(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】含水バラ物の処理方法、及び凝集剤添加装置
(51)【国際特許分類】
B65G 69/20 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B65G69/20
(21)【出願番号】P 2020047804
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】島瀬 正博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇摩
(72)【発明者】
【氏名】大山 大
(72)【発明者】
【氏名】成木 紳也
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196573(JP,A)
【文献】特開平11-033600(JP,A)
【文献】国際公開第2014/058074(WO,A1)
【文献】特開平08-308554(JP,A)
【文献】特開昭60-048833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 69/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加することを含む、含水バラ物の処理方法であって、
前記凝集剤として、塩水溶液中に
アニオン性高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を用いること;
前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられ、前記ベルトコンベアの上方に設置された、管状部材を用いること;
前記ディスパージョン液を前記管状部材の前記流出口から前記ベルトコンベア上の前記含水バラ物に添加すること;
を含
み、
前記アニオン性高分子凝集剤は、アニオン性単量体に由来するアニオン性構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む共重合体系凝集剤であり、
前記流出口は、前記管状部材の前記周壁に、前記長軸方向に沿って複数設けられた、流出孔又はノズルで構成され、
前記管状部材は、各前記流出孔又は各前記ノズルから前記ディスパージョン液をストレート棒状に流出させることが可能に構成されている、含水バラ物の処理方法。
【請求項2】
前記ディスパージョン液の添加の際は、ポンプを用いて前記ディスパージョン液を前記管状部材に移送し、前記管状部材の内部に流入された前記ディスパージョン液を前記流出口から前記ベルトコンベア上の前記含水バラ物に添加することを含む、請求項1に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項3】
前記ポンプとして、一軸偏心ねじポンプを用いることを含む請求項2に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項4】
複数の前記流出孔又は前記ノズルは、各前記流出孔間又は各前記ノズル間が均等間隔となるように設けられた5~18個の前記流出孔又は前記ノズルである請求項1~3のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項5】
前記管状部材は、前記長軸方向における一端側及び他端側のそれぞれに、前記管状部材の内部に前記ディスパージョン液を流入させるための一端側流入口及び他端側流入口を備えており、
前記管状部材における前記一端側流入口及び前記他端側流入口の両方から、前記内部に前記ディスパージョン液を流入させることを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項6】
前記ディスパージョン液中の前記アニオン性高分子凝集剤の含有量は、前記ディスパージョン液の全質量を基準として、10~40質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項7】
前記
アニオン性高分子凝集剤が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩と、(メタ)アクリルアミドとの共重合体である請求項
1~6のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項8】
前記塩水溶液が硫酸アンモニウム水溶液である請求項1~7のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項9】
前記含水バラ物への前記ディスパージョン液の添加量は、前記含水バラ物の全質量に対する、前記ディスパージョン液中の前記アニオン性高分子凝集剤としての添加割合で、0.0001~0.1質量%である請求項1~8のいずれか1項に記載の含水バラ物の処理方法。
【請求項10】
ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加する装置であって、
前記凝集剤として、塩水溶液中に
アニオン性高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を貯蔵するタンクと、
前記ベルトコンベアの上方に設置される管状の部材であって、内部に流入された前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられた管状部材と、
前記ディスパージョン液を前記タンクから前記管状部材に移送するポンプと、
を備え
、
前記アニオン性高分子凝集剤は、アニオン性単量体に由来するアニオン性構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む共重合体系凝集剤であり、
前記流出口は、前記管状部材の前記周壁に、前記長軸方向に沿って複数設けられた、流出孔又はノズルで構成され、
前記管状部材は、各前記流出孔又は各前記ノズルから前記ディスパージョン液をストレート棒状に流出させることが可能に構成されている、凝集剤添加装置。
【請求項11】
複数の前記流出孔又は前記ノズルは、各前記流出孔間又は各前記ノズル間が均等間隔となるように設けられた5~18個の前記流出孔又は前記ノズルである請求項10に記載の凝集剤添加装置。
【請求項12】
前記管状部材は、前記長軸方向における一端側及び他端側のそれぞれに、前記内部に前記ディスパージョン液を流入させるための一端側流入口及び他端側流入口を備える請求項10又は11に記載の凝集剤添加装置。
【請求項13】
前記ポンプとして、一軸偏心ねじポンプを備える請求項10~12のいずれか1項に記載の凝集剤添加装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水バラ物の処理方法、及び凝集剤添加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山にて採掘された鉄鉱石及び石炭等のバラ物は、ベルトコンベア、貨車、及びトラック等の搬送手段により、採掘地における、ヤードと称される保管場、バラ物の処理施設及び使用施設等に搬送されている。また、鉄鉱石及び石炭等のバラ物は、採掘地から、上記搬送手段にて船舶に搬送されて積み込まれ、採掘地外へ輸送され、その採掘地外において荷揚げされ、積み下ろされる。採掘地外で積み下ろされたバラ物は、再び、搬送手段により、採掘地外における保管場、バラ物の処理施設及び使用施設等(例えば製鉄所、発電所、及び工場等)等に搬送されている。
【0003】
鉄鉱石及び石炭等のバラ物は、採掘現場や、採掘地内外における、保管場、並びにベルトコンベア、トラック、及び船舶等の搬送手段(例えばベルトコンベア上、トラックの荷台、及び船倉等)において、例えば降雨や粉塵防止用の散水等により、水と接触する機会が多い。そのため、バラ物と水とが接触することにより、水分を含んだ状態のバラ物(本明細書において、「含水バラ物」と記載する。)が生じる。
【0004】
また、含水バラ物は、採掘地から採掘地外へ船舶で輸送されている間に、船舶の動揺や振動等によって、含水バラ物中の水分が、バラ物とは分離して船倉の床に溜まった状態となり、その水とバラ物の粉体とが混合した懸濁湧水が生じることがある。この場合、懸濁湧水を含むことで含水率及び流動性がより高まった含水バラ物が、輸送されてきた採掘地外において船舶からベルトコンベア上に荷揚げされ、ベルトコンベアで搬送されると、ベルトコンベアから流出しやすい等の荷揚げ障害を引き起こすことがある。
【0005】
