(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/04 20210101AFI20240123BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240123BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240123BHJP
【FI】
G03B17/04
G02B7/02 Z
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020008684
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 富裕
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-139780(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1696754(CN,A)
【文献】特開2002-277717(JP,A)
【文献】特開2005-215273(JP,A)
【文献】特開2017-049466(JP,A)
【文献】特開2015-141363(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02775335(EP,A1)
【文献】特開2013-156561(JP,A)
【文献】特開2004-042127(JP,A)
【文献】特開2002-318418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/04
G02B 7/02-7/16
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル部と、
前記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒と
を備え、
前記レンズ鏡筒は、
前記バレル部の半径方向内側に収容される第1の収容位置から前記バレル部に対して前記光軸方向に沿って前記繰出方向に移動した第1の繰出位置に移動可能な第1の筒部と、
前記第1の筒部が前記第1の収容位置から上記第1の繰出位置に移動する際に、前記第1の筒部の前記半径方向内側に収容される第2の収容位置から前記第1の筒部に対して前記光軸方向に沿って前記繰出方向に移動した第2の繰出位置に移動可能な第2の筒部と、
前記第2の筒部の前記半径方向内側に収容される第3の収容位置から前記第2の筒部に対して前記光軸方向に沿って前記繰出方向に移動した第3の繰出位置に移動可能な第3の筒部と
を含み、
前記
第2の筒部には、前記半径方向
外側に弾性変形可能な少なくとも1つの弾性片が形成され、
前記少なくとも1つの弾性片は、前記
第3の筒部に向けて突出する突起部を有し、
前記
第3の筒部には、前記第3の筒部が前記第3の収容位置にある状態から前記少なくとも1つの弾性片の前記突起部が前記光軸方向に沿って移動できるように前記突起部を収容する少なくとも1つの長溝が形成され、
前記少なくとも1つの長溝は、前記第3の筒部が前記第3の繰出位置に移動した際に前記少なくとも1つの弾性片の前記突起部が当接して前記第2の筒部に対する前記第3の筒部の前記繰出方向に沿った移動を規制する第1の規制面を有
し、
前記第2の筒部が前記第2の繰出位置にあるときに、前記第1の筒部の少なくとも一部は、前記少なくとも1つの弾性片の半径方向外側への変形が規制されるように前記少なくとも1つの弾性片の前記突起部の半径方向外側で前記少なくとも1つの弾性片に沿って延びる、
カメラ装置。
【請求項2】
前記
第3の筒部は、半径方向外側に突出する厚肉部であって、前記第1の規制面が形成された厚肉部を有する、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記
第2の筒部の
前記少なくとも1つの弾性片及び前記
第3の筒部の前記少なくとも1つの長溝が1組以上設けられている、請求項1
又は2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの長溝は、前記少なくとも1つの弾性片の前記突起部が当接して前記第3の筒部の前記第2の筒部に対する周方向に沿った移動を規制する第2の規制面をさらに有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弾性片の前記突起部は、
前記少なくとも1つの長溝の前記第1の規制面に当接可能な当接面と、
前記当接面から離れるに従って厚さが減少するように傾斜する第1の傾斜面と
を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記
第3の筒部は、前記突起部の前記第1の傾斜面に対応して傾斜する第2の傾斜面を有する、請求項
5に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記第3の筒部は、半径方向外側に突出する突出部を有し、
前記カメラ装置は、
