(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】傾斜調整システム
(51)【国際特許分類】
B23B 21/00 20060101AFI20240123BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20240123BHJP
B23P 23/02 20060101ALI20240123BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240123BHJP
G01B 11/27 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B23B21/00 C
B23B25/06
B23P23/02 A
B23Q17/24 B
G01B11/27 Z
(21)【出願番号】P 2020073865
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】丹後 力
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153149(JP,A)
【文献】特開平10-15736(JP,A)
【文献】特開昭60-221245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 21/00,25/06;
B23P 23/02;
B23Q 17/24;
G01B 11/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部を介してコラムに支持され、切削工具が装着される主軸と、前記
接続部に着脱可能に設けられ、旋削工具が装着される旋削ユニットとを備える工作機械について、前記主軸と前記旋削ユニットとの平行出しを行う傾斜調整システムであって、
前記旋削ユニットに設けられ、前記主軸に対する前記旋削ユニットの前記旋削工具の傾きを変更する傾き変更機構と、
前記
主軸に対する前記旋削工具の傾きを取得する傾き取得部と、
前記傾き取得部の取得結果に基づいて、前記旋削ユニットの前記旋削工具が前記主軸に平行になるように前記傾き変更機構を制御する制御部と、
を備える、傾斜調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の傾斜調整システムであって、
前記旋削ユニットに設けられた被測定部の形状を予め決められた1以上の照射角度で照射するレーザによって測定するレーザ変位センサをさらに備え、
前記傾き取得部は、前記レーザ変位センサの測定結果に基づいて前記旋削ユニットの前記旋削工具の傾きを取得する、傾斜調整システム。
【請求項3】
請求項2に記載の傾斜調整システムであって、
前記工作機械は、前記主軸の軸方向に直交する支持面を有し、前記切削工具および前記旋削工具の少なくとも一方により加工される加工対象物を前記支持面により支持するテーブルをさらに備え、
前記制御部は、前記テーブルの前記支持面の法線方向に前記旋削工具の傾きを合わせるように前記傾き変更機構を制御することで、前記旋削ユニットの前記旋削工具を前記主軸に平行にする、傾斜調整システム。
【請求項4】
請求項1に記載の傾斜調整システムであって、
前記旋削ユニットに設けられるレベル計をさらに備え、
前記傾き取得部は、前記旋削ユニットの傾きとして、前記レベル計の検出結果を取得する、傾斜調整システム。
【請求項5】
請求項4に記載の傾斜調整システムであって、
前記接続部は、前記主軸の軸方向に直交する被取り付け面を有し、
前記旋削ユニットは前記被取り付け面に取り付けられる、傾斜調整システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の傾斜調整システムであって、
前記傾き変更機構は、前記旋削ユニットを前記工作機械に取り付ける複数のイモネジを回転させるモータを有し、
前記制御部は、前記モータの制御指令を出力することで、前記主軸に対する前記旋削ユニットの前記旋削工具の傾きを変更させる、傾斜調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜調整システムに関する。特に、工作機械の主軸と旋削ユニットとの平行出しを行う傾斜調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
