(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20240123BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 109
(21)【出願番号】P 2020017860
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2019020898
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古矢 正明
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】荻本 眞一
(72)【発明者】
【氏名】星野 光
(72)【発明者】
【氏名】生田 亮
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061852(WO,A1)
【文献】特開2016-198732(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084812(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0194034(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向とは水平面内において交差する方向の前記錠剤の位置を検出する検出部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤に対し、前記交差する方向に並ぶ複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記検出部により検出された前記錠剤の位置及び前記錠剤に印刷する印刷パターンに基づき決定された、前記複数のノズルの中で前記錠剤に対する印刷に用いる使用ノズル範囲のうち、その一部が、前記搬送部により順次搬送される前記錠剤に対して、前記複数のノズルのうち前記インクを安定して吐出することが可能な、予め定めた安定吐出範囲内からはみ出た場合に、前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を印刷後の前記印刷パターンが縮小されるように調整、及び/又は、前記使用ノズル範囲をずらすように調整し、調整した前記使用ノズル範囲内のノズルによる印刷を前記インクジェットヘッドに実行させる制御部と、
を備える錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記錠剤の位置に基づく、予め定めた基準位置との位置ズレ量が予め定めた所定の範囲内でない場合、前記インクジェットヘッドによる前記錠剤に対する印刷を制限する請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記所定の範囲は、印刷後の前記印刷パターンが検査で良品と判定される範囲を基に設定されている請求項2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記使用ノズル範囲のうちの一部が前記安定吐出範囲内からはみ出た量が予め定めた所定値以上である場合、前記インクジェットヘッドによる前記錠剤に対する印刷を制限する請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記使用ノズル範囲を調整する場合、前記使用ノズル範囲外のノズルのうち予め決めたノズルを前記安定吐出範囲の端とするように前記安定吐出範囲を拡大し、拡大した前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を調整する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の錠剤印刷装置。
【請求項6】
錠剤を搬送部により搬送する工程と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向とは水平面内において交差する方向の前記錠剤の位置を検出部により検出する工程と、
前記検出部により検出された前記錠剤の位置及び前記錠剤に印刷する印刷パターンに基づき、前記錠剤に印刷を行うインクジェットヘッドが備える、前記交差する方向に並ぶ複数のノズルの中で前記錠剤に対する印刷に用いる使用ノズル範囲を決定し、決定した前記使用ノズル範囲のうちの一部が、前記搬送部により順次搬送される前記錠剤に対して、前記複数のノズルのう
ちインクを安定して吐出することが可能な、予め定めた安定吐出範囲内からはみ出た場合に、前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を印刷後の前記印刷パターンが縮小されるように調整、及び/又は、前記使用ノズル範囲をずらすように調整し、調整した前記使用ノズル範囲内のノズルによる印刷を前記インクジェットヘッドに実行させる工程と、
を有する錠剤印刷方法。
【請求項7】
前記検出部により検出された前記錠剤の位置に基づく、予め定めた基準位置との位置ズレ量が予め定めた所定の範囲内でない場合、前記インクジェットヘッドによる前記錠剤に対する印刷を制限する工程を有する請求項6に記載の錠剤印刷方法。
【請求項8】
前記使用ノズル範囲のうちの一部が前記安定吐出範囲内からはみ出た量が予め定めた所定値以上である場合、前記インクジェットヘッドによる前記錠剤に対する印刷を制限する工程を有する請求項6に記載の錠剤印刷方法。
【請求項9】
前記所定の範囲は、印刷後の前記印刷パターンが検査で良品と判定される範囲を基に設定されている請求項7に記載の錠剤印刷方法。
【請求項10】
前記使用ノズル範囲を調整する場合、前記使用ノズル範囲外のノズルのうち予め決めたノズルを前記安定吐出範囲の端とするように前記安定吐出範囲を拡大し、拡大した前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を調整する請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字やマークなどの識別情報(情報の一例)を印刷するため、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアなどの搬送装置により錠剤を搬送し、搬送装置の上方に配置されたインクジェットヘッドの各ノズルから、インクジェットヘッド下方を通過する錠剤に向けてインクを吐出し、錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
通常、錠剤は搬送方向に列状に並び、ノズル列が水平面内において搬送方向と直交するインクジェットヘッドの下方に搬送されるため、インクジェットヘッドは、印刷対象の錠剤の大きさや位置に合わせて、ある範囲内のノズル群を用いて印刷を行う。インクジェットヘッドのノズル列の長さは錠剤の直径よりも長く、錠剤が搬送されてきた位置によりインクジェットヘッドが有する複数のノズルの中から印刷に使用するノズルを決定することになる。錠剤は、インクジェットヘッドに対して常に同じ位置関係で搬送されてくるわけではないが、概ね同じ位置(あるいはその付近の位置)で搬送されてくる。このため、インクジェットヘッドのノズル列において、使用頻度が高いノズルと低いノズルが生じる。
【0004】
このような状況下において、錠剤が錠剤の列からずれた状態(水平面内において搬送方向と直交する方向にずれた状態)で搬送されると、そのずれた状態の錠剤への印刷には、使用頻度の高いノズルだけでなく、使用頻度が低いノズルも使用される。使用頻度が低いノズルでは、ノズル先端部分のインク乾燥が進行している。このため、使用頻度が低いノズルが使用されると、ノズルから吐出されたインクが曲がったり、インク量が不十分となって印字がかすれたりし、印刷不良の錠剤(以下、「不良錠剤」という。)が発生するため、生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、生産性を上げることができる錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、
