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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】自転車
(51)【国際特許分類】
   B62H 1/02 20060101AFI20240123BHJP
   B62J 1/16 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B62H1/02 F
B62J1/16 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020027462
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130414
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤木 優佑
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177084(JP,A)
【文献】中国実用新案第206579742(CN,U)
【文献】米国特許第05622374(US,A)
【文献】登録実用新案第3142736(JP,U)
【文献】特開2017-159824(JP,A)
【文献】登録実用新案第3036164(JP,U)
【文献】登録実用新案第3198396(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02-1/04
B62J 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に、回動可能な両脚型のセンタースタンドを備えた自転車において、
前記センタースタンドの回動軸が、クランク軸よりも下方に位置し、前記センタースタンドが、起立時に後方に延びるステップバーを脚部に有しており、かつ、
前記センタースタンド側面視において、前記センタースタンドの回動軸から接地部までの長さをX、前記接地部から前記ステップバーの自由端までの長さをY、としたとき、下記関係式(1)、
Y≧X (1)
で表される関係を満足し、
前記ステップバーが、センタースタンド起立時に略水平になる水平部と、前記脚部と前記水平部とを連結する湾曲形状の湾曲部と、を有し、前記ステップバーが、前記脚部の接地部よりも回動軸側であって、起立状態における脚部の自転車進行方向後方から伸び、前記ステップバーの湾曲部が、跳ね上げた状態における脚部の上方を向く外面に設けられていることを特徴とする自転車。
【請求項2】
前記自転車が、サドルの後方にチャイルドシートを備え、前記センタースタンドの回動軸から前記チャイルドシートの足載せ部の最前部までの水平長さをLとしたとき、下記関係式(2)、
L≧X (2)
で表される関係を満足する請求項1記載の自転車。
【請求項3】
後輪の径が18~20インチである請求項1または2記載の自転車。
【請求項4】
電動アシスト自転車である請求項1~3のうちいずれか一項記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車に関し、詳しくは、従来よりも少ない労力で駐輪可能な、センタースタンドを備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自転車は、駐輪時に車体を立てておくためのスタンドを備えている。スタンドは、後輪の車軸に取り付けられることが多く、例えば、片脚型のスタンドや、後輪を取り囲んだ形状の両脚型のスタンドが広く知られている。また、チャイルドシートを備えた自転車や電動アシスト自転車では、自転車を側面視したとき、クランク軸と後輪との間に取り付ける、左右の足を一体的に成形した、センタースタンドも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、外観がスマートであり、スタンドの使用時には、両足の接地間隔を広くして安定した状態で車体を支えさせることができる一方、スタンドの不使用時には、邪魔にならないように両足を車体の両側に近接させておくことができて、走行中にズボンの裾の引っ掛かりを防止できるようなセンタースタンドと、これを用いた電動アシスト自転車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-207846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センタースタンドを備えた自転車を駐輪する際、自転車の後輪をセンタースタンドで持ち上げる必要がある。しかしながら、特許文献1で提案されている電動アシスト自転車は、センタースタンドの回動軸から接地部までが長く、ステップバーが短いため、駐輪時に、踏付部を押し下げる力を自転車を持ち上げる力に効率よく変換することができない。そのため、駐輪作業に労力を要していた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来よりも少ない労力で駐輪可能な、センタースタンドを備えた自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、センタースタンドの取り付け位置と、センタースタンドを構成する所定の部位の長さと、を適正なものとすることで、従来よりも少ない労力で駐輪可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の自転車は、車体の下部に、回動可能な両脚型のセンタースタンドを備えた自転車において、
