特許 7424916 プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材及びその使用方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-01-22

(45)【発行日】2024-01-30

(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材及びその使用方法

(51)【国際特許分類】

   F16L 27/12 20060101AFI20240123BHJP

   F16L 1/00 20060101ALI20240123BHJP

   E04C 5/10 20060101ALI20240123BHJP

   E01D 19/10 20060101ALI20240123BHJP

【ＦＩ】

F16L27/12 G

F16L1/00 Z

E04C5/10

E01D19/10

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2020103709

(22)【出願日】2020-06-16

(65)【公開番号】P2021196010

(43)【公開日】2021-12-27

【審査請求日】2023-02-27

(73)【特許権者】

【識別番号】000142595

【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所

(74)【代理人】

【識別番号】110001427

【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】川村 剛史

(72)【発明者】

【氏名】阪井 光尚

(72)【発明者】

【氏名】小西 正伸

(72)【発明者】

【氏名】宇田川 一治

【審査官】杉山 健一

(56)【参考文献】

【文献】実開平０７－０１０２４７（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２００１－１２３５２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－１８６８１０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平１０－２５２２２２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０３－１１５６０９（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭５６－１６８６８７（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開平０９－２３９８６０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｌ ２７／１２

Ｆ１６Ｌ １／００

Ｅ０４Ｃ ５／１０

Ｅ０１Ｄ １９／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
一方の第１プレキャストコンクリート壁に埋設される第１埋設管の第１端部が、基端部に接続される第１埋設管接続部と、
他方の第２プレキャストコンクリート壁に埋設される第２埋設管の第２端部が、基端部に接続される第２埋設管接続部と、
上記第１埋設管接続部の先端側の上記第２プレキャストコンクリート壁の側面側に形成された第１拡径端部と、
上記第２埋設管接続部の先端側の上記第１プレキャストコンクリート壁の側面側に形成された第２拡径端部と、
上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部に両端が接続される筒状の中子と、
上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部の少なくとも一方に全体が収容可能な筒状の付勢部材とを備え、
上記中子が上記付勢部材を押し込んで上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部の少なくとも一方に端部が収容された状態で、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入可能であり、かつ、上記付勢部材に押し戻された状態で、上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部の基端部が、それぞれ上記第１端部及び上記第２端部に接続可能に構成されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。

【請求項2】

請求項１に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記中子の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布が巻かれている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。

【請求項3】

請求項１又は２に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部は、同じ形状であり、上記付勢部材がそれぞれ内装されて上記中子の両端を付勢可能に構成されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。

【請求項4】

請求項１又は２に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
上記第１埋設管接続部は、上記第２埋設管接続部よりも長く、上記付勢部材が内装可能に構成されており、
上記第２埋設管接続部は、上記付勢部材に付勢された上記中子の一端を収容可能に構成されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材。

【請求項5】

請求項１又は２に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材と、
上記第１埋設管が埋設された第１プレキャストコンクリート壁及び上記第２埋設管が埋設された第２プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第１端部と上記第２端部とが対向した位置になるように、上記第１プレキャストコンクリート壁と上記第２プレキャストコンクリート壁とを並べ、
上記中子を上記付勢部材を押し込んで上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部の少なくとも一方に端部が収容された状態で、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入し、
上記付勢部材に押し戻された状態で、上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部の基端部を、それぞれ上記第１端部及び上記第２端部に接続する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法。

【請求項6】

請求項１又は２に記載のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材と、
上記第１埋設管が埋設された第１プレキャストコンクリート壁及び上記第２埋設管が埋設された第２プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第１端部と上記第２端部とが対向した位置になるように、上記第１プレキャストコンクリート壁と上記第２プレキャストコンクリート壁とを並べ、
上記第１端部に接続された上記第１埋設管接続部の第１拡径端部に上記中子を上記付勢部材を押し込んで収容した状態で上記第２埋設管接続部で押さえ込み、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入し、
上記付勢部材に押し戻された上記第２埋設管接続部の基端部を、上記第２端部に接続する
ことを特徴とするプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材の使用方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、プレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材及びその使用方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、高速道路等のコンクリート壁高欄の内部にケーブルを収納するための通信管等を埋設することが知られている。

