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特許7424797プロテクタ、電気接続部材、及びバッテリーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】プロテクタ、電気接続部材、及びバッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/505 20210101AFI20240123BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240123BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240123BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240123BHJP
   H01M 10/6562 20140101ALI20240123BHJP
【FI】
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/591
H01M10/613
H01M10/6562
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019199647
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072235
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】川崎 直哉
(72)【発明者】
【氏名】東 慎輔
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪範
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-106802(JP,A)
【文献】特開平09-245768(JP,A)
【文献】特開2018-206635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/613
H01M 10/6562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電路の導電路本体部を収容保護する第一プロテクタ及び第二プロテクタを備えて構成され、
前記第一プロテクタは、前記導電路の第一接続部側に配置される第一端部と、前記導電路本体部の中間側に配置される第一中間側端部と、これら前記第一端部及び前記第一中間側端部の間に配置される第一プロテクタ本体部とを有し、
前記第二プロテクタは、前記導電路の第二接続部側に配置される第二端部と、前記導電路本体部の前記中間側に配置される第二中間側端部と、これら前記第二端部及び前記第二中間側端部の間に配置される第二プロテクタ本体部とを有し、
前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部のうちいずれか一方は、いずれか他方を収容状態にし且つ前記導電路本体部の前記中間の延在方向に沿って前記いずれか他方を移動自在な状態にするフード形状に形成され
前記いずれか一方の前記フード形状は、前記延在方向に対し直交方向にも前記いずれか他方を移動自在な状態にするよう形成される、又は、前記延在方向を中心に軸回り方向にも前記いずれか他方を移動自在な状態にするよう形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項に記載のプロテクタにおいて、
前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部には、前記収容状態を維持する脱落防止部が形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項3】
請求項に記載のプロテクタにおいて、
前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部には、各前記脱落防止部を含んで構成され且つ外部から前記導電路への異物の到達を防止するための迷路が生じるラビリンス構造部が形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項4】
請求項に記載のプロテクタにおいて、
前記脱落防止部は、前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部の移動時のガイド部としても形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項5】
請求項1、2、3に記載のプロテクタにおいて、
前記第一プロテクタ及び/又は前記第二プロテクタには、一又は複数の放熱用貫通孔が形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項6】
請求項1、2、3、4に記載のプロテクタと、該プロテクタの第一プロテクタ及び第二プロテクタに収容される導電路とを備えて構成される
ことを特徴とする電気接続部材。
【請求項7】
請求項に記載の電気接続部材において、
