IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

特許7424815指紋センシングシステムを駆動する方法、指紋センシングシステムを駆動する方法をコンピューターで実行させるためのプログラム、及び指紋センシングシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】指紋センシングシステムを駆動する方法、指紋センシングシステムを駆動する方法をコンピューターで実行させるためのプログラム、及び指紋センシングシステム
(51)【国際特許分類】
   G06V 40/13 20220101AFI20240123BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20240123BHJP
【FI】
G06V40/13
A61B5/1172
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019225490
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2020095726
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0162149
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫 景 顯
(72)【発明者】
【氏名】金 東 均
(72)【発明者】
【氏名】金 鎭 明
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-127192(JP,A)
【文献】特開2000-194848(JP,A)
【文献】特表2018-533101(JP,A)
【文献】特開2006-004350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/13
A61B 5/1172
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋センシングシステムを駆動する方法であって、
ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得する段階と、
前記獲得された部分映像から、指紋ピッチの分布を分析する段階と、
前記分析された指紋ピッチの分布に対応するスーパーピクセルの大きさに基づいて、前記ユーザに関し、前記指紋センシングシステムを駆動するための適応的解像度を決定する段階と、
前記決定された適応的解像度に前記指紋センシングシステムを設定する段階と、
前記決定された適応的解像度で駆動する前記指紋センシングシステムを利用してセンシングされた指紋領域に係わる前記ユーザの指紋映像を獲得する段階と、を含む方法。
【請求項2】
前記指紋ピッチの分布は、
前記指紋領域に含まれたリッジライン間のリッジ間隔の分布を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析する段階は、
前記ユーザに対して、最大指紋ピッチ、最も頻繁な指紋ピッチ、最小指紋ピッチ、及び平均指紋ピッチのうち少なくとも一つを分析することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定する段階は、
前記指紋センシングシステムによって支援される最大センシング解像度内で、前記分析された分布において、相対的に指紋ピッチが大きいと分析された場合、前記適応的解像度が低下されるように決定し、前記分析された分布において、相対的に指紋ピッチが小さいと分析された場合、前記適応的解像度が上昇されるように決定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記決定する段階は、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域をセンシングするとき、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差を最大にするためのサブピクセルの個数を決定することにより、前記スーパーピクセルの大きさを決定する段階を含み、
前記決定された適応的解像度は、
前記決定されたスーパーピクセルの大きさに反比例する相関関係を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記部分映像を獲得する段階は、
前記指紋センシングシステムによって支援される最大センシング解像度の半分の解像度で、前記指紋領域の一部に対してセンシングされた前記部分映像を獲得し、
前記決定する段階は、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域をセンシングするとき、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差を最大にするためのスーパーピクセルの大きさに対応するセンシング解像度を、前記適応的解像度に決定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記部分映像を獲得する段階は、
互いに異なる複数の候補適応的解像度それぞれにおいて、前記指紋領域の一部に対して複数回センシングされた、前記候補適応的解像度それぞれに対応する候補部分映像を獲得し、
前記決定する段階は、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域の一部が正確にセンシングされた順に前記候補部分映像をスコアリングする段階と、
前記スコアリング結果、前記候補部分映像のうち、最も正確にセンシングされた候補部分映像に対応する候補適応的解像度を、前記適応的解像度に決定する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分析された分布に対応する前記指紋センシングシステムのビニングサイズを決定する段階をさらに含み、
前記指紋映像を獲得する段階は、
前記決定された適応的解像度、及び前記決定されたビニングサイズに基づいて、前記指紋映像を獲得する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スーパーピクセルは、
前記決定されたビニングサイズにおいて、単位ビンに対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記決定された適応的解像度は、ユーザ別にマッピングされて決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記指紋映像を獲得する段階は、
前記ユーザが、前記指紋センシングシステムに、前記指紋映像を登録するために遂行されるか、あるいは前記指紋センシングシステムを利用し、前記ユーザを認証するために遂行される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法をコンピューターで実行させるためのプログラム。
【請求項13】
指紋センシングシステムであって、
コンピュータープログラムに従い、読み取り及び動作を遂行する少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによるアクセスのために、前記コンピュータープログラムの少なくとも一部分を保存する少なくとも1つのメモリと、を有し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得し、
前記獲得された部分映像から、指紋ピッチの分布を分析し、
前記分析された指紋ピッチの分布に対応するスーパーピクセルの大きさに基づいて、前記ユーザに関し、前記指紋センシングシステムを駆動するための適応的解像度を決定し、
