(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240123BHJP
A61K 8/03 20060101ALI20240123BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240123BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240123BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20240123BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240123BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240123BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240123BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/03
A61K8/04
A61K8/25
A61K8/40
A61K8/86
A61Q15/00
A61Q19/00
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020051164
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-09-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 めぐみ
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051923(JP,A)
【文献】特表2013-517289(JP,A)
【文献】特開平08-259434(JP,A)
【文献】特開2008-056609(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188279(WO,A1)
【文献】坂本一民、金子大介,アミノ酸系機能性粉体 1-アミホープLLの特性と応用-,色材,1992年,Vol.65 No.2,p88-93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A~Dを含有し、
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量(A/B)が、300以下であり、
成分Cの含有量に対する成分Aの含有量(A/C)が、35以下である、水性組成物;
成分A:アミノ酸系有機粉体
成分B:アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩
、およびカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性
剤
成分C:スメクタイト型粘土鉱物
成分D:水。
【請求項2】
前記成分Aの含有量が、0.01~20.0質量%であり、
前記成分Bの含有量が、0.005~2.0質量%であり、
前記成分Cの含有量が、0.01~2.0質量%である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
下記成分Eをさらに含む、請求項1または2に記載の水性組成物;
成分E:エタノール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚外用剤、メイクアップ化粧料などの感触改良剤としてナイロン等のプラスチックパウダーが主に使用されてきた。しかしながら、プラスチックパウダーは、生分解性が低い。このため、プラスチックパウダーによる環境への影響が問題となり、プラスチックパウダーの使用を控える必要がある。
【0003】
生分解性の高い粉体の一つとして、アミノ酸と脂肪酸とからなるアミノ酸系有機粉体が挙げられる。アミノ酸系有機粉体は、水にも有機溶媒にもほとんど溶解せず、撥水性に優れているという特性を有することが知られている。
【0004】
アミノ酸系有機粉体を配合した組成物は、例えば特許文献1~3に開示されている。特許文献1には、メイクアップ化粧料にアミノ酸系有機粉体を配合することによって、使用感や撥水性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、クリーム状組成物にアミノ酸系粉体を配合することによって、高級感のあるパール状光沢を有するクリーム状の外観とし、形態安定性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献3には、高級脂肪酸を含有する洗浄剤組成物にアミノ酸系有機粉体を配合することによって、洗浄力や泡質などを向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-197559号公報
【文献】国際公開WO2018/008762号
【文献】特開2019-156729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2には、油性組成物にアミノ酸系有機粉体を配合することは記載されているが、水性組成物にアミノ酸系有機粉体を配合することの記載はない。また、特許文献3には、高級脂肪酸塩およびアミノ酸系有機粉体を含有する洗浄料組成物が記載されている。しかし、特許文献3に記載の技術は、洗浄料組成物の高い粘性によりアミノ酸系有機粉体を分散させているに過ぎず、全ての水性組成物に適用できる技術ではない。アミノ酸系有機粉体は、撥水性に優れるため、水性組成物の液層にアミノ酸系有機粉体を分散させることは困難である。それゆえ、アミノ酸系有機粉体を含有する水性組成物を調製することは困難であった。
【0007】
本発明は、水性組成物の液層中にアミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させることが可能な水性組成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(i)アミノ酸系有機粉体、特定の界面活性剤、および粘土鉱物を配合し、(ii)当該界面活性剤および当該粘土鉱物の含有量に対するアミノ酸系有機粉体の含有量の比率を特定範囲にした水性組成物であれば、液層中にアミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させることができるという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0009】
