(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】抵抗スポット溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/11 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
B23K11/11 540
(21)【出願番号】P 2020125561
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一朗
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-005885(JP,A)
【文献】国際公開第2018/234938(WO,A1)
【文献】特開2003-001434(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170687(WO,A1)
【文献】米国特許第04623775(US,A)
【文献】実開昭60-074871(JP,U)
【文献】国際公開第2015/083835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上で、かつ亜鉛めっきされた鋼板を少なくとも1枚有する複数の鋼板をスポット溶接するための抵抗スポット溶接方法であって、
前記複数の鋼板を挟み込んで加圧する一対の電極チップと、前記一対の電極チップのうち
の一方
のみに設けられ
た、前記電極チップの軸方向への加圧力を吸収可能な加圧力吸収機構と、を備える一対の電極を用いて、
前記一対の電極チップに前記複数の鋼板を挟み込み、かつ、前記一対の電極チップに加圧力を付与した状態で通電することで、前記通電時に発生する前記鋼板の溶融金属の膨張による前記加圧力の変動荷重を前記加圧力吸収機構により吸収しながら溶接する、抵抗スポット溶接方法。
【請求項2】
前記一対の電極のうち一方は固定式電極であり、他方は可動式電極であって、
前記加圧力吸収機構は、前記可動式電極側に設けられる、請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項3】
前記加圧力吸収機構は、弾性部材を用いた機構である、請求項1又は2に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項4】
前記弾性部材は、バネ定数が10N/mm以上1500N/mm以下であるバネによって構成される、請求項3に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項5】
前記加圧力吸収機構は、空圧を用いた機構である、請求項1又は2に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項6】
前記電極チップは、先端面の曲率半径RがR≦100mmを満たし、かつ、外径φがφ≦16mmを満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項7】
前記電極チップは、その先端部の少なくとも一部が前記鋼板に当接するフラット面を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項8】
通電終了後、0.01sec以上加圧保持したのち、前記電極の加圧から圧力開放に転じる制御を行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
【請求項9】
溶接電流が交流電流である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗スポット溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出量の削減を目的とした車体軽量化や衝突安全性強化を実現するため、自動車のボディ骨格等に高強度鋼板(High Tensile Strength Steel;HTSS)が広く採用されている。また、自動車の車体の組立や部品の取付けなどでは、主として、抵抗スポット溶接が使用されており、高張力鋼板の溶接にも適用されている。
【0003】
自動車用鋼板には、防錆化の観点から、耐食性に優れた亜鉛系めっきが施された高張力鋼板も多用されている。しかし、高強度亜鉛系めっき鋼板を用いて抵抗スポット溶接を行うと、該溶接箇所の鋼板表面で溶融した亜鉛や、亜鉛と電極の銅との合金が、鋼板の結晶粒界に侵入して粒界強度を低下させる、LME(Liquid Metal Embrittlement)と呼ばれる粒界脆化割れが起きやすいことが知られている。このような割れが生じると、溶接部の強度が低下するため、抵抗スポット溶接継手の信頼性が低下してしまうことから、施工面での対策が求められている。
【0004】
