(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】マイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
A01N 37/18 20060101AFI20240123BHJP
A01N 47/16 20060101ALI20240123BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240123BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20240123BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240123BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240123BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240123BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20240123BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A01N37/18 Z
A01N47/16 A
A01P17/00
A01N25/28
C08G18/08 038
C08G18/32 025
C08G18/76 057
C08G18/78
C08G18/00 A
(21)【出願番号】P 2019219799
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018230356
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 展嵩
(72)【発明者】
【氏名】志村 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 悟史
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087537(JP,A)
【文献】特表2007-528285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0042182(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0031602(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/
A01N 47/
A01P 17/
A01N 25/
C08G 18/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物とアミン化合物との重縮合物を壁材の構成成分とし、前記壁材に昆虫忌避剤が内包されて
いるマイクロカプセルであって、
前記イソシアネート化合物が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、イソシアネート基の含有量が20質量%以上であるジイソシアネート変性体と、を含
み、
前記重縮合物において、前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート由来の構成単位、前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位、並びに、前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、前記ジイソシアネート変性体と、のいずれにも該当せず、かつ、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する、他のイソシアネート由来の構成単位の総数に対する、前記他のイソシアネート由来の構成単位の数の割合が、10%以下であり、
前記マイクロカプセルにおいて、前記壁材の構成成分の総質量に対する、前記壁材の構成成分中の、前記イソシアネート化合物と前記アミン化合物との重縮合物に該当しない他のオリゴマー及びポリマーの総含有量の割合が、5質量%以下であり
前記昆虫忌避剤が、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミドと、1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジンと、のいずれか一方又は両方であり、
前記ジイソシアネート変性体が、脂肪族ジイソシアネートのビウレット変性体と、イソシアヌレート変性体と、トリメチロールプロパンアダクト変性体と、アロファネート変性体と、からなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記アミン化合物が、脂肪族多価アミン化合物と、前記脂肪族多価アミン化合物の1個又は2個以上のメチレン基が、式「-NH-」で表される基で置換された構造を有するNH置換脂肪族多価アミン化合物と、からなる群より選択される1種又は2種以上である、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記ジイソシアネート変性体が、ペンタメチレンジイソシアネート変性体及びヘキサメチレンジイソシアネート変性体からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫忌避剤としては、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(別名:N,N-ジエチル-m-トルアミド、本明細書においては、「DEET」と称することがある)、1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン(別名:イカリジン)等がよく知られている。
一方、昆虫忌避剤は、一般的に、その効果が長期に渡って持続することが求められている。そこで、昆虫忌避剤が内包されたマイクロカプセル(換言すると、マイクロカプセル化された昆虫忌避剤)が種々検討されている。
【0003】
マイクロカプセル化された昆虫忌避剤としては、これまでに、マイクロカプセルの壁材成分がメラミン樹脂であるもの(特許文献1参照)、マイクロカプセルの壁材成分がポリウレアであるもの(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2657263号公報
【文献】特開平3-90682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、メラミン樹脂を壁材成分とするマイクロカプセルの製造時には、原料としてホルムアルデヒドの水溶液(別名:ホルマリン)を使用する必要があり、その一方で、ホルムアルデヒド及びホルマリンはいずれも、日本国内では、医薬用外劇物に指定されている。すなわち、メラミン樹脂を壁材成分とするマイクロカプセルは、ホルムアルデヒドを含んでいる可能性があり、そのため、安全性が低い可能性があるという問題点があった。
【0006】
また、ポリウレアを壁材成分とするマイクロカプセルの場合、昆虫忌避剤の内包量を多くすることが困難であり、昆虫忌避作用が不十分であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、ホルムアルデヒドを使用せずに製造可能であり、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イソシアネート化合物とアミン化合物との重縮合物を壁材の構成成分とし、前記壁材に昆虫忌避剤が内包されており、前記イソシアネート化合物が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、イソシアネート基の含有量が20質量%以上であるジイソシアネート変性体と、を含む、マイクロカプセルを提供する。