前記センタースタンドの回動軸が、クランク軸よりも下方に位置し、前記センタースタンドが、起立時に後方に延びるステップバーを脚部に有しており、かつ、
前記センタースタンド側面視において、前記センタースタンドの回動軸から接地部までの長さをX、前記接地部から前記ステップバーの自由端までの長さをY、としたとき、下記関係式(1)、
Y≧X (1)
で表される関係を満足し、
前記ステップバーが、センタースタンド起立時に略水平になる水平部と、前記脚部と前記水平部とを連結する湾曲形状の湾曲部と、を有し、前記ステップバーが、前記脚部の接地部よりも回動軸側であって、起立状態における脚部の自転車進行方向後方から伸び、前記ステップバーの湾曲部が、跳ね上げた状態における脚部の上方を向く外面に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の自転車においては、前記自転車が、サドルの後方にチャイルドシートを備え、前記センタースタンドの回動軸から前記チャイルドシートの足載せ部の最前部までの水平長さをLとしたとき、下記関係式(2)、
L≧X (2)
で表される関係を満足することが好ましい。本発明の自転車は、後輪の径が18~20インチである自転車や、電動アシスト自転車に好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも少ない労力で駐輪可能な、センタースタンドを備えた自転車を提供することができる。本発明の自転車は、両脚型のセンタースタンドであるため、電動アシスト自転車、チャイルドシートを備えた自転車、重量物を積載する自転車のような車体の重量が比較的大きい自転車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドを起立させた状態の概略側面図である。
図2】本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドを跳ね上げた状態の概略側面図である。
図3】本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの起立状態における概略側面図である。
図4】本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの跳ね上げ状態における概略側面図である。
図5】本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの起立状態における概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の自転車について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドを起立させた状態の概略側面図であり、図2は、本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドを跳ね上げた状態の概略側面図である。図示する自転車1は、チャイルドシートを備えた電動アシスト自転車であり、車体フレーム2は、ヘッドチューブ3と、ヘッドチューブ3から後方斜め下向きに延びるダウンチューブ4と、ダウンチューブ4の後端から後方斜め上向きに延びるシートチューブ5と、シートチューブ5の下端付近から後方に延びる左右一対のチェーンステイ6と、両チェーンステイ6の後端部とシートチューブ5の上部とを結合する左右一対のシートステイ7と、を備えている。ヘッドチューブ3の下端には、前方斜め下向きに延びるフロントフォーク8を有し、このフロントフォーク8の下端部には、前輪9が回転自在に装着されている。また、ヘッドチューブ3の上端にはハンドル10が取り付けられており、シートチューブ5の上端にはサドル11が取り付けられている。さらに、チェーンステイ6の後端部には、後輪12が回転自在に装着されている。
【0013】
本発明の自転車1は、車体の下部に、回動可能な両脚型のセンタースタンド13を備えている。図示例においては、センタースタンド13は、センタースタンド13の回動軸13aが、クランク軸14よりも下方に位置しており、具体的には、チェーンステイ6の下部に取り付けられている。本発明の自転車1に係るセンタースタンド13は、両脚型のセンタースタンドであるため、片脚型のスタンドと比較して、電動アシスト自転車、チャイルドシートを備えた自転車、重量物を積載する自転車のような車体の重量が比較的大きい自転車等を安定した状態で駐輪させることができる。