特許文献1には、溶接電極により加圧力F1で加圧しながら通電する溶接工程と、通電の終了直後から加圧力F2で保持する冷却工程を備え、加圧力がF2>F1×2の関係を満足することで、LME割れを抑制可能とした抵抗スポット溶接方法が開示されている。また、特許文献2には、通電終了後の加圧力保持時間を適宜制御することにより、LME割れを抑制可能とした抵抗スポット溶接方法が開示されている。さらに特許文献3には、一方の電極の基部材に螺合した筒状ソケット内部に鍔付きロッドを挿入し、この鍔付きロッドの基端に設けた凸球面座を、基部材の受面に当接させている。鍔付きロッドの凸球面座の揺動中心が、鍔付きロッドの略中央近くに位置しており、鍔付きロッドの先端部に設けた電極チップの原位置からのシフト量を抑えることができるスポット溶接機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-171450号公報
【文献】国際公開第2017/033455号
【文献】実願昭58-168076号(実開昭60-74871号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に記載のスポット溶接機では、一方の電極の電極チップを揺動可能とすることで、引張応力を低減させ、LME割れの抑制を図っているが、さらなる改善が求められていた。特許文献1及び2に記載のスポット溶接方法は、引張応力を低減させて、LME割れの抑制を図ることについて考慮されていない。
また、電極そのものについては、過剰な温度上昇を防止するため、冷却水等を用いて溶接中に冷却状態を維持する必要があるが、鋼板と電極とのなす角度(打角)を調整可能な機構においても、上記冷却機構が求められる。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度亜鉛系めっき鋼板を用いた抵抗スポット溶接方法において、抵抗スポット溶接継手の圧接部におけるLME割れの発生を抑制する抵抗スポット溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の上記目的は、一の抵抗スポット溶接方法に係る下記(1)の構成により達成される。
(1) C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上で、かつ亜鉛めっきされた鋼板を少なくとも1枚有する複数の鋼板をスポット溶接するための抵抗スポット溶接方法であって、
前記複数の鋼板を挟み込んで加圧する一対の電極チップと、前記一対の電極チップのうち少なくとも一方に設けられ、前記電極チップの軸方向の加圧力を吸収可能な加圧力吸収機構と、を備える一対の電極を用いて、
前記一対の電極チップに前記複数の鋼板を挟み込み、かつ、前記一対の電極チップに加圧力を付与した状態で通電することで、前記通電時に発生する前記加圧力の変動荷重を前記加圧力吸収機構により吸収しながら溶接する、抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、複数の鋼板を接合する際に発生する加圧力の変動荷重を加圧力吸収機構により吸収しながら溶接し、LME割れを抑制して溶接品質に優れた抵抗スポット溶接を行うことができる。
【0009】
また、抵抗スポット溶接方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(5)に関する。
(2) 前記一対の電極のうち一方は固定式電極であり、他方は可動式電極であって、
前記加圧力吸収機構は、前記可動式電極側に設けられる、(1)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、複数の鋼板を接合する際に発生する加圧力の変動荷重を可動式電極側に設けられた加圧力吸収機構により吸収して、LME割れの発生を抑制することができる。
(3) 前記加圧力吸収機構は、弾性部材を用いた機構である、(1)又は(2)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、コンパクトな機構で効率よく加圧力の変動荷重を吸収できる。
(4) 前記弾性部材は、バネ定数が10N/mm以上1500N/mm以下であるバネによって構成される、(3)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、溶接に必要な加圧力を確保しつつ、加圧力の変動荷重を吸収できる。
(5) 前記加圧力吸収機構は、空圧を用いた機構である、(1)又は(2)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、エアシリンダなどを用いて加圧力吸収機構を構成できる。
【0010】
また、本発明の上記目的は、他の抵抗スポット溶接方法に係る下記(6)の構成により達成される。
(6) C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上で、かつ亜鉛めっきされた鋼板を少なくとも1枚有する複数の鋼板をスポット溶接するための抵抗スポット溶接方法であって、
前記複数の鋼板を挟み込んで加圧する一対の電極チップと、前記鋼板に対する前記一対の電極チップの角度をそれぞれ補正可能な一対の角度補正機構と、を備える一対の電極を用いて、
