(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240123BHJP
H02G 3/16 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
B60R16/02 610A
H02G3/16
(21)【出願番号】P 2020074766
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 潤
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-220806(JP,A)
【文献】特開2013-147209(JP,A)
【文献】特開2010-051161(JP,A)
【文献】特開2017-030685(JP,A)
【文献】特開2016-043882(JP,A)
【文献】特開2009-290976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/08 - 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御ユニットを備え、前記複数の前記制御ユニットを用いて車両に搭載される複数の機器を制御する、車両の制御システムであって、
前記複数の前記制御ユニットは、
前記車両の仕様に基づき、
第1ユニット及び前記第1ユニットとは異なる第2ユニット
を含むように構成され、
前記第1ユニットは、
前記複数の前記機器を制御可能な制御装置が格納された第1制御モジュールと、電源から供給される電力を前記第1制御モジュール及び前記複数の前記機器の少なくとも一部に分配する電源分配器と、前記第1制御モジュール及び前記電源分配器を支持する第1ホルダと、を有し、
前記第2ユニットは、
前記第1制御モジュールと同一の構造を有
して前記第1制御モジュールと共通化された第2制御モジュールと、前記第2制御モジュールを支持する第2ホルダと、を有し、
前記第2ホルダは、
前記電源から供給される電力を前記第2制御モジュールに供給
し且つ前記電源分配器よりも小型の電源部、及び、前記複数の前記機器の少なくとも一部に繋がる電線を前記車両の一の領域と他の領域との領域間において中継
し且つ前記電源部が前記電源分配器より小型であることにより前記第2ユニットに生じる余剰スペースに配置された中継部、を有する、
車両の制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記第2ユニットの周辺に配置され、前記第2ユニットの前記中継部が中継する前記電線とは異なる電線を前記領域間において中継する、中継器を、更に備える、
車両の制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御システムにおいて、
前記第2ユニットが有する前記電源部は、
前記電源に繋がる電線を回路基板を介して前記第2制御モジュールに接続する構成、又は、前記電源に繋がる電線をコネクタを用いて直接に前記第2制御モジュールに接続する構成、を有する、
車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される複数の機器を複数の制御ユニットを用いて制御する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される各種の機器を制御するための制御装置(例えば、ECU等)やリレー等の電子部品を格納した電気接続箱を、車両の所定位置に配置することが行われている。例えば、従来の電気接続箱の一つは、特定の形状のブラケットに支持された状態で、車両の車体に固定されるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両のグレードの相違やオプション装備品の有無(以下「車両の仕様」という。)などに柔軟に対応しながら、車両に搭載される多数の機器を適正に制御することが望まれている。そのような制御を実現する制御システムの一例として、車両を複数の領域に区分けするとともに、各々の領域ごとに配置した制御ユニットを用いて各々の領域に搭載される機器を制御する手法が考えられる。
【0005】
しかし、実際には、制御対象となる機器の数量、種類および配置等は一般に車両の仕様ごとに多種多様であるため、領域ごとに配置する制御ユニットの構造を共通化し難く、制御ユニットを車両に搭載する際の作業性を向上させ難いと考えられる。一方、制御ユニットの汎用性を高めて強引に共通化を図っても、車両の仕様上は本来は不要となり得る過剰な性能を全ての制御ユニットに持たせることになり、制御システムの構築コストを高める原因となり得る。
【0006】