前記第2の筒部に設けられるバネ係合部と前記第3の筒部の前記突出部との間に架け渡される切替バネであって、前記突出部が基準位置よりも前記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには前記突出部を前記沈胴方向に付勢し、前記突出部が前記基準位置よりも前記繰出方向側に位置しているときには前記突出部を前記繰出方向に付勢するように構成される切替バネ
をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特にレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出すことができるカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出す鏡筒繰出機構を有するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなカメラにおいて、通常の撮影に加えて近距離での撮影(マクロ撮影)を行うためには、通常の撮影時からさらにレンズ鏡筒を前方に繰り出す必要がある。しかしながら、レンズ鏡筒を多段階で前方に繰り出すための機構は複雑になり易く、大きな収容スペースを必要とする。このため、通常の撮影時からさらに前方にレンズ鏡筒を繰り出す機構を簡単かつコンパクトな構造で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容される第1の収容位置から上記バレル部に対して上記光軸方向に沿って上記繰出方向に移動した第1の繰出位置に移動可能な第1の筒部と、上記第1の筒部が上記第1の収容位置から上記第1の繰出位置に移動する際に、上記第1の筒部の上記半径方向内側に収容される第2の収容位置から上記第1の筒部に対して上記光軸方向に沿って上記繰出方向に移動した第2の繰出位置に移動可能な第2の筒部と、上記第2の筒部の上記半径方向内側に収容される第3の収容位置から上記第2の筒部に対して上記光軸方向に沿って上記繰出方向に移動した第3の繰出位置に移動可能な第3の筒部とを含む。上記第2の筒部には、上記半径方向外側に弾性変形可能な少なくとも1つの弾性片が形成される。上記少なくとも1つの弾性片は、上記第3の筒部に向けて突出する突起部を有する。上記第3の筒部には、上記第3の筒部が上記第3の収容位置にある状態から上記少なくとも1つの弾性片の上記突起部が上記光軸方向に沿って移動できるように上記突起部を収容する少なくとも1つの長溝が形成される。上記少なくとも1つの長溝は、上記第3の筒部が上記第3の繰出位置に移動した際に上記少なくとも1つの弾性片の上記突起部が当接して上記第2の筒部に対する上記第3の筒部の上記繰出方向に沿った移動を規制する第1の規制面を有する。上記第2の筒部が上記第2の繰出位置にあるときに、上記第1の筒部の少なくとも一部は、上記少なくとも1つの弾性片の半径方向外側への変形が規制されるように上記少なくとも1つの弾性片の上記突起部の半径方向外側で上記少なくとも1つの弾性片に沿って延びる。
【0006】
このような構成によれば、沈胴状態から第1の筒部と第2の筒部とをそれぞれ第1の繰出位置及び第2の繰出位置に移動させるとともに、第3の筒部を第3の収容位置で第2の筒部の半径方向内側に収容することで、第1の撮影状態を実現することができる。また、この第1の撮影状態から第3の筒部を繰出方向に移動させると、弾性片の突起部が長溝の内部を移動し、弾性片の突起部が長溝の第1の規制面に当接することで第2の筒部に対する第3の筒部の繰出方向に沿った移動が規制される。これにより、第1の撮影状態から第3の筒部を第3の繰出位置に移動させることができ、第2の撮影状態を実現することができる。
【0007】
このように、本発明によれば、2つの撮影状態、すなわち、第1の筒部が第1の繰出位置にあり、第2の筒部が第2の繰出位置にあり、第3の筒部が第3の収容位置にある第1の撮影状態と、第1の筒部が第1の繰出位置にあり、第2の筒部が第2の繰出位置にあり、第3の筒部が第3の繰出位置にある第2の撮影状態とを簡単かつコンパクトな構造により実現することができる。
【0008】
また、第2の筒部が第2の繰出位置にあるときに、第1の筒部の少なくとも一部が弾性片の突起部の半径方向外側に位置するように構成することにより、第3の筒部を第3の繰出位置からさらに繰出方向に移動させようとした際に、弾性片の突起部と第1の規制面との当接が外れそうになっても、弾性片の半径方向外側への変形が第1の筒部の少なくとも一部によって規制される。したがって、第3の筒部が第2の筒部から外れてしまうことを防止することができる。
【0009】
上記第3の筒部は、半径方向外側に突出する厚肉部を有していてもよく。この厚肉部に上記第1の規制面が形成されていてもよい。このような厚肉部に第1の規制面を形成することにより、第1の規制面と弾性片の突起部との接触面積を大きくすることができるので、弾性片の突起部が第1の規制面から外れてしまうことを抑制することができる。
【0010】
上記第2の筒部の上記少なくとも1つの弾性片及び上記第3の筒部の上記少なくとも1つの長溝が1組以上設けられていてもよい。
【0011】
