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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】エンジンのスロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
F02D9/02 351M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020106200
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001737
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 眞一
(72)【発明者】
【氏名】北岡 竜也
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092072(JP,A)
【文献】特開2005-155515(JP,A)
【文献】特開2012-052435(JP,A)
【文献】特開2002-349397(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへの装着状態で筒内と連通するスロットルボアが形成され、前記スロットルボア内でスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されると共に、外側面から一側方に向けて前記スロットル軸が突出したスロットルボディと、
前記一側方から前記スロットルボディの外側面を閉塞して、前記外側面との間に伝達機構が収容された機構室を画成するカバー部材と、
前記スロットルボディに取り付けられ、前記機構室内に突出した出力軸の回転を前記伝達機構を介して前記スロットル軸に伝達し、前記スロットル弁の開閉に応じて前記スロットルボア内を流通する吸気の量を調整するモータと、
前記カバー部材に設けられ、前記スロットル軸の回動角度をスロットル開度として検出するスロットル開度センサと、
前記カバー部材に設けられ、前記スロットルボア内を流通する前記吸気の温度を検出する吸気温センサと、
前記カバー部材に設けられ、前記カバー部材から前記スロットルボアに向けて延設されたパイプと前記スロットルボディに形成された貫通孔とにより形成された圧力通路を介して前記スロットルボア内に接続され、前記スロットルボア内を流通する前記吸気の圧力を検出する吸気圧センサと
を備えたことを特徴とするエンジンのスロットル装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記スロットルボア内の前記スロットル弁の下流側に開口し、
前記パイプは、前記カバー部材の内側面に一体形成されて基端が前記吸気圧センサと連通すると共に、前記スロットルボア側へと延設されて前記貫通孔内に挿入され、先端が前記貫通孔の中程まで達し、
前記圧力通路は、前記貫通孔及び前記パイプの内部が互いに連続して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項3】
前記連通パイプの基端と前記スロットルボディとの間にシール部材が介装されている
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項4】
前記スロットル開度センサは、前記機構室内における前記スロットル軸の軸線上に配設され、
前記吸気温センサ及び前記吸気圧センサの少なくとも何れか一方は、前記カバー部材上の前記スロットル開度センサの周辺の領域に配設されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項5】
前記吸気温センサ及び前記吸気圧センサの少なくとも何れか一方は、前記スロットル開度センサを基準として前記伝達機構とは反対側の領域に配設されている
ことを特徴とする請求項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項6】
前記吸気温センサは、前記カバー部材から前記スロットルボアに向けて延設され、前記スロットルボディに形成された貫通孔を介して先端を前記スロットルボア内に突出させている
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項7】
前記吸気温センサの先端は、前記スロットルボア内の前記スロットル弁の上流側に突出し
記カバー部材上で、前記吸気温センサが吸気流通方向の上流側に相当する位置に配設され、前記吸気圧センサが吸気流通方向の下流側に相当する位置に配設されている
ことを特徴とする請求項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項8】
前記スロットル開度センサと、前記吸気温センサ及び前記吸気圧センサの少なくとも何れか一方とは、前記カバー部材に設けられた共通の基板を介して前記カバー部材の一側に設けられた共通のコネクタに電気的に接続され、前記基板及び前記コネクタを介してそれぞれの検出信号を前記エンジンの運転を制御する制御装置に出力する
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【請求項9】
前記スロットルボディは、単一のスロットルボアが形成され、鞍乗り型車両に走行用動力源として搭載された単気筒のエンジンに装着される
