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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】電動プレス及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20240123BHJP
   B30B 1/18 20060101ALI20240123BHJP
   B30B 15/26 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B30B15/14 K
B30B1/18 B
B30B15/26
B30B15/14 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199845
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070054
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】野口 忠弘
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-180299(JP,A)
【文献】特開2017-205798(JP,A)
【文献】特開平09-308997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0324503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 1/18
B30B 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を発生させる電動機と、
被加工体に加圧力を加えるプレス用ラムと、
前記電動機の回転力を前記プレス用ラムの直進加圧力に変換する変換機構と、
前記プレス用ラムの直進移動を制動するブレーキ部と、
前記被加工体に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、前記ブレーキ部を作動させて前記プレス用ラムを一定の加圧状態に維持する制御ユニットと、
前記被加工体に加わる加圧力を検出する加圧力検出部と、
前記加圧力検出部により検出された加圧力に対する前記電動機による加圧の保持可能時間を決定する加圧時間決定部と、を備え、
前記制御ユニットは、前記加圧力検出部により検出された加圧力に基づいて、前記加圧時間決定部により決定された保持可能時間の範囲内において、前記ブレーキ部を作動させて前記プレス用ラムを一定の加圧状態に維持する電動プレス。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記加圧力検出部により検出された加圧力に対して前記加圧時間決定部により決定された保持可能時間に満たない所定の閾値時間を超え、かつ、当該加圧力及び前記加圧停止位置が安定しているとき、前記ブレーキ部を作動させて前記プレス用ラムを一定の加圧状態に維持する
請求項1に記載の電動プレス。
【請求項3】
電動機と、プレス用ラムと、ブレーキ部と、制御ユニットとを備えた電動プレスの制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、
前記電動機により、回転力を発生させる第1ステップと、
前記プレス用ラムにより、前記電動機の回転力が変換された直進加圧力を用いて、被加工体に加圧力を加える第2ステップと、
前記制御ユニットにより、前記被加工体に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、前記ブレーキ部を作動させて前記プレス用ラムを一定の加圧状態に維持する第3ステップと、
を備え、
前記第3ステップは、
前記被加工体に加えた加圧力に対応して決定された前記プレス用ラムを制動する保持可能時間に満たない所定の閾値時間を超えたか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップにおいて前記閾値時間を超えたと判定されたとき、前記プレス用ラムの加圧力及び前記加圧停止位置が安定しているか否かを判定する第5ステップと、
前記第5ステップにおいて加圧力及び前記加圧停止位置が安定していると判定されたとき、前記ブレーキ部を作動させて前記プレス用ラムを一定の加圧状態に維持する第6ステップと、
を備えた制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動プレス及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電動機の回転力をプレス用ラムの直進加圧力に変換する電動プレスが開示されている。この電動プレスでは、予め定めた加圧位置範囲において所定の加圧力(荷重)が検出された場合にプレス用ラムによる被加工物の加圧が継続される。
つまり、被加工物のワーク作業において、プレス用ラムの加圧を停止する停止位置並びに加圧を継続する継続時間が予め設定される。そして、電動プレスでは、プレス用ラムの加圧先端が停止位置に到達すると、継続時間が経過するまで、プレス用ラムは被加工物に加圧力を掛け続ける制御がなされている。