〔1〕下記成分A~Dを含有し、
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量(A/B)が、300以下であり、
成分Cの含有量に対する成分Aの含有量(A/C)が、35以下である、水性組成物;
成分A:アミノ酸系有機粉体
成分B:アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩、HLBが12.0~17.0のノニオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤
成分C:スメクタイト型粘土鉱物
成分D:水。
【0010】
〔2〕上記成分Aの含有量が、0.01~20.0質量%であり、上記成分Bの含有量が、0.005~2.0質量%であり、上記成分Cの含有量が、0.01~2.0質量%である、〔1〕の水性組成物。
【0011】
〔3〕下記成分Eをさらに含む、〔1〕または〔2〕の水性組成物;
成分E:エタノール。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性組成物によれば、液層中にアミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0014】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、水性組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0015】
〔1.水性組成物〕
本発明に係る水性組成物は、下記成分A~Dを含有し、
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量(A/B)が、300以下であり、
成分Cの含有量に対する成分Aの含有量(A/C)が、35以下である、水性組成物である;
成分A:アミノ酸系有機粉体
成分B:アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩、HLBが12.0~17.0のノニオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤
成分C:スメクタイト型粘土鉱物
成分D:水。
【0016】
本発明では、上記組成を有することによって、液層中にアミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させることができる水性組成物を実現することができる。ここで、「液層中にアミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させる」とは、換言すると、液層に対して有機粉体が濡れ性を有するともいえる。当該濡れ性を有する状態とは、液層とともに有機粉体を撹拌したとき、有機粉体が、液層の液面よりも下に存在する状態をいう。一方、濡れ性を有さない状態とは、水性組成物とともにアミノ酸系有機粉体を撹拌したとき、アミノ酸系有機粉体が液層の液面上(気液界面)に留まったままの状態をいう。
【0017】
また、本発明の水性組成物においては、液層中に有機粉体が濡れ粉体層として存在する2層形態であっても、アミノ酸系有機粉体は、液層中に分散しているといえる。当該2層形態としては、例えば、(i)液層の液面下側から液面近くに有機粉体が濡れ粉体層として存在する形態、(ii)液層の底部へ有機粉体が沈降し、当該底部に有機粉体が濡れ粉体層として存在する形態等が挙げられる。
【0018】
また、本発明において、「水性組成物」とは、実質的に油剤を含有しない組成物をいう。より具体的には、「水性組成物」は、油剤が3.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の組成物である。さらに、上記油剤としては、油脂、ロウ、シリコーン油、炭化水素、エステル油等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の水性組成物は、25℃における粘度が1000mPa・s以下の液状組成物であることが好ましく、500mPa・s以下の液状組成物であることがより好ましい。上記粘度は、例えば、B型粘度計:VISCTER TV-25(東機産業社製)、若しくは、音叉式振動粘度計:SV-10A(北浜製作所社製)により測定することができる。
【0020】
クリーム状組成物およびジェル状組成物の粘度は、1000mPa・sを超える。このような組成物に対しては、濡れ性に関係なく、有機粉体を分散して配合することが可能である。
【0021】
一方、液状の水性組成物に対して有機粉体を分散して配合するためには、当該水性組成物の液層に対して有機粉体が濡れ性を有することが必要となる。本発明者らは、驚くべきことに、上記成分A~Dを配合することによって、有機粉体が水性組成物の液層に対して濡れ性を有するという新規知見を見出した。
【0022】
また、本発明の水性組成物は、上記成分A~Dに加えて、成分E:エタノールをさらに含んでいてもよい。本発明の水性組成物は、上述した成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量(A/B)が、300以下であり、好ましくは2~250であり、より好ましくは5~200である。上述の範囲であれば、スメクタイト型粘土鉱物(成分C)の過多によるべたつきの発生を抑制できる。また成分Aの過少による成分Aの効果喪失の恐れを考慮すると、A/Bは、0を超えていればよい。
【0024】
成分Cの含有量に対する成分Aの含有量(A/C)が、35以下であり、好ましくは0.1~30であり、より好ましくは1~25である。上述の範囲であれば、スメクタイト型粘土鉱物(成分C)の過多によるべたつきの発生を抑制でき、また泡立が過剰となる恐れを抑制し得る。また成分Aの過少による成分Aの効果喪失の恐れを考慮すると、A/Cは、0を超えていればよい。
【0025】
以下では、本発明の水性組成物を構成する成分について説明する。
【0026】
〔成分A〕
本発明の水性組成物は、成分Aとして、アミノ酸系有機粉体を含有する。本発明の水性組成物において、上記成分Aを含有させることにより、皮膚に対し塗布後に、サラサラした感触、所謂、サラサラ感を付与するという効果を奏する。上記成分Aは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0027】