【0014】
図3は、本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの起立状態における概略側面図、図4は、本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの跳ね上げ状態における概略側面図、図5は、本発明の一好適な実施の形態に係る自転車のセンタースタンドの起立状態における概略斜視図である。本発明の自転車1においては、センタースタンド13は、クランク軸14よりも下方に位置し、さらに、起立時に後方に延びるステップバー13bを脚部13cに有している。図示するセンタースタンド13では、チェーンステイ6の下方に取り付けられる取付部13gを備え、取付部13gに設けられた回動軸13aを中心にして脚部13cが起立位置と跳ね上げ位置との間を回動する。脚部13cは、2本の脚部13cの自由端から自転車1の左右方向外側に延在する接地部13eを有しており、接地部13eの反対側の端部にて2本の脚部13cが連結されている。また、センタースタンド13は、センタースタンド13を起立位置に回動させる踏力をセンタースタンド13へ伝えるステップバー13bを一方の脚部13cに備えており、このステップバー13bは、起立時に後方に延びる構造となっている。そして、ステップバー13bの自由端には、踏力を加える踏付部13dを有しており、これにより、自転車の後輪12をセンタースタンド13で持ち上げる作業を容易なものとしているがこれに限られるものではない。
【0015】
本発明の自転車1は、センタースタンド13を側面視したとき、センタースタンド13の回動軸13aから接地部13eまでの長さをX、接地部13eからステップバー13bの自由端までの長さをY、としたとき、下記関係式(1)、
Y≧X (1)
で表される関係を満足する。このように、Yの長さをXの長さ以上とすることで、てこの原理により、駐輪時、容易に自転車1を持ち上げることができ、駐輪時における労力を低減させることができる。
【0016】
本発明の自転車1においては、図示するように、ステップバー13bが、センタースタンド13起立時に略水平になる水平部13baを有し、さらに、脚部13cと水平部13baとを連結する湾曲形状の湾曲部13bbを有していることが好ましい。図示例では、湾曲部13bbは、脚部13cの接地部13eと回動軸13aとの間に設けられており、言い換えると、脚部13cの中間部に設けられている。また、湾曲部13bbは、センタースタンド13が跳ね上げ状態における脚部13cの上方を向く外面に設けられている。そして、センタースタンド13を起立状態にした際には、湾曲部13bbは上下方向および前後方向に延在している。このような構造とすることで、自転車1を駐輪する際、運転者が跳ね上げた状態のセンタースタンド13の脚部13cを踏み付けたとしても、センタースタンド13が回動すると、運転者の足が湾曲部13bbを滑りながら移動し、運転者の足が踏付部13dに自然に移動することになる。そのため、運転者は、スムーズに駐輪作業を行うことができる。
【0017】
また、本発明の自転車1においては、センタースタンド13の側面視において、接地部13eからステップバー13bの自由端までの長さYを、センタースタンド13の回動軸13aからクランク軸14までの鉛直長さ以上とすることが好ましい。このような関係を満足することで、ステップバー13bの長さを十分に確保でき、前述の効果を良好に得ることができる。
【0018】
上述のとおり、本発明の自転車1は、電動アシスト自転車、チャイルドシートを備えた自転車、重量物を積載する自転車のような車体の重量が比較的大きい自転車に好適であるが、センタースタンド13を備えた自転車1では、センタースタンドとチャイルドシートのような他の部位との干渉も問題となる。このような、センタースタンドと他の部位との干渉の問題に対しては、例えば、特許文献1で提案されている自転車では、センタースタンドの左右の脚部は、下方に向かって外開き状態に傾斜した取付部材の傾斜面により、それぞれの回動軸線が下方で交差するように取付部材に対して取り付けられていており、センタースタンドを跳ね上げた状態では、両脚の端部の間隔が狭まるような構成とし、このような問題を回避している。しかしながら、特許文献1で提案されているような構造では、両脚部を同時に回動させる機構が複雑になってしまうという問題を有している。
【0019】
そこで、図示しない他の実施形態における本発明の自転車1においては、サドル11の後方にチャイルドシート15を設置した場合、センタースタンド13の回動軸13aからチャイルドシート15の足載せ部の最前部までの水平長さをLとしたとき、下記関係式(2)、