前記決定された適応的解像度に前記指紋センシングシステムを設定し、
前記決定された適応的解像度で駆動する前記指紋センシングシステムを利用してセンシングされた指紋領域に係わる前記ユーザの指紋映像を獲得する指紋センシングシステム。
【請求項14】
前記指紋ピッチの分布は、
前記指紋領域に含まれたリッジライン間のリッジ間隔の分布を含む、請求項13に記載の指紋センシングシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記ユーザに対して、最大指紋ピッチ、最も頻繁な指紋ピッチ、最小指紋ピッチ、及び平均指紋ピッチのうち少なくとも一つを分析する、請求項13に記載の指紋センシングシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記指紋センシングシステムによって支援される最大センシング解像度内で、前記分析された分布において、相対的に指紋ピッチが大きいと分析された場合、前記適応的解像度が低下されるように決定し、前記分析された分布において、相対的に指紋ピッチが小さいと分析された場合、前記適応的解像度が上昇されるように決定する、請求項13~15のいずれか一項に記載の指紋センシングシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域をセンシングするとき、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差を最大にするためのサブピクセルの個数を決定することにより、前記スーパーピクセルの大きさを決定し、
前記決定された適応的解像度は、
前記決定されたスーパーピクセルの大きさに反比例する相関関係を有する、請求項16に記載の指紋センシングシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記指紋センシングシステムによって支援される最大センシング解像度の半分解像度で、前記指紋領域の一部に対してセンシングされた前記部分映像を獲得し、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域をセンシングするとき、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差を最大にするためのスーパーピクセルの大きさに対応するセンシング解像度を、前記適応的解像度に決定することを特徴とする請求項13~17のいずれか一項に記載の指紋センシングシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
互いに異なる複数の候補適応的解像度それぞれにおいて、前記指紋領域の一部に対して複数回センシングされた、前記候補適応的解像度それぞれに対応する候補部分映像を獲得し、
前記分析された分布に対し、前記指紋領域の一部が正確にセンシングされた順に前記候補部分映像をスコアリングし、前記スコアリング結果、前記候補部分映像のうち、最も正確にセンシングされた候補部分映像に対応する候補適応的解像度を、前記適応的解像度に決定する、請求項13に記載の指紋センシングシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記分析された分布に対応する前記指紋センシングシステムのビニングサイズをさらに決定し、
前記ビニングサイズが決定された場合、前記決定された適応的解像度、及び前記決定されたビニングサイズに基づいて、前記指紋映像を獲得し、
前記スーパーピクセルは、前記決定されたビニングサイズにおいて、単位ビンに対応する、請求項13~19のいずれか一項に記載の指紋センシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋センシングシステムを駆動する方法、指紋センシングシステムを駆動する方法をコンピューターで実行させるためのプログラム、及び指紋センシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋、音声、顔、手または虹彩のような個人の固有の特徴を利用した個人認証の必要性が徐々に高まっている。個人認証機能は、金融機器、出入り統制機、モバイル装置、ノート型パソコンなどで主に使用され、最近、スマートフォンのようなモバイル装置が広く普及したことにより、スマートフォン内に保存された多くのセキュリティ情報を保護するために、個人認証のための指紋認識技術が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-259956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、指紋認識のための指紋センシングシステムを駆動する方法、指紋センシングシステムを駆動する方法をコンピューターで実行させるためのプログラム、及び指紋センシングシステムを提供することである。本実施形態がなすべき技術的課題は、前述のような技術的課題に限定されるものではなく、以下の実施形態から他の技術的課題をも類推され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面によれば、指紋センシングシステムを駆動する方法は、ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得する段階と、前記獲得された部分映像から指紋ピッチの分布を分析する段階と、前記分析された分布に対応するスーパーピクセルの大きさに基づいて、前記ユーザに関し、前記指紋センシングシステムを駆動するための適応的解像度(adaptive resolution)を決定する段階と、前記決定された適応的解像度に前記指紋センシングシステムを設定する段階と、前記決定された適応的解像度で駆動する前記指紋センシングシステムを利用してセンシングされた指紋領域に係わる前記ユーザの指紋映像を獲得する段階と、を含む。
【0006】
他の側面によれば、上記方法をコンピューターで実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
さらに他の側面によれば、指紋センシングシステムは、コンピュータープログラムに従い、読み取り及び動作を遂行する少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサによるアクセスのために、前記コンピュータープログラムの少なくとも一部分を保存する少なくとも1つのメモリと、を含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得し、前記獲得された部分映像から指紋ピッチの分布を分析し、前記分析された分布に対応するスーパーピクセルの大きさに基づいて、前記ユーザに関し、前記指紋センシングシステムを駆動するための適応的解像度を決定し、前記決定された適応的解像度に前記指紋センシングシステムを設定し、前記決定された適応的解像度で駆動する前記指紋センシングシステムを利用してセンシングされた指紋領域に係わる前記ユーザの指紋映像を獲得する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】指紋映像生成システムの一例を図示した図面である。
図2】タッチパネルのノードそれぞれに対応する相互静電容量を概念的に示した図面である。
図3】一実施形態による、電子装置に搭載された指紋センシングのためのタッチパネルの側面図について説明するための図面である。
図4】一実施形態による指紋領域について説明するための図面である。
図5】一実施形態による、男性と女性との指紋ピッチの分布差について説明するためのグラフである。
図6】一実施形態による、図1の指紋センシングシステムにおいて、ユーザ指紋に係わる指紋ピッチの分布を考慮し、センシング解像度を適応的に決定する方法について説明するための図面である。
