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  • 特許-珪酸塩系水溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】珪酸塩系水溶液
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/32 20060101AFI20240123BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240123BHJP
【FI】
C01B33/32
B01J35/02 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020037987
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2020152636
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019044419
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390028093
【氏名又は名称】東曹産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮原 行治
(72)【発明者】
【氏名】野本 亜由美
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527983(JP,A)
【文献】特表2016-536257(JP,A)
【文献】特表2003-501335(JP,A)
【文献】特開平10-230169(JP,A)
【文献】特開2003-003090(JP,A)
【文献】特開2007-289863(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002659(WO,A1)
【文献】特開2016-098119(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133316(WO,A1)
【文献】特開2004-203642(JP,A)
【文献】特開2010-075898(JP,A)
【文献】特開2011-236094(JP,A)
【文献】特開2011-132108(JP,A)
【文献】特開2006-083363(JP,A)
【文献】ASGHAR, K. et al.,Preparation and Characterization of Colloidal Silica in Alkaline and Constant Range of pH,Iranian Journal of Chemistry and Chemical Engineering,2008年,27, (4),65-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 -33/193
C01B 33/20 -39/54
B01J 21/00 -38/74
B01J 13/00 -13/00
C09D 1/02
D21H 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアーズ滴定法での比表面積が6002/g以上であるシロキサンを含み、
20℃における粘度が10mPa・s以下である、
60~120℃に加熱して被膜を形成するための、珪酸塩系水溶液。
【請求項2】
固形分濃度が50重量%以下である、請求項1に記載の珪酸塩系水溶液。
【請求項3】
ケイ素とアルカリとのモル比[SiO2/(X2O+NH3)](X:アルカリ金属)が1~200である、請求項1または2に記載の珪酸塩系水溶液。
【請求項4】
pH7以上である、請求項1~3のいずれかに記載の珪酸塩系水溶液。
【請求項5】
ゼータ電位が-25mV~-100mVである、請求項1~のいずれかに記載の珪酸塩系水溶液。
【請求項6】
シアーズ滴定法での比表面積が6002/g以上であるシロキサンと、
光触媒性化合物とを含み、
20℃における粘度が10mPa・s以下である、
60~120℃に加熱して被膜を形成するための、光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項7】
前記光触媒性化合物が酸化チタンである、請求項に記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項8】
ケイ素とチタンとのモル比[SiO2/TiO2]が1.0~100である、請求項6または7に記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項9】
固形分濃度が50重量%以下である、請求項6~8のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項10】
ケイ素とアルカリとのモル比[SiO2/(X2O+NH3)](X:アルカリ金属)が1~200である、請求項6~9のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項11】
pH7以上である、請求項6~10のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【請求項12】
ゼータ電位が-25mV~-100mVである、請求項6~11のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンを含む珪酸塩系水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
珪酸塩系水溶液は、水ガラスとも呼ばれ、幅広い分野で活用されている。特に、透明性の高い珪酸塩系水溶液は、コーティング剤として用いられる。
【0003】