上記アミノ酸系有機粉体としては、水性組成物に配合し得るものであれば特に限定されない。具体的には、ラウロイルリジン、パルミトイルリジン、カプロイルリジン等のアシルリジン;ステアロイルオルニチン等のアシルオルニチン;ラウロイルアルギニン等のアシルアルギニン;ココイルヒスチジン等のアシルヒスチジン等のアシル塩基性アミノ酸等が挙げられる。市販品としては、ラウロイルリジンであるアミホープLL(味の素社製)等を用いることができる。
【0028】
また、成分Aの含有量は、好ましくは0.01~20.0質量%、より好ましくは0.1~15.0質量%、さらに好ましくは0.5~10.0質量%である。アミノ酸系有機粉体による効果を発揮する観点から、上記含有量は、0.01質量%以上であればよい。また、本発明の水性組成物の使用感の観点から、上記含有量は、20.0質量%以下であればよい。
【0029】
〔成分B〕
本発明の水性組成物は、成分Bとして、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩、HLBが12.0~17.0のノニオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含有する。本発明の水性組成物において、上記成分Bを含有させることにより、アミノ酸系有機粉体の液層への濡れ性を付与し、アミノ酸系有機粉体同士のケーキングを抑制することができる。好ましくは、前記界面活性剤は、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩およびカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記成分Bは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0030】
上記アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩は、アミノ酸系両性界面活性剤の一種である。アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩は、アルキル基が12および14であるN-〔3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル〕-L-アルギニンの塩であることが好ましく、N-〔3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル〕-L-アルギニン塩酸塩であることがより好ましい。
【0031】
また、前記塩の対イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。
【0032】
HLBが12.0~17.0のノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等が挙げられる。
【0033】
より具体的には、例えば、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4~10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6~10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル; モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等のグリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル; モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、HLBが12.0~17.0のノニオン性界面活性剤は、酸化エチレンの平均付加モル数が40~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であることが好ましい。このようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油が挙げられる。
【0035】
また、上記ノニオン性界面活性剤のHLBは、12.0~17.0であり、好ましくは13.0~17.0であり、より好ましくは14.0~17.0である。アミノ酸系有機粉体の液層への濡れ性を付与の観点から、当該HLBは、12.0以上であればよい。また、アミノ酸系有機粉体の液層への濡れ性を付与の観点から、当該HLBは、17.0以下であればよい。
【0036】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、アルキルアミン、脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。
【0037】
上記モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ベへニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20~22)トリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、ジステアロイルエチルジモニウムクロリドセテアリルアルコール(パルミタミドプロピルトリモニウムクロリド)等が挙げられる。
【0038】
上記脂肪酸アミドアミンとしては、例えば、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0039】
上記脂肪酸アミドアミンは、有機酸および/または無機酸により塩として用いられることが好ましい。上記有機酸としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸等が挙げられる。また、上記無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。中でも、乳酸が好ましい。上記有機酸及び無機酸の含有量は、配合される脂肪酸アミドアミンを中和できる量であれば特に限定されない。
【0040】