前記一対の電極チップに前記複数の鋼板を挟み込み、かつ、前記一対の電極チップの軸が前記鋼板に対して略垂直となるように接触させながら、前記一対の電極チップに加圧力を付与した状態で通電することで溶接する、抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、鋼板に対して電極チップを略垂直に接触させ、打角が補正された状態で溶接することで、引張応力を低減させてLME割れの発生を抑制できる。なお、ここで言う「略垂直」とは、工業的に達成可能な角度を意味し、例えば、90°±5°の角度誤差を許容する。
【0011】
また、抵抗スポット溶接方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(7)~(15)に関する。
(7) 前記一対の角度補正機構のうち少なくとも一方は自在継手を用いた機構である、(6)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、打角を補正する共に、一対の電極チップで挟持された鋼板の板厚方向位置を容易に位置決めできる。
(8) 前記一対の電極のうち一方は固定式電極であり、他方は可動式電極であって、
前記自在継手を用いた機構は、前記固定式電極側に設けられる、(7)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、固定式電極側の打角を補正する共に、一対の電極で挟持された鋼板の板厚方向位置を容易に位置決めできる。
(9) 前記一対の角度補正機構のうち一方が前記固定式電極側に設けられた自在継手を用いた機構であり、他方が前記可動式電極側に設けられた弾性部材を用いた機構である、(8)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、一対の電極の打角を補正すると共に、通電時に発生する加圧力の変動荷重を吸収して、LME割れの発生を抑制できる。
(10) 前記弾性部材は、バネ定数が10N/mm以上1500N/mm以下であるバネによって構成される、(9)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、溶接に必要な加圧力を確保しつつ、加圧力の変動荷重を吸収できる。
(11) 前記一対の角度補正機構の両方が自在継手を用いた機構である、(7)に記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、少なくともいずれか一方の電極が弾性部材を有する場合と比較して、抵抗スポット溶接の作業時間を短縮することができる。
(12) 前記電極チップは、先端面の曲率半径RがR≦100mmを満たし、かつ、外径φがφ≦16mmを満たす、(1)~(11)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、電極チップの先端面を鋼板に確実に接触することができる。
(13) 前記電極チップは、その先端部の少なくとも一部が前記鋼板に当接するフラット面を有する、(1)~(11)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、電極チップのフラット面が鋼板に面接触し、鋼板とフラット面との間で滑りが生じにくく、安定的なスポット溶接を行うことができる。
(14) 通電終了後、0.01sec以上加圧保持したのち、前記電極の加圧から圧力開放に転じる制御を行う、(1)~(13)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、溶接後の冷却時間を確保して、LME割れの発生を抑制できる。
(15) 溶接電流が交流電流である、(1)~(14)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
この構成によれば、商用電源を用いて抵抗スポット溶接できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一の抵抗スポット溶接方法によれば、加圧力吸収機構により、通電時に発生する加圧力の変動荷重を吸収しながら溶接することで、鋼板への応力変動が緩和され、LME割れの発生を抑制し、溶接品質に優れた抵抗スポット溶接を行うことができる。
また、本発明の他の抵抗スポット溶接方法によれば、角度補正機構により電極チップと鋼板との打角を補正して、引張応力を低減させて溶接することで、LME割れの発生を抑制し、溶接品質に優れた抵抗スポット溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る抵抗スポット溶接装置の側面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す可動側電極のIV-IV線断面図である。
【
図5A】
図5Aは、スポット溶接の際に可動側電極及び固定側電極が金属板に対して傾いた状態を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、スポット溶接の際に可動側電極が金属板に対して略垂直に接触し、打角が補正された状態を示す図である。
【
図6】