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のエンジンのスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には単気筒エンジン用のスロットル装置が開示されており、そのスロットルボディに形成された単一のスロットルボア内にはスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されている。スロットル軸はスロットルボア内から一側方に向けて突出し、スロットル軸の端部を包囲するようにスロットルボディには凹部が一体形成されると共に、この凹部が一側方からカバー部材により閉塞されてギヤ収容室が画成されている。スロットルボディにはギヤ収容室内に出力軸を突出させた姿勢でモータが取り付けられ、出力軸の回転がギヤ列を介してスロットル軸に伝達され、スロットル弁の開閉に応じてスロットルボア内に流通する吸気の量が調整されるようになっている。
【0003】
スロットルボディの他側方、換言するとスロットルボディを挟んだギヤ収容室とは反対側には、吸気温センサ及び吸気圧センサを備えたセンサユニットが取り付けられている。詳しくは、センサユニットからは吸気温センサが突出し、その先端がスロットルボディを貫通してスロットルボア内に突出して、スロットルボア内を流通する吸気の温度を検出するようになっている。またスロットルボディには圧力通路が形成され、この圧力通路を介して吸気圧センサがスロットルボア内と連通し、内部を流通する吸気の圧力を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-132202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のスロットル装置はエンジンに装着された状態で車両に搭載されるため、エンジンの補機類等との干渉防止のためにコンパクト化が要求されている。例えば特許文献1に記載の単気筒エンジン用のスロットル装置は、車体が小さい原動機付き自転車等に搭載される上に、その周囲にはエンジンの補機類のみならず燃料タンクや車体フレーム等が位置することから、コンパクト化が特に要求されている。
【0006】
特許文献1に記載のスロットル装置は、本来の吸気量の調整機能を奏するスロットルボディに加えて、その一側方にギヤ列を収容したギヤ収容室を画成し、他側方に吸気温及び吸気圧センサを備えたセンサユニットを取り付けている。結果として、スロットル軸線方向において全体としてのスロットル装置の占有スペースが増大してしまい、従来からコンパクト化の対策が要望されていた。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、スロットル軸線方向における占有スペースを縮小して、コンパクト化を達成することができるエンジンのスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のスロットル装置は、エンジンへの装着状態で筒内と連通するスロットルボアが形成され、スロットルボア内でスロットル軸によりスロットル弁が開閉可能に支持されると共に、外側面から一側方に向けてスロットル軸が突出したスロットルボディと、一側方からスロットルボディの外側面を閉塞して、外側面との間に伝達機構が収容された機構室を画成するカバー部材と、スロットルボディに取り付けられ、機構室内に突出した出力軸の回転を伝達機構を介してスロットル軸に伝達し、スロットル弁の開閉に応じてスロットルボア内を流通する吸気の量を調整するモータと、カバー部材に設けられ、スロットル軸の回動角度をスロットル開度として検出するスロットル開度センサと、カバー部材に設けられ、スロットルボア内を流通する吸気の温度を検出する吸気温センサと、カバー部材に設けられ、カバー部材からスロットルボアに向けて延設されたパイプとスロットルボディに形成された貫通孔とにより形成された圧力通路を介してスロットルボア内に接続され、スロットルボア内を流通する吸気の圧力を検出する吸気圧センサと、を備えたことを特徴とする(請求項1)。
その他の態様として、貫通孔が、スロットルボア内のスロットル弁の下流側に開口し、パイプが、カバー部材の内側面に一体形成されて基端が吸気圧センサと連通すると共に、スロットルボア側へと延設されて貫通孔内に挿入され、先端が貫通孔の中程まで達し、圧力通路は、貫通孔及びパイプの内部が互いに連続して形成されていてもよい(請求項2)。
その他の態様として、連通パイプの基端とスロットルボディとの間にシール部材が介装されていてもよい(請求項3)。
【0010】
その他の態様として、スロットル開度センサが、機構室内におけるスロットル軸の軸線上に配設され、吸気温センサ及び吸気圧センサの少なくとも何れか一方が、カバー部材上のスロットル開度センサの周辺の領域に配設されていてもよい(請求項)。
【0011】
その他の態様として、吸気温センサ及び吸気圧センサの少なくとも何れか一方が、スロットル開度センサを基準として伝達機構とは反対側の領域に配設されていてもよい(請求項)。
【0012】
その他の態様として、吸気温センサが、カバー部材からスロットルボアに向けて延設され、スロットルボディに形成された貫通孔を介して先端をスロットルボア内に突出させていてもよい(請求項)。
【0014】
その他の態様として、吸気温センサの先端が、スロットルボア内のスロットル弁の上流側に突出し、カバー部材上で、吸気温センサが吸気流通方向の上流側に相当する位置に配設され、吸気圧センサが吸気流通方向の下流側に相当する位置に配設されていてもよい(請求項7)。
【0015】
その他の態様として、スロットル開度センサと、吸気温センサ及び吸気圧センサの少なくとも何れか一方とが、カバー部材に設けられた共通の基板を介してカバー部材の一側に設けられた共通のコネクタに電気的に接続され、基板及びコネクタを介してそれぞれの検出信号をエンジンの運転を制御する制御装置に出力するようにしてもよい(請求項8)。
【0016】
その他の態様として、スロットルボディが、単一のスロットルボアが形成され、鞍乗り型車両に走行用動力源として搭載された単気筒のエンジンに装着されていてもよい(請求項9)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスロットル装置によれば、スロットル軸線方向における占有スペースを縮小して、コンパクト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のスロットル装置を示す斜視図である。
