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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ホイールナットキャップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/14 20060101AFI20240123BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F16B37/14 C
F16B31/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110147
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007274
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593176966
【氏名又は名称】株式会社パーマンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 康弘
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0296892(US,A1)
【文献】特開2016-125520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/14
F16B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールナットに装着可能なキャップであって、底面が円形開口であり、前記ホイールナットを収容する外郭体の中空内部に、前記ホイールナットに着脱可能に一体的に装着される装着部を設けたキャップ本体と、前記ホイールナットが挿通するリング体をベースとして、該リング体の側面に目印を設けると共に、前記リング体の片側開口には、前記目印を所定の向きに固定した状態で前記円形開口から前記キャップ本体に着脱可能に一体的に差し込まれる円筒状の取付部が延成されたインジケータとを別体に備え、前記インジケータは、前記ホイールナットに装着した前記キャップ本体と、前記ホイールナットにより固定されたタイヤホイールとの間に挟持され、キャップ本体の装着部の外形とインジケータの取付部の内形それぞれは、互いに嵌合可能な歯車状であることを特徴としたホイールナットキャップ。
【請求項2】
キャップ本体の装着部の内形は、前記装着部の外形と相似する歯車状であり、その内角部から中心に向かってホイールナットの外周面に当接可能な凸部を突設した請求項記載のホイールナットキャップ。
【請求項3】
装着部は、さらに内面一部にホイールナットの外周面に弾性的に当接可能なバネを有する請求項記載のホイールナットキャップ。
【請求項4】
バネは板バネである請求項3記載のホイールナットキャップ。
【請求項5】
インジケータに設けた目印は、リング体の外周面から水平に突出する三角形状の羽根である請求項1からのうち何れか1項記載のホイールナットキャップ。
【請求項6】
インジケータに設けた目印は、リング体の外周面に軸方向に沿って設けた1本の縦線である請求項1からのうち何れか1項記載のホイールナットキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のホイールナットに装着するホイールナットキャップに係り、ホイールナットの緩みを目視により検知可能なインジケータを備えた構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のハブに対してタイヤホイールをホイールナットにより最初に固定する際や定期点検では、トルクレンチを用いてホイールナットを決まったトルク値で締め込んでいるが、その後の走行等によりホイールナットが緩んでしまい、これに気づかず放置した場合には脱輪などの重大な事故につながる。
【0003】
そこで、特許文献1には、ホイールナットに装着可能な環体の外周面に先端を尖らせた指示体を突成すると共に、上記環体の開口片側にはホイールナットを被覆するキャップを一体に形成した緩みチェッカーが開示されている。このチェッカーによれば、隣接するチェッカー同士で指示体の先端が向き合うようにホイールナットに装着したり、指示体の先端が車輪中心に向くように装着したりすることで、ホイールナットが緩んだ場合は指示体の先端の向きが変異するので、目視によりホイールナットの緩みを検知することができる。
【0004】