上述のような場合における荷揚げ障害を解消するために、特許文献1では、ベルトコンベア上の含水バラ物に対し、高分子凝集剤を主成分とした薬液を添加して含水バラ物と懸濁湧水の凝集物とした後、その凝集物をベルトコンベアで搬送する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された方法によれば、荷揚げの途中に船倉内で懸濁湧水が発生してバラ物の含水率が上昇した場合でも、バラ物がベルトコンベアから溢れることなく搬送可能となることが当該文献に記載されている。また、特許文献1には、ベルトコンベア上の含水バラ物に、上記薬液をシャワー状に散布又はミスト状に噴霧し、含水バラ物及び薬液をベルトコンベアのジャンクション部位の落差部分で混ぜることにより、それらの混合を進め、高分子凝集剤の凝集作用を促進させ、荷揚げ効率を一層向上できることが記載されている。
【0008】
しかし、本発明者らの検討の結果、高分子凝集剤を主成分とする薬液をシャワー状やミスト状にして含水バラ物に添加する場合、実機での長時間の連続運転を想定すると、薬液の添加に用いる部材の吐出口が薬液で詰まりやすく、均一に添加し難くなる場合があることがわかった。
【0009】
また、ベルトコンベアのジャンクション部位の有無、その設置箇所、及びその落差部分の高さ、並びにベルトコンベアの長さ等は、施設や設備等によって様々である。そのため、例えば、ベルトコンベアのジャンクション部位を有しない設備や、ジャンクション部位の落差部分がほぼないか落差が低い設備、ベルトコンベアの距離が短い設備等では、含水バラ物と薬液との混合が不十分となり、均一に混ざり難いと考えられる。
【0010】
そこで、本発明は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に対して、高分子凝集剤を連続的に添加する場合でも、より簡易な設備を用いて、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい方法を提供しようとするものである。また、本発明は、その方法に使用し得る凝集剤添加装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加することを含む、含水バラ物の処理方法であって、前記凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を用いること;前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられ、前記ベルトコンベアの上方に設置された、管状部材を用いること;前記ディスパージョン液を前記管状部材の前記流出口から前記ベルトコンベア上の前記含水バラ物に添加すること;を含む、含水バラ物の処理方法を提供する。また、本発明は、含水バラ物に対して、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を添加することを含む、含水バラ物の処理方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加する装置であって、前記凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を貯蔵するタンクと、前記ベルトコンベアの上方に設置される管状の部材であって、内部に流入された前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられた管状部材と、前記ディスパージョン液を前記タンクから前記管状部材に移送するポンプと、を備える、凝集剤添加装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に対して、高分子凝集剤を連続的に添加する場合でも、より簡易な設備を用いて、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい方法を提供することができる。また、本発明は、その方法に使用し得る凝集剤添加装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法及び凝集剤添加装置に用いることが可能な管状部材の構成の一例を表す模式側面図である。
【
図2】
図1に示す管状部材の流出口を正面として視た模式平面の部分拡大図である。
【
図3A】管状部材の設置例を説明するための図であり、管状部材をベルトコンベアとともに示した模式上面図である。
【
図3B】管状部材の別の設置例を説明するための図であり、管状部材をベルトコンベアとともに示した模式上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の凝集剤添加装置の構成の一例を表す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法及び凝集剤添加装置に用いることが可能な管状部材の構成の別の一例を表す、
図2に対応する模式平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法及び凝集剤添加装置に用いることが可能な管状部材の構成のまた別の一例を表す、
図1に対応する模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
<含水バラ物の処理方法>
本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法(以下、単に「含水バラ物の処理方法」と記載することがある。)は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加することを含むものである。この方法は、凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液(以下、単に「ディスパージョン液」と記載することがある。)を用いることを含む。また、この方法は、ベルトコンベアの上方に設置された管状の部材を用いることを含む。その管状の部材は、ディスパージョン液をベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられた管状部材である。そして、この方法は、ディスパージョン液を管状部材の流出口からベルトコンベア上の含水バラ物に添加することを含む。
【0017】
この含水バラ物の処理方法では、高分子凝集剤を含有するディスパージョン液を用いるため、ディスパージョン液の添加に用いる部材(管状部材)における流出口の詰まりが生じ難く、かつ、高分子凝集剤が含水バラ物に浸透しやすい。また、ディスパージョン液の添加に用いる管状部材の周壁には、ディスパージョン液をベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って設けられているため、ベルトコンベアの幅方向(ベルトコンベアの進行方向に直交する方向)にわたる含水バラ物にディスパージョン液(高分子凝集剤)を添加することができる。
【0018】
上述の通り、上記含水バラ物の処理方法では、ディスパージョン液及び管状部材を用いることにより、管状部材の流出口が詰まり難いこと、高分子凝集剤がベルトコンベアの幅方向にわたる含水バラ物に添加され、かつ浸透しやすいことから、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい。具体的には、実機での長時間の連続運転により、高分子凝集剤を含水バラ物に連続的に添加する場合でも、また、仮に、ベルトコンベアが設置されている設備の都合上、含水バラ物と高分子凝集剤との混合を十分に確保できない場合でも、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい方法を提供することができる。
【0019】
含水バラ物にディスパージョン液が添加されると、ディスパージョン液中の高分子凝集剤が含水バラ物の全体にいきわたり、高分子凝集剤の凝集作用により、バラ物が凝集し、凝集したバラ物の間隙に水分を捕捉することが可能となる。その結果、含水バラ物の流動性を低下させることが可能となり、含水バラ物の外観を団粒状又は団塊状に改質させることが可能となる。
【0020】
したがって、例えば、採掘地で含水バラ物をベルトコンベアで搬送して船舶等に積み込む際や、船舶等で採掘地外へ輸送されてきた含水バラ物をベルトコンベアに荷揚げして搬送する際、また、採掘地内外の保管場、処理施設、及び使用施設等に含水バラ物をベルトコンベアで搬送する際などに、上記含水バラ物の処理方法を好適に利用することができる。これにより、含水バラ物の船舶等への積み込み作業の容易化、その積み込まれた含水バラ物の崩れ抑制、含水バラ物のベルトコンベア等への荷揚げ障害の抑制、ベルトコンベア等による搬送障害の抑制、搬送され山積みされた含水バラ物の山崩れ抑制、山積みされた含水バラ物の風による発塵抑制などの効果が期待できる。
【0021】
(含水バラ物)
本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物を処理対象とする。バラ物としては、例えば、鉄鉱石、石炭、石灰石、コークス、ボーキサイト、及び屑鉄等を挙げることができる。これらのなかでも、鉄鉱石及び石炭が好適であり、鉄鉱石がより好適である。