被加工物としては、例えば、粉体物質又は半固体物質が使用されている。電動プレスでは、粉体物質は固定化され、半固体物質はケースへ装填されるワーク作業が実施されている。この種の電動プレスでは、加圧力を掛け続けるワーク作業が実施されているので、被加工物が旧位に復することを防止して、精密或いは正確なワーク作業を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4093379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記電動プレスでは、電動機としてサーボモータが使用されているため、特性として発生させる加圧力と加圧を継続できる加圧継続時間とは反比例の関係にある。したがって、大きい加圧力をワークに与える場合、加圧継続時間は非常に短時間となり、加圧継続時間を超えて加圧しようとすると過負荷エラーに至り、電動機が停止してしまう。このため、電動プレス及びその制御プログラムにおいて、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、加圧力と加圧継続時間とのトレードオフを解消し、高い加圧力を長時間にわたって発生させることができる電動プレス及びその制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1実施態様に係る電動プレスは、回転力を発生させる電動機と、被加工体に加圧力を加えるプレス用ラムと、電動機の回転力をプレス用ラムの直進加圧力に変換する変換機構と、プレス用ラムの直進移動を制動するブレーキ部と、被加工体に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、ブレーキ部を作動させてプレス用ラムを一定の加圧状態に維持する制御ユニットと、被加工体に加わる加圧力を検出する加圧力検出部と、加圧力検出部により検出された加圧力に対する電動機による加圧の保持可能時間を決定する加圧時間決定部と、を備え、制御ユニットは、加圧力検出部により検出された加圧力に基づいて、加圧時間決定部により決定された保持可能時間の範囲内において、ブレーキ部を作動させてプレス用ラムを一定の加圧状態に維持する。
【0008】
本発明の第実施態様に係る電動プレスでは、第実施態様に係る電動プレスにおいて、制御ユニットは、加圧力検出部により検出された加圧力に対して加圧時間決定部により決定された保持可能時間に満たない所定の閾値時間を超え、かつ、当該加圧力及び加圧停止位置が安定しているとき、ブレーキ部を作動させてプレス用ラムを一定の加圧状態に維持する。
【0009】
本発明の第実施態様に係る制御プログラムは、電動機と、プレス用ラムと、ブレーキ部と、制御ユニットとを備えた電動プレスの制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、電動機により、回転力を発生させる第1ステップと、プレス用ラムにより、電動機の回転力が変換された直進加圧力を用いて、被加工体に加圧力を加える第2ステップと、制御ユニットにより、被加工体に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、ブレーキ部を作動させてプレス用ラムを一定の加圧状態に維持する第3ステップと、を備え、第3ステップは、被加工体に加えた加圧力に対応して決定されたプレス用ラムを制動する保持可能時間に満たない所定の閾値時間を超えたか否かを判定する第4ステップと、第4ステップにおいて閾値時間を超えたと判定されたとき、プレス用ラムの加圧力及び加圧停止位置が安定しているか否かを判定する第5ステップと、第5ステップにおいて加圧力及び加圧停止位置が安定していると判定されたとき、ブレーキ部を作動させてプレス用ラムを一定の加圧状態に維持する第6ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加圧力と加圧継続時間とのトレードオフを解消し、高い加圧力を長時間にわたって発生させることができる電動プレス及びその制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明の第1実施の形態に係る電動プレスの概略断面構成図、(B)は(A)に示される電動プレスによるワーク作業時間と電動プレスのプレス用ラムの先端位置との関係を示すグラフ、(C)は(B)に示されるワーク作業時間に対応する電動プレスのプレス用ラムの先端位置が発生させる加圧力(荷重)との関係を示すグラフである。
図2図1(A)に示される電動プレスの制御ユニットを含むシステム構成図である。
図3図2に示される制御ユニットを構築する第3記憶部に情報として格納される、プレス用ラムの加圧力(荷重)に対する電動機による加圧の保持可能時間との関係を示すグラフである。
図4】第1実施の形態に係る電動プレスの制御方法及び制御プログラムを示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施の形態に係る電動プレスの制御方法及び制御プログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施の形態]
以下、図1図4を用いて、本発明の第1実施の形態に係る電動プレス及びその制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムについて説明する。
ここで、図1(A)に示されている符号Xは三次元座標のX軸方向(紙面から手前側へ向かう方向)を示し、符号YはY軸方向(紙面の左側から右側へ向かう方向)を示し、符号ZはZ軸方向(紙面の下側から上側へ向かう方向)を示している。Y軸方向は水平面においてX軸方向に対して直交し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に対して直交している。なお、これらの各方向は、実施の形態を説明するために便宜的に使用される方向であって、本発明はこれらの方向に限定されるものではない。
【0014】
(電動プレス1の全体構成)
図1(A)に示されるように、本実施の形態に係る電動プレス(電動プレス機)1は、特に型式が限定されるものではないが、コラム型電動プレスとして構成されている。この電動プレス1は、電動機3と、変換機構5と、プレス用ラム6と、ブレーキ部8と、制御ユニット12とを含んで構成されている。さらに、電動プレス1は筐体2を備え、筐体2の内部に電動機3等の各構成要素が配設されている。
【0015】
電動プレス1は、被加工体11に加圧力を加えて、ワーク作業を実施する構成とされている。ここでは、被加工体11は例えば筒状の被圧入体11Aと棒状の圧入体11Bとを有し、被圧入体11Aに圧入体11Bを圧入する圧入ワーク作業が実施される。
