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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/00 20060101AFI20240123BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20240123BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B01D29/08 540A
B01D29/08 530C
B01D29/38 510B
B01D29/38 520A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019175538
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049509
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】507371272
【氏名又は名称】環境電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 康行
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203144(JP,A)
【文献】特開2009-113017(JP,A)
【文献】特開2003-265905(JP,A)
【文献】特開2003-080007(JP,A)
【文献】特開平06-277407(JP,A)
【文献】実公昭47-014554(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管の前処理沈降管と第2管の砂ろ過管と第3管の後処理沈降管の3管に高濁度原水を第1管から第3管まで順序よく流すことで、各管で段階的・自動的に高濁度原水を連続してろ過するろ過装置であって、
前記第1管の前処理沈降管は、上下に2分割可能な上部筒と下部筒とからなり、前記下部筒内には上下逆さまの状態で配置された円管を備え、前記上部筒内には多数の蛇腹状の流速低減材を備え、
前記第2管の砂ろ過管は、上部筒と中間筒と下部筒とからなり、前記下部筒内には下側のラシヒリングと上側のラシヒリングとを備え、前記上部筒の一部と中間筒の全内部にはろ過砂が充填され、前記上部筒から下部筒にかけて逆洗管が挿通され、逆洗管の内部には高圧エアーを吸い込んだエアー管が環状スペースをとって挿入され、
前記第3管の後処理沈降管は、前記上側のラシヒリングと下側のラシヒリングが充填されていることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
請求項1記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管における上部筒と下部筒の接続は相互の接続面にフランジを具備し、両フランジの相互間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着され密着していることを特徴とするろ過装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管は下部筒の内側底部は傾斜面となっており、内部には上下が異なる口径で開口した円垂管が上下逆さまの状態でフランジに固定されていることを特徴とするろ過装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管は、円垂管の上部外壁には原水を供給する原水入り口を備え、底部傾斜面の下端部には沈殿物を排出する排泥口を備えていることを特徴とするろ過装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管は、上部筒内には下段に流速低減材を、上段には流速安定材を装着し、その上部の側壁には処理後の原水を第2管の砂ろ過管に送り込むための原水出口を備え、最上端部もフランジになっており、フランジはゴム輪ともに同形状の天蓋がボルト留めされていることを特徴とするろ過装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管の原水出口は無圧状態の解消のために吸気弁を備えることを特徴とするろ過装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第1管の前処理沈降管の排泥口に接続された配管には、電動弁とタイマーリレーによる電動弁制御器を備え自動で排泥することを特徴とするろ過装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、上部筒と中間筒と下部筒に3分割でき、上部筒と中間筒と下部筒は相互の接続面にフランジを具備しており、各フランジ相互の間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着され密着していることを特徴とするろ過装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、下筒の側壁下部には前記第1管の前処理沈降管の原水出口に接続された入水口を備え、泥砂を排出する排泥口を備え、内部には懸濁物質を付着させる2種類のラシヒリングが充填していることを特徴とするろ過装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のろ過装装置において