【0022】
含水バラ物における含水状態の原因となる水としては、特に制限されず、例えば、降雨、粉塵防止用の散水、バラ物を輸送する船舶の動揺や振動等によってバラ物とは分離して船倉の床に溜まった懸濁湧水等を挙げることができる。含水バラ物の含水率(水の含有量)は、含水バラ物の全質量を基準として、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
ベルトコンベアで搬送される含水バラ物の態様としては、例えば、鉱山におけるバラ物の採掘現場から、ベルトコンベアにより、採掘地における保管場(ヤード)、処理施設、及び使用施設等に搬送されるバラ物;採掘地において、採掘現場(鉱山)、保管場、処理施設、及び使用施設等から、ベルトコンベアにより船舶等に搬送されるバラ物;並びに船舶等で採掘地外に輸送され、ベルトコンベアにより、採掘地外における、保管場(ヤード)、処理施設、及び使用施設等(例えば製鉄所、発電所、及び工場等)等に搬送されるバラ物;等を挙げることができる。
【0024】
(ディスパージョン液)
本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法は、含水バラ物に添加する凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を用いる。高分子凝集剤を主成分として含有する薬液の製品形態としては、主に、油中水(W/O)型エマルジョンや、ディスパージョン液が存在する。本発明者らの実験による検討の結果、ディスパージョン液は、W/O型エマルジョンに比べて、含水バラ物との混合条件が緩やかな場合でも含水バラ物の流動性を低下させやすいことがわかった。このことから、ディスパージョン液は、W/O型エマルジョンに比べて、含水バラ物に浸透しやすく、それより、ディスパージョン液中の高分子凝集剤が含水バラ物中に分散しやすいと考えられる。また、ディスパージョン液は、分散媒が塩水溶液である点で、分散媒が油を含むW/O型エマルジョンに比べて、含水バラ物中の水分に溶解しやすいと考えられ、それにより、ベルトコンベア上の含水バラ物の深くまで浸透しやすいと考えられる。
【0025】
さらに本発明者らの実験による検討の結果、ディスパージョン液は、W/O型エマルジョンに比べて、後述する管状部材における流出口の詰まりが生じ難いことがわかった。このことから、ディスパージョン液を用いれば、W/O型エマルジョンを用いる場合に比べて、高分子凝集剤を含水バラ物に均一に添加しやすいと考えられる。
【0026】
ディスパージョン液は、例えば、塩水溶液中に、ポリマー(高分子凝集剤)を構成する単量体、及び高分子分散剤を溶解させ、分散重合法によって製造することができる。このような分散重合法により得られたディスパージョン液が好ましく、塩水溶液中に高分子凝集剤とともに、高分子凝集剤を分散させる高分子分散剤を含有するディスパージョン液がより好ましい。高分子分散剤としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはそれらの塩等のアニオン性単量体の(共)重合体を挙げることができる。さらに、非イオン性の単量体であるアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N、N-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等との共重合体も使用可能である。その他、アニオン変性ポリビニルアルコール、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ブテン/無水マレイン酸共重合体、あるいはそれらの部分アミド化物も使用可能である。
【0027】
塩水溶液における塩を構成する陰イオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及びリン酸イオン等を挙げることができる。塩を構成する陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びアンモニウムイオン等を挙げることができる。塩水溶液としては、硫酸アンモニウム水溶液、及び硫酸マグネシウム水溶液が好ましく、硫酸アンモニウム水溶液がより好ましい。
【0028】
高分子凝集剤は、凝集剤として機能する高分子化合物をいい、その機能を有する水溶性重合体(共重合体を含む)が好適に用いられる。高分子凝集剤は、アニオン性単量体に由来するアニオン性構造単位、カチオン性単量体に由来するカチオン性構造単位、及びノニオン性単量体に由来するノニオン性構造単位のいずれも含むことができ、これらの1種又は2種以上を含むことができる。高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、及び両性高分子凝集剤を用いることができる。それらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、アニオン性高分子凝集剤及びノニオン性高分子凝集剤が好ましく、アニオン性高分子凝集剤がより好ましい。
【0029】
アニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸塩、並びに2-メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。カチオン性単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、並びにそれらの四級化物等を挙げることができる。四級化物としては、例えば、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。ノニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、及びN,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0030】
好適な高分子凝集剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーの重合体であるポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系凝集剤、(メタ)アクリルアミドの重合体であるポリ(メタ)アクリルアミド系凝集剤、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系モノマーの重合体であるポリアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩系凝集剤、及びポリビニルアミジン系凝集剤等を挙げることができる。また、好適な高分子凝集剤としては、(メタ)アクリル酸系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、及びアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上のモノマーに由来する構造単位を含む共重合体系凝集剤を挙げることができる。そのなかでも、アニオン性単量体に由来するアニオン性構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む共重合体系凝集剤がより好ましい。
【0031】
本明細書において、「(メタ)アクリル」との文言には、アクリル及びメタクリルの両方の文言が含まれることを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」との文言には、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方の文言が含まれることを意味する。さらに、「構造単位」とは、高分子凝集剤(ポリマー)を構成する単量体単位を意味する。「単量体に由来する構造単位」とは、例えば、モノマーにおける重合性二重結合(C=C)が開裂して単結合(-C-C-)となった構造単位等が挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のほか、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、及び(メタ)アクリル酸リチウム等の(メタ)アクリル酸の金属塩;(メタ)アクリル酸アンモニウム;及び(メタ)アクリル酸のアミン塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。以下、それらのような(メタ)アクリル酸及びそれらの塩を含めて、「(メタ)アクリル酸(塩)」と記載することがある。また、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