前記導電路は、導電性を有する第一接続部及び第二接続部と、これら前記第一接続部及び前記第二接続部を繋ぐ導電性の導電路本体部とを備え、該導電路本体部は、伸縮自在な編組導体にて形成される
ことを特徴とする電気接続部材。
【請求項8】
複数のセルを有する第一スタック及び第二スタックと、これら前記第一スタック及び前記第二スタックを並べて電気的に接続する請求項又はに記載の電気接続部材とを備えて構成される
ことを特徴とするバッテリーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電路を収容保護するプロテクタに関する。また、本発明は、プロテクタを備えた電気接続部材及びバッテリーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセル(電池セル)を有するスタックを二つ並べ、この並べたスタック同士を導電路にて電気的に接続することに関しては、下記特許文献1に開示される。下記特許文献1の導電路は、金属パイプの両端を潰して板状にし、この板状にした部分にボルト挿通孔を貫通形成して端子にする構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-9090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、金属パイプを加工した導電路を採用することから、導電路の端子間距離が決まってしまい、そのため二つ並べたスタック同士の間隔に端子間距離が合わなければ接続が困難になってしまうという問題点を有する。そこで、図9に示す如く電線1(太物の高圧電線)を用いてスタック2同士を接続すると、電線1の製造にて生じる長さの公差分を考慮した寸法Bで示す範囲のスペースが外側に必要になってしまう。従って、電線1を用いた接続の場合、上記スペースを確保しなければならないという問題点を有する。
【0005】
尚、図9の引用符号3は電池セル、引用符号4は端子、引用符号5は電線本体をそれぞれ示すものとする。また、太物の電線1に関し、実線で示す図は最短で製造された場合の図、破線は最長で製造された場合の図であるものとする。スタック2同士の間隔にバラツキが生じた場合も上記スペースの確保が必要になるのは勿論である。電線本体5は、導体及び絶縁体(被覆)を備えて構成されることから、このような電線本体5をプロテクタやコルゲートチューブ等の外装部材にて保護する必要もある。しかしながらプロテクタにて保護する場合、上記公差分を考慮した形状にしようとすると、大きなスペースを確保しなければならないという問題点を有する。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、電気的接続の際に確保すべきスペースの削減に寄与することが可能なプロテクタの提供を課題とする。また、このプロテクタを備えた電気接続部材及びバッテリーモジュールの提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のプロテクタは、少なくとも導電路の導電路本体部を収容保護する第一プロテクタ及び第二プロテクタを備えて構成され、前記第一プロテクタは、前記導電路の第一接続部側に配置される第一端部と、前記導電路本体部の中間側に配置される第一中間側端部と、これら前記第一端部及び前記第一中間側端部の間に配置される第一プロテクタ本体部とを有し、前記第二プロテクタは、前記導電路の第二接続部側に配置される第二端部と、前記導電路本体部の前記中間側に配置される第二中間側端部と、これら前記第二端部及び前記第二中間側端部の間に配置される第二プロテクタ本体部とを有し、前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部のうちいずれか一方は、いずれか他方を収容状態にし且つ前記導電路本体部の前記中間の延在方向に沿って前記いずれか他方を移動自在な状態にするフード形状に形成され、前記いずれか一方の前記フード形状は、前記延在方向に対し直交方向にも前記いずれか他方を移動自在な状態にするよう形成される、又は、前記延在方向を中心に軸回り方向にも前記いずれか他方を移動自在な状態にするよう形成されることを特徴とする。
【0008】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、導電路本体部の中間延在方向に沿って第一プロテクタ及び第二プロテクタが伸縮する構造のプロテクタであることから、このプロテクタを用いることで電気的接続の際に確保すべきスペースを上記フード形状の部分で確保するスペースにまで削減することができる(具体的には後述する実施例の欄で説明をする)。本発明のプロテクタによれば、上記構造であることから、公差吸収機能を有する。また、少なくとも導電路の導電路本体部を収容保護する構造であることから、絶縁機能や干渉防止機能も有する。
【0010】
更に、このような請求項の特徴を有する本発明によれば、上記延在方向となる一方向だけでなく二方向や三方向(すなわちX、Y、Zの三方向方向)、回転方向にも移動可能になる構造のプロテクタであることから、上記公差吸収機能を高めることができる。
【0011】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載のプロテクタにおいて、前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部には、前記収容状態を維持する脱落防止部が形成されることを特徴とする。
