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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】車両の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/33 20190101AFI20240123BHJP
   B60L 50/72 20190101ALI20240123BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240123BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240123BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20240123BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240123BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20240123BHJP
【FI】
B60L58/33
B60L50/72
B60K11/04 Z
B60K8/00
H01M8/04029
H01M8/04 N
H01M8/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001686
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021111488
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-6671(JP,U)
【文献】実公昭56-10603(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0315097(US,A1)
【文献】特開2019-140854(JP,A)
【文献】特開2014-36530(JP,A)
【文献】特表2011-503812(JP,A)
【文献】特開2015-209029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036514(US,A1)
【文献】特開2012-196014(JP,A)
【文献】特開2012-195263(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104669998(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
B60L 50/00-50/90
B60L 58/00-58/40
B60K 7/00- 8/00
B60K 11/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に設けられる第1の流路及び第2の流路と、
前記第1の流路に設けられ、電力を発生させる燃料電池と、
前記第2の流路に設けられ、制動に伴って熱を発生させるブレーキレジスタと、
前記第1の流路に設けられ、前記燃料電池に流体を供給して冷却する第1の冷却ポンプと、
前記第2の流路に設けられ、前記ブレーキレジスタに流体を供給して冷却する第2の冷却ポンプと、
前記燃料電池を冷却した後の前記流体、及び前記ブレーキレジスタを冷却した後の前記流体の逆流を防止する逆流防止機構と、を備える、車両の冷却構造。
【請求項2】
前記逆流防止機構は、
前記第1の流路における前記燃料電池の下流側に設けられた第1のチェック弁と、
前記第2の流路における前記ブレーキレジスタの下流側に設けられた第2のチェック弁と、を備える、請求項1に記載の車両の冷却構造。
【請求項3】
記第1の流路における前記第1の冷却ポンプ及び前記燃料電池間と、前記第2の流路における前記第2の冷却ポンプ及び前記ブレーキレジスタ間と、を接続する分配流路を更に備える、請求項1又は2に記載の車両の冷却構造。
【請求項4】
前記分配流路には、流量調整弁が設けられる、請求項3に記載の車両の冷却構造。
【請求項5】
互いに並列に設けられる第1の流路及び第2の流路と、
前記第1の流路に設けられ、電力を発生させる燃料電池と、
前記第2の流路に設けられ、制動に伴って熱を発生させるブレーキレジスタと、
前記第1の流路に設けられ、前記燃料電池に流体を供給して冷却する第1の冷却ポンプと、
前記第2の流路に設けられ、前記ブレーキレジスタに流体を供給して冷却する第2の冷却ポンプと、
記第1の流路における前記第1の冷却ポンプ及び前記燃料電池間の第1の接点と、前記第2の流路における前記第2の冷却ポンプ及び前記ブレーキレジスタ間の第2の接点と、を接続する分配流路と、
前記第1の流路の前記第1の接点と前記燃料電池との間に設けられる第1のニードルバルブと、