図2】スロットルボディからギヤカバーを取り外してギヤ収容室内のギヤ列を示した斜視図である。
図3】スロットルボディからギヤカバーを取り外してギヤカバーの内側面を示した斜視図である。
図4】モータ、ギヤ列及びスロットル軸の関係を示した分解斜視図である。
図5】ギヤ収容室内でのギヤ列及び各センサの配置を示した図である。
図6】モータ、ギヤ列及びスロットル軸の関係とスロットル開度センサとを示した図5のVI-VI線断面図である。
図7】ギヤカバーと、これに埋設されるセンサユニットとの関係を示した分解斜視図である。
図8】ギヤカバーと、これに埋設されるセンサユニットとの関係を別角度で示した分解斜視図である。
図9】ギヤカバーへの吸気温センサの埋設状態を示す図5のIX-IX線断面図である。
図10】ギヤカバーへの吸気圧センサの埋設状態を示す図5のX-X線断面図である。
図11】コネクタを後方に指向させた別例を示す斜視図である。
図12】コネクタを下方に指向させた別例を示す斜視図である。
図13】コネクタを右方に指向させた別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を原動機付き自転車に走行用動力源として搭載される単気筒エンジン用のスロットル装置に具体化した一実施形態を説明する。
スロットル装置1は図示しないエンジンに装着され、運転者のスロットル操作に応じてエンジンの筒内に供給される吸気量を調整する機能を奏する。図1~3に示すように全体としてスロットル装置1は、エンジンの筒内と連通する単一のスロットルボア2内にスロットル軸3によりスロットル弁4が開閉可能に支持されたスロットルボディ5、スロットルボディ5との間でギヤ収容室6を画成するギヤカバー7、及びギヤ収容室6内に突出した出力軸9aの回転をギヤ列8を介してスロットル軸3に伝達し、スロットル弁4を開閉するモータ9から構成されている。本実施形態においては、ギヤ収容室6が本発明の機構室に相当し、ギヤカバー7が本発明のカバー部材に相当し、ギヤ列8が本発明の伝達機構に相当する。
【0020】
本実施形態のスロットル装置1は、図1に示す姿勢で車両に搭載される。この姿勢に倣って以下の説明では、スロットルボア2の軸線Cbに沿った吸気流通方向を前後方向と称し、これと直交するスロットル軸3の軸線Cthに沿ったスロットル軸線方向を左右方向と称し、何れの方向とも直交するギヤ列8が並んだギヤ列方向を上下方向と称する。無論、スロットル装置1の搭載姿勢はこれに限るものではなく、種々の姿勢に変更可能である。
【0021】
《スロットルボディ5》
図4,6に示すようにスロットルボディ5には前後方向にスロットルボア2が貫設されると共に、その下方に隣接してモータ9を収容したモータ収容室10が一体形成されている。スロットルボディ5は、スロットルボア2の後端に形成されたフランジ11を介して図示しないボルトでエンジンの吸気マニホールドに連結され、スロットルボア2の前端には図示しないエアクリーナが連結される。このスロットルボディ5にはスロットルボア2を貫通してスロットル軸3が配設され、一対の軸受12により回動可能に支持されている。スロットルボア2内においてスロットル軸3にはスロットル弁4が一対のビス13により固定され、エンジンの運転中には、スロットル軸3の回動に伴ってスロットル弁4が開閉してスロットルボア2内を流通する吸気の量が調整される。
【0022】
《ギヤ収容室6》
スロットル軸3はスロットルボディ5内で右方に向けて延設され、その端部はスロットルボディ5の右側面から外部に突出している。スロットルボディ5の右側面全体には、右方に向けて開口する凹部14が形成されている。この凹部14によりスロットル軸3の端部が包囲されており、モータ9の出力軸9aも凹部14内に突出している。スロットルボディ5の凹部14には、左方に開口する凹状をなすギヤカバー7が配設され、ギヤカバー7の周囲は、図示しないパッキンを介して凹部14の周囲に重ねられて4本のビス15により締結されている。このギヤカバー7により凹部14が閉塞され、ギヤカバー7と凹部14との間には、上下方向に延びた形状をなすギヤ収容室6が画成されている。
【0023】
ギヤ収容室6内においてモータ9の出力軸9aとスロットル軸3との間には、ギヤ列8が設けられている。ギヤ列8は、モータ9の出力軸9aに固定された駆動ギヤ16、スロットル軸3に固定された被動ギヤ18、駆動ギヤ16と被動ギヤ18との間に設けられた中間ギヤ17からなり、各ギヤ16~18が上下方向に並設されている。中間ギヤ17はスロットルボディ5とギヤカバー7と間に立設されたギヤ軸19に回転可能に支持され、駆動ギヤ16と噛合する大径部17aと、被動ギヤ18と噛合する小径部17bとを一体形成してなる。ギヤ収容室6内においてスロットル軸3上には戻りバネ20が巻回され、図示はしないが、その一端がスロットルボディ5側に掛止され、他端がスロットル軸3に掛止されている。
【0024】
この戻りバネ20の付勢力によりスロットル弁4は所定開度、例えば全閉位置等に向けて付勢されている。そしてモータ9が作動すると、出力軸9aの回転は中間ギヤ17の大径部17aに伝達されて減速され、さらに中間ギヤ17の小径部17bから被動ギヤ18に伝達されて減速され、戻りバネ20の付勢力に抗してスロットル軸3が回動して上記のようにスロットル弁4を開閉する。
【0025】
なお、バタフライ式のスロットル弁4が全開と全閉との間で開閉するときの角度領域は90°より若干小さく、スロットル軸3を介して被動ギヤ18も同一の角度領域で回動する。このため被動ギヤ18は、中間ギヤ17の小径部17bとの噛合のために必要な領域だけに歯が形成された扇状をなしている。なお、ギヤ列8の構成はこれに限るものではなく、モータ9の出力軸9aの回転を減速しながらスロットル軸3に伝達するものであれば、ギヤ数や各ギヤの配置等を任意に変更可能である。
