(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】精密機器輸送用台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20240123BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20240123BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240123BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B62B3/02 C
B62B5/00 F
B62B3/00 D
B62B3/04 B
(21)【出願番号】P 2020071873
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591135440
【氏名又は名称】日本通運株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-81301(JP,A)
【文献】米国特許第5464315(US,A)
【文献】特開2005-289377(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148508(JP,U)
【文献】特開2020-40592(JP,A)
【文献】特開平11-124040(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1キャスターを底部に有する精密機器を内部に収容自在に前面を開口し、外周の三面を枠で囲った移動自在な精密機器輸送用台車であって、
所定の間隔を設けて略平行に配置され、複数の第2キャスターを底部に取り付けた一対の第1下枠部材を有するベース架と、
前記ベース架と昇降自在に連結した一対の第2下枠部材を有し、底板を中央部に配置した箱状の連結架と、を備え、
前記連結架は、
前記第2下枠部材の前部から起立した前枠部材、前記第2下枠部材の後部から起立し、前記前枠部材と略平行に延びる後枠部材、及び、前記前枠部材と前記後枠部材の先端部同士を連結した上枠部材で構成した一対の側枠と、
一対の前記側枠の後枠部材同士を連結し、前記底板と略平行に配置した一つ以上の横リブと、
一片と他片をL字状に屈曲した挟持部材であって、前記横リブに沿って移動でき、一片が前記精密機器の後面に当接できると共に、他片が前記精密機器の側面方向から前記精密機器を挟持できる一対の挟持部材と、を
有し、
前記連結架は、一対の前記挟持部材を互いに近づける、又は離間できるねじ式ジャッキ装置を更に備えている、精密機器輸送用台車。
【請求項2】
前記連結架は、一対の前記前枠部材の間に着脱自在に掛け渡したサイドバーを備え、
前記サイドバーは、前記前枠部材から前記後枠部材に向けて段階的に設置できる、
請求項1記載の精密機器輸送用台車。
【請求項3】
前記底板は、
その前後方向に移動自在に配置され、前記精密機器の第1キャスターを制止できる一対のバー状の車輪止めと、
前記車輪止めに連結し、前記第1キャスターの横滑りを抑制する一組のコマ部材と、を有している、
請求項1又は2記載の精密機器輸送用台車。
【請求項4】
前記第2キャスターに備わる車輪を制動自在なブレーキ装置を更に備え、
前記ブレーキ装置は、
前記第2キャスターの車輪の外周に向かって進退自在なブレーキピンと、
前記ブレーキピンを前記車輪の外周に向かって力を付勢する圧縮コイルばねと、
前記ブレーキピンと連結し、一部を前記前枠部材に沿って昇降自在に配置したリンク機構と、
前記リンク機構の操作端部に配置したベルクランクからなる操作レバーと、を有し、
前記操作レバーを前記前枠部材に向かって一方の方向に回動した状態では、前記リンク機構を介して、前記ブレーキピンの先端縁を前記第2キャスターの車輪の外周から離反でき、
前記操作レバーを前記前枠部材から離間する方向に解放した状態では、前記圧縮コイルばねに付勢されて、前記ブレーキピンの先端縁が前記第2キャスターの車輪の外周を押圧している、
請求項1から3のいずれかに記載の精密機器輸送用台車。
【請求項5】
前記連結架の両側面に配置され、前記ベース架に対して前記連結架を昇降させる一組のてこクランク機構を更に備え、
前記第1下枠部材は、略平行に立設した一対の立設架を有し、
前記第2下枠部材は、これらの立設架をスライド自在に案内する開口を有し、
前記てこクランク機構は、
前記連結架と一体に昇降自在な支軸を前記連結架の両側面に支持したクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを手動で回動させるクランクハンドルと、
前記支軸から前記クランクハンドルと反対方向に偏心した位置に配置したクランクピンと、を有し、
前記立設架は、前記クランクピンを内部の矩形開口に遊動自在に収容した角筒状の継手を上部に有し、
前記クランクハンドルを一方の方向に回動したときは、前記クランクピンに対して前記支軸を上方に位置させて、前記ベース架に対して前記連結架が上昇することで、前記底板を床面から所定の高さに維持でき、
前記クランクハンドルを他方の方向に回動したときは、前記クランクピンに対して前記支軸を下方に位置させて、前記ベース架に対して前記連結架が下降することで、前記底板を床面に着地させる、
請求項1から4のいずれかに記載の精密機器輸送用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器輸送用台車に関する。特に、前面を開口し、外周の三面を枠で囲ったキャスター付きの台車であって、少なくともキャスターを有する精密機器を積み込んだ状態で容易に輸送でき、精密機器を安全かつ確実に内部に保持できる精密機器輸送用台車の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、「かご台車」と呼ばれるキャスター付きの箱形のロールボックスパレットが知られている。一般に、ロールボックスパレットは、荷物を積み込み自在な底板の前面を開口し、底板の周囲の三面を格子状の枠で囲っている。ロールボックスパレットは、荷物を積んだ状態で荷物を保管でき、荷物を積んだ状態でトラックなどに積載できる。ロールボックスパレットは、前面から荷卸しが容易であることなどから、多くの物流場面で使用されている。