前記第2の流路の前記第2の接点と前記ブレーキレジスタとの間に設けられる第2のニードルバルブと、を備える、車両の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池を有する車両の冷却構造が記載されている。当該冷却構造は、燃料電池を含め、車両内の各構成部品に対して、冷却用の流体を流す流路を設けている。これにより、冷却構造は、各構成部品を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載された冷却構造は、一般乗用車のための冷却構造である。すなわち、当該構造を大型車両に適用したとしても、大型車両に特有の課題に対応することができなかった。従って、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる冷却構造が求められていた。
【0005】
本発明は、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる車両の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の冷却構造は、互いに並列に設けられる第1の流路及び第2の流路と、第1の流路に設けられ、電力を発生させる燃料電池と、第2の流路に設けられ、制動に伴って熱を発生させるブレーキレジスタと、第1の流路に設けられ、燃料電池に流体を供給して冷却する第1の冷却ポンプと、第2の流路に設けられ、ブレーキレジスタに流体を供給して冷却する第2の冷却ポンプと、燃料電池を冷却した後の流体、及びブレーキレジスタを冷却した後の流体の逆流を防止する逆流防止機構と、を備える。
【0007】
燃料電池を有する大型車両では、力行運転時には主に燃料電池での発熱が大きくなり、補助制動を行っているときには主にブレーキレジスタでの発熱が大きくなる。これに対し、本発明に係る車両の冷却構造は、燃料電池を冷却する第1の冷却ポンプと、ブレーキレジスタを冷却する第2の冷却ポンプと、を備えることにより、各部品の適切な冷却を可能としている。ここで、大型車両では、運転状況の変化に応じて、燃料電池及びブレーキレジスタのそれぞれに対して、逆流を起こすことなく流体の供給を制御しようとする場合、制御処理が非常に複雑になるという問題がある。これに対し、本発明に係る車両の冷却構造は、燃料電池を冷却した後の流体、及びブレーキレジスタを冷却した後の流体の逆流を防止する逆流防止機構を備える。これにより、複雑な制御処理を行うことなく、流体の逆流を防止することができる。以上より、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる。
【0008】
逆流防止機構は、第1の流路における燃料電池の下流側に設けられた第1のチェック弁と、第2の流路におけるブレーキレジスタの下流側に設けられた第2のチェック弁と、を備えてよい。二つのチェック弁を用いることで、適切に逆流を防止できる。
【0009】
車両の冷却構造は、第1の流路における第1の冷却ポンプ及び燃料電池間と、第2の流路における第2の冷却ポンプ及びブレーキレジスタ間と、を接続する分配流路を更に備えてよい。これにより、分配流路は、第1の冷却ポンプの流体をブレーキレジスタへ分配し、または、第2の冷却ポンプの流体を燃料電池へ分配することができる。従って、一台の冷却ポンプ以上の冷却能力にて、構成部品を冷却することができる。
【0010】
分配流路には、流量調整弁が設けられてよい。この場合、流量調整弁が分配流路を通過する流体の流量を調整することで、分配流路によって、意図しない分配が行われることを抑制できる。
【0011】
本発明に係る車両の冷却構造は、互いに並列に設けられる第1の流路及び第2の流路と、第1の流路に設けられ、電力を発生させる燃料電池と、第2の流路に設けられ、制動に伴って熱を発生させるブレーキレジスタと、第1の流路に設けられ、燃料電池に流体を供給して冷却する第1の冷却ポンプと、第2の流路に設けられ、ブレーキレジスタに流体を供給して冷却する第2の冷却ポンプと、第1の流路における第1の冷却ポンプ及び燃料電池間と、第2の流路における第2の冷却ポンプ及びブレーキレジスタ間と、を接続する分配流路と、を備える。
【0012】