特許文献1には、光触媒酸化チタンおよびアモルファス酸化物を含有する表面層を有する光触媒性親水性部材が開示されている。特許文献1では、上記表面層を形成するために、800℃で1時間焼成している。このように高温での焼成を要する場合は、生産性に劣るばかりでなく、炉を腐食するおそれがある。そこで、所望の性能を有し、かつ、より低温で被膜を形成できるコーティング剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-227160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、このような事情に鑑みてなされたものであり、低温で被膜を形成できる珪酸塩系水溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンを含む、珪酸塩系水溶液。
【0007】
(2)固形分濃度が50重量%以下である、(1)に記載の珪酸塩系水溶液。
【0008】
(3)ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)](X:アルカリ金属)が1~200である、(1)または(2)に記載の珪酸塩系水溶液。
【0009】
(4)pH7以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の珪酸塩系水溶液。
【0010】
(5)20℃における粘度が100mPa・s以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の珪酸塩系水溶液。
【0011】
(6)ゼータ電位が-25mV~-100mVである、(1)~(5)のいずれかに記載の珪酸塩系水溶液。
【0012】
(7)シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンと、
光触媒性化合物とを含む、光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0013】
(8)前記光触媒性化合物が酸化チタンである、(7)に記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0014】
(9)ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が1.0~100である、(7)または(8)に記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0015】
(10)固形分濃度が50重量%以下である、(7)~(9)のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0016】
(11)ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)](X:アルカリ金属)が1~200である、(7)~(10)のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0017】
(12)pH7以上である、(7)~(11)のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0018】
(13)20℃における粘度が100mPa・s以下である、(7)~(12)のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【0019】
(14)ゼータ電位が-25mV~-100mVである、(7)~(13)のいずれかに記載の光触媒含有珪酸塩系水溶液。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】珪酸塩系水溶液に含まれるシロキサンの、体積基準の粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を第1実施形態および第2実施形態として説明する。
【0022】
第1実施形態
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、
シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンを含む。
【0023】
(シロキサンの比表面積)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンを含む。比表面積は、好ましくは500m/g以上、より好ましくは600m/g以上である。比表面積の上限は、好ましくは2000m/gである。シアーズ滴定法での比表面積を上記範囲とすることで、低温で被膜を形成でき、また被膜の密着性を高めることができる。
【0024】
比表面積は、シアーズ滴定法(Anal.Chem. Vol.28,No.12,1956)により測定する。シアーズ滴定法では、pH4からpH9まで変化させるのに必要な水酸化ナトリウム水溶液量に基づいて、シラノール基の数を評価し、比表面積を算出する。
【0025】
具体的には、以下の手順で比表面積を算出する。
(i) 水150mLにNaCl 40gを加え、攪拌して完全に溶解させる。それをビーカーに移し、0.1N-NaOHでpH9.0まで滴定する。この時の滴定量をブランク(GmL)とする。
(ii) 本実施形態に係る珪酸塩系水溶液(Ag)をビーカーに取り、水50mLを加える。
(iii) 上記(ii)で得られた溶液を0.1N-HClでpH4.0まで滴定する。この時のpH4.0になるまでに要する0.1N-HClの量(BmL)を用いて、アルカリ(すなわち、アルカリ酸化物とアンモニアNHとの合計)の濃度(C重量%)を下記式で算出する。なお、下記式中、f(0.1N―HCl)は滴定で用いる0.1N-HClのファクターを表す。
C=(3.099×B×f(0.1N―HCl))/(A×10)
珪酸塩系水溶液Ag中の、シロキサンのシリカ換算重量(Dg)を算出する。
D=A×(珪酸塩系水溶液の固形分濃度-C)/100
そして、pH4.0まで滴定した溶液を、さらに0.1N-HClを加えてpH3.5~3.0に調整する。
(iv) 水90mLにNaCl 40gを加えたものに、上記(iii)で得られた溶液を加えて攪拌する。
(v) 上記(iv)で得られた溶液にpHが4.0になるまで、0.1N-NaOHを加える。
(vi) 上記(v)で得られた溶液を0.1N-NaOHで滴定する。pHが4.0から9.0を超えるまでに要する0.1N-NaOHの量(EmL)を用いて、NaOHの滴定量Vを求める。