本発明のマイクロカプセルにおいては、前記ジイソシアネート変性体が、ペンタメチレンジイソシアネート変性体及びヘキサメチレンジイソシアネート変性体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホルムアルデヒドを使用せずに製造可能であり、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1で得られたマイクロカプセルの撮像データである。
【
図2】比較例1で得られた生成物の撮像データである。
【
図3】比較例2で得られた生成物の撮像データである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<マイクロカプセル>>
本発明の一実施形態に係るマイクロカプセルは、イソシアネート化合物とアミン化合物との重縮合物を壁材の構成成分とし、前記壁材に昆虫忌避剤が内包されており、前記イソシアネート化合物が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(本明細書においては、「ポリメリックMDI」と称することがある)と、イソシアネート基の含有量が20質量%以上であるジイソシアネート変性体と、を含む。
【0012】
本明細書において、「イソシアネート化合物」とは、イソシアネート基(-NCO)を有する化合物を意味する。
本明細書においては、後述するジイソシアネート変性体中の、変性されているイソシアネート基は、イソシアネート基には含めない。
本明細書において、「イソシアネート化合物のイソシアネート基の含有量」とは、イソシアネート化合物が、その1分子中に有するイソシアネート基の量を意味しており、下記式により算出される。
[イソシアネート化合物のイソシアネート基の含有量(質量%)]=[1モルのイソシアネート化合物中のイソシアネート基の量(質量部)]/[イソシアネート化合物の分子量]×100
【0013】
本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「ジイソシアネート変性体」との記載は、上記の、NCO含有量が20質量%以上であるジイソシアネート変性体を意味する。
【0014】
本実施形態のマイクロカプセルにおいては、壁材の構成成分(本明細書においては、「壁材成分」と略記することがある)が、アミン化合物と、上記の特定範囲のイソシアネート化合物と、の重縮合物、すなわち特定範囲のポリウレアのみであるか、又はこのようなポリウレアを主要成分とする。このように、本実施形態のマイクロカプセルは、ホルムアルデヒドの使用が必要なメラミン樹脂を壁材の主要構成成分とはしないため、安全性が高い。
また、本実施形態のマイクロカプセルは、上記のような特定範囲のポリウレアを選択することで、昆虫忌避剤の内包量が多くなっている。
【0015】
<壁材、壁材成分>
前記壁材成分(壁材の構成成分)は、イソシアネート化合物とアミン化合物との重縮合物であり、オリゴマー又はポリマー(ポリウレア)である。
壁材成分は、膜形成能を有する。
壁材は、芯物質として昆虫忌避剤を内包し、マイクロカプセルを構成する。
【0016】
前記壁材の膜又は層の厚さは、特に限定されず、例えば、50~1000nmであってもよい。
【0017】
[イソシアネート化合物]
本実施形態において、前記イソシアネート化合物は、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体を含む。
前記イソシアネート化合物は、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体を主要成分とし、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体のみを含んでいてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、これらのいずれにも該当せず、かつ、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する、他のイソシアネート(本明細書においては、「他のイソシアネート」と略記することがある)と、を含んでいてもよい。
前記イソシアネート化合物として、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体のみを用いた場合には、壁材成分は、そのイソシアネート化合物由来の構成単位として、ポリメリックMDI由来の構成単位と、前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位と、のみを有する。一方、前記イソシアネート化合物として、ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、及び前記他のイソシアネートを用いた場合には、壁材成分は、そのイソシアネート化合物由来の構成単位として、ポリメリックMDI由来の構成単位と、前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位と、前記他のイソシアネート由来の構成単位と、を有する。
【0018】
ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体は、前記アミン化合物との重縮合反応によって、マイクロカプセルを構成する前記壁材成分を形成する。
すなわち、前記壁材成分は、より具体的には、ポリメリックMDIとアミン化合物との重縮合構造と、ジイソシアネート変性体とアミン化合物との重縮合構造と、をともに有する。
前記他のイソシアネートを用いた場合には、他のイソシアネートは、アミン化合物との重縮合反応によって、前記壁材成分を形成する可能性があるため、壁材成分は、上記の2種の重縮合構造に加え、前記他のイソシアネートとアミン化合物との重縮合構造も有する可能性がある。しかし、この場合にも、壁材成分は、ポリメリックMDIとアミン化合物との重縮合構造と、ジイソシアネート変性体とアミン化合物との重縮合構造と、を主要構造とする。
【0019】
(ポリメリックMDI)
ポリメリックMDIは、下記一般式(P1)で表される。
【0020】
【0021】
一般式(P1)中、nは0以上の整数であればよく、例えば、0~100であってもよい。
【0022】
ポリメリックMDIのNCO含有量は、適宜調節できるが、30~32質量%であることが好ましく、30.5~32質量%であることがより好ましい。
【0023】
ポリメリックMDIは、常温で液状あり、その25℃での粘度は、特に限定されないが、150~250mPa・sであることが好ましい。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0024】
ポリメリックMDIは、nの数に応じて複数種が存在する。
壁材成分の形成時に用いるポリメリックMDI(換言すると、壁材成分が有する、ポリメリックMDI由来の構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0025】
(ジイソシアネート変性体)
前記ジイソシアネート変性体のNCO含有量は、20質量%以上である。
昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルをより安定して製造できる点では、前記ジイソシアネート変性体のNCO含有量は、例えば、22質量%以上、及び24質量%以上のいずれかであってもよい。
【0026】
前記ジイソシアネート変性体のNCO含有量の上限値は、特に限定されない。例えば、マイクロカプセルをより安定して製造できる点では、前記ジイソシアネート変性体のNCO含有量は、28質量%以下であってもよい。
【0027】
前記ジイソシアネート変性体のNCO含有量は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記NCO含有量は、20~28質量%、22~28質量%、及び24~28質量%のいずれかであってもよい。
【0028】
前記ジイソシアネート変性体は、そのNCO含有量が20質量%以上であれば、特に限定されない。
前記ジイソシアネート変性体は、脂肪族ジイソシアネートの変性体と、芳香族ジイソシアネートの変性体と、のいずれであってもよい。