燃料電池を有する大型車両では、力行運転時には主に燃料電池での発熱が大きくなり、補助制動を行っているときには主にブレーキレジスタでの発熱が大きくなる。これに対し、本発明に係る車両の冷却構造は、燃料電池を冷却する第1の冷却ポンプと、ブレーキレジスタを冷却する第2の冷却ポンプと、を備えることにより、各部品の適切な冷却を可能としている。ここで、大型車両では、運転状況の変化に応じて、燃料電池及びブレーキレジスタのいずれかにおいて、一時的に大きな冷却能力が必要になる場合がある。従って、一台の冷却ポンプでは冷却能力が不足する可能性がある。その一方、当該状況に対応するため、各冷却ポンプを大きくした場合、重量増加やコストが上昇してしまうという問題がある。これに対し、本発明に係る車両の冷却構造は、第1の流路における第1の冷却ポンプ及び燃料電池間と、第2の流路における第2の冷却ポンプ及びブレーキレジスタ間と、を接続する分配流路を備える。これにより、分配流路は、第1の冷却ポンプの流体をブレーキレジスタへ分配し、または、第2の冷却ポンプの流体を燃料電池へ分配することができる。従って、一台の冷却ポンプ以上の冷却能力にて、構成部品を冷却することができる。以上より、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる車両の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る冷却構造を示す概略構成図である。
図2】比較例に係る冷却構造を示す概略構成図である。
図3】変形例に係る冷却構造を示す概略構成図である。
図4】変形例に係る冷却構造を示す概略構成図である。
図5】変形例に係る冷却構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却構造100を示す概略構成図である。冷却構造100は、トラックなどの大型車両に設けられるものであり、当該大型車両に内蔵される各構成部品を冷却する。図1に示すように、冷却構造100は、燃料電池1と、ブレーキレジスタ2と、ラジエータ3と、イオン交換器4と、を備える。
【0017】
燃料電池1は、大型車両の運転に必要な電力を発生させる機器である。大型車両が力行運転を行うときには、燃料電池1は、走行に必要な電力を発生させるため、発熱する。ブレーキレジスタ2は、制動に伴って熱を発生させる機器である。大型車両が下り坂などを走行するときは、回生運転を行うことで蓄電池に充電を行うことができる。しかし、蓄電池の蓄電量が上限に達した後、大型車両は、ブレーキレジスタ2で熱を発生させながら制動を行う(当該動作を補助制動と称する)。ラジエータ3は、燃料電池1及びブレーキレジスタ2を冷却した流体の熱を放熱するための部材である。イオン交換器4は、燃料電池1及びブレーキレジスタ2の冷却に用いられた流体を浄化するための機器である。
【0018】
また、冷却構造100は、流路L1~L6を備えている。流路L1(第1の流路)は、燃料電池1が設けられる流路である。なお、流路L1は、燃料電池1が設けられる箇所では、更に分岐して、燃料電池1とインタークーラ6とが並列に接続される。流路L2(第2の流路)は、ブレーキレジスタ2が設けられる流路である。流路L1と流路L2とは、互いに並列に設けられており、分岐点P1にて分岐すると共に、合流点P2にて合流する。流路L3は、ラジエータ3が設けられる流路である。流路L4は、イオン交換器4が設けられる流路である。流路L3と流路L4とは、互いに並列に設けられており、分岐点P3にて分岐すると共に、合流点P4にて合流する。流路L1,L2の合流点P2と、流路L3,L4の分岐点P3とは、流路L5を介して接続される。流路L1,L2の分岐点P1と、流路L3,L4の合流点P4とは、流路L6を介して接続される。なお、流路L1~L6を流れる流体として水を採用してよいが、流体は冷却媒体として用いることができるものであれば、特に限定されない。
【0019】
また、冷却構造100は、第1の冷却ポンプ11と、第2の冷却ポンプ12と、ロータリーバルブ13と、温度計14a,14b,14cと、を備える。
【0020】
第1の冷却ポンプ11は、流路L1に設けられ、燃料電池1に流体を供給して冷却するポンプである。第1の冷却ポンプ11は、分岐点P1を介して流路L6側から流体を吸引し、燃料電池1及びインタークーラ6へ向けて流体を圧送し、合流点P2を介して流路L5側へ流体を流す。第2の冷却ポンプ12は、流路L2に設けられ、ブレーキレジスタ2に流体を供給して冷却するポンプである。第2の冷却ポンプ12は、分岐点P1を介して流路L6側から流体を吸引し、ブレーキレジスタ2へ向けて流体を圧送し、合流点P2を介して流路L5側へ流体を流す。第1の冷却ポンプ11及び第2の冷却ポンプ12は、圧送する流体の流量を調整することができる。流路L6からの流体の流量は、各冷却ポンプ11,12の出力のバランスによって、燃料電池1及びブレーキレジスタ2へそれぞれ分配される。
【0021】
ロータリーバルブ13は、分岐点P3に設けられる。ロータリーバルブ13は、流路L5を介して流れてきた冷却を行った後の流体の供給先を切り替える。ロータリーバルブ13は、冷却を行った後の流体の供給先を、ラジエータ3とイオン交換器4との間で切り替える。なお、冷却ポンプ11,12及びロータリーバルブ13は、図示されない制御部からの指令信号に基づいて動作する。例えば、ロータリーバルブ13は、冷却後の流体の熱をラジエータ3で放熱したくない場合、当該ラジエータ3をバイパスするために、イオン交換器4へ流す。例えば、寒冷地などにおいて、ラジエータ3で放熱を行うと流体の温度が低くなりすぎる場合、ロータリーバルブ13は、ラジエータ3をバイパスする。なお、流路L4は、ラジエータ3をバイパスする機能を主に有するため、イオン交換器4を省略してもよい。