なお、被加工体11は、例えば粉体物質又は半固体物質を使用してもよい。粉体物質が使用される場合には、電動プレス1は粉体物質を固定化する圧縮ワーク作業又は成形ワーク作業を実施する。また、半固体物質が使用される場合には、電動プレス1は半固体物質をケースに装填する圧入ワーク作業を実施する。
さらに、電動プレス1は、かしめ、リベット、封止、曲げ、絞り、切断、打ち抜き、刻印、検査等の各種ワーク作業を実施してもよい。
以下、電動プレス1の構成について、詳しく説明する。
【0016】
(1)筐体2の構成
図1(A)に示されるように、筐体2は、ベース21と、コラム(支柱)23と、ヘッド24とを含んで構成されている。
【0017】
ベース21は電動プレス1の下部に位置し、ベース21の上面にはXY水平面が形成されたテーブル22が配設されている。テーブル22には、図示省略の取付具が装着可能とされ、取付具を介して被加工体11が取付可能とされている。また、ワーク作業者から見て(正面視において)、ベース21の前面側には操作部10が配設されている。この操作部10は、ベース21の内部に配設された、図1(A)及び図2に示される制御ユニット12に接続されている。制御ユニット12の構成は後述する。
【0018】
コラム23は、正面視においてベース21の背面側に配設され、ベース21の表面上からZ軸方向へ立設されている。コラム23は、筒状に形成され、ベース21と一体又は一体的に構成されている。
ここで、「一体に構成されている」とは、コラム23、ベース21のそれぞれが同一材料を用いて1つの成形体として構成されているという意味において使用されている。また、「一体的に構成されている」とは、コラム23、ベース21のそれぞれが同一材料若しくは別材料を用いて別々に形成され、溶接、ボルトナット、ネジ等の締結手段を用いて結合されて構成されているという意味において使用されている。以下の説明において、「一体」又は「一体的」の意味は同義である。
【0019】
ヘッド24は、コラム23の上部に一体又は一体的に構成され、ワーク作業者の右側面から見て(右側面視において)背面側から前面側へ突出する構成とされている。正面視並びに右側面視において、ヘッド24は、いずれも矩形状に形成されている。
ヘッド24の前面側には、上側に表示部13が配設され、下側には操作部14が配設されている。操作部14では、数値情報を含めたワーク作業の制御情報等が入力可能とされている。例えば、ティーチングモードにおいて操作部14から数値情報、ワーク作業の制御情報等を入力すれば、電動プレス1では入力された数値情報、制御情報等に従って被加工体11にワーク作業を実施することができる。表示部13は例えばタッチパネル方式の液晶表示パネルにより構成されている。表示部13では、ティーチングモードにおいて入力された数値、ワーク作業状態等を表示させることができる。操作部14、表示部13のそれぞれは、図1(A)及び図2に示される制御ユニット12に接続されている。
【0020】
(2)電動機3、変換機構5、プレス用ラム6の構成
図1(A)に示されるように、電動機3及び変換機構5は筐体2のヘッド24の内部25に配設されている。プレス用ラム6は、ワーク作業開始時において内部25に収納されている。このプレス用ラム6は、内部25からベース21へ向かって降下し、又降下した位置から内部25へ向かって上昇する構成とされている。
【0021】
電動機3は、その回転軸31をZ軸方向に一致させ、正面視においてヘッド24の内部25の背面側に組み付けられている。右側面視では、電動機3は内部25の右側に配置されている。電動機3として、ここではサーボモータが使用されている。
また、電動機3の下側には回転量検出部4が配設され、回転量検出部4は電動機3の回転軸31の下側に連結されている。回転量検出部4では、回転軸31の回転量を検出することができる。
【0022】
変換機構5は、電動機3の上側であって、電動機3の上部からプレス用ラム6の上部にわたって配設されている。ここで、プレス用ラム6は、正面視においてヘッド24の内部25の手前側、右側面視において内部25の左側に配設されている。変換機構5は、駆動側歯車51と、従動側歯車52と、従動軸53と、軸受部54と、送りねじ部(螺子軸)55と、移動部56とを含んで構成されている。
【0023】
駆動側歯車51は、電動機3の回転軸31の上部に連結され、回転軸31の回転に従って回転軸31を回転中心として回転する構成とされている。駆動側歯車51の外周囲には、回転軸31の回転力を従動側歯車52に伝達する駆動歯が設けられている。
従動側歯車52は、Z軸方向を回転軸方向とする従動軸53の上下方向中間部に連結されている。従動側歯車52の外周囲には、駆動側歯車51の駆動歯と噛み合う従動歯が設けられている。従動側歯車52は、駆動側歯車51から伝達された回転力を従動軸53に伝達する構成とされている。
【0024】
従動軸53は、ヘッド24の底面中央部から内部25へZ軸方向に立設されたガイド部26の中心部分に配置され、ガイド部26の上部に装着された軸受部54を介して回転自在に配設されている。ガイド部26は、プレス用ラム6の上下方向の移動をガイドする機能を有し、ここではプレス用ラム6がZ軸方向を軸方向とする円柱形状に形成されているので、円筒形状に形成されている。ガイド部26はヘッド24に一体又は一体的に構成されている。
また、軸受部54は従動側歯車52よりも下方に位置して従動軸53に装着されている。軸受部54にはベアリングが使用されている。ベアリングとして、転がり軸受、滑り軸受のいずれが採用されてもよいが、ここでは転がり軸受が使用され、従動軸53の回転に伴う摩擦トルクが軽減されている。
【0025】
送りねじ部55は、従動軸53の下側端部に一体又は一体的に構成され、従動軸53の下側他端から下方向へ向かって延設されている。送りねじ部55の中心軸は従動軸53の中心軸に一致されている。送りねじ部55の外周囲には雄ねじ(送りねじ)が設けられている。
そして、移動部56は、図示省略の雌ねじを有するナット形状に形成され、送りねじ部55に螺合されている。移動部56は、送りねじ部55の回転に従って上下方向へ移動する構成とされている。
