(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240123BHJP
H01F 1/24 20060101ALI20240123BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240123BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F1/24
H01F41/02 D
H01F27/255
(21)【出願番号】P 2020014364
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】目黒 昌淳
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220609(JP,A)
【文献】特開2019-096816(JP,A)
【文献】特開2007-012745(JP,A)
【文献】特開2010-126786(JP,A)
【文献】特開2020-155672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/12- 1/38
H01F 1/44
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む基体と、
前記基体に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体と電気的に接続された第1外部電極と、
前記コイル導体と電気的に接続された第2外部電極と、
を備え、
前記第1金属磁性粒子群は、第1金属磁性粒子を含み、
前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置されており、コア部と、前記コア部の表面に設けられた絶縁膜と、を有する第2金属磁性粒子を含み、
前記第1金属磁性粒子の凹部が前記第2金属磁性粒子の一部と接しており、
前記第1金属磁性粒子の前記凹部は、前記第2金属磁性粒子の前記一部と同じ曲率を有し、
前記第1金属磁性粒子は、第1変形強度を有し、
前記第2金属磁性粒子は、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する、
コイル部品。
【請求項2】
第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む基体と、
前記基体に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体と電気的に接続された第1外部電極と、
前記コイル導体と電気的に接続された第2外部電極と、
を備え、
前記第1金属磁性粒子群は、第1金属磁性粒子を含み、
前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され表面に絶縁膜を有する第2金属磁性粒子を含み、
前記第1金属磁性粒子の凹部が第2金属磁性粒子の一部と接しており、
前記第1金属磁性粒子の前記凹部は、前記第2金属磁性粒子の前記一部と同じ曲率を有し、
前記第2金属磁性粒子におけるSiの含有率は、前記第1金属磁性粒子におけるSiの含有率よりも高い、
コイル部品。
【請求項3】
前記第1変形強度に対する前記第2変形強度の比は5.0以上である、
請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1変形強度に対する前記第2変形強度の比は2.0以上である、
請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2金属磁性粒子の前記絶縁膜が前記第1金属磁性粒子の前記凹部の少なくとも一部に接している、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記基体の断面において、前記第1金属磁性粒子の幾何学的な重心と前記第2金属磁性粒子の幾何学的な重心との距離が、前記第1平均粒径と前記第2平均粒径との和よりも小さい、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1金属磁性粒子群及び前記第2金属磁性粒子の体積の合計を100vol%としたときに、前記第1金属磁性粒子群の含有量は75vol%から95vol%の範囲にある、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1金属磁性粒子及び前記第2金属磁性粒子はいずれもFeを含み、
前記第1金属磁性粒子におけるFeの含有率は、前記第2金属磁性粒子におけるFeの含有率よりも高い、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1金属磁性粒子が結晶質合金であり、前記第2金属磁性粒子が非晶質合金である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記基体は、前記第2平均粒径よりも小さな第3平均粒径を有する第3金属磁性粒子群を含み、
前記第3金属磁性粒子群は、第3金属磁性粒子を含み、
前記第1金属磁性粒子は、前記第3金属磁性粒子の表面の一部に対応する形状の凹部を有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極にはんだにより接合されている実装基板と、
を備える回路基板。
【請求項12】
請求項11に記載の回路基板を備える電子機器。
【請求項13】
第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して内部にコイル導体を含む成形体を形成する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形工程により得られた成形体を加熱する熱処理工程と、
を備え、
記第1金属磁性粒子群は、第1変形強度を有する第1金属磁性粒子を含み、
前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され、表面に絶縁膜を有し、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する第2金属磁性粒子を含み、
前記圧縮成形工程においては、前記第2金属磁性粒子の一部が前記第1金属磁性粒子の内側に向かって押し込まれることにより前記第1金属磁性粒子の表面に前記第2金属磁性粒子の前記一部に対応する形状の凹部が形成されるように前記磁性材料が圧縮成形され、
前記第1金属磁性粒子の前記凹部は、前記第2金属磁性粒子の前記一部と同じ曲率を有する、
コイル部品の製造方法。
【請求項14】
第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して複数の圧縮成形体を形成する圧縮成形工程と、
前記複数の圧縮成形体の各々に導体パターンを設ける工程と、
前記複数の圧縮成形体を積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱する熱処理工程と、
を備え、
記第1金属磁性粒子群は、第1変形強度を有する第1金属磁性粒子を含み、
前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され、コア部と、前記コア部の表面に設けられた絶縁膜と、を有し、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する第2金属磁性粒子を含み、
前記圧縮成形工程においては、前記第2金属磁性粒子の一部が前記第1金属磁性粒子の内側に向かって押し込まれることにより前記第1金属磁性粒子の表面に前記第2金属磁性粒子の前記一部に対応する形状の凹部が形成されるように前記磁性材料が圧縮成形され、
前記第1金属磁性粒子の前記凹部は、前記第2金属磁性粒子の前記一部と同じ曲率を有する、
コイル部品の製造方法。
【請求項15】
第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して成形体を形成する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形工程により得られた成形体を加熱して基体を得る熱処理工程と、
前記基体にコイル導体を設けるコイル設置工程と、
を備え、
記第1金属磁性粒子群は、第1変形強度を有する第1金属磁性粒子を含み、
前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され、コア部と、前記コア部の表面に設けられた絶縁膜と、を有し、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する第2金属磁性粒子を含み、
前記圧縮成形工程においては、前記第2金属磁性粒子の一部が前記第1金属磁性粒子の内側に向かって押し込まれることにより前記第1金属磁性粒子の表面に前記第2金属磁性粒子の前記一部に対応する形状の凹部が形成されるように前記磁性材料が圧縮成形され、
前記第1金属磁性粒子の前記凹部は、前記第2金属磁性粒子の前記一部と同じ曲率を有する、
コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、コイル部品、回路基板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の基体の材料として、従来から様々な磁性材料が用いられている。例えば、インダクタなどのコイル部品用の磁性材料としては、フェライトがよく用いられている。フェライトは、透磁率が高いことから、インダクタ用の磁性材料として適している。
【0003】
フェライト以外の電子部品用の磁性材料として、軟磁性金属材料が知られている。軟磁性金属材料は、フェライト材料よりも飽和磁束密度が高いため、大電流が流れるコイル部品の基体の材料として適している。軟磁性金属材料は、金属磁性粒子の形態で基体中に含まれる。金属磁性粒子は、軟磁性金属材料を造粒することで作製され、数nm~数μmの粒径を有する。基体に含まれる各金属磁性粒子の表面には、隣接する金属磁性粒子間でショートが起きないようにするために絶縁膜が設けられる。金属磁性粒子を含む基体は、例えば、金属磁性粒子と樹脂とを混練して得られた混合樹脂組成物を型に流し込み、この型内で当該混合樹脂組成物に圧力を加える圧縮成形によって作製される。圧縮成形により作製されるインダクタ用の基体は、例えば特開2014-082382号公報に記載されている。
【0004】
金属磁性粒子を含む基体も高い透磁率を有することが求められる。基体の透磁率は、当該基体に含まれる金属磁性粒子の充填率を高めることで向上させることができる。特開2010-34102号公報には、2種類以上の平均粒径が異なる非晶質の金属磁性粒子を含む基体を有するインダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-082382号公報
