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特許7424837時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G04B19/06 R
G04B19/06 A
G04B19/06 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004295
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110696
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】高島 直人
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161621(JP,A)
【文献】特開2010-107322(JP,A)
【文献】特開2006-214733(JP,A)
【文献】特開2012-063342(JP,A)
【文献】特開昭60-029486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる平板状の基材と、
前記基材の一方の面に接して、前記一方の面に倣った形状で配置された、光を透過させる程度の薄い厚さに形成された複数の金属箔片と、
前記一方の面の側に積層されて、前記金属箔片を覆う、光を透過させる保護層と、を有する時計用表示板。
【請求項2】
前記金属箔片は、厚さが10~30[nm]に形成されている請求項1に記載の時計用表示板。
【請求項3】
前記時計用表示板のおもて面から裏面までの光の透過率が、10~50[%]に設定されている請求項1又は2に記載の時計用表示板。
【請求項4】
前記一方の面における、前記金属箔片が配置されていない開口部の割合である開口率が、3~45[%]である請求項1から3のうちいずれか1項に記載の時計用表示板。
【請求項5】
前記保護層の厚さが1~5[μm]である請求項1から4のうちいずれか1項に記載の時計用表示板。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の時計用表示板を文字板として備えた時計。
【請求項7】
光を透過させる平板状の基材と、前記基材の上方を向いた面に配置された、光を透過させる程度の薄い厚さに形成された複数の金属箔片と、前記基材の一方の面の側に積層されて、前記金属箔片を覆う、光を透過させる保護層と、を備えた時計用表示板の製造方法であって、
前記基材の、前記上方を向いた面に、溶剤及び前記金属箔片を含有した塗料を塗布し、
前記基材に塗布された前記塗料のうち前記溶剤を揮発させ、
前記溶剤の揮発後に、前記金属箔片が接して固定された前記上方を向いた面に、前記金属箔片を覆うように保護層を形成する時計用表示板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の文字板等に用いられる時計用表示板(以下、単に表示板という。)は、見た目の高級感を得られるなどの理由で、金属材料のものが好まれる傾向がある。金属材料が高級感を発揮する理由の一つは、高輝度での反射にある。
【0003】
しかし、金属材料の表示板は、電波や光を透過しにくいため、表示板の下側に、太陽光を受光するソーラセルを配置した太陽電池付きの時計や電波を受信するアンテナを配置した電波修正時計には用いることができない。
【0004】
そこで、光や電波を透過しつつ、金属の反射光と同様の反射光(金属調の反射光)を得ることができる表示板が求められている。そのような表示板としては、例えば、電磁波を透過する電磁波透過性を有する基板に、金属粉末を分散させた分散膜を積層したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-063342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された表示板は、金属粉末同士を、分散膜の厚さ方向に離して、かつ分散膜の面方向に平行になるように配置するため、分散膜を複数回に分けて形成する必要があり、製造の手間、コストが掛かる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、製造の手間やコストを低減することができる、光や電波を透過しつつ、金属の反射光と同様の反射光(金属調の反射光)を得ることができる時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、光を透過させる平板状の基材と、前記基材の一方の面に配置された、光を透過させる程度の薄い厚さに形成された複数の金属箔片と、前記一方の面の側に積層されて、前記金属箔片を覆う、光を透過させる保護層と、を有する時計用表示板である。
