(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】機械学習装置、制御装置、生成方法および制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20240123BHJP
G05B 19/416 20060101ALI20240123BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G05B19/4155 V
G05B19/416 F
B23Q15/00 301C
(21)【出願番号】P 2019167081
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】黒川 友磯
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045300(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042740(WO,A1)
【文献】特開平05-031659(JP,A)
【文献】特開2010-149271(JP,A)
【文献】特開2000-153428(JP,A)
【文献】特開2000-107910(JP,A)
【文献】特開2019-082894(JP,A)
【文献】特開2017-030067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する機械学習装置であって、
前記加工対象物の形状、前記加工対象物の材質、前記切削加工の加工経路、前記工具の種類、および、前記工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1情報取得部と、
前記第1情報を用いて設定された前記加工条件による前記切削加工により前記加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2情報取得部と、
前記第1情報および前記第2情報が取得される毎に学習処理を繰り返し実行し、前記切削加工により前記加工対象物に生じる前記バリを低減するための前記加工条件を出力する学習モデルを生成する学習部と、
を備える、機械学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機械学習装置であって、
前記加工条件は、前記工具の送り速度、前記工具の回転速度、および、前記加工対象物に対する前記工具の切込量の少なくとも1つを含む、機械学習装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の機械学習装置であって、
前記第2情報は、前記バリの面積、前記バリの根元部分の長さ、前記バリの高さ、および、前記切削加工のサイクルタイムの少なくとも1つを含む、機械学習装置。
【請求項4】
請求項3に記載の機械学習装置であって、
前記第2情報は、前記バリの面積、前記バリの根元部分の長さ、および、前記バリの高さの少なくとも1つと、前記切削加工のサイクルタイムとを含む、機械学習装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機械学習装置と、
前記機械学習装置で生成された前記学習モデルを用いて、前
記第1情報に応じた前記加工条件となるよう
に加工機本体を制御する制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項6】
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する生成方法であって、
前記加工対象物の形状、前記加工対象物の材質、前記切削加工の加工経路、前記工具の種類、および、前記工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1取得ステップと、
前記第1情報を用いて設定された前記加工条件による前記切削加工により前記加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2取得ステップと、
前記第1情報および前記第2情報が取得される毎に学習処理を繰り返し実行し、前記切削加工により前記加工対象物に生じる前記バリを低減するための前記加工条件を出力する学習モデルを生成する学習ステップと、
を含む、生成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の生成方法であって、
前記加工条件は、前記工具の送り速度、前記工具の回転速度、および、前記加工対象物に対する前記工具の切込量の少なくとも1つを含む、生成方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の生成方法であって、
前記第2情報は、前記バリの面積、前記バリの根元部分の長さ、前記バリの高さ、および、前記切削加工のサイクルタイムの少なくとも1つを含む、生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の生成方法であって、
前記第2情報は、前記バリの面積、前記バリの根元部分の長さ、および、前記バリの高さの少なくとも1つと、前記切削加工のサイクルタイムとを含む、生成方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の生成方法と、
前記生成方法で生成された前記学習モデルを用いて、前
記第1情報に応じた前記加工条件となるよう
に加工機本体を制御する制御ステップと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置、加工機本体を制御する制御装置、学習モデルを生成する生成方法、および、加工機本体を制御する制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工具を用いて加工対象物を切削加工する場合、切削加工により加工対象物にバリが生じる傾向にある。バリとは、加工対象物の加工面から突出する突起である。
【0003】
下記の特許文献1には、工作機械と、加工対象物を把持する2つのロボットとを備えた工作機械システムが開示され、2つのロボットの一方で加工対象物を把持する場合には、2つのロボットの他方で加工対象物に生じたバリを除去してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工対象物に生じたバリを除去する場合にはバリを除去するための工具が摩耗し、またバリが多いほど除去時間が長くなる傾向にある。このため、加工対象物に生じるバリを低減することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、加工対象物に生じるバリを低減させ得る機械学習装置、制御装置、生成方法および制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する機械学習装置であって、