図7】一実施形態によって、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔCと指紋ピッチとを考慮し、適応的解像度を決定する方式について説明するための図面である。
図8】一実施形態によって、スーパーピクセルの大きさによる相互静電容量の変化量差ΔCについて説明するための図面である。
図9】一実施形態によって、指紋ピッチの分布によって適応的解像度を決定することについて説明するための図面である。
図10】部分映像を獲得して適応的解像度を決定する方法の一例である。
図11】部分映像を獲得して適応的解像度を決定する方法の他の一例である。
図12A】一実施形態によって、タッチパネルが互いに異なる適応的解像度で駆動される場合について説明するための図面である。
図12B】一実施形態によって、タッチパネルが互いに異なる適応的解像度で駆動される場合について説明するための図面である。
図12C】一実施形態によって、タッチパネルが互いに異なる適応的解像度で駆動される場合について説明するための図面である。
図13】一実施形態による、スーパーピクセルの大きさとビニングサイズ(binning size)との関係について説明するための図面である。
図14A】一実施形態によって、解像度調節なしに、ビニングサイズのみを変更する例示について説明するための図面である。
図14B】一実施形態によって、解像度調節なしに、ビニングサイズのみを変更する例示について説明するための図面である。
図15】一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に調節する場合について説明するための図面である。
図16A】一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に変更する例示について説明するための図面である。
図16B】一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に変更する例示について説明するための図面である。
図16C】一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に変更する例示について説明するための図面である。
図17】一実施形態による指紋センシングシステムを駆動する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態で使用される用語は、可能な限り、現在汎用されている一般的な用語を選択したが、それは、当分野に携わる技術者の意図、判例、または新たな技術の出現などによっても異なる。また、特定の場合、出願人が任意に選択した用語もあり、その場合、説明部分において、詳細にその意味を記載する。従って、明細書で使用される用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と、明細書の全般にわたる内容とを基に定義されなければならない。
【0010】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特記されない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。また、明細書に記載された「~部」、「~モジュール」というような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、あるいはハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0011】
以下では、添付した図面を参照し、本実施形態について詳細に説明する。しかし、本実施形態は、さまざまに異なる形態にも具現され、ここで説明する例に限定されるものではない。
【0012】
以下では、図面を参照し、本実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、指紋映像生成システムの一例を図示した図面である。
【0014】
図1を参照すれば、指紋センシングシステム10は、タッチパネル(touch panel)100、送信回路110、受信回路120、プロセッサ130、及びメモリ140を含む。図1の指紋センシングシステム10には、関連構成要素だけが図示されているが、他の汎用的な構成要素がさらに含まれてもよいということは、関連技術分野において当業者であるならば、理解することができるであろう。
【0015】
図1に図示されたプロセッサ130は、多数の論理ゲートのアレイによっても具現され、汎用的なマイクロプロセッサと、該マイクロプロセッサで実行されるプログラムが保存されたメモリとの組み合わせによっても具現される。一方、プロセッサ130は、少なくとも1つのプロセッサ(または、プロセッシングユニット)を含んでも具現される。また、それと異なる形態のハードウェア構成によってもプロセッサ130が具現されるということは、本実施形態が属する技術分野において当業者であるならば、理解することができるであろう。
【0016】
タッチパネル100は、複数の駆動電極Tx、及び複数の駆動電極Txと交差する方向に形成された複数の検出電極Rxを含む。図1においては、説明の便宜のために、駆動電極Tx及び検出電極Rxの個数がそれぞれ10個であるように図示されているが、それに制限されるものではなく、駆動電極Tx及び検出電極Rxの個数は、多様である。
【0017】
送信回路110は、駆動電極Txに駆動信号を印加するモジュールを含み、受信回路120は、検出電極Rxから電気信号を測定するモジュールを含み得る。
【0018】
タッチパネル100の駆動電極Txと検出電極Rxは、互いに交差する方向に形成され得る。図1は、例示的に、駆動電極Txと検出電極Rxとが互いに直交するように図示されているが、それに制限されるものではない。言い換えれば、駆動電極Txが形成された方向と、検出電極Rxが形成された方向との角度は、90°でなくてもよい。
【0019】
タッチパネル100上にユーザの指が接近すれば、タッチパネル100の駆動電極Txのそれぞれと、検出電極Rxとの相互静電容量(mutual capacitance)が異なり得る。例えば、ユーザの指の指紋パターンの特性により、タッチパネル100において、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノードそれぞれでの相互静電容量が互いに異なるように変わり得る。駆動電極Txの間隔、及び検出電極Rxの間隔が狭いほど、指紋領域をセンシングするためのセンシング解像度(sensing resolution)が高くなる。タッチパネル100上には、駆動電極Tx及び検出電極Rxを保護するための保護フィルムがさらに含まれてもよい。
【0020】
駆動電極Tx及び検出電極Rxは、線電極によっても構成される。また、駆動電極Txそれぞれは、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノード間に設けられた所定のパターンをさらに含んでもよい。前述のパターンは、多角形、円形のような多様な形態を有することができる。同様に、検出電極Rxそれぞれも、前述のノード間に設けられた所定のパターンをさらに含んでもよい。
【0021】
送信回路110は、駆動電極Txに駆動信号を印加することができる。例えば、送信回路110は、駆動電極Txそれぞれに電圧パルスを印加することができる。受信回路120は、検出電極Rxから電気信号を得ることができる。このとき、受信回路120は、検出電極Rxそれぞれに流れる電流を得るか、あるいは受信回路120は、検出電極Rxそれぞれの電位を得ることができる。
【0022】