【0012】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、第一中間側端部及び第二中間側端部それぞれに脱落防止部が形成されることから、脱落防止部の機能により第一プロテクタ及び第二プロテクタをのばした時のこれらの脱落を防止することができる。脱落防止部により、作業性の向上や接続状態の安定等を図ることができる。
【0013】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載のプロテクタにおいて、前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部には、各前記脱落防止部を含んで構成され且つ外部から前記導電路への異物の到達を防止するための迷路が生じるラビリンス構造部が形成されることを特徴とする。
【0014】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、迷路が生じるラビリンス構造部が形成されることから、外部からの異物の浸入を阻止し、異物が導電路に到達してしまうのを防止することができる。本発明によれば、例えば針金のような導電性の異物が導電路に触れることはないため、絶縁機能を持たせて性能向上を図ることができる。
【0015】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載のプロテクタにおいて、前記脱落防止部は、前記第一中間側端部及び前記第二中間側端部の移動時のガイド部としても形成されることを特徴とする。
【0016】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、脱落防止部がガイド部としても機能するよう形成されることから、第一プロテクタの第一中間側端部及び第二プロテクタの第二中間側端部のガタツキをある程度抑えながら移動させることができ、以て作業性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項記載の本発明は、請求項1、2、3に記載のプロテクタにおいて、前記第一プロテクタ及び/又は前記第二プロテクタには、一又は複数の放熱用貫通孔が形成されることを特徴とする。
【0018】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、第一プロテクタ及び/又は第二プロテクタに放熱用として機能する貫通孔が形成されることから、プロテクタ内に熱が籠もった場合、これを外部に放熱することができる。放熱用貫通孔の形成により、空気の対流を生じさせることができ、そして、導電路に生じた熱や導電路に伝わった熱をプロテクタで積極的に外部に放熱することができる。本発明によれば、放熱用貫通孔により放熱性能をコントロールする機能を持たせることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた請求項に記載の本発明の電気接続部材は、請求項1、2、3、4に記載のプロテクタと、該プロテクタの第一プロテクタ及び第二プロテクタに収容される導電路とを備えて構成されることを特徴とする。
【0020】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、請求項1、2、3、4に記載のプロテクタを構成に含む電気接続部材であることから、電気的接続の際に確保すべきスペースの削減に寄与することができる。また、本発明によれば、公差吸収機能や絶縁機能、干渉防止機能等を有する電気接続部材を提供することができる。さらに、本発明によれば、請求項6に記載のプロテクタを採用する場合、放熱性能をコントロールする機能も持たせた上で提供することができる。
【0021】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載の電気接続部材において、前記導電路は、導電性を有する第一接続部及び第二接続部と、これら前記第一接続部及び前記第二接続部を繋ぐ導電性の導電路本体部とを備え、該導電路本体部は、伸縮自在な編組導体にて形成されることを特徴とする。
【0022】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、導電路における導電路本体部が編組導体にて形成されることから、伸縮自在であるのは勿論のこと、屈曲も自在であることから、より良い導電路を含む電気接続部材の提供をすることができる。尚、編組導体に限らず、螺旋状に巻いた電線や、余長を持たせた電線等を導電路としてもよいものとする。
【0023】
また、上記課題を解決するためになされた請求項に記載の本発明のバッテリーモジュールは、複数のセルを有する第一スタック及び第二スタックと、これら前記第一スタック及び前記第二スタックを並べて電気的に接続する請求項又はに記載の電気接続部材とを備えて構成されることを特徴とする。