【0003】
ところで、従来技術による「かご台車」は、底板が床面から所定の高さに配置されている。このため、荷物を床面に降ろすときに、労力を要するという不具合があった。このような不具合を解消するため、通常、底板を床面から所定の高さに維持でき、荷物を床面に降ろすときは、底板が床面に着地自在な「かご台車」が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術による「かご台車」は、手動操作により荷下ろしが容易であるが、「かご台車」を用いて、電子化された精密機器を出荷地から納品先に輸送する場合には、この精密機器を安全かつ確実に内部に保持できることが求められる。
【0006】
手動操作により精密機器の荷下ろしが容易であると共に、精密機器を安全かつ確実に内部に保持できる精密機器輸送用台車が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、手動操作により精密機器の荷下ろしが容易であると共に、精密機器を安全かつ確実に内部に保持できる精密機器輸送用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、複数の第1キャスターを底部に有する精密機器を内部に収容自在な精密機器輸送用台車であって、複数の第2キャスター底部に取り付けたベース架と、ベース架と昇降自在に連結した連結架で精密機器輸送用台車を構成し、連結架には、一片が精密機器の後面に当接できると共に、他片が精密機器の側面方向から精密機器を挟持できる一対の挟持部材を設けることで、精密機器を安全かつ確実に内部に保持できると考え、これに基づいて、以下のような新たな精密機器輸送用台車を発明するに至った。
【0009】
(1)本発明による精密機器輸送用台車は、複数の第1キャスターを底部に有する精密機器を内部に収容自在に前面を開口し、外周の三面を枠で囲った移動自在な精密機器輸送用台車であって、所定の間隔を設けて略平行に配置され、複数の第2キャスターを底部に取り付けた一対の第1下枠部材を有するベース架と、前記ベース架と昇降自在に連結した一対の第2下枠部材を有し、底板を中央部に配置した箱状の連結架と、を備え、前記連結架は、前記第2下枠部材の前部から起立した前枠部材、前記第2下枠部材の後部から起立し、前記前枠部材と略平行に延びる後枠部材、及び、前記前枠部材と前記後枠部材の先端部同士を連結した上枠部材で構成した一対の側枠と、一対の前記側枠の後枠部材同士を連結し、前記底板と略平行に配置した一つ以上の横リブと、一片と他片をL字状に屈曲した挟持部材であって、前記横リブに沿って移動でき、一片が前記精密機器の後面に当接できると共に、他片が前記精密機器の側面方向から前記精密機器を挟持できる一対の挟持部材と、を有している。
【0010】
(2)前記連結架は、一対の前記挟持部材を互いに近づける、又は離間できるねじ式ジャッキ装置を更に備えていることが好ましい。
【0011】
(3)前記連結架は、一対の前記前枠部材の間に着脱自在に掛け渡したサイドバーを備え、前記サイドバーは、前記前枠部材から前記後枠部材に向けて段階的に設置できることが好ましい。
【0012】
(4)前記底板は、その前後方向に移動自在に配置され、前記精密機器の第1キャスターを制止できる一対のバー状の車輪止めと、前記車輪止めに連結し、前記第1キャスターの横滑りを抑制する一組のコマ部材と、を有していることが好ましい。
【0013】
(5)前記第2キャスターに備わる車輪を制動自在なブレーキ装置を更に備え、前記ブレーキ装置は、前記第2キャスターの車輪の外周に向かって進退自在なブレーキピンと、前記ブレーキピンを前記車輪の外周に向かって力を付勢する圧縮コイルばねと、前記ブレーキピンと連結し、一部を前記前枠部材に沿って昇降自在に配置したリンク機構と、前記リンク機構の操作端部に配置したベルクランクからなる操作レバーと、を有し、前記操作レバーを前記前枠部材に向かって一方の方向に回動した状態では、前記リンク機構を介して、前記ブレーキピンの先端縁を前記第2キャスターの車輪の外周から離反でき、前記操作レバーを前記前枠部材から離間する方向に解放した状態では、前記圧縮コイルばねに付勢されて、前記ブレーキピンの先端縁が前記第2キャスターの車輪の外周を押圧していることが好ましい。
【0014】
(6)本発明による精密機器輸送用台車は、前記連結架の両側面に配置され、前記ベース架に対して前記連結架を昇降させる一組のてこクランク機構を更に備え、前記第1下枠部材は、略平行に立設した一対の立設架を有し、前記第2下枠部材は、これらの立設架をスライド自在に案内する開口を有し、前記てこクランク機構は、前記連結架と一体に昇降自在な支軸を前記連結架の両側面に支持したクランクシャフトと、前記クランクシャフトを手動で回動させるクランクハンドルと、前記支軸から前記クランクハンドルと反対方向に偏心した位置に配置したクランクピンと、を有し、前記立設架は、前記クランクピンを内部の矩形開口に遊動自在に収容した角筒状の継手を上部に有し、前記クランクハンドルを一方の方向に回動したときは、前記クランクピンに対して前記支軸を上方に位置させて、前記ベース架に対して前記連結架が上昇することで、前記底板を床面から所定の高さに維持でき、前記クランクハンドルを他方の方向に回動したときは、前記クランクピンに対して前記支軸を下方に位置させて、前記ベース架に対して前記連結架が下降することで、前記底板を床面に着地させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による精密機器輸送用台車は、複数の第1キャスターを底部に有する精密機器を内部に収容自在な精密機器輸送用台車であって、複数の第2キャスターを底部に取り付けたベース架と、ベース架と昇降自在に連結した連結架を備え、連結架は、一片が精密機器の後面に当接できると共に、精密機器の側面方向から精密機器を挟持できる一対の挟持部材を有しているので、精密機器を安全かつ確実に内部に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による精密機器輸送用台車の構成を示す平面図である。
