(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/24 20060101AFI20240123BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20240123BHJP
H02K 1/28 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H02K1/24 B
H02K19/10 Z
H02K1/28 D
(21)【出願番号】P 2020008574
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019090812
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】桂 斉士
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
(72)【発明者】
【氏名】北田 賢司
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/040247(WO,A1)
【文献】特開平06-165448(JP,A)
【文献】特開2017-136902(JP,A)
【文献】実開昭63-015176(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/24
H02K 19/10
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転部材と、
前記非回転部材に固定された固定子と、
前記非回転部材に固定され、前記固定子の内径側に配置され、界磁コイル鉄心に巻線を巻回した界磁コイルと、
前記固定子および前記界磁コイルの間に回転可能に配置された回転子と
を備え、
前記回転子が、
前記界磁コイル鉄心の回転軸の延在方向に沿ってそれぞれ配置された第1回転子部および第2回転子部を有し、
前記第1回転子部が、
前記回転子の回転軸に対する周方向に延びる第1環状部と、
前記第1環状部から前記回転子の回転軸に対する径方向に延びる第1接続部と、
前記第1接続部から前記延在方向に延びると共に、前記第1環状部とは前記径方向において間隔を空けて配置された第1延在部と
を有する、回転電機であって、
前記第1延在部の前記径方向の内側または外側に配置され、前記第1回転子部を前記周方向および前記延在方向に位置決めする非磁性体の位置決め部材を備え、
前記位置決め部材が、
本体部と、
前記本体部の前記延在方向の一端から前記本体部の前記延在方向の他端に接近する方向に延びて、前記第1接続部が配置される第1溝部と、
前記本体部の前記一端から前記延在方向に沿って前記本体部から離れる方向に延びて、回転部材が接続される接続軸部と
を有する、回転電機。
【請求項2】
前記第2回転子部が、
前記周方向に延びる第2環状部と、
前記第2環状部から前記回転子の回転軸に対する径方向に延びる第2接続部と、
前記第2環状部から前記延在方向に延びると共に、前記第2環状部とは前記径方向において間隔を空けて配置され、前記周方向において前記第1延在部に対して隙間を空けて配置された第2延在部と
を有し、
前記位置決め部材が、
前記本体部の前記延在方向の他端から前記本体部の前記一端に向かって延びて前記第2接続部が配置された第2溝部を有し、
前記第1溝部および前記第2溝部が、前記周方向において異なる位置に配置されている、請求項
1の回転電機。
【請求項3】
前記隙間に配置され、前記第1回転子部および前記第2回転子部の各々を前記周方向に位置決めする補助位置決め部材をさらに備える、請求項
2の回転電機。
【請求項4】
前記位置決め部材が、
前記周方向に間隔を空けて配置された複数の前記第1溝部を有し、
前記接続軸部が、
前記周方向に隣接する前記第1溝部の間にそれぞれ配置された複数の板状部材で構成されている、請求項
1から
3のいずれか1つの回転電機。
【請求項5】
前記径方向における前記界磁コイル鉄心と前記回転子との間に配置された永久磁石をさらに備える、請求項
1から
4のいずれか1つの回転電機。
【請求項6】
前記位置決め部材が、
前記本体部の外面または内面に設けられ、前記第1溝部から前記本体部の前記他端に接近する方向に延びて、前記第1延在部を収容する凹部をさらに有する、請求項
1から