上記少なくとも1つの長溝は、上記少なくとも1つの弾性片の上記突起部が当接して上記第3の筒部の上記第2の筒部に対する周方向に沿った移動を規制する第2の規制面をさらに有していることが好ましい。この構成によれば、弾性片の突起部と長溝との組み合わせにより、第2の筒部に対する第3の筒部の繰出方向に沿った移動を規制できるだけではなく、周方向に沿った移動も規制することができるので、カメラ装置の部品点数を削減し、カメラ装置を安価に構成することができる。
【0012】
上記少なくとも1つの弾性片の上記突起部は、上記少なくとも1つの長溝の上記第1の規制面に当接可能な当接面と、上記当接面から離れるに従って厚さが減少するように傾斜する第1の傾斜面とを有していてもよい。このような構成によれば、第2の筒部と第3の筒部とを組み立てる際に、弾性片の突起部の第1の傾斜面を他方の筒部に当接させることにより弾性片を弾性変形させて弾性片の突起部を長溝に嵌め込むことができるため、第2の筒部と第3の筒部との組立が容易になる。
【0013】
上記第3の筒部は、上記突起部の上記第1の傾斜面に対応して傾斜する第2の傾斜面を有していてもよい。このような構成によれば、第2の筒部と第3の筒部とを組み立てる際に、弾性片の突起部の第1の傾斜面が第3の筒部の第2の傾斜面に当接するようになるため、第3の筒部を第2の筒部に挿入する際の抵抗が少なくなる。したがって、第2の筒部と第3の筒部との組立が極めて容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つの撮影状態、すなわち、2つの撮影状態、すなわち、第1の筒部が第1の繰出位置にあり、第2の筒部が第2の繰出位置にあり、第3の筒部が第3の収容位置にある第1の撮影状態と、第1の筒部が第1の繰出位置にあり、第2の筒部が第2の繰出位置にあり、第3の筒部が第3の繰出位置にある第2の撮影状態とを簡単かつコンパクトな構造により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレンズ鏡筒が+X方向に最大限伸びた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すカメラ装置の通常撮影状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すカメラ装置のマクロ撮影状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
【
図10】
図10は、
図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を模式的に示す部分断面図である。
【
図11】
図11は、
図5のマクロ撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
【
図12】
図12は、
図5のマクロ撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図13Cを参照して詳細に説明する。
図1から
図13Cにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図13Cにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+X方向を「前」又は「前方」といい、-X方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0018】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Z方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0019】
図2は、フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
図2に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2の筒状部2A(
図1参照)の内側に収容されるレンズ鏡筒10と、レンズ鏡筒10が取り付けられるフレーム20とを有している。このフレーム20は、略直方体状のベース部21と、ベース部21から前方に延び、レンズ鏡筒10を保持する筒状のバレル部22とを含んでいる。
【0020】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、+X方向に伸長可能な構造となっている。
図3は、+X方向に最大限伸長した状態のレンズ鏡筒10を示す斜視図である。
図3に示すように、レンズ鏡筒10は、第1の筒部11と第2の筒部12と第3の筒部13とを含んでいる。第1の筒部11は、フレーム20のバレル部22に対してX方向に移動可能であり、第2の筒部12は第1の筒部11に対してX方向に移動可能となっている。また、第3の筒部13は第2の筒部12に対してX方向に移動可能となっている。第3の筒部13の内部にはレンズ(図示せず)が収容されている。
【0021】
図3に示すように、レンズ鏡筒10の第1の筒部11の後端部には半径方向外側に突出する2つの係合突起14が形成されている。それぞれの係合突起14に対応して、フレーム20のバレル部22には、