主軸と、その近傍に設けられる旋削ユニットとを備える工作機械が提案されている。そのような工作機械の一例は、例えば特許文献1に開示されている。開示の工作機械では、旋削ユニットが、その位置および姿勢が変わらないように固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工作機械の構成では、主軸と旋削ユニットとの平行出しを行うことが難しい。そこで本発明は、主軸と旋削ユニットとの平行出しを容易に達成する傾斜調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様は、切削工具が装着される主軸と、前記主軸の近傍に着脱可能に設けられ、旋削工具が装着される旋削ユニットとを備える工作機械について、前記主軸と前記旋削ユニットとの平行出しを行う傾斜調整システムであって、前記旋削ユニットに設けられ、前記主軸に対する前記旋削ユニットの前記旋削工具の傾きを変更する傾き変更機構と、前記旋削ユニットの前記旋削工具の傾きを取得する傾き取得部と、前記傾き取得部の取得結果に基づいて、前記旋削ユニットの前記旋削工具が前記主軸に平行になるように前記傾き変更機構を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、主軸と旋削ユニットとの平行出しを容易に達成する傾斜調整システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態の傾斜調整システムが適用される工作機械を例示する図である。
【
図2】傾斜調整システムが適用された工作機械の構成図である。
【
図3】傾き変更機構が設けられた旋削ユニットの構成図である。
【
図4】レーザ変位センサを説明するための図である。
【
図5】
図5Aは、旋削ユニットの被測定部を例示する図である。
図5Bは、被測定部であるツールを工具ホルダに装着した旋削ユニットの構成図である。
【
図7】傾き取得部が取得する傾きを例示する図である。
【
図8】変形例3の傾斜調整システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の傾斜調整システムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0009】
[実施の形態]
実施の形態の傾斜調整システム10の説明に先立ち、傾斜調整システム10の適用対象となる工作機械12について、予備的に説明しておく。
【0010】
図1は、実施の形態の傾斜調整システム10が適用される工作機械12を例示する図である。
【0011】
工作機械12は、切削工具14が装着される主軸16と、主軸16を支持する主軸頭18と、主軸頭18を支持するコラム20と、旋削工具22が装着される旋削ユニット24とを備える。また、加工対象物Wを支持するテーブル26と、テーブル26を支持するサドル27とをさらに備える。
【0012】
主軸頭18は、接続部28によってコラム20に対し接続される。接続部28は、
図1のZ方向に沿って、コラム20に対し摺動可能に設けられる。この構成により、主軸頭18はZ方向に沿って移動可能である。
【0013】
なお、Z方向は重力方向に平行であるものとし、本実施の形態の主軸16の軸方向はこのZ方向(重力方向)に対し平行であるものとする。また、Z方向に直交する方向をY方向およびX方向とする。Y方向は
図1に示す矢印の通りであり、X方向は
図1の紙面の奥行手前方向である。
【0014】
主軸16は主軸頭18に支持されるため、主軸頭18と共にZ方向に沿って移動可能である。また、主軸16は、不図示のスピンドルモータに接続されている。そのスピンドルモータの駆動により、主軸16および主軸16に装着された切削工具14は、主軸16の軸A16を中心とするC16方向に回転可能となる。
【0015】
旋削ユニット24は、旋削工具22が装着されるものである。旋削ユニット24は、例えばキャプト方式の工具ホルダ30(
図3)を備えており、この工具ホルダ30に旋削工具22が装着される。旋削ユニット24は、主軸16の近傍に着脱可能に設けられる。
【0016】
図1の例示では、接続部28の下方(テーブル26)側の面であって、Z方向に直交(XY平面に平行)する被取り付け面28aに旋削ユニット24がネジ留めされている。この構成によれば、主軸16と同様に、接続部28の摺動によって旋削ユニット24をZ方向に沿って移動させることが可能である。なお、接続部28の下面は、その全面がZ方向に直交していなくてもよく、