5のいずれか1つの回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトと、前記シャフトと一体回転する磁極を備えた回転子と、前記回転子の外側に対向配置された固定子と、前記シャフトを回転自在に支持し、前記回転子および前記固定子を収納するブラケットと、前記ブラケットに固定され、内周面が空隙を介して前記回転子と対向し、前記回転子および前記固定子とともに磁気回路を形成する継鉄部と、前記継鉄部のうち外径が他の部分より小さい薄肉部の外周面と係合するボビンと、前記ボビンに巻回され、磁束を発生させる界磁コイルと、前記薄肉部に接合され、前記ボビンを軸方向に保持する保持材とを備えた回転電機が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の回転電機では、回転子は、相互に接触した状態で連結されたフロント磁極鉄心およびリヤ磁極鉄心とで構成されている。このため、隙間を空けて配置された2つの部材で構成されている回転子における各部材の位置決めについては考慮されてない。
【0005】
本発明は、隙間を空けて配置された第1回転子部および第2回転子部をより正確に位置決め可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、以下のように構成する。すなわち、本発明の1つの態様によれば、非回転部材と、前記非回転部材に固定された固定子と、前記非回転部材に固定され、前記固定子の内径側に配置され、界磁コイル鉄心に巻線を巻回した界磁コイルと、前記固定子および前記界磁コイルの間に回転可能に配置された回転子とを備え、前記回転子が、前記界磁コイル鉄心の回転軸の延在方向に沿ってそれぞれ配置された第1回転子部および第2回転子部を有し、前記第1回転子部が、前記回転子の回転軸に対する周方向に延びる第1環状部と、前記第1環状部から前記延在方向に延びる第1延在部とを有し、前記第2回転子部が、前記周方向に延びると共に、前記延在方向において前記第1延在部に対して第1隙間を空けて配置された第2環状部と、前記第2環状部から前記延在方向に延びると共に、前記周方向において前記第1延在部に対して第2隙間を空けて配置されかつ前記延在方向において前記第1環状部に対して第3隙間を空けて配置された第2延在部とを有する、回転電機であって、前記第1隙間、前記第2隙間および前記第3隙間の各々に配置されて、前記第1回転子部および前記第2回転子部の各々を前記周方向および前記延在方向に位置決めする位置決め部材を備える、回転電機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
前記態様の回転電機によれば、回転子の回転軸の延在方向における第1延在部と第2環状部との間の第1隙間、回転子の回転軸に対する周方向における第1延在部と第2延在部との間の第2隙間、および、回転子の回転軸の延在方向における第2延在部と第1環状部との間の第3隙間の各々に配置された位置決め部材を備えている。このような構成により、第1回転子部および第2回転子部をより正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図2】
図1のハウジングを示す部分破断斜視図である。
【
図3】
図1の界磁コイル鉄心を示す部分破断斜視図である。
【
図5】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図6】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係る回転子の部分破断斜視図である。
【
図8】他の実施形態に係る回転子の部分破断斜視図である。
【
図9】他の実施形態に係る回転子の部分破断斜視図である。
【
図10A】他の実施形態に係る回転子および界磁コイル鉄心の部分破断斜視図である。
【
図10B】
図10Aとは異なる方向から見た回転子および界磁コイル鉄心の部分破断斜視図である。
【
図11】他の実施形態に係る界磁コイル鉄心の部分破断斜視図である。
【
図12】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図13】他の実施形態に係る回転子の側面図である。
【
図14】他の実施形態に係る位置決め部材の側面図である。
【
図15】他の実施形態に係る第1回転子部の斜視図である。
【