また特許文献2・3では、ナットへの装着基体(特許文献2における「キャップ」、特許文献3における「本体」)と、ナットの緩みを示す指示体(特許文献2における「インジケータ」、特許文献3における「マーキング要素」)とを別体とした二部材構成のものも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3146831号公報
【文献】特許第3312196号公報
【文献】特表2019-531447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~3のいずれもが指示体の向きの変異によってナットの緩みを視認できるという機能は担保されている。しかしながら、特許文献1の緩みチェッカーでは、指示体が環体を介してキャップと一体形成されているため、指示体とキャップを分離できず、専らホイールナットの保護や装飾を目的とするユーザーにとっては、指示体が不要であるため選択の余地がない。
【0007】
これに対して特許文献2・3のものは装着基体と指示体が別体であるため、装着基体のみをナットに装着することは可能である。しかしながら、そのような使用方法を採ったとしても、特許文献2のキャップは外周面にインジケータを外嵌合するための溝が多数設けられているため、このようなデザインを好まないユーザーには不適である。また特許文献3の本体は上下両面が開口した筒状であるため、ナットを完全に覆って保護したり装飾したりする機能はない。
【0008】
このように特許文献2・3はいずれも装着基体を単独で使用することを想定したものではなく、指示体とセットで使用することが前提であるが、これらのものは走行中の振動等によって指示体が脱落するおそれがある。すなわち、装着基体自体をいくらナットに強固に装着したとしても、指示体は装着基体に嵌め込まれるだけであって、ナットやタイヤホイールとは縁が切れた状態で取り付けられるため、経時的に指示体が装着基体から外れてしまうおそれがある。特に、特許文献2のものは、外嵌合によって指示体(インジケータ)を装着基体(キャップ)に取り付けるものであり、嵌合部分が常に露出しているため指示体の脱落の危険性が高い。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、インジケータの脱落のおそれがなく、また、ユーザーの選択によりインジケータを省略した使用も可能なホイールナットキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、車両のホイールナットに装着可能なキャップであって、底面が円形開口であり、前記ホイールナットを収容する外郭体の中空内部に、前記ホイールナットに着脱可能に一体的に装着される装着部を設けたキャップ本体と、前記ホイールナットが挿通するリング体をベースとして、該リング体の側面に目印を設けると共に、前記リング体の片側開口には、前記目印を所定の向きに固定した状態で前記円形開口から前記キャップ本体に着脱可能に一体的に差し込まれる円筒状の取付部が延成されたインジケータとを別体に備え、前記インジケータは、前記ホイールナットに装着した前記キャップ本体と、前記ホイールナットにより固定されたタイヤホイールとの間に挟持するという手段を用いた。
【0011】
上記手段では、キャップ本体はホイールナットに対して一体的に装着され、このキャップ本体にインジケータが目印の向きを固定した状態で一体的に取り付けられるため、ホイールナットに緩みが生じた場合、インジケータがキャップ本体と共にホイールナットと共回りし、目印の向きが変異することで、目視によりホイールナットの緩みを検知することができる。インジケータは、キャップ本体への取り付け時に目印の方向を自由に変更することができるため、目印をユーザーにとって目視しやすい向きに設定することができる。そして、このようなインジケータは、キャップ本体の装着時にキャップ本体とタイヤホイールとの間に挟持されるため、キャップ本体がホイールナットに装着保持されている限り、走行中に脱落することがない。
【0012】
キャップ本体に対するインジケータの具体的な取付構造については、キャップ本体の装着部の外形とインジケータの取付部の内形それぞれを互いに嵌合可能な歯車状であることが好ましい。インジケータの取り付け後、歯車状とした装着部と取付部の角が互いに合致することで、インジケータはキャップ本体に強固に拘束され、インジケータの不用意な単独回転を確実に抑制することができるからである。また、歯車状の角の数が多ければ、それだけインジケータにおける目印の向きを細かい角度で調整することができる。
【0013】
ホイールナットに対するキャップ本体の装着構造、すなわちキャップ本体の装着部の内形については、従来のホイールナットキャップと同じ構造を採用することもできるが、上述のように装着部の外形を歯車状とした場合は、内形についても同様の歯車状としたうえで、内角部から中心に向かって突出する凸部を設けることが好ましい。当該凸部の先端がホイールナットの外周面に当接して、キャップ本体を強固にホイールナットに装着できるようになるからである。