図1のように、Z方向に直交しない(XY平面に対し傾斜する)面28bを有しても構わない。
【0017】
テーブル26は、Z方向に直交するX方向に沿って移動する移動テーブル32と、回転テーブル34とを有する。移動テーブル32上には付加軸装置33が設けられており、回転テーブル34は付加軸装置33上に設けられる。
【0018】
移動テーブル32のX方向に沿った移動は、例えば不図示のボールネジ機構を移動テーブル32に接続することによって実現される。
【0019】
回転テーブル34は、Z方向に平行な中心軸A34を中心とするC34方向に回転する。回転テーブル34は、加工対象物Wが載置(装着)される支持面34aを有する。この支持面34aはXY平面に延在する。回転テーブル34の回転は、例えば主軸16に接続されるものとは別の不図示のスピンドルモータを回転テーブル34に接続することによって実現される。
【0020】
付加軸装置33は、工作機械12が加工を実行する際に、回転テーブル34を適宜傾斜させる装置である。本実施の形態の付加軸装置33は、X方向に平行な中心軸A33を中心とする回転方向C33に沿って回転テーブル34を傾斜させることが可能である。
【0021】
サドル27は、Y方向に沿って移動可能に設けられる。サドル27のY方向に沿った移動は、例えば不図示のボールネジ機構をサドル27に接続することによって実現される。
【0022】
以上の工作機械12によれば、主軸16と共に切削工具14を回転させることで、テーブル26に支持された加工対象物Wに切削加工(マシニング)を施すことが可能である。また、回転テーブル34を回転させることで、回転テーブル34と共に回転する加工対象物Wに対し、旋削ユニット24に装着された旋削工具22による旋削加工を施すことが可能である。
【0023】
加工対象物Wと切削工具14との相対位置、および加工対象物Wと旋削工具22との相対位置は、移動テーブル32やサドル27の移動によって調整可能である。また、付加軸装置33によって回転テーブル34を傾斜させることで、切削工具14や旋削工具22を様々な角度から加工対象物Wにアプローチさせることが可能である。
【0024】
旋削ユニット24は接続部28に対して着脱可能であるため、旋削加工が不要である場合には取り外すことも可能である。
【0025】
ここで、以上のような工作機械12について検討する。同一の加工対象物Wに切削加工と旋削加工との両方を施す場合において良好な加工精度を達成するためには、旋削ユニット24の旋削工具22の軸A22と、主軸16の軸A16とが互いに平行であることが望ましい。ここで言う平行とは、主軸16の軸方向がXY平面に対し鉛直であれば、旋削工具22の軸方向もまたXY平面に対し鉛直である状態を指す。
【0026】
しかしながら、旋削ユニット24と主軸16との平行出し作業は、オペレータに高い作業精度を要求するものである。しかも、その平行出し作業は、少なくとも旋削ユニット24を工作機械12に設けるたびに行う必要がある。これらの事情を鑑みると、旋削ユニット24と主軸16との平行出し作業は、オペレータにとっては大きな負担である。
【0027】
以上を踏まえ、本実施の形態の傾斜調整システム10を説明する。
【0028】
図2は、傾斜調整システム10が適用された工作機械12の構成図である。なお、
図2では、工作機械12の構成要素について
図1で既に示した参照符号を、図示の簡素化のために一部割愛している。
【0029】
傾斜調整システム10は、主軸16と旋削ユニット24との平行出しを容易に達成するために提供されるシステムである。傾斜調整システム10は、傾き変更機構36と、レーザ変位センサ38と、制御装置40とを備える。
【0030】
傾き変更機構36は、主軸16に対する旋削ユニット24の旋削工具22の傾きを変更する機構である。以下、この傾きを単に旋削ユニット24の傾きとも記載する。
【0031】
図3は、傾き変更機構36が設けられた旋削ユニット24の構成図である。
【0032】
傾き変更機構36は、旋削ユニット24に設けられる。傾き変更機構36は、
図3に示すように、筐体42と、筐体42内に設けられる複数のモータ44とを備える。なお、筐体42は、旋削ユニット24の一部として旋削ユニット24と一体的に構成されてもよい。
【0033】