上述した状況を鑑み、本発明の目的の一つは、車両に制御システムを搭載する際の作業性や制御システムの構築コストに優れる制御システム、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両の制御システムは、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
複数の制御ユニットを備え、前記複数の前記制御ユニットを用いて車両に搭載される複数の機器を制御する、車両の制御システムであって、
前記複数の前記制御ユニットは、
前記車両の仕様に基づき、第1ユニット及び前記第1ユニットとは異なる第2ユニットを含むように構成され、
前記第1ユニットは、
前記複数の前記機器を制御可能な制御装置が格納された第1制御モジュールと、電源から供給される電力を前記第1制御モジュール及び前記複数の前記機器の少なくとも一部に分配する電源分配器と、前記第1制御モジュール及び前記電源分配器を支持する第1ホルダと、を有し、
前記第2ユニットは、
前記第1制御モジュールと同一の構造を有して前記第1制御モジュールと共通化された第2制御モジュールと、前記第2制御モジュールを支持する第2ホルダと、を有し、
前記第2ホルダは、
前記電源から供給される電力を前記第2制御モジュールに供給し且つ前記電源分配器よりも小型の電源部、及び、前記複数の前記機器の少なくとも一部に繋がる電線を前記車両の一の領域と他の領域との領域間において中継し且つ前記電源部が前記電源分配器より小型であることにより前記第2ユニットに生じる余剰スペースに配置された中継部、を有する、
車両の制御システムであること。
[2]
上記[1]に記載の制御システムであって、
前記第2ユニットの周辺に配置され、前記第2ユニットの前記中継部が中継する前記電線とは異なる電線を前記領域間において中継する、中継器を、更に備える、
車両の制御システムであること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の制御システムにおいて、
前記第2ユニットが有する前記電源部は、
前記電源に繋がる電線を回路基板を介して前記第2制御モジュールに接続する構成、又は、前記電源に繋がる電線をコネクタを用いて直接に前記第2制御モジュールに接続する構成、を有する、
車両の制御システムであること。
【0008】
上記[1]の構成の車両の制御システムによれば、車両の仕様に基づき、制御システムに含まれる制御ユニットの構成が選択される。例えば、グレードが高く制御対象となる機器の数量が多い車両に対しては、それら多数の機器に対応できるように電源分配器を有する第1ユニットを複数用いて、第1ユニットを車両の各領域に配置する。一方、グレードが低く制御対象となる機器の数量が少ない車両に対しては、電源分配器を有する第1ユニットと電源分配器を有さない第2ユニットとを用いて、車両の各領域に第1ユニット及び第2ユニットを適宜配分する。ただし、制御装置が格納される制御モジュールは、第1ユニット及び第2ユニットの双方において共通化する。これにより、本構成の制御システムは、第1ユニットと第2ユニットとが完全に異なる構成を有する場合に比べ、車両に制御システムを搭載する際の作業性や制御システムの構築コストに優れる。
【0009】
更に、電源分配器を有さないことで第2ユニットに生じ得る余剰スペースには、機器に繋がる電線を領域間(例えば、車両のエンジンルーム内の領域と、車室内の領域と、の間)において中継する中継部を設ける。これにより、第2ユニットの余剰スペースを有効活用できるとともに、専用の中継器のみを用いて電線を中継して配索する場合に比べ、電線を配索する経路の自由度が高まる分だけ、配索の合理化(例えば、電線の短尺化)を図り得る。更に、第2ユニットが電線の中継を分担することで、専用の中継機を小型化し得る。
【0010】
上記[2]の構成の車両の制御システムによれば、車両の領域間において電線を中継する中継器を、第2ユニットの周辺に配置する。ここで、第2ユニットの中継部において一部の電線の中継を行い得るため、第2ユニットが中継部を有さない場合に比べ、中継器を小型化できる。これにより、制御システム全体の構築コストを低減できる。
【0011】
上記[3]の構成の車両の制御システムによれば、第2制御モジュールに電力を供給する電源部に回路基板を用いることで、汎用されている基板実装型のコネクタ(いわゆるBoard-to-Boardコネクタ)等を用いて第2制御モジュールに電力を供給でき、第2ユニットの製造コストを低減できる。一方、コネクタを用いて直接に第2制御モジュールに接続することで、第2ホルダの構造を更にシンプル化でき、第2ユニットの軽量化や小型化に貢献できる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、車両に制御システムを搭載する際の作業性や制御システムの構築コストに優れる制御システムを提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御システムの概略構成図であり、