前記第2管の砂ろ過管は、下部筒に漏斗型ろ過金具を具備し、漏斗型ろ過金具は、2個の漏斗を重ねた形状で、上部漏斗は底部が開口しており、下部漏斗皿は底部が閉塞し、上部漏斗皿と下部漏斗皿は連結板で連結されることでその側面が開口され、
前記漏斗型ろ過金具は金属で製作されていることを特徴とするろ過装置
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、上部筒の一部と中間筒の全内部にろ過砂が充填され、ろ過砂の中心部に逆洗管がろ過砂の中を貫通し、逆洗管の内部にエアー管が環状スペースを残して挿入されていることを特徴とするろ過装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、逆洗管の上部先端は二股に分かれた上部吐き出し口の形状になっており、上部吐き出し口の上面には開口穴があり、その穴にエアー管を挿入し、漏斗型ろ過金具まで引き込みエアー管は高圧エアーポンプに接続されていることを特徴とするろ過装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、中間筒内上部には仕切板が設置され仕切板と中間筒の内壁との隙間から上部筒と中間筒のフランジを貫通し、ろ過した原水を取り出すことを特徴とするろ過装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、上部筒の内部は二股に分かれた吐き出し口から混合水が吐き出されろ過砂に流れ落ち、余剰水は余剰水出口とオーバーフロー口から排水されることを特徴とするろ過装置である。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、入水口には、入水量調整弁と逆止弁を具備することを特徴とするろ過装置
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
前記第2管の砂ろ過管は、ろ過水出口には、ろ過水量調整管を介して第3管の後処理沈降管への通水を良好に保てる様、通気管を備えることを特徴とするろ過装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のろ過装装置において、
第3管の後処理沈降管は、下部から入水し管内に充填された2種類のラシヒリングを通過して通気管を備えたろ過水管からろ過水が確保できることを特徴とするろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水道水などの飲料水の原水である河川水や湖沼水やダム水や地下水などの水質検査用の試験用水を24時間連続で無人の各種水質検査測定器等に供給しているが、豪雨などで1000度程度の高濁度水になった時は試験用水として使用できず、対処として中空糸などの?布材を使用したろ過装置もあるが目詰まりが起こりろ過できない課題があった。
【0002】
また砂をろ過材として使用するろ過装置もあるが試験用水量が1~3リットル/分と少ないため、この仕様条件で24時間無人で連続使用に耐えるろ過装置は無かった。本発明はその解決手段として、高濁度原水を第1管から第3管まで順序よく流すことで、各管で段階的・自動的に高濁度原水を無人で連続してろ過するろ過装置の技術に関する。
【背景技術】
【0003】
原水の濁度が急激に上がる原因として、集中豪雨や雪解けによる河川の川床の堆積土の流れ込みや山林の整備不足による山肌の地滑りで山土の多量な流れ込み等が挙げられる。
昔から河川水や浅井戸や伏流水などを飲料に使用する場合は、砂ろ過が一般家庭で多く使用されてきた歴史があり砂ろ過は周知であるが、ろ過砂でろ過した後は滓や塵が付着するため、砂を取り出し人の手で洗浄しなければろ過能力が低下する欠点があった。
その後、自動でろ過砂を洗浄する装置が考え出された。それはろ過砂の洗浄をろ過砂床の下方から上部に向けて水を流して洗う逆洗方式の技術である。
【0004】
水道水の原水である河川水や湖沼水やダム水や地下水等の水質検査は人の命にかかわるため水道法で51項目の水質基準が厳しく規制されており、原水の水質検査は毎月行われる必要不可欠なものである。また、有害物質が混入する事故を素早く発見するために魚類の監視も法律で義務付けられている。