【0026】
以上のように本実施形態のスロットル装置1は、本来の吸気量の調整機能を奏するスロットルボディ5に加えて、その右側にモータ駆動のためのギヤ列8を収容したギヤ収容室6を設けており、この点は特許文献1の技術と同様である。そして、エンジン制御のためにスロットル装置1には、スロットルボア2内を流通する吸気の温度を検出する吸気温センサ、及び吸気の圧力を検出する吸気圧センサが備えられる点も、特許文献1と同様である。このため、仮にスロットルボディ5の左側、換言するとスロットルボディ5を挟んだギヤ収容室6とは反対側に各センサを取り付けた場合には、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、左右方向におけるスロットル装置1の占有スペースが増大してしまうという問題が生じる。
【0027】
このような不具合を鑑みて、本発明者はスロットルボディ5との間でギヤ収容室6を画成しているギヤカバー7に着目した。この種のモータ駆動のスロットル装置1にはスロットル開度センサが備えられる場合があり、本実施形態においてもギヤ収容室6内にギヤ列8と共に磁気式のスロットル開度センサ21が収容されている。スロットル開度センサ21は、スロットル軸3の回動角度をスロットル開度として検出するために、図6示すようにギヤ収容室6内におけるスロットル軸線Cth上の位置で、被動ギヤ18と相対向する姿勢で配設されている。
結果としてスロットル開度センサ21は被動ギヤ18とギヤカバー7の内側面との間に配設され、その設置スペースを確保するために、元々ギヤカバー7は被動ギヤ18に対して右方に離間した断面形状をなしている。このためギヤカバー7上、特にスロットル開度センサ21の周辺にはデッドスペースが形成されており、吸気温センサや吸気圧センサを配設可能な余地が存在する。
【0028】
以上の知見の下に、本実施形態ではギヤカバー7に、スロットル開度センサ21と共に吸気温センサ22及び吸気圧センサ23を設けている。以下、各センサ21~23の詳細を説明するが、それに先立ってギヤカバー7の全体的な構成を述べる。
【0029】
《ギヤカバー7の全体構成》
図2,3に示すように、ギヤカバー7は合成樹脂材料を射出成型して製作されており、その際のインサート成型及び成型後の樹脂封止を利用して、各センサ21~23と共に、後述する基板26、中継端子30及びコネクタ端子31,32等の各部品が、ギヤカバー7及び樹脂封止により形成された樹脂封止体24に埋設されている。以下、ギヤカバー7及び樹脂封止体24を除外した、各センサ21~23、基板26、中継端子30及びコネクタ端子31,32等の各部品の集合体をセンサユニット25と称する。またギヤカバー7の呼称については、センサユニット25及び樹脂封止体24を含めた完成状態の意味でも、これらを除外した単体の意味でも使用する。
【0030】
図2,3はインサート成型及び樹脂封止によりセンサユニット25が埋設された完成状態のギヤカバー7が示され、図7,8はギヤカバー7からセンサユニット25及び樹脂封止体24を分離した状態が示されている。なお、図7,8に示す分離状態は実際のギヤカバー7の製作過程では発生せず、あくまでも理解を容易にするために示したものである。
【0031】
《センサユニット25》
まず図7,8に基づき、センサユニット25を構成する各部品の関係を説明する。基板26は略四角状をなし、その左側面に各センサ21~23が接続されている。詳しくは、基板26の左側面の略中央にスロットル開度センサ21のセンサ本体27が配設され、センサ本体27は、上下一対のステータ27aの間に6個のホールIC27bを整列配置してなり、各ホールIC27bの端子27cが基板26に接続されている。センサ本体27が被動ギヤ18上に設けられた磁界生成部36と相対向してスロットル開度センサ21を構成するが、その詳細は後述する。
【0032】
基板26の上部前側には吸気温センサ22の一対の端子28aが接続され、各端子28aは左方に延設されて先端にセンサ本体28が支持されている。スロットルボディ5へのギヤカバー7の結合状態では、センサ本体28はスロットルボア2内に突出して吸気の温度を検出可能となるが、その詳細は後述する。
【0033】
基板26の上部後側には吸気圧センサ23のセンサ本体29が配設され、その3本の端子29aが基板26に接続されている。スロットルボディ5へのギヤカバー7の結合状態では、センサ本体29は、圧力通路44を介してスロットルボア2内と連通して吸気の圧力を検出可能となるが、その詳細は後述する。
【0034】
基板26の下部には計6本の中継端子30の上端が接続され、各中継端子30は短い棒状をなして下方に延び、それぞれの下端にコネクタ端子31の上端が接続されている。各コネクタ端子31は、対応する中継端子30、及び基板26上に形成された図示しない配線パターンを介して各センサ21~23の端子27c,28a,29aと電気的に接続されている。各コネクタ端子31は屈曲しつつ下方に延設され、それぞれの下端は、モータ9から延設された2本のコネクタ端子32と共に整列配置され、ギヤカバー7の射出成型後には、その一側に一体形成された端子収容部33内に配設されてコネクタ34を構成する。
【0035】
図示はしないが、車体へのスロットル装置1の搭載状態ではコネクタ34に車体側コネクタが接続され、スロットル装置1は車体側コネクタ及びハーネスを介して車体に搭載されたECUと電気的に接続される。このECUが本発明の「エンジンの運転を制御する制御装置」に相当するものである。そして、エンジンの運転中には、ECUからハーネス、車体側コネクタ、コネクタ端子31,32、中継端子30及び基板26を介してモータ9及び各センサ21~23に電力が供給されて作動すると共に、各センサ21~23から出力された検出信号が上記とは逆の経路を辿ってECUに入力される。このように基板26、中継端子30及びコネクタ端子31,32は、各センサ21~23及びモータ9とECUとの間の電力や検出信号の中継機能を奏するが、その構成に関しては上記に限るものではなく任意に変更可能である。