錠剤を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向とは水平面内において交差する方向の前記錠剤の位置を検出する検出部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤に対し、前記交差する方向に並ぶ複数のノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記検出部により検出された前記錠剤の位置及び前記錠剤に印刷する印刷パターンに基づき決定された、前記複数のノズルの中で前記錠剤に対する印刷に用いる使用ノズル範囲のうち、その一部が、前記搬送部により順次搬送される前記錠剤に対して、前記複数のノズルのうち前記インクを安定して吐出することが可能な、予め定めた安定吐出範囲内からはみ出た場合に、前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を印刷後の前記印刷パターンが縮小されるように調整、及び/又は、前記使用ノズル範囲をずらすように調整し、調整した前記使用ノズル範囲内のノズルによる印刷を前記インクジェットヘッドに実行させる制御部と、
を備える。
【0009】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、
錠剤を搬送部により搬送する工程と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向とは水平面内において交差する方向の前記錠剤の位置を検出部により検出する工程と、
前記検出部により検出された前記錠剤の位置及び前記錠剤に印刷する印刷パターンに基づき、前記錠剤に印刷を行うインクジェットヘッドが備える、前記交差する方向に並ぶ複数のノズルの中で前記錠剤に対する印刷に用いる使用ノズル範囲を決定し、決定した前記使用ノズル範囲のうちの一部が、前記搬送部により順次搬送される前記錠剤に対して、前記複数のノズルのうちインクを安定して吐出することが可能な、予め定めた安定吐出範囲内からはみ出た場合に、前記安定吐出範囲内のノズルのみを使用して前記錠剤に対する印刷を行うべく、前記使用ノズル範囲を印刷後の前記印刷パターンが縮小されるように調整、及び/又は、前記使用ノズル範囲をずらすように調整し、調整した前記使用ノズル範囲内のノズルによる印刷を前記インクジェットヘッドに実行させる工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、生産性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の一部を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る安定吐出範囲を説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態に係る使用ノズル範囲の調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る縮小調整処理を説明するための第1の図である。
【
図6】第1の実施形態に係る縮小調整処理を説明するための第2の図である。
【
図7】第2の実施形態に係るシフト調整処理を説明するための第1の図である。
【
図8】第2の実施形態に係るシフト調整処理を説明するための第2の図である。
【
図9】第2の実施形態に係る使用ノズル範囲の調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第3の実施形態に係る範囲拡大処理を説明するための図である。
【
図11】他の実施形態に係る縮小調整処理及びシフト調整処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について
図1から
図6を参照して説明する。
【0014】
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給部10と、搬送部20と、検出部30と、撮像部40と、印刷部50と、撮像部60と、回収部70と、画像処理部80と、制御部90とを備えている。検出部30は撮像タイミング検出用であり、撮像部40は錠剤位置検出用であり、撮像部60は印刷状態検査用である。
【0015】
供給部10は、ホッパ11及びシュータ12を有している。この供給部10は、印刷対象となる錠剤Tを搬送部20に供給することが可能に構成されており、搬送部20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、ホッパ11から供給された錠剤Tを一列に整列させて搬送部20に供給する。供給部10は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。
【0016】
搬送部20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、複数(
図1の例では、三つ)の従動プーリ23、モータ(駆動部)24、位置検出器25及び吸引チャンバ(吸引部)26を有している。搬送ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動プーリ22及び各従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び各従動プーリ23は装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ22はモータ24に連結されている。モータ24は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。位置検出器25は、エンコーダなどの機器であり、モータ24に取り付けられている。この位置検出器25は電気的に制御部90に接続されており、検出信号を制御部90に送信する。制御部90は、検出信号に基づいて搬送ベルト21の位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。搬送部20は、モータ24による駆動プーリ22の回転によって各従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、搬送ベルト21上の錠剤Tを
図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
【0017】
搬送ベルト21には、
図2に示すように、円形状の吸引孔21aが複数形成されている。これらの吸引孔21aは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21aは、吸引チャンバ26(
図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ26内に接続されており、吸引チャンバ26により吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ26には、ポンプなどの吸気部が吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気部の作動により吸引チャンバ26の内部は減圧される。吸引管は、吸引チャンバ26の側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気部は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。吸引チャンバ26の内部が減圧されると、搬送ベルト21の各吸引孔21a上に置かれた錠剤Tは吸引チャンバ26により吸引され、搬送ベルト21上に保持される。
【0018】
検出部30は、供給部10が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この検出部30は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤TのX方向(搬送方向A1)の位置を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部30としては、例えば、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。検出部30は制御部90に電気的に接続されており、制御部90に検出信号を送信する。