【0022】
温度計14aは、流路L2であって、ブレーキレジスタ2よりも下流側に設けられている。従って、温度計14aは、ブレーキレジスタ2を冷却した後の流体の温度を検出する。温度計14bは、流路L5に設けられる。従って、温度計14bは、燃料電池1を冷却した後の流体、及びブレーキレジスタ2を冷却した後の流体が合流した後の温度を検出する。温度計14cは、流路L6に設けられる。温度計14cは、分岐点P1にて燃料電池1及びブレーキレジスタ2へ分配される直前の流体の温度を検出する。温度計14a,14b,14cは、検出した温度を図示されない制御部へ送信する。
【0023】
冷却構造100は、逆流防止機構30を備える。逆流防止機構30は、燃料電池1を冷却した後の流体、及びブレーキレジスタ2を冷却した後の流体の逆流を防止する機構である。具体的に、逆流防止機構30は、流路L1における燃料電池1の下流側に設けられた第1のチェック弁31と、流路L2におけるブレーキレジスタ2の下流側に設けられた第2のチェック弁32と、を備える。
【0024】
第1のチェック弁31は、流路L1のうち、燃料電池1とインタークーラ6との合流部と、合流点P2との間に設けられる。第1のチェック弁31は、燃料電池1側からの流体の流れを許容する。一方、第1のチェック弁31は、合流点P2側から燃料電池1側へ流体が流れること、すなわち、流路L5からの流体の逆流、及び流路L2からの流体の逆流を防止する。第2のチェック弁32は、流路L2のうち、ブレーキレジスタ2と、合流点P2との間に設けられる。第2のチェック弁32は、ブレーキレジスタ2側からの流体の流れを許容する。一方、第2のチェック弁32は、合流点P2側からブレーキレジスタ2側へ流体が流れること、すなわち、流路L5からの流体の逆流、及び流路L1からの流体の逆流を防止する。
【0025】
例えば、力行運転時には、第1の冷却ポンプ11の流量が大きくなり、主に、流路L1、流路L5、流路L3、流路L6、流路L1…という順序での流れが形成される。このとき、第2のチェック弁32は、流路L1,L5からの逆流を防止することができる。また、補助制動時には、第2の冷却ポンプ12の流量が大きくなり、主に、流路L2、流路L5、流路L3、流路L6、流路L2…という順序での流れが形成される。このとき、第1のチェック弁31は、流路L2,L5からの逆流を防止することができる。
【0026】
本実施形態に係る冷却構造100の作用・効果について説明する。
【0027】
燃料電池1を有する大型車両では、力行運転時には主に燃料電池1での発熱が大きくなり、補助制動を行っているときには主にブレーキレジスタ2での発熱が大きくなる。これに対し、本実施形態に係る車両の冷却構造100は、燃料電池1を冷却する第1の冷却ポンプ11と、ブレーキレジスタ2を冷却する第2の冷却ポンプ12と、を備えている。このように、冷却構造100が、二台の冷却ポンプ11,12を有することにより、力行運転における流体の分配と、回生運転(補助制動)時における流体の分配との間の切替速度を早くすることができる。これにより、各部品の適切な冷却を可能としている。また、冷却構造100は、燃料電池1の冷却系とブレーキレジスタ2の冷却系を同一の流体回路内にまとめて形成することで、コンパクト化をはかることができるため、例えば、大型車両においてラジエータ3等の設置スペースを確保することができる。
【0028】
次に、図2を参照して、比較例に係る冷却構造200について説明を行う。比較例に係る冷却構造200は、逆流防止機構30を備えていない。ここで、燃料電池1の出力は、要求される電力の変化に対する追従性が悪い。すなわち、所定量の電力要求があっても、燃料電池1が当該電力を供給できるようになるまで時間がかかり、電力要求量が低下しても、出力する電力を低下させるまでに時間がかかる。その一方で、燃料電池1の上限温度は低いため、しっかりと冷却を行わなくてはならない。例えば、力行運転が終了したからといって、直ちに燃料電池1の冷却を停止できるわけでなく、燃料電池1が発電を停止して十分に温度が下がるまで、冷却を継続しなくてはならない。その一方、大型車両は、ブレーキレジスタ2を備えているが、当該ブレーキレジスタ2が補助制動を行うときには、燃料電池1の温度が下がりきってなかったとしても、速やかにブレーキレジスタ2の冷却が必要になる。このように、大型車両では、運転状況の変化に応じた流量の調整が複雑になる傾向にある。当該状況において、比較例に係る冷却構造200が、燃料電池1及びブレーキレジスタ2のそれぞれに対して、逆流を起こすことなく流体の供給を制御しようとする場合、制御処理が非常に複雑になるという問題がある。
【0029】