図1(a)は、高級仕様車に複数の第1ユニットを含む制御システムを搭載した場合を示し、
図1(b)は、標準仕様車に第1ユニット及び第2ユニットを含む制御システムを搭載した場合を示す。
【
図2】
図2は、
図1(a)及び
図1(b)に示す第1ユニットを示し、
図2(a)は、第1ユニットの斜視図であり、
図2(b)は、他の方向からみた第1ユニットの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1(b)に示す第2ユニットを示し、
図4(a)は、第2ユニットの斜視図であり、
図4(b)は、他の方向からみた第2ユニットの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4(b)に示す第2ユニットに電線を接続した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、変形例に係る第2ユニットの
図4(b)に対応する斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す第2ユニットの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7(a)に示す第2ユニットに電線を接続した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1に示す本発明の実施形態に係る車両の制御システム1について説明する。制御システム1は、複数の制御ユニットを用いて車両に搭載される複数の機器(図示省略)を制御するシステムである。制御システム1では、車両の仕様に基づき、制御システム1に含まれる制御ユニットの構成が選択される。本例では、制御システム1に含まれる制御ユニットとして、制御モジュール10及び電源分配器20を有する第1ユニット2と、制御モジュール50を有する一方で電源分配器を有さない第2ユニット3と、が選択され得る。
【0016】
具体的には、
図1(a)に示すように、グレードが高く制御対象となる機器の数が多い高級仕様車には、多数の機器に対応できるように、電源分配器20を有する第1ユニット2が、左側及び右側に1つずつ搭載されている。本例では、これら第1ユニット2は、車両のエンジンルーム内の領域と車室内の領域との境界部の周辺に配置されている。
【0017】
一方、
図1(b)に示すように、高級仕様車よりグレードが低くて制御対象となる機器の数が少ない標準仕様車には、高級仕様車より少ない数の機器に対応できれば十分であるため、電源分配器20を有する第1ユニット2が左側に1つ搭載され、電源分配器を有さない第2ユニット3が右側に1つ搭載されている。上記同様、本例でも、第1ユニット2及び第2ユニット3は、車両のエンジンルーム内の領域と車室内の領域との境界部の周辺に配置されている。ただし、第1ユニット2が有する制御モジュール10と、第2ユニット3が有する制御モジュール50とは、同一の構造を有する。即ち、制御モジュール10と制御モジュール50とは、共通化されている。以下、第1ユニット2、及び、第2ユニット3について順に説明する。
【0018】
まず、第1ユニット2の構成について説明する。第1ユニット2は、
図2及び
図3に示すように、制御モジュール10と、電源分配器20と、ホルダ30と、カバー40と、を備える。
【0019】
制御モジュール10は、略矩形平板状のECUユニット11と、ECUユニット11の厚さ方向の一側側面に一体に接続されたコネクタ接続部12と、を備える。ECUユニット11は、車両に搭載された複数の機器を制御する機能を果たす。コネクタ接続部12は、ホルダ30のコネクタ接続部32(後述)を介して、電源分配器20のコネクタ接続部22(後述)と接続される。
【0020】
電源分配器20は、略矩形平板状の回路基板21と、回路基板21の厚さ方向の他側側面に一体に接続されたコネクタ接続部22と、回路基板21の当該他側側面に一体に接続された電線接続部23及び電線接続部24と、を備える。電線接続部23及び電線接続部24は互いに逆方向を向いており、電線接続部23には、
図1に示す電線W1が接続され、電線接続部24には、
図1に示す電線W2が接続されることになる。電源分配器20は、車両に搭載された電源(図示省略)から供給される電力を、制御モジュール10及び複数の機器の少なくとも一部に分配する機能を果たす。
【0021】