【文献】特開2010-034102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に開示される発明の目的の一つは、コイル部品の基体における金属磁性粒子の充填率を向上させるための新規な改善を提供することである。
【0007】
本明細書に開示される発明の前記以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかになる。本明細書に開示される発明は、前記の課題に代えて又は前記の課題に加えて、本明細書の記載から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるコイル部品は、第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む基体と、
前記基体に設けられたコイル導体と、前記コイル導体と電気的に接続された第1外部電極と、前記コイル導体と電気的に接続された第2外部電極と、を備える。本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子群は、第1金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され表面に絶縁膜を有する第2金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子は、前記第2金属磁性粒子の表面の一部に対応する形状の凹部を有する。
【0009】
本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子は、第1変形強度を有し、前記第2金属磁性粒子は、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する。
【0010】
本発明の一態様において、前記第1変形強度に対する前記第2変形強度の比は5.0以上である。
【0011】
本発明の一態様において、前記第1変形強度に対する前記第2変形強度の比は2.0以上である。
【0012】
本発明の一態様において、前記第2金属磁性粒子の前記絶縁膜が前記第1金属磁性粒子の前記凹部の少なくとも一部に接している。
【0013】
本発明の一態様においては、前記基体の断面において、前記第1金属磁性粒子の幾何学的な重心と前記第2金属磁性粒子の幾何学的な重心との距離が、前記第1平均粒径と前記第2平均粒径との和よりも小さい。
【0014】
本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子群及び前記第2金属磁性粒子の体積の合計を100vol%としたときに、前記第1金属磁性粒子群の含有量は75vol%から95vol%の範囲にある。
【0015】
本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子及び前記第2金属磁性粒子はいずれもFeを含み、前記第1金属磁性粒子におけるFeの含有率は、前記第2金属磁性粒子におけるFeの含有率よりも高い。
【0016】
本発明の一態様において、前記第2金属磁性粒子におけるSiの含有率は、前記第1金属磁性粒子におけるSiの含有率よりも高い。
【0017】
本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子が結晶質合金であり、前記第2金属磁性粒子が非晶質合金である。
【0018】
本発明の一態様において、前記基体は、前記第2平均粒径よりも小さな第3平均粒径を有する第3金属磁性粒子群を含み、前記第3金属磁性粒子群は、第3金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記第1金属磁性粒子は、前記第3金属磁性粒子の表面の一部に対応する形状の凹部を有する。
【0019】
本発明の一態様による回路基板は、上記のいずれかのコイル部品と、前記外部電極にはんだにより接合されている前記実装基板と、を備える。
【0020】
本発明の一態様による電子機器は、上記の回路基板を備える。
【0021】
本発明の一態様によるコイル部品の製造方法は、第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して内部にコイル導体を含む成形体を形成する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形工程により得られた成形体を加熱する熱処理工程と、を備える。
【0022】
本発明の一態様によるコイル部品の製造方法は、第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して複数の圧縮成形体を形成する圧縮成形工程と、前記複数の圧縮成形体の各々に導体パターンを設ける工程と、前記複数の圧縮成形体を積層して積層体を形成する工程と、前記積層体を加熱する熱処理工程と、を備える。
【0023】
本発明の一態様によるコイル部品の製造方法は、第1平均粒径を有する第1金属磁性粒子群及び前記第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2金属磁性粒子群を含む磁性材料を圧縮成形して成形体を形成する圧縮成形工程と、前記圧縮成形工程により得られた成形体を加熱して基体を得る熱処理工程と、前記基体にコイル導体を設けるコイル設置工程と、を備える。
【0024】
本発明の一態様において、記第1金属磁性粒子群は、第1変形強度を有する第1金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記第2金属磁性粒子群は、前記第1金属磁性粒子と隣接して配置され、表面に絶縁膜を有し、前記第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する第2金属磁性粒子を含む。本発明の一態様において、前記圧縮成形工程においては、前記第2金属磁性粒子の表面の一部に対応する形状の凹部に前記第1金属磁性粒子が配されるように前記磁性材料が圧縮成形される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、コイル部品の基体における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一の実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示されている基体の領域Aを拡大して模式的に示す図である。
【
図4a】
図3に示されている領域Bを拡大して模式的に示す図である。
【
図4b】第2金属磁性粒子が省略された領域Bを模式的に示す図である。
【
図5】本発明の別の実施形態における第1金属磁性粒子と第2金属磁性粒子の配置を模式的に示す図である。
【
図6】圧縮成形前の混合樹脂組成物を模式的に示す模式図である。
【
図7】本発明の別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明のさらに別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態によるコイル部品を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0028】
図1及び
図2を参照して本発明の一の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図であり、
図2はコイル部品1の模式的な断面図である。図示のように、コイル部品1は、基体10と、基体10に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。基体10は、磁性材料を含む。このため、本明細書では、基体10を磁性基体10と呼ぶことがある。
【0029】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とする。「厚さ」方向を「高さ」方向と呼ぶこともある。
【0030】
コイル部品1は、実装基板2aに実装されている。実装基板2aには、2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、外部電極21、22のそれぞれと実装基板2aの対応するランド部3とを接合することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0031】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル及びこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるインダクタであってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0032】
磁性基体10は、磁性材料で構成され、概ね直方体形状を有する。本発明の一実施形態において、磁性基体10は、長さ寸法(L軸方向の寸法)が1.6mm~4.5mm、幅寸法(W軸方向の寸法)が0.8mm~3.2mm、高さ寸法(T軸方向の寸法)が0.8mm~5.0mmとなるように形成されている。磁性基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。
【0033】
磁性基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e及び第2の側面10fを有する。磁性基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定されている。第1の主面10aと第2の主面10bとはそれぞれ磁性基体10の高さ方向両端の面を成し、第1の端面10cと第2の端面10dとはそれぞれ磁性基体10の長さ方向両端の面を成し、第1の側面10eと第2の側面10fとはそれぞれ磁性基体10の幅方向両端の面を成している。
【0034】
図1に示されているように、第1の主面10aは磁性基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10bが基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。コイル部品1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とする。
【0035】
本発明の一の実施形態において、外部電極21は、磁性基体10の実装面10b及び端面10cに設けられている。外部電極22は、磁性基体10の実装面10b及び端面10dに設けられている。各外部電極21、22の形状及び配置は、図示された例には限定されない。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いに離間して配置されている。