【
図2】前記実施形態による精密機器輸送用台車の構成を示す正面図である。
【
図3】前記実施形態による精密機器輸送用台車の構成を示す右側面図である。
【
図4】前記実施形態による精密機器輸送用台車の構成を示す左側面図である。
【
図5】前記実施形態による精密機器輸送用台車の構成を示す背面図である。
【
図8】前記実施形態による精密機器輸送用台車に備わる「てこ」クランク機構を拡大した正面図である。
【
図10】前記実施形態による精密機器輸送用台車に備わる「てこ」クランク機構の構成を示す斜視図である。
【
図11】前記実施形態による精密機器輸送用台車に備わる「てこ」クランク機構を拡大した斜視分解組立図である。
【
図12】
図9の状態変化図であり、クランクハンドルを水平状態に配置した状態図である。
【
図13】
図12の状態変化図であり、クランクハンドルを下方に配置した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[精密機器輸送用台車の構成]
最初に、本発明の一実施形態による精密機器輸送用台車の全体構成を説明する。
【0018】
(全体構成)
次に、本発明の一実施形態による精密機器輸送用台車の全体構成を説明する。
図1から
図7を参照すると、本発明の一実施形態による精密機器輸送用台車(以下、台車と略称する)10は、複数の第1キャスター1cを底部に有する精密機器Epを内部に収容できる。台車10は、前面を開口し、外周の三面を枠で囲っている。そして、台車10は、ベース架1と箱状の連結架2を備えている。
【0019】
図1から
図7を参照すると、ベース架1は、一対の角パイプからなる第1下枠部材11・11を有している(
図2参照)。一対の第1下枠部材11・11は、台車10の前後方向に延びている(
図3又は
図4参照)。一対の第1下枠部材11・11は、所定の間隔を設けて略平行に配置されている(
図1又は
図2参照)。又、第1下枠部材11は、その前後に一組の第2キャスター2c・2cを取り付けている(
図3又は
図4参照)。
【0020】
図1から
図7を参照すると、連結架2は、一対の角パイプからなる第2下枠部材21・21を有している(
図2参照)。一対の第2下枠部材21・21は、ベース架1と昇降自在に連結している。又、連結架2は、略矩形の底板2bを中央部に配置している(
図7参照)。
【0021】
図1から
図6を参照すると、連結架2は、対向配置した一対の側枠2s・2sを備えている。側枠2sは、前枠部材22s、後枠部材23s、及び、上枠部材21sで構成している。
【0022】
図1から
図6を参照すると、前枠部材22sは、第2下枠部材21の前部から起立している(
図3又は
図4参照)。後枠部材23sは、第2下枠部材21の後部から起立している(
図3又は
図4参照)。又、後枠部材23sは、前枠部材23と略平行に延びている。上枠部材21sは、前枠部材22sと後枠部材23sの先端部同士を連結している(
図3又は
図4参照)。又、一対の上枠部材21s・21sは、一組の横リブ21r・21rで着脱自在に連結されている(
図1参照)。
図3又は
図4を参照すると、実体として、側枠2sは、角パイプをU字状に折り曲げており、前枠部材22s、上枠部材21s、及び、後枠部材23sは連続している。
【0023】
又、
図3から
図6を参照すると、連結架2は、一組の横リブ22r・22rを備えている。横リブ22rは、一対の側枠2sの後枠部材23s同士を連結している。又、一組の横リブ22r・22rは、所定の間隔を設けて、底板2と略平行に配置している。
【0024】
図5又は
図6を参照すると、連結架2は、一対の挟持部材41・41を備えている。挟持部材41は、一片411と他片412をL字状に屈曲している(
図6参照)。挟持部材41は、その内面側に緩衝部材41bを貼着している。挟持部材41は、クランク状に屈曲したブラケット4brを一片411に取り付けている(
図6参照)。ブラケット4brは、横リブ22rをスライド自在に保持している(
図3参照)。これにより、挟持部材41は、横リブ22rに沿って移動できる。
【0025】
図5又は
図6を参照すると、挟持部材41の一片411は、緩衝部材41bを介して、精密機器Epの後面に当接できる。又、一対の挟持部材41の他片412・412は、緩衝部材41bを介して、精密機器Epの側面方向から精密機器Epを挟持できる(
図6参照)。
【0026】
図1から
図6を参照すると、実施形態による台車10は、複数の第1キャスター1cを底部に有する精密機器Epを内部に収容自在な精密機器輸送用台車であって、複数の第2キャスター2cを底部に取り付けたベース架1と、ベース架1と昇降自在に連結した連結架2を備え、連結架2は、一片411が精密機器Epの後面に当接できると共に、他片412が精密機器Epの側面方向から精密機器Epを挟持できる一対の挟持部材41・41を有しているので、精密機器Epを安全かつ確実に内部に保持できる。
【0027】
(ベース架の構成)
次に、実施形態によるベース架1の構成を説明する。
図3又は
図4を参照すると、ベース架1は、第1下枠部材11の中央部に軸棒13を立設している。軸棒13は、第2下枠部材21に向かって突出している。軸棒13は、圧縮コイルばね13sを外装している。
【0028】
一方、
図3又は
図4を参照すると、第2下枠部材21は、C字状のブラケット23bを上面に固定している。
図3を参照すると、圧縮コイルばね13sの一端部は、第1下枠部材11の上面に当接している。一方、圧縮コイルばね13sの他端部は、ブラケット23bの内壁に当接している。
【0029】
このように、
図3又は
図4を参照すると、ベース架1は、一対の圧縮コイルばね13s・13sで連結架2を支持している。連結架2を一対の圧縮コイルばね13s・13sで支持することで、後述するクランクハンドル32(
図5参照)を回動したときの衝撃を緩和できる。又、台車10を移送するときの衝撃を緩和できる。
【0030】
(連結架の構成)
次に、実施形態による連結架2の構成を説明する。
図1から