筐体42は、旋削ユニット24と接続部28の被取り付け面28aとを仲介するように、本実施の形態では旋削ユニット24の上側に設けられる。筐体42の上面である取り付け面42aには、複数のイモネジ46が設けられる。なお、本実施の形態の取り付け面42aは矩形状を有するが、これに限定されない。
【0034】
イモネジ46は、筐体42に設けられる軸受48に支持されると共に、接続部28の被取り付け面28aに設けられるネジ穴50に螺合する。軸受48は、自身が支持したイモネジ46が回転することを許容しつつ、イモネジ46の軸方向での移動を規制する。
【0035】
本実施の形態では、イモネジ46の総数を4とし、XY方向で互いに所定の間隔をおいて設けられる。
図3の例示ではXY方向で旋削ユニット24の上側の四隅に相当する位置にイモネジ46を1つずつ設けているが、複数のイモネジ46の配置はこれに限定されない。また、イモネジ46の総数は、複数である限りにおいて、4に限定されない。
【0036】
複数のモータ44は、複数のイモネジ46に一対一の関係で接続される。これにより、複数のイモネジ46の各々を個別的に回転させることができる。このような構成によれば、複数のモータ44を制御することによる旋削ユニット24の傾き変更が可能となる。すなわち、以上の傾き変更機構36の構成によれば、モータ44を駆動させることで、そのモータ44に接続されたイモネジ46が接続部28に対してネジ穴50の挿抜方向(Z方向)で相対移動する。この相対移動を、複数のイモネジ46の各々に別個に行わせることで、旋削ユニット24の接続部28に対する傾き、延いては主軸16に対する傾きを変更することが可能になる。
【0037】
なお、本実施の形態の複数のイモネジ46の各々には、Z方向での対接続部28の相対位置が異なることによる応力が印加されるが、その応力は十分に小さくイモネジ46を破損させる程ではないため、本実施の形態では無視する。
【0038】
複数のモータ44の各々は、本実施の形態ではサーボモータである。サーボモータは、その回転軸の回転を精度よく制御できることで知られる。傾き変更機構36のモータ44としてサーボモータを採用する構成は、複数のイモネジ46の各々の相対移動量を精度よく管理するうえで好ましい。
【0039】
図4は、レーザ変位センサ38を説明するための図である。
【0040】
レーザ変位センサ38は、予め決められた1以上の照射角度でレーザを発光部から受光部に向かって照射すると共に、該レーザを遮る物体の形状を、その遮ったことで生じる影に基づいて測定する検出装置(検出システム)である。
【0041】
レーザ変位センサ38は、例えば回転テーブル34の支持面34a上に設けられ、支持面34aの延在方向に平行なレーザを照射する。レーザ変位センサ38は回転テーブル34に着脱可能に設けられており、工作機械12で加工を行う際には回転テーブル34から取り外される。
【0042】
本実施の形態では、支持面34aがXY平面に延在した状態でレーザ変位センサ38が設けられるものとする。したがって、レーザ変位センサ38が照射するレーザは、XY平面に対して平行に照射されることとなる。以下、X方向に平行なレーザをレーザLXとし、Y方向に平行なレーザをレーザLYとする。
【0043】
なお、レーザ変位センサ38自体は一方向にレーザを照射することとし、照射方向を変えたい場合にはレーザ変位センサ38が設けられた回転テーブル34を適宜回転させることとしてもよい。これにより、実質的に、複数の照射方向でのレーザ照射を実現することができる。
【0044】
図5Aは、旋削ユニット24の被測定部52を例示する図である。
図5Bは、被測定部52であるツールを工具ホルダ30に装着した旋削ユニット24の構成図である。
【0045】
本実施の形態では、レーザ変位センサ38を、旋削ユニット24に設けられた被測定部52の形状を測定するために用いる。被測定部52は、例えば予め決められた形状を有する測定用ツールであって、旋削工具22と同様にキャプト方式の工具ホルダ30に装着可能に構成されており、その中心軸をA52とする。被測定部52の軸A52は、旋削ユニット24に旋削工具22が装着された場合における旋削工具22の軸A22に相当する。
【0046】
なお、
図5Aおよび
図5Bの被測定部52(測定用ツール)は概長尺状の形状を有するものであるが、被測定部52が有する予め決められた形状は、これに限定されない。
【0047】