【0024】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、請求項又はに記載の電気接続部材を構成に含むバッテリーモジュールであることから、第一スタック及び第二スタックを電気的に接続する際に、確保すべきスペースの削減をすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のプロテクタによれば、電気的接続の際に確保すべきスペースの削減に寄与することができるという効果を奏する。また、本発明の電気接続部材及びバッテリーモジュールによれば、上記プロテクタを含むことから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のプロテクタ、電気接続部材、及びバッテリーモジュールの一実施形態を示す構成図である。
図2】プロテクタ及び電気接続部材の斜視図である。
図3】プロテクタ及び電気接続部材の作用図であり、(a)はプロテクタが伸びた状態の断面図、(b)は基本状態の断面図、(c)はプロテクタが縮んだ状態の断面図である。
図4図3(a)の拡大図である。
図5図3(b)の拡大図である。
図6図3(c)の拡大図である。
図7】プロテクタの変形例を示す断面図である。
図8】導電路の変形例を示す断面図である。
図9】従来例に係る図であり、電線にてスタック同士を接続する状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
バッテリーモジュールは、第一スタック及び第二スタックが電気接続部材にて接続される。電気接続部材は、編組導体を含む導電路と、この導電路を収容保護する樹脂製のプロテクタとを備えて構成される。プロテクタは、第一プロテクタと、第二プロテクタとを備えて構成され、第一プロテクタの第一中間側端部及び第二プロテクタの第二中間側端部のうちいずれか一方が、いずれか他方を収容状態にするフード形状に、また、いずれか他方を移動自在な状態にするフード形状に形成される。
【実施例
【0028】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のプロテクタ、電気接続部材、及びバッテリーモジュールの一実施形態を示す構成図である。また、図2はプロテクタ及び電気接続部材の斜視図、図3はプロテクタ及び電気接続部材の作用図、図4図6図3のプロテクタ及び電気接続部材の拡大図である。
【0029】
<バッテリーモジュール11について>
図1において、バッテリーモジュール11は、例えば自動車に搭載されるモータに対して電力を供給するために備えられる。バッテリーモジュール11は、第一スタック12及び第二スタック13と、これらを電気的に接続するための電気接続部材14とを備えて構成される。第一スタック12及び第二スタック13は、複数のセル15を有する。第一スタック12及び第二スタック13は、所定の間隔をあけて並んで配置される。尚、第一スタック12及び第二スタック13やセル15は公知のものが採用され、ここでの詳細な説明は省略するものとする。上記自動車に関しては、ハイブリッド自動車や電気自動車等の高電圧バッテリーが搭載される車両であれば特に限定されないものとする。また、自動運転車両に採用されてもよいものとする。バッテリーモジュール11は、電気接続部材14による電気的な接続がなされることにより、寸法Aで示す小さな範囲のスペースが外側に必要になるものに形成される(寸法Aは図9の寸法Bに対し、寸法A<寸法Bとなるものとする)。
【0030】
<電気接続部材14について>
図1及び図2において、電気接続部材14は、上記の如く第一スタック12及び第二スタック13を電気的に接続するために用いられる。電気接続部材14は、導電路16と、プロテクタ17とを備えて構成される。電気接続部材14は、以下の説明で分かるようになるが、プロテクタ17が矢印X方向に移動自在(伸縮自在)な状態に、また、矢印Y・矢印Z方向にも移動自在な状態に、さらには、矢印X方向を軸とすればこれを中心に軸回り方向Rにも移動自在な状態に形成される。電気接続部材14は、上記の移動が自在になることから、公差吸収機能を有するものになる。また、電気接続部材14は、この構成にプロテクタ17を含むことから、導電路16に対する絶縁機能や干渉防止機能も有するものになる。電気接続部材14は、寸法Aで示す小さな範囲のスペースがあればよいものであり、図9で示す電線1を用いるよりもスペース面で有用である。
【0031】
<導電路16について>
図1ないし図6において、導電路16は、導電性を有する第一接続部18及び第二接続部19と、同じく導電性を有する導電路本体部20とを備えて構成される。導電路16は、電気接続部材14における電気的な接続部材としての機能を担うために備えられる。
【0032】
第一接続部18及び第二接続部19は、所謂、端子金具として形成される。このような第一接続部18及び第二接続部19は、金属板を加工して形成される電気接触部21と、この電気接触部21に連続する圧着部22とを有して例えば図示形状に形成される。電気接触部21は、平面視L字の板状部分に形成される(L字の形状は一例であり、ストレート形状であってもよいものとする)。電気接触部21は、セル15の電極23に対し適宜方法で接続される。圧着部22は、導電路本体部20を圧着する部分として形成される(バレルを加締めるような部分に形成される。尚、このような部分に限らず、例えば溶接部分として形成されてもよいものとする)。
【0033】
