IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙クレシア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品 図1
  • 特許-吸収性物品 図2
  • 特許-吸収性物品 図3
  • 特許-吸収性物品 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61F13/494 113
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237181
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104222
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-086494(JP,A)
【文献】特開2000-271169(JP,A)
【文献】特開2003-033395(JP,A)
【文献】特開2011-136094(JP,A)
【文献】特開2015-188542(JP,A)
【文献】米国特許第03924626(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の幅方向両側において長手方向に沿って配設された立体ギャザーシートを含む立体ギャザーを更に備え、
前記立体ギャザーシートは、複合型不織布と、前記複合型不織布に担持された高吸収性ポリマーと、を含む、高吸収性シートを備え、
前記複合型不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含み、
前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の前記トップシートの肌側面を臨む位置に、前記吸収性物品の長手方向に延びる一対の起立性自由端を有し、前記起立性自由端の先端及びその近傍において、前記高吸収性シートを前記パルプ繊維ウェブの面を内側にして折り返した折返し部を更に備えることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記折返し部は、その内部に閉空間を有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記立体ギャザーシートは、前記高吸収性シートの幅方向外側に配設され、前記吸収性物品の長手方向に沿って延びる、撥水性及び/又は防水性のシートを更に備え、
前記高吸収性シートは、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウェブが前記立体ギャザーシートの厚み方向内側に位置し、かつ前記スパンボンド不織布が前記トップシートの肌側面を臨むように配設されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高吸収性シートは、前記複合型不織布と、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウェブの表面に接着固定された前記高吸収性ポリマーと、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高吸収性シートは、幅方向の一端及びその周辺において、前記吸収性物品の長手方向に延びるように配設された弾性伸縮部材を更に備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収性物品では、尿、便等の体液の横漏れを防止するために、立体ギャザーを利用した技術が提案されている。特に、外部への漏れ防止に関しては、以下の様々な技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ウエスト用バリヤーカフスを有する吸収性物品において、バリヤーシートを二重にしてバリヤーカフスを形成するとともに、バリヤーシート間の長手方向における遠位縁近傍と近位縁近傍とに、弾性伸縮部材をそれぞれ設ける構造が開示されている。この構造により、吸収性物品の肌側面に補助パッドを重ねた場合でも、ウエスト部での漏れが防止されると記載されている。
【0004】
特許文献2には、吸収体とギャザーシートと不透液性フィルム材と表面シートとによって囲まれ、軟便等の体液を一旦貯留可能な断面視略三角形状の空間部を備え、排泄された体液を該空間部に一旦貯留して吸収体に吸収させるように構成した吸収性物品が開示されている。この構成により、体液、特に軟便漏れが低減すると記載されている。
【0005】
特許文献3には、二対の吸収性物品において、吸収体の長手方向両側縁に沿って、不透液性のシートからなる第一の立体ギャザーと、その外側に第二の立体ギャザーとを備え、両立体ギャザーの幅方向における起立点間に間隔を設け、起立点間の部位においる透液性の表面シートを露出させる構造が開示されている。この構造により、内側の第一の立体ギャザーを超えて第二の立体ギャザーで堰き止められた体液を、露出した部位の表面シートから内部の吸収体に吸収させることができ、漏れが防止されるとともに、吸収体への捕集性が向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-293032号公報
【文献】特開2007-143874号公報
【文献】特開2011-206108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の吸収性物品では、比較的短い時間で何度も繰り返し排出される、大量の尿や軟便の漏れを確実に防止することは難しいという課題が依然として存在する。さらに、吸収性物品には、体液を外部に漏らさずに吸収するだけでなく、体液の皮膚への戻りが少ないことが品質として求められている。
