(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B62D25/12 N
(21)【出願番号】P 2020109569
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】田仲 亮介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 麻美
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-035557(JP,U)
【文献】特開平08-048264(JP,A)
【文献】実開平05-080973(JP,U)
【文献】特表2013-515887(JP,A)
【文献】特開2009-203729(JP,A)
【文献】特開2018-099978(JP,A)
【文献】米国特許第06543822(US,B1)
【文献】特開2019-098928(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102019204065(DE,A1)
【文献】実開昭58-137761(JP,U)
【文献】実開昭61-198462(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/12
E05B 83/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、
前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、
前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、
を具備し、
前記ロック機構は、
操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、
前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、
を具備し、
前記移動部材は、
前記操作具で押圧される被押圧部と、
前記ロック部材と当接する当接部と、
を具備し、
前記操作具で前記被押圧部が押圧されることにより揺動軸回りに揺動して、前記当接部によって前記ロック部材を押圧し、当該ロック部材を移動可能に形成され、
前記揺動軸の軸線方向視において、前記揺動軸と前記当接部との間の距離は、前記揺動軸と前記被押圧部との間の距離よりも短い、
作業車。
【請求項2】
前記被押圧部、前記揺動軸及び前記当接部が略前後方向に並ぶように設けられる、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ボンネットの前部に設けられ、
前記移動部材は、前記ロック部材よりも前方に設けられる、
請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、
前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、
前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、
を具備し、
前記ロック機構は、
操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、
前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、
を具備し、
前記移動部材は、
前記操作具で押圧されるように前記操作具を案内する案内部を具備する、
作業車。
【請求項5】
機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、
前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、
前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、
を具備し、
前記ロック機構は、
操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、
前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、
を具備し、
前記ボンネットは、
車体正面から視認可能、かつ、前記操作具を挿入可能な貫通孔を具備する、
作業車。
【請求項6】
前記ロック機構は、