前記加工対象物の形状、前記加工対象物の材質、前記切削加工の加工経路、前記工具の種類、および、前記工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1情報取得部と、
前記切削加工により前記加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2情報取得部と、
複数の前記第1情報および複数の前記第2情報を用いて学習処理を実行し、複数の前記第1情報とは異なる別の第1情報に応じて、前記加工条件を出力する学習モデルを生成する学習部と、
を備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する加工機本体を制御する制御装置であって、
上記の機械学習装置と、
前記機械学習装置で生成された前記学習モデルを用いて、前記別の第1情報に応じた前記加工条件となるように前記加工機本体を制御する制御部と、
を備える。
【0009】
本発明の第3の態様は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する生成方法であって、
前記加工対象物の形状、前記加工対象物の材質、前記切削加工の加工経路、前記工具の種類、および、前記工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1取得ステップと、
前記切削加工により前記加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2取得ステップと、
複数の前記第1情報および複数の前記第2情報を用いて学習処理を実行し、複数の前記第1情報とは異なる別の第1情報に応じて、前記加工条件を出力する学習モデルを生成する学習ステップと、
を含む。
【0010】
本発明の第4の態様は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する加工機本体を制御する制御方法であって、
上記の生成方法と、
前記生成方法で生成された前記学習モデルを用いて、前記別の第1情報に応じた前記加工条件となるように前記加工機本体を制御する制御ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記の態様によれば、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】工作機械および機械学習装置を示すブロック図である。
【
図2】機械学習装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】機械学習装置において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態〕
図1を用いて、本実施形態の工作機械10および機械学習装置12を備えたシステムに関して説明する。
【0014】
工作機械10は、工具を用いて加工対象物を切削加工する加工機本体14と、加工機本体14を制御する制御装置16とを有している。
【0015】
加工機本体14は、工具および加工対象物を撮像するカメラ18と、工具が取り付けられる主軸を回転させる第1モータ20と、加工対象物に対して主軸を相対移動させる第2モータ22とを有する。第2モータ22は、X軸用モータ、Y軸用モータおよびZ軸用モータを含む。なお、Z軸は、加工対象物に対して工具が近づく方向または離れる方向に延びる軸であり、X軸およびY軸は、Z軸に対して直交し、かつ、平面内で互いに直交する関係にある軸である。
【0016】
制御装置16は、加工プログラムなどが記憶される記憶部24と、情報を入力する入力部26と、加工機本体14を制御する制御部28とを有する。制御部28は、例えば機械学習装置12からの指定に応じて、第1モードと第2モードとのいずれかを実行する。
【0017】
制御部28は、第1モードでは、記憶部24に記憶された加工プログラムと、機械学習装置12から出力される加工条件とを用いて第1モータ20および第2モータ22を制御する。
【0018】
加工条件は、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量を含む。すなわち、制御部28は、工具の回転速度にしたがって主軸が回転するように第1モータ20を制御する。また、制御部28は、工具の送り速度にしたがって加工対象物に対して主軸が相対移動するように第2モータ22(X軸用モータおよびY軸用モータの少なくとも一方)を制御する。また、制御部28は、工具の切込量にしたがって加工対象物に対して主軸が相対移動するように第2モータ22(Z軸用モータ)を制御する。なお、機械学習装置12から出力される加工条件以外の加工条件について、制御部28は、予めデフォルトとして設定された設定値を用いる。
【0019】
制御部28は、第2モードでは、機械学習装置12から出力される学習モデルを用いて、バリを低減する加工条件を推定し、推定した加工条件と、記憶部24に記憶された加工プログラムとを用いて第1モータ20および第2モータ22を制御する。なお、制御部28は、学習モデルを用いて推定した加工条件以外の加工条件について、予めデフォルトとして設定された設定値を用いる。
【0020】
機械学習装置12は、工作機械10の状態に関する情報を教師データとして入力し、入力した教師データに基づいて教師あり機械学習を行い、学習モデルを生成する。機械学習装置12は、学習モデルを生成すると、生成した学習モデルを制御装置16に出力する。
【0021】
図2および
図3を用いて、機械学習装置12を更に詳しく説明する。機械学習装置12は、教師データ取得部30および学習部32を有している。教師データ取得部30は、第1情報取得部34および第2情報取得部36を有している。
【0022】
機械学習装置12の処理は、
図3に示すフローチャートに沿って実行される。ステップS1において、第1情報取得部34は、加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度を第1情報として工作機械10から取得する。
【0023】
第1情報取得部34は、記憶部24に記憶された加工対象物の形状および加工対象物の材質を工作機械10に要求することで、加工対象物の形状および加工対象物の材質を取得してもよい。第1情報取得部34は、記憶部24に記憶された加工プログラムを工作機械10に要求し、その要求に対する応答として工作機械10から出力された加工プログラムを解析することで、切削加工の加工経路および工具の種類を取得してもよい。第1情報取得部34は、工具の撮像を工作機械10に要求し、その要求に対する応答として工作機械10から出力された工具の画像と、予め保持された工具の模範画像とを画像解析することで、工具の摩耗度を取得してもよい。
【0024】
第1情報取得部34が第1情報を工作機械10から取得すると、機械学習装置12の処理は、ステップS2に移行する。