つまり、変換機構5は、電動機3の回転力を、駆動側歯車51、従動側歯車52、従動軸53、送りねじ部55、移動部56のそれぞれを介して、プレス用ラム6の直進加圧力に変換する構成とされている。
【0026】
なお、本実施の形態では、移動部56の雌ねじと送りねじ部55の雄ねじとの間に図示省略の複数のボールが介在されている。すなわち、移動部56、ボール及び送りねじ部55はボールねじ機構を構成している。ボールねじ機構では、送りねじ部55と移動部56との摩擦抵抗を小さくすることができ、送りねじ部55の軸方向に対して、移動部56をスムーズに移動させることができる。
【0027】
プレス用ラム6は、ガイド部26に沿って上下方向へ摺動自在に配設されている。プレス用ラム6の上側一端部には変換機構5の移動部56が固定されている。それにより、移動部56は、電動機3の回転力が変換機構5により変換された直進加圧力をプレス用ラム6に伝達し、プレス用ラム6を下方向へ向かって押し下げる。また、移動部56は、電動機3の逆回転力が変換機構5により変換された直進反加圧力をプレス用ラム6に伝達し、プレス用ラム6を上方向へ向かって引き上げる。
プレス用ラム6の上側一端から中間部に至る内部には変換機構5の送りねじ部55が挿入可能とされている。勿論、挿入された送りねじ部55は、プレス用ラム6の内部から取出し可能とされている。
さらに、プレス用ラム6の下側他端部は、被加工体11に加圧力を加える構成とされている。本実施の形態では、プレス用ラム6の下側他端部が底面から上方へ向かって凹設され、この凹設内部に加工体(押圧体)61が加圧力検出部7を介在して配設されている。従って、加工体61の下面が実質的な「ラム先端(ラム先端面)」とされている。加圧力検出部7としては、例えば歪みゲージ等の荷重検出器を使用することができる。
【0028】
このように構成される電動プレス1では、電動機3の回転力が変換機構5によりプレス用ラム6の直進加圧力に変換され、この直進加圧力に基づいてプレス用ラム6は被加工体11を加圧する。
図1(A)には、プレス用ラム6の「ラム先端(加工体61の下面)」が、上方位置であって、ワーク作業の作業開始位置に配置された状態における電動プレス1が示されている。
【0029】
(3)ブレーキ部8の構成
図1(A)に示されるように、ブレーキ部8は、変換機構5の従動軸53の上側他端部に配設されている。本実施の形態では、ブレーキ部8として、一般的な電磁ブレーキが使用されている。具体的な図示は省略するが、電磁ブレーキは、例えば、固定板と、可動板と、電磁コイルと、弾性体と、摩擦板とを含んで構成されている。
【0030】
固定板、可動板は、各々、従動軸53の中心軸方向と一致する方向を板厚方向とし、径方向中央部において従動軸53を貫通させる貫通孔を有する円盤形状に形成されている。少なくとも可動板は、通電により発生された磁力によって電磁コイルに引き寄せられる金属製とされている。
電磁コイルは従動軸53の中心軸に沿って配置されている。固定板は電磁コイルから所定の距離だけ離れた位置に配置され、電磁コイルに固定板が固定されている。可動板は、電磁コイルと固定板との間において、従動軸53の中心軸に沿って移動可能に支持されている。固定板と可動板との間には摩擦板が配設され、摩擦板は例えばロータハブを介して従動軸53に固定されている。
可動板と電磁コイルとの間には、可動板を固定板へ押さえ付ける方向へ付勢する弾性体、具体的にはコイルスプリングが配設されている。
【0031】
電磁コイルが通電されていないとき、弾性体が可動板を押さえ付け、固定板と可動板とにより摩擦板が挟み込まれることにより、ブレーキ部8は従動軸53を制動する。一方、電磁コイルが通電されるとき、弾性体の付勢に抗して電磁コイルが可動板を引き寄せ、固定板と可動板との間に挟み込まれた摩擦板が開放され、ブレーキ部8は従動軸53の制動を解除する。
本実施の形態に係る電動プレス1では、ブレーキ部8は、電磁コイルが通電されていないとき、具体的には電動プレス1の主電源がオフ状態のとき、プレス用ラム6の落下を防止する機能を備えている。そして、電動プレス1では、ワーク作業の加圧停止位置において、プレス用ラム6を一定の加圧状態に維持するべく、ブレーキ部8が使用されている。
表現を代えれば、加圧停止位置においてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持するブレーキ部8は、プレス用ラム6の落下を防止するブレーキ部8を用いて構成されている。
【0032】
(電動プレス1の制御ユニット12の構成)
図2に示されるように、電動プレス1は制御ユニット12を備えている。制御ユニット12は、電動機3、回転量検出部4、加圧力検出部7、表示部13、操作部10、操作部14のそれぞれに接続されている。
そして、制御ユニット12は、制御部121と、第1記憶部122と、第2記憶部123と、第3記憶部124と、ドライバ125とを含んで構成されている。
【0033】
制御部121は、電動プレス1の全体の動作制御を司る。この制御部121には、図示省略の中央演算処理ユニット(CPU)が含まれている。
第1記憶部122には主に電動プレス1の動作を制御する制御プログラムが格納されている。第1記憶部122に格納された制御プログラムは制御部121において読み取られて実行され、制御部121は制御プログラムに基づいて電動プレス1の動作を制御する。
第2記憶部123には主にワーク作業の作業情報が格納されている。例えば、圧入ワーク作業では、プレス用ラム6のラム先端の作業開始位置、加圧開始位置、加圧停止位置、作業終了位置、加圧速度等の作業情報が、予めティーチング作業により作業情報として作成される。この作業情報が第2記憶部123に格納されている。
【0034】
第3記憶部124には、主に加圧力検出部7により検出された加圧力に対する電動機3による加圧の保持可能時間に関する情報(以下、「加圧保持時間情報」という。)が格納されている。ここで、加圧保持時間情報は、一例の傾向として、図3に示される通りである。横軸は加圧力(荷重)[N]を示し、縦軸は加圧の保持可能時間[sec]を示している。