本明細書において、「脂肪族ジイソシアネート」とは、脂肪族基を有し、かつ芳香族基を有しないジイソシアネートを意味する。また、「芳香族ジイソシアネート」とは、芳香族基を有し、かつ脂肪族基を有しないジイソシアネート、又は、芳香族基と脂肪族基をともに有するジイソシアネート、すなわち、少なくとも芳香族基を有するジイソシアネート、を意味する。
【0029】
前記脂肪族ジイソシアネート中の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
本明細書においては、環状の脂肪族基を「脂肪族環式基」と称することがある。環状の脂肪族基(脂肪族環式基)は、環状構造を有し、かつ鎖状(すなわち、直鎖状又は分岐鎖状)構造を有していなくてもよいし、環状構造及び鎖状構造をともに有していてもよく、すなわち、少なくとも環状構造を有する。脂肪族環式基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記芳香族ジイソシアネート中の芳香族基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
【0030】
前記ジイソシアネート変性体は、脂肪族ジイソシアネート変性体であることが好ましく、脂肪族基が直鎖状である脂肪族ジイソシアネート変性体であることがより好ましい。
このような前記ジイソシアネート変性体としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(本明細書においては、「PDI」と略記することがある)変性体、ヘキサメチレンジイソシアネート(本明細書においては、「HDI」と略記することがある)変性体等が挙げられる。
【0031】
前記ジイソシアネート変性体としては、例えば、ジイソシアネートのビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンアダクト変性体(本明細書においては、「TMPアダクト変性体」又は「TMPアダクト体」と称することがある)、及びアロファネート変性体等が挙げられる。
なお、本明細書においては、例えば、「ジイソシアネートのビウレット変性体」を「ジイソシアネート-ビウレット変性体」と記載することがある。他の前記ジイソシアネート変性体も同様である。
【0032】
前記ジイソシアネート変性体として、より具体的には、例えば、PDIのイソシアヌレート変性体、HDIのビウレット変性体、HDIのイソシアヌレート変性体等が挙げられる。
【0033】
壁材成分の形成時に用いる前記ジイソシアネート変性体(換言すると、壁材成分が有する、前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0034】
壁材成分の形成時に用いる前記ジイソシアネート変性体は、PDI変性体及びHDI変性体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、PDIのイソシアヌレート変性体、HDIのビウレット変性体、及びHDIのイソシアヌレート変性体からなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。
換言すると、壁材成分は、その前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位として、PDI変性体由来の構成単位と、HDI変性体由来の構成単位と、からなる群から選択される1種又は2種以上を有することが好ましく、PDIのイソシアヌレート変性体由来の構成単位と、HDIのビウレット変性体由来の構成単位と、HDIのイソシアヌレート変性体由来の構成単位と、からなる群から選択される1種又は2種以上を有することがより好ましい。
【0035】
(他のイソシアネート)
前記他のイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有し、かつ、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、のいずれにも該当しないものでれば、特に限定されない。
【0036】
前記壁材成分において、ポリメリックMDI由来の構成単位と、前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位と、前記他のイソシアネート由来の構成単位と、の総数に対する、前記他のイソシアネート由来の構成単位の数の割合([壁材成分中の前記他のイソシアネート由来の構成単位の数]/([壁材成分中のポリメリックMDI由来の構成単位の数]+[壁材成分中の前記ジイソシアネート変性体由来の構成単位の数]+[壁材成分中の前記他のイソシアネート由来の構成単位の数]×100)は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、昆虫忌避剤の内包量がより多いマイクロカプセルが得られる。
【0037】
[アミン化合物]
前記アミン化合物は、その1分子中に2個以上のアミノ基を有していれば、特に限定されない。
本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「アミン化合物」との記載は、このような、2個以上のアミノ基を有する化合物を意味する。
【0038】
前記アミン化合物がその1分子中に有するアミノ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0039】
前記アミン化合物は、イソシアネート基又は水酸基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及び水酸基をともに有しないものがより好ましい。
【0040】
前記アミン化合物は、有機多価アミン化合物であることが好ましい。
前記有機多価アミン化合物は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0041】
前記有機多価アミン化合物で好ましいものとしては、例えば、脂肪族炭化水素の2個以上の水素原子(-H)がアミノ基(-NH2)で置換された構造を有する脂肪族多価アミン化合物;前記脂肪族多価アミン化合物の1個又は2個以上のメチレン基(-CH2-)が、式「-NH-」で表される基で置換された構造を有するNH置換脂肪族多価アミン化合物等が挙げられる。
【0042】
前記脂肪族多価アミン化合物において、アミノ基の結合位置は特に限定されず、例えば、主鎖又は側鎖の末端部の炭素原子に結合していてもよいし、主鎖又は側鎖の非末端部の炭素原子に結合していてもよい。
前記脂肪族多価アミン化合物において、2個以上のアミノ基は、同一の炭素原子に結合していないことが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、分子中に存在するひと繋がりの鎖状骨格のうち、この鎖状骨格を形成している原子数が最大であるものを意味する。「側鎖」とは、分子中に存在するひと繋がりの鎖状骨格のうち、主鎖に該当しないものを意味する。
【0043】
前記脂肪族多価アミン化合物は、少なくとも主鎖の一方又は両方の末端部の炭素原子にアミノ基が結合しているものが好ましく、少なくとも主鎖の両方の末端部の炭素原子にアミノ基が結合しているものがより好ましく、このようなものとしては、例えば、主鎖の両方の末端部の炭素原子にアミノ基が結合している脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。
【0044】
前記脂肪族多価アミン化合物で好ましいものとしては、例えば、1,3-ジアミノプロパン(NH2-CH2CH2CH2-NH2)等が挙げられる。
【0045】
前記NH置換脂肪族多価アミン化合物において、式「-NH-」で表される基で置換されているメチレン基の位置は、特に限定されないが、アミノ基が結合している炭素原子に隣接していないメチレン基であることが好ましい。
前記NH置換脂肪族多価アミン化合物において、式「-NH-」で表される基で置換されているメチレン基の数は、このアミン化合物の炭素数に応じて異なり、例えば、1~4個、1~3個、又は1~2個のいずれであってもよい。