上記共重合体系凝集剤のさらに好適なものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩と、(メタ)アクリルアミドとの共重合体((メタ)アクリル酸(塩)・(メタ)アクリルアミド共重合体);(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸又はその塩と、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体((メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸(塩)・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)共重合体)等の凝集剤を挙げることができる。
【0034】
上記共重合体系凝集剤には、上述のモノマー以外のモノマー(他のモノマー)に由来する構造単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸、並びにそれらの塩等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸及び無水イタコン酸等のカルボン酸無水物;スチレン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物;ビニルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸、並びにそれらの塩等の不飽和スルホン酸;酢酸ビニル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0035】
高分子凝集剤の重量平均分子量(Mw)は、300万~3000万であることが好ましく、500万~2500万であることがより好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、測定することができる。
【0036】
高分子凝集剤は、ポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド系凝集剤、及び(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体系凝集剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。これらのなかでも、ディスパージョン液は、高分子凝集剤として、(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体(上記(メタ)アクリル酸ナトリウム・(メタ)アクリルアミド共重合体系凝集剤)、アクリル酸又はその塩の重合体(上記ポリ(メタ)アクリル酸系凝集剤)、及びアクリルアミド重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましく、アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を含有することがさらに好ましい。
【0037】
ディスパージョン液には、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有する市販の薬液を用いることができ、市販の薬液を原液で用いることが好ましい。市販の薬液(ディスパージョン液)は、高分子凝集剤の含有量が20質量%程度であるものが多い。これらの観点から、ディスパージョン液中の高分子凝集剤の含有量は、ディスパージョン液の全質量を基準として、10~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
含水バラ物へのディスパージョン液の添加量は、含水バラ物の全質量に対する、ディスパージョン液中の高分子凝集剤としての添加割合で、0.0001~0.1質量%が好ましく、0.0002~0.02質量%がより好ましく、0.0005~0.012質量%であることがさらに好ましい。上記の「含水バラ物の全質量」は、ディスパージョン液が添加される含水バラ物中の固形分(バラ物)の質量及び水分の質量の和である。また、含水バラ物の全質量に対する高分子凝集剤としての添加割合は、ディスパージョン液中の高分子凝集剤(有効成分)としての添加質量を、含水バラ物の全質量で割って算出される。
【0039】
(管状部材)
本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法では、ディスパージョン液を含水バラ物に添加する際、ベルトコンベアの上方に設置された管状の部材を用いる。この管状の部材として、ディスパージョン液をベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられた管状部材を用いる。以下、図面を参照しながら、管状部材について説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法、及び後述する本発明の一実施形態の凝集剤添加装置に用いることが可能な管状部材10の構成の一例を表す模式側面図である。
図2は、
図1に示す管状部材10の流出口13を正面として視た模式平面の部分拡大図である。
図3A及び
図3Bは、管状部材10の設置例の説明図であり、管状部材10をベルトコンベア1とともに示した上方からみた模式平面図である。
図4は、後述する本発明の一実施形態の凝集剤添加装置100の構成の一例を表す模式図である。なお、各図において共通する構成部については同一の符号を付して、その説明を省略することがある。
【0041】
図1~
図4に示すように、本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法では、内部10aに流入されたディスパージョン液をベルトコンベア1の幅方向Xにわたって流出させる流出口13が長軸方向Aに沿って周壁10bに設けられた管状部材10を用いる。流出口13により、ディスパージョン液をベルトコンベア1の幅方向Xにわたって流出させることは、ディスパージョン液を幅方向Xの全幅にわたって流出させることまでは要しない。ベルトコンベア1上に幅方向Xの全幅にわたって含水バラ物2が載置されるとは限らないためである。流出口13からのディスパージョン液の流出は、ベルトコンベア1の幅方向Xの全幅に対し、概ね50%以上で行われることが好ましく、60%以上で行われることがより好ましく、70%以上で行われることがさらに好ましい。
【0042】
図1に示すように、管状部材10は、長手方向を軸方向とする管状に形成された部材である。管状部材10は、その長手方向を軸方向とすることから、この軸方向を長軸方向Aという。管状部材10の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル管;鉛管;鋼管;ステンレス管;並びにポリ塩化ビニル製ブレードホース、ポリエステル製ブレードホース、ポリテトラフルオロエチレン製ブレードホース、ポリオレフィン系樹脂製ブレードホース、シリコーンゴム製ブレードホース等の樹脂又はゴム製ブレードホース等を好適に用いることができる。これらのなかでも、ポリ塩化ビニル管がより好ましい。
【0043】
また、管状部材10は、管状の形状であることから、内部(空間)10aを有する。管状部材10の内部10aには、ディスパージョン液が流入する。管状部材10の内部10aに流入したディスパージョン液は、後述する流出口13から流出することから、管状部材10の内部10aは、ディスパージョン液の流路でもある。管状部材10の内部10aの径(管内径)は、特に制限されないが、10~500mmが好ましく、15~200mmがより好ましく、20~50mmがさらに好ましい。
【0044】
管状部材10の長軸方向Aの長さは、管状部材10の内部10aに流入して流出口13から流出するディスパージョン液が、ベルトコンベア1の幅方向Xにわたるように設計することが好ましい。この観点から、管状部材10の長軸方向Aの長さは、ベルトコンベア1の幅に対して、0.5~2倍であることが好ましく、0.6~1.5倍であることがより好ましく、0.7~1.2倍であることがさらに好ましい。
【0045】
図3A及び
図3Bに示すように、管状部材10は、その長軸方向Aが、含水バラ物2を搬送するベルトコンベア1の幅方向X(幅方向Xにおける一端側及び他端側)に向くように設置されればよい。具体的には、
図3Bに示すように、管状部材10は、長軸方向Aがベルトコンベア1の幅方向Xに対して斜めに(非平行)に設けられていてもよい(換言すれば、ベルトコンベア1の進行方向Yに対して斜め(非垂直)に設けられていてもよい)。好ましくは、
図3Aに示すように、長軸方向Aとベルトコンベアの幅方向Xとがほぼ平行(長軸方向Aと幅方向Xとがなす角度が0°±10°の範囲内)となるように管状部材10を設置するのが良い。
【0046】
後述する凝集剤添加装置100の概略構成を表す