【0008】
本発明の目的は、大量に排出された尿や軟便を吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、吸収体の長手方向両側縁に沿って形成した立体ギャザーの厚み方向内側に、長手方向に延び、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう)を担持した所定の複合型不織布である、高吸収性シートを配設することにより、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(7)の吸収性物品を提供する。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収性物品の幅方向両側において長手方向に沿って配設された立体ギャザーシートを含む立体ギャザーを更に備え、前記立体ギャザーシートは、複合型不織布と、前記複合型不織布に担持された高吸収性ポリマーと、を含む、高吸収性シートを備え、前記複合型不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含むことを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記高吸収性シートは、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウェブが前記立体ギャザーシートの厚み方向内側に位置し、かつ前記スパンボンド不織布が前記トップシートの肌側面を臨むように配設されている、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記立体ギャザーは、前記吸収性物品の前記トップシートの肌側面を臨む位置に、前記吸収性物品の長手方向に延びる一対の起立性自由端を有し、前記起立性自由端の先端及その近傍において、前記高吸収性シートを前記パルプ繊維ウェブの面を内側にして折り返した折返し部を更に備える、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記折返し部は、その内部に閉空間を有する、上記(3)の吸収性物品。
(5)前記高吸収性シートは、前記複合型不織布と、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウェブの表面に接着固定された前記高吸収性ポリマーと、を含む、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記高吸収性シートは、幅方向の一端及びその周辺において、前記吸収性物品の長手方向に延びるように配設された弾性伸縮部材を更に備える、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記立体ギャザーシートは、前記高吸収性シートの幅方向外側に配設され、前記吸収性物品の長手方向に沿って延びる、撥水性及び/又は防水性のシートを更に含む、上記(1)~(6)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大量に排出された尿や軟便を吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示す吸収性物品のX-X切断線における模式断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す断面図である。
図4図1及び図3に示す吸収性物品に備わる高吸収性シートの構成を示す模式図である。(a)は斜視図、(b)は厚み方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本実施形態の吸収性物品1、2について詳細に説明する。図1は、トップシート10側から見た模式平面図として、第一実施形態に係る収性物品1を示す。図2は吸収性物品1のX-X切断線による模式断面図である。図3は、第二実施形態に係る吸収性物品2を示す模式断面図である。図4は、高吸収性シート14の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は厚み方向断面図である。各図では、各構成部材が密接しているように記載しているが、各構成部材間の少なくとも1つに1又は複数の隙間が生じる場合もある。また、各図は、吸収性物品1、2の各構成部材の長手方向及び幅方向の寸法の大小関係を規定するものではない。
【0014】
本明細書において、吸収性物品1の着用時とは、体液吸収の前後を問わず吸収性物品1を身体に装着している状態をいう。吸収性物品1は、通常衣類の内部で身体に装着されるものであるが、少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。吸収性物品1の長手方向は、吸収性物品1を着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後にわたる方向であり、図中符号Yで示す。吸収性物品1の幅方向は、長手方向に対してほぼ直交する方向(幅方向)であり、図中符号Xで示す。吸収性物品1の厚み方向は、トップシート10、吸収体11、及びバックシート12といった各構成部材の積層方向であり、図中符号Zで示す。また、吸収性物品1及び各構成部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌に接する面又は着用者の肌を臨む面を肌側面とし、着用時に着用者の衣服に接する面又は着用者の衣服を臨む面を非肌側面とする。また、本明細書では、すべての実施形態において、同一又は類似の機能及び/又は作用効果を有する構成部材には同一の参照符号を付し、第一実施形態の説明を援用する。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。以上は、吸収性物品2でも同様である。