【0003】

例えば、特許文献１のように、コンクリート内埋設輸送管であって、特に港湾施設のうち岸壁内に埋設する船舶用給水等のユーティリティ用の輸送管に好適に用いることのできる埋設構造が知られている。この埋設構造では、輸送管継目をコンクリート伸縮目地部に位置させ、この輸送管継目に伸縮管を介装し、この伸縮管を覆う外管を一方の輸送管側に配設し、外管の外径に外嵌し、外管の軸方向に摺動可能な摺動管を他方の輸送管側に配設し、輸送管をコンクリート内に埋設するようにしている。

【0004】

また、特許文献２のように、電力ケーブル、電話線、ＣＡＴＶ用ケーブルや有線放送用ケーブルなどの電力・通信線をケーブル保護管で保護して敷設するに際し、橋梁や高速道路の高架橋などの緩衝部において、特定形状の管継手を用いてケーブル保護管を接続することが知られている。このケーブル保護管の接続構造は、両端部にケーブル保護管の受け口を有する蛇腹管と、ケーブル保護管に固定され、蛇腹管の外周辺を保護するカバー部材から構成され、カバー部材は、一端部が蛇腹管の中央外周辺において所要の間隔で相対するとともに、他端部が前記ケーブル保護管と係合する左右一対の筒状部材で形成され、各筒状部材の先端側に位置する連結部材との取付け部以外は高欄に埋設しており、相対する筒状部材同士は、柔軟性を有する連結部材で一体的に結合している。

【0005】

また、特許文献３のように、床版の橋軸に直交し、橋面に平行な方向の側端部に、地覆を介して接合されるとともに、橋軸方向に隣接する他のプレキャスト壁高欄部材と接合されるプレキャスト壁高欄部材が知られている。このプレキャスト壁高欄部材は、地覆の上方に配置され、両者のコンクリート部分の間には無収縮モルタル等の目地材が配置される。クレーン等により、プレキャスト壁高欄部材は配置すべき位置の上方まで移動され、受容孔に第１縦方向定着筋及び第２縦方向定着筋が受容され、かつ受容溝に設置済みの隣接するプレキャスト壁高欄部材の横方向定着筋が受容されるように、プレキャスト壁高欄部材を下ろしていき、所定の位置に配置するように施工される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特開昭６２－１４７１９２号公報

【文献】特許第３８３４７６９号公報

【文献】特開２０１８－１４１３４１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかしながら、隣接する一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管の端部間の距離を大きくとれない場合、それらをつなぐ継手部材を接続し難い、という問題がある。

【0008】

本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隣接する一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管端部間の距離が限られている場合であっても、容易に埋設管同士を接続できるようにすることにある。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記の目的を達成するために、この発明では、中子及び付勢部材を一対の埋設管接続部に収容した状態で一対の端部間に持っていき、付勢部材で押された一対の埋設管接続部で端部を接続するようにした。

【0010】

具体的には、第１の発明では、一対のプレキャストコンクリート壁の内部に埋設される埋設管を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材であって、
一方の第１プレキャストコンクリート壁に埋設される第１埋設管の第１端部が、基端部に接続される第１埋設管接続部と、
他方の第２プレキャストコンクリート壁に埋設される第２埋設管の第２端部が、基端部に接続される第２埋設管接続部と、
上記第１埋設管接続部の先端側の上記第２プレキャストコンクリート壁の側面側に形成された第１拡径端部と、
上記第２埋設管接続部の先端側の上記第１プレキャストコンクリート壁の側面側に形成された第２拡径端部と、
上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部に両端が接続される筒状の中子と、
上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部の少なくとも一方に全体が収容可能な筒状の付勢部材とを備え、
上記中子が上記付勢部材を押し込んで上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部の少なくとも一方に端部が収容された状態で、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入可能であり、かつ、上記付勢部材に押し戻された状態で、上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部の基端部が、それぞれ上記第１端部及び上記第２端部に接続可能に構成されている。