ホルダ30は、略矩形平板状の樹脂製のフレーム31と、フレーム31に一体に設けられたコネクタ接続部32と、を備える。フレーム31の厚さ方向の他側側面には、制御モジュール10が取り付けられている。フレーム31の厚さ方向の一側側面には、電源分配器20が取り付けられている。即ち、ホルダ30は、制御モジュール10及び電源分配器20を支持する機能を果たす。
【0022】
このように、ホルダ30が制御モジュール10及び電源分配器20を支持した状態では、制御モジュール10のコネクタ接続部12と、電源分配器20のコネクタ接続部22とが、ホルダ30のコネクタ接続部32を介して電気的に接続されている。この結果、制御モジュール10のECUユニット11と、電源分配器20の回路基板21とが電気的に接続されている。
【0023】
カバー40は、略矩形平板状の樹脂成形体である。カバー40は、制御モジュール10及び電源分配器20を支持した状態にあるホルダ30の厚さ方向の一側側面に、電源分配器20を覆うように取り付けられている。カバー40がホルダ30に取り付けられることで、電源分配器20が保護される。以上、第1ユニット2の構成について説明した。
【0024】
図1(a)又は
図1(b)に示す各第1ユニット2において、電線接続部23(
図2(b)参照)には、
図1に示す電線W1の一端部が接続され、電線接続部24(
図2(a)参照)には、
図1に示す電線W2の一端部が接続される。これにより、例えば、電線W2の他端部に接続された車両の電源(図示省略)から供給される電力が、電源分配器20によって、制御モジュール10のECUユニット11、及び、電線W1の他端部に接続された複数の機器(図示省略)に分配され、且つ、ECUユニット11が、当該複数の機器を制御できることになる。
【0025】
図1(a)又は
図1(b)に示す各第1ユニット2の周辺、即ち、車両のエンジンルーム内の領域と車室内の領域との境界部における第1ユニット2の周辺には、制御システム1の一部として、中継器4が配置されている。中継器4は、電線W3の一端部と電線W4の一端部とを中継している。即ち、中継器4は、いわゆるWire-to-Wire接続の機能を有している。これにより、中継器4は、電線W3の他端部に接続された複数の機器(図示省略)と、電線W4の他端部に接続された複数の機器(図示省略)とを電気的に接続している。以上、第1ユニット2について説明した。
【0026】
次いで、第2ユニット3の構成について説明する。第2ユニット3は、
図4及び
図5に示すように、制御モジュール50と、ホルダ60と、カバー70と、を備え、電源分配器を備えていない。
【0027】
制御モジュール50は、第1ユニット2の制御モジュール10と同じであって、制御モジュール10と同じ形態を有し、且つ、制御モジュール10と同じ機能を果たす。制御モジュール50は、略矩形平板状のECUユニット51と、ECUユニット51の厚さ方向の一側側面に一体に接続されたコネクタ接続部52と、を備える。コネクタ接続部52は、ホルダ60のコネクタ接続部61a(後述)を介して、ホルダ60のコネクタ接続部65(後述)と接続される。
【0028】
ホルダ60は、略矩形平板状のフレーム61と、フレーム61に取り付けられる電源部62と、フレーム61に一体に設けられた中継部63と、を備える。フレーム61には、コネクタ接続部61aが一体に設けられている。
【0029】
電源部62は、回路基板64と、回路基板64の厚さ方向の他側側面に一体に接続されたコネクタ接続部65と、回路基板21の当該他側側面に一体に接続された電線接続部66及び電線接続部67と、を備える。回路基板64は、第1ユニット2の電源分配器20が有する回路基板21より小型である。回路基板64に一体に接続されたコネクタ接続部65としては、汎用の基板実装型のコネクタ(いわゆるBoard-to-Boardコネクタ)が採用され得る。
【0030】
電線接続部66及び電線接続部67は互いに逆方向を向いており、電線接続部66には、
図1に示す電線W5が接続され、電線接続部67には、
図1に示す電線W6が接続されることになる(
図6も参照)。電源部62は、車両に搭載された電源(図示省略)から供給される電力を制御モジュール50に供給する機能を果たす。
【0031】
中継部63は、互いに逆方向を向いた電線接続部68及び電線接続部69を備える。電線接続部68には、
図1に示す電線W7が接続され、電線接続部69には、
図1に示す電線W8が接続されることになる(
図6も参照)。即ち、中継部63は、いわゆるWire-to-Wire接続の機能を有している。中継部63は、第2ユニット3が電源分配器を有さないことで第2ユニット3に生じる余剰スペースに設けられている。中継部63は、電線W7と電線W8とを中継する機能を果たす。
【0032】