【0015】
吸収性物品1、2は、ベビー用又は成人用を問わず、種々の用途の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ、使い捨ての紙おむつ等が挙げられる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1、2とを組み合わせてもよい。本実施形態の吸収性物品1、2は特に使い捨ての紙おむつ等として好適に使用できる。吸収性物品1、2の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1、2の寸法を前記の範囲に調整することにより、種々の用途に使用できる。
【0016】
[吸収性物品]
図1図2に示す本実施形態の吸収性物品1は、着用時に肌側に位置する液透過性のトップシート10と、着用時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート10とバックシート12との間に設けられた吸収体11と、立体ギャザー15と、を備える。ここで、立体ギャザー15は、吸収性物品1の幅方向両側端部及びその周辺に配設され、吸収性物品1の長手方向に延びる立体ギャザーシートを含み、立体ギャザーシートは、複合型不織布25と、複合型不織布25に担持された高吸収性ポリマー23と、を備える高吸収性シート14を含み、複合型不織布25は、スパンボンド不織布22と、スパンボンド不織布22の少なくとも一方の表面に一体化された、パルプ繊維を含むパルプ繊維ウェブ21と、を含む。
【0017】
短時間で繰り返し排出された大量の尿や軟便等の体液は、吸収体11のみでは十分に吸収及び保持できない可能性がある。このような問題に対し、本実施形態では、立体ギャザー15の厚み方向内面(立体ギャザー15のトップシート10を臨む面)に高吸収性シート14を設けている。高吸収性シート14は、パルプ繊維ウェブ21が体液吸収性に優れている。また、パルプ繊維ウェブ21は、その表面21aの凹凸度が比較的高いことから、例えば、面21aに高吸収性ポリマー23を配置することで、凹部内のポケットに高吸収性ポリマー23を安定的に保持することができる。その結果、高吸収性シート14は、尿や軟便等の体液を素早く吸収しかつその内部に保持することができる。したがって、高吸収性シート14は、体液の吸収速度が速い上に、吸収能力が非常に大きいものである。したがって、吸収体11と、高吸収性シート14を含む立体ギャザー15と、を組み合わせて使用することにより、大量の体液を容易に吸収し、体液の漏れ(特に横漏れ)を防止することができる。
【0018】
また、体液吸液後は、高吸収性シート14の高吸収性ポリマー23がゲルブロッキングを起こすため、立体ギャザー15上に、吸収性物品1の長手方向に延びる膨潤ゲルの壁(不図示)が形成され、繰り返しの横漏れを効率的に防ぐことができる。さらに、膨潤ゲルの壁に接した体液を、長手方向前後端部に拡散させ、吸収体11の全体を効率的に活用した体液の吸収が可能になる。さらに、高吸収性シート14の幅方向外側に一般的な立体ギャザーシート13b(撥水性及び/又は防水性シート)を備えると、万一高吸収性シート14が体液を吸収しきれずに体液が高吸収性シート14を貫通して染み出した場合でも、それ以上の漏れや、着用者が肌濡れにより不快感を感じること等を防止できる。
【0019】
以下、トップシート10、吸収体11、バックシート12、及び立体ギャザー15の順で、シート状又は板状の各構成部材について詳細に説明する。なお、各構成部材は、シート状及び板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0020】
(トップシート)
トップシート10は、体液がトップシート10を透過して吸収体11に移動するような液透過性を備えた基材から構成される。トップシート用の液透過性基材としては、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンド等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液の吸収体11への移行性、吸収性物品1内での体液の拡散性等の観点から、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンド複合不織布等の親水性不織布が好ましい。
【0021】
トップシート10には、例えば液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。エンボス加工や穿孔加工は、公知の方法で制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0022】
本実施形態のトップシート10の坪量は特に限定されないが、強度、加工性及び液戻り量の観点から、好ましくは15g/m以上200g/m以下、より好ましくは18g/m以上40g/m以下である。トップシート10の形状は特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体11へと誘導するために必要とされる、吸収体11を覆う形状であればよい。
【0023】
(吸収体)
トップシート10及びバックシート12の間に配置される吸収体11は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものが挙げられる。吸収体11の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、その坪量は、好ましくは50g/m以上800g/m以下である。