図16】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図17】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図18】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図19】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図20】他の実施形態に係る位置決め部材の側面図である。
【
図21】他の実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。
【
図22】他の実施形態に係る位置決め部材の側面図である。
【
図23】他の実施形態に係る回転子の部分破断斜視図である。
【
図24】他の実施形態に係る回転子の部分破断側面図である。
【
図25】他の実施形態に係る位置決め部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0010】
本発明の回転電機は、HEV(ハイブリッド電気自動車)、EV(電気自動車)、その他電動機を構成として含む機器に適用できる。本実施形態では、一例としてEV(電気自動車)用の回転電機について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る回転電機の部分破断斜視図である。この回転電機は、非回転部材の一例のハウジング1と、ハウジング1の外周面を覆うジャケット2と、ハウジング1内に設けられる、固定子3、界磁コイル鉄心4及び回転子5とを備え、回転子5が、界磁コイル鉄心4のまわりをハウジング1、固定子3及び界磁コイル鉄心4に対して回転するように構成されている。
【0012】
ハウジング1は、
図2に示すように、有底筒状のハウジング本体6と、このハウジング本体6の一端側開口部を覆う蓋体(図示せず)とで構成されている。ハウジング本体6の他端側の壁部6aの中央には段付き凹部8が形成されている。段付き凹部8の中心には貫通穴9が形成されている。壁部6aの内面側には、段付き凹部8によってガイド部10が形成されている。ガイド部10は、段付き形状で、先端側から第1凸部10a、第2凸部10b及び第3凸部10cで構成されている。壁部6aの外端面には、段付き凹部8の周囲の内径側環状リブ11aと、外周縁の外径側環状リブ11bと、径方向に延び、内径側環状リブ11aと外径側環状リブ11bとを接続する複数の直線リブ11cとが形成されている。また、ハウジング本体6の外周面には全周に亘って環状溝12が形成されている。
【0013】
ジャケット2は、
図1に示すように、ハウジング1の外周面を覆う円筒状に形成されている。ジャケット2は、ハウジング1の環状溝12を覆って熱交換媒体の一例としての冷却水を流動させる冷却水路13を区画する。ジャケット2には、冷却水路13に連通する複数の連通穴(図示せず)が形成され、これら連通穴を介して冷却水路13で冷却水を流動できるように構成されている。
【0014】
固定子3は、固定子コア14とコイル15を備える。固定子コア14は、複数の電磁鋼板を積層することにより得られる。固定子コア14は、電磁鋼板の積層方向が界磁コイル鉄心4の軸方向に合致するようにしてハウジング1に取り付けられている。コイル15は、固定子コア14にその軸方向の両端部からはみ出すように巻回されている。
【0015】
界磁コイル鉄心4は、
図3に示すように、界磁コイル鉄心本体16、界磁コイル鉄心鍔部17及び界磁コイル18を備える。界磁コイル鉄心本体16は、鉄心部19と鍔部20で構成されている。鍔部20の端面中央には円形状の位置決め凹部21が形成されている。位置決め凹部21の中心には流動穴22が形成されている。流動穴22は、鉄心部19の長手方向の中央位置を超えて延び、先端近傍に到達している。また鍔部20の端面外周側には環状凸部23が形成されている。界磁コイル鉄心鍔部17は鉄心部19の先端に固定されている。界磁コイル18は、鍔部20との間に形成されるコイル巻回部に巻回されている。
【0016】