V=(E-G)×f(0.1N―NaOH)×1.5/D
シロキサンの比表面積S(m/g)は、下記式のとおり定義される。
S=32V-25
シロキサンの平均粒子径F(nm)は、下記式のとおり定義される。
F=3100/S
【0026】
(固形分濃度)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液において、固形分濃度は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0027】
固形分濃度を上記範囲とすることで、上記珪酸塩系水溶液を安定化、すなわちゲル化や増粘を抑制することができる。
【0028】
固形分濃度は、乾燥炉を用いて700℃で1時間乾燥させ、乾燥後の重量を測定することにより算出する。なお、第1実施形態において、固形分濃度は実質的に、シロキサンの濃度である。
【0029】
(ケイ素とアルカリとのモル比)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、アルカリを含有する。アルカリとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、およびカリウム等のアルカリ金属、およびアンモニウムが挙げられる。アルカリを含有することで、溶液状態を安定に保つことができる。
【0030】
また、第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液において、ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)]は、好ましくは1~200、より好ましくは5~150、さらに好ましくは5~100である。ここで、Xはアルカリ金属である。
【0031】
アルカリがリチウム、ナトリウム、カリウム等である場合には、モル比は酸化物換算(XO、ただしXはアルカリ金属)で算出された値であり、アルカリがアンモニウムである場合には、アンモニア基準(NH)で算出された値である。第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、アルカリ金属およびアンモニウムのうちいずれか一方を含んでもよく、その両方を含んでもよい。
【0032】
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液において、ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)]を上記範囲とすることで、珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0033】
(pH)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液のpHは、好ましくは7以上、より好ましくは7.5~12.0、さらに好ましくは8.0~11.0である。pHを上記範囲とすることで上記珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0034】
(粘度)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液において、20℃における粘度は、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下である。20℃における粘度を上記範囲とすることで上記珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0035】
(ゼータ電位)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液において、ゼータ電位は、好ましくは-25mV~-100mV、より好ましくは-25mV~-70mVである。
【0036】
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液では、ゼータ電位を上記範囲とすることで、珪酸塩系水溶液を安定化することができる。ゼータ電位は、溶液の固形分濃度およびpHを調整することで制御できる。
【0037】
(小角X線散乱法による測定)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液では、小角X線散乱法により、含有するシロキサンの粒子サイズを測定できる。
【0038】
小角X線散乱法による測定では、様々な半径Rの球状粒子の散乱寄与の重ね合わせでシリカ粒子分散液の小角散乱データが再現できると仮定して、データをフィッティングすることにより、サイズ分布関数を計算する。
計算式は以下のとおりである。
半径Rの球状粒子の散乱関数
【数1】
様々な半径Rの球状粒子の散乱関数の重ね合わせを仮定すると、散乱強度は、
【数2】
で与えられる。
これを用いてデータをフィッティングし、サイズ分布関数(粒度分布)を算出した。
【0039】
(塗工方法)
本実施形態に係る珪酸塩系水溶液を、各種基材表面に塗工し、硬化させることで高い親水性を有する塗膜を得ることが可能である。基材は、塗膜を形成することができる限り、特に限定されるものではない。基材の材料としては、例えば、木、紙を含む有機材料、金属を含む無機材料、及び、これらの混合物或いは化合物など様々なものが挙げられる。
【0040】
例えば、有機材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂材料、天然、合成もしくは半合成の繊維材料および繊維製品が挙げられるが、特に透明性、強度、価格面でバランスの良いポリエチレンテレフタレートが一般的には好ましい。
【0041】
無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック材料等が挙げられる。これらはタイル、碍子、ミラー等の様々な形に製品化されうる。また、無機材料としては金属が挙げられる。これには、鋳鉄、鋼材、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、亜鉛ダイキャスト等が含まれ、それらはメッキが施され、有機塗料が塗布されていてもよい。また、無機または有機の材料表面に施された金属メッキ被覆であってもよい。