フレーム61の厚さ方向の他側側面には、制御モジュール50が取り付けられている。フレーム61の厚さ方向の一側側面には、電源部62が取り付けられている。即ち、ホルダ60のフレーム61は、制御モジュール50及び電源部62を支持する機能を果たす。
【0033】
このように、ホルダ60のフレーム61が制御モジュール50及び電源部62を支持した状態では、制御モジュール50のコネクタ接続部52と、電源部62のコネクタ接続部65とが、フレーム61に設けられたコネクタ接続部61aを介して電気的に接続されている。この結果、制御モジュール50のECUユニット51と、電源部62の回路基板64とが電気的に接続されている。
【0034】
カバー70は、略矩形平板状の樹脂成形体である。カバー70は、制御モジュール50及び電源部62を支持した状態にあるホルダ60のフレーム61の厚さ方向の一側側面に、電源部62を覆うように取り付けられている。カバー70がホルダ60のフレーム61に取り付けられることで、電源部62が保護される。以上、第2ユニット3の構成について説明した。
【0035】
図1(b)に示す第2ユニット3において、
図6に示すように、電線接続部66には、
図1に示す電線W5の一端部が接続され、電線接続部67には、
図1に示す電線W6の一端部が接続される。これにより、例えば、電線W6の他端部に接続された車両の電源(図示省略)から供給される電力が、電源部62(具体的には、回路基板64、コネクタ接続部65)を介して制御モジュール50のECUユニット51に供給され、且つ、当該電力が、電線W7の他端部に接続された複数の機器(図示省略)にも供給される。更に、ECUユニット51が、当該複数の機器を制御する。
【0036】
更に、
図6に示すように、電線接続部68には、
図1に示す電線W7の一端部が接続され、電線接続部69には、
図1に示す電線W8の一端部が接続される。これにより、中継部63は、電線W7と電線W8とを中継すると共に、電線W7の他端部に接続された複数の機器(図示省略)と、電線W8の他端部に接続された複数の機器(図示省略)とを電気的に接続している。
【0037】
図1(b)に示す第2ユニット3の周辺、即ち、車両のエンジンルーム内の領域と車室内の領域との境界部における第2ユニット3の周辺には、制御システム1の一部として、中継器5が配置されている。中継器5は、電線W9の一端部と電線W10の一端部とを中継している。これにより、中継器5は、電線W9の他端部に接続された複数の機器(図示省略)と、電線W10の他端部に接続された複数の機器(図示省略)とを電気的に接続している。
【0038】
ここで、上述したように、第2ユニット3では、第2ユニット3が有する中継部63が電線W7と電線W8とを中継している(
図1(b)も参照)。このため、第2ユニット3が中継部63を有さずに、中継器5が電線(W7+W9)と電線(W8+W10)とを中継する場合と比べて、中継器5が中継する電線(電線束)に含まれる電線の本数を少なくできる。
【0039】
このことに起因して、
図1(b)に示す例では、中継器5が中継する電線W9及び電線W10(電線束)に含まれる電線の本数が、第1ユニット2の周辺に配置された中継器4が中継する電線W3及び電線W4(電線束)に含まれる電線の本数よりも少ない。このため、第2ユニット3の周辺に配置された中継器5は、第1ユニット2の周辺に配置された中継器4より小型化されている。
【0040】
更に、第2ユニット3が中継部63を有さずに、中継器5が、電線(W7+W9)と電線(W8+W10)とを中継する場合と比べて、配索経路の設計自由度が高まる。その結果、例えば、電線W7及び電線W8の短尺化を図り得る。以上、第2ユニット3について説明した。
【0041】
<作用・効果>
以上より、本実施形態に係る車両の制御システム1によれば、車両の仕様に基づき、制御システム1に含まれる制御ユニットの構成を選択できる。例えば、グレードが高く制御対象となる機器の数が多い高級仕様車に対しては、それら多数の機器に対応できるように電源分配器20を有する第1ユニット2を領域ごとに配置し、グレードが低く制御対象となる機器が少ない標準仕様車に対しては、電源分配器20を有する第1ユニット2と電源分配器を有さない第2ユニット3とを所定の領域に配置できる。ただし、ECUユニット(制御装置)が格納される制御モジュールは、第1ユニット2及び第2ユニット3の双方において共通化する。これにより、ECUユニット(制御装置)を出来る限り共通化しながら制御システム1の構築コストを低減できる。更に、電源分配器を有さないことで第2ユニット3に生じる余剰スペースには、機器に繋がる電線W7及び電線W8を領域間(例えば、車両のエンジンルーム内の領域と、車室内の領域と、の間)において中継する中継部63を設ける。これにより、制御ユニットの搭載スペースを有効活用できるとともに、専用の中継器のみを介するように電線を配索する場合に比べ、配索経路の合理化(例えば、電線の短尺化)を図り得る。