【0011】

上記の構成によると、一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管端部間の距離が短い場合であっても、一対の拡径端部に中子及び付勢部材を内装して基端部間の距離を縮めると、一対の端部間に配置することができる。そして、手を離すと、付勢部材の付勢力で一対の拡径端部が拡がるので、それぞれの基端部が対応する端部に接続される。これにより、一対の埋設管が確実に接続される。なお、付勢部材は、第１基端部及び第２基端部の少なくとも一方に収容されるので、いずれか片方に設けられていてもよいし、両方に設けられていてもよい。

【0012】

第２の発明では、第１の発明において、
上記中子の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布が巻かれている。

【0013】

上記の構成によると、充填剤であるモルタル等に含まれる水分により、水膨張性不織布が膨らむので、中子と一対の拡径端部との間で確実にシールでき、充填剤が第１及び第２埋設管の内部に流れ込まない。

【0014】

第３の発明では、第１又は第２の発明において、
上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部は、同じ形状であり、上記付勢部材がそれぞれ内装されて上記中子の両端を付勢可能に構成されている。

【0015】

上記の構成によると、第１及び第２埋設管接続部が同じ形状をしているので、部品の管理や取付が容易である。また、両側に付勢部材を内装させることで、中子が両側から均等に押されて安定した状態で第１埋設管と第２埋設管とを接続できる。

【0016】

第４の発明では、第１又は第２の発明において、
上記第１埋設管接続部は、上記第２埋設管接続部よりも長く、上記付勢部材が内装可能に構成されており、
上記第２埋設管接続部は、上記付勢部材に付勢された上記中子の一端を収容可能に構成されている。

【0017】

上記の構成によると、第１埋設管接続部の方が、付勢部材と中子の一端を収容できるようにするために長く、第２埋設管接続部の方が短い。例えば、長い方の第１埋設管接続部を第１端部に接続しておいて、中子の他端側に第２埋設管接続部を挿入して付勢部材を押し込むようにして第１端部と第２端部との間に挿入し、押し戻された第２埋設管接続部で第２端部に接続するようにする。

【0018】

第５の発明では、第１又は第２の発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材と、
上記第１埋設管が埋設された第１プレキャストコンクリート壁及び上記第２埋設管が埋設された第２プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第１端部と上記第２端部とが対向した位置になるように上記第１プレキャストコンクリート壁と上記第２プレキャストコンクリート壁とを並べ、
上記中子を上記付勢部材を押し込んで上記第１拡径端部及び上記第２拡径端部に少なくとも一方に端部が収容された状態で、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入し、
上記付勢部材に押し戻された状態で、上記第１埋設管接続部及び上記第２埋設管接続部の基端部を、それぞれ上記第１端部及び上記第２端部に接続する構成とする。

【0019】

上記の構成によると、一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管端部間の距離が短く中子を挿入し難い場合であっても、一対の拡径端部に中子及び付勢部材を内装して基端部間の距離を縮めると、一対の端部間に配置することができる。そして、手を離すと、付勢部材の付勢力で一対の拡径端部が拡がるので、それぞれの基端部がそれぞれの端部に接続される。これにより、付勢部材で抜け止めされた状態の中子で一対の埋設管が確実に接続される。

【0020】

第６の発明では、第１又は第２の発明のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材と、
上記第１埋設管が埋設された第１プレキャストコンクリート壁及び上記第２埋設管が埋設された第２プレキャストコンクリート壁を準備し、
上記第１端部と上記第２端部とが対向した位置になるように、上記第１プレキャストコンクリート壁と上記第２プレキャストコンクリート壁とを並べ、
上記第１端部に接続された上記第１埋設管接続部の第１拡径端部に上記中子を上記付勢部材を押し込んで収容した状態で上記第２埋設管接続部で押さえ込み、上記第１端部及び上記第２端部の間に挿入し、
上記付勢部材に押し戻された上記第２埋設管接続部の基端部を、上記第２端部に接続する構成とする。

【0021】

上記の構成によると、一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管端部間の距離が短い場合であっても、第１拡径端部に中子及び付勢部材を内装して第２埋設管接続部で押さえ込み、基端部間の距離を縮めると、一対の端部間に配置することができる。そして、手を離すと、付勢部材の付勢力で第２拡径端部側が押されるので、その基端部が第２端部に接続される。これにより、付勢部材で抜け止めされた状態の中子で一対の埋設管が確実に接続される。