【0046】
前記NH置換脂肪族多価アミン化合物で好ましいものとしては、例えば、ジエチレントリアミン(NH2-CH2CH2-NH-CH2CH2-NH2)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(NH2-CH2CH2CH2-NH-CH2CH2-NH-CH2CH2CH2-NH2)等が挙げられる。
【0047】
壁材成分の形成時に用いる前記アミン化合物(換言すると、壁材成分が有する、前記アミン化合物由来の構成単位)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0048】
前記壁材成分は、前記イソシアネート化合物とアミン化合物との重縮合物(ポリウレア)のみを含んでいてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で、前記重縮合物と、それ以外の他のオリゴマー及びポリマーのいずれか一方又は両方と、を含んでいてもよい。
【0049】
前記壁材成分が含む前記他のオリゴマー及びポリマーは、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0050】
前記マイクロカプセルにおいて、壁材成分の総質量に対する、壁材成分中の前記他のオリゴマー及びポリマーの総含有量の割合([マイクロカプセルにおける、壁材成分中の前記他のオリゴマー及びポリマーの総含有量(質量部)]/[マイクロカプセルにおける、壁材成分の総質量(質量部)]×100)は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
換言すると、前記マイクロカプセルにおいて、壁材成分の総質量に対する、壁材成分中の前記重縮合物の含有量の割合([マイクロカプセルにおける、壁材成分中の前記重縮合物の含有量(質量部)]/[マイクロカプセルにおける、壁材成分の総質量(質量部)]×100)は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
これらの割合がこのような範囲であることで、昆虫忌避剤の内包量がより多いマイクロカプセルが得られる。
【0051】
<昆虫忌避剤>
前記昆虫忌避剤は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
昆虫忌避剤の、15~25℃のいずれかの温度の1Lの水に対する溶解量は、例えば、15g以下であることが好ましい。
【0052】
昆虫忌避剤は、常温で液状であることが好ましい。
【0053】
昆虫忌避剤としては、例えば、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(別名:N,N-ジエチル-m-トルアミド、DEET)、1-(1-メチルプロポキシカルボニル)-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン(別名:イカリジン)等が挙げられる。
【0054】
前記マイクロカプセルにおいて、前記壁材に内包されている昆虫忌避剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0055】
前記マイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されないが、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、例えば、8μm以上、及び10μm以上のいずれかであってもよい。前記平均粒子径が前記下限値以上であるマイクロカプセルは、昆虫忌避剤の内包量がより多い点で有利である。
【0056】
マイクロカプセルの平均粒子径の上限値は、特に限定されない。例えば、前記平均粒子径が16μm以下であるマイクロカプセルは、より容易に製造できる。
【0057】
マイクロカプセルの平均粒子径は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、マイクロカプセルの平均粒子径は、3~16μmであることが好ましく、4~16μmであることがより好ましく、5~16μmであることがさらに好ましく、例えば、8~16μm、及び10~16μmのいずれかであってもよい。
【0058】
本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、粒子について、粒度分布計を用いて測定された、体積粒度分布の中位径を意味する。
【0059】
マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包量の程度は、例えば、下記式で算出されるマイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包率によって判断できる。
[マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包率(質量%)]=[マイクロカプセルの昆虫忌避剤の含有量(質量部)]/[マイクロカプセル製造時の昆虫忌避剤の使用量(質量部)]×100
【0060】
前記マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包率は、例えば、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上であってもよく、82.5質量%以上、及び85質量%以上のいずれかであってもよい。
また、前記マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包率は、例えば、好ましくは90質量%以上、より好ましくは94質量%以上であってもよい。
【0061】
前記内包率の上限値は100質量%である。例えば、前記内包率が98質量%以下であるマイクロカプセルは、より容易に製造でき、前記内包率は、93質量%以下であってもよい。
【0062】
通常、芯物質の内包量が多いマイクロカプセルにおいては、その形状が真球状に近く、その粒子径(平均粒子径)が大きめとなっている。本実施形態のマイクロカプセルは、このような特徴を備えており、芯物質である昆虫忌避剤の内包量が多い。
例えば、マイクロカプセルの形状は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いることで観測できる。
【0063】
<<マイクロカプセルの製造方法>>
前記マイクロカプセルは、昆虫忌避剤の共存下において、前記イソシアネート化合物と前記アミン化合物とを重縮合反応させることにより、製造できる。
【0064】
本実施形態においては、前記アミン化合物の反応対象物、すなわちイソシアネート化合物として、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、の組み合わせを選択することにより、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルが得られる。
ポリメリックMDIは、アミン化合物との反応性が比較的高く、壁材成分の形成に使用可能であるが、目的外の成分とも反応し易く、例えば、水酸基(-OH)等を有する化合物とも反応し易い。このような化合物としては、例えば、乳化剤が挙げられる。したがって、イソシアネート化合物の大部分をポリメリックMDIとしたり、イソシアネート化合物をポリメリックMDIのみとした場合には、重縮合反応時の副反応が抑制されず、目的とするマイクロカプセルがほとんど又は全く得られない。
これに対して、本実施形態においては、ポリメリックMDIに加えて、ポリメリックMDIよりも反応性が低い前記ジイソシアネート変性体を用いることにより、イソシアネート化合物とアミン化合物との反応性が調節され、その結果、目的とするマイクロカプセルが高収率で得られると推測される。
【0065】
重縮合反応時には、前記イソシアネート化合物(ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、前記他のイソシアネート)と、前記アミン化合物と、のいずれにも該当しない他の成分を用いてもよい。