本実施例の導電路本体部20としては、伸縮自在な編組導体24が採用される。編組導体24は、筒状の編組又はシート状の編組を線状にすることにより、また、所定断面積を有するように形成される。編組は、導電性を有する金属細線を編んで、網状の部材に形成される。編組導体24は、編組にて形成されることから、伸縮は勿論のこと、例えば波形の曲げ等、様々な形状にすることが自在であるものとする。編組導体24は、編組にて形成されることからクッション性を有しており、例えば振れが生じたとしてもプロテクタ17の内面に対し強く叩きつけられることがないのは勿論である。尚、導電路本体部20としての採用は編組導体24に限らないものとする(変形例は図8を参照しながら後述するものとする)。
【0034】
<プロテクタ17について>
図1及び図2において、プロテクタ17は、絶縁性の樹脂材料を用いて成形される樹脂成形品であって、第一プロテクタ25と、第二プロテクタ26とを備えて構成される。プロテクタ17は、導電路16を収容保護するための部材として備えられる。プロテクタ17は、電極23に対する接続部分を確保した上で、導電路16の全体を覆うことができるような形状に形成される。本実施例のプロテクタ17は、導電路16を収容することができるように、Z方向に二つ割りとなる形状に形成される(二つ割りに関しては詳細な図示を省略するものとする)。尚、第一プロテクタ25が筒状又は溝状で、第二プロテクタ26のみが二つ割り形状であってもよいものとする。
【0035】
プロテクタ17は、X方向に延在する図示のような形状に形成される。プロテクタ17は、図3ないし図6に示す如く、第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26の構造により、X方向に移動自在となるように(伸縮自在となるように)、また、Y方向・Z方向にも移動自在となるように、さらには、X方向を軸にしてこの軸回り方向にも移動自在となるように形成される。
【0036】
<第一プロテクタ25について>
図1ないし図6において、第一プロテクタ25は、第一端部27と、第一中間側端部28と、第一プロテクタ本体部29とを有して図示形状に形成される。すなわち、第一プロテクタ25は、平面視略L字の筒形状に形成される。第一プロテクタ25は、導電路16の第一接続部18から導電路本体部20の中間にかけて収容保護することができるような形状に形成される。第一端部27は、導電路16の第一接続部18の側に配置される。第一端部27は、第一接続部18の形状に合わせて平面視L字状の折れ曲がり部分を含んで形成される。第一端部27には、第一接続部18を保持するための部分(図示省略)が形成される。第一端部27は、第一接続部18による電気的な接続がZ方向で行えるように形成される。
【0037】
第一中間側端部28は、導電路本体部20の中間側に配置される。第一中間側端部28は、導電路本体部20の中間をX方向に引き出せるように、開口した形状に形成される。このような第一中間側端部28には、脱落防止部30が形成される。脱落防止部30は、第一中間側端部28の開口周縁から外側に突出する鍔状の部分(フランジ状の部分)に形成される。脱落防止部30は、第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26の上記移動の際に、妨げとならないような形状に形成される。脱落防止部30は、上記移動の際にガイド部31となるように形成される。脱落防止部30(ガイド部31)は、第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26を最大に伸ばした際に、これらの脱落を防止することができるように形成される。脱落防止部30は、本実施例において鍔状の部分であることから、第二プロテクタ26の後述する脱落防止部35に対し当接可能に形成される。脱落防止ができる脱落防止部30(ガイド部31)の形成により、作業性の向上や接続状態の安定等に寄与することができるのは勿論である。脱落防止部30は、ガイド部31としても形成されることから、第一プロテクタ25の第一中間側端部28及び第二プロテクタ26の後述する第二中間側端部33のガタツキをある程度抑えながら移動させることができ、以て作業性の向上を図ることもできる。尚、第一中間側端部28は、特許請求の範囲に記載された「いずれか他方」に相当する部分であるものとする。脱落防止部30と、第二プロテクタ26の脱落防止部35との位置に付される引用符号41はラビリンス構造部を示すものとする。ラビリンス構造部41については後述するものとする。
【0038】
第一プロテクタ本体部29は、第一端部27及び第一中間側端部28の間に配置される。第一プロテクタ本体部29は、ストレートな形状部分に形成される。第一プロテクタ本体部29は、これをそのまま延在させると、境界がない状態で第一中間側端部28になってしまうような形状に形成される。第一プロテクタ本体部29は、この内側で導電路16の導電路本体部20が伸縮自在となるように形成される。尚、第一プロテクタ本体部29は、第一スタック12及び第二スタック13の間隔が狭い場合であれば短く形成されるものとする。
【0039】
<第二プロテクタ26について>