【0036】
《ギヤカバー7へのセンサユニット25の埋設状態》
次いで、以上のように構成されたセンサユニット25のギヤカバー7への埋設状態を説明する。なお、上記のようにセンサユニット25を構成する各部品は、ギヤカバー7の射出成型及び成型後の樹脂封止を経て順次ギヤカバー7に埋設されるが、以下の説明では、ギヤカバー7に全ての部品が埋設されてスロットルボディ5への結合も完了している状態を述べる。
【0037】
〈基板26及び端子30,31,32〉
図5~7に示すように、ギヤカバー7の外側面の上部には右方に向けて開口する略四角状をなす樹脂充填枠35が一体形成され、その内部に右方から基板26が配設されている。樹脂充填枠35内には合成樹脂が充填され、硬化して形成された樹脂封止体24内に基板26及び各中継端子30が封止されている。各コネクタ端子31,32はギヤカバー7に埋設されており、それぞれの下端は、上記のようにギヤカバー7の端子収容部33内に配設されてコネクタ34を構成している。本実施形態では、端子収容部33が前方に開口することによりコネクタ34が前方、換言するとエアクリーナ側に指向している。車体へのスロットル装置1の搭載状態でエアクリーナ側にスペース的な余裕があり、前方から車体側コネクタを接続し易く、且つ周囲の部材との干渉を簡単に防止できるとの観点に基づくものである。
【0038】
〈スロットル開度センサ21〉
図5,6に示すようにギヤカバー7の内側面には、スロットル開度センサ21のセンサ本体27が埋設され、これによりギヤカバー7の内側面はセンサ本体27と対応する円筒状をなして左方に突出している。図5はギヤカバー7を非表示として各センサ21~23の位置関係を示しており、スロットルボディ5へのギヤカバー7の結合状態では、センサ本体27はスロットル軸線Cth上の位置で、被動ギヤ18の右側面から僅かに離間して相対向している。
【0039】
スロットル開度センサ21の磁界生成部36は、被動ギヤ18の右側面に設けられている。詳しくはセンサ本体27を包囲するように、磁界生成部36はスロットル軸線Cthを中心とした環状をなして被動ギヤ18の右側面に一体形成され、周方向に等間隔で複数のマグネット36aが埋設されている。
【0040】
磁気式のスロットル開度センサ21の原理は周知のため概略説明にとどめるが、マグネット36aにより生成された磁界中でホールIC27bに電流が流され、スロットル軸3と共に磁界生成部36が回動すると、回動角度に応じてホールIC27bにはローレンツ力に起因する電位差が生じる。この電位差がスロットル軸3の回動角度と相関する電気信号に変換されて出力される。
【0041】
なお、スロットル開度センサ21は磁気式に限定されるものではなく種々の原理のものを採用でき、例えばインダクティブ式センサを用いることができる。当該センサの原理は磁気式と同様に周知のため詳細は説明しないが、例えば被動ギヤ18の右側面に励起導体を備えたホルダを固定し、このホルダに相対向してギヤカバー7上に励磁導体及び信号検出導体を備えた基板を配置してなる。スロットル軸3と共に被動ギヤ18が回動すると、基板の励磁導体に流される交流電流に応じてホルダ上の励起導体に電流が励起され、この励起された電流により、基板の信号検出導体には交流電流が励起され、スロットル軸3の回動角度と相関する電気信号に変換されて出力される。
【0042】
本実施形態では、上記のようにギヤカバー7の内側面にセンサ本体27が埋設され、被動ギヤ18の右側面に磁界生成部36が一体形成され、センサ本体27が磁界生成部36に包囲される位置関係になっている。そして、センサ本体27の右方には基板26を封止した樹脂封止体24が位置しているため、結果としてスロットル開度センサ21を設置するために、左右方向において図6中に寸法Lで示す領域が使われている。
【0043】
スロットル開度センサ21を備えない場合には、より樹脂封止体24を被動ギヤ18の右側面に近接して配置できるが、このようにスロットル開度センサ21の設置のための寸法Lの領域が必要なことから、元々ギヤカバー7の左右方向の厚みが増大している。従って、ギヤカバー7上、特にスロットル開度センサ21の周辺の領域にはデッドスペースが形成されている。なお、インダクティブ式センサも、ホルダや基板の設置スペースを要することから同様の結果になる。
そこで、このようなスロットル開度センサ21の設置により形成されたデッドスペースを利用して、吸気温センサ22及び吸気圧センサ23が配設されている。
【0044】
〈吸気温センサ22〉
図8,9に示すように、吸気温センサ22は、その全体が樹脂封止体24を介してギヤカバー7内に埋設されてなる。詳しくは、ギヤカバー7の樹脂充填枠35内に封止された基板26からは吸気温センサ22の一対の端子28aが左方に延設され、その先端にセンサ本体28が支持されている。このようなセンサ本体28及び端子28aを内包するように、ギヤカバー7の内側面からは細長い封止パイプ37が一体形成されて左方に延設され、その先端は閉塞されて内部にセンサ本体28が位置している。
【0045】
樹脂充填枠35内に充填された合成樹脂は封止パイプ37内にも侵入・硬化して樹脂封止体24を形成し、この樹脂封止体24によりセンサ本体28及び端子28aが封止パイプ37内に封止されて吸気温センサ22が構成されている。結果として、吸気温センサ22は、ギヤカバー7から左方に延びてスロットルボア2に達する細長い形状をなしている。
【0046】