【0009】
本発明の第2は、本発明に係る時計用表示板を文字板として用いた時計である。
【0010】
本発明の第3は、光を透過させる平板状の基材と、前記基材の上方を向いた面に配置された、光を透過させる程度の薄い厚さに形成された複数の金属箔片と、前記一方の面の側に積層されて、前記金属箔片を覆う、光を透過させる保護層と、を備えた時計用表示板の製造方法であって、前記基材の、前記上方を向いた面に、溶剤及び前記金属箔片を含有した塗料を塗布し、前記基材に塗布された前記塗料を加熱して前記溶剤を揮発させ、前記溶剤の揮発後に、前記金属箔片が固定された前記上方を向いた面に、前記金属箔片を覆うように保護層を形成する時計用表示板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法によれば、光や電波を透過しつつ、金属の反射光と同様の反射光(金属調の反射光)を得ることができる表示板の、製造の手間やコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る時計用表示板の一実施形態としての文字板を備えた時計を示す平面図である。
図2図1に示した時計の、I-I線に沿った断面を示す断面図である。
図3】本実施形態の文字板を示す、図2と同様の断面図である。
図4】文字板における基材を示す、図3相当の断面図である。
図5】文字板を電子顕微鏡で観察したときの、平面視でのアルミフレークと開口部の様子の一例を示す写真である。
図6】文字板を製造する工程における、基材の表面に塗料を吹き付けて塗膜を形成した直後の状態を示す図3相当の断面図である。
図7】文字板を製造する工程における、基材の表面に塗料を吹き付けて塗膜を形成してから時間が経過し、塗料の溶剤が揮発した状態を示す図6相当の断面図である。
図8】文字板のおもて面側から見た視認者が視認する金属調の文字板を示す一例の写真である。
図9】実施形態の文字板の変形例2を示す図3相当の断面図である。
図10】実施形態の文字板の変形例3を示す図3相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る時計用表示板、時計及び時計用表示板の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
<時計の構成>
図1は、本発明に係る時計用表示板の一実施形態としての文字板10を備えた時計100を示す平面図である。この時計100は、本発明に係る時計の一実施形態でもある。図2は、図1に示した時計100の、I-I線に沿った断面を示す断面図である。
【0014】
時計100は、図1,2に示すように、例えば金属製のケース50の内部に、文字板10と、指針80と、見返しリング52とムーブメント70と、を備えている。ケース50の、時計100のおもて面側に対応する端面の内側は、無色透明の風防ガラス60で塞がれ、裏面側に対応する端面の内側は、金属製の裏蓋51で塞がれている。
【0015】
見返しリング52は、文字板10の外周縁部に配置されている。文字板10の裏面側に配置されたムーブメント70から中心Cに沿って突出した指針軸75が文字板10を貫通し、この指針軸75に、指針80が固定されている。指針80は、指針軸75の中心C回りの回転により回転し、回転位置に対応して文字板10のおもて面側に形成された時字(インデックス)を指し示すことで、時刻を表示する。
<文字板の構成>
図3は、本実施形態の文字板10を示す、図2と同様の断面図である。図4は、文字板10における基材20を示す、図3相当の断面図である。図5は、文字板10を電子顕微鏡で観察したときの、平面視でのアルミフレーク31と開口部11の様子の一例を示す写真である。
【0016】
文字板10は、図3に示すように、裏面10b側(ムーブメント70に近い側)の基材20と、おもて面10a側の保護層40と、それらの間に配置された複数のアルミフレーク31とが積層して形成されている。
【0017】