【発明の効果】

【0022】

以上説明したように、本発明によれば、付勢部材を利用して一対の埋設管接続部の基端部間の距離を調整できるようにしたので、隣接する一対のプレキャストコンクリート壁の埋設管端部間の距離が限られているなど、狭い範囲であっても、容易に埋設管同士を接続できる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】本発明の実施形態１に係るプレキャストコンクリート壁の中子挿入工程を示す分解断面図である。

【図2】本発明の実施形態１に係るプレキャストコンクリート壁の中子取付工程を示す断面図である。

【図3】本発明の実施形態１に係るプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材を含む継手構造を示す断面図である。

【図4】本発明の実施形態１に係るプレキャストコンクリート壁を示し、（ａ）が第１端部側の側面を示し、（ｂ）が第２端部側の側面を示す。

【図5】本発明の実施形態２に係る図２相当断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0024】

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

【0025】

（実施形態１）
－継手構造の構成－
図３は、一対のプレキャストコンクリート壁２，２’の内部に埋設される埋設管４，４’を接続するプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材３０を含む継手構造１を示す。プレキャストコンクリート壁２，２’及び埋設管４，４’は、図３に示すように、全体として基本的に同じ形状をしているが、図１に示すように、１カ所の接合面に着目したときに、理解しやすいように名称を変えている。本実施形態におけるプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材３０は、後述する、第１埋設管接続部１０、第２埋設管接続部２０、中子６、圧縮コイルバネ７を備えている。

【0026】

例えば、図４に示すように、プレキャストコンクリート壁２，２’は、例えば、高さ９００ｍｍ程度で、幅（厚さ）は２５０～４５０ｍｍ程度で、長さは２～３ｍある。詳しくは後述するが、このプレキャストコンクリート壁２，２’内に第１及び第２埋設管４，４’等を埋設した状態で、プレキャストコンクリート壁２，２’を多数製造しておき、現場でクレーン等を利用して多数のプレキャストコンクリート壁２，２’を連結する。

【0027】

図１及び図２に拡大して示すように、この継手部材３０は、一方の第１プレキャストコンクリート壁２の内部に埋設された第１埋設管４の第１端部５に直管状の第１基端部１１が接続される円筒状の第１埋設管接続部１０と、他方の第２プレキャストコンクリート壁２’の内部に埋設された第２埋設管４’の第２端部５’に直管状の第２基端部２１が接続される円筒状の第２埋設管接続部２０とを備えている。第１及び第２埋設管４，４’は、例えば、汎用の硬質塩化ビニル電線管よりなる。本実施形態では、高速道路などの高欄の内部に埋設する第１及び第２埋設管４，４’を対象としている。また、第１埋設管接続部１０と第２埋設管接続部２０とは、先端側が拡径した第１拡径端部１２と第２拡径端部２２とをそれぞれ有する、例えば硬質塩化ビニルなどの樹脂成形品よりなる。本実施形態では、第１端部５及び第２端部５’並びに第１基端部１１及び第２基端部２１の外径よりも大きい内径を有するソケット１３を埋設しておき、この第１端部５又は第２端部５’に接続されたソケット１３に第１基端部１１又は第２基端部２１をそれぞれ接着剤などで接着するようにしている。なお、第１基端部１１及び第２基端部２１の内径を埋設管４，４’の外径よりも若干大きくして、第１基端部１１及び第２基端部２１に埋設管４，４’をそれぞれ挿入するようにしてもよい。

【0028】

図１に示すように、継手部材３０は、少なくとも両端が第１埋設管接続部１０及び第２埋設管接続部２０の内部に収容可能な中子６を備えている。中子６は、例えば、円筒状の樹脂成形品で構成されている。中子６の長さは、第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２に両端が収まった状態で抜け出してしまわないように長さが設定されている。例えば、中子６の両端には面取が施されていてもよい。面取を設けると、第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２に滑らかに挿入できる。中子６の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布８が巻かれている。このため、充填剤であるモルタル３を充填する際に、モルタル３の水分で水膨張性不織布８が膨らんで確実にシールされ、モルタル３が第１及び第２埋設管４，４’内に流れ込まないようになっている。水膨張性不織布８は、水膨張機能を有さない、単に水密性を有するシール部材でもよい。