図1ないし図6において、第二プロテクタ26は、第二端部32と、第二中間側端部33と、第二プロテクタ本体部34とを有して図示形状に形成される。すなわち、第二プロテクタ26は、第二端部32及び第二プロテクタ本体部34が平面視略L字の筒形状に形成され、且つ、第二中間側端部33がフード形状に形成される。第二プロテクタ26は、導電路16の第二接続部19から導電路本体部20の中間にかけて収容保護することができるような形状に形成される。第二端部32は、導電路16の第二接続部19の側に配置される。第二端部32は、第二接続部19の形状に合わせて平面視L字状の折れ曲がり部分を含んで形成される。第二端部32には、第二接続部19を保持するための部分(図示省略)が形成される。第二端部32は、第二接続部19による電気的な接続がZ方向で行えるように形成される。
【0040】
第二プロテクタ本体部34は、第二端部32及び第二中間側端部33の間に配置される。第二プロテクタ本体部34は、ストレートな形状部分に形成される。第二プロテクタ本体部34は、第一プロテクタ25と異なり、そのまま延在させても第二中間側端部33にならない部分に形成される。これは、第二プロテクタ本体部34に連続する第二中間側端部33の形状が第一プロテクタ25の第一中間側端部28の形状と異なるフード形状に形成されるからである。第二プロテクタ本体部34は、この内側で導電路16の導電路本体部20が伸縮自在となるように形成される。尚、第二プロテクタ本体部34は、第一スタック12及び第二スタック13の間隔が狭い場合であれば短く形成されるものとする。
【0041】
第二中間側端部33は、特許請求の範囲に記載された「いずれか一方」に相当する部分であって、導電路本体部20の中間側に配置され、且つ、第一プロテクタ25の第一中間側端部28を移動自在な状態にする部分に形成される。第二中間側端部33は、導電路本体部20の中間をX方向に引き出せるように開口した形状、且つ、フード形状に形成される。ここでフード形状とは、第一プロテクタ25の第一中間側端部28を収容状態にし、且つ、導電路本体部20の中間の延在方向(X方向)に沿って第一中間側端部28を移動自在な状態にするような、図示形状のことを指すものとする。このような第二中間側端部33には、脱落防止部35が形成される。脱落防止部35は、フード形状の第二中間側端部33の開口周縁から内側に突出する鍔状の部分(フランジ状の部分)に形成される。脱落防止部35は、第一プロテクタ25の第一中間側端部28の外面に対し隙間が生じるような大きさ及び形状に形成される。具体的には、フード形状の第二中間側端部33に収容された第一中間側端部28がX方向のみならず、Y方向・Z方向や、軸回り方向Rにも移動自在となるように脱落防止部35が形成される。脱落防止部35は、第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26を最大に伸ばした際に第一プロテクタ25の脱落防止部30が当接して脱落を防止することができる部分に形成される。尚、脱落防止部35もガイド部36として形成される。フード形状の第二中間側端部33は、第一中間側端部28がX方向・Y方向・Z方向・軸回り方向Rに移動したとしても、第一中間側端部28に形成された脱落防止部30(ガイド部31)が機能するような大きさに形成される。フード形状の第二中間側端部33は、膨らみを持たせた形状に形成される。尚、この膨らみを持たせた分に応じて図1の寸法Aの数値が変動するものとする。
【0042】
<電気接続部材14の作用について>
図3ないし図6において、ここからは第一プロテクタ25の配置を固定状態にし、その上で第二プロテクタ26を移動させた時の電気接続部材14がどのように作用するのかについて断面図を用いて説明をする。
【0043】
図3(b)及び図5は基本状態(基本位置)にある電気接続部材14を示す。この時、第一プロテクタ25における第一中間側端部28の脱落防止部30(ガイド部31)は、フード形状の第二中間側端部33の内部中間に位置する。導電路16には、縮める方向の力が加わるため、導電路本体部20の中間(中央)が膨らんだような状態になる。すなわち、編組の網目が部分的に開いたような状態になる。電気接続部材14の基本状態においては、所定の間隔通りに並んだ第一スタック12及び第二スタック13(図1参照)との電気的な接続が行えるようになる。尚、第一スタック12及び第二スタック13がY方向やZ方向等に位置ズレしていたとしても電気的な接続が行えるのは勿論である(Y方向・Z方向の位置ズレに関しては、以下の説明でも同様であり省略するものとする)。
【0044】
図3(a)及び図4は伸長状態(伸長位置)にある電気接続部材14を示す。この時、第一プロテクタ25における第一中間側端部28の脱落防止部30(ガイド部31)と、フード形状の第二中間側端部33の脱落防止部35(ガイド部36)とが当接し合う状態になる。当接により、脱落が防止されるのは勿論である。導電路16は、導電路本体部20の全体が伸びた(線状になった)状態になる。電気接続部材14の伸長状態においては、所定の間隔よりも広く並んだ第一スタック12及び第二スタック13(図1参照)との電気的な接続が行えるようになる。
【0045】