【0036】
コイル導体25は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Axの周りに螺旋状に巻回されている。コイル導体25は、その一端において外部電極21と接続されており、その他端において外部電極22と接続されている。図示の実施形態において、コイル導体25は、その両端のみが磁性基体10から露出しており、それ以外の部位は磁性基体内に設けられている。このように、コイル導体25は、磁性基体10の内部に設けられてもよい。図示の実施形態において、コイル軸Axは、第1の主面10a及び第2の主面10bと交わっているが、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fとは交わっていない。言い換えると、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fは、コイル軸Axに沿って延びている。
【0037】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、複数の金属磁性粒子を含む磁性材料から成る。
図3に示されているように、一実施形態における磁性基体10は、複数の第1金属磁性粒子31と、複数の第2金属磁性粒子41と、を含む。本明細書では、複数の第1金属磁性粒子31をまとめて第1金属磁性粒子群と呼ぶことがあり、複数の第2金属磁性粒子41をまとめて第2金属磁性粒子群と呼ぶことがある。つまり、第1金属磁性粒子群は複数の第1金属磁性粒子31を含み、第2金属磁性粒子群は複数の第2金属磁性粒子41を含む。一実施形態において、磁性基体10に含まれる複数の第2金属磁性粒子41の平均粒径(つまり、第2金属磁性粒子群の平均粒径)は、当該磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31の平均粒径(つまり、第1金属磁性粒子群の平均粒径)の1/2以下、1/3以下、又は1/4以下とされる。一実施形態において、磁性基体10に含まれる複数の第2金属磁性粒子41の平均粒径は、当該磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31の平均粒径の1/20以上、1/10以上、又は1/5以上とされる。複数の第1金属磁性粒子31の平均粒径に対する複数の第2金属磁性粒子41の平均粒径の比は、上記の数値には限定されない。第1金属磁性粒子31の平均粒径は、例えば、4μm~30μmとされる。第2金属磁性粒子41の平均粒径は、例えば、0.2μm~6μmとされる。第2金属磁性粒子41の平均粒径が第1金属磁性粒子31の平均粒径よりも小さい場合、隣接する2つの第1金属磁性粒子31の間に第2金属磁性粒子41が入り込み易く、その結果、磁性基体10における金属磁性粒子の充填率(Density)を高めることができる。
【0038】
本明細書においては、説明の便宜のため、磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31のうち
図3に示されている視野において中央に位置する第1金属磁性粒子31を第1金属磁性粒子31Aと呼ぶことがあり、磁性基体10に含まれる複数の第2金属磁性粒子41のうち第1金属磁性粒子31Aに左側から接している2つの第2金属磁性粒子41をそれぞれ第2金属磁性粒子41A及び第2金属磁性粒子41Bと呼ぶことがある。第1金属磁性粒子31Aとそれ以外の第1金属磁性粒子31との区別及び第2金属磁性粒子41A、41Bとそれ以外の第2金属磁性粒子41との区別は説明の便宜上のものである。このため、第1金属磁性粒子31に関する説明は第1金属磁性粒子31Aにも当てはまり、第2金属磁性粒子41に関する説明は第2金属磁性粒子41A及び第2金属磁性粒子41Bにも当てはまる。
【0039】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、互いに平均粒径の異なる3種類の金属磁性粒子を含んでもよい。この場合、磁性基体10は、第1金属磁性粒子群及び第2金属磁性粒子群に加えて第3金属磁性粒子群を有する。第3金属磁性粒子群は、複数の第3金属磁性粒子を含む。複数の第3金属磁性粒子の平均粒径(つまり、第3金属磁性粒子群の平均粒径)は、例えば、0.1μm~1μmとされる。
【0040】
本明細書においては、第1金属磁性粒子群の平均粒径を第1平均粒径、第2金属磁性粒子群の平均粒径を第2平均粒径、第3金属磁性粒子群の平均粒径を第3平均粒径とそれぞれ呼ぶことがある。
【0041】
本明細書において、金属磁性粒子の「平均粒径」は、当該磁性基体をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により1000倍~2000倍の倍率で撮影した写真に基づいて粒度分布を求め、このようにして求められた粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM写真に基づいて求められた粒度分布の50%値(D50)を金属磁性粒子の平均粒径とすることができる。
【0042】
図3に示されているように、磁性基体10の断面において、第1金属磁性粒子31は、複数の第2金属磁性粒子41に取り囲まれている。言い換えると、磁性基体10の断面において、複数の第2金属磁性粒子41が1つの第1金属磁性粒子31の周囲に配置されている。一実施形態において、隣接する第1金属磁性粒子31の間には、一または複数の第2金属磁性粒子41が介在している。一実施形態において、複数の第1金属磁性粒子31は互いと直接接していない。磁性基体10においては、複数の第1金属磁性粒子31の一部が他の第1金属磁性粒子31と接触してもよい。ただし、第1金属磁性粒子31同士の接触は抑制されることが望ましい。これにより、第1金属磁性粒子31同士がショートすることによる大きな渦電流損失の発生を抑制又は防止することができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31の幾何学的な重心と、当該第1金属磁性粒子31を取り囲んでいる複数の第2金属磁性粒子41のうちの一つの幾何学的な重心との距離は、第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さい。
図3には、第1金属磁性粒子31Aの幾何学的な重心P1と、第2金属磁性粒子41Aの幾何学的な重心P2とが示されている。
図3に示されている実施形態においては、重心P1と重心P2との距離をDとすると、この距離Dが第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さい。距離Dが第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さくなるのは、後述するように、圧縮成形時に第2金属磁性粒子41が第1金属磁性粒子31の内側に向かって押し込まれており、第1金属磁性粒子31が第2金属磁性粒子41からの押圧力により内側に凹んでいるためである。このため、第1金属磁性粒子31が第1平均粒径と同程度の粒径を有していれば、距離Dが第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さくなる。第1金属磁性粒子31を取り囲む複数の第2金属磁性粒子41の全てについて、上記の幾何学的な重心間の距離が第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さくなるという関係が成立していてもよく、第1金属磁性粒子31を取り囲む複数の第2金属磁性粒子41の一部についてのみ、上記の幾何学的な重心間の距離が第1平均粒径と第2平均粒径との和よりも小さくなるという関係が成立していてもよい。
【0044】
第1金属磁性粒子、第2金属磁性粒子、及び第3金属磁性粒子はそれぞれ、様々な軟磁性材料から成る。一実施形態において、第1金属磁性粒子、第2金属磁性粒子、及び第3金属磁性粒子はそれぞれFeを主成分とする軟磁性材料から成る。具体的には、第1金属磁性粒子、第2金属磁性粒子、及び第3金属磁性粒子はそれぞれ、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Si合金、Fe-Ni合金等の結晶質合金粒子、(3)Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等の非晶質合金粒子又は(4)これらが混合された混合粒子である。磁性基体10に含まれる金属磁性粒子の組成は、上記のものに限られない。
【0045】
第1金属磁性粒子、第2金属磁性粒子、及び第3金属磁性粒子の各々は、その表面にガラス、樹脂又はこれら以外の絶縁性に優れた材料から成る絶縁膜を有していてもよい。
図3の領域Bを拡大して模式的に示す拡大断面図である
図4aに示されているように、本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41は、軟磁性金属材料からなるコア部41aと、このコア部の表面に設けられた絶縁膜41bと、を有する。一実施形態にいて、コア部41aは、上記の軟磁性金属材料から成る。一実施形態において、絶縁膜41bは、コア部41aの表面が酸化されることで形成される軟磁性金属材料の酸化物から成る酸化膜である。一実施形態において、絶縁膜41bは、シリカ、Ni-Znフェライト、ガラス、又は前記以外の絶縁材料から成るコーティング膜である。当該コーティング膜は、例えばゾルゲル法を用いたコートプロセスによって、コア部41aの表面に形成されてもよい。本発明の一実施形態において、絶縁膜41bの延性は、コア部41aの延性よりも小さい。例えば、絶縁膜41bがコア部41aの酸化物やシリカから成る場合には、絶縁膜41bの延性は軟磁性金属材料から成るコア部41aの延性よりも小さくなる。
【0046】