【0019】
撮像部40は、検出部30が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この撮像部40は、前述の検出部30が検出した錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部40の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(錠剤位置検出用の画像)を取得し、取得した画像を画像処理部80に送信する。撮像部40としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。撮像部40は画像処理部80を介して制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0020】
ここで、前述の検出部30は、搬送ベルト21上の錠剤TのX方向(搬送方向A1)の位置を検出する検出部として機能し、撮像部40は、錠剤位置検出用の画像を取得して画像処理部80に送信し、画像処理部80は、取り込まれた錠剤位置検出用の画像から、搬送ベルト21上の錠剤TのX方向の位置に加え、Y方向(水平面内において搬送方向A1と直交する方向)及びθ方向の位置を検出する(
図2参照)。撮像部40及び画像処理部80は、少なくとも、水平面内において搬送ベルト21上の錠剤Tの搬送方向A1と直交(交差の一例)する方向の位置を検出する検出部として機能する。
【0021】
前述の錠剤位置検出用の画像から検出されるX方向及びY方向の位置とは、例えば、撮像部40の撮像視野の中心に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置とは、例えば、撮像部40の撮像視野のY方向の中心線に対する錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形態である場合に検出される。
【0022】
印刷部50は、インクジェットヘッド51を有している。インクジェットヘッド51は、撮像部40が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。インクジェットヘッド51は、複数のノズル51a(
図2参照)を有し、それらのノズル51aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド51は、ノズル51aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向A1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド51としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。インクジェットヘッド51は制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。
【0023】
撮像部60は、印刷部50が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この撮像部60は、前述の検出部30が検出した錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部60の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷状態検査用の画像)を取得し、取得した画像を画像処理部80に送信する。撮像部60としては、例えば、前述の撮像部40と同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。撮像部60は画像処理部80を介して制御部90に電気的に接続されており、その駆動が制御部90により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0024】
回収部70は、撮像部60が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送部20における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収部70は、搬送部20による保持が解除されて落下する錠剤Tを良品と不良品とに分けて回収するように構成されている。なお、搬送部20は、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tが所定の位置、例えば、搬送部20における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
【0025】
画像処理部80は、撮像部40により撮像された錠剤位置検出用の画像及び撮像部60によって撮像された印刷状態検査用の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部80は、撮像部40から得られた錠剤位置検出用の画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する(
図2参照)。また、画像処理部80は、撮像部60から得られた印刷状態検査用の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。
【0026】
なお、画像処理部80は、前述のように取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部90に送信する。この画像処理部80が各情報を送信する際には、それらの情報に各撮像部40、60の識別情報を付加して送信する。これにより、制御部90は、送信された情報が、各撮像部40、60のうちいずれの装置に対応する情報であるかを把握することができる。
【0027】
制御部90は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御部90は、各種情報や各種プログラムに基づいて供給部10、搬送部20、撮像部40、印刷部50、撮像部60及び画像処理部80を制御する。また、制御部90は、検出部30や位置検出器25から送信される検出信号などを受信する。
【0028】
この制御部90は、画像処理部80から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報に関する錠剤Tに対して印刷条件を設定する。なお、記憶部には、文字やマークなどの印刷パターン及びその印刷パターンの錠剤T上での印刷位置などを含む印刷データ、搬送ベルト21の移動速度データなどが記憶されている。
【0029】
例えば、制御部90は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷パターンに基づいて、インクジェットヘッド51において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル51aの範囲(使用ノズル範囲)を決定し、また、錠剤TのX方向の位置情報に基づいて、錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングを決定し、印刷条件を設定する。また、前述のように錠剤Tが方向性を有する形態である場合、制御部90は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷データを制御部90の記憶部に登録しておき、それらの印刷データの中から、検出されたθ方向の位置に適合する角度の印刷データを選択して印刷条件を設定する。
【0030】
また、制御部90は、画像処理部80から送信された錠剤Tの印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断する(印刷状態検査)。例えば、制御部90は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを制御部90の記憶部に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。