図4に示されているように、管状部材10は、ベルトコンベア1の上方に設置される。この際、ディスパージョン液が管状部材10の流出口13から流出して、ベルトコンベア1上の含水バラ物2に添加されるために、流出口13がベルトコンベア1の載置面1aに対向する向きで管状部材10を設置することができる。また、管状部材10の設置高さとしては、ベルトコンベア1上の含水バラ物2の高さ(厚み)を考慮して、ベルトコンベア1の載置面1aから管状部材10の流出口13までの高さHが10~300cm(より好ましくは10~250cm、さらに好ましくは10~200cm)となる位置に管状部材10を設置することが好ましい。ただし、ベルトコンベア1上の含水バラ物2の高さ(厚み)を考慮して、その含水バラ物2の最高点から管状部材10の流出口13までの高さが上記範囲内にあるように、管状部材10の設置高さを調節することができる。
【0047】
管状部材10は、長軸方向Aに沿って周壁10bに設けられた流出口13を有する。この流出口13は、管状部材10の内部10aに流入されたディスパージョン液が流出する部位である。流出口13は、管状部材10の周壁10bにおいて、長軸方向Aに沿って設けられているため、前述の通り、管状部材10がベルトコンベア1の進行方向Yに交差する方向(好ましくは直交する方向(幅方向X);
図3A及び
図B参照)に設置されることにより、ディスパージョン液をベルトコンベア1の幅方向Xにわたって流出させることが可能である。流出口13の長軸方向Aに沿う長さは、流出口13における長軸方向Aの一端側(後述する一端側流入口14参照)の端から他端側(後述する他端側流入口15参照)の端までの長さで、管状部材13の長軸方向Aの長さの概ね60~100%程度であることが好ましく、概ね70~90%であることがより好ましい。
【0048】
図1及び
図2に示すように、流出口13は、管状部材10の周壁10bに、長軸方向Aに沿って複数設けられた流出孔13aで構成されていることが好ましい。これにより、ベルトコンベア1の幅方向X(ベルトコンベア1の進行方向Yに直交する方向)にわたる含水バラ物2にディスパージョン液(高分子凝集剤)をより均一に添加しやすくなる。この観点から、ディスパージョン液の添加は、ベルトコンベア1の駆動中(進行方向Yへの進行中)に行われることが、効率が高いことからも好ましい。ディスパージョン液の添加は、ベルトコンベア1上の含水バラ物2に行われれば、ベルトコンベア1の停止中に行われてもよい。また、複数の流出孔13aは、各流出孔13a間が均等間隔となるように設けられていることがより好ましく、各流出孔13aからディスパージョン液をストレート棒状に流出させることが可能に構成されていることがさらに好ましい。
【0049】
管状部材10においては、12個の流出孔13aが設けられている例が
図1及び
図2に示されているが、流出孔13aの数や径は、例えば、管状部材10の長さ及び管内径、並びにディスパージョン液の流量及び流入圧力等に応じて、適宜決めることができる。一態様としては、流出孔13aの数は8~18個が好ましく、10~15個がより好ましい。また、この場合、流出孔13aの径は、1~5mmが好ましく、流出孔13aでのディスパージョン液の詰まり抑制の観点から、1.5mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましい。一方、各流出孔13aからのディスパージョン液の流出量の均等化(バラツキ抑制)の観点から、流出孔13aの径は4.5mm以下がより好ましく、4mm以下がさらに好ましい。
【0050】
管状部材10は、内部10aにディスパージョン液が流入可能に構成されていればよく、好適には、内部10aにディスパージョン液を流入させるための流入口を備える管状部材10を用いることができる。管状部材10における流入口は、管状部材10の長軸方向Aにおける一端側及び他端側のいずれか一方に設けられていてもよく、両方に設けられていてもよい。また、長軸方向Aにおける両端が閉塞した管状部材を用いてもよく、その場合、周壁の長軸方向における一部(例えば中央部等)に、ディスパージョン液の流入口を設けてもよく、周壁の長軸方向における複数箇所に流入口を設けてもよい。
【0051】
図1及び
図2に示すように、管状部材10は、長軸方向Aにおける一端側及び他端側のそれぞれに、内部10aにディスパージョン液を流入させるための一端側流入口14及び他端側流入口15を備えることが好ましい。この場合、管状部材10における一端側流入口14及び他端側流入口15の両方から、内部10aにディスパージョン液を流入させることが好ましく、各流入口14、15へのディスパージョン液の流入圧力を一定(同等)とすることがより好ましい。これらの構成により、長軸方向Aに沿って周壁10bに設けられた流出口13(複数の流出孔13a)からのディスパージョン液の流出量を、流出口13(流出孔13a)の長軸方向Aにおける位置間での違いが抑制され均等化しやすくなる。そのため、ベルトコンベア1の幅方向X(ベルトコンベア1の進行方向Yに直交する方向)にわたる含水バラ物2にディスパージョン液(高分子凝集剤)をより均一に添加しやすくなる。
【0052】
上述した管状部材10は、周壁10bに長軸方向Aに沿って複数設けられた流出孔13aで構成された流出口13を備えるが、管状部材10における流出口13の構成は、複数の流出孔13aに限られない。例えば、管状部材の流出口の形状、大きさ、数、及び位置等については、管状部材の長さ及び管内径等、並びにディスパージョン液を管状部材の内部に流入させる際の流量及び流入圧力等の種々の因子によって、適当な流出口の構成が変わり得るためである。上記種々の因子を調整することによって、適当な流出口の構成を決定することができる。
【0053】
管状部材の変形例として
図5に示す管状部材20のように、流出口23は、管状部材20の周壁20bに、長軸方向Aに沿って設けられたスリット23aで構成されていてもよい。これにより、スリット23aからディスパージョン液をストレートカーテン状に流出させることができ、ベルトコンベア1の幅方向Xにわたる含水バラ物2にディスパージョン液(高分子凝集剤)をより均一に添加しやすくなる。
【0054】
管状部材20におけるスリット23aの幅は、例えば、管状部材20の長さ及び管内径、並びにディスパージョン液の流量及び流入圧力等に応じて、適宜決めることができるが、一態様としては、0.1~1mmが好ましい。この場合、スリット23aの幅は、スリット23aでのディスパージョン液の詰まり抑制の観点から、0.2mm以上がより好ましい一方、スリット23aの全長におけるディスパージョン液の流出量の均等化の観点から、0.8mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
【0055】
また、管状部材の別の変形例として
図6に示す管状部材30のように、流出口33は、管状部材30の周壁30bに、長軸方向Aに沿って設けられた複数のノズル33aで構成されていてもよい。これにより、各ノズル33a(その先端口)からディスパージョン液をストレート棒状に流出させることができ、ベルトコンベア1の幅方向Xにわたる含水バラ物2にディスパージョン液(高分子凝集剤)をより均一に添加しやすくなる。
【0056】
管状部材30における複数のノズル33aは、各ノズル33a間が均等間隔となるように設けられていることが好ましい。ベルトコンベア1側に向かうノズル33aの長さ、数、及び先端口径等は、例えば、管状部材30の長さ及び管内径等、並びにディスパージョン液を管状部材30の内部に流入させる際の流量及び流入圧力等に応じて、適宜決めることができる。一態様としては、ノズル33aの長さは、1~30cmが好ましく、2~25cmがより好ましく、5~20cmがさらに好ましい。なお、ノズル33aの先端口径の大きさや、ノズル33aを備える管状部材30の設置高さについては、それらに対応する前述の管状部材10の説明における流出孔13a(流出口13)を、ノズル33aの先端口に置き換えたことと同様に説明することができる。
【0057】
(ポンプ)
図4に示すように、ディスパージョン液を管状部材10の流出口13からベルトコンベア1上の含水バラ物2に添加する際には、ディスパージョン液を管状部材10に移送するポンプ52を用いることが好ましい。
【0058】
ポンプ52には、圧力の作用によってディスパージョン液を管状部材10に移送することが可能なものを用いることができる。ポンプ52としては、例えば、渦巻ポンプ、ディフューザポンプ、斜流ポンプ、及び軸流ポンプ等の非容積(ターボ)型ポンプ;並びにダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、ギヤポンプ、ねじポンプ、及びベーンポンプ等の容積ポンプ等を挙げることができる。これらのなかでも、ねじポンプが好ましく、ディスパージョン液の詰まりをより抑制しやすいことで、含水バラ物にディスパージョン液をさらに均一に添加しやすくなる観点から、一軸偏心ねじポンプ(モーノポンプ)がさらに好ましい。
【0059】