本発明の一実施形態による磁性基体10において、第1金属磁性粒子31は、2金属磁性粒子41よりも体積比で高い含有比率を有する。例えば、磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31の体積と複数の第2金属磁性粒子の体積の合計を100vol%としたときに、複数の第1金属磁性粒子31の合計の含有比率は、75vol%から95vol%の範囲にある。一実施形態において、複数の第1金属磁性粒子31の合計の含有比率は、80vol%から90vol%の範囲にある。以下、磁性基体10に含まれる第1金属磁性粒子31又は第2金属磁性粒子41の体積基準の含有比率について言及する場合には、磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31の体積と複数の第2金属磁性粒子の体積の合計を100vol%としたときの第1金属磁性粒子31又は第2金属磁性粒子41の含有量をそれぞれ意味する。このように、磁性基体10においては、体積比で第2金属磁性粒子41よりも第1金属磁性粒子31の含有比率が高い。本発明者の知見によれば、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が90vol%を超えると、磁性基体10において、第2の金属磁性粒子41は第1金属磁性粒子31の間にほとんど介在せず3つの第1金属磁性粒子31が作る三重点(3つの第1金属磁性粒子31の間に存在する空隙)に主に存在するようになる。この場合、磁性基体10を作製する際の圧縮成形工程における圧力は、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が90vol%を超えると、第1金属粒子31間で主に伝達され、第2金属磁性粒子41にはほとんど伝達されない。さらに、磁性基体10を作製する際の圧縮成形工程における圧力は、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が95vol%を超えると、第1金属粒子31間で主に伝達され、第2金属磁性粒子41に圧力がさらに伝達されにくくなる。このため、第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が90vol%を超える磁性基体10においては、第1金属磁性粒子31の表面に後述する凹部31aが形成されにくくなるので、当該磁性基体10における充填率を十分に向上させることが困難となる。第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が95vol%を超える磁性基体10においては、第1金属磁性粒子31の表面に後述する凹部31aがさらに形成されにくくなるので、当該磁性基体10における充填率の十分な向上はさらに困難になる。他方、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が80%未満となると、平均粒径の小さな第2金属磁性粒子41の含有比率が高くなることによって、当該磁性基体10の充填率を向上させることが難しくなる。さらに、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率が75%未満となると、平均粒径の小さな第2金属磁性粒子41の含有比率が高くなることに加えて、隣接する第1金属粒子40の間に複数の第2金属粒子41が存在するようになるため、当該磁性基体10の充填率が大きく下がることがある。よって、本発明の一実施形態においては、磁性基体10における第1金属磁性粒子31の合計の含有比率を75vol%から95vol%の範囲とする。
【0047】
本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31におけるFeの含有比率は、第2金属磁性粒子41におけるFeの含有比率よりも高い。本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率は、第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも高い。例えば、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41がいずれもFe―Si-Cr合金から成る場合、第1金属磁性粒子31の組成はFe:95wt%、Si:3.5%、Cr:1.5wt%とされ、第2金属磁性粒子41の組成はFe:92wt%、Si:6.5%、Cr:1.5wt%とされてもよい。第1金属磁性粒子31は、Siを含まなくともよい。第1金属磁性粒子31がSiを含まない場合であっても、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率が第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも高いということができる。本発明の一実施形態においては、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率が第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも高いため、第2金属磁性粒子41の変形強度を第1金属磁性粒子31の変形強度よりも大きくすることができる。本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率及び第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率は、第2金属磁性粒子41の変形強度を第1金属磁性粒子31の変形強度よりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、又は5倍以上大きくなるように定められる。本発明の一実施形態においては、体積比で第2金属磁性粒子41よりも第1金属磁性粒子31の含有比率が高いため、第1金属磁性粒子31におけるFeの含有比率を第2金属磁性粒子41におけるFeの含有比率よりも高くすることにより、第1金属磁性粒子31におけるFeの含有比率が第2金属磁性粒子41におけるFeの含有比率以下の場合と比較して、磁性基体10の飽和磁束密度を高くすることができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41は、第1金属磁性粒子31よりも大きな変形強度を有する。金属磁性粒子(第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41を含む)の変形には塑性変形と弾性変形がある。本明細書において「変形強度」という場合には、塑性変形が起こる場合の変形強度を意味してもよく、弾性変形が起こる場合の変形強度を意味してもよい。本明細書においては、第1金属磁性粒子31の変形強度を第1変形強度と呼び第2金属磁性粒子41の変形強度を第2変形強度と呼ぶことがある。この用法に従えば、一実施形態において、第2変形強度は、第1変形強度よりも大きい。本発明の一実施形態において、磁性基体10が第3金属磁性粒子を含む場合には、当該第3金属磁性粒子は、第1金属磁性粒子31よりも大きな変形強度を有する。金属磁性粒子の変形強度は、当該金属磁性粒子が圧縮される場合の変形に要する強度を表す。金属磁性粒子の変形強度は、当該金属磁性粒子の変形のしにくさを表す指標であり、例えば、JIS Z 8844:2019に従って測定される。金属磁性粒子の変形強度は、例えば株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機(MCT-211型)を用いて測定することができる。本発明の一実施形態においては、第2変形強度が第1変形強度よりも大きいため、第2金属磁性粒子41の方が第1金属磁性粒子31よりも圧縮成形時に変形しにくい。
【0049】
第1金属磁性粒子31は周囲に配置されている第2金属磁性粒子41と比べて変形しやすいため、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41を含む磁性材料を加圧した場合に、第1金属磁性粒子31の表面のうち第2金属磁性粒子41と接する位置に一又は複数の凹部31aが形成される。このように、第1金属磁性粒子31は、その表面に一又は複数の凹部を有する。
図3に示されている実施形態では、第1金属磁性粒子31Aは、その表面に複数の凹部を有する。図示の簡略化のため、第1金属磁性粒子31Aが有する複数の凹部のうちの一部にのみ参照符号31aを付している。第1金属磁性粒子31Aが有する凹部31aの数及び形状は、図示のものには限定されない。
【0050】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、第1金属磁性粒子31と第2金属磁性粒子41とを結合する結着材を含んでいてもよい。結着材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂からなる。結着材の材料として用いられる樹脂材料は、第1磁性材料よりも小さな透磁率を有する。結着材用の樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。一実施形態において、結着剤は、磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31の体積と複数の第2金属磁性粒子の体積の合計を100vol%としたときに、8vol%以下、5vol%以下、又は3vol%以下とされる。結着剤は、圧縮成形工程において第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41に押しのけられて、これらの金属磁性粒子の間の空隙に移動する。このため、上記のように結着材の含有量を8vol%以下とすれば、圧縮成形工程における第1金属磁性粒子31と第2金属磁性粒子41との間での圧力の伝達に実質的に影響を及ぼさない。
【0051】
図4a及び
図4bをさらに参照して、第1金属磁性粒子31Aと第2金属磁性粒子41A、41Bとの接触位置付近の微細構造についてさらに説明する。
図4aは、
図3に示されている磁性基体10の断面の領域Bを拡大して模式的に示す断面図であり、
図4bは、説明の便宜のために
図4bから第2金属磁性粒子41を省略した図である。説明の便宜上、第1金属磁性粒子31Aが有する複数の凹部31aのうち第2金属磁性粒子41Aと接する凹部31aを凹部31a1と呼び、第2金属磁性粒子41Bと接する凹部31aを凹部31a2と呼ぶ。
【0052】
これらの図に示されているように、本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31Aの凹部31a1は、第2金属磁性粒子41Aの表面の一部に対応する形状を有している。本発明の一実施形態において、凹部31a1の形状は、第2金属磁性粒子41Aの表面の一部と相補的な形状を有している。例えば、第1金属磁性粒子31Aと第2金属磁性粒子41Aとが接触している位置における凹部31a1の曲率は、当該位置における第2金属磁性粒子41Aの表面の曲率と同じ又はほぼ同じ曲率を有する。第1金属磁性粒子31Aと第2金属磁性粒子41Aとが接触している位置における凹部31a1の曲率K1と当該位置における第2金属磁性粒子41Aの表面の曲率K2との差のK2に対する比である(K2-K1)/K2が0.05、0.04、0.03、0.02、又は0.01より小さい場合に、凹部31a1の曲率K1と第2金属磁性粒子41Aの表面の曲率K2とはほぼ同じということができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41Aは、その一部が凹部31a1に収容されるように第1金属磁性粒子31Aの周りに配置されている。本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41Aは、その絶縁膜41bにおいて凹部31a1と接している。本発明の一実施形態において、第2金属磁性粒子41Aの表面のうち、その全表面積の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上の面積を占める領域が凹部31a1に接している。