図3(c)及び図6は縮んだ状態にある電気接続部材14を示す。この時、第一プロテクタ25における第一中間側端部28の脱落防止部30(ガイド部31)は、フード形状の第二中間側端部33の内部一番奥に位置する。導電路16には、縮める方向の力が加わるため、導電路本体部20の全体が膨らんだような状態になる。すなわち、編組の網目が全体的に開いたような状態になる。電気接続部材14の縮んだ状態においては、所定の間隔よりも狭く並んだ第一スタック12及び第二スタック13(図1参照)との電気的な接続が行えるようになる。
【0046】
尚、図3に示す如く基本状態、伸長状態、縮んだ状態の電気接続部材14においては、第一中間側端部28及び第二中間側端部33が脱落防止部30、35等によりラビリンス構造部41を形成することができる。ラビリンス構造部41は、第一中間側端部28の壁、第二中間側端部33の壁、及び、脱落防止部30、35の構造部分に囲まれて生じる微小な経路に形成される。すなわち、迷路状の経路にするために形成される。ラビリンス構造部41は、外部から導電路16(導電路本体部20)への異物到達防止用の迷路が生じるように形成される。ラビリンス構造部41が形成されることにより、導電性の例えば針金37(異物)や、感電を避けたい作業者の指(図示省略)が直接、導電路本体部20に触れてしまうことがなくなり、結果、絶縁機能や直指防止機能等を持たせることができるようになる。
【0047】
<効果について>
以上、図1ないし図6を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるプロテクタ17によれば、導電路本体部20の中間延在方向(X方向)に沿って第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26が伸縮する構造のものであることから、このプロテクタ17を用いることで電気的接続の際に確保すべきスペースを図9で示すよりも削減することができる。従って、プロテクタ17によれば、電気的接続の際に確保すべきスペースの削減に寄与することができるという効果を奏する。この他、プロテクタ17によれば、上記構造であることから、公差吸収機能を有するという効果を奏する。また、プロテクタ17によれば、導電路16を収容保護することから、絶縁機能や直指防止機能、干渉防止機能等も有するという効果を奏する。
【0048】
バッテリーモジュール11や電気接続部材14に関しては、プロテクタ17を構成に含むことから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【0049】
この他、本実施例の電気接続部材14に関しては、部品点数を削減することができるという効果も奏する。具体的に図9を例に挙げて説明すると、電線1は、端子4が2つと、電線本体5が1つの、2種類3部品で構成される。2つの端子4には、それぞれ端子カバーが必要であり、電線本体5にも外装部材が必要である。よって、図9の例では、4種類6部品が必要になる。一方、本実施例においては、導電路16が2種類3部品で構成され、プロテクタ17は2種類2部品で構成される。よって、4種類5部品が必要になる。以上から分かるように、本実施例の電気接続部材14は、部品点数を削減することができる。
【0050】
<第一の変形例について>
図7はプロテクタ17の変形例を示す断面図である。図7において、第一プロテクタ25及び第二プロテクタ26には、複数の放熱用貫通孔38が形成される。この放熱用貫通孔38は、プロテクタ17内に熱が籠もった場合、これを外部に積極的に放熱するために形成される。放熱用貫通孔38の形成は、セル15(図1参照)の冷却のバラツキが生じるような場合に有効である。放熱用貫通孔38の形成により、放熱性能をコントロールする機能をプロテクタ17に持たせることができるという効果を奏する。尚、放熱用貫通孔38の形成がなければ(図3参照)、プロテクタ17内に空気層39が生じ、冷却し難くできるのは勿論である。すなわち、意図しない放熱をプロテクタ17で起こさせないという効果を奏する。
【0051】
<第二の変形例について>
図8は導電路16の変形例を示す電気接続部材14の断面図である。図8において、螺旋状に巻いた電線40が導電路16の本体として採用される。螺旋状に巻いた電線40も伸縮自在であることから、また、屈曲も自在であることから、より良い導電路16を含む電気接続部材14の提供をすることができるという効果を奏する。
【0052】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
11…バッテリーモジュール、 12…第一スタック、 13…第二スタック、 14…電気接続部材、 15…セル、 16…導電路、 17…プロテクタ、 18…第一接続部、 19…第二接続部、 20…導電路本体部、 21…電気接触部、 22…圧着部、 23…電極、 24…編組導体、 25…第一プロテクタ(いずれか他方)、 26…第二プロテクタ(いずれか一方)、 27…第一端部、 28…第一中間側端部、 29…第一プロテクタ本体部、 30…脱落防止部、 31…ガイド部、 32…第二端部、 33…第二中間側端部、 34…第二プロテクタ本体部、 35…脱落防止部、 36…ガイド部、 37…針金(異物)、 38…放熱用貫通孔、 39…空気層、 40…螺旋状に巻いた電線、 41…ラビリンス構造部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9