図2に示すように、光軸Pの方向(X方向)に沿って延びる2つのガイド溝24が形成されている。レンズ鏡筒10のそれぞれの係合突起14は、バレル部22のガイド溝24の内部に収容され、ガイド溝24に係合するようになっている。ガイド溝24のZ方向の幅は、係合突起14のZ方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、係合突起14はガイド溝24にガイドされつつ、ガイド溝24の内部で光軸Pの方向(X方向)に移動するようになっている。
【0022】
図2に示すように、フレーム20のバレル部22の近傍には、操作ボタン8がコイルバネ8Aにより+X方向に付勢された状態で設けられている。この操作ボタン8は、
図1に示すように、フロントカバー2の筒状部2Aの近傍でフロントカバー2から+X方向に突出しており、ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込めるようになっている。ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込むと、バレル部22に取り付けられた鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10の係合突起14が+X方向に押し出され、
図4に示すように、レンズ鏡筒10が+X方向(繰出方向)に繰り出されるようになっている。このようにレンズ鏡筒10がバレル部22から+X方向に飛び出すと、図示しないスイッチ機構によりカメラ装置1の電源が入る。
【0023】
鏡筒繰出機構9は、操作ボタン8に連動して係合突起14を+X方向に押し出すレバー9Aと、係合突起14の位置によって係合突起14を付勢する方向が反転するねじりコイルバネ(図示せず)とを含んでいる。このねじりコイルバネは、係合突起14が所定の位置を越えて+X方向に移動すると、係合突起14を+X方向に付勢し、反対に、係合突起14が所定の位置を越えて-X方向に移動すると、係合突起14を-X方向に付勢するように構成されている。なお、鏡筒繰出機構9は特定のものに限られるものではなく、レンズ鏡筒10を+X方向に繰り出すことができるのであればどのような構造のものであってもよい。
【0024】
本実施形態では、第1の筒部11がバレル部22に対して+X方向に移動する際に、図示しない移動機構により第2の筒部12が第1の筒部11に対して+X方向に移動するようになっている。このため、第1の筒部11がバレル部22に対して+X方向に移動すると、
図4に示すように、第2の筒部12が第1の筒部11から+X方向に繰り出した状態となる。この状態でユーザは通常の撮影を行うことができる(通常撮影状態)。この通常撮影状態においては、第3の筒部13は、第2の筒部12の半径方向内側に収容されている。
【0025】
また、本実施形態では、
図4に示す状態においてユーザが手で第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すことができるようになっている。第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すと、
図5に示すように、第2の筒部が第1の筒部11から+X方向に繰り出し、さらに第3の筒部13が第2の筒部12から+X方向に繰り出した状態となる。この状態でユーザは例えば近距離のマクロ撮影を行うことができる(マクロ撮影状態)。
【0026】
図1は、レンズ鏡筒10がフレーム20のバレル部22に収容された状態を示しており、この状態ではレンズ鏡筒10がX方向に最も短くなっている。以下、この状態を「沈胴状態」ということとする。この沈胴状態においては、
図1に示すように、第1の筒部11はフレーム20のバレル部22の半径方向内側に収容されており、第2の筒部12は第1の筒部11の半径方向内側に収容されており、第3の筒部13は第2の筒部12の半径方向内側に収容されている。このときのバレル部22に対する第1の筒部11の位置、第1の筒部11に対する第2の筒部12の位置、及び第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置をそれぞれ第1の収容位置、第2の収容位置、及び第3の収容位置ということとする。
【0027】
上述したように、第1の筒部11は、
図4及び
図5に示すように、上記鏡筒繰出機構9によって第1の収容位置からフレーム20のバレル部22に対して+X方向に移動することができる。このときのバレル部22に対する第1の筒部11の位置を第1の繰出位置ということとする。また、第2の筒部12は、第1の筒部11がバレル部22に対して+X方向に移動する際に、
図4及び
図5に示すように、第2の収容位置から図示しない移動機構により第1の筒部11に対して+X方向に移動するようになっている。このときの第1の筒部11に対する第2の筒部12の位置を第2の繰出位置ということとする。また、第3の筒部13は、ユーザが手で引き出すことにより、
図5に示すように、第3の収容位置から第2の筒部12に対して+X方向に移動できるようになっている。このときの第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置を第3の繰出位置ということとする。
【0028】