【0005】
高濁度原水を試験用水として使用することは魚類監視を含めて各種水質検査測定器等に障害を及ぼすため、1000度程度の高濁度原水であっても試験用水量として1~3リットル/分を確保し、24時間無人で連続使用に耐える高濁度ろ過装置の実用化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-113017号公報
【文献】特開2005-161229号公報
【文献】特開2003-265906号公報
【文献】特開平特開平9-94407号公報
【文献】特許第4951473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のろ過装置は以下の課題があった。
試験原水は毎分1~3リットルと少量のためろ過材は濾布によるフイルター式を採用する場合が多いが、フイルター式は高濁度水では急速に目詰まりを起こし使用不能となる。濾布の自動洗浄式は高額で装置も複雑で処理水量も多いため通常は試験用水向けには使われず、不便だが頻繁に濾布の取替えを行っていた。頻繁な取替え作業は非省力で、その度に原水試験が中断し支障をきたしていた。
【0008】
実用化されている大型の砂ろ過装置は目詰まりを起こさないが小型タイプでも5?/hとろ過水量が大容量でしかも塩素(次亜塩素酸ナトリウム)を含む水道水の逆洗は魚類監視の魚類が塩素で死ぬなど他の水質検査測定器等にも悪影響を及ぼすため水道水による逆洗は不適である。
【0009】
高濁度試験用水向けのろ過砂を使用した自動洗浄を行う製品の開発が近年試みられているが、いずれも1000度程度の高濁度原水はろ過砂の自動洗浄ができずろ過できず、ろ過水にろ過砂が混ざるなど不都合な点が多く見られ課題の解決までに至っていないのが現状である。
【0010】
近年、安全で美味しい清廉な水道水を確保する手段として中空糸やセラミックのろ材によるによるMF(精密ろ過)膜、UF(限外ろ過)膜、イオン交換膜、RO(逆浸透)膜などの膜ろ過方式が多くの公共水道施設で導入されるようになったが、これらは水道水を確保するための浄水処理の一環であり、極少量の試験用水向けの目的ではなく、1000度程度の高濁度原水を膜ろ過に取り込むことは目詰まりを起こし使用不能となる。
【0011】
そのため膜ろ過方式は高濁度原水では前処理として懸濁物質を硫酸アルミニウム(硫酸バンド)やポリ塩化アルミニウム(PAC)等で凝集沈殿しなければならず、凝集沈殿処理に使う化学物質が含まれるため水質検査用の試験用水としては不適当となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、
上記課題を解決するために、請求項1記載のろ過装置は、第1管の前処理沈降管と第2管の砂ろ過管と第3管の後処理沈降管に高濁度原水を第1管から第3管まで順序よく流すことで、各管で段階的・自動的に高濁度原水を連続してろ過するろ過装置であって、
前記第1管の前処理沈降管は、上下に2分割可能な上部筒と下部筒とからなり、前記下部筒内には上下逆さまの状態で配置された円管を備え、前記上部筒内には多数の蛇腹状の流速低減材を備え、
前記第2管の砂ろ過管は、上部筒と中間筒と下部筒とからなり、前記下部筒内には下側のラシヒリングと上側のラシヒリングとを備え、前記上部筒の一部と中間筒の全内部にはろ過砂が充填され、前記上部筒から下部筒にかけて逆洗管が挿通され、逆洗管の内部には高圧エアーを吸い込んだエアー管が環状スペースをとって挿入され、
前記第3管の後処理沈降管は、前記上側のラシヒリングと下側のラシヒリングが充填されていることを特徴とする。

【0013】
請求項2記載のろ過装置は、請求項1記載のろ過装装置において、前記第1管の前処理沈降管における上部筒と下部筒に2分割でき、上部筒と下部筒の接続は相互の接続面にフランジを具備し、両フランジの相互間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着され密着していることを特徴とする。

【0014】
請求項3記載のろ過装置は、請求項1又は2記載のろ過装装置において、前記第1管の前処理沈降管は下部筒の内側底部は傾斜面となっており、内部には上下が異なる口径で開口した円管が上下逆さまの状態でフランジに固定されていることを特徴とする。

【0015】