図3に示されるように、電動機3が定格トルクに至る前の、プレス用ラム6のラム先端が被加工体11に発生させる加圧力において、保持可能時間は無限大となる。一方、電動機3が定格トルクを超えると、プレス用ラム6のラム先端が被加工体11に発生させる加圧力に対して、保持可能時間は指数関数的に短くなる。本実施の形態では、保持可能時間はテーブル情報として第3記憶部124に格納されている。
【0035】
また、第3記憶部124には、加圧保持時間情報として論理式情報が格納されてもよい。論理式情報は次式<1>を用いて表される。
T max = X × P × P max …<1>
ここで、式<1>の左辺のT max は最大加圧保持時間[sec]である。式<1>の右辺のP は加圧力[N]、P max は定格荷重[N]、X は定数である。
【0036】
また、制御ユニット12には、加圧時間決定部126が設けられている。加圧時間決定部126は、加圧力検出部7と、第3記憶部124と、判断部121Aとを含んで構築されている。ここで、判断部121Aは制御部121内に内蔵されている。すなわち、加圧時間決定部126では、加圧力検出部7により検出された加圧力情報と、第3記憶部124に格納された加圧保持時間情報とに基づいて、判断部121Aにより加圧保持時間が決定される。
【0037】
制御ユニット12のドライバ125は制御部121に接続され、制御部121によりドライバ125の動作が制御される。このドライバ125は電動機3に接続され、ドライバ125により電動機3の回転が制御される。
【0038】
(電動プレス1の制御方法並びに制御プログラム)
次に、図1図3を参照しつつ、図4に示されるフローチャートを用いて、電動プレス1の制御方法並びにこの制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムについて説明する。ここで、コンピュータは図2に示される制御ユニット12を主体として構築されている。なお、制御方法を説明する各ステップは、制御プログラムを説明する各ステップと実質的に同一である。
【0039】
電動プレス1において、ワーク作業が開始される。すなわち、電動プレス1において、制御方法が開始され、制御プログラムの実行が開始される。最初に、作業開始位置から予め指定された速度において、被加工体11に向かって下方向へプレス用ラム6の降下が開始される(ステップS1。図1(A)及び図1(C)参照。)。電動プレス1では、電動機3の回転力が変換機構5により直進加圧力に変換され、この変換された直進加圧力に基づいてプレス用ラム6が降下する(図1(A)参照)。
【0040】
ここで、図1(B)に、ワーク作業時間とプレス用ラム6のラム先端位置との関係が示されている。横軸はワーク作業時間を示し、縦軸はラム先端位置を示している。ワーク作業の作業開始時間はt0であり、時間の経過と共にプレス用ラム6の先端位置が下方へ移動する。
一方、図1(C)に、図1(B)のワーク作業時間に対応させたワーク作業時間とラム先端が発生させる加圧力(荷重)との関係が示されている。横軸はワーク作業時間を示し、縦軸は加圧力を示している。ワーク作業の開始時点(作業開始時間t0)では、加圧力は発生していない。
【0041】
プレス用ラム6の降下が進み、プレス用ラム6のラム先端が被加工体11の圧入体11Bに接触し、ラム先端による被加工体11の加圧が開始される(ステップS2)。このとき、図1(B)及び図1(C)に示されるように、ワーク作業時間は作業開始時間t0から加圧開始時間t1まで経過している。また、図1(C)に示されるように、作業開始時間t0から加圧開始時間t1まで、ラム先端に加圧力は発生していない。
【0042】
加圧が開始されると、プレス用ラム6はそのまま所定の移動量に至るまで降下し、ラム先端が一定の加圧力P1になるまで、ラム先端位置の移動量が制御される(ステップS3)。このとき、図1(B)及び図1(C)に示されるように、ワーク作業時間の加圧時間t2に一定の加圧力P1になる。加圧開始時間t1から加圧時間t2までは、ラム先端位置は一定の移動量において降下し、ラム先端に発生する加圧力は一定の増加量において増加する。
ここで、ラム先端である加工体61には加圧力検出部7が配設されているので、加圧力検出部7を用いて、プレス用ラム6が被加工体11に加えている加圧力が検出される。
【0043】
プレス用ラム6の降下が進み、加圧時間t2に至る、つまり、ラム先端位置が所定の移動量を移動して加圧停止位置に至り、かつ、ラム先端に一定の加圧力P1が発生すると、一定の加圧状態を維持する制御方法(プログラムの実行)が開始される(ステップS4)。表現を代えると、被加工体11に掛かる加圧力が予め指定された加圧力となるプレス用ラム6のラム先端の位置の制御が開始される。
【0044】
まず、ワーク作業が終了したか否かが判定される(ステップS5)。
ステップS5において、ワーク作業が終了したと判定されると、図1(B)に示される加圧停止位置において、図1(C)に示される一定の加圧力(P1)を加えた状態が維持されたものと判定される。ワーク作業では、加圧時間t2から加圧終了時間t3まで、加圧停止位置において一定の加圧力P1を加えた状態が維持されたものと判定される。この後、プレス用ラム6を上昇させて退避させ(ステップS14)、本実施の形態に係る制御方法(プログラムの実行)が終了する。図1(B)及び図1(C)において、加圧終了時間t3からワーク作業の終了時間t4までに、プレス用ラム6の退避が完了する。
【0045】
一方、ステップS5において、ワーク作業が終了していないと判定されると、第1閾値時間を超過したか否かが判定される(ステップS6)。ここで、第1閾値時間は、図2に示される加圧時間決定部126において決定された加圧の保持可能時間(図3参照)に基づいて、この保持可能時間に満たない範囲内において設定される。本実施の形態では、第1閾値時間は、ワーク作業の安全性、ワーク作業の実現性等に基づいて、保持可能時間の60%に設定される。