前記他の成分としては、例えば、溶媒、乳化剤等が挙げられる。
例えば、水と疎水性成分の共存下で、重縮合反応を行うことにより、重縮合を界面重縮合として行うことができる。
【0066】
前記他の成分のうち、溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
前記有機溶媒は、親水性溶媒及び疎水性溶媒のいずれであってもよいが、疎水性溶媒であることが好ましい。
前記疎水性溶媒としては、例えば、アルコール、アミド、ニトリル、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類(フェノール性水酸基を有する化合物)、硫化炭素、カルボン酸等が挙げられる。
【0067】
前記他の成分のうち、乳化剤としては、公知のものが挙げられる。
前記乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、ロート油、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。
【0068】
重縮合反応時の反応液の乳化状態がより良好で、マイクロカプセルをより容易に製造できる点では、前記乳化剤は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0069】
重縮合反応時に用いる昆虫忌避剤、ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、前記他のイソシアネート、前記アミン化合物、及び前記他の成分は、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0070】
重縮合反応時においては、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の総使用量は、昆虫忌避剤の使用量100質量部対して、例えば、好ましくは20~55質量部、より好ましくは25~50質量部、さらに好ましは30~45質量部であってもよい。前記総使用量が前記下限値以上であることで、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルをより安定して製造できる。前記総使用量が前記上限値以下であることで、ポリメリックMDI又は前記ジイソシアネート変性体の過剰使用を抑制しつつ、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルをより安定して製造できる。
また、重縮合反応時においては、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の総使用量は、昆虫忌避剤の使用量100質量部対して、例えば、好ましくは20~60質量部、より好ましくは25~55質量部であってもよい。前記総使用量の上限値が、このように比較的大きい場合には、昆虫忌避剤の内包量がより多いマイクロカプセルを製造できる。
【0071】
重縮合反応時においては、ポリメリックMDIの使用量に対する、前記ジイソシアネート変性体の使用量の割合は、100~450質量%であることが好ましく、140~400質量%であることがより好ましく、180~350質量%であることがさらに好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルをより安定して製造できる。
【0072】
重縮合反応時においては、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の総使用量と、前記アミン化合物の使用量は、[アミン化合物中のアミノ基のモル数]:[ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体中のイソシアネート基の総モル数]のモル比が、10:90~60:40となる量であることが好ましく、20:80~40:60となる量であることがより好ましい。前記アミン化合物中のアミノ基のモル数が、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体中のイソシアネート基の総モル数よりも少なくなる様に設定すると、より高品質なマイクロカプセルが得られる。
【0073】
重縮合反応時における、前記他の成分の使用量は、その種類に応じて適宜調節できる。
例えば、前記他の成分が溶媒である場合には、他の成分(溶媒)の使用量は、昆虫忌避剤、ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、前記他のイソシアネート、及び前記アミン化合物の総使用量100質量部に対して、100~250質量部であることが好ましく、例えば、100~210質量部、及び100~170質量部のいずれかであってもよい。
【0074】
例えば、前記他の成分が乳化剤である場合には、乳化剤の使用量は、ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、前記他のイソシアネート、及び前記アミン化合物の総使用量100質量部に対して、4~25質量部であることが好ましく、7~20質量部であることがより好ましく、例えば、10~15質量部であってもよい。前記使用量が前記下限値以上であることで、重縮合反応時の反応液の乳化状態がより良好となる。前記使用量が前記上限値以下であることで、乳化剤の過剰使用が抑制される。
【0075】
例えば、前記他の成分が、溶媒と、乳化剤と、のいずれにも該当しない成分である場合には、他の成分の使用量は、昆虫忌避剤、ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、前記他のイソシアネート、及び前記アミン化合物の総使用量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、例えば、5質量部以下、及び1質量部以下のいずれかであってもよい。
【0076】
重縮合反応を行うときの温度(すなわち反応温度)は、特に限定されないが、60~110℃であることが好ましく、65~100℃であることがより好ましく、70~90℃であることが特に好ましい。
【0077】
重縮合反応を行う時間(すなわち反応時間)は、0.5~5時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましく、1.5~3時間であることが特に好ましい。
【0078】
重縮合反応後は、例えば、前記マイクロカプセルが水分散体等の分散体として得られる。
【0079】
得られたマイクロカプセルは、そのまま目的とする用途で用いてもよいし、必要に応じて公知の方法で後処理、精製等を行ってから、目的とする用途で用いてもよく、分散媒を除去してから目的とする用途で用いてもよい。
【0080】
重縮合反応時に、水以外の前記溶媒を用いた場合には、得られたマイクロカプセルにおいて、前記壁材は、昆虫忌避剤以外にこの溶媒も内包し得る。また、重縮合反応の条件によっては、前記壁材は、昆虫忌避剤及び前記溶媒以外に、さらに他の成分も内包し得る。
【0081】
前記壁材が内包する前記溶媒及び他の成分は、いずれも、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0082】
マイクロカプセルにおける、昆虫忌避剤、前記溶媒及び他の成分の内包量は、マイクロカプセルの製造条件によって調節できる。
【0083】
重縮合反応時の撹拌手段の回転速度(換言すると、反応液の撹拌速度)は、例えば、300~900rpm、及び400~700rpmのいずれかであってもよい。
例えば、重縮合反応時における昆虫忌避剤の使用量が、50~200gである場合、このような撹拌速度は、特に好適である。ただし、昆虫忌避剤の使用量は、これらに限定されない。
【0084】