図6を参照すると、連結架2は、一対の骨組みした側枠2s・2sを備えている。一対の側枠2sの上枠部材21s・21sには、一組の横リブ22r・22rが着脱自在に横架している。これにより、一対の側枠2sの拡がりを抑制できる(
図1又は
図2参照)。
【0031】
図3又は
図4を参照すると、側枠2sは、一対の角パイプからなる縦リブ24r・24rを更に有している。縦リブ24rは、その上端部を上枠部材21sに溶接などで接合している。又、縦リブ24rは、その下端部側を第2下枠部材21にブラケットBrで固定している。更に、縦リブ24rは、第1下枠部11を通過していると共に、下端部にアングル部材2aを着脱自在に固定している。一対のアングル部材2a・2aには、底板2bを着脱自在に固定できる(
図7参照)。
【0032】
(ねじ式ジャッキ装置)
次に、実施形態による台車10に備わるねじ式ジャッキ装置の構成を説明する。
図3から
図5を参照すると、連結架2は、一対のねじ式ジャッキ装置(以下、ジャッキと略称する)5・5を備えている。
図5を参照すると、一対のジャッキ5・5は、左右対称に配置しているので、右側のジャッキ5を代表して、ジャッキ5の構成を以下説明する。
【0033】
図5を参照すると、ジャッキ5は、第1リンク対51p、第2リンク対52p、及び、スクリューロッド53を備えている。第1リンク対51pは、基部51を介して、ピンにより回動自在に連結した一対のリンクアーム51r・51rを有している。同様に、第2リンク対52pは、受け座52を介して、ピンにより回動自在に連結した一対のリンクアーム52r・52rを有している。
【0034】
図5を参照すると、ジャッキ5は、第1リンク対51pと第2リンク対52pが、保持用連結部54と作動用連結部55を介して、パンタグラフ状に連結されている。そして、ジャッキ5は、保持用連結部54と作動用連結部55の間隔がスクリューロッド53の回転操作により、拡縮自在に構成している。
【0035】
図3から
図5を参照すると、スクリューロッド53の一端部(
図5の上側)は、保持用連結部54に対して、回動自在にかつ軸心方向には移動しないよう保持されている。又、スクリューロッド53の一端部は、保持用連結部54から上側へ突き出た位置に回転操作部56を設けている。一方、スクリューロッド53の他端部(
図5の下側)側は、作動用連結部55に螺合されている。これにより、スクリューロッド53の回転運動を作動用連結部55の進退運動に変換できる。
【0036】
図5を参照すると、基部51は、挟持部材41の他片412(
図6参照)に固定されている。一方、
図3から
図5を参照すると、受け座52は、取付板5bに固定されている。なお、取付板5bは、後枠部材23sと縦リブ24rに跨って固定されている(
図3又は
図4参照)。
【0037】
図5を参照して、回転操作部56を操作して、スクリューロッド53を一方の方向に回転すると、挟持部材41を後枠部材23sに向かって移動できる。一方、回転操作部56を操作して、スクリューロッド53を他方の方向に回転すると、挟持部材41を後枠部材23sから離れる方向に向かって移動できる。このように、回転操作部56を操作することで、精密機器Epの横幅に対応して、一対の挟持部材41・41の間隔を調整できる。
【0038】
図3から
図5を参照すると、ジャッキ5の回転操作部56は、C字状のブラケット56bと棒状のハンドル56hを備えている。ブラケット56bは、スクリューロッド53の一方の端部と回転自在に連結している。スクリューロッド53の一方の端部に対して、ブラケット56bを回動することで、ブラケット56bの内部にリンクアーム51rを導入できる。これにより、スクリューロッド53が回転することを阻止できる。
【0039】
図3から
図5を参照すると、ハンドル56hは、その中央部がブラケット56bの外面に溶接などで接合されている。長尺のハンドル56hをブラケット56bに取り付けることで、スクリューロッド53の回転トルクを軽減できる。
【0040】
(サイドバーの構成)
次に、実施形態による台車10に備わるサイドバー6の構成を説明する。
図2から
図4を参照すると、連結架2は、円柱状のサイドバー6を備えている。サイドバー6は、一対の前枠部材22s・22sの間に着脱自在に掛け渡している(
図2参照)。一対の前枠部材22s・22sの間に、サイドバー6を掛け渡すことで、精密機器Epが台車10から脱落することを抑制できる。サイドバー6を台車10から撤去した状態では、精密機器Epを容易に積み込むことができる。
【0041】
一方、
図2から
図4及び
図6を参照すると、連結架2は、サイドバー6の両端部から突出した軸部6s・6sを受け入れ自在な一対の受け入れ金具25・25を有している(
図2参照)。受け入れ金具25は、前枠部材22sから縦リブ24に亘り、水平状態に配置されている(
図3又は
図4参照)。そして、受け入れ金具25は、前枠部材22s及び縦リブ24に固定されている。
【0042】
図3又は
図4を参照すると、受け入れ金具25は、複数の溝251を受け入れ板25bの上面から切り欠いている。これらの溝251は、所定のピッチで配列されている。これらの溝251には、サイドバー6の軸部6sを選択的に導入できる。
図3又は
図4に示した状態では、サイドバー6の軸部6sは、最前列の溝251に導入されている。
【0043】
図2から
図4及び
図6を参照して、精密機器Epの奥行きに対応して、任意の溝251にサイドバー6の軸部6sを導入することで、一対の挟持部材41の一片411・411とサイドバー6で、精密機器Epを前後方向に保持できる(
図6参照)。なお、サイドバー6は、その外周に緩衝部材6bを取り付けている(
図2又は
図6参照)。
【0044】
このように、
図2から
図4及び
図6を参照すると、サイドバー6は、前枠部材22sから後枠部材23sに向けて、精密機器Epの奥行きに対応して、段階的に設置できる。又、
図2から
図4を参照して、前枠部材22s及び一方の縦リブ24rに対する(
図3又は
図4参照)、受け入れ金具25の高さ方向の固定位置を変更することで、サイドバー6の高さ方向の位置を段階的に設定できる(
図2参照)。
【0045】
又、