左右のヘッドライトの間に配置されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンネットをロック可能な作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボンネットをロック可能な作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、エンジンルームを覆う開閉可能なボンネットと、ボンネット内壁に設けられたピン部材と、前記ピン部材と係合してボンネットをロックするロック機構(ボンネット固定具)とを備えた農業用トラクタが記載されている。当該農業用トラクタにおいては、ロック機構はエンジンルームに設けられている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、ロック機構がエンジンルーム側に設けられているため、作業スペースや視認性等を十分に確保できないおそれがあり、このため作業性の点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作業性を向上させることができる作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、を具備し、前記ロック機構は、操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、を具備し、前記移動部材は、前記操作具で押圧される被押圧部と、前記ロック部材と当接する当接部と、を具備し、前記操作具で前記被押圧部が押圧されることにより揺動軸回りに揺動して、前記当接部によって前記ロック部材を押圧し、当該ロック部材を移動可能に形成され、前記揺動軸の軸線方向視において、前記揺動軸と前記当接部との間の距離は、前記揺動軸と前記被押圧部との間の距離よりも短いものである。
【0011】
請求項2においては、前記被押圧部、前記揺動軸及び前記当接部が略前後方向に並ぶように設けられるものである。
【0012】
請求項3においては、前記ロック機構は、前記ボンネットの前部に設けられ、前記移動部材は、前記ロック部材よりも前方に設けられるものである。
【0014】
請求項4においては、機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、を具備し、前記ロック機構は、操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、を具備し、前記移動部材は、前記操作具で押圧されるように前記操作具を案内する案内部を具備するものである。
【0015】
請求項5においては、機体フレームに対して揺動可能に形成された、エンジンを覆う開閉式のボンネットと、前記機体フレーム側に設けられた被係合部と、前記ボンネット側に、前記被係合部と係合して前記ボンネットをロックするロック状態と、前記被係合部と係合せず前記ボンネットをロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構と、を具備し、前記ロック機構は、操作具で押圧されることにより移動可能な移動部材と、前記被係合部と係合し、前記移動部材の移動に伴って前記被係合部との係合が解除されるロック部材と、を具備し、前記ボンネットは、車体正面から視認可能、かつ、前記操作具を挿入可能な貫通孔を具備するものである。
【0016】
請求項6においては、前記ロック機構は、左右のヘッドライトの間に配置されているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、作業性を向上させることができる。また請求項1においては、ロック機構を簡易な構成とすることができる。また請求項1においては、移動部材の操作に要する力を低減させることができ、ひいてはロック解除の作業性を向上させることができる。
【0021】
請求項2においては、ボンネット内の限られたスペースを有効活用して移動部材を配置することができる。
【0022】
請求項3においては、ロック機構をボンネットの前部に集約することで、移動部材とボンネット内部の他の部材とが干渉し難くすることができる。
【0024】
請求項4においては、作業性を向上させることができる。また請求項4においては、ロック機構を簡易な構成とすることができる。また請求項4においては、移動部材が操作具で押圧され易くなり、ひいてはロック解除の作業性を向上させることができる。
【0025】
請求項5においては、作業性を向上させることができる。また請求項5においては、ロック機構を簡易な構成とすることができる。また請求項5においては、操作具を挿入する貫通孔を視認し易くすることができる。
【0026】
請求項6においては、左右のヘッドライトの間のスペースを有効活用してロック機構を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した右側面図。
【
図2】機体フレーム及び機体フレームに支持される部材を示した前方斜視図。
【
図5】ボンネット及びボンネットの内部を示した前方斜視図。
【
図12】(a)ボンネットが開けられた状態のロック機構を示した背面図。(b)ボンネットを閉じている途中(第一段階)のロック機構を示した背面図。
【