プロセッサ130は、指紋センシングシステム10に含まれる送信回路110及び受信回路120の動作を全般的に制御する。例えば、プロセッサ130は、送信回路110が駆動電極Txそれぞれに印加する電圧パルスの大きさ、印加時間などを制御することができる。また、プロセッサ130は、駆動電極Txのうち一部に電圧パルスが印加されるように、送信回路110を制御することができる。
【0023】
プロセッサ130は、受信回路120が受信した電流または電位を利用し、ユーザ指紋と関連する映像データ、特徴点(minutiae)データなどを生成して処理することができる。例えば、プロセッサ130は、受信回路120が受信した電流または電位を利用し、指紋領域に対応する指紋映像データを生成及び処理し、映像データに含まれたピクセル値を分析し、特徴点データを生成及び処理することができる。
【0024】
一方、プロセッサ130は、指紋映像データ及び特徴点データを分析することにより、指紋センシングシステム10を駆動するためのセンシング解像度を、ユーザの指紋特性に合わせて適応的に変更させることができる。これと関連する説明は、以下、図面を参照し、さらに具体的に説明する。
【0025】
メモリ140は、プロセッサ130の動作に必要なコンピュータープログラムを保存する。例えば、メモリ140に保存されたコンピュータープログラム内の命令語により、プロセッサ130は、読み取り及び動作を遂行する。また、メモリ140は、タッチパネル100、送信回路110、受信回路120及びプロセッサ130が動作することによって生成されるデータ及びその他情報を保存することができる。図1には、指紋センシングシステム10が、1つのメモリ140を含むように図示されているが、それに制限されるものではなく、必要により、指紋センシングシステム10は、2以上のメモリを含んでもよい。
【0026】
図2は、タッチパネルのノードそれぞれに対応する相互静電容量を概念的に示した図面である。
【0027】
図2を参照すれば、駆動電極Txと検出電極Rxとの相互静電容量は、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差するノードに対応する。
【0028】
例えば、第1駆動電極Tx1と第1検出電極Rx1との相互静電容量C11は、第1駆動電極Tx1と第1検出電極Rx1とが交差するノードN11に対応する。同様に、m番目(ここで、mは、任意の自然数である)駆動電極Txmとn番目(ここで、nは、任意の自然数である)検出電極Rxnとの相互静電容量Cmnは、m番目駆動電極Txmとn番目検出電極Rxnとが交差するノードNmnに対応する。以下では、ノードNmnにおける相互静電容量は、m番目駆動電極Txmとn番目検出電極Rxnとの相互静電容量を意味する。
【0029】
駆動電極Txと検出電極Rxとにより、タッチパネル100において、複数のチャネルが定義される。例えば、あるチャネルは、駆動電極Txと検出電極Rxとが交差することによって形成されたノードに対応する。例えば、チャネルCH11は、ノードN11に対応する。
【0030】
複数のノードそれぞれにおける相互静電容量を測定するために、駆動電極Txそれぞれに順次に互いに異なる駆動信号を印加することができる。また、検出電極Rxそれぞれにおいて、個別的に電気信号を測定することができる。例えば、相互静電容量C11を測定しようとする場合、第1駆動電極Tx1にだけ駆動信号を印加し、第1検出電極Rx1で電気信号を測定し得る。同様に、相互静電容量Cmnを測定しようとする場合、m番目駆動電極Txmにだけ駆動信号を印加し、n番目検出電極Rxnで電気信号を測定し得る。
【0031】
それぞれのノードでの相互静電容量を測定するため、1つの駆動電極Txにだけ駆動信号を印加することができる。しかし、指紋センシングシステム10が、高解像度のセンシング解像度で駆動される場合、駆動電極Tx間の間隔が非常に狭くなる。駆動電極Tx間の間隔が狭くなれば、相互静電容量を測定する間に活性化されるチャネルCHの面積が狭くなる。活性化されるチャネルCHの面積が狭くなれば、獲得される信号の強度が弱くなり、ノードそれぞれで測定される相互静電容量の変化量が過度に小さくなり、正確な測定が困難になる。反対に、指紋センシングシステム10が低解像度のセンシング解像度で駆動される場合、駆動電極Tx間の間隔が非常に広くなるために、相互静電容量の変化量が過度に大きくなり(すなわち、活性化されるチャネルCHの面積が広くなる)、正確な測定が困難になる。従って、適切な大きさの相互静電容量の変化量と、適切なセンシング解像度との妥協が要求される。
【0032】
図3は、一実施形態による電子装置に搭載された指紋センシングのためのタッチパネルの側面図について説明するための図面である。
【0033】
図3を参照すれば、タッチパネル100は、パッシベーション膜(passivation layer)302、絶縁膜303及び基板304の層によって構成され、パッシベーション膜302と絶縁膜303との間には、検出電極Rx 310が形成され、絶縁膜303と基板304との間には、駆動電極Tx 320が形成される。
【0034】
電子装置30の前面には、タッチパネル100が具備され、タッチパネル100は、電子装置30を操作することができるタッチ入力インターフェースに該当する。また、タッチパネル100は、ユーザの指端301の指紋センシングのための指紋センサとしても動作することができる。このとき、タッチパネル100は、先の図1及び図2で説明されたように、リッジ(ridge)とバレー(valley)とのそれぞれに対して互いに異なる相互静電容量(すなわち、相互静電容量の変化量差)を検出することにより、ユーザの指紋パターンを認識することができ、それを介して、ユーザ指紋を識別することができる。
【0035】
一方、図3においては、説明の便宜のために、タッチパネル100が電子装置30の前面に具備され、電子装置30のタッチ入力インターフェース及び指紋センサとして動作する例示について図示されているが、それに制限されるものではなく、本実施形態によるタッチパネル100は、指紋映像生成システムのための指紋センサとしてだけ具現される。
【0036】
図4は、一実施形態による指紋領域について説明するための図面である。
【0037】
指紋領域400は、ユーザ別に固有な幾何学的パターンを有しているために、ユーザを識別するための手段に広く活用されている。
【0038】
図4を参照すれば、指紋領域400には、多数のリッジ(ridges)411とバレー(valleys)412とによって表現可能な特徴点が含まれる。リッジ411は、細部的に、リッジクロスオーバー(ridge crossover)、リッジコア(ridge core)、リッジ分岐(ridge bifurcation)、リッジエンディング(ridge ending)、リッジアイランド(ridge island)、リッジデルタ(ridge delta)、リッジポア(ridge pore)などを示し、それらは、ユーザを識別するための固有の特徴点とも解釈される。
【0039】
本明細書においては、リッジ411に該当する、リッジライン421及び422、または422及び423間のリッジ間隔(ridge interval)を指紋ピッチ(fingerprint pitch)424または425という用語で定義する。例えば、指紋ピッチ424は、あるリッジ(リッジライン421))の中心と、隣接する他のリッジ(リッジライン422)の中心との間隔に対応し、指紋ピッチ425は、あるリッジ(リッジライン422)の一端と、隣接する他のリッジ(リッジライン423)の他端との間隔に対応する。一方、他の例として、指紋ピッチ433は、バレー431及び432間の間隔に対応する。すなわち、指紋ピッチは、指紋領域において、リッジとバレーとの対が反復される周期(または、間隔)を意味する用語でもある。ただし、それに制限されるものではなく、指紋ピッチの用語は、他の用語でも代替されて呼称される。