請求項4記載のろ過装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第1管の前処理沈降管は、円垂管の上部外壁には原水を供給する原水入り口を備え、底部傾斜面の下端部には沈殿物を排出する排泥口を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載のろ過装置は、請求項1~4のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第1管の前処理沈降管は、上部筒内には下段に流速低減材を、上段には流速安定材を装着し、その上部の側壁には処理後の原水を第2の砂ろ過管に送り込むための原水出口を備え、最上端部もフランジになっており、フランジはゴム輪ともに同形状の天蓋がボルト留めされていることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のろ過装置は、請求項1~5のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第1の前処理沈降管の原水出口は無圧状態の解消のために吸気弁を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載のろ過装置は、請求項1~6のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第1の前処理沈降管の排泥口に接続された配管には、電動弁とタイマーリレーによる電動弁制御器を備え自動で排泥することを特徴とする。
【0019】
請求項8記載のろ過装置は、請求項1~7のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、上部筒と中間筒と下部筒に3分割でき、上部筒と中間筒、中間筒と下部筒は相互の接続面にフランジを具備しており、各フランジ相互の間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着され密着していることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載のろ過装置は、請求項1~8のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、下筒の側壁下部には前記第1管の前処理沈降管の原水出口に接続された入水口を備え、泥砂を排出する排泥口を備え、内部には懸濁物質を付着させる2種類のラシヒリングが充填されていることを特徴とする。
【0021】
請求項10記載のろ過装置は、請求項1~9のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、下部筒に漏斗型ろ過金具を具備し、漏斗型ろ過金具は、2個の漏斗を重ねた形状で、上部漏斗は底部が開口しており、下部漏斗皿は底部が閉塞し、上部漏斗皿と下部漏斗皿は連結板で連結されることで側面が開口されている。漏斗型ろ過金具は金属で製作されていることを特徴とする。
【0022】
請求項11記載のろ過装置は、請求項1~10のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、上部筒の一部と中間筒の全内部にろ過砂が充填され、ろ過砂の中心部に逆洗管がろ過砂の中を貫通し、逆洗管の内部にエアー管が環状スペースを残して挿入されていることを特徴とする。
【0023】
請求項12記載のろ過装置は、請求項1~11のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、逆洗管の上部先端は二股に分かれた上部吐き出し口の形状になっており、上部吐き出し口の上面には開口穴があり、その穴にエアー管を挿入し、漏斗型ろ過金具まで引き込みエアー管は高圧エアーポンプに接続されていることを特徴とする。
【0024】
請求項13記載のろ過装置は、請求項1~12のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、中間筒内上部には仕切板が設置され仕切板と中間筒の内壁との隙間から上部筒と中間筒のフランジを貫通し、ろ過した原水を取り出すことを特徴とする。
【0025】
請求項14記載のろ過装置は、請求項1~13のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、上部筒の内部は二股に分かれた吐き出し口から混合水が吐き出されろ過砂に流れ落ち、余剰水は余剰水出口とオーバーフロー口から排水されることを特徴とする。
【0026】
請求項15記載のろ過装置は、請求項1~14のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、入水口には、入水量調整弁と逆止弁を具備することを特徴とする。
【0027】