図13】(a)ボンネットを閉じている途中(第二段階)のロック機構を示した背面図。(b)ボンネットを閉じている途中(第三段階)のロック機構を示した背面図。
【
図14】ボンネットが閉じられた状態のロック機構を示した背面図。
【
図15】ボンネットが閉じられた状態及び開かれた状態を示した側面図。
【
図16】(a)操作具で移動部材を押圧する前の状態のロック機構を示した平面図。(b)操作具で移動部材を押圧した状態のロック機構を示した平面図。
【
図17】(a)ボンネットが閉じられた状態のロック機構を示した背面図。(b)ボンネットを開けている途中(第一段階)のロック機構を示した背面図。
【
図18】(a)ボンネットを開けている途中(第二段階)のロック機構を示した背面図。(b)ボンネットが開けられた状態のロック機構を示した背面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0029】
以下では、
図1及び
図2を用いて本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0030】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、トランスミッションケース4、油圧昇降装置5、前輪6、後輪7、ボンネット20、ステアリングホイール9、座席10、ベース部材11、バッテリ12、支持フレーム13、フューエルクーラー14、ラジエータ15、センターピラー16及びロック機構30等を具備する。
【0031】
機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けて配置される。機体フレーム2の後部には、エンジン3が固定される。エンジン3の後方には、トランスミッションケース4が配置される。トランスミッションケース4の後部には、油圧昇降装置5が設けられる。油圧昇降装置5には、各種の作業装(例えば、ロータリ耕耘装置等)を装着することができる。また、トランスミッションケース4の下部(前輪6及び後輪7の間)にも、各種の作業機(例えば、モア等)を装着することができる。
【0032】
また、機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。トランスミッションケース4は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。
【0033】
また、エンジン3は、センターピラー16に支持されたボンネット20に覆われる。ボンネット20の後方には、前輪6の切れ角を調節するステアリングホイール9が設けられる。ステアリングホイール9の後方には、運転者が着座するための座席10が設けられる。
【0034】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース4に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされると共に、リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。こうして、エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7を回転駆動させ、トラクタ1は走行することができる。
【0035】
ボンネット20の内側の前部には、ボンネット20をロック(ボンネット20を閉じた状態で保持)するロック機構30が設けられる。
【0036】
図2に示すように、機体フレーム2の前部(
図1に示すエンジン3の前方)には、ベース部材11が載置され、ベース部材11にバッテリ12が載置される。また、ベース部材11上には適宜の板材で構成された支持フレーム13が設けられ、支持フレーム13によってフューエルクーラー14等が支持される。フューエルクーラー14の後方には、ラジエータ15が設けられる。また、支持フレーム13には、当該支持フレーム13から前方に延びるピン13aが形成される。ピン13aは、バッテリ12の上方、かつ、フューエルクーラー14及びラジエータ15の前方に設けられる。ピン13aは、ロック機構30と係合されることで、ボンネット20をロックする。
【0037】
以下、
図3から
図5及び
図10を用いて、ボンネット20の構造について説明する。なお、
図3から
図5においては、ボンネット20が閉じられた状態を示している。また、
図5においては、ボンネット20の内部を示すために、ボンネット上部21及び右側のヘッドライト23aの図示を省略している。
【0038】
ボンネット20は、
図1に示すエンジン3や、
図2に示すバッテリ12等(ベース部材11、バッテリ12、支持フレーム13、フューエルクーラー14及びラジエータ15)を覆うように形成される。ボンネット20は、その後端部がセンターピラー16に対して回動可能に支持される(
図1及び