上記カチオン性界面活性剤としては、上記の中でも、モノアルキル型4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミンが好ましく、より好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベへニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20~22)トリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ジステアロイルエチルジモニウムクロリドセテアリルアルコール(パルミタミドプロピルトリモニウムクロリド)、塩化γ-グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムである。
【0041】
上記成分Bの含有量は、好ましくは0.005~2.0質量%、より好ましくは0.010~1.5質量%、さらに好ましくは0.020~1.0質量%である。本発明の効果を発揮する観点から、上記含有量は0.005質量%以上であればよい。また、水性組成物の使用感、すなわち、界面活性剤由来のべたつきに起因して成分Aによる効果を損なうことを防止するとの観点から、上記含有量は2.0質量%以下であればよい。
【0042】
〔成分C〕
本発明の水性組成物は、成分Cとして、スメクタイト型粘土鉱物を含有する。本発明の水性組成物において、上記成分Cを含有させることにより、アミノ酸系有機粉体を沈降させるだけでなく、分散性をも良好にすることができる。上記成分Cは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0043】
上記成分Cは、天然物であっても、合成物であってもよい。天然物のスメクタイト型粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト、ベイデライト、ノントロナイト、サウコナイト、およびステベンサイド等が挙げられる。また、合成物のスメクタイト型粘土鉱物としては、合成サポナイト、および合成ヘクトライト等が挙げられる。これらの中でも、上記成分Cは、ベントナイト、合成ヘクトライト(合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム)であることが好ましい。
【0044】
上記成分Cの含有量は、好ましくは0.01~2.0質量%、より好ましくは0.05~1.5質量%、さらに好ましくは0.1~1.0質量%である。本発明の効果を発揮する観点から、上記含有量は0.01質量%以上であればよい。また、水性組成物の使用感、粘土鉱物由来のべたつきおよびきしみ感に起因して成分Aによる効果を損なうことを防止するとの観点から、上記含有量は2.0質量%以下であればよい。
【0045】
〔成分D〕
本発明の水性組成物は、成分Dとして、水を含む。成分Dは、特に限定されないが、精製水が好ましい。成分Dの水の含有量は、成分D以外の成分の含有量に応じて適宜設定得るが、好ましくは30.0~99.0質量%である。
【0046】
〔成分E〕
本発明の水性組成物は、成分Eとして、エタノールを含む。本発明の水性組成物において、上記成分Eを含有させることにより、さっぱり感の向上や、速乾性の向上という効果を奏する。成分Eの含有量は、所望する使用感に応じて適宜設定することができ、好ましくは0.1~65.0質量%、より好ましくは1.0~50.0質量%である。
【0047】
〔その他の成分〕
本発明の水性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記に記した成分の他、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グルコース、マルトース、マルチトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、グルコシルトレハロースなどの多価アルコール;l-メントール、メンチルラクテート、カンファー、l-メンチルグリセリルエーテル、ハッカ油、ペパーミント油などの清涼剤;アニオン性界面活性剤、上記アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩以外の両性界面活性剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、シリコーン類、脂肪酸エステル油、ビタミン類、ミネラル類、動植物エキス、着色剤、各種香料、防腐剤、殺菌剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、美白剤などを目的に応じて適宜配合してもよい。
【0048】
〔2.水性組成物の製造方法〕
本発明の水性組成物の製造方法は、公知の方法で調製することができる。例えば、液体成分が投入された容器に粉体成分を添加し、ディスパー等で攪拌・均一化することによって本発明の水性組成物を製造することができる。
【0049】
〔3.本発明の水性組成物の用途〕
例えば、本発明の水性組成物は、2層型皮膚用ローションなどの皮膚用ローションとして使用することができる。この場合、上記皮膚用ローションは、体用のボディーローション、デオドラントローション;顔用の収れんローション、オイルコントロールローションなどの皮膚の何れの部位にも使用することができる。中でも、使用時のさっぱり感に優れ、かつ皮脂の抑制効果に優れる観点から、顔用のローション(化粧水)として使用されるのがより好ましい。
【0050】
また、本発明の水性組成物は、シート化粧料に使用することができる。シート化粧料は、織布、不織布等のシート基材に化粧料組成物を含浸させて形成されたシート形状の化粧料である。上記シート基材に含侵させる化粧料組成物として、本発明の水性組成物を使用することができる。
【0051】
この場合、上記シート化粧料は、主に、皮膚(肌)を拭き取るために用いられる。上記シート化粧料により拭き取る部位としては、特に限定されず、例えば、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)、頭皮が挙げられる。上記シート化粧料としては、例えば、ボディ用拭き取りシート(頭皮用拭き取りシートを含む)、フェイス用拭き取りシート、ウェットティッシュ、使い捨ておしぼり、シート洗顔料(洗顔シート)、お尻拭きシート、メイク落としシート等が挙げられる。中でも、上記シート化粧料は、優れた冷感付与効果を発揮できるため、ボディ拭き取り用に特に好ましく用いられる。
【0052】