図6は、
図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒10の一部を示す斜視図、
図7は
図6に示すレンズ鏡筒10の一部を側方から見た図、
図8及び
図9は分解斜視図である。
図6から
図9に示すように、第3の筒部13は、半径方向外側に突出する2つの円筒状の突出部41を有している。
【0029】
図8に示すように、第2の筒部12の周壁の2箇所には、それぞれ1対の延出片52が-X方向に片持ち梁状に延びており、これらの延出片52の自由端側が弾性変形可能となっている。これらの延出片52の間には、上述した第3の筒部13の突出部41が移動するための移動空間Sが形成されており、
図6及び
図7に示すように、第3の筒部13の突出部41はこの移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びている。また、それぞれの延出片52は、-X方向側の端部近傍で移動空間Sの内側に向かって突出する保持部53を有している。これら2つの延出片52の保持部53によって移動空間Sの幅が狭くなっている。
【0030】
第2の筒部12の延出片52の近傍には、半径方向外側に突出するピン状のバネ係合部55が形成されており、このバネ係合部55の周囲には、例えばねじりコイルバネからなる切替バネ60の一方の腕部61の端部が巻回され、切替バネ60の腕部61とバネ係合部55とが係合している。この切替バネ60の他方の腕部62の端部は、移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びる第3の筒部13の突出部41の周囲に巻回され、切替バネ60の腕部62と突出部41とが係合している。すなわち、第2の筒部12のバネ係合部55と第3の筒部13の突出部41との間に、上述した切替バネ60が架け渡されている。この切替バネ60は、腕部61,62の間の開き角度が切替バネ60の自由角度よりも小さくなるように装着されている。図示の例では、この切替バネ60はねじりコイルバネにより構成されているが、他の種類のバネ(例えば板バネ)により構成することも可能である。なお、
図8に示すように、第3の筒部13の突出部41の先端からは張出部43が延びており、この張出部43によって突出部41に係合している切替バネ60が突出部41から外れてしまうことが防止される。
【0031】
図9に示すように、第2の筒部12の突出部41が設けられた箇所から周方向に約90度ずれた2箇所には、それぞれ弾性片71が+X方向に片持ち梁状に延びている。これらの弾性片71の自由端側は半径方向に弾性変形可能となっている。この弾性片71は、+X方向側の端部で半径方向内側に向かって突出する突起部72を有している。
【0032】
これらの突起部72に対応する第3の筒部13の2箇所には、X方向に延びる長溝81が形成されている。この長溝81は、-X方向に位置する第1の規制面82と、周方向において互いに対向する第2の規制面83と、第1の規制面82に対向する端面84とを有している。それぞれの長溝81の内部には、上述した弾性片71の突起部72が収容されており、弾性片71の突起部72が長溝81に係合するようになっている。長溝81の周方向の幅は、弾性片71の突起部72の周方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、弾性片71の突起部72は、長溝81にガイドされつつ、長溝81の内部でX方向に移動できるようになっている。
【0033】
ここで、
図7に示す状態では、第3の筒部13の突出部41に係合する切替バネ60の腕部62が腕部61よりも-X方向側に位置しているので、第3の筒部13の突出部41には切替バネ60の付勢力の-X方向成分が作用する。したがって、この切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用しなければ、第3の筒部13は+X方向には動かないようになっている。また、
図7に示す状態では、第3の筒部13の突出部41は、第2の筒部12の延出片52の保持部53よりも-X方向にあるため、切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用した場合であっても、延出片52の保持部53が第3の筒部13の突出部41に係合するため、第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を越えて+X方向側に移動するためには、第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を乗り越える程度まで延出片52を弾性変形させる力が必要となる。このように、
図7に示す状態から第3の筒部13を+X方向に移動させるためにはある程度の力が必要である。このため、鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10が沈胴状態から+X方向(繰出方向)に繰り出される際に第3の筒部13に多少の力が作用しても、第3の筒部13は第2の筒部12に対して
図7に示す第1の位置を維持することができ、通常撮影が可能となる。
【0034】