【0014】
さらに、装着部の内面にバネを設けることで、装着時はバネが圧縮してキャップ本体を装着しやすく、装着後は、バネの弾性力によって凸部のホイールナットの外周面に対する当接力を高めることができる。なお、このバネは板バネであることが装着部の内部に簡便に設置することができる。
【0015】
一方、インジケータに設けた目印は、その向きを視認できるものであれば構成は問わないが、リング本体の外周面から水平に突出する三角形状の羽根とすれば視認性が高まる。これに対して、目印を溝や条によって軸方向に沿った一本の縦線で構成した場合には、目印が目立たなくなり、キャップ本体によるホイールナットの装飾性を際立たせることができる。
【0016】
なお、本発明のホイールナットキャップは、ホイールナットの緩みを検知することを本来的な目的とするからインジケータは必須であるが、ユーザーがインジケータを必要としない場合は、キャップ本体の単独使用も可能である。さらに、インジケータに代えて、目印を有しないリング体を備えれば、適宜、インジケータを目地無しのリング体に付け替えることで、キャップ本体と目印無しリングによってホイールナット全体が完全にカバーされるため、キャップ本体の単独使用時よりもホイールナットの保護効果や装飾効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホイールナットの緩みを示すインジケータの脱落を確実に防止することができる。また、ユーザーの選択によりキャップ本体の単独使用や、当該キャップ本体と目印無しのリング体との併用も可能となり、多くのユーザーに適合するホイールナットキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るホイールナットキャップの分解斜視図(上方からの斜視)
図2】同、分解斜視図(下方からの斜視)
図3】同、キャップ本体にインジケータを取り付けた状態の斜視図
図4】同、分解断面図
図5】同、(a)はキャップ本体の底面図、(b)はインジケータの平面図、(c)はホイールナットの平面図
図6】同、図8のA-A線断面図
図7】同、図8のB-B線断面図
図8】同、キャップ本体にインジケータを取り付けた状態の正面図
図9】同、使用例を示す説明図
図10】同、他の使用例を示す説明図
図11】本発明の別の実施形態に係るホイールナットキャップの分解斜視図
図12】本発明のさらなる別の実施形態に係るホイールナットキャップの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1~8は、本発明の一実施形態に係るホイールナットキャップを示しており、各図において、10はナットNに着脱可能に一体的に装着されるキャップ本体、20はキャップ本体の底面側に着脱可能に一体的に取り付けられるインジケータである。このように本発明のホイールナットキャップは、キャップ本体10とインジケータ20を別体とした二部材構成である。当該ホイールナットキャップの装着手順は、先にキャップ本体10にインジケータ20を取り付けておき、これをナットNに装着するか(図3参照)、先にナットNにインジケータ20を挿通しておき、その後にキャップ本体10をナットNに装着するかのいずれでもよいが、いずれの手順によってもインジケータ20はキャップ本体10と、ナットNにより固定されたタイヤホイールWの間に挟持することができる(図7参照)。
【0020】
各部材の構成を詳述すると、まずキャップ本体10は、ナットNを収容する外郭体1の中空内部に装着部2を設けてなる。外郭体1は、底面が円形開口3であり、この実施形態では外形をドーム状としている。ただし、外郭体1の外形はドーム状に限らず、他の形状であってもよい。
【0021】
これに対して装着部2は、内形・外形ともに歯車状(図例では断面星型正二十四角形)である所定高さの複合多面筒状体をベースとして、当該複合多面筒状体の内角部4から一つ飛ばしに凸部5を設けると共に、内角部4の一カ所には板バネ6を配置した内部構造としている。これら凸部5・板バネ6はナットNの外周面に当接することで、キャップ本体10を相対回転が規制された状態でナットNに一体的に装着できるようになっている。その際、ナットNの角は、凸部5や板バネ6が設けられていない内角部4に逃れるようになっている(図6参照)。板バネ6は、図2から明らかなように、キャップ本体10を深く装着するにつれ徐々に圧縮するように傾斜して配置している。このような板バネ6によって、キャップ本体1の装着作業性を保持しながら、装着後は弾性力によってキャップ本体10のナットNに対する一体性を高めている。なお、板バネ6に代えて、他のバネを採用することも可能であり、キャップ本体10をナットNに強固に取り付けられる場合は、装着部2からバネ自体を省略することも可能である。