【0040】
一方、指紋ピッチ424、425、433が大きい指紋であると、指紋ピッチ分布が分析された場合、指紋センシングシステム10が、比較的高解像度のセンシング解像度で駆動することになれば、ノードそれぞれで測定される相互静電容量の変化量が過度に小さくなり、正確な測定が困難であり、また指紋センシングシステム10の演算処理量が非効率的に高くなってしまう。反対に、指紋ピッチ424、425、433が小さい指紋であると、指紋ピッチ分布が分析された場合、指紋センシングシステム10が、比較的低解像度のセンシング解像度で駆動することになれば、ノードそれぞれにおいて測定される相互静電容量の変化量が、指紋領域400に含まれたリッジ411及びバレー412を正確に反映させることができない。
【0041】
一実施形態によるプロセッサ130(図1)は、指紋センシングシステム10が、ユーザ指紋に対して最適化されたセンシング解像度で駆動されるように、ユーザの指紋領域400に含まれた指紋ピッチ424、425、433の分布を分析し、指紋センシングシステム10のセンシング解像度を適応的に変更することができる。
【0042】
図5は、一実施形態による男性と女性との指紋ピッチ分布差について説明するためのグラフである。
【0043】
図5のグラフ500を参照すれば、人の指紋において、指紋ピッチ(例えば、リッジ間隔)の分布は、性別、年齢などにより、異なる分布を有することができる。具体的には、女性の最小指紋ピッチは、約357μmであり、女性の最頻指紋ピッチ520は、約435μmである。それと異なり、男性の最頻指紋ピッチ510は、約476μmであり、男性の最大指紋ピッチは約556μmである。従って、男性と女性との指紋ピッチに係わる分布を考慮せず、男性と女性とのいずれにも対し、同じセンシング解像度(すなわち、駆動電極Tx,Rxの大きさ、または活性化されるチャネルCHの面積)で指紋映像を獲得することになる場合、指紋映像の画質が低くなったり、不要な演算処理が行われたりする。それにより、さらに効率的であって正確な指紋映像の処理のためには、指紋ピッチ(リッジ間隔またはバレー間隔)の分布を考慮した指紋センシングが必要である。
【0044】
図6は、一実施形態による図1の指紋センシングシステムにおいて、ユーザ指紋に係わる、指紋ピッチの分布を考慮し、センシング解像度を適応的に決定する方法について説明するための図面である。
【0045】
段階601において、プロセッサ130は、タッチパネル100により、ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得する。このとき、ユーザ指紋領域の一部は、指紋領域の中央及びその周辺を含む領域であることが望ましいが、それに制限されるものではなく、ユーザの指紋領域から指紋ピッチを分析することができる領域である場合には、異なる位置の領域でもよい。また、部分映像を獲得しようとする指紋領域の一部に係わる範囲及び位置は、指紋ピッチを分析することができる限り、多様に変更され得る。
【0046】
段階602において、プロセッサ130は、獲得された部分映像から、指紋ピッチの分布(以下、「指紋ピッチ分布」とも称する)を分析する。ここで、指紋ピッチの分布は、指紋領域に含まれたリッジライン間のリッジ間隔の分布を含む。または、それに制限されるものではなく、指紋ピッチの分布は、指紋領域に含まれたバレーライン間のバレー間隔の分布にも該当する。指紋ピッチ分布の分析結果、当該ユーザの指紋領域に係わる最大指紋ピッチ(例えば、リッジライン間の最大間隔)、最も頻繁な指紋ピッチ(例えば、リッジライン間の最頻間隔)、最小指紋ピッチ(例えば、リッジライン間の最小間隔)、及び平均指紋ピッチ(例えば、リッジライン間の平均間隔)などが分析される。
【0047】
一方、ユーザ別に指紋ピッチ分布が固有に異なるので、分析された指紋ピッチ分布は、ユーザ別にマッピングされ、メモリ140に保存される。
【0048】
段階603において、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に対応するスーパーピクセル(super-pixel)の大きさに基づいて、ユーザに対して、指紋センシングシステム10を駆動するための適応的解像度(adaptive resolution)を決定する。
このとき、プロセッサ130は、指紋センシングシステム10によって提供される最大センシング解像度内で、分析された指紋ピッチ分布において、相対的に指紋ピッチが大きいと分析された場合、適応的解像度が低下するように決定し、分析された指紋ピッチ分布において、相対的に指紋ピッチが小さいと分析された場合、適応的解像度が上昇するように決定することができる。先の図5のグラフ500を例として挙げれば、プロセッサ130は、ユーザが男性である場合には、ユーザが女性である場合より、低解像度のセンシング解像度で指紋センシングシステム10が駆動されるように、適応的解像度を決定することができ、反対に、ユーザが女性である場合には、ユーザが男性である場合より高解像度のセンシング解像度で指紋センシングシステム10が駆動されるように、適応的解像度を決定することができる。ただし、そのような男性と女性との比較は、端的な例であり、女性が男性より指紋ピッチの大きい場合もあるので、プロセッサ130は、単に、ユーザの性別または年齢に基づいて、適応的解像度を決定しなくてもよい。
【0049】
プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に関して指紋領域をセンシングするとき、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差を最大にするためのサブピクセルの個数を決定することにより、スーパーピクセルの大きさを決定する。ここで、1つのサブピクセルは、先の図1及び図2で説明された1つのノードに対応する用語である。そして、スーパーピクセルは、複数のサブピクセル(すなわち、複数のノード)がグルーピングされて形成されたサブピクセルアレイを意味する用語である。
【0050】
高解像度のセンシング解像度を有するタッチパネル100の場合、複数の駆動電極Tx間の間隔、及び複数の検出電極Rx間の間隔が非常に狭くなる。相互静電容量方式のタッチパネル100には、カバーガラス(cover glass)が具備され、最近では、数百μm以上の厚いカバーガラスが利用されている。このとき、相互静電容量の変化量は、パッシベーション膜厚の二乗に反比例するために、数百μm以上のパッシベーション膜下電極が配置される場合、指紋のリッジとバレーとによる相互静電容量の変化量差を正確に検出し難い。そのために、駆動電極Txにおいて、隣接する複数の駆動電極Txをグルーピングし、検出電極Rxにおいて、隣接する複数の検出電極Rxをグルーピングし、グループ単位で(すなわち、複数の駆動/検出電極)相互静電容量を測定し、指紋をセンシングする方式が、スーパーピクセルを利用するセンシング方式に該当する。
【0051】
適応的解像度は、スーパーピクセルの大きさに反比例する相関関係を有する。すなわち、スーパーピクセルの大きさが大きくなるほど、1つのグループに含まれるサブピクセル(駆動電極/検出電極)の個数が多くなるために、適応的解像度は、低くなる。
【0052】
一方、プロセッサ130は、ユーザ別に、指紋ピッチ分布が固有に異なるように分析されるので、適応的解像度をユーザ別にマッピングして決定する。
【0053】