【0024】
吸収体11に使用される高吸収性ポリマー(SAP)としては、体液を吸収及び保持し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。吸収体11のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、10g/m以上500g/m以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0025】
吸収体11における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。繊維形態に成形したSAPを使用することもできる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体11の形状の安定化の目的から、吸収体11をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0026】
吸収体11は、2層以上の吸収体からなるものでもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層したものでもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じでもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0027】
(バックシート)
バックシート12は、吸収体11が保持している体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような通気性又は非通気性の液不透過性基材からなる。バックシート用基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布などが挙げられる。これらの中でも、体液の横漏れ防止の観点から、通気性、非通気性の不透液性のプラスチックフィルムが好ましい。
【0028】
バックシート12の坪量は特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート12には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法などが挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0029】
(立体ギャザー)
立体ギャザー15は、例えば、吸収性物品1の使用者が排泄した体液の横漏れを防止するために設けられる。本実施形態の立体ギャザー15は、幅方向一端がバックシート12の肌側面の幅方向両端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端部付近に固定され、幅方向他端が自由端となる立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの幅方向他端(自由端)付近に配設され、長手方向に延びる弾性伸縮部材(不図示)と、を含む。弾性伸縮部材の配設により、自由端に起立性が付与され、着用者の体型に合わせて変形可能に構成することができる。本実施形態では、立体ギャザーシートの幅方向他端部に弾性伸縮部材が配されているが、これに限定されず、弾性伸縮部材を配設しなくてもよい。立体ギャザーシートの固定位置は本実施形態に限定されず、例えば、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面又は非肌側面における幅方向両端部付近、吸収体11を含むトップシート10とバックシート12との袋体の幅方向両端部付近、トップシート10の肌側面における幅方向両端部付近等でもよい。
【0030】
本実施形態の立体ギャザー15は、立体ギャザーシートとして、撥水性及び/又は防水性のシート(以下「外側シート」ともいう)13と、外側シート13の幅方向の内側に配設された高吸収性シート14と、を含む。外側シート13及び高吸収性シート14は、一部又は全部を公知の方法に従って接合してもよい。外側シート13、及び高吸収性シート14の幅方向端部13a、14aは、弾性伸縮部材の配設により、それぞれ起立性の自由端になる。外側シート13、及び高吸収性シート14の幅方向端部13a、14aに長手方向に延びる弾性伸縮部材を配した上で、これらの端部を接合してもよい。
【0031】
外側シート13は、撥水性及び/又は防水性シートであれば特に限定されないが、例えば、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布である。該不織布としては、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。外側シート13の坪量は、例えば、10g/m~100g/mである。本実施形態では、外側シート13が高吸収性シート14を支持することにより、高吸収性シート14の体液吸収、保持能力が向上するとともに、高吸収性シート14の外側表面に体液が浸潤してきても、外側シート13が存在するので、横漏れが防止される。
【0032】
高吸収性シート14については後述する。
弾性伸縮部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものが挙げられる。本実施形態では、高吸収性シート14の外側に外側シート13を配しているが、これに限定されず。高吸収性シート14を単独で設けてもよく、複数の高吸収性シート14を設けてもよい。
【0033】