図2を参照すると、受け入れ金具25は、受け入れ板25bに対して、回転自在に連結した蓋部材25aを備えている。任意の溝251にサイドバー6の軸部6sを導入後に、蓋部材25aを回転して、蓋部材25aが受け入れ板25bの溝251を閉鎖することで、サイドバー6の脱落を防止できる。
【0046】
更に、
図2又は
図3を参照すると、サイドバー6は、その軸部6sから遠心方向に突出したピン部6pを有している。一方、受け入れ金具25は、ピン部6pが挿通自在な孔(図示せず)を底面に開口している。この孔は、溝251のピッチに対応して開口している。サイドバー6の軸部6sを任意の溝251に導入すると共に、この孔にピン部6pを挿通することで、サイドバー6の軸回りの回転を抑制できる。
【0047】
(底板の構成)
次に、実施形態による台車10に備わる底板2bの構成を説明する。
図1から
図5及び
図7を参照すると、底板2bは、一対のバー状の車輪止め71・71と一対一組のコマ部材72・72を備えている。
【0048】
図7を参照すると、底板2bは、その前後方向に延びる一対一組の長穴h1・h1を開口している。ボルト部材を底板2bの底面側から長穴h1に挿通し、車輪止め71の両端部に開口したボルト穴にボルト部材を挿通し、ボルト部材に蝶ナットを締結することで、車輪止め71を底板2bに固定できる。蝶ナットを弛めることで、底板2bに対して車輪止め71を前後方向に移動できる。精密機器Epの第1キャスター1cの奥行き方向のピッチに対応して、車輪止め71を底板2bに固定することが好ましい。
【0049】
図1から
図5を参照すると、底板2bは、前後方向に移動自在に配置された一対の車輪止め71・71を備えている。これにより、精密機器Epの第1キャスター1cの前後方向に移動を制止できる。
【0050】
図7を参照すると、一対のコマ部材72・72は、車輪止め71の長手方向に沿って移動できる。一対のコマ部材72・72は、車輪止め71の側面から突出した状態で配置されている。コマ部材72を車輪止め71に締結する一対の蝶ナット72b・72bを弛めることで、コマ部材72を車輪止め71の長手方向に沿って移動できる。精密機器Epの第1キャスター1cの幅方向のピッチに対応して、コマ部材72を車輪止め71に固定することが好ましい。
【0051】
図1から
図5及び
図7を参照すると、底板2bは、車輪止め71の長手方向に沿って移動自在な一対のコマ部材72・72を備えている。これにより、精密機器Epの第1キャスター1cの左右方向に移動を制止できる。つまり、第1キャスター1cの横滑りを抑制できる。
【0052】
(ブレーキ装置の構成)
次に、実施形態による台車10に備わるブレーキ装置8の構成を説明する。
図3又は
図4を参照すると、台車10は、一対のブレーキ装置8・8を備えている。ブレーキ装置8は、第2キャスター2cに備わる車輪2wを制動できる。
【0053】
図3又は
図4を参照すると、ブレーキ装置8は、ブレーキピン81pと圧縮コイルばね81sを備えている。又、ブレーキ装置8は、複数のリンク部材を連結したリンク機構82とベルクランクで構成した操作レバー83を備えている。
【0054】
図3又は
図4を参照すると、ブレーキピン81pは、第1下枠部材11から立設した一対の立設架12・12の内の前方側の立設架12の内部に配置されている。ブレーキピン81pは、第2キャスター2cの車輪2wの外周に向かって進退自在に配置されている。ブレーキピン81pは、その先端部が第2キャスター2cを構成する取付座から出没できる。
【0055】
図3又は
図4を参照すると、圧縮コイルばね81sは、ブレーキピン81pを車輪2wの外周に向かって力を付勢している。
【0056】
図3又は
図4を参照すると、リンク機構82は、第1リンク部材821、第2リンク部材822、及び、第3リンク部材823を相互に連結している。第1リンク部材821は、その中間部がブレーキピン81pの中間部と回動自在に連結している。
【0057】
図3又は
図4に示した状態では、第1リンク部材821は、一端部に対して他端部が下り傾斜している。そして、ブレーキピン81pの先端部は、車輪2wの外周を押圧している。第1リンク部材821の他端部を引き上げることで、圧縮コイルばね81sに抗して、ブレーキピン81pを上昇でき、ブレーキピン81pの先端部を車輪2wの外周から離反できる。
【0058】
図3又は
図4を参照すると、第2リンク部材822は、前枠部材22sに沿って昇降自在に配置されている。第2リンク部材822は、枠部82cを下端部に形成している。枠部82cは、第1リンク部材821の他端部と遊びをもって連結している。第2リンク部材822を上昇させることで、第1リンク部材821の他端部を引き上げることができる。
【0059】
図3又は
図4を参照すると、第3リンク部材823は、その一端部が第2リンク部材822の上端部と回動自在に連結していると共に、他端部が操作レバー83の短片832と回動自在に連結している。第3リンク部材823は、操作レバー83の回転運動を第2リンク部材822の直線運動に変換している。
【0060】
図3又は
図4を参照すると、操作レバー83は、その支点が前枠部材22sと回動自在に連結している。
図3又は
図4に示した状態では、操作レバー83の長片831は、前枠部材22sから離間している。操作レバー83の長片831を前枠部材22sに向かって一方の方向に回動した状態では(
図3又は
図4の想像線参照)、リンク機構82を介して、ブレーキピン81pの先端縁を第2キャスター2cの車輪2wの外周から離反できる。つまり、第2キャスター2cの制動を解除できる。
【0061】
一方、
図3又は
図4を参照して、操作レバー83を前枠部材22sから離間する方向に解放した状態では、圧縮コイルばね81sに付勢されて、ブレーキピン81pの先端縁が第2キャスター2cの車輪2wの外周を押圧している。つまり、第2キャスター2cを制動できる。
【0062】
なお、
図3又は
図4を参照すると、前枠部材22sは、ロック装置84を操作レバー83の上方に固定している。操作レバー83がロック装置84に係合することで、第2キャスター2cの制動を解除できる。操作レバー83がロック装置84から解放されることで、第2キャスター2cを制動できる。又、ブレーキピン81pの先端部は、円錐形に形成することが好ましい。これにより、車輪2wの向きにかかわらず、ブレーキピン81pの円錐面が車輪2wの外周面に確実に押圧できる。