【0042】
更に、本実施形態に係る制御システム1によれば、車両の領域間において電線を中継する中継器4,5を、第1ユニット2及び第2ユニット3の周辺に配置する際、第2ユニット3では一部の電線W7及び電線W8の中継を行っているため、第2ユニット3の周辺に配置する中継器5を小型化できる。
【0043】
更に、本実施形態に係る制御システム1によれば、第2ユニット3において制御モジュール50に電力を供給する電源部62を回路基板64が介在する構成とすることで、この種の制御ユニットに汎用されている基板実装型のコネクタ等を用いて制御モジュール50に電力を供給できる。
【0044】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を発揮できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
上記実施形態では、第2ユニット3において制御モジュール50に電力を供給する電源部62が、回路基板64が介在する構成となっている(
図5参照)。これに対し、
図7及び
図8に示すように、電源部62及びカバー70を省略して、ホルダ60のフレーム61に設けられたコネクタ接続部61aを「電源部」として使用し、コネクタ接続部61aに電線W6の一端部に設けられたコネクタ81(
図8参照)を直接接続することで、電線W6の他端部に接続された車両の電源から供給される電力が制御モジュール50のECUユニット51に供給される構成が採用されてもよい。これにより、ホルダ60の構造を更に単純化でき、第2ユニット3の軽量化や小型化に貢献できる。
【0046】
更に、上記実施形態では、第1ユニット2の周辺に中継器4が配置され、第2ユニット3の周辺に中継器5が配置されている(
図1参照)。これに対し、中継器4及び中継器5の少なくとも一方が省略されてもよい。
【0047】
ここで、上述した本発明に係る車両の制御システム1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
複数の制御ユニットを備え、前記複数の前記制御ユニットを用いて車両に搭載される複数の機器を制御する、車両の制御システム(1)であって、
前記複数の前記制御ユニットは、
前記車両の仕様に基づき、複数の第1ユニット(2)、並びに、前記第1ユニット(2)及び前記第1ユニット(2)とは異なる第2ユニット(3)、の何れか一方を含むように構成され、
前記第1ユニット(2)は、
前記複数の前記機器を制御可能な制御装置(11)が格納された第1制御モジュール(10)と、電源から供給される電力を前記第1制御モジュール(10)及び前記複数の前記機器の少なくとも一部に分配する電源分配器(20)と、前記第1制御モジュール(10)及び前記電源分配器(20)を支持する第1ホルダ(30)と、を有し、
前記第2ユニット(3)は、
前記第1制御モジュール(10)と同一の構造を有する第2制御モジュール(50)と、前記第2制御モジュール(50)を支持する第2ホルダ(60)と、を有し、
前記第2ホルダ(60)は、
前記電源から供給される電力を前記第2制御モジュール(50)に供給する電源部(62)、及び、前記複数の前記機器の少なくとも一部に繋がる電線(W7,W8)を前記車両の一の領域と他の領域との領域間において中継する中継部(63)、を有する、
車両の制御システム(1)。
[2]
上記[1]に記載の制御システム(1)であって、
前記第2ユニット(3)の周辺に配置され、前記第2ユニット(3)の前記中継部(63)が中継する前記電線とは異なる電線(W9,W10)を前記領域間において中継する、中継器(5)を、更に備える、
車両の制御システム(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の制御システム(1)において、
前記第2ユニット(3)が有する前記電源部(62)は、
前記電源に繋がる電線(W6)を回路基板(64)を介して前記第2制御モジュール(50)に接続する構成、又は、前記電源に繋がる電線(W6)をコネクタ(61a)を用いて直接に前記第2制御モジュール(50)に接続する構成、を有する、
車両の制御システム(1)。
【符号の説明】
【0048】
1 車両の制御システム
2 第1ユニット
3 第2ユニット
4 中継器
5 中継器
10 制御モジュール(第1制御モジュール)
11 ECUユニット(制御装置)
20 電源分配器
30 ホルダ(第1ホルダ)
50 制御モジュール(第2制御モジュール)
60 ホルダ(第2ホルダ)
61a コネクタ接続部(コネクタ)
62 電源部
63 中継部
64 回路基板