【0031】
(使用ノズル範囲の決定方法)
次に、前述の使用ノズル範囲の決定方法(決定手順)について説明する。なお、制御部90は、基本的に、錠剤TのY方向の位置情報や印刷パターンに基づいて、インクジェットヘッド51の使用ノズル範囲を決定するが、以下のように使用ノズル範囲を調整する場合がある。
【0032】
図3には、錠剤数が縦軸に、インクジェットヘッド51のノズル番号が横軸にされ、錠剤中心が通過する位置(以下、「錠剤中心位置」ともいう。)の分布状態を示すグラフ(錠剤中心位置分布グラフ)が示されている。
図3において、インクジェットヘッド51のノズル番号236はインクジェットヘッド51の中心位置である。なお、
図3のグラフは6000個の錠剤Tを錠剤印刷装置1に投入したときの結果を示したものである。
【0033】
例えば、錠剤中心位置がノズル番号220~247の範囲で変化すると、錠剤数も変化しており、このグラフ中、錠剤中心位置がノズル番号236の直下を通過する錠剤数は800錠を超えて最大となっている。つまり、15パーセント近くの錠剤は、その中心がインクジェットヘッド51の中心に位置するノズル51aであるノズル番号236の直下となるように搬送されている。さらに、ノズル番号236の隣に位置するノズル番号235、237、さらにその隣のノズル番号234、238に錠剤Tの中心がくるように搬送されるものまで含めると、約3500個の錠剤Tは、その中心がこれらのノズル番号234~238の直下にくるように搬送されていることが分かる。すなわち、全体の58%を超える錠剤Tは、その中心がこれら5つのノズル番号234~238のいずれかの直下にくるように搬送される。これに対し、錠剤中心位置がノズル番号220~223の直下を通過する錠剤数は数錠であり、ノズル番号246~247の直下を通過する錠剤数も数錠である。
【0034】
錠剤中心位置は、
図3において、錠剤数が最大となるノズル番号236を中心として左側に16(=236-220)ノズル分ずれたり、右側に11(=247-236)ノズル分ずれたりするため、合計で27(=247-220)ノズル分変動する。一例として、ノズル間隔が0.04mmであれば(以下も同様)、錠剤中心位置は、27×0.04=1.08mm、つまり約1mmの範囲内で変動する。
【0035】
図3では、印刷パターンが一例として「ABCDEFG」であり、その印刷パターンのY方向(
図2参照)の幅が4mmである場合、前述した通り、使用するノズル数は4/0.04+1=101個となり、錠剤中心位置がノズル番号236である場合、使用ノズル範囲はノズル番号186~286となる。また、錠剤中心位置がノズル番号247である場合、使用ノズル範囲はノズル番号197~297となり、錠剤中心位置がノズル番号220である場合、使用ノズル範囲はノズル番号170~270となる。このように、
図3によれば、使用ノズル範囲はノズル番号170~297の範囲内でシフトするため、(297-170)×0.04=5.08mm、つまり約5mmの範囲内で変化することになる。
【0036】
ここで、一例として、錠剤中心位置がノズル番号230~242の範囲内であれば、不良品発生率が所定値(3%などの数%)よりも低く、安定吐出が可能であることが予め実験により判明している。錠剤中心位置がノズル番号230である場合、使用ノズル範囲はノズル番号180~280となり、錠剤中心位置がノズル番号242である場合、使用ノズル範囲はノズル番号192~292となる。この安定吐出が可能である安定吐出範囲H1はノズル番号180~292の範囲となり、(292-180)×0.04=4.48mm、つまり約4.5mmの範囲内である。
【0037】
なお、安定吐出範囲H1とは、多数の錠剤Tを順次搬送している状態で、全ノズル51aのうちインクを安定して吐出することが可能なノズル51aの範囲である。この安定吐出範囲H1内に位置するノズル51aが「予め定めた範囲内に位置するノズル」となる。安定吐出範囲H1などの各種情報は、制御部90の記憶部に予め設定されている。
【0038】
次に、前述の安定吐出範囲H1に基づく使用ノズル範囲の調整処理の流れについて説明する。
【0039】
図4に示すように、ステップS1において、撮像部40は、錠剤Tが撮像部40の直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(錠剤位置検出用の画像)を取得して画像処理部80に送信し、画像処理部80が錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を検出する。
【0040】
ステップS2において、制御部90は、画像処理部80により検出された錠剤TのY方向の位置を把握し、錠剤Tの中心位置の、インクジェットヘッド51の中心位置(基準位置)に対するずれ量を検出する。錠剤TのY方向の位置(位置ズレ量)及び錠剤Tに印刷する印刷パターンに基づき、インクジェットヘッド51の全ノズル51aの中から印刷に使用する使用ノズル範囲を決定する。
【0041】
ステップS3において、制御部90は、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内であるか否かを判断する。これによって、調整前の使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内にすべて収まるか否かが分かる。
【0042】
ステップS3において、制御部90が、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内であると判断すると(YES)、すなわち調整前の使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まっている場合、ステップS4において、印刷パターンなどの情報に基づき、対象の錠剤Tに対して、使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷をインクジェットヘッド51に実行させる(印刷実行)。
【0043】
一方、ステップS3において、制御部90が、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でないと判断すると(NO)、すなわち調整前の使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まっていない場合、ステップS5において、
図5に示すように、調整前の使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内からはみ出た量が印刷パターン(使用ノズル範囲)の何%かを検出し、このパーセンテージに応じて使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まるように縮小率を決める。例えば、上記パーセンテージに2をかけた数を100%から引いた数を縮小率として決める(上記パーセンテージが20パーセントである場合、100-(20×2)=60%を縮小率とする。)
【0044】
ステップS6において、制御部90が、縮小率が予め定めた所定値であるパーセンテージ(例えば、50%)以下であるか否かを判断する。
【0045】
ステップS6において、制御部90が、縮小率が予め定めたパーセンテージより大きいと判断すると(NO)、ステップS7において、前述の縮小率に基づいて印刷に用いるノズル51aを指定し、
図5に示すように、印刷後の印刷パターンが縮小されるように使用ノズル範囲を調整する(縮小調整処理)。そして、ステップS4において、対象の錠剤Tに対して調整済の使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷をインクジェットヘッド51に実行させる(印刷実行)。なお、搬送方向A1における縮小は、吐出タイミングによって制御される。
【0046】