図15参照)。これにより、ボンネット20は、(センターピラー16を介して)機体フレーム2に対して、その前端部が上下に揺動可能に設けられる。ボンネット20は、主として、ボンネット上部21、ボンネット側部22、ボンネット前部23、ボンネットフレーム24及び付勢部材25を具備する。
【0039】
ボンネット上部21は、ボンネット20の上部を構成する部分である。ボンネット上部21は、エンジン3やバッテリ12等を上方から覆うように設けられる。
【0040】
ボンネット側部22は、ボンネット20の左右側部を構成する部分である。ボンネット側部22は、エンジン3やバッテリ12等を側方から覆うように設けられる。
【0041】
ボンネット前部23は、ボンネット20の前部を構成する部分である。ボンネット前部23は、エンジン3やバッテリ12等を前方から覆うように設けられる。ボンネット前部23の左部及び右部には、ヘッドライト23aが設けられる。また、ボンネット前部23には、貫通孔23bが形成される。
【0042】
貫通孔23bは、ボンネット20のロックを解除するための操作具A(
図16参照)を挿入するためのものである。貫通孔23bは、ボンネット前部23の左右中央よりやや右側の部分(右前方向を向くように形成された面23c)を貫通するように形成される(
図5及び
図10参照)。貫通孔23bは、正面視で視認可能に形成される。
【0043】
図5に示すボンネットフレーム24は、ボンネット20を補強するものである。ボンネットフレーム24は、適宜の板材(
図6から
図9等に示す第一部材24a、第二部材24b、第三部材24c及び第四部材24d等)で構成される。ボンネットフレーム24は、ボンネット20の内壁側に設けられる。ボンネットフレーム24は、ボンネット上部21、ボンネット側部22及びボンネット前部23それぞれに固定されており、ボンネット上部21とボンネット側部22とボンネット前部23とを連結している。
【0044】
図5に示す付勢部材25は、ボンネット20の開閉を補助するためのものである。付勢部材25は、ボンネットフレーム24を上方に付勢するものであり、例えば圧縮コイルばねである。付勢部材25は、ボンネットフレーム24の第一部材24aの下面に取り付けられる。付勢部材25は、第一部材24aと、当該第一部材24aの下方に位置する支持フレーム13との間に、圧縮された状態で設けられる。
【0045】
このように構成されたボンネット20は、前上がりに回動することで、ボンネット20の内部(エンジンルーム)を開閉することができる。
【0046】
ボンネット20は、機体フレーム2側(より詳細には、機体フレーム2に取り付けられた支持フレーム13)に設けられたピン13aに、ロック機構30(のロック部材33)が係合することにより、ロックされる。ロック機構30は、ボンネット20側に設けられる。すなわち、ロック機構30は、ボンネット20が移動(揺動)すると、ボンネット20とともに移動するように設けられる。
【0047】
以下、
図5から
図11を用いて、ロック機構30の構成について説明する。
【0048】
ロック機構30は、ピン13aと係合することにより、ボンネット20をロックするものである。また、ロック機構30は、トラクタ1のユーザが操作具A(例えばドライバなど、
図16参照)を操作することで可動するように構成されており、これによりボンネット20のロックを解除することができる。前述したように、ロック機構30は、ボンネット20の内側の前部に設けられる(
図1及び
図5参照)。また、ロック機構30は、その大部分が左右のヘッドライト23aの間のスペースに位置するように設けられる(
図3及び4等参照)。ロック機構30は、移動部材31、規制部32、ロック部材33及び付勢部材34を具備する。
【0049】
移動部材31は、移動可能に形成された部材である。移動部材31は、バッテリ12の上方、かつ、フューエルクーラー14及びラジエータ15の前方に設けられる(
図6参照)。移動部材31は、貫通孔23bよりも左方に設けられる(
図10参照)。移動部材31は、ロッド部311、被押圧部312、案内部313及び被支持部314を具備する。
【0050】
ロッド部311は、移動部材31の主たる構造体を構成する部分である。ロッド部311は、ロッド前部311a、ロッド中途部311b及びロッド後部311cを具備する。
【0051】
ロッド前部311aは、ロッド部311の前部を構成する部分である。ロッド前部311aは、延伸方向が略前後方向に向くように設けられる。
【0052】
ロッド中途部311bは、ロッド部311の中途部を構成する部分である。ロッド中途部311bは、ロッド前部311aの後端部から略左上方に延びるように形成される。
【0053】
ロッド後部311cは、ロッド部311の後部を構成する部分である。ロッド後部311cは、ロッド中途部311bの上端部(左端部)から略後方に延びるように形成される。