界磁コイル鉄心4は、その界磁コイル鉄心鍔部17をハウジング1の壁部6aの内面に形成したガイド部10に固定されている。すなわち、界磁コイル鉄心鍔部17の位置決め凹部21にはガイド部10の第1凸部10aが嵌合し、環状凸部23にはガイド部10の第2凸部10bが嵌合している。これにより、界磁コイル鉄心4は、ハウジング1に対していわゆる片持ち状態で支持される。この状態で、ハウジング1の貫通穴9と、界磁コイル鉄心4の流動穴22とが連通する。流動穴22には、貫通穴9を介して、流動穴22よりも小さい外径寸法を有するパイプ24が挿入されている。これにより、パイプ24の中心穴(第1流路)を介して流動穴22内に冷却水を供給すると、この冷却水は、パイプ24の中心穴を通って流動穴22の底部まで到達し、流動穴22とパイプ24の間に形成される環状通路25(第2流路)を貫通穴9側まで流動した後、流動穴22の外部に排出されることになる。なお、環状凸部23と第2凸部10bとが嵌合することにより、第2凸部10bの外周部分に環状につながった溝が形成されている。この溝にはベアリング26が配置されている。
【0017】
回転子5は、
図4に示すように、第1回転子部27と第2回転子部28とを備え、界磁コイル鉄心4の外周側で、界磁コイル鉄心4に対して回転可能に支持されている。
【0018】
第1回転子部27は、第1環状部29を備える。第1環状部29からは、この第1環状部29よりも小径の筒部30が突出している。第1環状部29は、ベアリング26を介してハウジング1のガイド部10に回転可能に支持されている。また、第1環状部29からは、筒部30とは反対側に複数の第1延在部31が突出している。第1延在部31は、第1環状部29の周方向に所定ピッチで形成され、隣接する2つの第1延在部31の間は第1逃がし部32となっている。第1回転子部27は磁性材料で構成され、界磁コイル18の巻線への通電により例えばS極となる。
【0019】
第2回転子部28は、第2環状部33を備える。第2環状部33は、固定子3および界磁コイル18に対して回転可能に支持されている。第2環状部33からは、この第2環状部33よりも小径の台座部34が突出している。台座部34の中央からは回転軸部35が突出している。回転軸部35の回転力が図示しない被駆動部へと伝達される。また、第2環状部33からは、台座部34とは反対側に、複数の第2延在部36が突出している。第2延在部36は、第2環状部33の周方向に所定ピッチで形成され、隣接する2つの第2延在部36の間は第2逃がし部37となっている。第2回転子部28は磁性材料で構成され、界磁コイル18の巻線への通電により例えばN極となる。
【0020】
第1回転子部27と第2回転子部28は、第1回転子部27の第1延在部31を第2回転子部28の第2逃がし部37に、第2回転子部28の第2延在部36を第1回転子部27の第1逃がし部32にそれぞれ位置させた状態で、電気的に絶縁された位置決めピン38によって互いに連結される。これにより、第1回転子部27と第2回転子部28とは、周方向及び軸方向への位置ずれが防止され、第1延在部31と第2延在部36とで筒状部39が形成される。
【0021】
前記構成の回転電機では、図示しないインバータからコイル15に通電して回転子5を電気的に回転させることにより回転軸部35を介して被駆動部を駆動する。このとき、コイル15への通電によりコイル15自体が発熱する。そこで、ハウジング1とジャケット2とで形成された冷却水路13に冷却水を供給する。供給された冷却水は冷却水路13を流動し、ハウジング1の外周面から内部の熱を吸収する。また、パイプ24を介して界磁コイル鉄心4の流動穴22に冷却水を供給する。供給された冷却水は、流動穴22とパイプ24との間に形成される環状通路25を流動して界磁コイル鉄心4を介して界磁コイル18の熱を吸収する。
【0022】
このように、前記実施形態に係る回転電機によれば、ハウジング1とジャケット2の間の冷却水路13だけでなく、界磁コイル鉄心4内にも冷却水を供給することにより、内側からも冷却できるようにしている。したがって、界磁コイル18を有する界磁コイル鉄心4を回転子5の内径側に配置した構成であるにも拘わらず、界磁コイル18から発生する熱を効果的に除去し、良好な駆動状態を確保できる。
【0023】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0024】
前記実施形態では、水冷式としたが、油冷式等の他の熱交換媒体を利用した冷却方式としてもよい。
【0025】
前記実施形態では回転子5の筒状部39は、ほぼ均一厚さの円筒状に形成したが、その一部を、薄肉としたり、あるいは、厚肉としたりしてもよい。
【0026】