一方、ステップS6において、制御部90が、縮小率が予め定めたパーセンテージ以下であると判断すると(YES)、ステップS8において、対象の錠剤Tに対するインクジェットヘッド51による印刷を行わないなど、印刷を制限する(印刷制限)。予め定めたパーセンテージは、例えば、印刷パターンが縮小されて錠剤Tに印刷されても、錠剤Tに印刷された印刷パターンが解読困難になったり、その見栄えが悪くなったりしない範囲内で設定されている。
【0047】
この使用ノズル範囲の調整方法によれば、
図6に示すように、制御部90は、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内であると、その使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷を実行し、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でなければ、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるため、印刷後の印刷パターンが縮小されるように使用ノズル範囲を調整する(縮小調整処理)。この調整処理によれば、錠剤Tが錠剤Tの列からY方向へ位置ずれし、その位置ずれ量に基づいて決定した使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1から外れた場合に、その錠剤Tに対する印刷が実行される場合には、印刷後の印刷パターンが縮小されるよう使用ノズル範囲の調整を行うことによって使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内となるように調整され、安定吐出範囲H1内のノズル51a、つまり、使用頻度が高いノズル51aが印刷に使用されるので、使用頻度が低いノズル51aが印刷に使用されることを抑えることができる。これにより、常に使用頻度が高いノズル51aを用いて印刷を行うことが可能となるので、ノズル51aから吐出されたインクが曲がったり、インク量が不十分となって印字がかすれたりせず、安定した印刷を実現し、不良錠剤を減らして生産性を上げることができる。
【0048】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程(検査工程も含む)について説明する。なお、印刷に要する印刷データなどの各種情報は、制御部90の記憶部に予め記憶されている。
【0049】
まず、搬送ベルト21が駆動され、その搬送ベルト21は、モータ24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴い、搬送方向A1に回転する。そして、搬送ベルト21が回転している状態で、ホッパ11から錠剤Tがシュータ12に順次供給され、シュータ12により一列に並べられて搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給される。錠剤Tは搬送ベルト21上に一列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
【0050】
搬送ベルト21上の錠剤Tは検出部30によって検出される。これにより、錠剤TのX方向の位置情報が取得され、制御部90に入力される。この錠剤TのX方向の位置情報は、制御部90の記憶部に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21上の錠剤Tが前述の錠剤TのX方向の位置情報に基づくタイミングで撮像部40によって撮像され、撮像された画像が画像処理部80に送信される。撮像部40から送信された画像に基づき、錠剤Tの位置情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向の位置情報)が画像処理部80により生成され、制御部90の記憶部に保存される。この錠剤Tの位置情報などの情報に基づき、前述の使用ノズル範囲の調整処理が制御部90により実行され、使用ノズル範囲を含む印刷条件(例えば、使用ノズルに基づくインクの吐出位置や吐出速度)が制御部90の記憶部に設定される。
【0051】
使用ノズル範囲の調整処理では、制御部90は、錠剤TのY方向の位置情報に基づき、使用ノズル範囲を決定し、決定した使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内であると、その決定した使用ノズル範囲や印刷パターンなどに基づき印刷条件を設定する。一方、決定した使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でない場合には、使用ノズル範囲の調整(縮小調整処理)を行うか、インクジェットヘッド51による印刷を制限するかを選択する。使用ノズル範囲の調整を行う場合には、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まるように印刷後の印刷パターンが縮小されるよう使用ノズル範囲を調整し、調整済の使用ノズル範囲に基づき印刷条件を設定する。また、インクジェットヘッド51による印刷を制限する場合には、対象の錠剤Tに対する印刷を禁止し、未印刷のまま錠剤Tを搬送する。
【0052】
搬送ベルト21上の錠剤Tは、前述の画像処理部80が生成した錠剤TのX方向の位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tがインクジェットヘッド51の直下に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド51により印刷される。インクジェットヘッド51において、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面である被印刷面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは急速に乾燥する。なお、気体あるいは熱による乾燥を行う乾燥部(図示せず)によりインクを乾燥させるようにしても良い。
【0053】
その後、識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤TのX方向の位置情報に基づくタイミングで撮像部60によって撮像され、撮像された画像が画像処理部80に送信される。撮像部60から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報が画像処理部80により生成され、制御部90の記憶部に保存される。その印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が制御部90により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が制御部90の記憶部に保存される。例えば、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが判断され、印刷の良否が決定される。
【0054】
制御部90は、前述の調整済の使用ノズル範囲に基づいて印刷を実行した錠剤Tに対する印刷検査において、検査用の縮小パターン(例えば、数種の縮小率の印刷パターン)を記憶部に登録しておき、制御部90がその検査用の縮小パターンと実際の印刷後の印刷パターンとを比較して前述の印刷良否の判断を行う。あるいは、予め記憶された検査用パターンを、印刷パターンに係る縮小率に応じて縮小して検査用に用いるようにしても良い。
【0055】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21の移動に伴って搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収部70により回収される。このとき、検査が合格であった錠剤Tは、そのまま落下して回収部70により回収されるが、検査が不合格であった錠剤Tは、搬送ベルト21から落下する途中でエアの吹き付けにより排除される。なお、エアの吹き付けにより排除された錠剤Tは、例えば、回収部70の隣に設けられた他の回収容器(図示せず)によって回収される。
【0056】
