
表1の結果より、MCT量が0.5g/100mlである場合には、加熱殺菌を行っていても、後味の悪さやのどの不快感をほとんど感じずにおいしく飲めることがわかる(参考例1)。一方、MCT量が2.4g/100ml及び10g/100mlと高濃度であっても、加熱殺菌を行っていない場合には、同様に、問題なくおいしく飲めることがわかる(参考例2及び3)。
【0029】
<実施例及び比較例>
市販のデカフェコーヒー(カフェイン含有量5mg/100ml)に、MCT(日清オイリオ社製、商品名:スコレー(登録商標)64G)と、カフェイン(白鳥製薬製)を下記の表2に記載の濃度となるように添加し、缶に充填した後に125℃で5分間の加熱殺菌を行い、各飲料を得た。得られた各飲料を5℃で保存した後、翌日開栓し、参考例と同様にして、3人の専門パネラーで「後味の悪さとのどの不快感」について評価した。パネラーによる平均点と代表的なコメントを表2に示す。
【0030】
【0031】
表2の結果より、MCT量が1.2g/100ml~32g/100mlの範囲であり、かつ、カフェイン量が10mg/100ml~120mg/100mlの範囲である場合には、加熱殺菌を行っていても、後味の悪さやのどの不快感が少なく、おいしく飲めることがわかる(実施例1~8)。一方、MCT量が上記の範囲内であっても、カフェインの量が10mg/100ml未満である場合には、後味の悪さとのどの不快感を感じ(比較例1~3)、また、カフェインの量が150mg/100mlであると、後味が悪くのどの不快感も強くなることがわかる(比較例4)。