図5では、第1回転子部27の外周面と、第2回転子部28の外周面とに、周方向につながる凹部40(第1環状部29側のみ図示)がそれぞれ形成されている。各凹部40は、固定子3の両端部側にそれぞれ対向している。これにより、固定子3の中央部から回転子5に向かう部分に磁束を集中させることができ、回転子5の回転状態を安定させることができる。
【0027】
図6では、第1回転子部27の第1延在部31及び第2回転子部28の第2延在部36の内面が、先端に向かうに従って徐々に外径側に肉厚が除変する湾曲面35aで構成されている。つまり、第1延在部31及び第2延在部36の肉厚を基部側で厚く、先端に向かうに従って徐々に薄くなるようにしている。これにより、第2延在部36の固定子3に対向する部分で、ほぼ均一な磁束分布を得ることができるようにしている。
【0028】
この場合、界磁コイル鉄心4の鉄心部19に巻回する界磁コイル18の形状を段付き形状とするのが好ましい。ここでは、界磁コイル18を、複数の階段状を成すように巻回することで、全体としてラグビーボール状とし、第1延在部31及び第2延在部36の内面形状に沿うように形成している。これにより、回転子5の内側のスペースを有効利用して、界磁コイル18の有効断面積を多くすることができる。
【0029】
前記実施形態では、第1回転子部27と第2回転子部28を位置決めピン38で連結するようにしたが、次のように構成してもよい。
【0030】
図7に示すように、回転子5は、その回転軸の延在方向(すなわち、
図7に示す直線Lの延在方向)における第1回転子部27の第1延在部31と第2回転子部28の第2環状部33との間に第1隙間61を有し、回転子5の回転軸に対する周方向における第1回転子部27の第1延在部31と第2回転子部28の第2延在部36との間に第2隙間62を有し、界磁コイル鉄心4の延在方向における第1回転子部27の第1環状部29と第2回転子部28の第2延在部36との間に第3隙間63を有している。第1回転子部27と第2回転子部28との間の各隙間61、62、63に、永久磁石または非磁性材料で構成された位置決め部材50が配置されている。一例として、位置決め部材50は、非磁性体で構成された略直方体状の第1位置決め部材41と、非磁性体で構成された略円柱状の第2位置決め部材とを有している。第1位置決め部材41は、第2隙間62に配置されて、第1回転子部27および第2回転子部28の周方向の位置を決めている。第2位置決め部材42は、第1隙間61および第2隙間62の各々に配置されて、第1回転子部27および第2回転子部28の軸方向(すなわち、界磁コイル鉄心4の延在方向)の位置を決めている。
【0031】
第1延在部31および第2延在部36の各々には、幅方向(すなわち、回転子5の回転軸に対する径方向)の中心に、先端から基部側に向かって延びる溝36a(第1延在部31側は図示せず)が形成されている。第1位置決め部材41の周方向の両側面には、径方向の中心に設けられ、長手方向に延びる突条部41aがそれぞれ形成されている。各突条部41aは、溝36aに嵌合可能な形状を有している。このような構成により、回転子5の回転強度を高めつつ、第1回転子部27および第2回転子部28をより正確に位置決めできる。なお、溝36a及び突条部41aは、断面矩形状であってもよいが、断面T字形とすることにより端面側からスライドさせて係合させる構成とすれば、径方向の位置決めをより確実に行える点で好ましい。
【0032】
図8では、第1回転子部27と第2回転子部28の間に、永久磁石で構成された第1位置決め部材41が配置されている。また、第1位置決め部材41を永久磁石で構成することで、回転子5のトルク伝達性能を向上させることができる。
【0033】
図9では、さらに、第1延在部31の先端と第2逃がし部37の間(すなわち、第1隙間61)、及び、第2延在部36の先端と第1逃がし部32の間(すなわち、第3隙間63)に、永久磁石で構成された略直方体状の第2位置決め部材42が配置されている。また、第2位置決め部材42も、第1位置決め部材41と同様に非磁性体で構成することも可能である。この場合、第1回転子部27の第1延在部31および第2回転子部28の第2環状部33の相互に対向する面、及び、第1回転子部27の第1環状部29および第2回転子部28の第2延在部36の相互に対向する面に、周方向に延びる溝を形成する一方、第2位置決め部材42の軸方向の両側面に突条部を形成して、両者を嵌合することができる。れにより、回転子5の周方向には第1位置決め部材41によって、回転子5の軸方向には第2位置決め部材42によってそれぞれ位置決めされる。