この印刷工程によれば、使用ノズル範囲は前述の使用ノズル範囲の調整方法によって調整、決定される。使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内である場合には、使用ノズル範囲が変更されずにそのまま印刷に用いられ、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でない場合には、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1に収めるべく、印刷後の印刷パターンが縮小されるように使用ノズル範囲が調整され(縮小調整処理)、調整済の使用ノズル範囲内のノズル51aが印刷に用いられる。これにより、常に、安定吐出範囲H1内のノズル51a、すなわち使用頻度が高いノズル51aを用いて印刷を行うことが可能となるので、不良錠剤を減らし、生産性を上げることができる。
【0057】
また、印刷前の印刷パターン(例えば、これから印刷しようとする文字)を縮小するのではなく、印刷後の印刷パターン(例えば、実際に印刷された文字)が縮小されるように使用ノズル範囲が調整されるので、印刷パターンの縮小処理に比べ、処理時間を短縮することができる。
【0058】
なお、錠剤Tの位置ずれ量が大きいために、例えば縮小調整処理前の使用ノズルの半分以上が安定吐出範囲H1を超えるような場合には、印刷パターンが縮小されることによって識別情報が解読困難になったり、見栄えが悪くなったりすることもある。このため、検出された錠剤Tの位置ずれ量が予め定めた所定の範囲内でない場合には、対象の錠剤Tに対する印刷が制限され、未印刷のまま錠剤Tが搬送されるようにしても良い。あるいは、錠剤Tの位置ずれ量に基づき決定された使用ノズル範囲のうち、一部が安定吐出範囲H1内からはみ出ている場合で、そのはみ出た量が予め定めた所定値以上である場合、例えば、使用ノズル範囲に対するはみ出し量の割合(パーセンテージ)が予め定めた所定値であるパーセンテージ以上になる場合には、対象の錠剤Tに対する印刷を禁止するようにしても良い。
【0059】
また、上記実施形態においては、錠剤Tの位置ずれ量を求めるためにインクジェットヘッド51の中心位置に対する錠剤Tの中心位置のずれ量を求めたが、これに限るものではない。例えば、撮像部40の視野中心に対する錠剤Tのずれ量を求めるなど、所定の基準位置からの錠剤Tの位置ずれ量を検出することができればよい。あるいは、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1を外れる錠剤Tの位置ずれ量の閾値を予め求めておき、この閾値と実際の錠剤Tの位置ずれ量との比較を行うことによって縮小調整処理を行うか否かを判定するようにしても良い。
【0060】
ここで、錠剤Tの搬送時、吸引孔21a上の錠剤Tは、吸引孔21aからの吸引によって搬送ベルト21に保持されるが、全ての吸引孔21aが錠剤Tによって完全に塞がれるわけではない。この場合、空気が吸引孔21aから吸引されるため、吸引孔21aの上方には気流が発生し、また、搬送ベルト21の移動によって搬送方向A1に沿って搬送ベルト21上を流れる気流も発生する。さらに、インクジェットヘッド51やその周辺の部材が搬送ベルト21上方に存在するため、搬送ベルト21上を流れる気流がそれらの部材にぶつかってさらに乱気流も発生する。これらの気流が発生するため、インクジェットヘッド51はノズル先端部分のインク乾燥が進行しやすい環境に存在している。このような状況下において、不良錠剤の発生を抑え、生産性を上げるためには、ノズル先端部分のインク乾燥が進行し難い安定吐出範囲H1内のノズル51a、すなわち使用頻度が高いノズル51aを使用することが重要となる。なお、前述の乾燥部がインクジェットヘッド51の下流側に位置付けられて搬送ベルト21の上方に設けられることがある。この場合には、ノズル先端部分のインク乾燥がさらに進行しやすくなる。
【0061】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でないと判断した場合、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるべく、印刷後の印刷パターンが縮小されるように使用ノズル範囲を調整し、調整した使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷をインクジェットヘッド51に実行させることによって、安定吐出範囲H1内のノズル51aによる印刷を実現することができる。これにより、安定吐出範囲H1内のノズル51a、すなわち使用頻度が高いノズル51aを使用し、安定吐出範囲H1外のノズル51a、すなわち使用頻度が低いノズル51aの使用を抑えることが可能になるので、不良錠剤の発生を抑え、生産性を上げることができる。
【0062】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について
図7から
図9を参照して説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(シフト調整処理)について説明し、その他の説明は省略する。
【0063】
第2の実施形態では、制御部90は、第1の実施形態に係る縮小調整処理にかえて、使用ノズル範囲をシフトさせるシフト調整処理を実行する。例えば、制御部90は、
図7及び
図8に示すように、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まらなければ、使用ノズル範囲をインクジェットヘッド51の中心側(
図7では、ノズル番号236側)にずらして、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まるように調整する(シフト調整処理)。なお、
図8に示すように、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まる場合には、その使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷を実行する(
図8中の最上の錠剤T参照)。
【0064】
ここで、
図7に示す錠剤中心位置分布グラフは、第1の実施形態に係る
図3に示す錠剤中心位置分布グラフと同様である。また、
図7に示すズレ許容範囲H2は、印刷位置をずらして印刷することが許容される範囲(ズレ許容範囲)であり、安定吐出範囲H1の両側に予め設定される。なお、安定吐出範囲H1、ズレ許容範囲H2などの情報は、制御部90の記憶部に予め設定される。例えば、
図7に示すように、ズレ許容範囲H2は、16ノズル分(16×0.04=0.64mm)であり、安定吐出範囲H1の両側に存在する。安定吐出範囲H1の左側のズレ許容範囲H2はノズル番号164~180であり、安定吐出範囲H1の右側のズレ許容範囲H2はノズル番号292~308である。
【0065】
次に、安定吐出範囲H1及びズレ許容範囲H2に基づく使用ノズル範囲の調整処理の流れについて説明する。
【0066】
図9に示すように、ステップS11、S12、S13以外のステップS1~S4の処理の流れは、第1の実施形態に係る
図4に示すステップS1~S4の処理の流れと同様である。このため、以下では、処理の流れが異なるステップS11、S12、S13に関する処理の流れについて説明する。
【0067】
ステップS3において、制御部90が、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でないと判断すると(NO)、ステップS11において、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1から外れたズレ量がズレ許容範囲H2内であるか否かを判断する。
【0068】
ステップS11において、制御部90が、ズレ量がズレ許容範囲H2内であると判断すると(YES)、ステップS12において、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるようにインクジェットヘッド51の中心側にずらして(なお、ずらした量は「シフト量」と呼ぶことがある。)調整する(シフト調整処理)。そして、ステップS4において、対象の錠剤Tに対して調整済の使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷をインクジェットヘッド51に実行させる(印刷実行)。