【0054】
ロッド部311は、このように屈曲することで、ボンネット20の内部の部材(例えば、ロック機構30の前方に位置し、略縦方向に延びる第二部材24b、
図7及び
図8参照)と干渉しないように形成されている。
【0055】
被押圧部312は、操作具Aによって押圧される部分である。被押圧部312は、ロッド前部311aの前端部に設けられる。被押圧部312は、貫通孔23bの左後方に設けられる(
図10参照)。被押圧部312は、板面を略左右方向に向けた板状に形成される。
【0056】
案内部313は、操作具Aによって被押圧部312を押圧できるように、当該操作具Aを案内するためのものである。案内部313は、軸線を略左右方向に向けた円筒状に形成される。案内部313は、被押圧部312の右側を向く面に固定される。
【0057】
被支持部314は、ボンネットフレーム24によって支持される部分である。被支持部314は、ロッド後部311cから右方に延びるように形成される。被支持部314は、板面を上下方向に向けた板状に形成される。被支持部314には、揺動軸314aが挿通される。
【0058】
揺動軸314aは、移動部材31の揺動中心を構成する部分である。揺動軸314aは、軸線を上下方向に向けて、被支持部314の正面視略中央部に設けられた貫通孔に挿通される。また、揺動軸314aは、ボンネットフレーム24の第一部材24aの上方に設けられた第三部材24cに固定される(
図6及び
図9参照)。揺動軸314aは、被押圧部312よりも後方かつ左方に設けられる(
図10参照)。
【0059】
このように構成された移動部材31は、ボンネットフレーム24(第三部材24c)に対して、揺動軸314aの軸線を中心として(揺動軸314a回りに)回動可能に支持される。
【0060】
規制部32は、板面を前後方向に向けた板状に形成される。規制部32は、長手方向を上下方向に向けた正面視略矩形状に形成される。規制部32は、移動部材31の揺動軸314aの後方に設けられる。規制部32には、長孔321及び第一切欠部322が形成される。
【0061】
図6及び
図11等に示す長孔321は、移動部材31の移動を規制するためのものである。長孔321は、後述する揺動軸331の上方に、長手方向を左右方向に向けて形成される。長孔321には、移動部材31のロッド後部311cが挿通される。これにより、移動部材31の揺動範囲が規制される。
【0062】
図8及び
図11等に示す第一切欠部322は、長孔321の下方に形成される切欠部である。第一切欠部322は、規制部32の下端中央が上方に切り欠かれるように形成される。第一切欠部322の下部は、下方に向かうにつれて左右幅が広がるように形成される。第一切欠部322には、ピン13aが挿通される(
図8参照)。
【0063】
ロック部材33は、ピン13aと係合する部分である。ロック部材33は、板面を前後方向に向けた板状に形成される。ロック部材33は、長手方向を上下方向に向けて設けられる。ロック部材33は、規制部32の後方に設けられる。ロック部材33には、揺動軸331、第二切欠部332、第三切欠部333及び斜面部334が形成される。
【0064】
揺動軸331は、ロック部材33の揺動中心を構成する部分である。揺動軸331は、軸線を前後方向に向けて、ロック部材33の上下略中央、かつ、左右中央よりもやや右部に設けられた貫通孔に挿通される。また、揺動軸331は、規制部32にも挿通され、規制部32及びロック部材33から抜け落ちないように設けられている。
【0065】
図7、
図8及び
図11等に示す第二切欠部332は、移動部材31と係合する部分である。第二切欠部332は、揺動軸331よりも上方に形成される。第二切欠部332は、ロック部材33の上端中央が下方に切り欠かれるように形成される。第二切欠部332は、背面視において長孔321と直交するように形成される。第二切欠部332には、移動部材31のロッド後部311cが挿通される。以下では、ロッド後部311cのうち第二切欠部332内に位置する部分(第二切欠部332と当接可能な部分)を、当接部311dと称する(
図10参照)。当接部311dは、揺動軸314aの略後方(左後方)に設けられる。
【0066】
被押圧部312、揺動軸314a及び当接部311dは、前側から順に略前後方向に並ぶように設けられる。また、平面視(揺動軸314aの軸線方向視)において、揺動軸314aの中心と当接部311dとの間の直線距離は、揺動軸314aの中心と被押圧部312との間の直線距離よりも短くなるように形成される。
【0067】
図8及び
図11等に示す第三切欠部333は、ピン13aと係合する部分である。第三切欠部333は、揺動軸331よりも下方に形成される。第三切欠部333は、ロック部材33の右端部が左方に切り欠かれるように形成される。第三切欠部333は、第二切欠部332の下端よりも下方に形成される。第三切欠部333は、背面視においてその一部が第一切欠部322と重複するように形成される。第三切欠部333には、ピン13aが挿通される(