【0054】
本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31Aの凹部31a1は、当該第1金属磁性粒子31Aの内側に向かって凸の曲面である。この曲面の断面視における形状は、例えば、円弧状、楕円弧状、長円弧状、又は前記以外の形状をとり得る。このように第1金属磁性粒子31Aの内側に向かって凸の曲面である凹部31a1の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%が第2金属磁性粒子41Aの絶縁膜41bと接していてもよい。
【0055】
凹部31a1と同様に、第1金属磁性粒子31Aの凹部31a2は、第2金属磁性粒子41Bの表面の一部に対応する形状を有している。凹部31a1と第2金属磁性粒子41Aとの関係に関する上記の説明は、凹部31a2と第2金属磁性粒子41Bとの関係にも当てはまる。例えば、凹部31a2は、第2金属磁性粒子41Bの表面の一部に対応する形状を有している。
【0056】
本発明の一実施形態において、第1金属磁性粒子31Aに設けられている複数の凹部31aのうち凹部31a1及び凹部31a2以外の凹部も、凹部31a1及び凹部31a2と同様に、当該凹部と対向する位置にある第2金属磁性粒子41の表面の一部と対応する形状を有している。一実施形態においては、第1金属磁性粒子31Aが複数の凹部31aを有する場合、その複数の凹部31aの全てが第2金属磁性粒子41と接していなくともよい。言い換えると、複数の凹部31aのうち一部が第2金属磁性粒子41と接しており、残部は第2金属磁性粒子41と接していなくともよい。
【0057】
第2金属磁性粒子41は、概ね球形の形状を有している。このため、
図3及び
図4aの断面において第2金属磁性粒子41は概ね円形の形状を呈している。詳しくは後述するように、磁性基体10の製造プロセスには、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41を含む磁性材料を加圧する工程(例えば、圧縮成形工程)が含まれる。磁性材料を加圧する際の圧力又は荷重によって第2金属磁性粒子41が第1金属磁性粒子31に押し込まれることにより、当該第1金属磁性粒子31の表面に第2金属磁性粒子41の表面の一部に対応する形状の一又は複数の凹部31aが形成される。第1金属磁性粒子31よりも第2金属磁性粒子41の変形強度が大きいことから、第2金属磁性粒子41は、第1金属磁性粒子31内に押し込まれる際に実質的に変形しない。第1金属磁性粒子31内に押し込まれる際に第2金属磁性粒子41が「実質的に変形しない」とは、第2金属磁性粒子41に10%以上の圧縮変位が生じないことを意味してもよい。製造時の加圧によって第2金属磁性粒子41が実質的に変形しないので、第2金属磁性粒子41の表面にある絶縁膜41bが破壊されにくい。
【0058】
図5は、本発明の別の実施形態におけるコイル部品1の磁性基体10に含まれる複数の第1金属磁性粒子31のうちの一つと、複数の第2金属磁性粒子41のうちの一つとを模式的に示す模式図である。図示されているように、第2金属磁性粒子41は断面視で楕円形状を有していてもよい。この場合、第1金属磁性粒子31の凹部31aは、第2金属磁性粒子41の楕円形状の表面の一部に対応する形状を有する。断面視における第2金属磁性粒子41の形状は、円形及び楕円形には限られない。断面視における第2金属磁性粒子41の形状は、長円形又はこれ以外の形状を採り得る。第2金属磁性粒子41の形状によらず、第1金属磁性粒子31の凹部31aは、当該凹部31aと対向する位置にある第2金属磁性粒子41の表面の一部に対応する形状をとることができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、磁性基体10が第3金属磁性粒子を含む場合には、第1金属磁性粒子31の凹部31aは、当該凹部31aに対向する位置にある第3金属磁性粒子の表面の一部に対応する形状を有していてもよい。
【0060】
続いて、本発明の一実施形態によるコイル部品1の製造方法の例について説明する。以下では、圧縮成形プロセスによるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。圧縮成形プロセスによるコイル部品1の製造方法は、金属磁性粒子と樹脂を混練して混合樹脂組成物を生成し、この混合樹脂組成物を圧縮成形して成形体を形成する圧縮成形工程と、当該圧縮成形工程により得られた成形体を加熱する熱処理工程と、を備える。
【0061】
圧縮成形工程においては、まず、複数の第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と複数の第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群との混合粒子を樹脂及び希釈溶剤と混練して混合樹脂組成物を生成する。磁性基体が第3金属磁性粒子も含む場合には、混合粒子には、複数の第3金属磁性粒子が含まれる。
【0062】
次に、成形金型内に予め準備したコイル導体25を配置し、コイル導体25が設置された成形金型内に上記のようにして生成した混合樹脂組成物を入れ、この成型金型内の混合樹脂組成物に適切な成形圧力を加えて内部にコイル導体25を含む成形体を作製する。本発明の一実施形態において、適切な成形圧力は5~10t/cm
2である。
図6は、成型圧力を加える前の時点における成型金型内に入れられた混合樹脂組成物のうち
図3の領域Bに対応する領域の断面を模式的に示す模式図である。図示のように、成型圧力が加えられる前の混合樹脂組成物においては、樹脂に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散している。混合樹脂組成物に成型圧力が加えられると、
図4aを参照して説明したように、第2金属磁性粒子41(
図4aの例では第2金属磁性粒子41A、41B)が第1金属磁性粒子(
図4aの例では第1金属磁性粒子31A)の内方に向かって押し込まれる。このとき、比較的高い変形強度を有する第2金属磁性粒子41A、41Bは実質的に変形せずに第1金属磁性粒子31Aの内側に押し込まれるため、第1金属磁性粒子31Aに第2金属磁性粒子41A、41Bの表面の一部に対応する形状の凹部31a1、31a2が形成される。第2金属磁性粒子41の変形強度を第1金属磁性粒子31の変形強度よりも2倍以上とすることにより、第2金属磁性粒子41を実質的に変形させることなく第1金属磁性粒子31の内方に押し込むことができる。このように、圧縮成形工程により、第1金属磁性粒子31Aの内側に第2金属磁性粒子41A、41Bが入り込み、第1金属磁性粒子31に一又は複数の凹部31aが形成される。第2金属磁性粒子41A、41Bは、他の第1金属磁性粒子31、第1金属磁性粒子31Aに加えて又は第1金属磁性粒子31Aに代えて、他の第1金属磁性粒子31(例えば
図4において紙面の左上にある第1金属磁性粒子31)の内側に入り込んでも良い。第2金属磁性粒子41A、41B以外の第2金属磁性粒子41も成型圧力によって隣接する第1金属磁性粒子31の内側に入り込んでもよい。
【0063】
圧縮成形工程において成形体が得られた後に、当該製造方法は熱処理工程に進む。熱処理工程においては、圧縮成形工程により得られた成形体に対し熱処理が行われ、この熱処理により内部にコイル導体25が設けられた磁性基体10が得られる。この熱処理により、混合樹脂組成物中の樹脂が硬化して結着材となり、結着材により複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が結着される。熱処理は、混合樹脂組成物中の樹脂の硬化温度以上の温度で、例えば150℃から300℃にて30分~240分間行われる。
【0064】
次に、上記のようにして得られた磁性基体10の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21は、磁性基体10内に設けられているコイル導体25の一方の端部と電気的に接続され、外部電極22は、磁性基体10内に設けられているコイル導体25の他方の端部と電気的に接続されるように設けられる。外部電極21、22は、めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。以上により、コイル部品1が製造される。
【0065】
製造されたコイル部品1は、リフロー工程により基板2に実装されてもよい。この場合、コイル部品1が配置された基板2は、例えばピーク温度260℃に加熱されているリフロー炉を高速で通過した後に、外部電極21、22がそれぞれ実装基板2aのランド部3にはんだ接合されることで、コイル部品1が実装基板2に実装され、回路基板2が得られる。
【0066】
続いて、
図7を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品101について説明する。コイル部品101は、平面コイルである。図示のように、コイル部品101は、磁性基体110と、磁性基体110内に設けられた絶縁板150と、磁性基体110内において絶縁板150の上面及び下面に設けられたコイル導体125と、磁性基体110に設けられた外部電極121と、磁性基体110に外部電極121から離間して設けられた外部電極122と、を備える。磁性基体110は、磁性基体10と同様に磁性材料から形成される。絶縁板150は、絶縁材料から板状に形成された部材である。
【0067】
磁性基体110は、磁性基体10と同様に複数の金属磁性粒子を含む磁性材料から成る。一実施形態における磁性基体110は、複数の第1金属磁性粒子31と、複数の第2金属磁性粒子41と、を含む。磁性基体110は、概ね直方体形状を有する。磁性基体110は、第1の主面110a、第2の主面110b、第1の端面110c、第2の端面110d、第1の側面110e及び第2の側面110fを有する。磁性基体110は、これらの6つの面によってその外面が画定されている。第1の主面110aと第2の主面110bとはそれぞれ高さ方向両端の面を成し、第1の端面110cと第2の端面110dとはそれぞれ長さ方向両端の面を成し、第1の側面110eと第2の側面110fとはそれぞれ幅方向両端の面を成している。磁性基体10に関する説明は、磁性基体110についても可能な限り当てはまる。