段階604において、プロセッサ130は、決定された適応的解像度に指紋センシングシステム10を設定する。例えば、プロセッサ130は、指紋センシングシステム10によって提供される最大センシング解像度内において、第1解像度、第2解像度、…、第N解像度(Nは、自然数である)のうちいずれか1つの解像度でもって、当該ユーザに対して指紋センシングを行うように、適応的解像度を設定する。図6の例によれば、第1解像度から第N解像度に行くほど、センシング解像度が低下するように例示され、それにより、狭い指紋ピッチの指紋611と分析された場合、プロセッサ130は、第1解像度(高解像度)に指紋センシングシステム10を設定することができ、または、広い指紋ピッチの指紋612と分析された場合、プロセッサ130は、第N解像度(低解像度)に指紋センシングシステム10を設定することができる。
【0054】
一方、第1解像度(高解像度)に指紋センシングシステム10が設定される場合、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差が小さいので、プロセッサ130は、指紋処理のためのパラメータである積分回数を高め、相互静電容量の変化量差を増大させるが、指紋処理速度が若干遅くなる。それと異なり、第N解像度(低解像度)に指紋センシングシステム10が設定される場合、プロセッサ130は、相互静電容量の変化量差が大きいので、積分回数パラメータをさらに低く設定し、指紋処理速度を速めることができる。
【0055】
段階605において、プロセッサ130は、設定された適応的解像度で駆動する指紋センシングシステム10を利用してセンシングされたユーザの指紋領域に係わるユーザの指紋映像を獲得する。段階601においては、指紋ピッチ分布分析のために、ユーザ指紋領域の一部だけがセンシングされたが、それと異なり、段階605においては、当該ユーザの全体的な指紋領域がセンシングされる。
【0056】
例えば、設定された適応的解像度が第1解像度(高解像度)である場合、狭い指紋ピッチを有する指紋映像621が獲得され、設定された適応的解像度が第N解像度(低解像度)である場合、広い指紋ピッチを有する指紋映像622が獲得される。
【0057】
段階606において、プロセッサ130は、獲得された指紋映像でユーザを登録(enroll)するか、あるいは獲得された指紋映像でユーザを認証(authenticate)する。
【0058】
図7は、一実施形態により、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔCと指紋ピッチとを考慮し、適応的解像度を決定する方法について説明するための図面である。
【0059】
図7によれば、プロセッサ130は、センシング解像度を変更するための基準として、相互静電容量の基準変化量差ΔCREFを任意の値に設定することができる。具体的には、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチに対応する相互静電容量の変化量差ΔCが基準変化量差ΔCREFを超える場合には、さらに高いセンシング解像度に適応的解像度を決定し、基準変化量差ΔCREF未満である場合には、さらに低いセンシング解像度に適応的解像度を決定することができる。
【0060】
一方、相互静電容量の変化量差ΔC及び基準変化量差ΔCREFは、サブピクセルに係わる変化量差を意味するが、複数のサブピクセルで構成されたスーパーピクセルに係わる変化量差をも意味する。
【0061】
すなわち、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に対応する適応的解像度を決定するときには、スーパーピクセルの大きさと、当該スーパーピクセルでの相互静電容量の変化量差ΔCとを同時に考慮し、適応的解像度を決定することができる。
【0062】
図8は、一実施形態によって、スーパーピクセルの大きさによる相互静電容量の変化量差ΔCについて説明するための図面である。
【0063】
図8を参照すれば、プロセッサ130は、先の図7で説明されたように、スーパーピクセルの大きさと、当該スーパーピクセルでのリッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔCとを同時に考慮し、適応的解像度を決定することができる。
【0064】
ただし、図8のグラフ800に図示されたように、指紋ピッチ456μmを有する指紋について、スーパーピクセルの大きさが一定臨界サイズ(例えば、270μm)より大きくなる場合には、むしろ相互静電容量の変化量差ΔC(すなわち、サンプリングレート(sampling rate))が低くなる結果がもたらされる。従って、プロセッサ130は、適応的解像度を決定するために、相互静電容量の変化量差ΔCと、スーパーピクセルの大きさとの相関関係において、相互静電容量の変化量差ΔCを最大にするスーパーピクセルの大きさを決定することができる。
【0065】
図9は、一実施形態によって、指紋ピッチの分布により適応的解像度を決定することについて説明するための図面である。
【0066】
図9を参照すれば、指紋ピッチ分布の分析結果(900)、指紋ピッチ320μmの指紋(狭い指紋ピッチの女性)、指紋ピッチ428μmの指紋(女性の平均指紋ピッチ)、指紋ピッチ556μmの指紋(広い指紋ピッチの男性)について図示されている。全ての場合において、センシング解像度が最も高い場合(すなわち、500ppi(51μm))、センシングの正確度は、最も高くなる。ただし、センシング解像度が最も高い場合(すなわち、500ppi(51μm))には、プロセッサ130の処理速度が最も遅くなる。それは、前述の積分回数が増加し、出力電圧(gain)データの処理量が多くなるからである。従って、プロセッサ130は、センシングの正確度、及び処理速度を共に考慮することにより、最適の適応的解像度を決定することができる。
【0067】
まず、指紋ピッチ320μmの指紋(狭い指紋ピッチの女性)に対する、500ppi(51μm)、350ppi(73μm)、250ppi(102μm)及び200ppi(127μm)それぞれの場合に係わる指紋センシングの結果について説明すれば、センシング解像度が低くなるほど、指紋センシングの正確度が急激に低くなることが分かる。従って、プロセッサ130は、指紋センシングの正確度を考慮し、500ppi(51μm)を適応的解像度910に決定することができる。
【0068】
次に、指紋ピッチ428μmの指紋(女性の平均指紋ピッチ)に対する、500ppi(51μm)、350ppi(73μm)、250ppi(102μm)及び200ppi(127μm)それぞれの場合に係わる指紋センシングの結果について説明すれば、センシング解像度が少し低くなっても、指紋センシングの正確度も、若干低くなるだけである。しかし、センシング解像度が少し低くなっても、プロセッサ130の処理速度が上昇するという効果があるので、プロセッサ130は、350ppi(73μm)を適応的解像度920に決定することができる。
【0069】
最後に、指紋ピッチ556μmの指紋(広い指紋ピッチの男性)に対する、500ppi(51μm)、350ppi(73μm)、250ppi(102μm)及び200ppi(127μm)それぞれの場合に係わる指紋センシングの結果について説明すれば、センシング解像度が比較的大きく低下しても、指紋センシングの正確度は大きく低下しない。従って、プロセッサ130は、処理速度を考慮し、250ppi(102μm)を適応的解像度930に決定することができる。
【0070】
プロセッサ130は、図9で説明された方式、すなわち、指紋センシングの正確度と、プロセッサ130の処理速度とを考慮する方式を利用することにより、プロセッサ130が最も効率的に最適の指紋映像を獲得することができる最適の適応的解像度を決定することができる。
【0071】
図10は、部分映像を獲得し、適応的解像度を決定する方法の一例である。
【0072】