請求項16記載のろ過装置は、請求項1~15のいずれか1項に記載のろ過装装置において、前記第2管の砂ろ過管は、ろ過水出口には、ろ過水量調整管を介して第3管の後処理沈降管への通水を良好に保てる様、通気管を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項17記載のろ過装置は、請求項1~16のいずれか1項に記載のろ過装装置において、第3管の後処理沈降管は、下部から入水し管内に充填された2種類のラシヒリングを通過して通気管を備えたろ過水管からろ過水が確保できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、高濁度原水を第1管から第3管まで順序よく流すことで、各管で段階的・自動的に高濁度原水を連続してろ過するため、課題であった高濁度原水が十分にろ過されないとか、ろ過砂が自動洗浄できないとか、ろ過水にろ過砂が混ざっていたとか、面倒なろ過砂の取替えや人の手でろ過砂を洗浄するなどの非省力性を改善し、必要な試験水量を安定的に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明実施例1の3管式のろ過装置の構成図である。
図2】第2管の砂ろ過管のろ過砂と原水の流れの図である。
図3】漏斗型ろ過金具の斜視図である。
図4】第1管の前処理沈降管の上部筒内の流速低減材の写真である。
図5】第1管の前処理沈降管の上部筒内の流速安定材の写真である。
図6】第2管の砂ろ過管の下部筒内下側のラシヒリングの写真である。
図7】第3管の後処理沈降管内下側のラシヒリングの写真である。
図8】第2管の砂ろ過管の下部筒内上側と第3管の後処理沈降管上側のラシヒリングの写真である。
図9】第2管の砂ろ過管の下部筒内の漏斗型ろ過金具の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に実施例を挙げ、本発明のろ過装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
まず、この実施例1のろ過装置を図1~9に基づいて説明する。
この実施例1のろ過装置は、図1に示すように、第1管の前処理沈降管Aと第2管の砂ろ過管Bと第3管の後処理沈降管Cの3管で構成され、高濁度原水を第1管から第3管まで順序よく流すことで、各管で段階的・自動的に高濁度原水を連続してろ過するろ過装置である。
【0033】
さらに詳述すると、図1に示すように、前記第1管の前処理沈降管Aは上部筒1と下部筒2に2分割でき、上部筒1と下部筒2の接続は相互の接続面にフランジ11、21を具備し、両フランジ11、21の相互間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着し密着している。
【0034】
下部筒2の内部底部は傾斜面24となっており、内側には上下が異なる口径で開口した円垂管22が上下逆さまの状態でフランジ21に固定されている。
【0035】
下部筒2の側壁で円垂管22の上部外壁には原水を供給する原水入り口23を備え、底部傾斜面24の下端部には沈殿物を排出する排泥口25を備えている。また、排泥口25に接続された配管には電動弁27と、タイマーリレーによる電動弁制御器28を備えている。
【0036】
上部筒1内には下段に流速低減材12を、その上には流速安定材13を収容し、その上部の上筒部1の側壁には処理後の原水を第2管の砂ろ過管Bに送り込むための原水出口26を備え、上筒部1の最上端部はフランジ14となっており、フランジと同形状の天蓋14aで密封している。
【0037】
原水出口26には第1管の前処理沈降管Aの内部が無圧状態にならない様に吸気弁29を備えている。即ち、第1管の前処理沈降管Aは密封されているため、電動弁27が作動した際に無圧状態となり、第2管の砂ろ過管B内部の水が原水出口26方向に逆流を防止するためである。
【0038】
第2管の砂ろ過管Bは、図1~3に示すように、上部筒3と中間筒4と下部筒5に3分割でき、上部筒3と中間筒4と、中間筒4と下部筒5は相互の接続面にフランジ31・41・42および51を具備し、各フランジ相互間にゴム輪を敷布し数個のフランジ固定穴にボルトナットで固着し密着している。
【0039】
第2管の砂ろ過管Bの下部筒5の内部には、底部から中間部にかけて、図6、8に示すように、下側のラシヒリング52と上側のラシヒリング53が充填され、下部筒5の外面下部には前記第1管の前処理沈降管Aの原水出口26に接続された入水口54を備えている。入水口54の配管には、入水量調整弁54aと逆止弁54bを備えている。
【0040】
第2管の砂ろ過管Bの下部筒5の外面下部には第1管の前処理沈降管Aの原水出口26に接続された入水口54を備え、下部筒5の下部には泥砂を排出する排泥口25を備えている。下部筒5の内部には、懸濁物質を付着させる為の2種類のラシヒリング52とラシヒリング53が充填され、ラシヒリングの上部には漏斗型ろ過金具57がフランジ51に固定された状態で具備している。
【0041】
図9の漏斗型ろ過金具57は、2個の漏斗を重ねた形状で、上部漏斗57aは底部が開口しており、下部漏斗皿57bは底部が閉塞し、上部漏斗皿57aと下部漏斗皿57bは連結板57cで連結されることでその側面が開口されている。漏斗型ろ過金具57は金属で製作されている。