【0063】
図3又は
図4を参照すると、実施形態によるブレーキ装置8は、第2キャスター2cの制動状態と、第2キャスター2cの制動解除状態を手動操作により、容易に切替えることが好ましい。なお、作業員が台車10の前方に対面して、台車10を移動するので、台車10の前方にブレーキ装置8を設けることが好ましい。
【0064】
(「てこ」クランク機構の構成)
次に、実施形態による台車10に備わる「てこ」クランク機構の構成を説明する。
図1から
図5及び
図8から
図13を参照すると、台車10は、一組の「てこ」クランク機構3・3を備えている。
【0065】
図1から
図5及び
図8から
図13を参照すると、一組の「てこ」クランク機構3・3は、連結架2の両側面に配置されている。一組の「てこ」クランク機構3・3は、ベース架1に対して連結架2を昇降させることができる。
【0066】
図3又は
図4を参照すると、第1下枠部材11は、略平行に立設した一対の立設架12・12を有している。一方、第2下枠部材21は、これらの立設架12・12をスライド自在に案内する間隔を設けている。これにより、ベース架1に対して、連結架2を高さ方向のみに移動できる。
【0067】
図8から
図13を参照すると、「てこ」クランク機構3は、クランクシャフト31、クランクハンドル32、及び、クランクピン33を有している。クランクシャフト31は、断続した支軸31sを有している。支軸31sは、連結架2と一体に昇降できる。又、支軸31sは、連結架2の両側面に回動自在に支持されている。
【0068】
図2から
図5を参照すると、クランクハンドル32は、クランクシャフト31を手動で回動できる。
図8から
図13を参照すると、クランクピン33は、支軸31sの中心からクランクハンドル32と反対方向に偏心した位置に配置されている。
【0069】
一方、
図5又は
図6から
図13を参照すると、立設架12は、角筒状の継手12jを上部に固定している。継手12jは、内部の矩形開口12kにクランクピン33を遊動自在に収容している(
図9又は
図11から
図13参照)。
【0070】
図2又は
図5に示すように、クランクハンドル32を上方に回動したときは、クランクピン33に対して支軸31sを上方に位置させている。そして、ベース架1に対して連結架2が上昇することで、底板2bを床面FLから所定の高さに維持できる。
【0071】
一方、
図2又は
図5に示した状態から、クランクハンドル32を下方に回動したときは、クランクピン33に対して支軸31sを下方に位置させている。そして、ベース架1に対して連結架2が下降することで、底板2bを床面FLに着地又は近接できる。
【0072】
図1から
図10を参照すると、実施形態による台車10は、底部に複数の第2キャスター2cを取り付けたベース架1、ベース架1と昇降自在に連結した連結架2、及び、ベース架1に対して連結架2を昇降させる「てこ」クランク機構3を備え、クランクハンドル32を一方の方向に回動したときは、底板2bを床面FLから所定の高さに維持できるので(
図2又は
図3参照)、精密機器Epを容易に移動できる。一方、クランクハンドル32を他方の方向に回動したときは、底板2bを床面FLに着地又は近接させるので、精密機器Epを床面FLに降ろすことが容易である。
【0073】
(ハンドル押え具の構成)
次に、実施形態によるハンドル押え具26の構成を説明する。
図2から
図4を参照すると、側枠2sは、ハンドル押え具26を更に備えている。ハンドル押え具26は、箱部261とL字状の押え板262で構成している。
【0074】
図3又は
図4を参照すると、側枠2sは、略平行に配置した一対の細線部材22p・22pを備えている。これらの細線部材22p・22pは、その一端部をブラケット23bの上面に溶接で接合している。又、これらの細線部材22p・22pは、その他端部を上枠部材21sに溶接で接合している。つまり、一対の細線部材22p・22pは、高さ方向に略平行に延びている。
【0075】
図3又は
図4を参照すると、箱部261は、一対の細線部材22p・22pで案内される穴(図示せず)を開口している。つまり、ハンドル押え具26は、高さ方向に移動自在に配置されている。
【0076】
図3又は
図4に示した状態では、一対の細線部材22p・22pの間に掛け渡した、図示しないストッパ部材が箱部261に当接しているので、ハンドル押え具26は、下降することなく、停止している。
【0077】
図3又は
図4に示した状態から、ハンドル押え具26を上昇しておく。次に、クランクハンドル32を上方に回動し、ハンドル押え具26を解放すると、ハンドル押え具26が下降して、押え板262がクランクハンドル32の把持バー32bを外側から覆うことで(
図2参照)、クランクハンドル32の傾倒を防止できる。
【0078】
このように、実施形態による台車10は、クランクハンドル32を一方の方向に回動した状態を維持するハンドル押え具26を備えている。
【0079】
引き続き、実施形態による「てこ」クランク機構3の構成を説明する。なお、
図2又は
図5を参照すると、実施形態による「てこ」クランク機構3は、一対のクランクシャフト31・31を左右対称に配置しているので、主に、右側のクランクシャフト31を代表して、「てこ」クランク機構3の構成を説明する。
【0080】
図8から
図13を参照すると、クランクシャフト31は、一対のJ字状のクランク板31c・31cと一対の支軸31s・31sで構成している。クランク板31cは、長片311と短片312を対向配置させると共に、長片311と短片312の基端部を連結板313で連結している。実体として、クランク板31cは、帯板部材を二回直角に折り曲げ加工して得ることができる。
【0081】
図7から
図12を参照すると、一対のクランク板31c・31cは、それらの長片311・311が所定の間隔を設けて対向配置されている。一対の長片311・311は、それらの先端部にクランクピン33をボルト部材で締結している。
【0082】
図8から