図6は、可動側電極及び固定側電極が共に剛体電極である従来の抵抗スポット溶接装置と、第1実施形態に係る抵抗スポット溶接装置と、により抵抗スポット溶接された継手を比較して示す断面図である。
【
図7】
図7は、従来の抵抗スポット溶接装置と、第1実施形態に係る抵抗スポット溶接装置と、により抵抗スポット溶接される際の加圧力及び溶接電流の変化を比較して示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る抵抗スポット溶接装置の側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す抵抗スポット溶接装置の固定側電極の斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る抵抗スポット溶接装置の側面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態に係る抵抗スポット溶接装置の側面図である。
【
図18A】
図18Aは、スポット溶接の際に可動側電極及び固定側電極が金属板に対して傾いた状態を示す図である。
【
図18B】
図18Bは、スポット溶接の際に可動側電極及び固定側電極が金属板に対し略垂直に接触し、両電極の打角が補正された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る抵抗スポット溶接方法を適用するのに好適な抵抗スポット溶接装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
なお、各実施形態の抵抗スポット溶接装置は、複数の金属板(鋼板)をスポット溶接するためのものであるが、特に、金属板の少なくとも一方が、C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板(High Tensile Strength Steel:HTSS)であり、その表面に亜鉛めっきされた亜鉛系めっき鋼板である場合に好適に用いられる。なお、亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、電気亜鉛めっき鋼板(EG)などが挙げられる。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10は、平面視で略C型の形状を呈するフレーム11と、フレーム11の一端に設けられた加圧シリンダ12と、当該加圧シリンダ12及びフレーム11の対向する端部に設けられた2つの基台13A,13Bと、可動側の基台13Aに設けられた、可動側電極である第1の電極20Aと、固定側の基台13Bに設けられた、固定側電極である第2の電極20Bと、を備える。加圧シリンダ12は、基台13Aと共に、第1の電極20Aを第2の電極20Bに向けて下方に駆動する。また、第1の電極20Aと第2の電極20Bは、同軸上において対向するように配置されている。
【0016】
そして、スポット溶接を行う場合、重ね合わせた複数(図では2枚)の被接合体である金属板Mを第1の電極20Aと第2の電極20Bの間に挿入し、金属板Mを第2の電極20Bに当接させた状態で、加圧シリンダ12により第1の電極20Aを進出させ、金属板Mを一対の電極20A,20Bの間に挟み込む。この状態で、加圧しながら一対の電極20A,20B間に通電を行い、スポット溶接を行う。
【0017】
図2~
図4にも示すように、第1の電極20Aは、第1シャンク21と、第2シャンク22と、電極チップ23Aと、接続部材である弾性部材24と、導線25と、一対のリング26A,26Bと、を備える。
【0018】
第1シャンク21及び第2シャンク22は、例えば真鍮のような金属(合金)により構成されており、導電性を有する。第1シャンク21及び第2シャンク22は、一対のリング26A,26Bと螺合して固定されている。電極チップ23Aは、第1の電極20Aの先端である第1シャンク21の一端に設けられており、鋼板などの金属板Mに直接当接する部材である。
【0019】
弾性部材24は、一対のばね座27,27を介して上下一対のリング26A,26B間に配設されており、第1シャンク21と第2シャンク22を接続している。具体的に、本実施形態では、弾性部材24はコイルバネにより形成されている。
【0020】
コイルバネのバネ定数は、10N/mm以上、1500N/mm以下が好ましい。これにより、スポット溶接の際に、電極チップ23Aが金属板Mの傾きに合わせて傾き、金属板Mに対して略垂直になると共に、スポット溶接に必要な加圧力を金属板Mに付与できる剛性が確保される。すなわち、弾性部材24は、電極チップ23Aの金属板Mに対する角度を補正可能な角度補正機構として作用して打角を補正する。併せて、弾性部材24は、複数の金属板Mを挟み込んで一対の電極チップ23A,23Bに加圧力を付与した状態で通電することで、金属板Mの溶融金属が膨張した際に、さらに弾性変形することで、加圧力の上昇を抑制する。すなわち、弾性部材24は、電極チップの軸方向の加圧力を吸収可能な加圧力吸収機構として作用する。
【0021】