【0068】
コイル導体125は、厚さ方向(T方向)に沿って延びるコイル軸Axの周りに螺旋状に巻回されている。コイル導体25は、その一端において外部電極121と接続されており、その他端において外部電極122と接続されている。
【0069】
次に、コイル部品101の製造方法の例を説明する。まず磁性材料から板状に形成された絶縁板を準備する。次に、当該絶縁板の上面及び下面にフォトレジストを塗布し、続いて、当該絶縁板の上面及び下面の各々に導体パターンを露光・転写し、現像処理を行う。これにより、当該絶縁板150の上面及び下面の各々に、コイル導体125を形成するための開口パターンを有するレジストが形成される。
【0070】
次に、めっき処理により、当該開口パターンの各々を導電性金属で充填する。続いて、エッチングにより上記絶縁板150からレジストを除去することで、当該絶縁板の上面及び下面の各々にコイル導体125が形成される。また、絶縁板150に設けられた貫通孔に導電性金属を充填することにより、コイル導体125の絶縁板の表側の部分と裏側の部分とを接続するビアが形成される。
【0071】
次に、上記コイル導体125が形成された絶縁板150の両面に、磁性基体110を形成する。磁性基体110を形成するために圧縮成形工程が行われる。この圧縮成形工程では、まず、複数の第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と複数の第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群との混合粒子を樹脂及び希釈溶剤と混練して混合樹脂組成物を得る。この混合樹脂組成物には、金属磁性粒子が分散している。次に、この混合樹脂組成物をPETフィルムなどの基材上にシート状に塗工し、この塗工された混合樹脂組成物を乾燥させることで希釈溶剤を揮発させる。これにより、樹脂中に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散したシート状の圧縮成形体が作製される。このシート状の樹脂成形体を磁性体シートと呼ぶ。この磁性体シートを2枚準備し、この2枚の磁性体シートの間に上記のコイル導体125を配置して加熱しながら5~10t/cm
2で加圧することで、内部にコイル導体を含む圧縮成形体(積層体)を作製する。成型圧力が加えられる前の混合樹脂組成物においては、磁性体シート中に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散している。磁性体シートに成型圧力が加えられると、
図4aを参照して説明したように、第2金属磁性粒子41(
図4aの例では第2金属磁性粒子41A、41B)が第1金属磁性粒子(
図4aの例では第1金属磁性粒子31A)の内方に向かって押し込まれる。このとき、比較的高い変形強度を有する第2金属磁性粒子41A、41Bは実質的に変形せずに第1金属磁性粒子31Aの内側に押し込まれるため、第1金属磁性粒子31Aに第2金属磁性粒子41A、41Bの表面の一部に対応する形状の凹部31a1、31a2が形成される。このように、圧縮成形工程により、第1金属磁性粒子31Aの内側に第2金属磁性粒子41A、41Bが入り込み、第1金属磁性粒子31に一又は複数の凹部31aが形成される。第2金属磁性粒子41A、41Bは、他の第1金属磁性粒子31、第1金属磁性粒子31Aに加えて又は第1金属磁性粒子31Aに代えて、他の第1金属磁性粒子31(例えば
図4において紙面の左上にある第1金属磁性粒子31)の内側に入り込んでも良い。第2金属磁性粒子41A、41B以外の第2金属磁性粒子41も成型圧力によって隣接する第1金属磁性粒子31の内側に入り込んでもよい。
【0072】
コイル部品101の製造方法は、次に、熱処理工程に進む。熱処理工程においては、上記の積層体に対して熱処理が行われ、この熱処理により内部にコイル導体125を有する磁性基体110が得られる。この熱処理により、混合樹脂組成物中の樹脂が硬化して結着材となり、結着材により複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が結着される。熱処理は、混合樹脂組成物中の樹脂の硬化温度以上の温度で、例えば150℃から300℃にて30分~240分間行われる。
【0073】
上記の製造工程における積層体の作製方法の別の例を説明する。この積層体の別の作成方法においては、コイル導体125が形成された絶縁板150を成型金型に設置し、この成型金型内複数の第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と複数の第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群との混合粒子を樹脂及び希釈溶剤と混練して得られた混合樹脂組成物を入れ、加熱しながら5~10t/cm
2の成形圧力で加圧することで内部にコイル導体125を有する成形体が作成される。成型圧力が加えられる前の混合樹脂組成物においては、樹脂に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散している。混合樹脂組成物に成型圧力が加えられると、
図4aを参照して説明したように、第2金属磁性粒子41(
図4aの例では第2金属磁性粒子41A、41B)が第1金属磁性粒子(
図4aの例では第1金属磁性粒子31A)の内方に向かって押し込まれる。このとき、比較的高い変形強度を有する第2金属磁性粒子41A、41Bは実質的に変形せずに第1金属磁性粒子31Aの内側に押し込まれるため、第1金属磁性粒子31Aに第2金属磁性粒子41A、41Bの表面の一部に対応する形状の凹部31a1、31a2が形成される。このように、圧縮成形工程により、第1金属磁性粒子31Aの内側に第2金属磁性粒子41A、41Bが入り込み、第1金属磁性粒子31に一又は複数の凹部31aが形成される。第2金属磁性粒子41A、41Bは、他の第1金属磁性粒子31、第1金属磁性粒子31Aに加えて又は第1金属磁性粒子31Aに代えて、他の第1金属磁性粒子31(例えば
図4において紙面の左上にある第1金属磁性粒子31)の内側に入り込んでも良い。第2金属磁性粒子41A、41B以外の第2金属磁性粒子41も成型圧力によって隣接する第1金属磁性粒子31の内側に入り込んでもよい。この成形体に対して上記の熱処理を行うことにより内部にコイル導体125を有する磁性基体110が得られる。
【0074】
次に、上記のようにして得られた磁性基体110の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極121及び外部電極122を形成する。外部電極121は、磁性基体110内に設けられているコイル導体125の一方の端部と電気的に接続され、外部電極122は、磁性基体110内に設けられているコイル導体125の他方の端部と電気的に接続されるように設けられる。以上により、コイル部品101が製造される。
【0075】
続いて、
図8を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品201について説明する。コイル部品201は、積層コイルである。図示のように、コイル部品201は、磁性基体210と、磁性基体210内に設けられたコイル導体225と、磁性基体210に設けられた外部電極221と、磁性基体210に外部電極221から離間して設けられた外部電極222と、を備える。磁性基体210は、磁性基体10と同様に磁性材料から構成される。
【0076】
磁性基体210は、磁性基体10と同様に複数の金属磁性粒子を含む磁性材料から成る。一実施形態における磁性基体110は、複数の第1金属磁性粒子31と、複数の第2金属磁性粒子41と、を含む。磁性基体210は、概ね直方体形状を有しており、第1の主面210a、第2の主面210b、第1の端面210c、第2の端面210d、第1の側面210e及び第2の側面210fを有する。磁性基体210は、これらの6つの面によってその外面が画定されている。第1の主面210aと第2の主面210bとはそれぞれ高さ方向両端の面を成し、第1の端面210cと第2の端面210dとはそれぞれ長さ方向両端の面を成し、第1の側面210eと第2の側面210fとはそれぞれ幅方向両端の面を成している。磁性基体10に関する説明は、磁性基体210についても可能な限り当てはまる。
【0077】
コイル導体225は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Axの周りに螺旋状に巻回されている。コイル導体225は、導体パターンC11~C16と、この導体パターンC11~C16のうち隣接して配置されたもの同士を接続するビア導体(不図示)とを有する。ビア導体は、概ねコイル軸Axに沿って延びる。導体パターンC11~C16は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをシート状の圧縮成形体にスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターンC11~C16の各々は、隣接する導体パターンとビア導体を介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11~C16が、螺旋状のコイル導体225を形成する。
【0078】
次に、コイル部品201の製造方法の例を説明する。コイル部品201は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、積層プロセスによるコイル部品201の製造方法の一例を説明する。
【0079】
まず、磁性材料から成る複数の磁性体シートを作成する。これらの磁性体シートの各々は、複数の第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と複数の第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群との混合粒子を結着剤としての熱分解性の樹脂(例えばポリビニルブチラート(PVB)樹脂)及び希釈溶剤と混練して得られた混合樹脂組成物をPETフィルムなどの基材上にシート状に塗工し、この塗工された混合樹脂組成物を乾燥させて希釈溶剤を揮発させることで得られる。これにより、樹脂中に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散した磁性体シートが作成される。このようにして作成した磁性体シートを型内に配置して加熱しながら5~10t/cm
2で加圧することで、シート状の圧縮成形体を作製する。成型圧力が加えられる前の磁性体シートにおいては、樹脂に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散している。混合樹脂組成物に成型圧力が加えられると、