基材20は、光Lを透過させる光透過性を有する材料で形成されている、光透過性を有する材料としては、例えば、ポリカーボネートを適用することができるが、本発明における基材は、光透過性を有するものであればよく、ポリカーボネートに限定されず、アクリル系樹脂やガラスであってもよい。基材20は、着色されていてもよいし、無色でもよい。
【0018】
基材20は、図4に示すように、おもて面10aも裏面10bも平らな平板状で、外形輪郭は、例えば、円形又は略円形に形成されている。基材20の外形輪郭は円形又は略円形に限定されず、長円形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0019】
基材20は、厚さが例えば500[μm]で形成されている。基材20の厚さは、500[μm]に限定されず、文字板10として機能する強度、剛性を確保できる厚さであれば、500[μm]よりも薄くてもよいし、厚くてもよく、例えば、300~650[μm]の厚さを適用することができる。
【0020】
基材20の一方の面(おもて面20a)の大部分には、図3に示すように、複数のアルミフレーク31(アルミ箔片(金属箔片の一例))が積層されている。
【0021】
アルミフレーク31は、微小なアルミニウム材であって、特定の方向の寸法が他の方向の寸法に比べて非常に小さいことで、厚さの薄い箔片として形成されている。しかも、アルミフレーク31の厚さは、例えば10~30[nm]程度と非常に薄い。この程度の薄いアルミフレーク31は、金属箔片であっても、光Lを透過することがある。
【0022】
アルミフレーク31は、表面が平らで滑らかに形成されている。図3に示した例において、一部のアルミフレーク31は屈曲した形状で表されているが、厚さの非常に薄いアルミフレーク31の一部が別のアルミフレーク31に積層されることで、別のアルミフレーク31の表面と基材20のおもて面20aとにそれぞれ倣った状態となることで、境界の部分が屈曲したものである。
【0023】
このように、複数のアルミフレーク31は、基材20のおもて面20aにおいて、横たわった姿勢(アルミフレーク31の平らな面が基材20のおもて面20aに対して略平行となる姿勢)で配置されている。
【0024】
なお、おもて20aには、文字板10を、おもて面10aから裏面10bに向かう厚さ方向に見た平面視において、アルミフレーク31の配置されていない開口部11(図3参照)が形成されていてもよい。電子顕微鏡の写真では、一例として図5に示すように、平面視でアルミフレーク31が存在しない部分を開口部11として観察することができる。
【0025】
平面視においてアルミフレーク31の配置されていない開口部11は、文字板10のおもて面10aから裏面10bに、可視光等の光Lを透過する。一方、平面視においてアルミフレーク31が配置されている部分(開口部11以外の部分)は、一般的には、文字板10のおもて面10aから裏面10bに向かう光Lを、アルミフレーク31の平らな面で反射する。
【0026】
しかし、本実施形態におけるアルミフレーク31は上述したように非常に薄く形成されているため、1枚乃至3,4枚程度重なって配置されている部分であっても、光Lの一部を基材20の裏面20bまで透過する。つまり、開口部11が形成されていない状態(開口率0[%])であっても、裏面20bまでの光Lの透過率は0[%]ではなく、光Lの一部は透過する。
【0027】
さらに、基材20のおもて面20aには、アルミフレーク31を覆う保護層40が形成されている。保護層40は、光Lを透過する光透過性を有する材料で形成されている。本実施形態においては、保護層40は、例えば、樹脂で形成されている。保護層40を形成する樹脂としては、例えばウレタン樹脂を適用することができるが、ウレタン樹脂以外の樹脂でもよい。また、保護層40は、樹脂以外の材料であってもよく、例えばガラスを適用することもできる。
<文字板の製造方法>
上述した文字板10は、一例として以下の製造工程により製造される。図6は、文字板10を製造する工程における、基材20の表面に塗料を吹き付けて塗膜30を形成した直後の状態を示す図3相当の断面図、図7は、文字板10を製造する工程における、基材20の表面20aに塗料を吹き付けて塗膜30を形成してから時間が経過し、塗膜30に含まれている溶剤33が揮発した状態を示す図6相当の断面図である。
【0028】