高吸収性シート14は、複合型不織布25と、複合型不織布25の表面及び/又は内部に担持された高吸収性ポリマー23と、を含む。複合型不織布25は、尿や軟便等の体液を素早く吸収できると共に、複合型不織布25に担持された高吸収性ポリマー23は高い体液吸収能力を有し、複合型不織布25によって集められ、高吸収性ポリマー23に接触した体液を吸収及び保持する。したがって、外側シート13周辺に体液が到達しても、高吸収性シート14よりも幅方向外側への体液の漏出(体液の横漏れ)がほぼ確実に防止できる。
【0034】
本実施形態の複合型不織布25は、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21との一体化物である。ここで、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21とが一体化されているとは、具体的には通常の使用においては、主にパルプ繊維ウェブ21に含まれるパルプ繊維が複合型不織布25から容易に脱落しないことを意味する。特にウォータージェットによりパルプ繊維がスパンボンド不織布22に水流交絡されてパルプ繊維ウェブ21が形成されている場合は、パルプ繊維の複合型不織布25からの脱落は非常に起こりにくい。該一体化物の好ましい実施形態としては、例えば、スパンボンド不織布22の一面において、スパンボンド不織布22を構成する繊維の一部と、パルプ繊維ウェブ21を構成するパルプ繊維の一部とが互いに絡み合ってスパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21とが強固に固着し、かつスパンボンド不織布22の他面において、パルプ繊維の一部がスパンボンド不織布22を厚み方向に貫いて露出した形態が挙げられる。このような一体化物は、例えば、水流交絡法により得ることができる。
【0035】
複合型不織布25に含まれるスパンボンド不織布22としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、当該不織布を構成する繊維の材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布22は、これらの材質からなる合成樹脂繊維を用いて作製されたものであり、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。スパンボンド不織布22の坪量は特に限定されないが、引っ張り強度と触感の柔らかさの観点から、7g/m以上20g/m以下である。尚、スパンボンド不織布22は、界面活性剤などの既知の親水剤で親水処理されていることが好ましい。親水剤塗布により、体液がスパンボンド不織布22を通液しパルプ繊維ウェブ21に到達しやすくすることができる。
【0036】
パルプ繊維ウェブ21は、例えば、体液を素早く吸収する。したがって、複合型不織布25のうち、パルプ繊維ウェブ21が立体ギャザーの厚み方向内側に位置し、かつスパンボンド不織布22がトップシート10の肌側面を臨むように配置することが好ましい。これにより、立体ギャザー15の近傍に達した体液が、パルプ繊維ウェブ21によりいち早く吸収され、複合型不織布25に担持された高吸収性ポリマー23により吸収を維持される。また、着用時の体の動きで複合型不織布25に衝撃力が加わり、高吸収性ポリマー23がパルプ繊維ウェブ21の凹部内のポケットから脱落しても、表面シート上ではなく、スパンボンド不織布22と外側シート13の間に落下するため、脱落時の着用者の肌触りの不快感を抑止することができる。
【0037】
パルプ繊維ウェブ21としては、パルプ繊維を主体とする不織布を特に限定なく使用でき、さらに、スパンボンド不織布22の表面に水流交絡法によりパルプ繊維を吹き付けることにより形成されるパルプ繊維ウェブ21でもよい。ここで使用されるパルプ繊維としては特に限定されないが、好ましくはラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)である。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維ウェブの坪量は特に限定されないが、例えば、均一性、触感、吸収性等の観点から、好ましくは30g/m以上70g/m以下である。
【0038】
複合型不織布25における、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21との重量構成比は、例えば、体液の吸収性や拡散性等の観点から、(スパンボンド不織布22の重量/パルプ繊維ウェブ21の重量)として、40/60重量%以上10/90重量%以下である。この範囲とすることにより、スパンボンド不織布22によるパルプ繊維ウェブ21の支持性と、パルプ繊維ウェブ21の吸収性とがバランスよく高水準で両立し、体液の横漏れ防止に有効である。
【0039】
また、複合型不織布25について、テンシロンでの引張強度試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力(引張強度)は特に限定されないが、好ましくは1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下である。
【0040】
本実施形態の複合型不織布25は、例えば、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21と、を積層して一体化する工程と、得られた積層体を必要に応じてロールなどを用いて加圧及び/又は加熱する工程と、を含む製造方法により作製することができる。また、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21とを接着剤を用いるか又は縫製により一体化してもよい。また、スパンボンド不織布22に対し、ウォータージェット(水流)とともにパルプ繊維ウェブを構成するパルプ繊維を噴射する水流交絡工程、を含む製造方法によっても、複合型不織布25が得られる。複合型不織布25にはエンボス加工を施してもよい。