【0029】

図２及び図３に示すように、例えば、中子６の長手方向中央部分は凹んでいるので、モルタル３を流し込むときに、この凹部にもモルタル３が流れ込んで中子６がしっかり固定される。このため、その後のケーブル等の通線作業する際に中子６が移動することはない。一方、モルタル３を充填する前にケーブル等の通線作業をする場合には、この凹部に止め輪等を取り付けることで、中子６が移動しないようにしてもよい。この凹部は必ずしも設けなくてもよい。一方、中子６の両端内面に面取を設けてもよく、この場合、電線等を通線作業する際に、電線等が中子６に引っかかり難くなり、滑らかに挿入できる。

【0030】

また、継手部材３０は、第１及び第２拡径端部１２，２２の内部における中子６の奥側に全体が収容可能な筒状の付勢部材としての一対の圧縮コイルバネ７を備えている。圧縮コイルバネ７は、例えばバネ用ステンレス鋼線よりなる。圧縮コイルバネ７を、防錆コーティングしたバネ用鋼線で構成してもよい。図２に示すように、この圧縮コイルバネ７は、圧縮された状態で中子６と共に第１及び第２拡径端部１２，２２の内部にそれぞれ収まる大きさで、埋設後にケーブル等が引っかからないような滑らかな内周面を有するのが望ましい。圧縮コイルバネ７がその機能を発揮できるように、その外径は、第１及び第２拡径端部１２，２２の内径よりも若干小さく、中子６の内径よりも大きくなっている。

【0031】

本実施形態では、第１埋設管接続部１０及び第２埋設管接続部２０は、同じ形状であり、圧縮コイルバネ７がそれぞれ内装されて中子６の両端を付勢可能に構成されている。しかし、圧縮コイルバネ７は、一対ではなく、１つだけ設けるようにしてもよい。その場合には、第１埋設管接続部１０と第２埋設管接続部２０とで形状を変えてもよい。

【0032】

なお、圧縮コイルバネ７の内側に内面が滑らかな円筒状カバーを設けてもよい。また、圧縮コイルバネ７を筒状のビニルやフィルムで包んで圧縮コイルバネ７と共に伸縮できるようにしてもよい。いずれの場合も、電線等を通線作業する際に、電線等が圧縮コイルバネ７の内周面に引っかかり難くなる。

【0033】

なお、第１及び第２埋設管接続部１０，２０の第１及び第２基端部１１，２１の外周にもシール部材が設けられていてもよい。これにより、継手部材３０の装着後にテープなどで防水処理をしなくてもよくなる。なお、第１及び第２基端部１１，２１が第１及び第２端部５，５’の外周に嵌め込まれる場合には、シール部材は、第１及び第２基端部１１，２１の内周に設けるとよい。シール部材は、水膨張性不織布であってもよいし、その他の水密性を有するシールでもよい。このように、中子６との間だけでなく、対応する端部５，５’との間もシール部材を設けることで、確実に充填剤の流れ込みを防ぐことができるようになっている。

【0034】

図３に示すように、本実施形態のプレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材３０を有する継手構造１では、第１埋設管４に接続された第１埋設管接続部１０の第１拡径端部１２が第２プレキャストコンクリート壁２’の側面と対向する側面の間の目地部に開口し、中子６が圧縮コイルバネ７で両側から付勢されて安定した状態で第１埋設管接続部１０と第２埋設管接続部２０とを跨ぐように配設され、目地部及び中子６の外周面と第１及び第２拡径端部１２，２２の内周面との間に充填剤としてのモルタル３が充填されている。

【0035】

このように、本実施形態の継手部材３０は、図１に示すように、中子６が圧縮コイルバネ７を押し込んで第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２に少なくとも両端が収容された状態で、第１端部５及び第２端部５’の間に挿入可能であり、かつ、図２に示すように、圧縮コイルバネ７に押し戻された第１埋設管接続部１０及び第２埋設管接続部２０の基端部１１，２１が、それぞれ第１端部５及び第２端部５’に接続可能に構成されている。