より具体的なマイクロカプセルの製造方法の一例としては、例えば、水及び乳化剤を含有する第1溶液に、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、昆虫忌避剤と、を含有する第2溶液を加えて、乳化液を得る工程(本明細書においては、「乳化工程」と略記することがある)と、前記乳化液に、水及びアミン化合物を含有する第3溶液を加えて、重縮合反応を行う工程(本明細書においては、「重縮合工程」と略記することがある)と、を有する製造方法(本明細書においては、「製造方法(I)」と称することがある)が挙げられる。ただし、マイクロカプセルの製造方法は、この製造方法(I)に限定されない。
以下、製造方法(I)について説明する。
【0085】
<乳化工程>
製造方法(I)の前記乳化工程においては、前記第1溶液に前記第2溶液を加えて、乳化液を得る。
【0086】
[第1溶液]
前記第1溶液は、水及び乳化剤を含有しており、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、水と、乳化剤と、のいずれにも該当しない前記他の成分を含有していてもよい。
【0087】
第1溶液の調製時に用いる前記乳化剤及び他の成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0088】
第1溶液において、その総質量に対する、乳化剤の含有量の割合(すなわち、第1溶液の乳化剤の濃度)は、特に限定されないが、1~15質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましい。
【0089】
第1溶液が前記他の成分を含有する場合、他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節できる。
【0090】
第1溶液は、水と、乳化剤と、必要に応じて前記他の成分と、を配合することにより得られる。
第1溶液は、水に乳化剤を加えることにより、調製することが好ましい。前記他の成分を用いる場合には、その加えるタイミングと、加える対象は、他の成分の種類に応じて、適宜調節できる。
第1溶液の調製時には、例えば、すべての成分を配合した後、好ましくは80~100℃で、好ましくは0.5~3時間、加熱撹拌した後、27℃以下等の常温になるまで冷却することにより、第1溶液を調製してもよい。
【0091】
[第2溶液]
前記第2溶液は、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、昆虫忌避剤と、必要に応じて前記他のイソシアネートと、を含有しており、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、これら成分(ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、昆虫忌避剤、前記他のイソシアネート)のいずれにも該当しない前記他の成分と、を含有していてもよい。
【0092】
第2溶液の調製時に用いるポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、昆虫忌避剤、前記他のイソシアネート、及び他の成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0093】
製造方法(I)においては、第2溶液において、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の総含有量が、昆虫忌避剤の含有量100質量部対して、例えば、好ましくは20~55質量部、より好ましくは25~50質量部、さらに好ましは30~45質量部であってもよい。
また、製造方法(I)においては、第2溶液において、ポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の総含有量が、昆虫忌避剤の含有量100質量部対して、例えば、好ましくは20~60質量部、より好ましくは25~55質量部であってもよい。
【0094】
製造方法(I)においては、第2溶液において、ポリメリックMDIの含有量に対する、前記ジイソシアネート変性体の含有量の割合が、100~450質量%であることが好ましく、140~400質量%であることがより好ましく、180~350質量%であることがさらに好ましい。
【0095】
第2溶液における前記他の成分としては、例えば、溶媒が挙げられる。
前記溶媒を用いることで、第2溶液において、その含有成分の溶解性を調節できる。
第2溶液における前記溶媒としては、水、有機溶媒等が挙げられ、前記有機溶媒は、先に説明したものと同じである。
【0096】
第2溶液が前記他のイソシアネート又は前記他の成分を含有する場合、これら成分の含有量は、目的に応じて適宜調節できる。
【0097】
第2溶液は、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、昆虫忌避剤と、必要に応じて前記他のイソシアネートと、必要に応じて前記他の成分と、を配合することにより得られる。
昆虫忌避剤が常温で液状である場合、第2溶液は、昆虫忌避剤に、ポリメリックMDIと、前記ジイソシアネート変性体と、必要に応じて前記他のイソシアネートと、必要に応じて他の成分と、を加えることにより、調製することが好ましい。
第2溶液の調製時には、例えば、原料(ポリメリックMDI、前記ジイソシアネート変性体、昆虫忌避剤、他のイソシアネート、他の成分)の配合から、すべての成分を配合した後の撹拌までを、好ましくは15~28℃で行うことができる。すべての成分を配合した後の撹拌時間は、例えば、1~60分であってもよい。
【0098】
前記乳化工程において、前記第1溶液に前記第2溶液を加えるときには、第2溶液を一括添加してもよいし、滴下してもよい。
【0099】
前記乳化工程においては、例えば、前記第1溶液に前記第2溶液を加える初期段階から、加えた後の撹拌までを、好ましくは15~28℃で行うことができる。第1溶液に第2溶液を加えた後の撹拌時間は、例えば、1~60分であってもよい。
【0100】
前記乳化工程においては、前記第1溶液に前記第2溶液を加えて、得られた混合液を撹拌することにより、乳化液を得るときに、前記混合液の撹拌速度を調節することにより、マイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)を調節できる。より具体的には、上述の撹拌速度が遅いほど、マイクロカプセルの粒子径は大きくなり、上述の撹拌速度が速いほど、マイクロカプセルの粒子径は小さくなる傾向がある。
【0101】
前記乳化液を得るときの前記混合液の撹拌速度(換言すると、撹拌手段の回転速度)は、例えば、300~1000rpm、及び400~800rpmのいずれかであってもよい。
例えば、乳化時における昆虫忌避剤の使用量が、50~200gである場合、このような撹拌速度は、特に好適である。ただし、昆虫忌避剤の使用量は、これらに限定されない。
【0102】
<重縮合工程>
前記重縮合工程においては、前記乳化工程で得られた前記乳化液に、前記第3溶液を加えて、重縮合反応を行う。
【0103】
[第3溶液]
前記第3溶液は、水及びアミン化合物を含有しており、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、水以外の前記他の成分を含有していてもよい。
【0104】
第3溶液の調製時に用いる前記アミン化合物及び他の成分は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0105】
第3溶液において、その総質量に対する、アミン化合物の含有量の割合(すなわち、第3溶液のアミン化合物の濃度)は、特に限定されないが、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0106】
製造方法(I)においては、第1溶液中の乳化剤の量と、第2溶液中のポリメリックMDI及び前記ジイソシアネート変性体の量と、第3溶液中のアミン化合物の量と、が先に説明した関係となるように、第1溶液と、第2溶液と、第3溶液と、の使用量を調節すればよい。
【0107】
第3溶液が前記他の成分を含有する場合、他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節できる。
【0108】