図8は、文字板10のおもて面10a側から見た視認者が視認する金属調の文字板10を示す一例の写真である。
【0029】
まず、基材20に塗膜30を形成するための塗料を生成する。この塗料は、主に、溶剤(例えば、シンナー)33及びアルミフレーク31が混合して液状に形成されている。なお、この塗料には、溶剤33の揮発を妨げない添加剤や揮発を促進させる添加剤を添加してもよい。溶剤33は、アルミフレーク31を塗膜30として基材20の面に分散して一時的に固定する機能を発揮すればよいため、アルミフレーク31に対して過度な量を必要としない。
【0030】
次に、上述した液状の塗料を、基材20の、上方を向いた面(上面)に吹き付ける。塗料を吹き付ける基材20の上面は、表裏どちらの面でもよいが、塗料を吹き付けた側の上面を、基材20のおもて面20aとして、以下、取り扱うものとする。
【0031】
塗料が吹き付けられて形成された塗膜30は、図6に示すように、固体のアルミフレークの31とともに、当初は、液状の溶剤33も膜を形成している。アルミフレーク31は、横たわった平らな姿勢に揃い、1枚又は2枚以上が重なって、基材20のおもて面20aを覆った状態となる。
【0032】
次に、基材20に塗膜30が形成された文字板10を加熱する。この加熱により、図7に示すように、溶剤33が揮発して、基材20のおもて面20aにはアルミフレーク31だけが残り、アルミフレーク31は横たわった平らな姿勢で固定される。
【0033】
なお、文字板10を加熱することなく、自然乾燥(溶剤を積極的に揮発させるための乾燥操作を行わずに、環境に放置した状態とし、その環境の温湿度状態にしたがって、自然に乾燥すること)により、溶剤33を揮発させてもよい。
【0034】
なお、塗料に、溶剤33及びアルミフレーク31の他に、接着機能を有する添加剤を添加することにより、溶剤33の揮発後の、積層されたアルミフレーク31同士の固定力や、おもて面20aとアルミフレーク31との固定力を増強することができる。
【0035】
塗膜30を形成した際に、アルミフレークが配置されていない開口部11を形成する割合である開口率は、塗料の吹き付け量(塗布時間、吐出量、塗装ガンの霧化圧力、塗装ガンとの距離)に依存するところが大きい。つまり、塗料の吹き付け量が多くなるにしたがって、開口率は低くなり、塗料の吹き付け量が少なくなるにしたがって、開口率は高くなる。
【0036】
溶剤33が揮発して、基材20のおもて面20aにアルミフレーク31が固定された状態(図7)で、図3に示すように、おもて面20a側に樹脂の塗料を、少なくともアルミフレーク31を露出させずに覆うように吹き付けて、アルミフレーク31を保護する保護層40を形成する。
【0037】
なお、保護層40を形成する塗料には、保護層40の熱硬化を促進させる硬化剤を添加してもよい。
<作用>
以上のように構成された文字板10によると、文字板10のおもて面10aから裏面10bに向けて入射した光Lは、保護層40を透過するが、アルミフレーク31で多くが反射される。つまり、平らな姿勢となっているアルミフレーク31に、おもて面10aから入射した光Lは、アルミフレークの31の平らな面で多くが反射されて、おもて面10aに戻る。
【0038】
アルミフレーク31は、平らな姿勢で揃っているため、おもて面10aに戻る反射光の向きも揃い、輝度の高い反射光として視認される。このため、おもて面10a側から見た視認者に対して、文字板10からの高輝度の反射光により、図8に示すように、文字板10を金属調に見させる(金属感を感じさせる)ことができる。
【0039】
ここで、アルミフレーク31は、厚さ方向に接して積み重なっている。このため、アルミフレーク同士が厚さ方向に離れて配置されている文字板のように、分散膜の厚さ方向の異なる離れた位置に固定された複数のアルミフレーク間で、入射した光が乱反射することが無い。
【0040】
したがって、本実施形態における塗膜30は、反射光の輝度の均一度合いを高めることができる。また、アルミフレーク31の1層目に形成された開口部11を、2層目以上の積み重なるアルミフレーク31が塞ぐこともでき、開口率を調整することもできる。
【0041】
また、アルミフレーク31は、厚さが非常に薄いため、光Lを所定量、透過させることができる。このため、文字板10に、アルミフレーク31が全く配置されていない開口部11が形成されていない場合も、光Lを、基材20の裏面20bにある程度透過させることができる。