【0022】
次に、インジケータ20は、ドーナツ状のリング体21をベースとして、その側面から三角形状の羽根22を水平に突成すると共に、リング体21の上面開口には、リング体21よりも小径な外径を有し、キャップ本体10の円形開口3に差し込み可能な円筒状の取付部23を延成してなる。リング体21は、この実施形態において、外径をキャップ本体10の円形な底面と同径としている。したがって、このインジケータ20をキャップ本体10に取り付けた場合は、リング体21と外郭体1の外面が面一の状態となる(図8参照)。
【0023】
さらに、リング体21の内部は、図4から明らかなように、ナットNが挿通する挿通孔21aと、ナットNの台座部N1が嵌まり込む大径孔21bと、挿通孔21aと大径孔21bの間にナットNのテーパ部N2が嵌まり込む末広がりのテーパ孔21cの三段構造としている。したがって、インジケータ20は上述のようにキャップ本体10とタイヤホイールWとの間に挟持されるのであるが、この実施形態では、大径孔21bとテーパ孔21cとによって、厳密にはインジケータ20がキャップ本体10によりナットNの台座部N1に抑え込まれた状態となる(図7参照)。
【0024】
そして、インジケータ20の取付部23は、外形はキャップ本体10の円形開口3の内径とほぼ同径の外径からなる円筒状であるが、その内形はキャップ本体10の装着部2の外形と同じ歯車状に形成している。したがって、この取付部23をキャップ本体10の円形開口3から差し込めば、その内部にキャップ本体10の装着部2が嵌合すると共に、当該取付部23の周壁がキャップ本体10の外郭体1と装着部2の間の環状空間に差し込まれる。このように、ともに歯車状からなる装着部2と取付部23とが嵌合することによって、インジケータ20を相対回転が規制された状態でキャップ本体10に取り付けることができる。また、こうした嵌合構造によれば、角の数だけ羽根22の向きを調整することができる。
【0025】
上記構成のホイールナットキャップによれば、ナットNに対して相対回転不能にキャップ本体10が装着され、このキャップ本体10に相対回転不能にインジケータ20が取り付けられるため、ナットNに緩みが生じた場合は、インジケータ20がキャップ本体10と共にナットNと共回りし、羽根23の向きの変異により、ナットNの緩みを視認することができる。
【0026】
インジケータ20の羽根22の向きをどのようにセットするかについては自由であるが、基準を明確にするのであれば、図9に示すように、インジケータ20の羽根23の先端を隣り合うキャップ同士で向き合わせるか、図10に示すように、インジケータ20の羽根23の先端を同じ円周上で同じ方向に向けてセットすることが好ましい。なお、図10のようにセットする場合、羽根23の向きは、全てを同じ方向に向ける必要があるが、タイヤの回転方向(車両の進行方向)に合わせることまでは必要としない。
【0027】
また、インジケータ20に設ける目印も、上記実施形態のように三角形状の羽根22に限らず、図11に示すように、リング体21の側面に1本の縦線24を形成することであってもよい。この縦線24は、凹溝や突条、あるいは着色によって構成することができ、上記の羽根22と比べれば目立たない。したがって、このようなインジケータを採用すれば、ナットNの緩みの検知機能を保持しつつ、通常では、キャップ本体10と共にナットNの装飾効果を高めることができる。
【0028】
この点、図12に示すように、羽根22も縦線24も省略した目印無しのリング体30に付け替えれば、ナットNの緩みを検知できなくなるが、より一層、ナットNの装飾効果が高まるため、目的に応じて、インジケータ20を目印無しリング体30と付け替えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、車両のホイールナットに限らず、広くナットの緩み検知具として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 キャップ本体
20 インジケータ
N ナット
W タイヤホイール
1 外郭体
2 装着部
3 円形開口
4 内角部
5 凸部
6 板バネ
21 リング体
21a 挿通孔
21b 大径孔
21c テーパ孔
22 羽根
23 取付部
24 線
30 目印無しリング体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12