なお、ポンプ52と管状部材10との接続等には、配管及びジョイント部等を用いることができるが、それらについては、以下に述べる凝集剤添加装置の説明において挙げることとする。
【0060】
以上詳述した本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法では、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液と、特定の管状部材とを用いる。これにより、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に対して、高分子凝集剤を連続的に添加する場合でも、特定の管状部材というより簡易な設備を用いて、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい方法を提供することができる。これは、前述の通り、ディスパージョン液が、凝集剤の添加に用いる部材の口を詰まらせ難いこと;塩水溶液を分散媒とする点で含水バラ物中の水分に溶解しやすいことで含水バラ物に浸透しやすく、高分子凝集剤を含水バラ物中に分散させやすいこと;等の考えられる性質によるところも大きく寄与していると考えられる。
【0061】
したがって、本発明のまた別の一実施形態の含水バラの処理方法として、含水バラ物に対して、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を添加することを含む、含水バラ物の処理方法を挙げることができる。この方法によっても、上述のディスパージョン液の性質によって、例えばベルトコンベアで搬送される含水バラ物に対して、高分子凝集剤を連続的に添加する場合においても、より簡易な設備を用いて、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい方法を提供することができる。簡易な設備としては、前述の管状部材等を用いてもよいし、それ以外の他の設備を用いてもよい。この方法では、硫酸アンモニウム水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を用いることが好ましい。また、そのディスパージョン液中の高分子凝集剤は、アニオン性単量体に由来する構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む共重合体系凝集剤であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)・(メタ)アクリルアミド共重合体であることがさらに好ましい。このように、この方法でも、前述の実施形態に係る含水バラ物の処理方法の説明で述べた好ましい構成を採ることも可能である。
【0062】
<凝集剤添加装置>
本発明の一実施形態の凝集剤添加装置(以下、単に「凝集剤添加装置」と記載することがある。)は、ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加する装置である。この凝集剤添加装置は、上述した本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法に好適に利用することができるものである。以下、
図4を参照しながら、凝集剤添加装置について説明する。
図4は、前述の管状部材10を備える凝集剤添加装置100の概略図である。なお、
図4には、参考として、ディスパージョン液が流れる方向を一方向矢印で示す。
【0063】
凝集剤添加装置100は、前述のディスパージョン液を貯蔵するタンク51と、ベルトコンベア1の上方に設置される管状部材10と、ディスパージョン液をタンク51から管状部材10に移送するポンプ52とを備える。タンク51には、図示を省略するが、前述の通り、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液が貯蔵される。
【0064】
前述の通り、管状部材10は、
図1及び
図2に示すように、内部10aに流入されたディスパージョン液をベルトコンベア1の幅方向Xにわたって流出させる流出口13が長軸方向Aに沿って周壁10bに設けられている。また、流出口13は、管状部材10の周壁10aに、長軸方向Aに沿って均等間隔で複数設けられた流出孔13aで構成されている。さらに、管状部材10は、長軸方向Aにおける一端側及び他端側のそれぞれに、内部にディスパージョン液を流入させるための一端側流入口14及び他端側流入口15を備えている。凝集剤添加装置100では、管状部材10の代わりに、例えば、前述の管状部材20、30を使用してもよく、管状部材10における流出口13(流入孔13a)の数、径、及び形状等、並びに流入口14、15の数及び位置等を変更した管状部材を使用してもよい。
【0065】
凝集剤添加装置100におけるポンプ52についても、前述した各種ポンプを使用することができ、それらのなかでも、ねじポンプが好ましく、一軸偏心ねじポンプ(モーノポンプ)がさらに好ましい。
【0066】
凝集剤添加装置100は、タンク51とポンプ52とを接続する第1の配管61と、ポンプ52と管状部材10とを接続する第2の配管62とを備えることができる。ポンプ52の機能により、タンク51に貯蔵されているディスパージョン液は、第1の配管61を通ってポンプ52に引き込まれ、ポンプ52の供給口52aに供給される。第1の配管61とポンプ52の供給口52aとの連結には、ジョイント部71を用いることができ、また、ジョイント部71にはバルブ部81を設けてもよい。バルブ部81により、ポンプ52に供給されるディスパージョン液の流量や圧力を調整したり、ディスパージョン液の供給及びその停止を切り替えたりすることも可能である。
【0067】
また、ポンプ52の機能により、タンク51から供給されたディスパージョン液は、ポンプ52の吐出口52bから吐出され、ポンプ52の吐出口52bに接続された第2の配管62を通って、管状部材10へ移送される。第2の配管62とポンプ52の吐出口52bとの連結には、ジョイント部72を用いることができ、また、ジョイント部72にはバルブ部82を設けてもよい。バルブ部82により、ポンプ52から吐出されるディスパージョン液の流量や圧力を調整したり、ディスパージョン液の吐出及びその停止を切り替えたりすることも可能である。
【0068】
凝集剤添加装置100では、一端側流入口14及び他端側流入口15を有する管状部材10を備えることから、ポンプ52と管状部材10を接続する第2の配管62は、三叉ジョイント部73を介して、第1の分岐配管64及び第2の分岐配管65に分岐されている。第1の分岐配管64は、管状部材10の一端側流入口14とジョイント部74により接続されている。第2の分岐配管65は、管状部材10の他端側流入口15とジョイント部75により接続されている。三叉ジョイント部73、一端側流入口14側のジョイント部74、及び他端側流入口15側のジョイント部75には、それぞれ、バルブ部83、84、85を設けてもよい。バルブ部83、84、85により、管状部材10に流入されるディスパージョン液の流量や圧力を調整したり、ディスパージョン液の流入及びその停止を切り替えたりすることも可能である。
【0069】
なお、上述した各配管61、62、64、65には、前述の管状部材10の説明で挙げた材質の管(パイプ)、ホース、及びチューブ等を用いることができ、それらのなかでも、ポリ塩化ビニル管や各種ブレードホースが好ましい。また、上述した各ジョイント部71~75には、管継手やホース継手を用いることができる。
【0070】
凝集剤添加装置100では、ポンプ52を起動させること、ポンプ52におけるディスパージョン液の供給及び吐出に関わる流量及び圧力等を調整すること、並びに管状部材10に流入されるディスパージョン液の流量及び圧力等を調整すること等によって、前述の本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法を実行することができる。
【0071】
したがって、本発明の一実施形態の凝集剤添加装置を用いることにより、管状部材の流出口の詰まりが抑制されつつ、高分子凝集剤をベルトコンベアの幅方向にわたる含水バラ物に浸透しやすい状態で添加することが可能となる。そのため、この凝集剤添加装置を長時間連続運転する場合においても、また、仮に、ベルトコンベアが設置されている設備の都合上、含水バラ物と高分子凝集剤との混合を十分に確保できない場合でも、含水バラ物に高分子凝集剤をより均一に添加しやすい。
【0072】
よって、例えば、採掘地において含水バラ物を船舶等に積み込む際に含水バラ物を搬送するベルトコンベアを備えた設備;船舶等で採掘地外へ輸送されてきた含水バラ物を荷揚げして搬送するベルトコンベアを備えた設備;採掘地内外の保管場、処理施設、及び使用施設等に含水バラ物を搬送するベルトコンベアを備えた設備;等の付近に、又はそれら設備に備え付ける態様で、上記凝集剤添加装置を好適に利用することができる。これにより、含水バラ物の船舶等への積み込み作業の容易化、その積み込まれた含水バラ物の崩れ抑制、含水バラ物のベルトコンベア等への荷揚げ障害の抑制、ベルトコンベア等による搬送障害の抑制、搬送され山積みされた含水バラ物の山崩れ抑制、山積みされた含水バラ物の風による発塵抑制などの効果が期待できる。