【0036】

－継手構造の使用方法－
次いで、プレキャストコンクリート壁内埋設管の継手部材３０の使用方法について説明する。

【0037】

準備工程において、上述した第１及び第２埋設管４，４’、第１及び第２埋設管接続部１０，２０、中子６等を準備する。

【0038】

まず、型枠組立工程において、例えば、工場内等で、木製等の型枠を配置する。

【0039】

次いで、鉄筋組立工程において、型枠内に棒状及び環状の鉄筋５１を配筋する。

【0040】

次いで、図４に示すように、埋設管設置工程において、ソケット１３が第１端部５に接続された第１埋設管４を第１プレキャストコンクリート壁２の型枠内に、ソケット１３が第２端部５’に接続された第２埋設管４’を第２プレキャストコンクリート壁２’内に、それぞれ配置する。

【0041】

そして、コンクリート打設工程において、型枠内にコンクリートを打設する。

【0042】

次いで、型枠離型工程において、型枠を離型し、第１及び第２プレキャストコンクリート壁２，２’が完成する。

【0043】

このプレキャストコンクリート壁２，２’を多数製造しておき、高速道路などの工事現場に運搬する。

【0044】

そして、工事現場において、配置工程において、クレーン等を用いて第１及び第２プレキャストコンクリート壁２，２を間隔を開けて配置する。このとき、図１に示すように、第１端部５及び第２端部５’が対向した位置に配置され、ソケット１３間に距離Ｌ１の隙間が保たれている。これら一対のプレキャストコンクリート壁２，２’の側面間の隙間が目地部３となる。

【0045】

次いで、図１に示すように、中子挿入工程において、第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２にそれぞれ圧縮コイルバネ７を挿入した後、これら第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２で中子６を、一対の圧縮コイルバネ７を押し付けながら挿入して保持する。このとき、中子６の外周端部が面取されているので、第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２に挿入しやすい。この状態で、第１及び第２基端部１１，２１間の距離をＬ２とする（但し、Ｌ２＜Ｌ１）。縮小させた状態の第１及び第２埋設管接続部１０，２０を第１及び第２端部５，５’間に一直線状に配置する。

【0046】

次いで、図２に示すように、中子取付工程において、一対の圧縮コイルバネ７を押さえつけていた両手を緩めながらソケット１３にそれぞれ第１及び第２基端部１１，２１を嵌め込むように接続する。ソケット１３には、接着剤などを用いて接着してもよい。このとき、第１及び第２拡径端部１２，２２間は、圧縮コイルバネ７に付勢されて拡がってＬ３となる（Ｌ２＜Ｌ１＜Ｌ３）。

【0047】

すると、両側から圧縮コイルバネ７に付勢された中子６により、第１拡径端部１２と第２拡径端部２２とが確実に接続される。その結果、埋設管４，４’同士が密閉状に接続される。

【0048】

圧縮コイルバネ７に付勢されて確実に中子６で接続されているのを確認した後、図３に示すように、モルタル充填工程において、第１及び第２プレキャストコンクリート壁２，２’間の目地部にモルタル３を充填する。このとき、中子６の両端外周には、水を含むと膨張する水膨張性不織布８が巻かれているので、この水膨張性不織布８がモルタルの水分で膨らみ、中子６外周と、第１拡径端部１２及び第２拡径端部２２内周との間で確実にシールできる。また、第１及び第２基端部１１，２１の外周と、第１及び第２端部５，５’の内周との間もシール部材でシールされていると、モルタル３が第１及び第２埋設管４，４’内部にさらに流れ込み難くなる。

【0049】

次いで、充填剤３が乾いた後、埋設管４，４’内に電線等を配線する。第１及び第２プレキャストコンクリート壁２，２の接続後は、圧縮コイルバネ７と中子６は残るが、これらは筒状であるので、第１及び第２埋設管４，４’にケーブル等を挿入するときに邪魔にならない。なお、埋設管４，４’内に挿入するのは、電線等に限定されない。

【0050】

本実施形態では、第１及び第２埋設管接続部２０が、同じ形状をしているので、部品の管理や取付が容易である。また、両側に圧縮コイルバネ７を内装させることで、中子６が両側から均等に押された状態で安定する。