【0069】
一方、ステップS11において、制御部90が、ズレ量がズレ許容範囲H2内でないと判断すると(NO)、ステップS13において、対象の錠剤Tに対するインクジェットヘッド51による印刷を制限する(印刷制限)。
【0070】
この使用ノズル範囲の調整方法によれば、
図8に示すように、制御部90は、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内であると、その使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷を実行し、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でなく、使用ノズル範囲のズレ量がズレ許容範囲H2内であると、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるように調整、すなわち印刷パターンをY方向に予め決めた量だけシフトさせる。この調整処理によれば、錠剤Tが錠剤Tの列からY方向へずれたことにより、そのずれ量に基づき決定された使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1外にずれても、その錠剤Tに対する印刷が実行される場合には、印刷後の印刷パターンが安定吐出範囲H1内となるように使用ノズル範囲の調整を行うことによって、安定吐出範囲H1内のノズル51a、つまり、使用頻度が高いノズル51aが印刷に使用されるので、使用頻度が低いノズル51aが印刷に使用されることを抑えることができる。これにより、常に使用頻度が高いノズル51aを用いて印刷を行うことが可能となるので、ノズル51aから吐出されたインクが曲がったり、インク量が不十分となって印字がかすれたりせず、安定した印刷を実現し、不良錠剤を減らして生産性を上げることができる。
【0071】
なお、前述のシフト量は、例えば、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1から外れたズレ量分である。ただし、これはあくまでも一例であり、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内となるのであれば、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1から外れたズレ量以上であっても良く、また、予め決めた条件に基づいてシフト量を変更して用いるようにしても良い。
【0072】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内でないと判断した場合、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるべく、使用ノズル範囲をずらすように調整し、調整した使用ノズル範囲内のノズル51aによる印刷をインクジェットヘッド51に実行させることによって、安定吐出範囲H1内のノズル51aによる印刷を実現することができる。これにより、安定吐出範囲H1内のノズル51a、すなわち使用頻度が高いノズル51aを使用し、安定吐出範囲H1外のノズル51a、すなわち使用頻度が低いノズル51aの使用を抑えることが可能になるので、不良錠剤の発生を抑え、生産性を上げることができる。
【0073】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について
図10を参照して説明する。第3の実施形態では、第2の実施形態との相違点(範囲拡大処理)について説明し、その他の説明は省略する。
【0074】
図10は、6000個の錠剤Tを投入した場合に、個々の錠剤Tの位置ずれ量から決定された個々の使用ノズル範囲のうち、Y方向マイナス側の最端ノズル(左端ノズル)を示したグラフである。
【0075】
図10に示すように、第3の実施形態に係る制御部90は、安定吐出範囲H1を拡大する範囲拡大処理を実行する。この範囲拡大処理では、錠剤Tの位置ずれ量に基づいて決定した各使用ノズル範囲の左端ノズルが、
図7に示したズレ許容範囲H2内に複数存在する場合、ズレ許容範囲H2内のノズル51aのうち、予め決めた数、例えば一つだけの特定のノズル51aが安定吐出範囲H1の端となるように安定吐出範囲H1を拡大する(詳しくは後述する)。
【0076】
まず、第2の実施形態に係るシフト調整処理が実行されたことで、ノズル番号180が使用ノズル範囲の左端ノズルとなって印刷に使用された錠剤数は、8ノズル分の集計である96(=2+2+1+4+8+10+18+51)個となる。例えば、
図10において、ノズル番号に対応する錠剤数が40~60個以上であれば、安定吐出が可能となる場合、ノズル番号180の錠剤数が51個であるが、この個数をできれば60個以上(投入数の1%程度以上)にすることがより望ましい。このため、安定吐出範囲H1の左端はノズル番号180と設定され、ノズル番号173~179が印刷に使用される場合、そのノズル番号173~179にかえてノズル番号180が印刷に使用される。例えば、ノズル番号173が印刷に使用される場合、そのノズル番号173にかえてノズル番号180が印刷に使用されるが、このときの塗布位置のズレ量(ドットのズレ量)は7ノズル分、例えば7×0.04=0.28mmとなる。
【0077】
そこで、前述の塗布位置のズレ量を抑えるため、第3の実施形態では、錠剤Tの位置ずれ量に基づいて決定した各使用ノズル範囲の左端ノズルが、ズレ許容範囲H2内に複数存在する場合、その使用ノズル範囲の左端がズレ許容範囲H2内で予め決めた特定のノズル51aにくるように使用ノズル範囲をシフトさせる。ノズル番号に対応する錠剤数が40~60個以上であれば、安定吐出が可能となる場合、ノズル番号に対応する錠剤数が少なくとも40個以上であれば、安定吐出が可能となる。このため、決定された使用ノズル範囲の左端ノズルがずれ許容範囲H2に位置する場合、その左端ノズルが、
図10に示すように、安定吐出範囲H1の左端のノズル番号180から、予め決めた間隔を開けた、例えばノズル番号178となるように使用ノズル範囲をシフトさせる。つまり、安定吐出範囲H1を拡大し、拡大された安定吐出範囲H1内のノズル51aを用いて錠剤Tの印刷が行われることになる。
図10に示す場合、決定された使用ノズル範囲の左端ノズルがノズル番号173~179となる場合、ノズル番号178が使用ノズル範囲の左端ノズルとなるように使用ノズル範囲をシフトさせる。これにより、ノズル番号178のノズルが左端ノズルとして使用されて印刷される錠剤数は、7ノズル分の集計である45(=2+2+1+4+8+10+18)個となる。安定吐出範囲H1内であるノズル番号180の錠剤数は、51個であるため、ノズル番号180の安定吐出を損なうこともない。
【0078】
前述のように、第2の実施形態によれば、ノズル番号173にかえてノズル番号180が印刷に使用されると、塗布位置のズレ量は7ノズル分(例えば0.28mm)となるが、第3の実施形態によれば、ノズル番号173にかえて特定のノズル番号178が印刷に強制的に使用されると、塗布位置のズレ量は5ノズル分(例えば0.20mm)となる。他のノズル番号でも同様に、第3の実施形態では、第2の実施形態に比べて塗布位置のズレ量が少なくなる。このように、塗布位置のズレ量を抑えることができる。ただし、錠剤Tのサイズや印刷パターンなどによって塗布位置のズレ量が問題となる量(例えば、錠剤Tに印刷された印刷パターンが解読困難になったり、その見栄えが悪くなったりする量)は異なるため、塗布位置のズレ量が問題となる量でなければ、前述の範囲拡大処理を実行しなくても良い。
【0079】
なお、使用ノズル範囲の左端ノズルがノズル番号178となるように使用ノズル範囲をシフトさせるのにかえて、使用ノズル範囲の左端ノズルがノズル番号173~177、179のいずれか一つだけとなるように使用ノズル範囲をシフトさせることも可能である。また、一つだけのノズル51aではなく、予め決めた数だけのノズル51a(ノズル番号)を選択し、使用ノズル範囲の左端ノズルが、選択した複数のノズル番号のいずれかとなるように使用ノズル範囲をシフトさせるようにしても良い。このとき、一定間隔で並ぶ所定数のノズル51aを選択するようにしても良く、また、ランダムで並ぶ所定数のノズル51aを選択するようにしても良い。