【0073】
以上の通り、本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法及び凝集剤添加装置に関する技術では、次の構成を採ることが可能である。
[1]ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加することを含む、含水バラ物の処理方法であって、前記凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を用いること;前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられ、前記ベルトコンベアの上方に設置された、管状部材を用いること;前記ディスパージョン液を前記管状部材の前記流出口から前記ベルトコンベア上の前記含水バラ物に添加すること;を含む、含水バラ物の処理方法。
[2]前記ディスパージョン液の添加の際は、ポンプを用いて前記ディスパージョン液を前記管状部材に移送し、前記管状部材の内部に流入された前記ディスパージョン液を前記流出口から前記ベルトコンベア上の前記含水バラ物に添加することを含む、上記[1]に記載の含水バラ物の処理方法。
[3]前記ポンプとして、一軸偏心ねじポンプを用いることを含む上記[2]に記載の含水バラ物の処理方法。
[4]前記流出口は、前記管状部材の前記周壁に、前記長軸方向に沿って複数設けられた流出孔で構成されている上記[1]~[3]のいずれかに記載の含水バラ物の処理方法。
[5]前記管状部材は、前記長軸方向における一端側及び他端側のそれぞれに、前記管状部材の内部に前記ディスパージョン液を流入させるための一端側流入口及び他端側流入口を備えており、前記管状部材における前記一端側流入口及び前記他端側流入口の両方から、前記内部に前記ディスパージョン液を流入させることを含む上記[1]~[4]のいずれかに記載の含水バラ物の処理方法。
[6]前記高分子凝集剤が、アニオン性単量体に由来するアニオン性構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む共重合体系凝集剤である上記[1]~[5]のいずれかに記載の含水バラ物の処理方法。
[7]前記高分子凝集剤が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸塩と、(メタ)アクリルアミドとの共重合体である上記[6]に記載の含水バラ物の処理方法。
[8]前記塩水溶液が硫酸アンモニウム水溶液である上記[1]~[7]のいずれかに記載の含水バラ物の処理方法。
[9]含水バラ物に対して、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を添加することを含む、含水バラ物の処理方法。
[10]ベルトコンベアで搬送される含水バラ物に凝集剤を添加する装置であって、前記凝集剤として、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液を貯蔵するタンクと、前記ベルトコンベアの上方に設置される管状の部材であって、内部に流入された前記ディスパージョン液を前記ベルトコンベアの幅方向にわたって流出させる流出口が長軸方向に沿って周壁に設けられた管状部材と、前記ディスパージョン液を前記タンクから前記管状部材に移送するポンプと、を備える、凝集剤添加装置。
[11]前記流出口は、前記管状部材の前記周壁に、前記長軸方向に沿って複数設けられた流出孔で構成されている上記[10]に記載の凝集剤添加装置。
[12]前記管状部材は、前記長軸方向における一端側及び他端側のそれぞれに、前記内部に前記ディスパージョン液を流入させるための一端側流入口及び他端側流入口を備える上記[10]又は[11]に記載の凝集剤添加装置。
[13]前記ポンプとして、一軸偏心ねじポンプを備える上記[10]~[12]のいずれかに記載の凝集剤添加装置。
【実施例】
【0074】
以下、試験例を挙げて、本発明の一実施形態の含水バラ物の処理方法に関する効果等をさらに具体的に説明する。
【0075】
<試験例1>
試験例1では、塩水溶液中に高分子凝集剤をディスパージョン状で含有するディスパージョン液と、高分子凝集剤をエマルジョン状で含有するW/O型エマルジョンとを用いて、それらによる効果の違いを確認する試験を行った。
【0076】
篩分けにより、粒径が5mm以下の鉄鉱石であって、含水率が11.2質量%であるミナスリオ鉱石を含水バラ物として用いた。後述する流動性確認試験では、この含水バラ物に水を添加して、含水率を15質量%に調整した。
【0077】
試験例1では、含水バラ物に添加する薬液として、以下のA~F剤を用いた。
A剤:硫酸アンモニウム水溶液中に、アニオン性の高分子凝集剤であるアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を20質量%含有するディスパージョン液(商品名「NSドライ-709L」、日鉄環境社製)
B剤:塩水溶液中に、カチオン性の高分子凝集剤であるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体を20質量%含有するディスパージョン液
C剤:塩水溶液中に、ノニオン性の高分子凝集剤であるアクリルアミド重合体を20質量%含有するディスパージョン液
D剤:アニオン性の高分子凝集剤であるアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体を40質量%含有するW/O型エマルジョン
E剤:カチオン性の高分子凝集剤であるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体を40質量%含有するW/O型エマルジョン
F剤:ノニオン性の高分子凝集剤であるアクリルアミド重合体を40質量%含有するW/O型エマルジョン
【0078】
上記ミナスリオ鉱石を500g分取し、水を加えて含水率を15質量%に調整した。容量1Lのプラスチックボトルに、含水率15質量%に調整した含水ミナスリオ鉱石、及び上記薬液を入れた後、プラスチックボトルを上下に5回転倒撹拌(上下入れ替えで1回の転倒撹拌)し、含水ミナスリオ鉱石と薬液との混合試料を作製した。含水ミナスリオ鉱石に対する薬液の添加量は、後記表1に示す「含水バラ物に対する薬液の添加割合(質量%)」の通りとした。
【0079】
一方、内寸で幅(奥行)200mm、長さ400mm、及び高さ100mmの片側が開口した直方体状の槽であって、底面に滑り止めのための珪砂を敷き詰めて固定した試験用槽を用意した。この試験用槽の底面の中央付近に、内寸で内径60mm及び高さ100mmのプラスチック製の無底円筒部材を置いた後、その円筒部材内に、作製した混合試料をすりきりまで充填した。次いで、円筒部材を上方に引き抜き、そのときに試験用槽の底面に残った混合試料について、円筒部材内に充填されていたことで円柱形状であった混合試料からの崩れ度合いを評価した。具体的には、円筒部材を引き抜いた後に試験用槽に残った混合試料の径方向への最大長さ(x値;試験用槽に水平方向の長さ)及び残った混合試料の最大高さ(y値;試験用槽に垂直方向の高さ)を測った。残った混合試料のx値が元の円筒部材の内径(60mm)に近くて小さいほど、また、残った混合試料のy値が元の円筒部材の高さ(100mm)に近くて大きいほど、残った混合試料が、円筒部材内にあった元の円柱形状に近い形状であったことを表し、流動性が低下したことを表す。
【0080】
上記薬液を用いた試験例1の結果を表1に示す。なお、表には、薬液を用いずに同様の試験を行ったブランク試験の結果もあわせて示した。
【0081】
【0082】
試験例1の結果より、ディスパージョン液は、W/O型エマルジョンに比べて、含水バラ物との混合条件が緩やかな場合において、含水バラ物の流動性を低下させやすいことが確認された。また、高分子凝集剤の種類について、カチオン性やノニオン性よりもアニオン性の方が含水バラ物の流動性を低下させやすいことが確認された。
【0083】
<試験例2>
試験例2では、試験例1で使用したディスパージョン液(A剤)を使用し、その添加量を含水バラ物の全質量に対して高分子凝集剤として0.0020~0.040質量%で変化させて、試験例1と同様の流動性評価試験を行った。含水バラ物も試験例1と同等の物を用いた。
【0084】
試験例2の結果を表2に示す。なお、表2には、薬液を用いずに同様の試験を行ったブランク試験の結果もあわせて示した。
【0085】
【0086】