図13を参照すると、支軸31sは、その両端面が長片311の内壁と短片312の内壁に溶接などで接合されている。一対の支軸31s・31sは、一対の長片311・311で断絶しているが、それらの仮想の回転中心は一致するように配置している。
【0083】
図8から
図13を参照すると、クランク板31cの連結板313は、角パイプからなる連結ポール32pに溶接などで接合している。連結ポール32pは、クランクハンドル32の一部を構成している。
【0084】
図3又は
図8から
図13を参照すると、側枠2s及び縦リブ24rは、一組のL字状の軸受部材34・34を備えている。軸受部材34は、その一片の先端部側にU字状の切り欠き34uを切り欠いている(
図11参照)。切り欠き34uには、支軸31sをその外周方向から導入できる。
【0085】
図8又は
図11を参照すると、一方の軸受部材34は、その他片を前枠部材22sに溶接などで接合している。他方の軸受部材34は、その他片を縦リブ24rに溶接などで接合している。つまり、一組の軸受部材34・34は、支軸31sを導入自在に、側枠2s又は縦リブ24rに固定されている(
図2又は
図5参照)。
【0086】
図8から
図111参照すると、「てこ」クランク機構3は、抜け止め板35を更に備えている。抜け止め板35は、その中央部にU字状の切り欠き35uを切り欠いている(
図11参照)。切り欠き35uには、支軸31sをその外周方向から導入できる。
【0087】
図8から
図11を参照して、クランクシャフト31の支軸31sを軸受部材34に導入後に、抜け止め板35を支軸31sに挿入し、抜け止め板35をボルトとナットで軸受部材34に締結することで、クランクシャフト31を側枠2sと一体に昇降自在に支持できる。又、クランクシャフト31を回動自在に側枠2sに支持できる。
【0088】
(「てこ」クランク機構の作用)
次に、実施形態による台車10の動作を説明しながら、「てこ」クランク機構3の作用を説明する。
図1から
図5を参照して、通常、台車10は、一組のクランクハンドル32・32が上方に回動した状態で保持されている。
【0089】
図1から
図5を参照すると、台車10は、底板2bを床面FLから所定の高さに維持しているので、底板2bに荷物を搭載した状態で、台車10を容易に移動できる。ベース架1の底部の四隅に、転動容易な第2キャスター2cを取り付けているので、台車10を容易に移動できる。
【0090】
一方、底板2bから精密機器Epを下ろすときは、底板2bを床面FLに着地又は近接させると、精密機器Epの引き出しが容易になる。この場合、
図2に示した状態から、一方のクランクハンドル32を下方に回動した後に、他方のクランクハンドル32を下方に回動することで、底板2bを床面FLに着地又は近接できる。
【0091】
図9又は
図12及び
図13に示すように、クランクピン33と継手12jは、十分な余裕をもって遊動自在に連結しているので、一方のクランクハンドル32と他方のクランクハンドル32をそれぞれ独立して動作できる。
【0092】
次に、台車10の動作を「てこ」クランク機構3の構成により説明する。
図1から
図5に示すように、底板2bが床面FLから所定の高さに維持された状態では、連結架2の全荷重(荷物の重量を含む)は、四つのクランクピン33に分散される。つまり、連結架2は、四つの継手12jに支持されている(
図8から
図11参照)。
【0093】
図9を参照して、支軸31sを回動中心にクランクハンドル32を反時計方向に回動すると、クランクピン33は、矩形開口12kの右側に移動する。
図9を参照して、クランクピン33が矩形開口12kの右側に移動すると、支軸31sは、昇降方向のみに運動が規制されているので、クランクピン33の右側の移動に連動し、クランクピン33を支点に「てこの原理」で支軸31sが下降する。つまり、ベース架1に対して連結架2を下降できる。
【0094】
図9を参照して、クランクハンドル32を回動したときのクランクピン33の挙動は、必ずしも確定しない。クランクハンドル32を緩慢に回動したときは、連結架2の自重により、クランクピン33は、矩形開口12kの下内壁をスライドしながら右側に移動すると考えられる。一方、クランクハンドル32を急激に回動したときは、クランクピン33は、矩形開口12kの上内壁に当接した後に、矩形開口12kの下内壁をスライドしながら右側に移動すると考えられる。
【0095】
図8に示した状態から、クランクハンドル32を反時計方向に略90度、回動すると、
図12に示すように、支軸31sとクランクピン33を水平状態に一直線上に配置すると共、クランクピン33は、矩形開口12kの最も右側に移動している。
【0096】
図9に示した状態から、クランクハンドル32を反時計方向に略180度、回動すると、
図13に示すように、支軸31sは、クランクピン33の下側に移動している。そして、
図13に示した状態では、連結架2は、一対一組のクランクピン33・33で吊り下げられている。
【0097】
図2又は
図3に示した状態から、一対のクランクハンドル32・32を開いた状態に回動すると、ベース架1に対して連結架2を下降でき、底板2bを床面FLに着地又は近接できる。
【0098】
図13を参照して、支軸31sを回動中心にクランクハンドル32を時計方向に回動すると、クランクピン33は、矩形開口12kの右側に移動する。
図12を参照して、クランクピン33が矩形開口12kの右側に移動すると、支軸31sは、昇降方向のみに運動が規制されているので、クランクピン33の右側の移動に連動し、クランクピン33を支点に「てこの原理」で支軸31sが上昇する。つまり、ベース架1に対して連結架2を上昇できる(
図2又は
図3及び
図4参照)。
【0099】
図13に示した状態から、クランクハンドル32を時計方向に略90度、回動すると、
図12に示すように、支軸31sとクランクピン33を水平状態に一直線上に配置すると共、クランクピン33は、矩形開口12kの最も右側に移動している。
【0100】
図13に示した状態から、クランクハンドル32を時計方向に略180度回動すると、
図9に示すように、支軸31sは、クランクピン33の上側に移動している。そして、