L≧X (2)
で表される関係を満足してもよい。L≧Xとすることで、センタースタンド13を跳ね上げた場合であっても、長くしているステップバー13bがチャイルドシート15の足乗せ部と干渉することを防止することができる。このように、本発明の自転車1では、単純な構造で、センタースタンド13とチャイルドシート15との干渉を防止することができる。
【0020】
なお、本発明の自転車1は、図示例においては、リアキャリア16にチャイルドシート(リアチャイルドシート)15が取り付けられているが、ハンドルバーおよびハンドルステムにもチャイルドシート(フロントチャイルドシート)を取り付け、子供を二人乗せられる構成としてもよい。
【0021】
また、図示する自転車1においては、前輪9の径が後輪12の径よりも大きい。前輪9を後輪12よりも大径とすることで、段差走破性が向上し、また、前輪9を大径とすることで、フロントチャイルドシートを取り付けた場合であっても、ペダルとチャイルドシートの間隔が広くなるため、体型の大きいユーザーであっても、ペダリング時に足がフロントチャイルドシートに接触することもなくなり、運転時の快適さも向上する。さらに、前輪9を大径とすることで、デザイン面においてもユーザーの選択肢が増えることになる。他方、後輪12を前輪9と比較して小径とすることで、リアチャイルドシート15に子供を乗せたり降ろしたりする負担を軽減することができる。また、後輪12側が低重心となり走行中のふらつきを防止することもできる。本発明の自転車1においては、好適には、後輪12の径は、18~20インチである。本発明の自転車1においては、前輪9は24インチ以下が好ましい。後輪12の径を小さくすることで、チェーンステイ6の位置を下方に配置することができる。これにより、チェーンステイ6に取り付けられるセンタースタンド13の回動軸13aの位置も路面により近い位置にすることができるので、センタースタンド13の回動軸13aから接地部13eまでの長さXを短くすることに貢献する。なお、図示はしないが、重量物を積載する自転車としては、図1、2に示すタイプの自転車であって、チャイルドシート15に変えて、リヤキャリヤ16の水平部の後輪12の上部に重量物を積載する荷籠が設置された自転車が挙げられる。
【0022】
本発明の自転車1は、センタースタンド13の回動軸13aが、クランク軸14よりも下方に位置し、センタースタンド13を側面視したとき、センタースタンド13が、起立時に後方に延びるステップバー13bを脚部13cに有しており、かつ、センタースタンド13の回動軸13aから接地部13eまでの長さをX、接地部13eからステップバー13bの自由端までの長さをY、としたとき、下記関係式(1)、
Y≧X (1)
で表される関係を満足することのみが重要であり、それ以外の構成については既知の構成を採用することができる。
【0023】
例えば、センタースタンド13の取り付け方法としては、チェーンステイ6を上下から挟持して固定された板部材や、チェーンステイ6に溶接等により固定した取付ブラケットに孔部を設け、センタースタンド上部に設けられた螺合部13fにて取り付けることができるが、これに限られるものではない。さらに、図示例においては、センタースタンド13の2本の脚部13cは一体として成形されているが、これに限られるものではない。さらにまた、図示する自転車1においては、センタースタンド13の脚部13cにバネ13hが取り付けられており、脚部13cの回動に伴うバネ13hの回動軸13aに対する変位によって、跳ね上げ位置か起立位置のいずれかに、バネ13hの付勢力でセンタースタンド13の脚部13cを停止させている。
【0024】
また、本発明の自転車1は、運転者がペダルを足で踏んでクランク17を回転させることによってチェーンやベルトのような動力伝達手段によって主駆動力が伝達され、その駆動力が後輪12に伝達されて、後輪12が駆動するように構成することができる。図示する自転車1においては、前輪9に電動機18が設けられており、この電動機18に電力を供給するバッテリー19はシートチューブ5の後方に、取り外し自在に取り付けることができる。また、電動機18の内部には、前輪9に補助駆動力を供給する電動モーターを配置することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 自転車
2 車体フレーム
3 ヘッドチューブ
4 ダウンチューブ
5 シートチューブ
6 チェーンステイ
7 シートステイ
8 フロントフォーク
9 前輪
10 ハンドル
11 サドル
12 後輪
13 センタースタンド
13a 回動軸
13b ステップバー
13c 脚部
13d 踏付部
14 クランク軸
15 チャイルドシート(リアチャイルドシート)
16 リアキャリア
17 クランク
18 電動機
19 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5