試験例2の結果より、高分子凝集剤の添加量は、含水バラ物の全質量に対して、0.0020~0.040質量%程度で足り、経済性を考慮し、より安定した十分な処理を行なうためには、例えば、0.002~0.02質量%とすればよいことを確認した。
【0087】
<試験例3>
試験例3では、凝集剤添加装置の流出孔の違いによる高分子凝集剤の詰まりやすさを比較した。高分子凝集剤を含有する薬液には、試験例1で使用したディスパージョン液(A剤)、及びW/O型エマルジョン(D剤)を用いた。また、凝集剤添加装置には、
図4に示す凝集剤添加装置100におけるジョイント部73に、流出孔の形状等の構成が異なる部材(下記条件A~Eに記載の部材)をそれぞれ接続した構成となるように作製した試験装置を用いた。これらの試験装置を用いて、各部材の流出孔から高分子凝集剤の流出状況を観測した。持続的に高分子凝集剤の流出が認められた場合には長時間の連続運転を行い、部材と流出状況との関係について目視での評価及び流出した高分子凝集剤量の測定による流出速度の評価を行った。
【0088】
条件A:シャワーヘッド(1つの孔径が0.5mm程度のシャワー状流出口のもの)を部材として用いた。
条件B:ミスト状の流出を期待して、株式会社共立合金製作所製の高粘度流体微粒化ノズル(大タイプ)を部材として用いた。
条件C1:長さ1m(ベルトコンベアの幅を想定)、管内径25mm、両端開口とし、管の周壁に長軸方向(長さ1mの方向)に沿って均等間隔で孔径が5mmの5個の孔で構成された流出口を有するポリ塩化ビニル管を部材(
図1に示す管状部材10参照)として用いた。
条件C2:孔数が8個で各孔の孔径が4mmであること以外は、上記条件C1に用いたポリ塩化ビニル管と同様の部材を用いた。
条件C3:孔数が12個で各孔の孔径が3mmであること以外は、上記条件C1に用いたポリ塩化ビニル管と同様の部材を用いた。
条件D:上記条件C3に用いたポリ塩化ビニル管における各孔に、ノズルとして、管長50mm、管内径3mmの棒状の塩化ビニル菅が接続された部材を用いた(
図6に示す管状部材30参照)。
条件E:長軸方向と平行な幅0.5mmのスリットを有する管長1m、内径25mmのポリ塩化ビニル菅を部材として用いた(
図5に示す管状部材20参照)。
なお、条件A及びBでは、薬液(A剤又はD剤)をそれぞれ1つの流入口から流入させて、条件A及びB以外の条件では、各部材(管状部材)における両端開口(一端側流入口及び他端側流入口)からディスパージョン液を流入させる態様で各部材を使用し、また、そのような態様に合わせて各試験装置を構成した。
【0089】
上記試験装置において、モーノポンプ(兵神装備社製、「NY-20」)を用いて高分子凝集剤の供給流量を2.5L/分の条件とし、72時間の連続循環運転試験を行った。この試験において、時間経過に伴う各部材の流出口の状態を確認することにより、流出口の詰まり具合(閉塞度合)と、開始時の添加均一性について評価した。結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
試験例3の結果より、ディスパージョン液(A剤)は、W/O型エマルジョン(D剤)に比べて、管状部材における流出口の詰まりが生じ難いことがわかった。この試験例3の結果と、上述の試験例1の結果から、ディスパージョン液を用いれば、W/O型エマルジョンを用いる場合に比べて、高分子凝集剤を含水バラ物に長時間均一に添加しやすいことが確認された。なお、凝集剤添加装置を使用する場所、施設、及び状況等に応じて、上記各種条件は変更される可能性があり、それにより、最適な部材の構成は変わり得るものである。
【0092】
<試験例4>
試験例4では、試験例3の条件C1~C3で用いた部材と同じものを用いて、所定条件下における管状部材の流出孔の数及び径の違いが、各流出孔からのディスパージョン液の流出量のバランスに与える影響を調査した。ディスパージョン液及び含水バラ物には、試験例1で使用したものと同じものを用いた。
【0093】
具体的には、いずれの管状部材も、ベルトコンベアの幅を想定した長さ1m、管内径25mmのポリ塩化ビニル管を使用し、そのポリ塩化ビニル管の周壁に長軸方向(長さ1mの方向)に沿って均等間隔で下記表4に示す数及び径の流出孔を設けたものを使用した。また、いずれの管状部材についても、両端開口(一端側流入口及び他端側流入口)からディスパージョン液を流入させる態様で使用した。
【0094】
【0095】
試験例2で使用したものと同一の試験装置を用いて、ディスパージョン液の供給流量を2.5L/分とし、循環運転試験の開始から1時間後の管状部材の各流出孔からのディスパージョン液の流出量(L/分)を測定した。流出量の測定は、各孔から流出した液をメスシリンダーで1分間受け、その目盛りを読み取ることによった。この結果を表5に示す。表5中に示した「孔No.」の数値は、各試験例で使用した管状部材における複数の流出孔について、一端側流入口(例えば
図1中の符号14参照)に近い方の流出孔から順に付した番号である。
【0096】
【0097】
条件C1では、各流出孔(孔No.1~5)からのディスパージョン液の流出量において、最大で0.20L/分程度の差が見られた。条件C2では、各流出孔(孔No.1~8)からのディスパージョン液の流出量において、最大で0.10L/分程度の差が見られた。条件C3では、各流出孔(孔No.1~12)からのディスパージョン液の流出量が均等で、流出量のバランスに優れていた。以上の結果より、試験例4で用いた管状部材の材質、長さ及び管内径等の条件、使用ポンプの種類及びその運転条件、並びに試験装置に用いた配管の材質、長さ及び管内径等の条件等を含む試験例4で採用した条件下においては、条件C3で用いた管状部材が最適であることが確認された。なお、凝集剤添加装置を使用する場所、施設、及び状況等に応じて、上記各種条件は変更される可能性があり、それにより、最適な管状部材の構成は変わり得るものである。
【0098】
<試験例5>
実際に、鉄鉱石を搬送するベルトコンベア(幅1m)が設置された使用施設において、管状部材も含めて上述の条件C3で用いたものと同一の試験装置(凝集剤添加装置)を設置した。管状部材の設置高さは、ベルトコンベアの載置面から管状部材における流出孔までの高さを100cmとした。また、ベルトコンベアの進行方向に対する管状部材の設置位置は、ベルトコンベアのスタート位置(鉄鉱石が載置される位置)から約100mの位置とした。上記ベルトコンベアは、5つのコンベアパーツが、それらの間に乗り継ぎ部(ジャンクション部位;計4箇所)を有して連結されたものであり、各乗り継ぎ部の落差は約150cmであった。鉄鉱石としては、含水率が10質量%以上であるカラジャス鉱石粉を用い、このカラジャス鉱石粉に添加する薬液として、試験例1で使用したディスパージョン液(A剤)を用いた。
【0099】
上記ベルトコンベアの載置面におけるスタート位置に、上記カラジャス鉱石粉500tを、鉱石荷役2,000~3,000t/時間の条件で荷揚げした。また、上記カラジャス鉱石粉500tに上記ディスパージョン液50kgが添加されることとなる条件に設定して、上記試験装置におけるモーノポンプを駆動させた。このようにして、管状部材の流出口(各流出孔)から、ベルトコンベアで搬送中の上記含水カラジャス鉱石粉に対し、ベルトコンベアの幅方向にわたってディスパージョン液を添加した。そして、ベルトコンベアの終点から、ディスパージョン液が添加されたカラジャス鉱石粉を取り出して、ヤードに山積みし、略円錐状となった積山の裾の半径r値(m)と積山の高さz値(m)を測定し、記録した。この結果を表6に示す。表6には、ディスパージョン液を用いずに同様の試験を行ったブランク試験の結果もあわせて示した。
【0100】
【0101】
試験例5の結果より、実際の現場において、ディスパージョン液、及び特定の管状部材等を含む凝集剤添加装置を用いた含水バラ物の処理方法によって、積山の裾の拡がりが抑制され、積山の高さも高く維持されやすいことが確認された。
【0102】
なお、ディスパージョン液を試験例1で使用したW/O型エマルジョン(D剤)に変更して、試験例5と同様の試験を行った(比較例5)。その結果、比較例5では、試験終了後、管状部材における12個の流出孔のうち、2個の流出孔で詰まりが確認されたが、ディスパージョン液(A剤)を用いた試験例5では、流出孔の詰まりが確認されなかった。また、比較例5と比べて、ディスパージョン液を用いた試験例5では、含水カラジャス鉱石粉に対する高分子凝集剤としての添加割合が半分程度で同程度の効果が得られた。この結果から、ディスパージョン液は、W/O型エマルジョンに比べて、含水バラ物に対して浸透しやすく、高分子凝集剤が含水バラ物中に分散しやすいと考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1 ベルトコンベア
2 含水バラ物
10 管状部材
13 流出口
13a 流出孔
14 一端側流入口
15 他端側流入口
51 タンク
52 ポンプ
100 凝集剤添加装置
A 管状部材の長軸方向
X ベルトコンベアの幅方向