【0042】
これにより、時計100が、文字板10の裏面10b側に光Lにより発電するソーラセルが配置されている太陽電池時計の場合であって、そのソーラセルに光Lを照射することができ、太陽電池時計を有効にも動作させることができる。
【0043】
したがって、本実施形態の文字板10は、光や電波を透過しつつ、金属の反射光と同様の反射光(金属調の反射光)を得ることができる。そして、本実施形態の文字板10、時計100及び文字板10の製造方法によれば、アルミフレーク31が複数積層されている部分においても、厚さ方向に接して積み重なっているため、アルミフレーク31同士が厚さ方向に離して固定する文字板のように、アルミフレーク31の層を複数回に分けて形成する必要がなく、製造の手間及びコストを低減することができる。
【0044】
なお、厚さの非常に薄いアルミフレーク31は、電波も透過させることができるため、時計100が、文字板10の裏面10b側に電波を受信するアンテナが配置されている電波修正時計の場合であって、開口部11が形成されていない場合も、そのアンテナに電波を受信させることができ、電波修正時計を有効にも動作させることができる。
【0045】
また、厚さの非常に薄いアルミフレーク31は、露出している状態では、水分や物理的な接触、摩擦に対して弱いため、基材20から剥離し易いが、本実施形態の文字板10は、アルミフレーク31が保護層40によって覆われていて露出していないため、水分や物理的な接触、摩擦から保護することができる。
<実験例>
表1は、本実施形態の文字板10について、保護層40の膜厚を1[μm]未満から5[μm]超えまで変化させ、文字板10の平面視での、開口部11の開口率[%]を3[%]未満から45[%]超えまで変化させたときの、外観評価と、文字板10のおもて面10a側から裏面10b側まで光Lが透過する割合である透過率(表示板の透過率)と、これらに基づいた総合的な評価の結果を示す実験例である。
【0046】
【表1】
【0047】
開口率を大きくするにしたがって透過率は大きくなり、反対に、開口率を小さくするにしたがって透過率は小さくなるが、上述したように、開口率を0[%]としても透過率は0[%]にならない。したがって、開口部11を減らしても、光Lの透過率を確保し易い。
【0048】
なお、文字板10に開口部11がある程度大きな割合で分布すると、反射光が少なくなってざらついた質感(ざらざら感、粒状感)が出易いが、本実施形態の文字板10は、開口率を高めずに光Lの透過率を高めることができるので、ざらついた質感が出難い。加えて、アルミフレーク31が平らな姿勢に揃い易いため、平滑度合いが高くなり、金属メッキのような光沢感のある高輝度の反射光を得ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の文字板10は、アルミフレーク31の厚さが非常に薄いことで、側面(厚さの面)が小さくなり、側面での反射による乱反射も起こりにくく、これによってもざらついた質感が抑制される
そして、透過率が大きくなると、文字板10の裏面10b側への透過光量は増大して、文字板10の裏面10b側に配置されることのあるソーラセルに到達する光量を増大し、また、文字板10の裏面10b側に配置されることのあるアンテナに到達する電波を増大する。
【0050】
反対に、透過率が小さくなると、アルミフレーク31による反射光の割合が増大するため、文字板10は金属感が大きくなる一方、文字板10の裏面10b側への透過光量は減少して、文字板10の裏面10b側に配置されることのあるソーラセルに到達する光量を低減し、また、文字板10の裏面10b側に配置されることのあるアンテナに到達する電波を低減する。
【0051】
表1に示した実験例では、開口率が3~45[%]の範囲で、光Lの透過率として10~50[%]を確保することができる。光Lの透過率が10~50[%]では、文字板10への裏面10b側に光Lを十分に供給することができるとともに、金属感の外観を得ることができる。したがって、所定割合の開口率は、一例として3~45[%]の範囲であることが、総合評価として好ましい(表中の〇印又は◎印で表示)。なお、開口率3~45[%]に対応して、保護層40の膜厚は、実験例においては5~1[μm]の範囲であることが好ましい。
【0052】