【0034】
図10Aおよび
図10Bでは、回転子5の内径側に位置決めリングの一例の補強リング43が配置されている。補強リング43は、中空の円筒状で、両端開口縁から長手方向に延びる複数の溝部44がそれぞれ形成されている。複数の溝部44には、補強リング43の軸方向の一端から軸方向に沿って軸方向の他端に向かって延びる第1溝部441と、補強リング43の軸方向の他端から軸方向に沿って軸方向の一端に向かって延びる第2溝部442とが含まれている。第1溝部441は、第1回転子部27の各第1延在部31にそれぞれ対応する位置に形成され、第2溝部442は、第2回転子部28の各第2延在部36にそれぞれ対応する位置に形成されている。各第1延在部31及び各第2延在部36には、各溝部44に係合する断面T字形の突条部36b(第1延在部31側は図示せず)がそれぞれ形成されている。言い換えると、第1回転子部27は、第1延在部31から回転子5の回転軸に対する径方向に突出する第1突起部73(
図10Bに示す)と、第1突起部73の径方向の先端から回転子5の回転軸に対する周方向に延びる第1係止部74(
図10Bに示す)とを有している。また、第2回転子部28は、第2延在部36から径方向に突出する第2突起部71(
図10Aに示す)と、第2突起部71の径方向の先端から周方向に延びる第2係止部72(
図10Aに示す)とを有している。第1突起部73は、第1溝部441に配置され、第2突起部71は、第2溝部442に配置されている。各係止部72、74は、一例として、各突起部71、73の先端から周方向の両側に延びて、第1回転時部27および第2回転子部28を径方向に係止する。このような構成により、回転子5の回転強度を高めつつ、第1回転子部27および第2回転子部28をより正確に位置決めできる。すなわち、
図10の構成によれば、
図9に示すような第1位置決め部材41や第2位置決め部材42を不要としても、回転子5の回転強度を向上しつつ、第1回転子部27および第2回転子部28を位置決めすることができる。補強リング43は、回転子5の内径側(すなわち、第1延在部31および第2延在部36の径方向の内側)に限らず、回転子5の外径側(すなわち、第1延在部31および第2延在部36の径方向の外側)に配置してもよい。
【0035】
前記実施形態では、パイプ24および環状通路25で構成された流路を設けているが、この流路は、省略することができる。すなわち、本発明は、流路が設けられていない回転電機にも適用できる。
【0036】
前記実施形態では、界磁コイル鉄心4の鉄心部19の中心に流動穴22を形成するようにしたが、この流動穴22は次のように構成することもできる。
【0037】
図11では、鉄心部19の外周側の同一円周上に複数の流動穴45が形成されている。各流動穴45は鉄心部19の両端に貫通している。界磁コイル鉄心鍔部17には、前記複数の流動穴45が連通する環状溝46が形成されている。この構成により、鉄心部19の一端側からいずれかの流動穴45から流入した熱交換媒体は、他端側へと流動した後、環状溝46を流動して残る他の流動穴45のいずれかを介して一端側へと流動する。これによれば、鉄心部19の外周側での冷却が可能となり、中心部に設ける場合に比べてより一層冷却効果を発揮させることができる。
【0038】
位置決め部材50は、次のように構成することもできる。なお、
図12~
図26では、回転子5を構成する2つの回転子部27、28について、延在方向において壁部6aから遠い方の回転子部を第1回転子部27とし、延在方向において壁部6aに近い方の回転子部を第2回転子部28としている。
【0039】
例えば、
図12~
図15に示す回転電機の位置決め部材50は、アルミニウム、ステンレスまたは樹脂等の非磁性体で構成され、本体部51と、本体部51における回転子5の回転軸の延在方向(言い換えると、
図12の直線Lの延在方向。以下、単に延在方向という。)の一端に設けられた接続軸部52とを有している。
【0040】
本体部51は、
図14に示すように、一例として略円筒形状で、延在方向の一端に設けられた第1溝部441と、延在方向の他端に設けられた第2溝部442とを有している。第1溝部441および第2溝部442の各々は、略四角形状を有し、本体部51をその板厚方向に貫通している。第1溝部441には、後述する第1回転子部27の接続部53(