これに対し、本実施形態に係る車両の冷却構造100は、燃料電池1を冷却した後の流体、及びブレーキレジスタ2を冷却した後の流体の逆流を防止する逆流防止機構30を備える。これにより、複雑な制御処理を行うことなく、流体の逆流を防止することができる。以上より、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる。
【0030】
逆流防止機構30は、流路L1における燃料電池1の下流側に設けられた第1のチェック弁31と、流路L2におけるブレーキレジスタ2の下流側に設けられた第2のチェック弁32と、を備えてよい。二つのチェック弁31,32を用いることで、適切に逆流を防止できる。
【0031】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
例えば、図3に示す冷却構造300を採用してもよい。この冷却構造300は、図1においてロータリーバルブ13が用いられていたものをニードルバルブ16,17に置き換えた点で、図1の冷却構造100と相違する。ニードルバルブ16は、流路L3のうち、ラジエータ3と分岐点P3との間に設けられる。ニードルバルブ17は、流路L4のうち、イオン交換器4と分岐点P3との間に設けられる。この場合、図1の冷却構造100では、流量分配を冷却ポンプ11,12だけで行っていたものを、図3の冷却構造100では、流量分配を冷却ポンプ11,12とニードルバルブ16,17で行うことができる。
【0033】
また、図4に示す冷却構造300を採用してもよい。この冷却構造400は、分配流路L10を有している点で、主に図3の冷却構造300と相違する。分配流路L10は、流路L1における第1の冷却ポンプ11及び燃料電池1間と、流路L2における第2の冷却ポンプ12及びブレーキレジスタ2間と、を接続する流路である。分配流路L10は、当該位置において接続点P5にて流路L1と接続される。分配流路L10は、当該位置において接続点P6にて流路L2と接続される。
【0034】
また、流体の分配を調整できるようにするため、流路L1には、接続点P5と燃料電池1との間にニードルバルブ21が設けられ、流路L2には、接続点P6とブレーキレジスタ2との間にニードルバルブ22が設けられる。また、分配流路L10から冷却ポンプ11,12への逆流を防止するため、流路L1には、第1の冷却ポンプ11と接続点P5との間にチェック弁23が設けられ、流路L2には、第2の冷却ポンプ12と接続点P6との間にチェック弁24が設けられる。
【0035】
上述のように、大型車両は、応答性の悪い燃料電池1と、速やかに冷却が必要になるブレーキレジスタ2を備えているため、運転状況の変化に応じた流量の調整が複雑になる傾向がある。当該状況であるため、大型車両では、運転状況の変化に応じて、燃料電池1及びブレーキレジスタ2のいずれかにおいて、一時的に大きな冷却能力が必要になる場合がある。従って、一台の冷却ポンプ11,12では冷却能力が不足する可能性がある。その一方、当該状況に対応するため、各冷却ポンプ11,12を大きくした場合、重量増加やコストが上昇してしまうという問題がある。
【0036】
これに対し、変形例に係る車両の冷却構造400は、流路L1における第1の冷却ポンプ11及び燃料電池1間と、流路L2における第2の冷却ポンプ12及びブレーキレジスタ2間と、を接続する分配流路L10を備える。これにより、分配流路L10は、第1の冷却ポンプ11の流体をブレーキレジスタ2へ分配し、または、第2の冷却ポンプ12の流体を燃料電池1へ分配することができる。従って、一台の冷却ポンプ11,12以上の冷却能力にて、構成部品を冷却することができる。以上より、大型車両の構成部品を適切に冷却することができる。
【0037】
また、図5に示す冷却構造500を採用してよい。図5の冷却構造500は、分配流路L10に、ニードルバルブ26(流量調整弁)が設けられている点で、図4に示す冷却構造400と相違する。図5の冷却構造500によれば、ニードルバルブ26が分配流路L10を通過する流体の流量を調整することで、分配流路L10によって、意図しない分配が行われることを抑制できる。
【0038】
なお、逆流防止用のチェック弁の位置は、上述の実施形態及び変形例に限定されない。例えば、冷却水の流れ方向や配管内差圧を検出して電磁弁等のチェック弁を配置することで、逆流防止機構を構築してもよい。
【0039】
また、逆流防止機構は、チェック弁を用いた構成に限定されない。例えば、冷却水の流れ方向や配管内差圧を検出し、電磁弁を用いて逆流防止機構を構築してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…燃料電池、2…ブレーキレジスタ、11…第1の冷却ポンプ、12…第2の冷却ポンプ、30…逆流防止機構、31…第1のチェック弁、32…第2のチェック弁、100,300,400,500…冷却構造、L1…流路(第1の流路)、L2…流路(第2の流路)、L10…分配流路。
図1
図2
図3
図4
図5