レーザ変位センサ38で旋削ユニット24の被測定部52の形状を測定するときは、旋削ユニット24をZ方向でレーザ変位センサ38(テーブル26)の方に移動させることで、被測定部52にレーザLX、LYが照射されるようにする。これにより、レーザLXの照射によって被測定部52をX方向から観察した場合の形状が測定され、レーザLYの照射によって被測定部52をY方向から観察した場合の形状が測定される。このとき、被測定部52の全体形状を測定することは必須ではなく、例えば被測定部52のテーブル26側の先端部周辺の形状だけを測定するようにしてもよい。レーザ変位センサ38は、測定結果を制御装置40に出力する。
【0048】
【0049】
制御装置40は、傾き変更機構36を制御する装置である。制御装置40は、記憶部54と、演算部56と、アンプ58とを備える。なお、これらの構成要素(54、56、58)を備える制御装置40は、工作機械12による加工を数値制御する数値制御装置(CNCとも呼ばれる)と一体的なものとして構成されてもよい。
【0050】
記憶部54は、情報を記憶するものであって、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のハードウェアにより構成される。記憶部54は、所定の制御プログラム60を記憶する。制御プログラム60は、演算部56が読み取って実行可能なプログラムである。制御プログラム60には、モータ44の制御に必要な情報が規定される。
【0051】
また、記憶部54は、旋削ユニット24の旋削工具22が主軸16に対して平行である場合に前述のレーザ変位センサ38が被測定部52を測定することで得られる基準形状データ62を、さらに記憶する。この基準形状データ62は、実験により予め得ることが可能である。
【0052】
演算部56は、情報を演算処理するものであって、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアにより構成される。演算部56は、傾き取得部64と、制御部66とを備える。これらの各部は、演算部56が記憶部54の制御プログラム60を読み取って実行することにより実現される。
【0053】
傾き取得部64は、旋削ユニット24の旋削工具22の傾きを取得するものである。本実施の形態の傾き取得部64は、レーザ変位センサ38から入力される被測定部52の形状の測定結果に基づいて、旋削ユニット24の傾きを取得する。
【0054】
図7は、傾き取得部64が取得する傾きを例示する図である。
【0055】
傾き取得部64は例えば、
図7に示すように、X方向から被測定部52を観察した場合における被測定部52の形状の測定結果(破線SH1)と、同場合における記憶部54の基準形状データ62に基づく被測定部52の形状(鎖線SH2)とを照合する。そして、その差分に基づいて、X方向から被測定部52を観察した場合における軸A
52の傾き(α)を推定し、これをX方向から見た旋削ユニット24の傾きとして取得する。また、傾き取得部64は、これと同様にして、Y方向から被測定部52を観察した場合における旋削ユニット24の傾きも取得する。これにより、旋削ユニット24の傾きが取得される。
【0056】
制御部66は、旋削ユニット24の旋削工具22が主軸16に平行になるように傾き変更機構36を制御するものである。制御部66は、傾き取得部64が取得した傾きに基づいて、複数のモータ44のうちの少なくとも1つを駆動させる制御指令を生成する。その制御指令の生成過程では、例えば被測定部52の形状測定結果が
図7のSH2に一致するように駆動対象のモータ44が選択され、その回転軸の回転量が決定される。制御部66は、生成した制御指令をアンプ58に向けて出力する。
【0057】
アンプ58は、モータ44の駆動制御を担うものであって、制御部66から制御指令が入力される。アンプ58は、入力された制御指令に基づいて、駆動対象のモータ44を駆動させる。なお、
図6には例示のために複数のモータ44に接続された1つのアンプ58のみを示しているが、制御装置40は、複数のモータ44に一対一で接続できるように、複数のアンプ58を備えてもよい。
【0058】
以上が、本実施の形態の傾斜調整システム10の構成例である。この構成によれば、主軸16と旋削ユニット24との平行出しが容易に達成される。すなわち、本実施の形態の傾斜調整システム10によれば、レーザ変位センサ38の測定結果に基づいて傾き変更機構36のモータ44が駆動する。その結果、軸A22(軸A52)と軸A16とを容易に平行にすることができる。