【0042】
(製造方法)
第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、上述のとおり、ケイ素とアルカリとを含む。以下に、それぞれケイ素材料、アルカリ材料として説明する。
【0043】
[ケイ素材料]
第1実施形態では、ケイ素材料として、例えば、シリカ粒子が水又は有機溶媒中にコロイド状に分散されたコロイダルシリカ、珪酸ソーダ(例えば、特開2002-274838号公報に開示されている高モル珪酸ソーダ等)、シリカ化合物(例えば、ケイ酸アンモニウム)など、シリカを含むものを用いることができる。
【0044】
第1実施形態では、ケイ素材料の、平均1次粒子径での粒径サイズの下限を0.5nmとするとよい。粒径サイズが小さいほど、ケイ素材料粒子の活性の影響が大きくなって、珪酸塩系水溶液のゲル化や浮遊物の発生が進行しやすくなり、珪酸塩系水溶液の保存安定性が低下する傾向にある。そのため、粒径サイズが0.5nmを下回ると、珪酸塩系水溶液の保存安定性が確保しにくい。換言すると、珪酸塩系水溶液を製造後、あまり長期に保存せずに使用する場合には、上記の粒径サイズ未満のケイ素材料を採用することもできる。
【0045】
また、ケイ素材料の粒径サイズの上限は、好ましくは400nmであり、より好ましくは100nm、さらに好ましくは50nmである。粒径サイズが大きすぎると、珪酸塩系水溶液を基材へ塗布したときに、塗膜の透光性が低下するおそれがある。換言すると、塗膜が透光性を有しなくてもよい場合には、ケイ素材料の粒径サイズは400nmを上回ってもよく、具体的には、平均2次粒子径で4000nm程度を上限とすることができる。
【0046】
なお、ケイ素材料は、水性分散液の状態で、酸性、塩基性のいずれでもよい。
【0047】
[アルカリ材料]
アルカリ材料としては、アルカリ金属であるリチウム、ナトリウム、カリウム、あるいはアンモニウム、およびそれらを含む材料を用いることができる。アルカリ材料は、アルカリ金属およびアンモニウムのうちいずれか一方を含んでもよく、その両方を含んでもよい。
【0048】
[第1実施形態に係る珪酸塩系水溶液の製造方法]
上記ケイ素材料をイオン交換水で希釈し、さらに上記アルカリ材料を添加する。ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)](X:アルカリ金属)が、好ましくは200以内となるようにする。得られた溶液を、圧力駆動型半透膜を用いて濃縮し、同時に副生成物の塩の分離除去を行う。このとき、ろ過量(透過水量)と同量のイオン交換水を連続的に添加して、全液量が開始原液量と同一となるようにする。珪酸塩系水溶液が得られる。
【0049】
なお、上記工程では、溶液の温度を3℃~20℃に維持する。溶液の温度が20℃を上回る場合、当該溶液で作成した塗膜の耐摩耗性が低下するおそれがあり、3℃を下回ると、当該溶液が製造中にゲル化するおそれがある。
【0050】
第2実施形態
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、
シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンと、
光触媒性化合物とを含む。
【0051】
(シロキサンの比表面積)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、シアーズ滴定法での比表面積が450m/g以上であるシロキサンを含む。比表面積は、好ましくは500m/g以上、より好ましくは600m/g以上である。非表面積の上限は、好ましくは2000m/gである。シアーズ滴定法での比表面積を上記範囲とすることで、低温で被膜を形成でき、また被膜の密着性を高めることができる。なお、該比表面積は、第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩水溶液に使用する珪酸塩系水溶液における、シロキサンの比表面積である。
【0052】
比表面積は、シアーズ滴定法(Anal.Chem. Vol.28,No.12,1956)により測定する。シアーズ滴定法では、pH4からpH9まで変化させるのに必要な水酸化ナトリウム水溶液量に基づいて、シラノール基の数を評価し、比表面積を算出する。第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩水溶液は、後述するとおり、珪酸塩系水溶液に光触媒含有体を混合して製造する。そのため、第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩水溶液においては、光触媒含有体を混合する前の珪酸塩系水溶液について、シロキサンの比表面積を算出する。シロキサンの比表面積を算出する具体的な手順は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0053】
(光触媒性化合物)
第2実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、光触媒性化合物を含む。
光触媒性化合物は、それ自体が光触媒作用を有する化合物でもよく、また所用の行程を経ることで光触媒に転換しうる光触媒前駆体でもよい。光触媒性化合物としては、例えば、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、CdO、InP、In23、BaTiO3、K2NbO3、Fe23、Ta25、WO3、Bi23、NiO、Cu2O、SiO2、MoS2、MoS3、InPb、RuO2、CeO2、GaP、ZrO2、SnO2、V25、KTaO3、Nb25、CuO、MoO3、Cr23、GaAs、Si、CdSe、CdFeO3、RaRhO3などを挙げられる。これらの中でも酸化チタンTiO2が好ましく、粉末状又はゾル状のアナターゼ型酸化チタンTiO2がより好ましい。
【0054】
光触媒性化合物の粒子径は、好ましくは1~500nm、より好ましくは1~100nmである。
【0055】