保護層40の膜厚が1[μm]未満であると、アルミフレーク31が露出することがあり、保護層40の膜厚が5[μm]超えであると、保護層40の肉厚感が生じて、金属調の表面にコーティングが施された塗装感が強くなって、金属感が薄らぐからである。
【0053】
開口率6~40[%]の範囲では、透け感の無い金属感の外観を得ることができるとともに、透過率も15[%]以上確保することができるため、開口率は、一例として15~40[%]の範囲であることが、総合評価としてより好ましい(表中の◎印で表示)。
【0054】
上述した実験例において、アルミフレーク31の厚さは10~30[nm]としたが、厚さ以外の寸法としては、例えば、数[μm]~30[μm]程度(平均値10~20[μm])の大きさであった。
【0055】
アルミフレーク31の厚さは、10~30[nm]と非常に薄い値であるため、金属ではあっても、他のアルミフレーク31の表面や、基材20のおもて面20aの輪郭形状に倣いやすい。
【0056】
したがって、例えば、基材20のおもて面20aに、文字板10として用いられるヘアライン加工(非常に細かい溝等で形成された凹凸模様)や旭光模様、打ち出し模様、砂地模様等の凹凸模様が形成されていた場合にも、おもて面20aに積層されたアルミフレーク31が、おもて面20aの凹凸模様を潰してしまうことが無く、おもて面20aの細かい凹凸に倣った凹凸形状に対応した反射光を出射することができる、
<変形例1>
本実施形態の文字板10は、保護層40を無色透明としたが、保護層40を有色透明としてもよい。保護層40を例えば黄色系に着色したものでは、アルミフレーク31からのシルバー色の反射光と保護層40の黄色が重畳してゴールド色の反射光を得ることができる。保護層40の有色は、黄色に限らず、他の色を適用することもできる。
<変形例2>
図9は実施形態の文字板10の変形例1を示す図3相当の断面図である。上述した実施形態の文字板10は、基材20のおもて面20a側にアルミフレーク31が形成されていて保護層40のおもて面40aが、文字板10のおもて面10aに相当するが、本発明に係る時計用表示板は、図9に示すように、文字板10のおもて面10a側が基材20、文字板10の裏面10b側が保護層40となる配置であってもよい。
【0057】
つまり、図9に示した文字板10は、図3に示した文字板10の表裏を反対にして用いるものであり、図3における基材20の裏面20bを文字板10のおもて面10aとし、図3における保護層40のおもて面40aを文字板10の裏面10bとしたものである。
【0058】
このように、基材20と保護層40との積層順序を反対にした文字板10であっても、上述した実施形態の文字板10、時計100と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、この場合、図3に示した文字板10における保護層40を着色するのに代えて、基材20を着色して有色とすることもできる。
<変形例3>
図10は変形例2の文字板10の基材20の裏面20b側に、さらにトップコート45を形成した変形例3の文字板10を示す図3相当の断面図である。
【0060】
このように、基材20にトップコート45を積層した構造は、上述した実施形態の文字板10、時計100と同様の効果を得ることができるとともに、文字板10を有色にする場合、基材20や保護層40といった文字板10の基本的な構造部分を共通にしつつ、トップコート45の色を変えるだけで、色違いの複数種類の文字板10を実現することができる。
【0061】
また、トップコート45に特別な機能(例えば、紫外線カットや赤外線カットの機能)を持たせることで、文字板10の日焼け防止や高温になるのを防止することもできる。
【0062】
上述した実施形態及び変形例の文字板10は、基材20のおもて面20aに配置する金属箔片としてアルミフレーク31を適用したものであるが、本発明に係る時計用表示板は、アルミフレーク31に代えて、アルミニウムやアルミニウム合金とは異なる他の金属の箔片を適用してもよい。また、塗装又は蒸着その他の表面処理を施すことで着色した金属の薄片を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 文字板
10a おもて面
20 基材
30 分散膜
31 アルミフレーク
40 保護層
100 時計
L 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10