金属製(例えば銅等)の導線25は、第1シャンク21及び第2シャンク22のそれぞれの外周に取り付けられた金属製(例えば銅等)のリング26A,26Bに接続されている。弾性部材24は金属製であるが、スポット溶接には大電流が必要であるため、弾性部材24を介して第1シャンク21と第2シャンク22との間に十分な電気的接続を確保することは困難である。このため、導線25が弾性部材24の外側を迂回するように設けられ、第1シャンク21と第2シャンク22とを電気的に接続する。スポット溶接機10の本体から加圧シリンダ12及び基台13Aを経由して供給された電流は、
図4の「通電経路」の矢印に従って、第2シャンク22→リング26A→導線25→リング26B→第1シャンク21→電極チップ23Aの順に流れ、金属板Mまで到達する。なお、スポット溶接用の電流は、特に限定されないが、利用が容易な交流電流を用いることができる。
【0022】
第1の電極20Aは、電流のみならず、先端の電極チップ23Aを冷却する冷却水を流すための構造を有している。すなわち、
図4に示すように、冷却水を流すための流路Tが、第1シャンク21と、弾性部材24と、第2シャンク22それぞれの内部を貫通するように設けられている。
【0023】
流路Tは、スポット溶接機10の本体から供給された冷却水を電極チップ23Aに流すための往路T1と、電極チップ23Aを冷却した冷却水をスポット溶接機10の本体に戻すための復路T2を含む。復路T2は、円筒状の第1シャンク21と、弾性部材24と、円筒状の第2シャンク22それぞれの内部を貫通する内部空間Hにより形成される。ただし、
図4に示すように、第1シャンク21の上端及び第2シャンク22の下端それぞれに形成されたホース継手21a,22aにホース28が接続され、該ホース28が弾性部材24の内部に配置されている。したがって、実際には、ホース継手21a,22a及びホース28の内部が、内部空間Hを形成する。
【0024】
往路T1は、内部空間Hに配置され、第1シャンク21と、弾性部材24と、第2シャンク22を貫通する一体のパイプ29により形成される。なお、パイプ29は、
図4に示すように、内部空間Hの中心軸上に配置された、例えば樹脂等によって形成された円筒長尺状の部材である。
【0025】
図4の「冷却水IN」の矢印で示すように、スポット溶接機10の本体から供給された冷却水は、第2シャンク22から、弾性部材24、第1シャンク21を経由するようにパイプ29の中を流れ、電極チップ23Aに到達する。電極チップ23Aに到達し、温度が上昇した冷却水は、「冷却水OUT」の矢印で示すように、第1シャンク21、弾性部材24、第2シャンク22を経由するように、パイプ29の外側の内部空間Hの中を流れ、スポット溶接機10に本体に戻り、再び冷却される。
【0026】
このようにして、冷却水はスポット溶接機10の本体と電極チップ23A間を循環し、常に一定温度以下に冷却された冷却水が電極チップ23Aに供給されるため、第1の電極20A、特に電極チップ23Aの温度上昇を抑制することができ、スポット溶接の接合効率を向上させることができる。
【0027】
図1に戻り、固定側電極である第2の電極20Bは、固定側の基台13Bに設けられた固定側シャンク30の一端に電極チップ23Bが固定されている。電極チップ23Bは、導電性を有する金属(合金)により構成され、金属板Mに直接当接する部材である。第2の電極20Bは、第1の電極20Aが有する弾性部材24を備えておらず、高い剛性を有する剛体電極である。
【0028】
図5A及び
図5Bに示すように、電極チップ23A,23Bは、外径φがφ≦16mmであり、金属板Mに当接する先端面23a,23bの曲率半径RはR≦100mmである。これにより、電極チップ23A,23Bが金属板Mに対して片当たりを抑制し、確実に接触する。
【0029】
なお、電極チップ23A,23Bの先端面23a,23bの形状は、少なくともその一部がフラット面であってもよい。電極チップ23A,23Bが、金属板Mに対して略垂直である場合、電極チップ23A,23Bのフラット面が金属板Mに面接触する。この結果、金属板Mとフラット面との間で滑りが生じにくく、安定的なスポット溶接を行うことができる。
【0030】
図5Aは、実際のスポット溶接の場面において、第1の電極20A及び第2の電極20Bと金属板Mが当接する状態を示す図である。第1の電極20Aが第2の電極20Bに接近し、それぞれが当接点P1,P2において金属板Mに当接することに伴い、各電極20A,20Bには荷重Fが印加される。理想状態においては、2つの電極が接近する方向であって、2つの電極の長手方向に沿った軸Y1,Y2に対して垂直な面Xに対し、金属板Mが平行に配置される。しかしながら、常に金属板Mの配置の精度を正確に保つことは困難であり、図示のように、例えば金属板Mが、面Xから所定の角度θ(例えば5°程度)傾いて配置される場合が生じ得る。すなわち、第1の電極20A及び第2の電極20Bが金属板Mに対し、垂直方向から傾いた状態をとっている。
【0031】
そして、従来タイプ、すなわち上述した弾性部材24が設けられていない剛体電極を可動側電極に用いた場合、このような状態のままスポット溶接を行うと、電極チップの先端面が金属板Mに適切に接触していないため、大きな引張応力が発生し、一定品質のスポット溶接を得ることが難しくなる。品質劣化の一例として、例えばLME割れのような欠陥を生じるおそれがある。