【0042】
第2管の砂ろ過管Bの上部筒3の一部と中間筒4の全内部にろ過砂6が充填され、ろ過砂6の中心部に逆洗管55がろ過砂6の中を貫通し、逆洗管55の内部にエアー管56が環状スペース61を残して挿入されている。
【0043】
逆洗管55の上部先端は二股に分かれた上部吐き出し口59の形状になっており、上部吐き出し口59の上面には開口穴があり、その穴にエアー管56が挿入され漏斗型ろ過金具57の上部まで引き込まれる。エアー管56は高圧エアーポンプ58に接続され高圧エアーが常時吐き出されている。高圧エアーの吐出量は約2.2リットル/分である。
【0044】
中間筒4の外面下部にはろ過砂6を排出するための排砂口25aを設けることでろ過砂6の量の調整を行うことができる。
【0045】
第2管の砂ろ過管Bは、中間筒4内上部には仕切板44が設置され仕切板44と中間筒4の内壁との隙間から上部筒3と中間筒4のフランジ31とフランジ41を貫通し、ろ過した原水を取り出すことができる。
【0046】
第2管の砂ろ過管Bは、上部筒3の内部は二股に分かれた吐き出し口から混合水60が吐き出されろ過砂6に流れ落ちる、余剰水は余剰水出口32とオーバーフロー口37から排水される。
【0047】
第3管の後処理沈降管Cは、図1に示すように、その下部側壁に第2管の砂ろ過管Bのろ過水量調整管33に接続されたろ過原水入り口7を備え、上部側壁にろ過水出口8を備え、ろ過水出口8には、水質検査機器への通水を良好に保てる様、通気口36aを備えた通気管36が接続されている。第3管の後処理沈降管Cの内部には、図7、8に示す下側のラシヒリング9と、上側のラシヒリング53が充填されている。
【0048】
次に、この実施例の作用・効果を説明する。
図1によれば、第1管の前処理沈降管Aの原水入口23から高濁度原水が入水し、フランジ21に逆さまに付着された円垂管22の外面に高濁度原水が当たり底部に向けて流れるが、高濁物質は比重の違う物質で構成されているため比重の重い物質は底部に沈む。一方、浮遊している軽い物質を含んだ原水は円垂管22の頂部開口部から上部に向かって流れ、多数の蛇腹状の流速低減材12で流れを抑え比重の重い物質や浮遊している懸濁物質が蛇腹上で互いにくっ付き比重が重くなると円垂管22の内部に落ちて内面を伝って底部に向かって落ちる。
【0049】
傾斜底面24になっている第1管の前処理沈降管Aの内部は排泥口25に繋がり、排泥配管には手動バルブと電動弁27が接続され、電動弁27はタイマー付き電動弁制御器28からの信号で開閉され排泥が自動で行われる。
【0050】
多数の蛇腹を有する流速低減材12を通過した原水が原水出口26へと上昇する際に上昇速度が不揃いになる不都合を防止するため、上下が空いたパイプを数本束ねることで流れを整え浮遊濁質を抑える流速安定材13を具備している。
【0051】
第1管の前処理沈降管Aで比重の重い物質を除去された原水は、吸気弁29を備えた原水出口26の配管から第2管の砂ろ過管Bの下部筒5の入水口54に接続される。吸気弁29は自動排泥用の電動弁27が作動した際、第1管の前処理沈降管Aが無圧状態となり、第2管の砂ろ過管B内部の水が原水出口26方向に逆流するのを防止する。
【0052】
第1管の前処理沈降管Aを通過した原水は、第2管の砂ろ過管Bの下部筒5の入水口54から入水するが、下部筒5に充填されている下側のラシヒリング52と上側のラシヒリング53とで流速を減衰させ、第1管の前処理沈降管Aで除去できなかった浮遊濁質を二つのラシヒリング52とラシヒリング53に付着させ除去する。
【0053】
ここまでのろ過工程で比重の大きい物質や付着しやすい物質を除去された高濁度原水は、漏斗型ろ過金具57の側面から流入し、漏斗型ろ過金具57の底面で落下したろ過砂6と混合し高圧エアーで上向し上部筒3内の二股の吐き出し口からろ過砂6部に落下しろ過砂6でろ過されたのち、中間筒4の上部内壁に設けられた仕切り板44と内壁の間にある取り出し口43から上部筒3のフランジ31に設けられたろ過水量調整管33を通り、ろ過水として取り出され第3管の後処理沈降管Cに渡される。
【0054】
ろ過水量調整管33には第3管の後処理沈降管Cへの通水を良好に保つため通気管34を備えており、先端部が通気孔34aとなっている。
【0055】
原水の余剰水は上部筒3の内部に設けられた仕切板35を越流し、余剰水配水口32から排出される。よって、ろ過水量調整管33のろ過水取り出し口の高さは、余剰水配水用仕切り板35の高さより低い位置となっている。
【0056】
第2管の砂ろ過管Bの内部には上部筒3から下部筒5にかけて逆洗管55が挿通されており、その内部には高圧エアーを吸い込んだエアー管56が環状スペース61をとって挿入されている。
【0057】