(シランカップリング剤)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、さらに、シランカップリング剤を含有してもよい。珪酸塩系水溶液がシランカップリング剤を含有することで、コーティング剤として使用した場合に、耐摩耗性、密着性の向上が期待できる。このようなシランカップリング剤の含有量は、0.1重量%~5重量%程度でよい。
【0056】
シランカップリング剤としては、具体的には、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
(ケイ素とチタンとのモル比)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、好ましくはケイ素とチタンとを含む。具体的には、第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液におけるケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]は、好ましくは1.0~100、より好ましくは2.0~50、さらに好ましくは5.0~25である。モル比[SiO/TiO2]を上記範囲とすることで上記珪酸塩系水溶液を安定化させることができる。また、コーティング剤として使用した場合に、密着性および耐摩耗性に優れるハードコートが得られる。さらに、そのハードコートに酸化分解機能および親水性機能といったセルフクリーニング性を付与できる。なお、モル比は酸化物換算で算出された値である。
【0058】
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、さらに、Ag、Cu、Znのような金属を含有してもよい。珪酸塩系水溶液がこのような金属を含有することで、コーティング剤として使用した場合に、表面に付着した細菌や黴や藻を暗所でも死滅させることが可能な、抗菌性に優れた表面層を有するハードコート層が得られる。このような金属の含有量は、1重量%~5重量%程度でよい。
【0059】
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、さらに、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Osのような白金族金属を含有してもよい。珪酸塩系水溶液がこのような白金族金属を含有することで、コーティング剤として使用した場合に、光触媒の酸化還元活性が増強され、有機物汚れの分解性、有害気体や悪臭の分解性に優れる表面層を有するハードコート層が得られる。このような白金族金属の含有量は、1重量%~5重量%程度でよい。
【0060】
(固形分濃度)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液において、固形分濃度は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0061】
固形分濃度を上記範囲とすることで、上記珪酸塩系水溶液を安定化させることができる。また、コーティング剤として使用した場合に、密着性および耐摩耗性に優れるハードコートが得られる。さらに、そのハードコートに酸化分解機能および親水性機能といったセルフクリーニング性を付与できる。
【0062】
固形分濃度は、乾燥炉を用いて700℃1時間乾燥後の重量を測定することにより測定できる。なお、第2実施形態において、固形分濃度は実質的に、シロキサンと光触媒性化合物との合計の濃度である。
【0063】
(ケイ素とアルカリとのモル比)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、アルカリを含有する。アルカリとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムが挙げられる。アルカリを含有することで、溶液状態を安定に保つことができる。
【0064】
また、第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液において、ケイ素とアルカリとのモル比[SiO2/(X2O+NH3)]は、好ましくは1~200、より好ましくは5~150、さらに好ましくは5~100である。ここで、Xはアルカリ金属ある。
【0065】
アルカリがリチウム、ナトリウム、カリウム等である場合には、モル比は酸化物換算(XO、ただしXはアルカリ金属)で算出された値であり、アルカリがアンモニウムである場合には、アンモニア基準(NH)で算出された値である。第2実施形態に係る珪酸塩系水溶液は、アルカリ金属およびアンモニウムのうちいずれか一方を含んでもよく、その両方を含んでもよい。
【0066】
また、第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液において、ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)]を上記範囲とすることで、珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0067】
(pH)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液のpHは、好ましくは7以上、より好ましくは7.5~12.0、さらに好ましくは8.0~11.0である。pHを上記範囲とすることで上記珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0068】
(粘度)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液において、20℃における粘度は、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下である。20℃における粘度を上記範囲とすることで、上記珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0069】
(ゼータ電位)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液において、ゼータ電位は、好ましくは-25mV~-100mV、より好ましくは-25mV~-70mVである。