【0051】

したがって、本実施形態に係る継手部材３０によると、圧縮コイルバネ７を利用して一対の埋設管接続部１０，２０の基端部１１，２１間の距離を調整できるようにしたので、隣接する一対のプレキャストコンクリート壁２，２’の埋設管４，４’の端部５，５’間の距離が短いような場合であっても、容易に埋設管４，４’同士を接続できる。

【0052】

（実施形態２）
－継手構造の構成－
図５は本発明の実施形態２を示し、主に第１埋設管接続部１１０の形状が異なる点で上記実施形態１と異なる。なお、本実施形態では、図１～図４と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。

【0053】

本実施形態の継手部材１３０では、図５に示すように、第１埋設管接続部１１０は、第２埋設管接続部２０よりも軸方向の長さが長く、特に第１拡径端部１１２の長さが長くなっている。この長くなった第１拡径端部１１２の内部に圧縮コイルバネ７及び中子６の一端が内装可能に構成されている。

【0054】

第１埋設管接続部１１０の第１基端部１１は、第１端部５に対してソケット１３部分で接着剤等により、接続されている。

【0055】

第２埋設管接続部２０は、圧縮コイルバネ７に付勢された中子６の他端を収容可能に構成されている。

【0056】

－継手部材の使用方法－
次に、本実施形態に係る継手部材１３０の使用方法について説明する。

【0057】

まず、第１埋設管４が埋設された第１プレキャストコンクリート壁２及び第２埋設管４’が埋設された第２プレキャストコンクリート壁２’を準備する。

【0058】

次いで、第１端部５のソケット１３に第１埋設管接続部１１０の基端部１１を接着剤などで接続する。

【0059】

次に、第１端部５と上記第２端部５’とが対向した位置になるように、第１プレキャストコンクリート壁２と第２プレキャストコンクリート壁２’とを並べる。

【0060】

次いで、第１端部５に接続された第１埋設管接続部１１０の第１拡径端部１１２に中子６を圧縮コイルバネ７を押し込んで収容した状態で第２埋設管接続部２０で押さえ込み、第１端部５及び第２端部５’の間に挿入する。

【0061】

次に、図５に示すように、圧縮コイルバネ７に押し戻された第２埋設管接続部２０の基端部２１を、第２端部５’に接着剤等で接続する。

【0062】

本実施形態においても、第１拡径端部１１２に中子６及び圧縮コイルバネ７を内装して基端部間１１，２１の距離を縮めると、一対の端部５，５’間に配置することができる。そして、手を離すと、圧縮コイルバネ７の付勢力で第２拡径端部２２側が押されるので、その第２基端部２１が第２端部５’に接続される。これにより、圧縮コイルバネ７で抜け止めされた状態の中子６で一対の埋設管４，４’が確実に接続される。

【0063】

したがって、本実施形態に係る継手部材１３０においても、容易に埋設管４，４’同士を接続できる。

【0064】

（その他の実施形態）
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。

【0065】

すなわち、上記実施形態では、図３に示すように、１本の埋設管４，４’を１つのプレキャストコンクリート壁２，２’に配置しているが、１つのプレキャストコンクリート壁２，２’に２本以上の埋設管４，４’を上下に並べるように配置してもよい。

【0066】

上記実施形態では、中子６の外周に水膨張性不織布８を設けているが、第１拡径端部１２又は第２拡径端部２２の内周に設けてもよい。

【0067】

なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。

【符号の説明】

【0068】

１ 継手構造
２ 第１プレキャストコンクリート壁
２’ 第２プレキャストコンクリート壁
３ モルタル（充填剤、目地部）
４ 第１埋設管
４’ 第２埋設管
５ 第１端部
５’ 第２端部
６ 中子
７ 圧縮コイルバネ（付勢部材）
８ 水膨張性不織布
１０ 第１埋設管接続部
１１ 第１基端部
１２ 第１拡径端部
１３ ソケット
２０ 第２埋設管接続部
２１ 第２基端部
２２ 第２拡径端部
３０ 継手部材
５１ 鉄筋
１１０ 第１埋設管接続部
１１２ 第１拡径端部
１３０ 継手部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】