ステップS6において、第1閾値時間を超過していないと判定されると、ステップS3に処理が戻る。
【0046】
一方、ステップS6において、第1閾値時間を超過していると判定されると、引き続き加圧力及び加圧停止位置が安定しているか否かが判定される(ステップS7)。ここで、加圧力及び加圧停止位置が安定しているとは、プレス用ラム6のラム先端に発生する加圧力の変化量及びラム先端の位置の変化量が、例えば実質的に変化していない5%以内の状態とされる。
【0047】
ステップS7において、加圧力及び加圧停止位置が安定していないと判定されると、第2閾値時間を超過したか否かが判定される(ステップS12)。加圧力及び加圧停止位置が安定していないとは、加圧力の変化量及びラム先端の位置の変化量が例えば5%を超えており、ラム先端の位置が変化している状態にある。
ここで、第2閾値時間は、第1閾値時間を超え、かつ、保持可能時間に満たない範囲内において設定される。本実施の形態では、第1閾値時間と同様に、ワーク作業の安全性、ワーク作業の実現性等に基づいて、第2閾値時間は保持可能時間の80%に設定される。
ステップS11において、第2閾値時間を超過していないと判定されると、ステップS7へ処理が戻る。一方、ステップS12において、第2閾値時間を超過していると判定されると、ステップS11へ処理が進む。ステップS10の処理内容については後述する。
【0048】
ステップS6において第1閾値時間を超過していると判定され、更にステップS7において加圧力及び加圧停止位置が安定していると判定されると、図1(A)及び図2に示されるブレーキ部8が作動され、プレス用ラム6の下降が制動される(ステップS8)。すなわち、電動プレス1では、加圧力検出部7により検出された加圧力に基づいて、加圧時間決定部126により決定された保持可能時間の範囲内において、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6が一定の加圧状態に維持される。この制御は図2に示される制御ユニット12により実行される。
【0049】
ステップS8において、予め設定された所定の加圧終了時間t3(図1(B)及び図1(C)参照)が経過した後に、ワーク作業が終了したか否かが判定される(ステップS9)。ステップS9において、ワーク作業が終了したと判定されると、ブレーキ部8によるプレス用ラム6の制動が解除される(ステップS13)。このブレーキ部8の解除がなされると、プレス用ラム6が終了時間t4までに退避し(ステップS14)、本実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムの実行が終了する。
【0050】
一方、ステップS9において、ワーク作業が終了していないと判定されると、予め設定された加圧力の範囲内であるか否かが判定される(ステップS10)。ここで、予め設定された加圧力の範囲内は、一定の加圧力P1の例えば±15%以内とされる。
ステップS10において、予め設定された加圧力の範囲内であると判定されると、ステップS9へ処理が戻る。
一方、ステップS10において、予め設定された加圧力の範囲内ではないと判定されると、プレス用ラム6の降下が停止され(プレス用ラム6が非常停止され)、このプレス用ラム6の停止と共にワーク作業に異常を生じた旨が通知される(ステップS11)。通知は、例えば、図1(A)に示される表示部13に、「加圧力エラー」等の文字を表示して行われる。また、図示省略の音声出力部から発せられる「エラー音」、図示省略の警告灯により発せられる「警告光」等を用いて、通知が行われる。
プレス用ラム6の停止及びワーク作業の異常の通知がなされた後、ラムを退避させ(ステップS14)、本実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムの実行は終了する。
【0051】
(作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る電動プレス1は、図1(A)に示されるように、電動機3と、プレス用ラム6と、変換機構5とを備える。電動機3は回転力を発生させる。プレス用ラム6は被加工体11に加圧力を加える。変換機構5は電動機3の回転力をプレス用ラム6の直進加圧力に変換する。
ここで、電動プレス1は、更に、ブレーキ部8と、制御ユニット12とを備える。ブレーキ部8はプレス用ラム6の直進移動を制動する。そして、制御ユニット12は、被加工体11に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する。
このため、電動プレス1では、ブレーキ部8のアシストにより、加圧継続時間を超えて加圧しても電動機3が過負荷エラーに至らないので、加圧力と加圧継続時間とのトレードオフを解消し、高い加圧力を長時間にわたって発生させることができる。
【0052】
また、電動プレス1では、電動機3の定格トルクを超えるトルクを発生させることができるので、電動機3の容量(サイズ)を小さくすることができる。このため、電動プレス1の小型化を実現することができる。
さらに、電動プレス1では、上記の通り、電動機3の容量を小さくすることができるので、電動機3の価格を下げることができる。このため、電動プレス1の製作費用を下げることができる。
【0053】
また、電動プレス1は、図1(A)及び図2に示されるように、更に、加圧力検出部7と、加圧時間決定部126とを備える。加圧力検出部7は被加工体11に加わる加圧力を検出する。加圧時間決定部126は、加圧力検出部7により検出された加圧力に対する電動機3による加圧の保持可能時間を決定する。
ここで、制御ユニット12は、加圧力検出部7により検出された加圧力に基づいて、加圧時間決定部126により決定された保持可能時間の範囲内において、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する。
このため、加圧力に基づいた加圧の保持可能時間の範囲内において、プレス用ラム6を一定の加圧状態に維持することができるので、過負荷エラーによって電動機3が停止することなく、高い加圧力を長時間にわたって発生させることができる。