【0059】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明された。上記実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0060】
以下、実施の形態に係る変形例について、具体的にいくつか説明する。ただし、以下では、実施の形態と重複する説明を適宜割愛することがある。
【0061】
(変形例1)
制御部66は、テーブル26の支持面34aの法線方向に旋削工具22の傾きを合わせるように傾き変更機構36を制御してもよい。
【0062】
例えば、基準形状データ62が用意されていなくても、レーザ変位センサ38により測定した被測定部52の形状に基づくことで、軸A52の延在方向を推定することが可能である。
【0063】
ここで、レーザ変位センサ38のレーザが支持面34aに平行に照射されることを前提とすれば、該レーザにより測定された被測定部52の形状から、軸A52の支持面34aに対する傾きを推定することが可能である。また、軸A16が支持面34aに対し鉛直になるように主軸16が設けられることを前提とすれば、支持面34aの法線方向に軸A52を合わせるように傾き変更機構36を制御することで、結果的に、主軸16と旋削ユニット24との平行出しが達成される。なお、支持面34aは、XY平面に対し平行であるとする。
【0064】
本変形例においても、旋削加工における加工精度を良好にすることが可能である。また、本変形例の場合は、基準形状データ62が不要となる。
【0065】
(変形例2)
実施の形態では、接続部28側に螺合するイモネジ46をモータ44で回転させることによって旋削ユニット24の旋削工具22の傾きを変更する傾き変更機構36の構成を説明した。傾き変更機構36の構成は、これに限定されない。
【0066】
例えば、傾き変更機構36は、接続部28と旋削ユニット24との間で伸縮する複数の伸縮機構(例えばシリンダ)を有するものであってもよい。制御部66は、複数の伸縮機構の各々の伸縮量を調整することで、旋削ユニット24の主軸16に対する傾きを変更することが可能である。
【0067】
(変形例3)
図8は、変形例3の傾斜調整システム10の構成図である。
【0068】
傾斜調整システム10は、旋削ユニット24に設けられるレベル計68をさらに備えてもよい。この場合において、制御装置40の傾き取得部64(
図6)は、レベル計68の検出結果を取得し、制御部66(
図6)はレベル計68の検出結果に基づいて傾き変更機構36を制御してもよい。
【0069】
レベル計68は、「水準器」や「水平器」とも呼ばれるものであり、水平に対する物体の傾斜角度を確認するために、該物体に取り付けられる器具である。本変形例のレベル計68には、検出した傾斜角度を示すデジタル信号を出力するものを用いる。
【0070】
レベル計68は、例えば
図8に示すように、傾き変更機構36の筐体42と旋削ユニット24とを仲介するように設けられる。なお、傾き変更機構36は、実施の形態と同様に、XY平面に平行な被取り付け面28aに取り付けられる。
【0071】
この構成では、旋削ユニット24の水平面(XY平面)に対する傾きがレベル計68によって検出される。軸A16がXY平面(支持面34a)に対し鉛直になるように主軸16が設けられることを前提とすれば、レベル計68が検出する傾きは、旋削工具22の軸A22の、主軸16の軸A16に対する傾きを実質的に示すこととなる。
【0072】
したがって、本変形例では、レベル計68から出力されるデジタル信号を傾き取得部64が取得することにより、旋削ユニット24の傾きの取得が達成される。また、レベル計68が検出する傾きに基づいて制御部66が傾き変更機構36を制御することにより、主軸16と旋削ユニット24との平行出しが達成される。
【0073】
このように、本変形例によれば、実施の形態で説明したレーザ変位センサ38を用いずとも、旋削ユニット24と主軸16との平行出しを容易に達成することができる。
【0074】
(変形例4)
旋削ユニット24に設けられる被測定部52は、
図5Aおよび
図5Bに例示した測定用ツールに限定されない。例えば、旋削ユニット24の一部や、旋削ユニット24に装着される旋削工具22を被測定部52としてもよい。
【0075】
(変形例5)
各変形例は、矛盾の生じない範囲内で適宜組み合わされてもよい。