第3溶液は、水と、アミン化合物と、必要に応じて前記他の成分と、を配合することにより得られる。
第3溶液は、例えば、アミン化合物に水を加えることにより、調製してもよいし、水にアミン化合物を加えることにより、調製してもよい。前記他の成分を用いる場合には、その加えるタイミングと、加える対象は、他の成分の種類に応じて、適宜調節できる。
第3溶液の調製時には、例えば、すべての成分を配合した後、好ましくは15~28℃で、好ましくは1~60分、撹拌することにより、第3溶液を調製してもよい。
【0109】
前記重縮合工程において、前記乳化液に前記第3溶液を加えるときには、第3溶液を一括添加してもよいし、滴下してもよい。
【0110】
製造方法(I)においては、前記重縮合工程において、反応温度、反応時間、及び反応液の撹拌速度を、先に説明した、重縮合反応を行うときの反応温度、反応時間、及び反応液の撹拌速度に設定することが好ましい。
【0111】
製造方法(I)においては、前記重縮合工程を行うことにより、前記マイクロカプセルが水分散体として得られる。
【0112】
本実施形態のマイクロカプセルは、その製造方法によらず、経時と共に、内包された昆虫忌避剤を徐々に外部に放出する徐放性を有する。したがって、前記マイクロカプセルは、昆虫忌避剤の作用を長期に渡って持続させることができる。
【0113】
前記マイクロカプセルは、例えば、防虫剤として好適である。
例えば、前記マイクロカプセルを含有する液状組成物を調製するか、又は、上述の製造方法で得られた、重縮合反応の生成物をそのまま用いることで、液状の防虫剤が得られる。さらに、これら液状の防虫剤を塗工し、乾燥させることで、層状(例えばフィルム状)の防虫剤が得られる。
また、前記マイクロカプセルを含有する樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を成形することで、シート状等の固形の防虫剤が得られる。
【実施例】
【0114】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0115】
<昆虫忌避剤、イソシアネート化合物、アミン化合物>
マイクロカプセルの製造時に用いた昆虫忌避剤、イソシアネート化合物及びアミン化合物を以下に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
[実施例1]
<<マイクロカプセルの製造>>
蒸留水(174.4g)にポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「JP-24」)(5.6g)を添加し、90℃で1時間撹拌して溶液とし、これを25℃まで冷却することにより、ポリビニルアルコール水溶液(前記第1溶液に相当)を得た。
別途、昆虫忌避剤(a)-1(100g)に、イソシアネート(b)-1(10g)とジイソシアネート変性体(c)-1(25g)を添加し、25℃で撹拌することにより、これらの成分がすべて溶解している混合溶液(前記第2溶液に相当)を得た。
別途、ジエチレントリアミン(7.5g)に蒸留水(30g)を添加し、25℃で撹拌することにより、ジエチレントリアミン水溶液(前記第3溶液に相当)を得た。
前記ポリビニルアルコール水溶液の全量に、前記混合溶液の全量を添加し、25℃で、回転速度700rpmでアンカー翼を3分回転させて撹拌することにより、乳化液を得た(前記乳化工程に相当)。
得られた乳化液の全量に、前記ジエチレントリアミン水溶液の全量を添加し、80℃で、回転速度500rpmでアンカー翼を2時間回転させて、反応液を撹拌することにより、界面重縮合を行った(前記重縮合工程に相当)。
以上により、ジエチレントリアミンと、ポリメリックMDI及びHDI-ビウレット変性体と、の重縮合物を壁材成分とし、芯物質(昆虫忌避剤)としてDEETを壁材が内包したマイクロカプセルを、水分散体として得た。
【0121】
<<マイクロカプセルの評価>>
<平均粒子径>
上記で得られたマイクロカプセル水分散体を、上質紙上に塗工し、105℃で90秒乾燥させた。次いで、走査電子顕微鏡(日本電子社製)を用いて、2000倍の倍率で塗工及び乾燥部位を観察し、目的とするマイクロカプセルが得られたことを確認した。このとき取得したマイクロカプセルの撮像データを
図1に示す。
さらに、電気的検知帯方式の粒度分布計(ベックマン・コールター社製「Multisizer 3」)を用いて、得られたマイクロカプセルの平均粒子径を測定した。結果を表5に示す。
【0122】
<昆虫忌避剤の内包率>
上記で得られたマイクロカプセル水分散体(1g)に蒸留水を添加し、合計量を100gとして、希釈液を得た。
孔径0.2μmのメンブランフィルタを用いて、得られた希釈液をろ過し、マイクロカプセルをろ別した。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、得られたろ液を分析し、昆虫忌避剤(a)-1に相当するピークを検出した。
別途、同じ測定装置を用いて、濃度が既知で複数とおりの昆虫忌避剤(a)-1溶液をHPLCにより分析し、昆虫忌避剤(a)-1の濃度と、昆虫忌避剤(a)-1に相当するピークの強度と、のデータを取得して、これらデータから、昆虫忌避剤(a)-1の検量線を作成した。
上記のろ液の分析データと、この検量線と、を用いて、ろ液中の昆虫忌避剤(a)-1の量を算出し、さらに、この昆虫忌避剤(a)-1の量から、上記で得られたマイクロカプセル水分散体中の、カプセル化されなかった昆虫忌避剤(a)-1の全量を算出し、その値と、界面重縮合時の昆虫忌避剤(a)-1の使用量と、から、マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包量を算出した。さらにこの内包量から、前記式を用いて、マイクロカプセルの昆虫忌避剤の内包率を算出した。結果を表5に示す。
【0123】
<<マイクロカプセルの製造及び評価>>
[実施例2~3]
アミン化合物の種類を表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0124】
[実施例4]
乳化液を得る(前記乳化工程を行う)ときのアンカー翼の回転速度を、700rpmに代えて500rpmとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0125】
[実施例5~6]
イソシアネート(b)-1の配合量と、アミン化合物(d)-1の配合量と、の両方を、表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0126】
[実施例7]
ジイソシアネート変性体(c)-1の配合量と、アミン化合物(d)-1の配合量と、の両方を、表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0127】
[実施例8~9]
ジイソシアネート変性体の種類を表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0128】
[実施例10]
昆虫忌避剤(a)-1に代えて昆虫忌避剤(a)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0129】
[実施例11]
イソシアネート(b)-1の配合量と、ジイソシアネート変性体の種類及び配合量と、アミン化合物(d)-1の配合量と、のすべてを表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0130】
[実施例12]
昆虫忌避剤の種類と、イソシアネート(b)-1の配合量と、ジイソシアネート変性体の種類及び配合量と、アミン化合物(d)-1の配合量と、のすべてを表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価した。結果を表5に示す。
【0131】
[比較例1]