【0032】
続いて
図5Bは、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10の作用を説明するための図である。本実施形態の第1の電極20Aにおいては、上述した弾性部材24が設けられている。このため、2つの電極の先端である電極チップ23A,23Bから発生する荷重Fの作用により、第1の電極20Aの弾性部材24が弾性変形し、当接点P1(
図5A参照)を中心として、第1の電極20Aの電極チップ23Aが矢印R1方向に回転する。この結果、金属板Mが移動しなくても、第1の電極20Aの電極チップ23Aは、金属板Mの面Xに対する傾きを小さくして、金属板Mに対し略垂直に交わる状態となり、第1の電極20Aの電極チップ23Aは、金属板Mに対し垂直方向から接する状態を維持することができる。すなわち、弾性部材24が、第1の電極20Aの金属板Mに対する角度(打角)を補正する角度補正機構として作用して、第1の電極20Aの電極チップ23Aが金属板Mに対して略垂直方向から接する。
【0033】
なお、
図5Bに示した通り、上記変形に伴い、第1の電極20A及び第2の電極20Bのそれぞれの長手方向に沿った軸Y1,Y2の間には、少しのずれが生じ得る。しかしながら、このようなずれはわずかなものであり、
図5Aに示す状態に比べて、良好なスポット溶接を実現することができる。
【0034】
上述した通り、第1の電極20Aが被接合体である鋼板等の金属板Mに傾斜した状態で当接しても、弾性部材24が、先端に設けられた電極チップ23Aからの力を受けて弾性変形し、電極チップ23Aの長手方向に沿った軸と金属板Mが略垂直となる関係を実現し、さらにこの関係を容易に維持することができる。
【0035】
第1の電極20Aと金属板Mが傾いた状態で加圧されると、大きな引張応力が発生するため、これに起因してLME割れが助長される傾向がある。しかし、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10によれば、電極チップと金属板Mとの接触部分において引張応力が低減され、打角に伴う引張応力に起因するLME割れを大幅に抑制してスポット溶接の品質の低下を抑制することができる。
【0036】
また、抵抗スポット溶接方法では、接合時に電流を印加した際、金属板Mの溶融金属が膨張する。このため、弾性部材24が設けられていない剛体電極を可動側電極に用いた従来タイプの場合、加圧力が急上昇して、その衝撃によってLME割れが発生する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、溶融金属の膨張による金属板Mへの応力変動を弾性部材24によって吸収することができるため、金属板Mに対して加圧力が上昇するのを抑えることができ、LME割れを防止することができる。
【0037】
また、冷却水が流路Tを通じて第1の電極20Aの先端近傍、すなわち電極チップ23Aまで流れるため、溶接時に電極を効率的に冷却することができ、接合効率を向上させることができる。
【0038】
本実施形態において、流路Tは、第1の電極20Aの内部空間Hにより形成される復路T2と、内部空間Hに配置されたパイプ29により形成される往路T1を含む。よって、簡易かつコンパクトな構成により、冷却水の循環を実現している。しかしながら、冷却水の流路Tはこのような構成に限定されるものではなく、他の手段によって冷却してもよい。
【0039】
また、第1シャンク21と第2シャンク22を電気的に接続する導線25を、弾性部材24の外側に設けることにより、たとえ弾性部材24が弾性変形しても、電極への通電を円滑に行うことが可能となる。
【0040】
図6は、可動側電極及び固定側電極が共に剛体電極(弾性部材24を備えない電極)である従来の抵抗スポット溶接装置と、第1実施形態に係る抵抗スポット溶接装置と、により抵抗スポット溶接された継手を比較して示す断面図である。
【0041】
溶接条件は、いずれも板厚1.4mmのGA980DPの鋼板を2枚重ねとして、加圧力:3.5kN、通電時間:300ms、ホールド時間:0.01sec以上、板隙間(Sheet gap):2mm、傾斜角度(打角:Tilt angle):5°の条件で複数組の金属板Mに対してスポット溶接した。溶接電流(Current)は、6kA,7kA,8kAの各条件で行った。なお、溶接電流8kAでのスポット溶接は、チリ(Splash)が発生する条件である。
【0042】
図6に示すように、従来の抵抗スポット溶接装置よるスポット溶接では、いずれの溶接電流(6kA,7kA,8kA)でも、図中矢印で示すように、すべての組の金属板MにLME割れが発生した。
【0043】
一方、本実施形態に係る抵抗スポット溶接装置10よるスポット溶接では、いずれの条件でもLME割れは発生しなかった。これは、弾性部材24を備える第1の電極20Aの角度補正機構による打角補正、及び加圧力吸収機構による鋼板の応力変動緩和によると考えられる。
【0044】