なお、上述した用途において、本発明の水性組成物は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨の何れの形態であってもよい。
【実施例】
【0053】
本発明の一実施例について、以下に説明する。
【0054】
〔1.実施例1~14、比較例1~13〕
表1および表2に示した組成に従い、実施例1~14および比較例1~13の水性組成物(組成物1~27)を調製した。得られた水性組成物の25℃における粘度は、100mPa・s未満であった。
【0055】
〔2.各成分の詳細〕
表1および表2中、各成分の詳細は以下の通りである。
【0056】
<成分A:アミノ酸系有機粉体>
ラウロイルリジン:味の素社製、製品名「アミホープ LL」。
【0057】
<成分B:アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩>
アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCl:味の素社製、製品名「アミセーフ LMA-60」。
【0058】
<両性界面活性剤>
ラウラミドプロピルベタイン:新日本理化社製、製品名「リカビオン B-300」。
【0059】
ココアンホ酢酸Na:川研ファインケミカル社製、製品名「ソフタゾリン CH」。
【0060】
ラウロアンホ酢酸Na:川研ファインケミカル社製、製品名「ソフタゾリン LHL」。
【0061】
<成分B:ノニオン性界面活性剤(HLB12.0~17.0)>
PEG-60水添ヒマシ油(HLB14.8) :青木油脂社製、製品名「ブラウノン RCW-60」。
【0062】
PEG-100水添ヒマシ油(HLB16.5) :日本エマルジョン社製、製品名「EMALEX HC-100」。
【0063】
<ノニオン性界面活性剤>
PEG-30水添ヒマシ油(HLB11.0) :日本エマルジョン社製、製品名「EMALEXHC-30」。
【0064】
セテス-40(HLB 17.4):青木油脂社製、製品名「ブラウノン CH-340」。
【0065】
カプリル酸ポリグリセリル-3(HLB 11.1):EVONIC社製、製品名「TEGO Cosmo P813」。
【0066】
<アニオン性界面活性剤>
ラウレス硫酸Na:花王社製、製品名「エマール 270J」。
【0067】
スルホコハク酸ラウレス2Na:新日本理化社製、製品名「リカマイルドES-100」。
【0068】
<成分B:カチオン性界面活性剤>
ステアルトリモニウムクロリド:花王社製、製品名「コータミン 86W」。
【0069】
パルミタミドプロピルトリモニウムクロリド:EVONIC社製、製品名「VARISOFT PATC」。
【0070】
<成分C:スメクタイト型粘土鉱物>
ベントナイト:日本有機粘度社製、製品名「ベンゲル」。
【0071】
合成ヘクトライト(合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム):BYK社製、製品名「Laponite XLG」。
【0072】
<粘土鉱物>
カオリン:竹原化学工業社製、製品名「カオリン JP-100」。
【0073】
〔3.評価:粉体濡れ性〕
粉体濡れ性は、調製した各組成物におけるアミノ酸系有機粉体の状態を目視で観察することで評価した。評価結果は、下記の基準に従って示す。
【0074】
(評価基準)
◎:全てのアミノ酸系有機粉体が、液層中に分散している、または再分散可能である。
○:一部のアミノ酸系有機粉体が気液界面に存在するが、9割以上のアミノ酸系有機粉体が、液層中に分散している、または再分散可能である。
×:9割以上のアミノ酸系有機粉体が気液界面に存在する。
【0075】
【0076】
【0077】
〔4.試験結果〕
表1および表2から、粉体濡れ性について、実施例1、参考例2~3、および実施例4~14の水性組成物は、比較例1~13の水性組成物よりも優れていることが明らかになった。したがって、実施例1、参考例2~3、および実施例4~14の水性組成物は、アミノ酸系有機粉体を分散させる、あるいは再分散させることができる組成物である。
【0078】
〔処方例〕
[2層型皮膚用ローション]
ラウロイルリジン 1.0質量%
アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩 0.04質量%
ベントナイト 0.2質量%
エタノール 10.0質量%
1,2-オクタンジオール 0.2質量%
グリセリン 7.0質量%
サリチル酸 0.1質量%
l-メントール 0.3質量%
塩化ナトリウム 0.1質量%
リン酸Na 0.1質量%
リン酸2Na 0.3質量%
メチルパラベン 0.3質量%
香料 0.03質量%
精製水 残 余
合計 100.0質量%。
【0079】
[2層型腋臭防止剤]
ラウロイルリジン 4.0質量%
無水ケイ酸 0.5質量%
塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム 0.1質量%
合成ヘクトライト(合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム) 0.4質量%
エタノール 30.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
l-メントール 0.1質量%
パラフェノールスルホン酸亜鉛 0.3質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.05質量%
香料 0.05質量%
精製水 残 余
合計 100.0質量%。
【0080】
[シート化粧料]
不織布100質量部に対し、下記組成からなる化粧料組成物400質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
ラウロイルリジン 3.0質量%
PEG-60水添ヒマシ油 0.05質量%
ベントナイト 0.2質量%
BG 10.0質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05質量%
メチルパラベン 0.2質量%
フェノキシエタノール 0.6質量%
エタノール 4.0質量%
キサンタンガム 0.03質量%
精製水 残 余
合計 100.0質量%。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の水性組成物は、皮膚用ローション、シート化粧料等に使用することができる。