【0070】
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液では、ゼータ電位を上記範囲とすることで、珪酸塩系水溶液を安定化することができる。
【0071】
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、第1実施形態と同様の塗工方法で塗工できる。
【0072】
(製造方法)
第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液は、上述のとおり、ケイ素、アルカリ、および光触媒性化合物を含む。ケイ素およびアルカリについては、第1実施形態の製造方法で説明したケイ素材料およびアルカリ材料と同様の材料を用いることができる。光触媒性化合物の材料としては、光触媒含有体を用いる。
【0073】
[光触媒含有体]
光触媒含有体とは、上述の光触媒性化合物、およびそれを含む材料である。
【0074】
[第2実施形態に係る光触媒含有珪酸塩系水溶液の製造方法]
第1実施形態と同様に珪酸塩系水溶液を得る。そこに、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が、好ましくは100以内となるように、光触媒含有体を添加し混合する。光触媒含有珪酸塩系水溶液が得られる。
【実施例
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
以下の手順で珪酸塩系水溶液を得た。
JIS3号珪酸ナトリウムをイオン交換水で希釈し、さらに塩酸を添加した溶液を、分画分子量が200の圧力駆動型半透膜を用いて濃縮し、同時に副生成物の塩の分離除去を行った。このとき、ろ過量(透過水量)と同量のイオン交換水を連続的に添加して、全液量が開始原液量と同一となるようにした。この工程において、溶液の温度は3℃~20℃に保持した。
【0077】
以上の操作により、pHが10であり、固形分濃度が15重量%であり、ケイ素とアルカリとのモル比[SiO/(XO+NH)](X:アルカリ金属)が25である、珪酸塩系水溶液を得た。
【0078】
<塗液物性>
上記珪酸塩系水溶液について、粒径、比表面積、ゼータ電位、粘度を測定し、さらに小角X線散乱法による測定を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[粒径・比表面積]
シアーズ滴定法により測定した。
【0080】
[ゼータ電位]
ゼータ電位はゼータ電位測定装置(HORIBA製SZ-100Z)にて測定を行った。
【0081】
[粘度]
粘度は、東機産業社のRE-85Lにて20℃における粘度を測定した。
【0082】
[小角X線散乱法による測定]
小角X線装置(SAXess mc2(アントンパール社製))にて測定した。X線測定により、珪酸塩系水溶液に含まれるシロキサンの粒子サイズを算出した。体積基準の粒度分布を図1に示す。
【0083】
<塗膜物性>
上記珪酸塩系水溶液をガラス基板上に塗工し、60~120℃で5分間加熱して、厚さ1μm以下の塗膜を形成した。形成した塗膜について、摩耗性試験および接触角の測定を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[摩耗性試験]
塗膜上を、パーム製タワシで、荷重1kgの条件で100往復擦り、その後の塗膜の状態を観察した。
【0085】
[接触角]
接触角は協和界面社製CA-VPにて測定を行った。
【0086】
(比較例1)
市販の珪酸塩系水溶液(日産化学社製スノーテックスXS)を用いて実施例1と同じpH、固形分濃度およびモル比[SiO/(XO+NH)]に調整した珪酸塩系水溶液を得た。実施例1と同様にして塗液物性、塗膜物性を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例2)
市販の珪酸塩系水溶液(日産化学社製スノーテックス30)を用いて実施例1と同じpH、固形分濃度およびモル比[SiO/(XO+NH)]に調整した珪酸塩系水溶液を得た。実施例1と同様にして塗液物性、塗膜物性を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示すように、実施例1では、比較例1、2と比べて、シロキサンの比表面積が大きく、粒径は小さい。実施例1ではシロキサンがこのような特徴を有するために、比較的低温で塗膜を形成しても、摩耗性試験において、塗膜は全く剥離しなかったと考えられる。一方、比較例1、2では摩耗試験開始直後から塗膜は剥離し、剥離の程度が大きかった。
【0090】
また、表1では、シアーズ粒径(直径)に合わせて、小角X線散乱法により得られた粒度分布のピークにおける半径(モード径)の2倍値を表示している。
【0091】
表1に示すように、粒度分布のピークにおける半径(モード径)は、実施例1では小さく、比較例1、2ではより大きい。また、図1の小角X線散乱法により得られたシロキサンの粒度分布(体積基準)によれば、実施例1では分布幅が小さく粒子サイズの大きな粒子は含まれないことがわかる。一方、比較例1、2では分布幅が大きく粒子サイズの大きな粒子が含まれることがわかる。
【0092】
(実施例2)
実施例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が25.3となるように混合し、光触媒含有珪酸塩系水溶液を得た。得られた溶液をガラス基板上に塗工し、60~120℃で5分間加熱して、厚さ1μm以下の塗膜を形成した。形成した塗膜について、摩耗性試験および接触角の測定を実施例1と同様に行った。また、摩耗性試験後に、紫外線を照度1.0mW/cmで5時間照射し、その後接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
[親水性の持続性試験]
親水性の塗膜は長期間大気中に曝されると、表面に有機物等の汚れが付着し、親水効果が弱まって、接触角が上昇することが一般的に知られている。塗膜が高温に曝された場合には、接触角の上昇は顕著に現れる。一方、光触媒酸化チタンは、UV照射により塗膜表面に付着した有機物を分解する働きを有する。そこで、125℃の高温大気中に曝した塗膜に、UVを照射して、接触角が初期状態まで戻るか評価を行った。