段階1001において、プロセッサ130は、指紋センシングシステム10によって提供される最大センシング解像度の半分(half)解像度で、指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得する。すなわち、指紋センシングシステム10は、部分映像の獲得のために、指紋センシングシステム10の基本センシング解像度(すなわち、最大センシング解像度)で指紋領域の一部をセンシングせず、さらに迅速な処理速度で部分映像が獲得されるように、半分解像度で指紋センシングを行うことができる。
【0073】
段階1002において、プロセッサ130は、部分映像から、指紋ピッチの分布を分析する。
【0074】
段階1003において、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に対して指紋領域をセンシングするとき、相互静電容量の変化(すなわち、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔC)を最大にするためのスーパーピクセルの大きさに対応するセンシング解像度を適応的解像度に決定する。
【0075】
図11は、部分映像を獲得し、適応的解像度を決定する方法の他の一例である。図11は、図10と異なる方法で部分映像を獲得し、適応的解像度を決定する方法に関する。
【0076】
段階1101において、プロセッサ130は、互いに異なる複数の候補適応的解像度それぞれで、指紋領域の一部に対して複数回センシングされた、候補適応的解像度それぞれに対応する候補部分映像を獲得する。
【0077】
段階1102において、プロセッサ130は、候補部分映像それぞれから、指紋ピッチの分布を分析する。
【0078】
段階1103において、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に対し、指紋領域の一部が正確にセンシングされた順に、候補部分映像をスコアリングする。
【0079】
段階1104において、プロセッサ130は、スコアリング結果、候補部分映像のうち、最も正確にセンシングされた候補部分映像に対応する候補適応的解像度を適応的解像度に決定する。
【0080】
一方、図10及び図11で説明された方法は、例示に過ぎないのであって、本実施形態による、部分映像を獲得し、適応的解像度を決定する方法は、これらに制限されるものではなく、部分映像の獲得、指紋ピッチ分布の分析、及び適応的解像度の決定に係わる前述のプロセスが遂行される限り、図10及び図11で説明された方法以外の多様な方法によっても遂行され得る。
【0081】
図12Aないし図12Cは、一実施形態によって、タッチパネルが互いに異なる適応的解像度で駆動される場合について説明するための図面である。
【0082】
図12Aないし図12Cを参照すれば、タッチパネル100が提供する最大センシング解像度は、1,016ppiであり、ピッチは、25μmであると仮定する。
【0083】
図12Aを参照すれば、指紋ピッチ分布の分析結果、プロセッサ130は、スーパーピクセル1201は、50μmピッチ(=25μmx2)を有すると決定することができる。それにより、スーパーピクセル1201の大きさは、2x2サブピクセルアレイに該当する。すなわち、スーパーピクセル1201は、2個の駆動電極Tx1と、2個の検出電極Rx1とがグルーピングされたものでもある。それにより、プロセッサ130は、スーパーピクセル1201に対応する適応的解像度は、508ppi(=1,016ppi/2)であると決定することができる。
【0084】
図12Bを参照すれば、指紋ピッチ分布の分析結果、プロセッサ130は、スーパーピクセル1202の大きさを75μmピッチ(=25μmx3)であると決定することができる。それにより、スーパーピクセル1202の大きさは、3x3サブピクセルアレイに該当する。すなわち、スーパーピクセル1202は、3個の駆動電極Tx1と、3個の検出電極Rx1とがグルーピングされたものでもある。それにより、プロセッサ130は、スーパーピクセル1202に対応する適応的解像度は、339ppi(≒1,016ppi/3)であると決定することができる。
【0085】
図12Cを参照すれば、指紋ピッチ分布の分析結果、プロセッサ130は、スーパーピクセル1203の大きさを100μmピッチ(=25μmx4)であると決定することができる。それにより、スーパーピクセル1203の大きさは、4x4サブピクセルアレイに該当する。すなわち、スーパーピクセル1203は、4個の駆動電極Tx1と、4個の検出電極Rx1とがグルーピングされたものでもある。それにより、プロセッサ130は、スーパーピクセル1203に対応する適応的解像度は、254ppi(=1,016ppi/4)であると決定することができる。
【0086】
図12Aないし図12Cで説明された方法と類似し、タッチパネル100の駆動電極Tx及び検出電極Rxは、多様な大きさのスーパーピクセルを構成するためにグルーピングされ、プロセッサ130は、指紋ピッチ分布の分析結果により、そのようにグルーピングされたスーパーピクセルを利用してセンシングされた指紋映像を獲得することにより、さらに効率的にユーザ別に最適化された指紋センシングを行うことができる。
【0087】
図13は、一実施形態によるスーパーピクセルの大きさと、ビニングサイズ(binning size)との関係について説明するための図面である。
【0088】
図13を参照すれば、254ppiのセンシング解像度において、互いに異なるビニングサイズでのリッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔCと、指紋ピッチとの関係について図示されている。
【0089】
指紋において指紋ピッチが小さい場合(女性の最小指紋ピッチ(例えば、356μm))には、ビニングサイズが大きければ、ぼやけ(blurred)指紋映像を獲得することになる。すなわち、図13に図示されたように、相互静電容量の変化量差ΔCが、2x2ビニングサイズにおいて、3x3ビニングサイズより大きいことが分かる。それと異なり、指紋ピッチが390μm以上と広くなった場合には、ビニングサイズが大きいとき(すなわち、3x3ビニングサイズ)、さらに高い感度の指紋映像が獲得される可能性があるということが分かる。
【0090】
従って、プロセッサ130は、前述の適応的解像度の決定と共に、ビニングサイズを同時に調節することにより、さらに効率的に最適化された指紋映像を獲得することができる。
【0091】
図14A及び図14Bは、一実施形態によって、解像度調節なしに、ビニングサイズのみを変更する例示について説明するための図面である。
【0092】
図14Aを参照すれば、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に基づいて、当該指紋ピッチに最適化されたビニングサイズが2x2であると決定することができる。このとき、1つのビン(bin)1401は、2個の駆動電極Tx1及びTx2と、2個の検出電極Rx1及びRx2とがグルーピングされたものである。他のビン1402及び1403それぞれは、1つの電極ずつ隣接する位置において、同一サイズの電極アレイにもグルーピングされる。
【0093】
図14Bを参照すれば、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に基づいて、当該指紋ピッチに最適化されたビニングサイズが3x3であると決定することができる。このとき、1つのビン1411は、3個の駆動電極Tx1、Tx2及びTx3と、3個の検出電極Rx1、Rx2及びRx3とがグルーピングされたものである。
【0094】
図15は、一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に調節する場合について説明するための図面である。
【0095】
図15を参照すれば、1,016ppiセンシング解像度を有する指紋センシングシステム10において、適応的解像度とビニングサイズとを同時に調節する場合、それぞれに関連するスーパーピクセルの大きさ(すなわち、ピッチ)が例示的に説明されている。