図4aを参照して説明したように、第2金属磁性粒子41(
図4aの例では第2金属磁性粒子41A、41B)が第1金属磁性粒子(
図4aの例では第1金属磁性粒子31A)の内方に向かって押し込まれる。このとき、比較的高い変形強度を有する第2金属磁性粒子41A、41Bは実質的に変形せずに第1金属磁性粒子31Aの内側に押し込まれるため、第1金属磁性粒子31Aに第2金属磁性粒子41A、41Bの表面の一部に対応する形状の凹部31a1、31a2が形成される。このように、圧縮成形工程により、第1金属磁性粒子31Aの内側に第2金属磁性粒子41A、41Bが入り込み、第1金属磁性粒子31に一又は複数の凹部31aが形成される。第2金属磁性粒子41A、41Bは、他の第1金属磁性粒子31、第1金属磁性粒子31Aに加えて又は第1金属磁性粒子31Aに代えて、他の第1金属磁性粒子31(例えば
図4において紙面の左上にある第1金属磁性粒子31)の内側に入り込んでも良い。第2金属磁性粒子41A、41B以外の第2金属磁性粒子41も成型圧力によって隣接する第1金属磁性粒子31の内側に入り込んでもよい。
【0080】
次に、以下のようにしてシート状の圧縮成形体に対してコイル導体を設ける。まず、シート状の圧縮成形体の所定の位置に当該シート状の圧縮成形体をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、次に、シート状の圧縮成形体の各々の上面に、導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、各圧縮成形体に未焼成導体パターンを形成し、各圧縮成形体に形成された各貫通孔に導電ペーストを埋め込む。
【0081】
次に、各圧縮成形体を積層してコイル積層体を得る。各圧縮成形体は、当該各磁性体シートに形成されている導体パターンC11~C16に対応する未焼成導体パターンの各々が隣接するも同士で未焼成のビアを介して電気的に接続されるように積層される。
【0082】
次に、複数のシート状の圧縮成形体を積層して上側カバー層となる上側積層体を形成する。また、複数のシート状の圧縮成形体を積層して下側カバー層となる下側積層体を形成する。次に、下側積層体、コイル積層体、上側積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層し、この積層された各積層体をプレス機により熱圧着することで本体積層体が得られる。本体積層体は、下側積層体、コイル積層体、及び上側積層体を形成せずに、準備したシート状の圧縮成形体全てを順番に積層して、この積層された圧縮成形体を一括して熱圧着することにより形成しても良い。
【0083】
次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理する。この加熱処理により、複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41の表面が酸化し、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41が酸化物の被膜で覆われる。この酸化物の被膜により隣接する金属磁性粒子が互いと結合される。加熱処理は、例えば350℃から900℃の温度で、例えば30分~360分間行われる。第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41のいずれか一方が非晶質合金粒子である場合は、熱処理温度は400℃以下とすることができる。加熱処理工程は、脱脂処理を行う工程を含んでもよい。この脱脂処理は、熱処理工程とは独立して行われてもよい。脱脂処理は、200℃~400℃で例えば20分間~120分間行われる。このチップ積層体の端部に対して、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行う。
【0084】
次に、このチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極221及び外部電極222を形成する。以上により、コイル部品201が得られる。
【0085】
続いて、
図9を参照して、本発明の別の実施形態によるコイル部品301について説明する。本発明の一実施形態によるコイル部品301は、巻線型のインダクタである。図示のように、コイル部品301は、磁性基体310と、コイル導体325(巻線325)と、第1の外部電極321と、第2の外部電極322と、を備えている。磁性基体310は、巻芯311と、当該巻芯311の一方の端部に設けられた直方体形状のフランジ312aと、当該巻芯311の他方の端部に設けられた直方体形状のフランジ312bとを有する。巻芯311には、コイル導体325が巻回されている。コイル導体325は、導電性に優れた金属材料から成る導線と、当該導線の周囲を被覆する絶縁被膜とを有する。第1の外部電極321は、フランジ312aの下面に沿って設けられており、第2の外部電極322は、フランジ312bの下面に沿って設けられている。
【0086】
磁性基体310は、磁性基体10と同様に複数の金属磁性粒子を含む磁性材料から成る。一実施形態における磁性基体110は、複数の第1金属磁性粒子31と、複数の第2金属磁性粒子41と、を含む。
【0087】
次に、コイル部品301の製造方法の例を説明する。まず、磁性基体310が作製される。磁性基体310は、混合樹脂組成物を圧縮成形する圧縮成形工程を含む。この圧縮成形工程では、まず、複数の第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と複数の第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群との混合粒子を樹脂及び希釈溶剤と混練して混合樹脂組成物を得る。この混合樹脂組成物には、金属磁性粒子が分散している。この混合樹脂組成物を成型金型に入れ、この成型金型内の混合樹脂組成物を加熱しながら5~10t/cm
2の成形圧力で加圧することで成形体が作製される。成型圧力が加えられる前の混合樹脂組成物においては、磁性体シート中に複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が分散している。磁性体シートに成型圧力が加えられると、
図4aを参照して説明したように、第2金属磁性粒子41(
図4aの例では第2金属磁性粒子41A、41B)が第1金属磁性粒子(
図4aの例では第1金属磁性粒子31A)の内方に向かって押し込まれる。このとき、比較的高い変形強度を有する第2金属磁性粒子41A、41Bは実質的に変形せずに第1金属磁性粒子31Aの内側に押し込まれるため、第1金属磁性粒子31Aに第2金属磁性粒子41A、41Bの表面の一部に対応する形状の凹部31a1、31a2が形成される。このように、圧縮成形工程により、第1金属磁性粒子31Aの内側に第2金属磁性粒子41A、41Bが入り込み、第1金属磁性粒子31に一又は複数の凹部31aが形成される。第2金属磁性粒子41A、41Bは、他の第1金属磁性粒子31、第1金属磁性粒子31Aに加えて又は第1金属磁性粒子31Aに代えて、他の第1金属磁性粒子31(例えば
図4において紙面の左上にある第1金属磁性粒子31)の内側に入り込んでも良い。第2金属磁性粒子41A、41B以外の第2金属磁性粒子41も成型圧力によって隣接する第1金属磁性粒子31の内側に入り込んでもよい。
【0088】
次に、上記の圧縮成形工程により得られた成形体に対して熱処理を加える熱処理工程が行われる。この熱処理工程により磁性基体310が得られる。この熱処理により、混合樹脂組成物中の樹脂が硬化して結着材となり、結着材により複数の第1金属磁性粒子31及び複数の第2金属磁性粒子41が結着される。熱処理は、混合樹脂組成物中の樹脂の硬化温度以上の温度で、例えば150℃~300℃にて、30分~240分間行われる。
【0089】
次に、上記の熱処理工程により得られた磁性基体310にコイル導体325を設けるコイル設置工程が行われる。コイル設置工程においては、磁性基体310の周りにコイル導体325を巻回し、このコイル導体325の一端を第1の外部電極321に接続し、他端を第2の外部電極322に接続する。以上により、コイル部品301が得られる。
【実施例】
【0090】
まず、第1金属磁性粒子31として平均粒径が8μmのFe-Si-Cr結晶質合金粒子を準備し、第2金属磁性粒子41として平均粒径が2μmのFe-Si-Cr-B非晶質(アモルファス)合金粒子を準備し、この2種類の金属磁性粉末を表1に示す比率で混合して9種類の混合粒子を得た。この混合粒子に含まれている第1金属磁性粒子31の組成は、Fe:95wt%、Si:3.5%、Cr:1.5wt%とし、第2金属磁性粒子41の組成は、Fe:87.5t%、Si:6.7%、Cr:2.5wt%、B:2.6%とした。
【0091】
また、第1金属磁性粒子31として上記と同様に平均粒径が8μmのFe-Si-Cr合金粒子を準備し、第2金属磁性粒子41として上記とは異なり平均粒径が2μmのFe-Si-Cr合金粉末を準備し、この2種類の金属磁性粉末を表2に示す比率で混合して9種類の混合粒子を得た。この混合粒子に含まれている第1金属磁性粒子31の組成は、上記と同様にFe:95wt%、Si:3.5%、Cr:1.5wt%とし、第2金属磁性粒子41の組成は、第1金属磁性粒子31の組成とは異なりFe:92wt%、Si:6.5%、Cr:1.5wt%とした。
【0092】
表1及び表2においては、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の合計の体積100vol%に対する第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の含有比率をそれぞれ体積パーセントで示している。
【0093】
株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機(MCT-211型)を使用して第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の変形強度を以下のようにして測定した。具体的には、常温常湿(温度25℃、湿度50%)環境下において、プローブの負荷荷重を0mNから30mNまで0.45mN/secの速さで変化させて、測定対象の粒子の変位量を測定した。この測定は、10msecごとに行った。そして、測定対象の粒子の変位量が粒径の10%以上となったときの荷重P(N)から以下の式(1)に従って、変位強度C10を計算した。
C10(MPa)=2.48×P/(π×d2)・・・式(1)
【0094】