図15参照)が配置され、第2溝部442には、後述する第2回転子部28の接続部が配置されている。第1溝部441および第2溝部442は、回転子5の回転軸に対する周方向(以下、単に周方向という。)において異なる位置に配置されている。具体的には、周方向に隣接する第1溝部441の間に第2溝部442が位置し、周方向に隣接する第2溝部442の間に第1溝部441が位置している。なお、本体部51は、例えば、第1溝部441が設けられた第1の部分と第2溝部442が設けられた第2の部分とで構成されたセグメント構造であってもよい。また、第1溝部441および第2溝部442の各々は、略四角形状に限らず、例えば、略三角形状であってもよい。
【0041】
接続軸部52は、
図12に示すように、一例として、本体部51の外周に沿って湾曲した複数の板状部材521で構成され、本体部51と一体に形成されている。各板状部材521は、
図13および
図14に示すように、周方向に隣接する第1溝部441の間にそれぞれ配置され、本体部51の一端から延在方向に沿って本体部51から離れる方向に延びている。接続軸部52は、その先端(言い換えると、接続軸部52における延在方向の前記本体部51から遠い方の端部)が、トルクコンバータの外殻、マニュアルクラッチおよびフライホイールの外殻等の回転部材に接続可能に構成されている。例えば、
図16に示すように、各板状部材521の先端に略円盤形状の土台81を固定し、この土台81から延在方向に延びる略円柱形状の軸部材82を介して、間接的に、接続軸部52を回転部材100に接続することができる。この場合、例えば、位置決め部材50がクラッチ要素に直接接続されて、回転電機の部品点数が削減される。また、例えば、
図17に示すように、各板状部材521の先端を径方向の外側に折り曲げてフランジ部522を形成し、このフランジ部522を介して、直接的に、接続軸部52を回転部材100に接続することができる。この場合、回転子5が軸方向に位置決めされ、軸受け等の別部品で支持する必要がなくなる。なお、接続軸部52と土台81または回転部材100とは、例えば、ボルト締結、リベット締結または溶接により固定されて接続される。
【0042】
図12~
図15に示す回転電機では、第1回転子部27および第2回転子部28は同じ形状および構成を有している。第1回転子部27は、
図15に示すように、第1環状部29、複数の第1接続部53および複数の第1延在部31を有している。第1環状部29は、リング形状を有し、周方向に延びている。各第1接続部53は、第1環状部29の外周面から回転子5の回転軸に対する径方向の外側に延びている。各第1延在部31は、第1接続部53から延在方向に延びる略直方体形状を有し、第1環状部29の外周面に対して径方向において間隔Wを空けて配置されている。第1環状部29および第1延在部31は、第1接続部53を介して接続されている。第2回転子部28は、第2環状部33(
図17参照)、複数の第2接続部54(
図17参照)および複数の第2延在部36(
図17参照)を有している。前述の通り、第2環状部33は、第1環状部29と同じ形状および構成を有し、第2接続部54は、第1接続部53と同じ形状および構成を有し、第2延在部36は、第1延在部31と同じ形状および構成を有している。第2延在部36は、周方向において第1延在部31に対して第2隙間62を空けて配置されている。第1延在部31の延在方向の先端(言い換えると、第1延在部31の延在方向における第1環状部29から遠い方の端部)および第2延在部36の延在方向の先端(言い換えると、第2延在部36の延在方向における第2環状部33から遠い方の端部)は、延在方向において第1環状部29と第2環状部33との間に配置されている。第1延在部31および第2延在部36の各々は、位置決め部材50の径方向の外側に配置されている。
【0043】
このように、
図12~
図15に示す回転電機によれば、位置決め部材50が、回転電機の入出力軸を構成するので、部品点数を抑制しつつ、第1回転子部27および第2回転子部28を軸方向および周方向において位置決めすることができる。また、第1回転子部27および第2回転子部28に同じ形状および構成の部材を用いることができる。さらに、回転部材100への接続に対して、様々な接続方法を選択することができる。その結果、構造設計の自由度の高い回転電機を実現できる。
【0044】
図18に示すように、
図12~