【0054】
さらに、電動プレス1では、図2に示される制御ユニット12は、加圧力検出部7により検出された加圧力に対して加圧時間決定部126により決定された保持可能時間に満たない第1閾値時間(所定の閾値時間)を超え、かつ、加圧力及び加圧停止位置が安定しているとき、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する。つまり、第1閾値時間を超える条件と、加圧力及び加圧停止位置が安定している条件との複数の条件(ここでは2つの条件)が揃った段階において、制御ユニット12はブレーキ部8を作動させる。
例えば、第1閾値時間は超えているが、加圧力及び加圧停止位置が安定していないときにブレーキ部8を作動させると、プレス用ラム6の下降中に強制的にプレス用ラム6を制動することになる。本実施の形態に係る電動プレス1では、複数の条件が揃った段階において、ブレーキ部8を作動させているので、ワーク作業の安全性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る電動プレス1では、複数の条件が揃った段階、特に加圧力及び加圧停止位置が安定している条件において、ブレーキ部8を作動させているので、予め設定された加圧力が加圧停止位置において維持される。このため、ワーク作業において、被加工体11に適正な加圧力を適正な加圧時間にわたって掛け続けることができるので、被加工体11の加工精度を向上することができる。
【0055】
さらに、電動プレス1では、図1(A)に示されるように、変換機構5の従動軸53にブレーキ部8が配設されている。従動軸53は、ボールねじ機構を介してプレス用ラム6に接続され、電動機3からプレス用ラム6に至る動力伝達経路において、電動機3に比し、プレス用ラム6に近い位置に配置される。このため、ブレーキ部8が作動されてからプレス用ラム6が制動されるまでの時間を短縮することができるので、プレス用ラム6の制動速度を速くすることができる。つまり、電動プレス1では、プレス用ラム6の制動の応答性を向上させることができるので、被加工体11の加工精度を向上することができる。
【0056】
また、電動プレス1では、図1(A)に示されるように、プレス用ラム6の落下を防止するブレーキ部8が、加圧停止位置においてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持するブレーキ部8として使用される。このため、1つのブレーキ部8に2つの機能を持たせることができるので、ブレーキ部8の設置数を減少することができ、電動プレス1の小型化を実現することができる。
【0057】
さらに、図1(A)に示される電動機3と、プレス用ラム6と、ブレーキ部8と、制御ユニット12とを備えた電動プレス1の制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムは、図4に示されるように、第1ステップ~第3ステップを備える。第1ステップは、電動機3により、回転力を発生させる(例えば、ステップS1)。第2ステップは、プレス用ラム6により、電動機3の回転力が変換された直進加圧力を用いて、被加工体11に加圧力を加える(例えば、ステップS2)。第3ステップは、制御ユニット12により、被加工体11に加圧力を加えた状態における加圧停止位置において、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する(ステップS8)。
このため、制御プログラムでは、ブレーキ部8のアシストにより、加圧継続時間を超えて加圧しても電動機3が過負荷エラーに至らないので、加圧力と加圧継続時間とのトレードオフを解消し、高い加圧力を長時間にわたって発生させることができる。
【0058】
また、図4に示される制御プログラムでは、第3ステップは、更に、第4ステップ~第6ステップを備える。第4ステップは、被加工体11に加えた加圧力に対応して決定されたプレス用ラム6を制動する保持可能時間に満たない第1閾値時間を超えたか否かを判定する(ステップS6)。第5ステップは、第4ステップにおいて第1閾値時間を超えたと判定されたとき、プレス用ラム6の加圧力及び加圧停止位置が安定しているか否かを判定する(ステップS7)。第6ステップは、第5ステップにおいて加圧力及び加圧停止位置が安定していると判定されたとき、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する(ステップS8)。
つまり、制御プログラムでは、第1閾値時間を超える条件と、加圧力及び加圧停止位置が安定している条件との複数の条件が揃った段階において、ブレーキ部8が作動される。このため、ワーク作業の安全性を向上させることができ、更にワーク作業における加工精度を向上させることができる。
【0059】
[第2実施の形態]
次に、図5を用いて、本発明の第2実施の形態に係る電動プレス1及びその制御プログラムを説明する。
なお、本実施の形態に係る電動プレス1及び制御プログラムは、基本的には、前述の第1実施の形態に係る電動プレス1及び制御プログラムの構成要素と同一又は実質的に同一の構成要素を備えている。
【0060】
本実施の形態では、電動プレス1を用いてワーク作業を実行する前に、予め設定される加工条件(ティーチング情報)を作成する制御方法及び制御プログラムが、第1実施の形態に係る制御プログラムに対して相違している。
つまり、第1実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムでは、加圧停止位置(図1(B)において加圧時間t2~加圧終了時間t3)においてブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持するタイミングが、ワーク作業中にリアルタイムに制御される。これに対して、本実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムでは、加圧停止位置においてブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持するタイミングが、ワーク作業前に予め設定される。