上述のようにして、第1の筒部11は、鏡筒繰出機構9によってバレル部22に対して+X方向に移動して第1の繰出位置に至る。このとき、上述したように、図示しない移動機構により第2の筒部12も第1の筒部11に対して+X方向に移動し、第2の繰出位置に至って通常撮影状態となる。
図10は、このときの状態を模式的に示す断面図である。この通常撮影状態においては、
図10に示すように、第3の筒部13は、第3の収容位置に位置しており、第2の筒部12の半径方向内側に収容されている。このとき、第2の筒部12の弾性片71の突起部72は、第3の筒部13の長溝81の内部に位置している。このとき、第2の筒部12の弾性片71の突起部72の半径方向外側には、第1の筒部11の一部11Aが位置する。
【0035】
図10に示すように、弾性片71の突起部72は、長溝81の第1の規制面82に当接可能な当接面73と、当接面73から+X方向に離れるに従って厚さが減少するように傾斜する傾斜面74(第1の傾斜面)とを有している。通常撮影状態においては、弾性片71の突起部72の当接面73は長溝81の第1の規制面82に接触しておらず、また突起部72の傾斜面74も長溝81の端面84に接触していない。
【0036】
上述したように、通常撮影状態からマクロ撮影状態にする際には、ユーザが手で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を持って+X方向に引き出す。このとき、ユーザが、第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を乗り越える程度まで延出片52を弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13を引き出すと、第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を乗り越えて+X方向に移動する。ここで、第3の筒部13の突出部41が、
図11に示す基準位置R(切替バネ60の腕部61と腕部62のX方向の位置が一致するときの突出部41の位置)を越えて+X方向に移動すると、切替バネ60の付勢方向が反転し、第3の筒部13の突出部41には切替バネ60から+X方向の力が作用することとなる。したがって、ユーザが第3の筒部13を+X方向に引き出さなくても、第3の筒部13は、切替バネ60の付勢力の+X方向成分によって第2の筒部12に対して+X方向(繰出方向)に移動する。
【0037】
上述のように第3の筒部13が切替バネ60の付勢力によって第2の筒部12に対して+X方向に移動する際には、第3の筒部13は、
図12に示すように、第2の筒部12の弾性片71の突起部72の当接面73が第3の筒部13の長溝81の第1の規制面82に当接するまで+X方向に移動し、第3の繰出位置に至る。このように、第2の筒部12の弾性片71の突起部72の当接面73が第3の筒部13の長溝81の第1の規制面82に当接することにより、第2の筒部12に対する第3の筒部13の+X方向の移動が規制され、
図5及び
図11に示すマクロ撮影状態となる。
【0038】
マクロ撮影状態から通常撮影状態又は沈胴状態にする際には、ユーザは、切替バネ60の付勢力の+X方向成分よりも大きく、さらに第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を乗り越える程度まで延出片52を弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を-X方向に押し込む。これにより、第3の筒部13の突出部41が延出片52の保持部53を乗り越えて-X方向に移動する。このとき、第3の筒部13の突出部41は、
図11に示す基準位置Rよりも-X方向側に位置しているため、切替バネ60から第3の筒部13の突出部41に-X方向の力が作用し、第3の筒部13の突出部41は上述した第3の収容位置に移動する。
【0039】
本実施形態では、沈胴状態から第1の筒部11と第2の筒部12とをそれぞれ第1の繰出位置及び第2の繰出位置に移動させるとともに、第3の筒部13を第3の収容位置で第2の筒部12の半径方向内側に収容することで、通常撮影状態(第1の撮影状態)を実現することができる。また、通常撮影状態から第3の筒部13を+X方向に移動させると、第2の筒部12の弾性片71の突起部72が第3の筒部13の長溝81の内部を移動し、弾性片71の突起部72が長溝81の第1の規制面82に当接することで第2の筒部12に対する第3の筒部13の+X方向に沿った移動が規制される。これにより、通常撮影状態から第3の筒部13を第3の繰出位置に移動させることができ、マクロ撮影状態(第2の撮影状態)を実現することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、2つの撮影状態、すなわち、第1の筒部11が第1の繰出位置にあり、第2の筒部12が第2の繰出位置にあり、第3の筒部13が第3の収容位置にある通常撮影状態(第1の撮影状態)と、第1の筒部11が第1の繰出位置にあり、第2の筒部12が第2の繰出位置にあり、第3の筒部13が第3の繰出位置にあるマクロ撮影状態(第2の撮影状態)とを簡単かつコンパクトな構造により実現することができる。