イソシアネート(b)-1の配合量を10gに代えて35gとした点と、ジイソシアネート変性体(c)-1を使用しなかった点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。すなわち、本比較例では、昆虫忌避剤(a)-1(100g)に、イソシアネート(b)-1(35g)を添加し、25℃で撹拌することにより、これらの成分がすべて溶解している混合溶液を得た後、この混合溶液の全量を、前記ポリビニルアルコール水溶液の全量に添加した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。また、このとき、実施例1の場合と同様の方法で取得した生成物の撮像データを
図2に示す。なお、表5中の、「マイクロカプセルの製造原料」の欄の「-」との記載は、その成分が未配合であることを意味する。また、「マイクロカプセルの評価結果」の欄の「-」との記載は、その項目が未評価であることを意味する。
【0132】
[比較例2]
ジイソシアネート変性体(c)-1の配合量を25gに代えて40gとした点と、イソシアネート(b)-1を使用しなかった点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。すなわち、本比較例では、昆虫忌避剤(a)-1(100g)に、ジイソシアネート変性体(c)-1(40g)を添加し、25℃で撹拌することにより、これらの成分がすべて溶解している混合溶液を得た後、この混合溶液の全量を、前記ポリビニルアルコール水溶液の全量に添加した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。また、このとき、実施例1の場合と同様の方法で取得した生成物の撮像データを
図3に示す。
【0133】
[比較例3]
イソシアネート(b)-1(10g)に代えて、ジイソシアネート変性体(c)-3(15g)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。換言すると、本比較例においては、イソシアネート(b)-1を使用しなかった点と、ジイソシアネート変性体(c)-3(15g)をジイソシアネート変性体(c)-1(25g)と併用した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。
【0134】
[比較例4]
イソシアネート(b)-1に代えて、イソシアネート(b)-2を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。
【0135】
[比較例5]
ジイソシアネート変性体(c)-1に代えて、ジイソシアネート変性体(c)-4を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルの製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。
【0136】
[参考例1]
イソシアネート(b)-1の配合量と、ジイソシアネート変性体の種類及び配合量と、アミン化合物(d)-1の配合量と、のすべてを表5に示すとおりとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、マイクロカプセルを製造及び評価を試みた。結果を表5に示す。
【0137】
【0138】
上記結果から明らかなように、実施例1~12においては、昆虫忌避剤の内包率が80質量%以上(80~98質量%)であり、昆虫忌避剤の内包量が多いマイクロカプセルが得られた。
図1に示すとおり、実施例1においては、球状のマイクロカプセルが安定して得られており、マイクロカプセルの平均粒子径が7.5μmであり、マイクロカプセルが十分に大きかった。図示を省略しているが、実施例2~12においても、実施例1の場合と同様のマイクロカプセルが得られた。実施例1~12においては、マイクロカプセルの平均粒子径が6.9μm以上(6.9~13.8μm)であった。
【0139】
実施例1~12において、マイクロカプセルの壁材成分はポリウレアであり、マイクロカプセルの製造時にホルムアルデヒドは不使用であって、安全性が高いマイクロカプセルが得られた。さらに、この壁材成分は、イソシアネート化合物として、ポリメリックMDIと前記ジイソシアネート変性体を用い、これらと、アミン化合物と、を重縮合させて得られたものであった。そして、前記ジイソシアネート変性体のイソシアネート基の含有量は、20.7質量%以上(20.7~25.0質量%)であり、ポリメリックMDIのイソシアネート基の含有量は、31.3質量%であった。
【0140】
実施例1~12においては、昆虫忌避剤の使用量(配合量)100質量部対する、ポリメリックMDI及びジイソシアネート変性体の総使用量(総配合量)は、32.5~54.1質量部であった。
【0141】
なかでも、実施例11~12においては、昆虫忌避剤の内包率が95質量%以上(95~98質量%)であり、昆虫忌避剤の内包量が際立って多いマイクロカプセルが得られた。
昆虫忌避剤の使用量(配合量)100質量部対する、ポリメリックMDI及びジイソシアネート変性体の総使用量(総配合量)は、実施例11~12においては54.1質量部であり、実施例1~10においては32.5~40質量部であって、実施例11~12の方が有意に多くなっており、これが、実施例11~12のマイクロカプセルにおいて、昆虫忌避剤の内包量が際立って多い理由であると推定された。
【0142】
実施例1~12においては、重縮合工程後に、良好な特性の、マイクロカプセルの水分散体が得られた。
【0143】
これに対して、比較例1~5においては、目的とする球状のマイクロカプセルが得られなかった。そのため、マイクロカプセルの平均粒子径を求めることはできなかった。一方、実施例1の場合と同じ方法で、生成物の昆虫忌避剤の内包率を算出した結果、65質量%以下(28~65質量%)であり、昆虫忌避剤の内包量も少なかった。
【0144】
比較例1においては、
図2に示すように、壁材は不規則な形状で、ゲル状であった。比較例1では、前記ジイソシアネート変性体が不使用であり、そのため、壁材の形成時に重縮合反応が正常に進行せず、ポリメリックMDIとアミン化合物だけでなく、ポリビニルアルコール等の他の成分も、重縮合反応してしまったと推定された。
【0145】
比較例2においては、
図3に示すように、一部で球状の生成物が認められるもの、大半の壁材は、比較例1の場合と同様に、不規則な形状であった。比較例2では、ポリメリックMDIが不使用であり、そのため、壁材の形成時に重縮合反応が正常に進行せず、カプセル化が十分に進行しなかったと推定された。
【0146】
比較例3においては、NCO含有量が異なる2種の前記ジイソシアネート変性体を併用したが、比較例2の場合と同様に、ポリメリックMDIが不使用であった。そのため、壁材の形成時に重縮合反応が正常に進行せず、カプセル化が十分に進行しなかったと推定された。
【0147】
比較例4においては、前記イソシアネートと前記ジイソシアネート変性体を併用したが、イソシアネートがポリメリックMDIではなかった(ポリメリックMDIが不使用であった)。そのため、壁材の形成時に重縮合反応が正常に進行せず、カプセル化が十分に進行しなかったと推定された。
【0148】
比較例5においては、ポリメリックMDIとイソシアネート変性体を併用したが、イソシアネート変性体が、前記ジイソシアネート変性体ではない、その他のジイソシアネート変性体であった(前記ジイソシアネート変性体が不使用であった)。そのため、壁材の形成時に重縮合反応が正常に進行せず、カプセル化が十分に進行しなかったと推定された。
【0149】
参考例1においては、重縮合反応の開始直後に、反応液がゲル化してしまい、カプセル化が進行しなかった。そのため、マイクロカプセルの平均粒子径と、生成物の昆虫忌避剤の内包率と、を求めることはできなかった。
参考例1においては、ポリメリックMDIと前記ジイソシアネート変性体を併用したが、昆虫忌避剤の使用量(配合量)100質量部対する、ポリメリックMDI及びジイソシアネート変性体の総使用量(総配合量)が70質量部であり、前記総使用量が多過ぎたことが、ゲル化の原因であると推定された。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、昆虫忌避作用の持続性が長い防虫剤として利用可能である。