図15に示す回転電機は、第2隙間62に配置された補助位置決め部材47をさらに備えることができる。このような構成により、第1回転子部27および第2回転子部28の周方向の位置決めをより確実に行うことができる。なお、補助位置決め部材47は、非磁性体で構成されていてもよいし、永久磁石で構成されていてもよい。
【0045】
接続軸部52は、複数の板状部材521で構成されている場合に限らず、
図19および
図20に示すように、1つの環状板部材523で構成することもできる。
【0046】
図21~
図23に示すように、固定子3を回転子5の径方向の内側に配置することもできる。この場合、
図23に示すように、第1回転子部27は、第1環状部29の内周面から径方向の内側に延びる第1接続部53を有し、第1延在部31は、位置決め部材50の径方向の内側に配置されている。第2回転子部28は、第2環状部33の内周面から径方向の外側に延びる第2接続部54を有し、第2延在部36は、位置決め部材50の径方向の内側に配置されている。また、第2隙間62には、補助位置決め部材47が配置されている。このような構成により、回転強度を高めつつ、形状に自由度がある界磁コイルが外周に配置されているので、決められた外殻のスペースを有効に使用することができる。なお、
図22に示すように、
図21~
図23に示す回転電機では、一例として、位置決め部材50には、第1溝部441のみが形成されており、第2溝部442が形成されていない。すなわち、第2溝部442は省略できる。
【0047】
図24に示すように、
図12~
図15に示す回転電機は、径方向における界磁コイル鉄心4と回転子5との間に配置された永久磁石90をさらに備えることができる。
【0048】
図25に示すように、
図12~
図15に示す回転電機の位置決め部材50の外面に、第1延在部31または第2延在部36を収容可能な収容凹部55、56をさらに設けてもよい。収容凹部55は、第1溝部441から本体部51の他端に接近する方向(言い換えると、第2溝部442に接近する方向)に延びている。また、収容凹部56は、第2溝部442から本体部51の一端に接近する方向(言い換えると、第1溝部441に接近する方向)に延びている。このような構成により、第1回転子部27および第2回転子部28を軸方向および周方向においてより確実に位置決めすることができる。また、第1延在部31および第2延在部36で発生したトルクを収容部凹部55、56の側面全体で受けることができるので、回転子5のトルク強度を高めることができる。なお、凹部55、56は、例えば、第1溝部441および第2溝部442のいずれか一方のみに設けてもよい。
【0049】
位置決め部材50は、略円筒形状に限らず、例えば、多角筒状であってもよい。
【0050】
なお、前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0051】
本発明は、例えば、HEV(ハイブリッド電気自動車)、EV(電気自動車)、その他電動機を構成として含む機器に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…ハウジング
2…ジャケット
3…固定子
4…界磁コイル鉄心
5…回転子
6…ハウジング本体
6a…壁部
8…段付き凹部
9…貫通穴
10…ガイド部
11…リブ
12…環状溝
13…冷却水路
14…固定子コア
15…コイル
16…界磁コイル鉄心本体
17…界磁コイル鉄心鍔部
18…界磁コイル
19…鉄心部
20…鍔部
21…位置決め凹部
22…流動穴
23…環状凸部
24…パイプ(流路)
25…環状通路(流路)
26…ベアリング
27…第1回転子部
28…第2回転子部
29…第1環状部
30…筒部
31…第1延在部
32…第1逃がし部
33…第2環状部
34…台座部
35…回転軸部
36…第2延在部
37…第2逃がし部
38…位置決めピン
39…筒状部
40…凹部
41…第1位置決め部材
42…第2位置決め部材
43…補強リング
44…溝部
441…第1溝部
442…第2溝部
45…流動穴
46…溝
50…位置決め部材
51…本体部
52…接続軸部
521…板状部材
522…フランジ部
523…環状板部材
53…第1接続部
54…第2接続部
55、56…収容凹部
61…第1隙間
62…第2隙間
63…第3隙間
71…第2突起部
72…第2係止部
73…第1突起部
74…第1係止部
81…土台
82…軸部材
90…永久磁石
100…回転部材