【0094】
具体的には、ガラス基板上に形成した塗膜を、125℃で500時間熱処理し、その後100時間UV照射した。熱処理前(初期)、熱処理後、UV照射後の接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
(実施例3)
珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が7.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験および接触角の測定を行った。また、親水性の持続性を評価した。結果を表2に示す。
【0096】
(実施例4)
珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が4.0となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験および接触角の測定を行った。また、親水性の持続性を評価した。結果を表2に示す。
【0097】
(比較例3)
比較例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が7.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験および接触角の測定を行った。また、親水性の持続性を評価した。結果を表2に示す。
【0098】
(比較例4)
比較例2で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が7.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験および接触角の測定を行った。また、親水性の持続性を評価した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示すように、摩耗性試験においては、実施例2~4では比較的低温で塗膜を形成しても塗膜は全く剥離しなかったのに対し、比較例3、4では試験開始直後から塗膜が剥離し始め、試験終了時には塗膜は全て剥離していた。
【0101】
実施例2~4では、形成した塗膜は無色透明であった。その理由は、次のように考えられる。
【0102】
実施例2~4の水溶液が含有するシロキサンは、粒径が小さい。光触媒含有珪酸塩系水溶液中に、粒径の小さいシロキサンが分散することで、チタンのような光触媒性化合物の分散性が向上すると推測される。そのため、光触媒性化合物の凝集が抑制されて、光触媒性化合物の凝集体の成長が抑制されると考えられる。その結果、光触媒性化合物の凝集体のサイズが小さくなり、本実施形態の光触媒含有珪酸塩系水溶液をコーティング剤として使用した場合には、それを硬化させた塗膜の透明性が高められると考えられる。
【0103】
また、表2に示すように、実施例2~4では、125℃という高温に500時間曝された場合でも、塗膜の接触角は、UV照射により熱処理前(初期)の数値に戻った。一方、比較例3、4では、125℃という高温に500時間曝された場合には、塗膜の接触角は、UV照射をしても熱処理前の数値に戻らなかった。
【0104】
(実施例5)
珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が2.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0105】
(比較例5)
比較例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が25.3となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0106】
(比較例6)
比較例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が7.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0107】
(比較例7)
比較例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が4.0となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0108】
(比較例8)
比較例1で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が2.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0109】
(比較例9)
比較例2で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が25.3となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0110】
(比較例10)
比較例2で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が7.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0111】
(比較例11)
比較例2で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が4.0となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0112】
(比較例12)
比較例2で用いた珪酸塩系水溶液とアナターゼ型酸化チタンとを、ケイ素とチタンとのモル比[SiO/TiO2]が2.5となるように混合した他は、実施例2と同様にして塗膜を形成し、摩耗性試験を行った。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
表3における実施例2~4は、表2における実施例2~4と同じである。実施例2~5では、摩耗性試験で塗膜は全く剥離しなかった。一方、比較例5~12では、摩耗性試験の開始直後から塗膜が剥離し始め、摩耗性試験の終了時には塗膜は全て剥離していた。
図1