【0025】
ステップS2において、学習部32は、所定の機械学習アルゴリズムを用いて、ステップS1で取得した第1情報に応じた加工条件を設定する。機械学習アルゴリズムの具体例として、convolutional neural network、Long Short-Term memory、recurrent neural network、または、multilayer perceptronと称するものが挙げられる。なお、機械学習アルゴリズムについては、具体例として挙げられたものに限らず、回帰の手法を取れるものであればよい。
【0026】
学習部32は、加工条件を設定すると、設定した加工条件を工作機械10に出力することで、当該加工条件に基づく切削加工を工作機械10に実行させる。
【0027】
学習部32が加工条件を工作機械10に出力すると、機械学習装置12の処理は、ステップS3に移行する。
【0028】
ステップS3において、第2情報取得部36は、切削加工により加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を工作機械10から取得する。なお、切削加工は、ステップS2で工作機械10に出力した加工条件を基に実行される切削加工である。第2情報取得部36は、第2情報として、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムを取得する。なお、バリの面積、バリの根元部分の長さおよびバリの高さは、カメラ18で撮像された画像において突出する部分の面積、根元部分の長さおよび高さである。
【0029】
第2情報取得部36は、切削加工されたときの加工対象物の撮像を工作機械10に要求し、その要求に対する応答として工作機械10から出力された加工対象物の画像を画像解析することで、バリの面積、バリの根元部分の長さ、および、バリの高さを取得してもよい。第2情報取得部36は、切削加工のサイクルタイムの計測を要求することで、工作機械10で計測された切削加工のサイクルタイムを取得してもよい。工作機械10で切削加工のサイクルタイムが設定されている場合、第2情報取得部36は、記憶部24に記憶された切削加工のサイクルタイムを工作機械10に要求することで、当該切削加工のサイクルタイムを取得してもよい。
【0030】
第2情報取得部36が第2情報を工作機械10から取得すると、機械学習装置12の処理は、ステップS4に移行する。
【0031】
ステップS4において、学習部32は、所定の機械学習アルゴリズムを用いて、ステップS1で取得された第1情報とステップS3で取得された第2情報とから学習モデルを更新することで、当該学習モデルを生成する。例えば、Qラーニングと呼ばれるアルゴリズムを用いたQ学習の場合、現在の状態(第1情報)に対する加工条件の価値を表す関数が、報酬を用いて更新される。この場合、第2情報におけるバリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムに応じた報酬が与えられる。Q学習が進められることで、より高い報酬が得られる加工条件を選択する方向へ関数が更新される。なお、関数自体が学習モデルであってもよく、第1情報、加工条件および報酬と、所定の数値とを関連付けたデータベースが学習モデルであってもよい。
【0032】
学習部32が学習モデルを生成すると、機械学習装置12の処理は、ステップS5に移行する。
【0033】
ステップS5において、学習部32は、機械学習を終了するか否かを判定する。ここで、予め決められている回数などの所定の条件が満たされていない場合、学習部32は、機械学習を終了しないと判定する。この場合、機械学習装置12はステップS1に戻る。これに対して、所定の条件が満たされた場合、学習部32は、機械学習を終了すると判定する。この場合、機械学習装置12の処理は終了する。
【0034】
このように機械学習装置12は、上記のステップS1~ステップS5の処理を繰り返し実行することで、工具、加工対象物およびサイクルタイムを含む工作機械10の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減可能な加工条件との相関関係を捉えた学習モデルを生成することができる。付言すると、機械学習装置12の処理の開始時には工作機械10の状態と、バリを低減可能な加工条件との相関関係は未知であるが、上記のステップS1~ステップS5を繰り返し実行する頻度が高くなるに応じて、当該相関関係が識別可能となる。
【0035】
したがって、工作機械10は、機械学習装置12により生成された学習モデルを用いて、現状の第1情報に応じた最適な加工条件を取得することができ、取得した加工条件となるように加工機本体14を制御することで、バリを低減することができる。
【0036】
〔変形例〕
機械学習装置12は、上記の実施形態では第1情報および第2情報を工作機械10から取得した。機械学習装置12は、例えばシミュレーション装置などの工作機械10以外の装置から第1情報および第2情報を取得してもよい。
【0037】
また、機械学習装置12は、上記の実施形態では1つの工作機械10から第1情報および第2情報を取得した。機械学習装置12は、ネットワークを介して複数の工作機械10から第1情報および第2情報を取得してもよい。
【0038】
また、機械学習装置12は、上記の実施形態では工作機械10の外部に設けられた。機械学習装置12は、工作機械10の内部に設けられていてもよい。つまり、機械学習装置12は、加工機本体14を制御する制御装置16に組み込まれていてもよい。
【0039】
また、機械学習装置12は、加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度を第1情報として取得した。機械学習装置12は、加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度の一部を第1情報として取得してもよい。また、機械学習装置12は、加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度の少なくとも1つと、加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度以外のパラメータとを第1情報として取得してもよい。
【0040】
また、機械学習装置12は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムを第2情報として取得した。機械学習装置12は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムの一部を第2情報として取得してもよい。また、機械学習装置12は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムの少なくとも1つと、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイム以外のパラメータとを第2情報として取得してもよい。なお、バリの面積、バリの根元部分の長さ、および、バリの高さの取得にカメラ18が用いられたが、当該カメラ18に代えて、または、カメラ18に加えて、レーザ測定器が用いられてもよい。