スロットルボディ5へのギヤカバー7の結合状態では、スロットルボディ5に形成された貫通孔38内に吸気温センサ22が挿入され、吸気温センサ22の基端とスロットルボディ5との間にはOリング39が介装されている。吸気温センサ22の先端はスロットルボア2内のスロットル弁4よりも前側位置に突出し、内部に埋設されているセンサ本体28には、スロットルボア2内を流通する吸気の温度が伝達される。詳しくは、センサ本体28は封止パイプ37及び樹脂封止体24を形成する二層の合成樹脂に封止され、互いに密着状態にある合成樹脂を介して吸気の温度が効率的にセンサ本体28に伝達されるため、その検出感度及び応答性を向上させることができる。例えば吸気温センサ22としては、温度変化に応じて抵抗が変化するサーミスタ等を用いることができ、抵抗変化が吸気温と相関する電気信号に変換されて出力される。
【0047】
〈吸気圧センサ23〉
図8,10に示すように、ギヤカバー7には吸気圧センサ23が埋設されている。詳しくは、樹脂充填枠35内に封止された基板26に近接する位置で、ギヤカバー7内に吸気圧センサ23が埋設されている。吸気圧センサ23の左側位置において、ギヤカバー7には圧力室40が形成されて吸気圧センサ23と連通している。ギヤカバー7の内側面からは細長い連通パイプ41が一体的に形成されて左方に延設され、その先端が開放されると共に、基端が圧力室40と連通している。この連通パイプ41が本発明の「パイプ」に相当するものである。
【0048】
スロットルボディ5へのギヤカバー7の結合状態では、スロットルボディ5に形成された貫通孔42内に連通パイプ41が挿入され、連通パイプ41の基端とスロットルボディ5との間にはOリング43が介装されている。このOリング43が本発明の「シール部材」に相当するものである。貫通孔42はスロットルボア2内のスロットル弁4よりも後側位置に開口し、連通パイプ41の先端は貫通孔42の中程まで達している。貫通孔42及び連通パイプ41の内部は互いに連続して左右方向に延びる圧力通路44を形成し、この圧力通路44及び圧力室40を介してスロットルボア2内と吸気圧センサ23とが連通している。
【0049】
このため、スロットルボア2内を流通する吸気の圧力が、圧力通路44及び圧力室40を介して吸気圧センサ23のセンサ本体29に作用する。センサ本体29はギヤカバー7への埋設により強固に位置保持されているため、圧力を受けても位置変位することなく所期の検出機能を奏する。
【0050】
例えば吸気圧センサ23としては、半導体式圧力センサや歪みゲージ式圧力センサ等を用いることができる。これらの圧力センサの原理は周知のため詳細は説明しないが、半導体圧力センサは、シリコンゲージを形成したダイヤフラム受圧面に圧力を作用させて、圧力に応じたシリコンゲージの撓みによる抵抗変化(ピエゾ抵抗効果)を吸気圧と相関する電気信号に変換して出力する。また歪みゲージ式圧力センサは、裏面に抵抗ブリッジを貼った金属ダイヤフラムに圧力を作用させて、金属ダイヤフラムの撓みに応じた抵抗ブリッジの電圧変化を吸気圧と相関する電気信号に変換して出力する。
【0051】
このように構成されたギヤカバー7の製作は、射出成型及び成型後の樹脂封止の順に実施され、その際に以下の手順でセンサユニット25を構成する各部品が埋設される。なお、この製作過程は一例であり、その内容を任意に変更可能なことは言うまでもない。
【0052】
まずギヤカバー7の射出成型を実施する際に、スロットル開度センサ21のセンサ本体27、吸気圧センサ23、各コネクタ端子31,32をギヤカバー7に埋設する。次いで、予め基板26に吸気温センサ22の端子28aをハンダ付けしておき、ギヤカバー7の封止パイプ37内にセンサ本体28及び端子28aを挿入しながら、基板26を樹脂充填枠35内の所定位置に配設する。自ずと基板26のスルーホールには、スロットル開度センサ21のセンサ本体27の端子27c及び吸気圧センサ23の端子29aが挿入され、各挿入箇所をハンダ付けする。また、基板26と各コネクタ端子31の上端との間に中継端子30を架け渡して配置し、各中継端子30の上端を基板26に、各中継端子30の下端をコネクタ端子31にそれぞれカシメ等で連結する。これにより各中継端子30を介して基板26と各コネクタ端子31とが電気的に接続される。
【0053】
その後、外側面を上に向けた姿勢にギヤカバー7を保ち、上方に開口する樹脂充填枠35内に合成樹脂を流し込む。合成樹脂は樹脂充填枠35内に充填されると共に、封止パイプ37内にも侵入して樹脂封止体24として硬化する。これにより樹脂充填枠35内に基板26及び各中継端子30が封止されると共に、封止パイプ37内にセンサ本体28及び端子28aが封止されて吸気温センサ22が形作られ、ギヤカバー7の製作が完了する。
【0054】
次いで、このようにしてギヤカバー7に埋設された吸気温センサ22及び吸気圧センサ23の配置状態を、スロットル開度センサ21を基準として説明する。
図6に基づき述べたように、ギヤカバー7にスロットル開度センサ21を埋設するための寸法Lの領域を確保すべく、ギヤカバー7の左右方向の厚みが増大し、結果としてギヤカバー7上、特にスロットル開度センサ21の周辺の領域にはデッドスペースが形成されている。
【0055】
そして、図5に示すようにスロットル開度センサ21を基準として、吸気温センサ22は上方且つ前方に配設され、吸気圧センサ23は上方且つ後方に配設されており、何れの位置もスロットル開度センサ21の周辺のデッドスペース内に含まれる。従って、ギヤカバー7の厚みをほとんど増大させることなく、ギヤカバー7内に両センサ22,23が埋設されている。結果として、スロットル装置1に備えられるべきスロットル開度センサ21、吸気温センサ22及び吸気圧センサ23の全てが、ギヤカバー7に集約して設けられている。
【0056】