エアー管56の先端から噴出する高圧エアーにより逆洗管55の先端部では差圧が生じる為、漏斗型ろ過金具57の側面から入水した原水とろ過砂6が混ざり合った混合水60がエアー管56と逆洗管55との間の環状スペース61から吸引され上昇し、逆洗管55の再上端で二股に分かれた上部吐き出し口59から解放され、下部へと落下をする状態でろ過砂に付着した懸濁物質を洗浄する。
【0058】
この上向と下向の連動した回動を連続的に繰り返し、ろ過砂6を循環させることで閉塞を防止するとともにろ過砂6の洗浄とろ過砂6による高濁度原水のろ過を行うのである。
【0059】
ろ過砂6とともに逆洗管55の上部吐き出し口59から出た原水から遊離した濁質は、余剰水と共に排出される。この一連のろ過砂6の回流により、ろ過砂6の洗浄とろ過水の確保が可能となる。
また、中間筒4の最下部壁面には排泥口25aを設け手動バルブを設置しているので、必要に応じて開閉出来る。
【0060】
第2管の砂ろ過管Bの下部筒5は泥砂が沈殿すれば定期的に排出口25aのバルブを開き排泥をすることができる。
【0061】
第3管の後処理沈降管Cは他の二つの管と異なりフランジも接続もなく内外径ともに小さく上側のラシヒリング53と下側のラシヒリング9の2種類が充填されており、下部外面に設けられたろ過水入口7から入水したろ過原水から浮遊する懸濁物質をこの2種類のラシヒリングで付着せしめ最終ろ過水とし、上部壁面に設けられたろ過水出口8から水質検査機器へ供給する。
【0062】
ろ過水出口8には水質検査機器への通水を良好に保てる様、通気管36を備えており、先端部が通気孔36aとなっている。
【表1】
【0063】
表1は実施例のろ過装置の性能試験を行い表にまとめたものである。
試験水濁度水は火山性黒土を水道水で溶かしたものを濁度1000度から1100度の範囲で製作し、小型水中ポンプで第1管の前処理沈降管Aの原水入り口23から入水し、第1管の前処理沈降管Aから第2管の砂ろ過管Bを経て第3管の後処理沈降管Cを通過したろ過水を、ろ過水出口8で最終濁度を測定した。
【0064】
ろ過水量は毎分1.5リットルで、入水直後の5分後のろ過水濁度は46.5度で、第2管の砂ろ過管の上部筒の余剰水出口32の濁度は291度である。余剰水は0.75リットルで余剰水とろ過水を合計した水量が毎分2.3リットルであることから、試験水の入水量は毎分2.3リットルであることが分かる。測定開始から30分後に第1管の下部筒の排泥口25に接続されている電動弁27を開き排泥を行った。排泥は1時間間隔で行った。
【0065】
測定試験は測定表のように12時間後まで行った。12時間後のろ過水濁度は115で、余剰水濁度が632度、ろ過水量は毎分1.1リットル、余剰水は毎分1.2リットル、入水量2.3リットルであった。測定結果から、有害物質が混入する事故を未然に防止するための魚類による自動監視装置においては、ろ過後の濁度が160度でも監視水槽の水深が3センチ以内であれば小型魚類のメダカであっても画像処理用の監視カメラでの撮像に支障はなくメダカの死亡もないことが実証されており、本試験の12時間後のろ過濁度115度は十分に使用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、公共水道施設や民間の食品飲料工場の原料と言える河川表流水や湖沼水、井戸水等の原水の水質検査用水に高濁度原水が流れ込む事象が多くなり、少量の試験水を連続して自動で確保する手段として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
A 第1管の前処理沈降管
B 第2管の砂ろ過管
C 第3の後処理沈降管
1 上部筒
11 フランジ
12 流速低減材
13 流速安定材
14 フランジ
14a フランジ付き天蓋
2 下部筒
21 フランジ
22 円垂管
23 原水入り口
24 底部傾斜面
25 排泥口
25a 排砂口
25b 沈殿物排出口
26 原水出口
27 電動弁
28 タイマーリレーによる電動弁制御機
29 吸気弁
3 上部筒
31 フランジ
32 余剰水出口
33 ろ過水量調整管
34 通気管
34a 通気孔
35 仕切板
35a 仕切板
36 通気管
36a 通気孔
37 オーバーフロー口
4 中間筒
41 フランジ
42 フランジ
43 取り出し口
44 仕切板
5 下部筒
51 フランジ
52 下側のラシヒリング
53 上側のラシヒリング
54 入水口
54a 入水量調整弁
54b 逆止弁
55 逆洗管
56 エアー管
57 漏斗型ろ過金具
57a 上部漏斗皿
57b 下部漏斗皿
57c 連結板
58 高圧エアーポンプ
59 上端吐き出し口
6 ろ過砂
60 混合水
61 環状スペース
7 ろ過水入り口
8 ろ過水出口
9 下側のラシヒリング
10 排泥口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9