【0041】
本実施形態では、
図10及び
図12に示すように、第2の筒部12が第2の繰出位置にあるときに、第1の筒部11の一部11Aが第2の筒部12の弾性片71の突起部72の半径方向外側に位置しているため、第3の筒部13を例えば
図12に示す第3の繰出位置からさらに+X方向に移動させようとした際に、弾性片71の突起部72と長溝81の第1の規制面82との当接が外れそうになっても、弾性片71の半径方向外側への変形が第1の筒部11の一部11Aによって規制される。したがって、第3の筒部13が第2の筒部12から外れてしまうことを防止することができる。
【0042】
また、
図10及び
図12に示すように、本実施形態における長溝81の第1の規制面82は、第3の筒部13において半径方向外側に突出する厚肉部85に形成されている。したがって、長溝81の第1の規制面82と弾性片71の突起部72との接触面積が大きくなり、弾性片71の突起部72と長溝81の第1の規制面82との当接が外れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0043】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は以下に述べるように組立も簡単である。レンズ鏡筒10を組み立てる際には、まず、
図13Aに示すように、第3の筒部13を第2の筒部12の内側に+X方向側から挿入する。第3の筒部13の厚肉部85の-X方向側には、弾性片71の突起部72の傾斜面74に対応する傾斜面86が形成されている。上述のように第3の筒部13を第2の筒部12の内側に挿入する際には、
図13Bに示すように、弾性片の突起部72の傾斜面74と第3の筒部13の傾斜面86とが互いに接触することとなる。第3の筒部13をさらに-X方向に挿入すると、弾性片71が半径方向外側に弾性変形し、弾性片71の突起部72が第3の筒部13の厚肉部85を乗り越えることで、
図13Cに示すように、弾性片71の突起部72が第3の筒部13の長溝81に嵌まり込む。このようにして組み立てられた第2の筒部12と第3の筒部13との組立体を第1の筒部11の内側に挿入及び装着することで、本実施形態におけるレンズ鏡筒10が完成する。
【0044】
このように、本実施形態では、第2の筒部12と第3の筒部13とを組み立てる際に、弾性片71の突起部72の傾斜面74を第3の筒部13に当接させることにより弾性片71を弾性変形させて弾性片71の突起部72を長溝81に嵌め込むことができるため、第2の筒部と第3の筒部との組立が容易になる。特に、弾性片71の突起部72の傾斜面74が第3の筒部13の傾斜面86に当接するようになっており、第3の筒部13を第2の筒部12に挿入する際の抵抗が少なくなるように構成されているため、第2の筒部と第3の筒部との組立が極めて容易になる。
【0045】
本実施形態では、上述した弾性片71と長溝81の組み合わせが2組設けられているが、弾性片71と長溝81の組み合わせは1組であってもよく、あるいは3組以上であってもよい。弾性片71と長溝81の組み合わせを複数組設ける場合には、そのような組を周方向に等間隔で設けることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、弾性片71を第2の筒部12に形成し、これに対応する長溝81を第3の筒部13に形成しているが、上述した機能を有する弾性片を第3の筒部13に形成し、これに対応する長溝を第2の筒部12に形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態における長溝81は、
図9に示すように、周方向に対向する第2の規制面83を有している。この第2の規制面83には弾性片71の突起部72の側面が当接するようになっており、弾性片71の突起部72が長溝81の第2の規制面83に当接することで、第3の筒部13の第2の筒部12に対する周方向に沿った回転が規制される。このように、弾性片71の突起部72と長溝81との組み合わせにより、第2の筒部12に対する第3の筒部13の+X方向に沿った移動を規制できるだけではなく、周方向に沿った移動も規制することができるので、カメラ装置1の部品点数を削減し、カメラ装置1を安価に構成することができる。
【0048】
なお、本明細書において使用した用語「前」、「前方」、「後」、「後方」、「上」、「上方」、「下」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0049】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
5 ファインダ窓
6 フラッシュ窓
7 レリーズボタン
8 操作ボタン
9 鏡筒繰出機構
10 レンズ鏡筒
11 第1の筒部
12 第2の筒部
13 第3の筒部
14 係合突起
20 フレーム
21 ベース部
22 バレル部
24 ガイド溝
41 突起部
52 延出片
53 保持部
55 バネ係合部
60 切替バネ
71 弾性片
72 突起部
73 当接面
74 (第1の)傾斜面
81 長溝
82 第1の規制面
83 第2の規制面
85 厚肉部
86 (第2の)傾斜面