【0096】
先の図8及び図13で説明されたところを総合すれば、リッジとバレーとの相互静電容量の変化量差ΔCを最大にするスーパーピクセルの大きさ(すなわち、ピッチ)において、適応的解像度及びビニングサイズを同時に決定し、そのように決定された適応的解像度及びビニングサイズを利用し、指紋センシングを行うことにより、最適の指紋映像が獲得される。
【0097】
プロセッサ130は、適応的解像度とビニングサイズとを同時に調節する場合での相互静電容量の変化量差ΔCを最大にするスーパーピクセルの大きさ(すなわち、ピッチ)によって分析された指紋ピッチ分布に対応する指紋センシングシステム10のビニングサイズをさらに決定する。その後、プロセッサ130は、先に決定された適応的解像度、及びさらに決定されたビニングサイズに基づいて、指紋センシングシステム10を設定して指紋映像を獲得する。
【0098】
図16Aないし図16Cは、一実施形態によって、適応的解像度とビニングサイズとを同時に変更する例示について説明するための図面である。
【0099】
図16Aないし図16Cを参照すれば、25μmピッチの1,016ppi解像度を有する指紋センシングシステム10において、508ppi適応解像度に設定されながら、多様なビニングサイズに駆動される場合について図示されている。
【0100】
図16Aを参照すれば、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に基づいて、適応的解像度決定のためのスーパーピクセルの大きさは、2x2(すなわち、50μm(=25μmx2ピッチ)であり、ビニングサイズは、2x2であると決定することができる。すなわち、適応的解像度決定のための1つのスーパーピクセルは、2個の駆動電極Tx1と、2個の検出電極Rx1とがグルーピングされたものであり、1つのスーパーピクセルは、ビニングサイズでの単位ビン(unit bin)に該当する。一方、ビニングサイズが2x2であるので、結局、4個の駆動電極Tx1及びTx2を含む駆動電極グループ(Tx1&2)、及び4個の検出電極Rx1及びRx2を含む検出電極グループ(Rx1&2)に対応する2x2個のスーパーピクセルがグルーピングされ、指紋センシングのための1つのビン1601が構成される。他のビン1602及び1603も、1つのスーパーピクセルの大きさほど隣接する位置で構成される。
【0101】
図16Bを参照すれば、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に基づいて、適応的解像度の決定のためのスーパーピクセルの大きさは、2x2(すなわち、50μm(=25μmx2ピッチ)であり、ビニングサイズは、3x3であると決定することができる。図16Aで説明された方法に類似し、6個の駆動電極Tx1,Tx2及びTx3を含む駆動電極グループ(Tx1&2&3)、及び6個の検出電極Rx1,Rx2及びRx3を含む検出電極グループ(Rx1&2&3)に対応する3x3個のスーパーピクセルがグルーピングされ、指紋センシングのための1つのビン1611が構成される。
【0102】
図16Cを参照すれば、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に基づいて、適応的解像度の決定のためのスーパーピクセルの大きさは、2x2(すなわち、50μm(=25μmx2ピッチ)であり、ビニングサイズは、4x4であると決定することができる。図16Aで説明された方法に類似し、8個の駆動電極Tx1,Tx2,Tx3及びTx4を含む駆動電極グループ(Tx1&2&3&4)、及び8個の検出電極Rx1,Rx2,Rx3及びRx4を含む検出電極グループ(Rx1&2&3&4)に対応する4x4個のスーパーピクセルがグルーピングされ、指紋センシングのための1つのビン1621が構成される。
【0103】
一方、図16Aないし図16Cに図示されたところ以外にも、指紋センシングシステム10は、多様なスーパーピクセルの大きさ(すなわち、適応的解像度)、及びビニングサイズによっても駆動される。
【0104】
図17は、一実施形態による指紋センシングシステムを駆動する方法のフローチャートである。図17を参照すれば、指紋センシングシステムの駆動方法は、前述の指紋センシングシステム10において、時系列的に処理される段階によって構成される。従って、以下で省略された内容であるとしても、前述の図面で記述された内容は、図17の方法にも適用される。
【0105】
段階1701において、プロセッサ130は、ユーザ指紋領域の一部に対してセンシングされた部分映像を獲得する。
【0106】
段階1702において、プロセッサ130は、獲得された部分映像から、指紋ピッチの分布を分析する。ここで、プロセッサ130は、当該ユーザに対して、最大指紋ピッチ、最も頻繁な指紋ピッチ、最小指紋ピッチ、及び平均指紋ピッチのうち少なくとも一つを指紋ピッチ分布の分析結果として出力することができる。
【0107】
段階1703において、プロセッサ130は、分析された指紋ピッチ分布に対応するスーパーピクセルの大きさに基づいて、ユーザに対して、指紋センシングシステム10を駆動するための適応的解像度を決定する。
【0108】
段階1704において、プロセッサ130は、決定された適応的解像度に指紋センシングシステム10を設定する。
【0109】
段階1705において、プロセッサ130は、決定された適応的解像度で駆動する指紋センシングシステム10を利用してセンシングされた指紋領域に係わるユーザの指紋映像を獲得する。
【0110】
一方、前述の方法はコンピューターで実行されるプログラムで作成可能であり、コンピューターで読み取り可能な記録媒体を利用し、前記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピューターによっても具現される。また、前述の方法で使用されたデータの構造は、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に、多くの手段を介しても記録される。前述のコンピューターで読み取り可能な記録媒体は、記録媒体(例えば、ROM(read-only memory)、RAM(random access memory)、USB(universal serial bus)、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光学的読み取り媒体(例えば、CD-ROM(compact disc read only memory)、DVD(digital versatile disc)など)のような記録媒体を含む。
【0111】
本実施形態と係わる技術分野で当業者であるならば、前述の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態に具現されるということを理解することができるであろう。従って、開示された方法は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならず、権利範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての互いに異なる構成を含むものであると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0112】
10 指紋センシングシステム
30 電子装置
100 タッチパネル
110 送信回路
120 受信回路
130 プロセッサ
140 メモリ
301 ユーザの指端
302 パッシベーション膜
303 絶縁膜
304 基板
310 検出電極
320 駆動電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図17