【0061】
図5には、本実施の形態に係る電動プレス1の制御方法及びこの制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムを説明するフローチャートが示されている。このフローチャートを用いて、制御方法及び制御プログラムを説明する。
最初に、制御方法及び制御プログラムの実行が開始されると、電動プレス1を用いたワーク作業前に、ティーチング情報の作成が開始される。まず、ワーク作業において、被加工体11に加える加圧力(P[N])が設定される(ステップS21)。この加圧力は、前述の図1(A)に示される電動プレス1において、ワーク作業者により操作部14から入力される。加圧力の入力結果は表示部13に表示される。
引き続き、加圧力を加える加圧時間(T[sec])が設定される(ステップS22)。同様に、加圧時間は操作部14から入力され、加圧時間の入力結果は表示部13に表示される。
【0062】
ここで、加圧時間が、最大加圧保持時間(T max [sec])の範囲内であるか否かが判定される(ステップS23)。最大加圧保持時間は、前述の図2に示される加圧時間決定部126を用い、上記式<1>により算出される。
ステップS23において、加圧時間が最大加圧保持時間の範囲内である(最大加圧保持時間に満たない)と判定されると、本実施の形態に係る制御方法及び制御プロセスの実行が終了する。
一方、ステップS23において、加圧時間が最大加圧保持時間の範囲外である(最大加圧保持時間又はそれを超えている)と判定されると、ティーチング情報に「ブレーキ作動情報」が追加される(ステップS24)。この「ブレーキ作動情報」は、加圧停止位置において、ブレーキ部8を作動させてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する情報であり、ティーチング情報の第1閾値時間の時点に追加される。第1閾値時間は、第1実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムにおいて例示したように、例えば加圧の保持可能時間の60%である。つまり、前述の図4に示されるステップS6の処理が事前に推定され、ステップS5においてワーク作業が終了していないと判定されると、ステップS6の処理を飛ばしてステップS7の処理へ移行する。
【0063】
図5に示されるように、ステップS24において、ティーチング情報に「ブレーキ作動情報」が追加されると、本実施の形態に係る制御方法及び制御プログラムは終了する。ティーチング情報は電動プレス1の制御方法及び制御プログラムに反映され、ワーク作業中、ティーチング情報に基づいて、電動プレス1は加圧停止位置においてプレス用ラム6を一定の加圧状態に維持する。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態に係る電動プレス1及びその制御プログラムによれば、前述の第1実施の形態に係る電動プレス1及びその制御プログラムにより得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
さらに、電動プレス1の制御プログラムでは、ワーク作業前に作成されるティーチング情報に「ブレーキ作動情報」を追加させることができる。詳しく説明すると、ワーク作業前に、加圧力、加圧時間のそれぞれの情報が電動プレス1の制御ユニット12に操作部14から入力される(ステップS21及びステップS22)。制御ユニット12の判断部121Aでは、加圧時間と最大加圧保持時間とが比較される。加圧時間が最大加圧保持時間の範囲外であると判定されると、ティーチング情報に「ブレーキ作動情報」が追加される(ステップS23及びステップS24参照。)。
このため、最大加圧保持時間を超えると自動的に「ブレーキ作動情報」がティーチング情報に組み込まれるので、加圧時間を自由に設定することができ、ティーチング情報の作成自由度を向上させることができる。
【0066】
[その他の実施の形態]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、本発明は、電動プレス1において、変換機構5としてベルト変換機構を採用してもよい。ベルト変換機構は、電動機3の回転軸31に連結された駆動側プーリと、従動軸53に連結された従動側プーリと、駆動側プーリと従動側プーリとに巻き掛けられたベルトとを含んで構成されている。
また、本発明は、電動プレス1において、変換機構5の従動軸53に配設されたブレーキ部8に代えて、電動機3の回転軸31にブレーキ部を配設してもよい。このブレーキ部には、例えばブレーキ部8と同様に電磁ブレーキを採用することができる。
また、本発明は、電動プレス1において、ブレーキ部8に、一般的に知られているパスカルの原理(又はてこの原理)に基づいたブレーキを採用してもよい。
さらに、本発明は、電動プレス1において、加圧力検出部7として、電動機3のトルクの変動に応じて変化する電流値を検出する電流計を採用してもよい。
なお、一定の加圧状態を作り出す方法として、本実施の形態で説明したように、ラム先端を設定位置まで駆動させ、その位置で停止し所定の一定加圧を行う位置基準方式の他に、ワークに対する加圧力が設定加圧になるまでラム先端を駆動させ、設定加圧力になった位置でラムを停止させ一定加圧を行う荷重基準方式等、複数方式ある。本発明はどちらの方法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 電動プレス
2 筐体
3 電動機
5 変換機構
6 プレス用ラム
7 加圧力検出部
8 ブレーキ部
10 操作部
12 制御ユニット
121 制御部
121A 判断部
122 第1記憶部
123 第2記憶部
124 第3記憶部
126 加圧時間決定部
図1
図2
図3
図4
図5