図8参照)。
【0068】
図8及び
図11等に示す斜面部334は、ロック部材33の下面である。斜面部334は、右上りの斜面状に形成される。
【0069】
付勢部材34は、移動部材31を付勢するものであり、例えば引張コイルばねである。付勢部材34の一端は、移動部材31のロッド後部311cに固定される。付勢部材34の他端は、付勢部材34の前記一端の左前方において、ボンネットフレーム24の第四部材24d(
図7及び
図8参照)に固定される。これにより、付勢部材34は、ロッド後部311cを左前方に付勢している。
【0070】
このように構成されたロック機構30においては、ロック部材33の第三切欠部333が支持フレーム13のピン13aと係合すること、より詳細には、ロック部材33の第三切欠部333の下端部が支持フレーム13のピン13aと下方から当接することにより、ボンネット20を閉じられた位置でロックすることができる。
【0071】
以下、
図12から
図15を用いて、ボンネット20を閉じてロックするときのロック機構30の動作について説明する。なお、
図12(a)及び後述する
図18(b)においては、ピン13aとロック機構30との上下方向の距離を実際よりも近く図示している。
【0072】
図12(a)は、ボンネット20が開けられた状態(
図15において二点鎖線で示す位置にある状態)のロック機構30を示している。このとき、ロック機構30は、ピン13aよりも上方に位置し、ピン13aと係合していない。すなわち、ロック機構30は、ボンネット20をロックしないロック解除状態である。ユーザーがボンネット20を前下がりに回動させると、これに伴ってロック機構30は下方に移動し、ピン13aに近接する。
【0073】
図12(b)に示すように、ロック機構30がさらに下方に移動すると、ロック部材33の斜面部334がピン13aに上方から当接する。
【0074】
図13(a)に示すように、ロック機構30がさらに下方に移動すると、ロック部材33がピン13aによって上方に押圧される。すると、ロック部材33は、揺動軸331の軸線を中心として、背面視時計回り方向に回動する。なお、ロック部材33が回動すると、第二切欠部332が移動部材31の当接部311dを右方に押圧する。すると、移動部材31は、付勢部材34の付勢力に抗して、揺動軸314aの軸線を中心として平面視反時計回り方向に回動する(
図10参照)。
【0075】
図13(b)に示すように、ロック機構30の移動に伴ってロック部材33がさらに回動すると、斜面部334はピン13aと当接しなくなる。
【0076】
すると、移動部材31は、付勢部材34の付勢力によって、揺動軸314aの軸線を中心として平面視時計回り方向に回動する(
図10参照)。すると、移動部材31の当接部311dがロック部材33の第二切欠部332を左方へと押圧することにより、ロック部材33は背面視反時計回り方向に回動する。
【0077】
図14に示すように、ロック機構30が下方に移動しながらロック部材33が背面視反時計回り方向に回動することにより、ピン13aが第三切欠部333に嵌まり込む。ボンネット20(のボンネットフレーム24)は、付勢部材25により上方に付勢されているが(
図9等参照)、第三切欠部333の下面がピン13aと下方から当接することで、ボンネット20の上方への移動が規制される。これにより、ロック機構30は、ボンネット20をロックするロック状態となる。このようにして、ボンネット20は、閉じられた状態(
図15において実線で示す位置にある状態)でロックされる。
【0078】
以下、
図15から
図18を用いて、ボンネット20のロックを解除するときのロック機構30の動作について説明する。なお、
図16から
図18においては、部材(規制部32等)の図示を適宜省略している。
【0079】
図16(a)に示すように、ユーザーは、操作具Aをボンネット20の貫通孔23bに挿入する。この際、操作具Aの挿入方向のばらつきがあったとしても、操作具Aは、案内部313の内壁により被押圧部312へと案内され、移動部材31の被押圧部312を押圧することができる。或いは、操作具Aは、案内部313の内壁を押圧してもよい。
【0080】
図16(b)に示すように、操作具Aによって被押圧部312(又は案内部313)が略左方(左後方)に押圧されると、移動部材31は、揺動軸314aの軸線を中心として平面視反時計回りに回動する。
【0081】
図17(a)に示すように、移動部材31の回動に伴って、移動部材31の当接部311dがロック部材33の第二切欠部332を右方へと押圧する。これにより、ロック部材33は、揺動軸331の軸線を中心として、背面視時計回り方向に回動する。
【0082】