特許文献1のスロットル装置では、スロットルボディの一側方にギヤ収容室を設け、他側方に吸気温センサ及び吸気圧センサからなるセンサユニットを設けているが、このセンサユニットの機能が本実施形態ではギヤカバー7により果たされる。結果としてセンサユニットの左右方向の厚み相当分だけ、本実施形態ではスロットル装置1の左右方向の占有スペースを縮小してコンパクト化することができる。特に本実施形態のスロットル装置1は、車体が小さい原動機付き自転車に搭載される上に、その周囲にはエンジンの補機類のみならず燃料タンクや車体フレーム等が位置する。このためスロットル装置1が十分にコンパクト化されていないと、干渉回避のために車体側の対策が必要になる場合もあり得るが、このような不具合を未然に回避することができる。
加えて、特許文献1のギヤユニットに相当する部材が不要となるため、部品点数を削減してスロットル装置1全体の構成を簡略化でき、この要因は製造コストの低減に貢献する。
【0057】
また、上記のような吸気温センサ22及び吸気圧センサ23の配置は、以下の点でも優れる。
図5に示すように、被動ギヤ18は扇状をなしてスロットル軸線Cthを中心として図示の姿勢から反時計回りに回動し、その回動範囲は、スロットル弁4の開閉に要求される90°弱に余裕分を加えた値になる。この被動ギヤ18の回動範囲にも吸気温センサ22や吸気圧センサ23を配設することはできるが、その場合には、例えば被動ギヤ18に対して各センサ22,23を左右方向にずらして干渉防止する等の対策が必要になる。しかし、このような対策はギヤカバー7の厚みの増大、ひいてはスロットル装置1のコンパクト化を妨げる要因になり得る。
【0058】
スロットル開度センサ21を基準とした上方且つ前方の位置、及び上方且つ後方の位置は、共に被動ギヤ18の回動範囲から外れた位置に相当する。従って、それぞれの位置に吸気温センサ22及び吸気圧センサ23を配設することにより、被動ギヤ18との干渉防止の対策に起因するギヤカバー7の厚みの増大を未然に防止でき、スロットル装置1のコンパクト化をより確実に実現することができる。以上の各センサ22,23が配設された位置を表す、スロットル開度センサ21を基準とした上方且つ前方の位置、及び上方且つ後方の位置が、本発明の「前記スロットル開度センサ21を基準として前記伝達機構とは反対側の領域」に相当するものである。
【0059】
加えて、このような各センサ22,23の配置により、スロットルボディ5内に吸気温センサ22と吸気圧センサ23の圧力通路44とを容易に配置できるという効果も得られる。
即ち、図9に示すように吸気温センサ22は、封止パイプ37内にセンサ本体28及び端子28aを挿入するために直線形状が望ましい。また、図10に示すように吸気圧センサ23の圧力通路44は、圧力伝達の観点から、複雑に屈曲した形状よりも直線形状が望ましい。また、スロットルボディ5の構造的な観点からも、それぞれ単純な直線形状とすることが望まれる。一方で、図6に示すように、スロットルボディ5内ではスロットル軸3に戻りバネ20が巻回され、その下方には中間ギヤ17を支持するギヤ軸19等の部材が配設されているため、これらの部材を避けて吸気温センサ22及び圧力通路44を設ける必要がある。
【0060】
上記のようにギヤカバー7上の前側位置から直線形状の吸気温センサ22が左方に延設された場合、スロットルボディ5内において吸気温センサ22は戻りバネ20の上方且つ前方に位置して干渉が防止され、より下方位置のギヤ軸19等の部材に対しても全く干渉しない。同じくギヤカバー7上の後側位置の吸気圧センサ23から直線形状の圧力通路44が左方に延設された場合、スロットルボディ5内において圧力通路44は戻りバネ20の上方且つ後方に位置して干渉を防止され、より下方位置のギヤ軸19等の部材に対しても全く干渉しない。結果として、吸気温センサ22及び圧力通路44を機能面で望ましい直線形状とした上で、それぞれをスロットルボディ5内で他の部材と干渉させることなく容易に配置できるという効果が得られる。
【0061】
また、このような吸気温センサ22を前側とし、吸気圧センサ23を後側とした配置は、吸気温及び吸気圧を適切に検出する観点からも合理的なものである。即ち、周知のように吸気温は、スロットルボア2への導入直後の吸気、換言するとスロットル弁4の上流側の吸気を検出対象とすることが要求される。また吸気圧は、スロットル弁4を経て負圧を生じた吸気、換言するとスロットル弁4の下流側の吸気を検出対象とすることが要求される。これらの要求を満たすには、スロットルボア2内において吸気温センサ22の先端をスロットル弁4よりも上流側、即ち前側位置に突出させ、圧力通路44をスロットル弁4よりも下流側、即ち後側位置に開口させる必要がある。
【0062】
仮に吸気温センサ22と吸気圧センサ23との前後関係を本実施形態とは逆転させた場合には、スロットルボディ5内で直線形状の吸気温センサ22と圧力通路44とを交差して配置するか、或いはそれぞれを複雑に屈曲した形状とする必要が生じ、何れの場合もスロットルボディ5が構造的に複雑化してしまう。本実施形態では、吸気温センサ22及び圧力通路44に要求される吸気流通方向の位置関係に対応して、ギヤカバー7上での各センサ22,23の前後関係が定められている。具体的には、吸気温センサ22が前側、即ち、本発明の「吸気流通方向の上流側に相当する位置」に配設され、吸気圧センサ23が後側、即ち本発明の「吸気流通方向の下流側に相当する位置」に配設されている。
【0063】
このため、吸気温センサ22及び圧力通路44を直線形状に保ち、且つスロットル弁4の前後の所期の吸気を検出対象とした上で、スロットルボディ5の構造的な複雑化を回避できるという別の効果も実現できる。
なお、このようにギヤカバー7上での両センサ22,23の前後関係が設定されていれば、必ずしも吸気温センサ22及び圧力通路44を直線形状とする必要はない。スロットルボディ5内での互いの交差配置を回避できるため、たとえ直線形状でなくても交差配置させた場合よりは単純な形状となり、スロットルボディ5の構造の簡素化に貢献するためである。