【0080】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第2の実施形態に係る効果を得ることができる。さらに、第3の実施形態によれば、使用ノズル範囲を調整する場合、第2の実施形態で説明した安定吐出範囲H1を拡大し、拡大した安定吐出範囲H1内のノズル51aのみを使用して錠剤Tに対する印刷を行うべく、使用ノズル範囲を調整することによって、塗布位置のズレ量を抑えることができ、また、安定吐出範囲H1内のノズル51aによる印刷を実現することができる。その結果、不良錠剤の発生を抑え、生産性を上げることができる。なお、第3の実施形態として、Y方向マイナス側の安定吐出範囲を拡大する例を説明したが、Y方向プラス側のノズル(右端ノズル)の安定吐出範囲も同様に拡大処理を行う。
【0081】
<他の実施形態>
前述の説明においては、縮小調整処理及びシフト調整処理のどちらか一方を実行することを例示したが、これに限るものではなく、縮小調整処理及びシフト調整処理の両方を実行するようにしても良い。例えば、使用ノズル範囲の調整処理では、
図11に示すように、印刷後の印刷パターンが縮小されるように使用ノズル範囲を調整する縮小調整処理を行うことに加え、印刷後の印刷パターンがY方向にシフトされるように使用ノズル範囲を調整するシフト調整処理を行う(
図11中の矢印参照)。一例として、制御部90は、錠剤Tの位置ずれ量に基づいて使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まるように縮小率を求めたところ、求めた縮小率が予め定めたパーセンテージ(例えば、50%)以下になる場合には、求めた縮小率を予め定めたパーセンテージより大きくしたうえで、インクジェットヘッド51の中心側に使用ノズル範囲をシフトさせる。これにより、錠剤Tの位置ずれ量が大きい場合であっても、識別情報が解読困難になったり、見栄えが悪くなったりすることがないように印刷を行うことが可能になるので、不良錠剤をより確実に減らして生産性を上げることができる。
【0082】
また、前述の説明においては、縮小調整処理及びシフト調整処理のどちらか一方を実行することや、シフト調整処理及び縮小調整処理の両方を実行することを例示したが、錠剤Tの位置ずれ量に応じて、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に入れるよう、縮小調整処理のみを実行するか、シフト調整処理のみを実行するか、縮小調整処理及びシフト調整処理の両方を実行するか、選択するようにしても良い。例えば、錠剤Tの位置ずれ量に基づき、使用ノズル範囲のうちの一部が安定吐出範囲H1内からはみ出た量が予め定めた所定値以上である場合、例えば、使用ノズル範囲に対するはみ出し量の割合(パーセンテージ)が予め定めた所定のパーセンテージ以上になる場合には、シフト調整処理のみを実行したり、あるいは、シフト調整処理及び縮小調整処理の両方を実行したりする。なお、使用ノズル範囲に対するはみ出し量の割合が予め定めた所定のパーセンテージより小さい場合には、縮小調整処理のみを実行する。また、印刷パターンの一文字サイズに応じて、使用ノズル範囲を安定吐出範囲H1内に収めるよう、縮小調整処理のみを実行するか、シフト調整処理のみを実行するか、縮小調整処理及びシフト調整処理の両方を実行するか、選択するようにしても良い。例えば、制御部90は、錠剤Tの印刷パターン中の一文字のサイズに応じ、縮小調整処理を実行すると、印刷パターンに係る縮小率が解読困難である所定のパーセンテージ以下であると判断した場合、シフト調整処理のみを実行したり、あるいは、シフト調整処理及び縮小調整処理の両方を実行したりする。
【0083】
また、前述の説明においては、縮小調整処理で印刷パターンの全体を均等に縮小することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、印刷パターンをY方向(水平面内において搬送方向A1と直交する方向)にだけ縮小しても良く、また、印刷パターンの一部だけを縮小又は変形するようにしても良い。例えば、印刷パターンが「ABCDEF」である場合には、それらの文字のうち一つ又は複数の文字だけを縮小又は変形することが可能である。また、一文字の全体を縮小又は変形するのではなく、一文字の一部だけを縮小又は変形することも可能である。なお、一文字を縮小する場合には、一文字の全体を均等に縮小しても良く、また、一文字をY方向にだけ縮小しても良い。
【0084】
また、前述の説明においては、縮小調整処理において、調整前の使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1からはみ出た量が印刷パターン(使用ノズル範囲)の何%かを検出し、このパーセンテージに応じて使用ノズル範囲が安定吐出範囲H1内に収まるように縮小率を決めることを例示したが、これに限るものではなく、前記はみ出た量に応じて、予め登録された段階的な縮小率(例えば5パーセントごと)のパターンから選択し、選択されたパターンを印刷するようにしてもよい。
【0085】
また、前述の説明においては、印刷後に検査を行う場合、検査用の縮小パターンと実際の印刷後の印刷パターンとを比較することを例示したが、これに限るものではなく、検査ハードル自体を下げるようにしても良い。つまり、縮小したパターンも「正常」であると認識するように予め設定しておくようにする。
【0086】
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は二列や三列又は四列以上であっても良く、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21の本数も二本以上であっても良く、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド51の個数も二個以上であっても良く、特に限定されるものではない。
【0087】
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、水平面内において搬送方向A1と直交する方向にインクジェットヘッド51を複数並べて用いるようにしても良い。
【0088】
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51をノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と交差する方向になるように設けるようにしても良い。
【0089】
また、前述の説明においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送部20、検出部30、撮像部40、印刷部50及び撮像部60を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の搬送部20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送部20に受け渡し、錠剤Tの両面を印刷するようにしても良い。
【0090】
また、前述の説明においては、搬送ベルト21上に錠剤Tを吸引により保持することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送ベルト21上に錠剤Tを自重により保持するようにしても良い。あるいは、錠剤Tをポケットに収容して搬送するようにしても良い。ポケットであっても位置ずれは起きる。ポケットの大きさは錠剤Tのサイズより必ず大きいので、ポケット内でずれが発生する。
【0091】
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0092】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 錠剤印刷装置
20 搬送部
40 撮像部(検出部の一部)
51 インクジェットヘッド
51a ノズル
80 画像処理部(検出部の一部)
90 制御部
H1 安定吐出範囲
T 錠剤