図9に示した初期の状態では、連結架2は、一対一組のクランクピン33・33で支持されている(
図3又は
図4参照)。
【0101】
底板2bが床面FLに着地又は近接した状態から、初期の状態に復帰させるには、一組のクランクハンドル32・32を上方に回動すればよく、この場合、
図2から
図4を参照して、ハンドル押え具26を操作して、クランクハンドル32の傾倒を防止することが好ましい。
【0102】
又、
図2から
図4を参照すると、実施形態による台車10は、クランクハンドル32を一方の方向に回動した状態を維持するハンドル押え具26を更に備えているので、クランクハンドル32の傾倒を防止できる。
【0103】
更に、
図3又は
図4を参照すると、ベース架1は、連結架2を一対の圧縮コイルばね13s・13sで支持することで、クランクハンドル32を回動したときの衝撃を緩和できる。
【0104】
[精密機器輸送用台車の作用]
次に、実施形態による台車10の操作手順を説明しながら、台車10の作用及び効果を説明する。
図1から
図7を参照して、最初に、クランクハンドル32を操作して(
図3又は
図4参照)、底板2bを床面FLに着地又は近接しておく。この場合、操作レバー83を解放して、前部側の第2キャスター2cを制動しておくことが好ましい。又、前方側の一対のコマ部材72・72付き車輪止め71を底板2bから取り外しておくことが好ましい(
図7参照)。車輪止め71を乗り越えることなく、精密機器Epを底板2bに容易に搭載できる。
【0105】
次に、
図1から
図7を参照して、台車10の前方側から、精密機器Epを底板2bに搭載する。次に、一方のジャッキ5及び他方のジャッキ5を操作して(
図5参照)、精密機器Epの横幅に対応して、一対の挟持部材41・41の間隔を調整する(
図6参照)。この場合、緩衝部材41bを介して、精密機器Epの後面を挟持部材41の一片411に当接しておくことが好ましい。
【0106】
次に、
図2から
図4及び
図6を参照して、精密機器Epの奥行きに対応して、サイドバー6を一対の受け入れ金具25・25に掛け渡す。これにより、挟持部材41の緩衝部材41b及びサイドバー6の緩衝部材6bを介して、精密機器Epの前後方向及び左右方向の移動を抑制できる。
【0107】
次に、
図7を参照して、精密機器Epの第1キャスター1cの奥行き方向のピッチに対応して、一対の車輪止め71・71を底板2bに固定する。又、第1キャスター1cの幅方向のピッチに対応して、コマ部材72を車輪止め71に固定する。これにより、底板2bに対して、複数の第1キャスター1cを車輪止めできる。
【0108】
次に、
図1から
図7を参照して、クランクハンドル32を操作して(
図3又は
図4参照)、底板2bを床面FLから上昇させておく。次に、一組の操作レバー83・83を把持て、前部側の第2キャスター2cの制動を解除することで、精密機器Epを台車10の内部に収容した状態で、台車10を容易に移動できる。
【0109】
図1から
図6を参照すると、実施形態による台車10は、複数の第1キャスター1cを底部に有する精密機器Epを内部に収容自在な精密機器輸送用台車であって、複数の第2キャスター2cを底部に取り付けたベース架1と、ベース架1と昇降自在に連結した連結架2を備え、連結架2は、一片411が精密機器Epの後面に当接できると共に、他片412が精密機器Epの側面方向から精密機器Epを挟持できる一対の挟持部材41・41を有しているので、精密機器Epを安全かつ確実に内部に保持できる。
【0110】
又、
図3から
図5を参照すると、連結架2は、一対の挟持部材41・41を互いに近づける、又は離間できる一組のねじ式ジャッキ装置5・5を更に備えているので、精密機器Epの横幅に対応して、一対の挟持部材41・41を容易にかつ確実に移動できる。
【0111】
更に、
図2から
図4及び
図6を参照すると、連結架2は、一対の前枠部材22s・22sの間に着脱自在に掛け渡したサイドバー6を備え、サイドバー6は、前枠部材22sから後枠部材23sに向けて段階的に設置できるので、一対の挟持部材41・41と協働して、精密機器Epの前後方向の移動を安全かつ確実に制約できる。
【0112】
又、
図1から
図5及び
図7を参照すると、底板2bは、精密機器Epの第1キャスター1cを制止できる一対の車輪止め71・71と、第1キャスター1cの横滑りを抑制する一対一組のコマ部材72・72を備えているので、第1キャスター1cの前後方向に移動を制止できる。
【0113】
更に、
図3又は
図4を参照すると、台車10は、第2キャスター2cに備わる車輪2wを制動自在な一組のブレーキ装置8・8を更に備え、ブレーキ装置8は、車輪2wを制動又は解放できる手動操作可能な操作レバー83を前方に備えているので、第2キャスター2cの制動状態と、第2キャスター2cの制動解除状態を手動操作により、容易に切替えることができる。
【0114】
又、
図1から
図13を参照すると、実施形態による台車10は、底部に複数の第2キャスター2cを取り付けたベース架1、ベース架1と昇降自在に連結した連結架2、及び、ベース架1に対して連結架2を昇降させる「てこ」クランク機構3を備え、クランクハンドル32を一方の方向に回動したときは、底板2bを床面FLから所定の高さに維持できるので(
図2参照)、精密機器Epを容易に移動できる。一方、クランクハンドル32を他方の方向に回動したときは、底板2bを床面FLに着地させるので、精密機器Epを床面FLに降ろすことが容易である。
【0115】
本発明は、精密機器を安全かつ確実に輸送できる精密機器輸送用台車を開示したが、本発明による精密機器輸送用台車は、航空機用のカートに搭載できるように、外形寸法を設定しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0116】
1 ベース架
1c 第1キャスター
2 連結架
2b 底板
2c 第2キャスター
2s・2s 一対の側枠
10 台車(精密機器輸送用台車)
11・11 一対の第1下枠部材
21・21 一対の第2下枠部材
21s 上枠部材
22s 前枠部材
22r 横リブ
23s 後枠部材
41・41 一対の挟持部材
411 一片
412 他片
Ep 精密機器