図17(b)に示すように、ロック部材33がさらに背面視時計回り方向に回動すると、ピン13aがロック部材33の第三切欠部333の下面と係合しなくなる。すると、ボンネット20は、付勢部材25(
図9等参照)の付勢力により、前上がりに回動(ボンネット20の前部が上方へと移動)する。このとき、ボンネット20は、ピン13a及び規制部32の第一切欠部322に案内されつつ回動(移動)する。
【0083】
図18(a)に示すように、ボンネット20がさらに前上がりに回動すると、ロック機構30は上方へ移動し、ピン13aに対して離間する。
【0084】
ユーザーが操作具Aを貫通孔23bから抜くと、操作具Aによる被押圧部312の押圧が解除される。すると、移動部材31は、付勢部材34の付勢力によって揺動軸314aの軸線を中心として平面視時計回り方向に回動する。これにより、移動部材31は、
図16(b)に示す位置から
図16(a)に示す位置に戻る。
【0085】
図18(b)に示すように、移動部材31が平面視時計回り方向に回動すると、移動部材31の当接部311dがロック部材33の第二切欠部332を左方へと押圧する。これにより、ロック部材33は背面視反時計回り方向に回動し、元の位置(
図17(a)に示す位置)に戻る。
【0086】
このようにして、ピン13aとロック部材33との係合が外れ、ロック機構30は、ボンネット20をロックしないロック解除状態となる。よって、ユーザーは、ボンネット20の前部を手で持ち上げることにより、ボンネット20を開けられた状態(
図15において二点鎖線で示す位置にある状態)とすることができる。
【0087】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1においては、ロック機構30は、移動部材31やロック部材33が移動(揺動)することにより、ボンネット20をロックするロック状態(
図17(a)参照)と、ボンネット20をロックしないロック解除状態(
図18(b)参照)とに切替可能に形成されている。そして、ロック機構30がボンネット側に設けられているため、ボンネット20を開けた際には、ロック機構30はボンネット20とともに上方に移動する。よって、エンジン回りの修理等の作業を行うためにボンネット20を開けたとき、移動機構を有するロック機構30がボンネット20とともに上方に移動するため、エンジンルーム内が見やすく、また作業スペースの確保も図ることができる。したがって、修理等の作業性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係るトラクタ1においては、ボンネット20のロックを解除するために操作具Aで被押圧部312を押圧した場合、被押圧部312が力点、揺動軸314aが支点、当接部311dが作用点となり、移動部材31及びロック部材33が連動して移動(揺動)する。そして、被押圧部312、揺動軸314a及び当接部311dは、略前後方向に並ぶように設けられている(
図10参照)。よって、ボンネット20内の前部の限られたスペースを有効活用して移動部材31等を配置することができる。すなわち、ボンネット20内のスペースの左右幅を広げることなく、移動部材31等を配置することができる。
【0089】
また、平面視(揺動軸314aの軸線方向視)において、揺動軸314aの中心と当接部311dとの間の直線距離は、揺動軸314aの中心と被押圧部312との間の直線距離よりも短くなるように形成される(
図10参照)。よって、ユーザーは、操作具Aを用いて被押圧部312を比較的小さな力で押圧するだけで、移動部材31ひいてはロック部材33を回動させることができる。このように、移動部材31の操作に要する力を低減させることができ、ひいてはロック解除の作業性を向上させることができる。
【0090】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、機体フレーム2に対して揺動可能に形成された、エンジン3を覆う開閉式のボンネット20と、前記機体フレーム2側に設けられたピン13a(被係合部)と、前記ボンネット20側に、前記ピン13aと係合して前記ボンネット20をロックするロック状態と、前記ピン13aと係合せず前記ボンネット20をロックしないロック解除状態とに切替可能に設けられたロック機構30と、を具備するものである。
【0091】
このように構成することにより、作業性を向上させることができる。
具体的には、ロック機構30がボンネット20側に設けられているため、ボンネット20を開けた際にエンジンルーム内が見やすく、ひいてはエンジン3回りの修理等の作業性を向上させることができる。
【0092】
また、前記ロック機構30は、操作具Aで押圧されることにより移動可能な移動部材31と、前記ピン13aと係合し、前記移動部材31の移動に伴って前記ピン13aとの係合が解除されるロック部材33と、を具備するものである。
【0093】
このように構成することにより、ロック機構30を簡易な構成とすることができる。