【0064】
一方、スロットル開度センサ21、吸気温センサ22及び吸気圧センサ23は、ECUからの電力供給及びECUへの検出信号の出力のために、基板26、中継端子30及びコネクタ端子31を介して車体側と電気的に接続されている。そして、各センサ21~23の端子27c,28a,29aは共通の基板26に接続され、基板26は各中継端子30及び各コネクタ端子31を介して共通のコネクタ34に接続されている。結果として各センサ21~23とECUとは、共通の基板26及びコネクタ34を介して電力や検出信号の遣り取りがなされる。
【0065】
センサ毎にギヤカバー7上に基板26やコネクタ34を設けた場合には、同じくギヤカバー7上に設けるべき各センサ21~23自体の配置、或いはギヤ列8等の他の部品の配置が制約されてしまう上に、部品点数の増加により製造コスト面でも不利になる。基板26及びコネクタ34を共通化することにより、限られたギヤカバー7上のスペースを有効活用でき、ひいてはギヤカバー7上での各センサ21~23やギヤ列8等の配置に関する自由度を拡大でき、しかも、部品点数を一層削減してコスト低減を達成することができる。
【0066】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、原動機付き自転車に搭載される単一のスロットルボア2を備えたスロットル装置1に具体化したが、用途やスロットル装置1の形式については、これに限るものではない。本発明は、運転者がサドルに跨って搭乗するいわゆる鞍乗り型車両の全般に適用可能であり、この種の鞍乗り型車両としては、スクーターやモペット等の小排気量エンジンを搭載した2輪車(原動機付き自転車等)のみならず、より大排気量のエンジンを搭載した2輪車(自動二輪車等)、或いは4輪バギー等のATV(All Terrain Vehicle)等が存在する。従って、これらの各種車両に走行用動力源として搭載されるエンジンを対象として、本発明のスロットル装置を任意に適用することができる。また、走行用動力源以外の用途で利用されるエンジン、例えば発電機用のエンジン等に本発明のスロットル装置を適用してもよい。さらに、複数のスロットルボアを備えた多連スロットル装置として具体化してもよい。
【0067】
また上記実施形態では、ギヤカバー7へのスロットル開度センサ21の設置により、その周囲に形成されたデッドスペースを利用して吸気温センサ22及び吸気圧センサ23を配設したが、これに限るものではない。ギヤカバー7上の何れの箇所にデッドスペースが形成されるかは、ギヤカバー7上に設けられる各部材の構成によって相違し、例えばギヤ列8を構成するギヤ数や配置等が変われば、ギヤ列8の周辺にデッドスペースが形成されることもある。何れにしてもデッドスペースを利用してギヤカバー7上に各センサ21~23を集約して設ければ、上記実施形態で述べた効果が得られるため、それらの設置位置についてはギヤカバー7上であれば何れの箇所であってもよい。
【0068】
また上記実施形態では、スロットル開度センサ21に加えて吸気温センサ22及び吸気圧センサ23を備えたが、必ずしも全てのセンサ21~23を備える必要はなく、例えばエンジン制御からの要請等に応じて、吸気温センサ22と吸気圧センサ23との何れかを省略してもよい。
【0069】
また上記実施形態では、スロットルボア2内での吸気温センサ22及び圧力通路44の前後関係と、ギヤカバー7上での吸気温センサ22及び吸気圧センサ23の前後関係とを対応させることにより、スロットルボディ5内での吸気温センサ22と圧力通路44との交差配置を回避したが、必ずしもこのような前後関係とする必要はなく、両センサ22,23の前後関係を逆転させてもよい。
【0070】
また上記実施形態では、モータ9の回転をスロットル軸3に伝達するためにギヤ列8を用いたが、本発明の伝達機構はこれに限るものではなく、周知の伝達機構を任意に適用することができる。
【0071】
また上記実施形態では、ギヤカバー7の外側面に設けられたコネクタ34を前方に指向させたが、これに限るものではない。スロットル装置1は種々の車体に搭載され、車体毎にスロットル装置1の周囲に位置する部材の配置が異なり、またスロットル装置1自体の搭載姿勢も異なる。そして何れの車体においても、コネクタへの相手側コネクタの接続し易さ、或いは周囲の部材との干渉防止等が要求されることから、結果として、それらの要求を満足できるコネクタの指向方向が車体毎に異なる。
【0072】
図11~13は、説明の便宜上、実施形態と同一姿勢でスロットル装置1を表しており、図11ではコネクタ51を後方に指向させ、図12ではコネクタ52を下方に指向させ、図13ではコネクタ53を右方に指向させている。実際のスロットル装置1の車体への搭載姿勢は図示のものと異なるかもしれないが、何れにしても図11ではエンジン側にスペース的な余裕があるとの観点の下に、図12ではエンジン下部にスペース的な余裕があるとの観点の下に、図13ではエンジンの側部にスペース的な余裕があるとの観点の下に、それぞれギヤカバー7上のコネクタ51~53の指向方向が決定されている。例えば、これらのギヤカバー7を車体側からの要求に応じて選択的にスロットルボディ5に結合すれば、スロットルボディ5を共用できるためスロットル装置1のコスト低減にもつながる。
【符号の説明】
【0073】
1 スロットル装置
2 スロットルボア
3 スロットル軸
4 スロットル弁
5 スロットルボディ
6 ギヤ収容室(機構室)
7 ギヤカバー(カバー部材)
8 ギヤ列(伝達機構)
9 モータ
9a 出力軸
21 スロットル開度センサ
22 吸気温センサ
23 吸気圧センサ
37 封止パイプ(パイプ)
38 貫通孔
43 Oリング(シール部材)
44 圧力通路
26 基板
34,51~53 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13