【0076】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0077】
切削工具(14)が装着される主軸(16)と、前記主軸(16)の近傍に着脱可能に設けられ、旋削工具(22)が装着される旋削ユニット(24)とを備える工作機械(12)について、前記主軸(16)と前記旋削ユニット(24)との平行出しを行う傾斜調整システム(10)であって、前記旋削ユニット(24)に設けられ、前記主軸(16)に対する前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)の傾きを変更する傾き変更機構(36)と、前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)の傾きを取得する傾き取得部(64)と、前記傾き取得部(64)の取得結果に基づいて、前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)が前記主軸(16)に平行になるように前記傾き変更機構(36)を制御する制御部(66)と、を備える。
【0078】
これにより、主軸(16)と旋削ユニット(24)との平行出しを容易に達成する傾斜調整システム(10)が提供される。
【0079】
傾斜調整システム(10)は、前記旋削ユニット(24)に設けられた被測定部(52)の形状を予め決められた1以上の照射角度で照射するレーザによって測定するレーザ変位センサ(38)をさらに備え、前記傾き取得部(64)は、前記レーザ変位センサ(38)の測定結果に基づいて前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)の傾きを取得してもよい。これにより、制御部(66)は、レーザ変位センサ(38)の測定結果に基づいて傾き変更機構(36)を制御することができる。
【0080】
前記工作機械(12)は、前記主軸(16)の軸方向に直交する支持面(34a)を有し、前記切削工具(14)および前記旋削工具(22)の少なくとも一方により加工される加工対象物(W)を前記支持面(34a)により支持するテーブル(26)をさらに備え、前記制御部(66)は、前記テーブル(26)の前記支持面(34a)の法線方向に前記旋削工具(22)の傾きを合わせるように前記傾き変更機構(36)を制御することで、前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)を前記主軸(16)に平行にしてもよい。これにより、主軸(16)と旋削ユニット(24)との平行出しが容易に達成される。
【0081】
傾斜調整システム(10)は、前記旋削ユニット(24)に設けられるレベル計(68)をさらに備え、前記傾き取得部(64)は、前記旋削ユニット(24)の傾きとして、前記レベル計(68)の検出結果を取得してもよい。これにより、制御部(66)は、レベル計(68)の検出結果に基づいて傾き変更機構(36)を制御することができる。
【0082】
前記工作機械(12)は、前記工作機械(12)のコラム(20)と前記主軸(16)とを接続する接続部(28)をさらに備え、前記接続部(28)は、前記主軸(16)の軸方向に直交する被取り付け面(28a)を有し、前記旋削ユニット(24)は前記被取り付け面(28a)に取り付けられてもよい。これにより、主軸(16)と旋削ユニット(24)との平行出しが容易に達成される。
【0083】
前記傾き変更機構(36)は、前記旋削ユニット(24)を前記工作機械(12)に取り付ける複数のイモネジ(46)を回転させるモータ(44)を有し、前記制御部(66)は、前記モータ(44)の制御指令を出力することで、前記主軸(16)に対する前記旋削ユニット(24)の前記旋削工具(22)の傾きを変更させてもよい。これにより、複数のイモネジ(46)の各々をモータ(44)によって適宜回転させることができ、主軸(16)と旋削ユニット(24)との平行出しが容易に達成される。
【符号の説明】
【0084】
10…傾斜調整システム 12…工作機械
14…切削工具 16…主軸
20…コラム 22…旋削工具
24…旋削ユニット 26…テーブル
28…接続部 28a…被取り付け面
34a…支持面 36…傾き変更機構
38…レーザ変位センサ 44…モータ
46…イモネジ 52…被測定部
64…傾き取得部 66…制御部
68…レベル計 W…加工対象物