【0094】
また、前記移動部材31は、前記操作具Aで押圧される被押圧部312と、前記ロック部材33と当接する当接部311dと、を具備し、前記操作具Aで前記被押圧部312が押圧されることにより揺動軸314a回りに揺動して、前記当接部311dによって前記ロック部材33を押圧し、当該ロック部材33を移動可能に形成され、前記揺動軸314aの軸線方向視において、前記揺動軸314aと前記当接部311dとの間の距離は、前記揺動軸314aと前記被押圧部312との間の距離よりも短いものである。
【0095】
このように構成することにより、移動部材31の操作に要する力を低減させることができ、ひいてはロック解除の作業性を向上させることができる。
【0096】
また、前記被押圧部312、前記揺動軸314a及び前記当接部311dが略前後方向に並ぶように設けられるものである。
【0097】
このように構成することにより、ボンネット20内の限られたスペースを有効活用して移動部材31を配置することができる。すなわち、ボンネット20内のスペースの左右幅を広げることなく、移動部材31を配置することができる。
【0098】
また、前記ロック機構30は、前記ボンネット20の前部に設けられ、前記移動部材31は、前記ロック部材33よりも前方に設けられるものである。
【0099】
このように構成することにより、ロック機構30をボンネット20の前部に集約することで、移動部材31とボンネット20内部の他の部材とが干渉し難くすることができる。
【0100】
また、前記移動部材31は、前記ボンネット20の内側面に設けられる第二部材24b(フレーム)と干渉しないように屈曲しているものである。
【0101】
このように構成することにより、移動部材31を配置するためのスペースを広げることなく、移動部材31を配置することができる。
【0102】
また、前記移動部材31は、前記操作具Aで押圧されるように前記操作具Aを案内する案内部313を具備するものである。
【0103】
このように構成することにより、移動部材31が操作具Aで押圧され易くなり、ひいてはロック解除の作業性を向上させることができる。
【0104】
また、前記ボンネット20は、車体正面から視認可能、かつ、前記操作具Aを挿入可能な貫通孔23bを具備するものである。
【0105】
このように構成することにより、操作具Aを挿入する貫通孔23bを視認し易くすることができる。
【0106】
また、前記ロック機構30は、左右のヘッドライト23aの間に配置されているものである。
【0107】
このように構成することにより、左右のヘッドライト23aの間のスペースを有効活用してロック機構30を配置することができる。
【0108】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るピン13aは、本発明に係る被係合部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二部材24bは、本発明に係るフレームの実施の一形態である。
【0109】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0111】
また、本実施形態においては、トラクタ1は、ロプスフレームを備えるロプス機であるものとしたが、キャビンを備えるキャビン機であってもよい。
【0112】
また、本実施形態においては、後輪7が車輪(タイヤ)であるものとしたが、後輪7の代わりにクローラ式の走行装置を採用するものであってもよい。
【0113】
また、本実施形態においては、ボンネット20は、前部が上下に揺動する前開き式としたが、後部が上下に揺動する後開き式であってもよい。この場合、ロック機構30は、ボンネット20の後部に設けることができる。
【0114】
また、本実施形態においては、ボンネット20の前側から操作具Aをボンネット20の内部に挿入して、ボンネット20のロックを解除するものとしたが、操作具Aを挿入する箇所や挿入する方向は、これに限定されるものではなく、例えばボンネット20の上側から操作具Aをボンネット20の内部に挿入して、ボンネット20のロックを解除するものであってもよい。
【0115】
また、本実施形態においては、ロック機構30は、その大部分が左右のヘッドライト23aの間のスペースに位置するように設けられるものとしたが、本発明の「ロック機構30は、左右のヘッドライト23aの間に配置されている」には、ロック機構30の少なくとも一部分が当該スペースに位置しているものも含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 トラクタ
2 機体フレーム
13a ピン
20 ボンネット
23a ヘッドライト
23b 貫通孔
24b 第二部材
30 ロック機構
31 移動部材
33 ロック部材
311d 当接部
312 被押圧部
313 案内部
314a 揺動軸