【0041】
また、機械学習装置12は、第1情報に応じて、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量を加工条件として出力する学習モデルを生成した。加工条件は、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量の一部としてもよい。また、加工条件は、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量の少なくとも1つ、および、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量以外のパラメータとしてもよい。また、加工条件は、工具の回転速度、工具の送り速度、および、加工対象物に対する工具の切込量以外のパラメータを第2情報として取得してもよい。
【0042】
〔技術的思想〕
上記の実施形態および変形例から把握しうる技術的思想として、以下に第1の発明~第4の発明を記載する。
【0043】
(第1の発明)
第1の発明は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する機械学習装置(12)であって、
加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1情報取得部(34)と、
切削加工により加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2情報取得部(36)と、
複数の第1情報および複数の第2情報を用いて学習処理を実行し、複数の第1情報とは異なる別の第1情報に応じて、加工条件を出力する学習モデルを生成する学習部(32)と、
を備える。
【0044】
これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を捉えた学習モデルを生成することができ、この結果、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【0045】
加工条件は、工具の送り速度、工具の回転速度、および、加工対象物に対する工具の切込量の少なくとも1つを含んでもよい。これにより、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【0046】
第2情報は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を詳細に捉えることができる。
【0047】
第2情報は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、および、バリの高さの少なくとも1つと、切削加工のサイクルタイムとを含んでもよい。これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を詳細に捉えることができる。
【0048】
(第2の発明)
第2の発明は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する加工機本体(14)を制御する制御装置(16)であって、
上記の機械学習装置(12)と、
上記の機械学習装置(12)で生成された学習モデルを用いて、別の第1情報に応じた加工条件となるように加工機本体(14)を制御する制御部(28)と、
を備える。
【0049】
工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を捉えた学習モデルを用いて加工機本体(14)を制御することで、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【0050】
(第3の発明)
第3の発明は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する際の加工条件を推定するための学習モデルを生成する生成方法であって、
加工対象物の形状、加工対象物の材質、切削加工の加工経路、工具の種類、および、工具の摩耗度の少なくとも1つを含む第1情報を取得する第1取得ステップ(S1)と、
切削加工により加工対象物に生じたバリの評価に相関する第2情報を取得する第2取得ステップ(S3)と、
複数の第1情報および複数の第2情報を用いて学習処理を実行し、複数の第1情報とは異なる別の第1情報に応じて、加工条件を出力する学習モデルを生成する学習ステップ(S4)と、
を含む。
【0051】
これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を捉えた学習モデルを生成することができ、この結果、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【0052】
加工条件は、工具の送り速度、工具の回転速度、および、加工対象物に対する工具の切込量の少なくとも1つを含んでもよい。これにより、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【0053】
第2情報は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、バリの高さ、および、切削加工のサイクルタイムの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を詳細に捉えることができる。
【0054】
第2情報は、バリの面積、バリの根元部分の長さ、および、バリの高さの少なくとも1つと、切削加工のサイクルタイムとを含んでもよい。これにより、工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を詳細に捉えることができる。
【0055】
(第4の発明)
第4の発明は、
工具を用いて加工対象物を切削加工する加工機本体(14)を制御する制御方法であって、
上記の生成方法と、
上記の生成方法で生成された学習モデルを用いて、別の第1情報に応じた加工条件となるように加工機本体(14)を制御する制御ステップと、
を含む。
【0056】
工具および加工対象物の状態(第1情報および第2情報)と、バリを低減し得る加工条件との相関関係を捉えた学習モデルを用いて加工機本体(14)を制御することで、加工対象物に生じるバリを低減させることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…工作機械 12…機械学習装置
14…加工機本体 16…制御装置
18…カメラ 20…第1モータ
22…第2モータ 24…記憶部
26…入力部 28…制御部
30…教師データ取得部 32…学習部
34…第1情報取得部 36…第2情報取得部