【0041】
前述した製造方法のなかでも、外観、触感の柔らかさと強度の両立の観点から、水流交絡法を利用する方法が好ましい。水流交絡工程では、外観、触感の柔らかさと効率のバランスの観点から、ウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であることが好ましく、且つウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0042】
複合型不織布25に担持される高吸収性ポリマー23は、吸収体11に用いられる高吸収性ポリマーと同じものをいずれも使用できる。ここでは、高吸収性ポリマー23は、粒子状の形態で使用することが好ましい。粒径は特に限定されず、吸収性物品1を身体に着用したときに、粒によるザラザラした感触が生じない範囲で適宜選択すればよい。高吸収性ポリマー23は、例えば、スパンボンド不織布22とパルプ繊維ウェブ21との層間、パルプ繊維ウェブ21の層中、パルプ繊維ウェブ21表面等から選ばれる1又は2か所以上に、公知の方法に従って担持される。中でも、パルプ繊維ウェブ21表面に粒子状の高吸収性ポリマー23を例えばホットメルト接着剤、熱圧着等により担持させる形態が好ましい。高吸収性ポリマー23を固定配置することにより、高吸収性ポリマー23のズレや移動がより抑えられ、高吸収性シート14の吸収体としての機能が全体にわたって均一化し、体液の漏出位置に関係なく、体液を吸収できる。高吸収性ポリマー23の坪量は特に限定されないが、好ましくは30g/m以上300g/m以下である。
【0043】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート12、吸収体11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート12とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定した上で、立体ギャザー15を所定の位置に固定することで、吸収性物品1を製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0044】
<第二実施形態に係る吸収性物品>
図3に示す吸収性物品2は、外側シート13の幅方向内側において、パルプ繊維ウェブ21の表面21aが立体ギャザーシートの厚み方向内側に位置し、スパンボンド不織布22がトップシート10の肌側面を臨むように、高吸収性シート14が配され、高吸収性シート14の端部(自由端又は起立性自由端)14a及びその周辺が、表面21aを内側にして折り返された折返し部20を有する以外は、吸収性物品1と同じ構成及び変形例を有している。折返し部20は、高吸収性シート14の折り返していない部分よりも2倍程度以上の高吸収性ポリマー23を含み、また、層厚も大きくなっていることから、体液の吸収速度、体液の吸収量及び保持量等の吸収性能が顕著に向上する。折返し部20において、端部14aと表面21aとの接合には、例えば、ホットメルト接着剤による接着、ヒートシール、熱圧着等の方法を利用できる。また、単に端部14aを折り返しただけでもよい。
【0045】
高吸収性シート14の自由端14a付近は、通常、体液を遮るものがなく、開放状態になっている。このため、この部分に比較的多量の体液が侵入してくると、漏れが発生し易くなる。このような問題に対して、前述の機能を有する折返し部20を設けることで、自由端14a周辺に漏れ出した体液を、外部に漏出させることなく、瞬時に吸収し、保持することができる。自由端14a付近から体液が漏れ出すと、着用者の肌への戻り等も生じ易くなるので、ここでの漏れを防止することは、吸収性物品2の品質を向上させることができる。
【0046】
また、折返し部20は、その内部に閉空間30を有している。このような閉空間30は、端部14aのパルプ繊維ウェブ21を内側に向けて折り返し、トップシート10の肌側面を臨むスパンボンド不織布22の面が外側シート13に接触するようにして形成されている。閉空間30を設けることで、着用中に高吸収性シート14から脱落する高吸収性ポリマー23を閉空間30に保持し、体液の吸収性能を高水準に維持することができる。また、該閉空間30は、高吸収性ポリマー23が体液を吸収して膨張可能な空間となることから、高吸収性ポリマー23の体液の保持能力を最大限に発揮させるとともに、高吸収性ポリマー23がゲルブロッキングを形成して更なる横漏れを防止することができる。以上の構成により、従来の一般的な立体ギャザー(外側シート13)単独では防止できなかった、一時的に大量排泄された尿や軟便が、左右から横漏れすることを防止することができる。なお、閉空間30は、主にパルプ繊維ウェブ21の表面21aで囲まれた空間だけでなく、前記空間に連通する、主に外側シート13と高吸収性シート14とで囲まれた空間をも含んでいる。
【0047】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1、2 吸収性物品
10 トップトート
11 吸収体
12 バックシート
13 撥水性及び/又は防水性シート
13a 自由端
13b 撥水性及び/又は防水性シートのシート部分
14 高吸収性シート
14a 自由端
20 折返し部
21 パルプ繊維ウェブ
22 スパンボンド不織布
23 高吸収性ポリマー
25 複合型不織布
30 閉空間
図1
図2
図3
図4