その結果、平均粒径が8μmで組成がFe:95wt%、Si:3.5wt%、Cr:1.5wt%)である第1金属磁性粒子31の変形強度は158MPaであった。平均粒径が2μmで組成がFe:87.5wt%、Si:6.7wt%、Cr:2.5wt%、B:2.6wt%)である非晶質の第2金属磁性粒子41の変形強度は795MPaであった。このように、第1金属磁性粒子31の変形強度に対する第2金属磁性粒子41の変形強度の比は、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率を第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも大きくし第2金属磁性粒子41を非晶質とすることにより、5.0以上となることが確認できた。平均粒径が2μmで組成がFe:92wt%、Si:6.5%、Cr:1.5wt%)である第2金属磁性粒子41の変形強度は321MPaであった。このように、第2金属磁性粒子41の変形強度は、第1金属磁性粒子31の変形強度よりも大きいことが確認できた。また、第1金属磁性粒子31の変形強度に対する第2金属磁性粒子41の変形強度の比は、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率を第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも大きくすることにより2.0以上となることが確認できた。
【0095】
一実施形態において、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の変形強度は、磁性基体10として成形される前後で実質的に変化しない。一実施形態において、第1金属磁性粒子31の変形強度と第2金属磁性粒子41の変形強度との大小関係は、磁性基体10として成形される前後で変化しない。すなわち、第1金属磁性粒子31の変形強度と第2金属磁性粒子41の変形強度との大小関係が逆転することはない。一実施形態において、第1金属磁性粒子31の変形強度の第2金属磁性粒子41の変形強度に対する比は、磁性基体10として成形される前後で実質的に変化しない。よって、完成品のコイル部品1の磁性基体10に含まれている第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の変形強度、両者の変形強度の大小関係、及び両者の変形強度の比について論じる場合には、磁性基体10の成形前に上記のように微小圧縮試験機を用いて測定される変形強度(C10)を採用することができる。この点は、コイル部品101、201、301に含まれる第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41の変形強度についても同じである。
【0096】
次に、この混合粒子のそれぞれをエポキシ樹脂と混練して混合樹脂組成物を生成した。次に、成形金型内に予め準備した銅製で表面に絶縁膜が設けられた巻線コイルを配置し、この巻線コイルが設置された成形金型内に上記のようにして生成した混合樹脂組成物を入れ、この成型金型内の混合樹脂組成物に表1及び表2に記載されている成形圧力を加えて内部にコイル導体を含む成形体を作製した。
【0097】
次に、上記のようにして作製した成形体に対し200℃で120分間熱処理を行って混合樹脂組成物中の樹脂を硬化させた。これにより、内部にコイル導体を有する磁性基体10が得られた。
【0098】
次に、上記のようにして得られた磁性基体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成した。このようにして、組成及び製造時の成形圧力が異なる36種類のコイル部品(試料1A~18A及び試料1B~18B)を得た。
【0099】
上記のようにして得られた試料1A~試料18A及び試料1B~18Bのそれぞれについて、B-Hアナライザを用いて透磁率(μ)を測定した。また、試料1A~試料18A及び試料1B~18Bのそれぞれについて充填率を測定した。具体的には、各試料をその厚さ方向に沿って切断して断面を露出させ、当該断面の視野の全面積に対する金属磁性粒子が占める面積の割合を求め、このようにして求められた割合を充填率として表1及び表2に記載した。以上の測定結果及び計算結果を以下の表1及び表2に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
表1及び表2に示されているように、試料3A~7A、12A~16A、3B~7B、12B~16Bにおいては、平均粒径が異なる金属磁性粒子を混合しただけでは実現が困難な80%を超える充填率が実現されており、また、それにともなって透磁率にも改善がみられた。
【0103】
次に、上記の実施形態が奏する作用効果について説明する。本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第1金属磁性粒子31は、第2金属磁性粒子41の表面の一部に対応する形状の凹部31aを有する。この凹部31aに第2金属磁性粒子の一部が入り込むことで、第1金属磁性粒子31と第2金属磁性粒子41との間の隙間を減少させることができる。これにより、磁性基体10、110、210における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。
【0104】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第2金属磁性粒子41は、第1金属磁性粒子31よりも大きな変形強度を有するため、圧縮応力が加えられた場合に第1金属磁性粒子31よりも変形しにくい。このため、第2金属磁性粒子41の表面に設けられた絶縁膜41bが破壊されにくい。絶縁膜41bは、延性が小さいという性質のために、第2金属磁性粒子41の変形によって破壊されやすい。絶縁膜41bが破壊されると隣接する金属磁性粒子同士がショートすることにより、当該隣接する金属磁性粒子が大径の1つの粒子となり、この大径化した粒子においては渦電流損失が大きくなるという問題がある。本明細書に開示された少なくとも一つの実施形態によれば、絶縁膜41bの破壊が防止又は抑制されるため、隣接する金属磁性粒子間(例えば、第1金属磁性粒子31と第2金属磁性粒子41との間)でのショートの発生が抑制される。
【0105】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第2金属磁性粒子41は、第1金属磁性粒子31よりも大きな変形強度を有するため、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41を含む磁性材料に圧縮応力が加えられた場合に、第1金属磁性粒子31が変形することで、第1金属磁性粒子31だけでなく第2金属磁性粒子41に圧縮応力が伝達されやすい。第1金属磁性粒子31の変形強度が第2金属磁性粒子41の変形強度と同程度である場合又は第1金属磁性粒子31の変形強度の方が第2金属磁性粒子41の変形強度よりも大きい場合には、第1金属磁性粒子31が変形しにくいため、第1金属磁性粒子31の間に存在する第2金属磁性粒子41に圧縮応力が伝達されにくい。第2金属磁性粒子41に圧縮応力が伝達されないと、当該第2金属磁性粒子41の周囲に他の粒子(第1金属磁性粒子31や自ら以外の第2金属磁性粒子41)とのギャップが温存されやすく、このことが従来のコイル部品における充填率の十分な向上を阻害している。本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、上記のとおり第2金属磁性粒子41に圧縮応力が伝達されやすいので、第2金属磁性粒子41の周囲における他の金属磁性粒子とのギャップを減少させ、磁性基体10、110、210における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。
【0106】
本明細書に開示された少なくとも一つの実施形態によれば、磁性基体10、110、210において、体積比で第2金属磁性粒子41よりも第1金属磁性粒子31の含有比率が高いため、第1金属磁性粒子31におけるFeの含有比率を第2金属磁性粒子41におけるFeの含有比率よりも高くすることにより、第1金属磁性粒子31におけるFeの含有比率が第2金属磁性粒子41におけるFeの含有比率よりも小さい場合と比較して、磁性基体10、110、210の飽和磁束密度を高くすることができる。
【0107】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第2金属磁性粒子41におけるSiの含有比率を第1金属磁性粒子31におけるSiの含有比率よりも高いので、第2金属磁性粒子41の変形強度を第1金属磁性粒子31の変形強度よりも大きくすることができる。このように、第1金属磁性粒子31及び第2金属磁性粒子41に含まれるSiの含有比率の調整により、第2金属磁性粒子41の変形強度を第1金属磁性粒子31の変形強度よりも大きくすることができる。
【0108】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、第1変形強度を有する第1金属磁性粒子31を含む第1金属磁性粒子群と、この第1変形強度よりも大きな第2変形強度を有する第2金属磁性粒子41を含む第2金属磁性粒子群と、を含む磁性材料を圧縮成形して磁性基体10、110、210を作成している。このため、圧縮成形工程における成形圧力の作用により、第2金属磁性粒子41が隣接する第1金属磁性粒子31に入り込み、第1金属磁性粒子31の表面に一又は複数の凹部31aが形成される。このように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、変形強度が互いに異なる2種類の金属磁性粒子を含む磁性材料に圧縮成形を行うことにより、第2金属磁性粒子41を第1金属磁性粒子31の内方に入り込ませ、これにより磁性基体10、110、210における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。第2金属磁性粒子41が第1金属磁性粒子31の内方に入り込むことにより、本発明の少なくとも一つの実施形態における磁性基体10、110、210は、平均粒径が異なる2種類の金属磁性粒子を含む従来の磁性基体(平均粒径の比較的小さい小粒子が平均粒径の比較的大きい大粒子に入り込んでいない磁性基体)と比較して、圧縮成形工程以外に付加的な工程を経ることなく、金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。
【0109】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0110】
1、101、201、301 コイル部品
10、110、210、310 磁性基体
21、22、121、122、221、222、321、322 外部電極
25、125、225、325 コイル導体
31 第1金属磁性粒子
31a 凹部
41 第2金属磁性粒子41
41a コア部
41b 絶縁膜
Ax コイル軸