図7は、従来の抵抗スポット溶接装置と、本実施形態に係る抵抗スポット溶接装置とにより、溶接電流8kAで抵抗スポット溶接した際の加圧力及び溶接電流の変化を比較して示すグラフである。いずれの抵抗スポット溶接方法においても、加圧シリンダ12によって、第1の電極20Aを下降させ、一対の電極チップ23A,23Bに複数の金属板Mを挟み込み、更に加圧シリンダ12によって、一対の電極チップ23A,23Bに所定の加圧力を付与する。なお、本実施形態では、弾性部材24が弾性変形するため、加圧力は所定の加圧力まで徐々に増加する。その後、加圧力が付与された状態で、一対の電極チップ23A,23Bに所定時間(約0.3sec)通電を行い、通電後、所定のホールド時間が経過したタイミングで、加圧力を除去する。
【0045】
図7に示すように、溶接電流通電時に、従来の抵抗スポット溶接装置では、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10と比較して加圧力が略700N程度大きくなっているのに対して、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10では、加圧力の上昇は見られず、安定している。これは、溶融金属の膨張による金属板Mへの応力変動が、加圧力吸収機構として作用する弾性部材24の弾性変形によって吸収されたためであり、その結果、LME割れが抑制されたものと考えられる。すなわち、弾性部材24であるコイルバネが、金属板Mの通電時に生じる加圧力の荷重変動を吸収する加圧力吸収機構として作用して、該加圧力の荷重変動を吸収しながら抵抗スポット溶接したことによるものと推定される。
【0046】
なお、通電後の金属板Mの冷却に伴うナゲットの熱収縮によって、板幅方向に引張応力が発生して圧接部でのLME割れが生じる場合がある。このことから、通電後に加圧力を保持し、溶接後の冷却時間を確保するためのホールド時間は、ナゲットの熱収縮に伴う板幅方向の引張応力を低減することができ、LME割れ発生の抑制に有効である。LME割れの発生を効果的に抑制するためには、上記ホールド時間として、通電終了後、0.01sec以上加圧保持したのち、電極の加圧から圧力開放に転じる制御を行うことが好ましい。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る抵抗スポット溶接装置を
図8~
図11を参照して説明する。本実施形態の抵抗スポット溶接装置は、可動側電極及び固定側電極の両電極チップと鋼板とを略垂直に接触させて、打角によるLME割れの発生をさらに抑制すると共に、通電時の溶融金属の膨張によって生じる衝撃力を可動側電極で吸収して、LME割れの発生を抑制する。
【0048】
図8に示すように、本実施形態の抵抗スポット溶接装置10Aは、平面視で略C型の形状を呈するフレーム11と、フレーム11の一端に設けられた加圧シリンダ12と、当該加圧シリンダ12及びフレーム11の対向する端部に設けられた2つの基台13A,13Bと、可動側の基台13Aに設けられた、可動側電極である第1の電極20Aと、固定側の基台13Bに設けられた、固定側電極である第3の電極20Cを備える。第1の電極20Aと第3の電極20Cは、同軸上において対向するように配置されている。
【0049】
第1の電極20Aは、弾性変形可能な弾性部材24を備え、第1実施形態の第1の電極20Aと同一構造を有するため、その構造、作用などの詳細な説明は省略する。
第3の電極20Cは、第1シャンク31と第2シャンク32が自在継手33により接続されている。第3の電極20Cは、自在継手33による角度補正機構の作用により、電極チップ23Cと金属板Mとが略垂直状態になるように打角を補正する。
【0050】
図9~
図11に示すように、第3の電極20Cは、第1シャンク31と、第2シャンク32と、電極チップ23Cと、第1シャンク31及び第2シャンク32を屈曲自在に接続する自在継手33と、導線25と、を備える。
【0051】
第1シャンク31及び第2シャンク32は、例えば真鍮のような金属(合金)により構成されており、導電性を有する。電極チップ23Cは、第3の電極20Cの先端である第1シャンク31の一端に設けられており、金属板Mに直接当接する部材である。
【0052】
自在継手33は、第1シャンク31に固定された雄継手34と、第2シャンク32に固定された雌継手35とからなる。雄継手34は、略球形に形成された先端部36を有し、該先端部36が雌継手35の球形孔37に屈曲自在に嵌合する。第1シャンク31の軸中心に形成された軸孔40には、斜め方向から給水パイプ38及び排水パイプ39が接続されている。
【0053】
図10の「冷却水IN」の矢印で示すように、スポット溶接機10Aの本体から供給された冷却水は、給水パイプ38の中を流れ、電極チップ23Cに到達する。電極チップ23Cに到達し、温度が上昇した冷却水は、「冷却水OUT」の矢印で示すように、排水パイプ39からスポット溶接機10Aに本体に戻り、再び冷却される。
【0054】
球形の先端部36が球形孔37に屈曲自在に嵌合する自在継手33は、第3の電極20Cの軸心に対して鋼板等の金属板Mが傾斜している場合、第3の電極20Cが金属板Mに接触すると、雄継手34が雌継手35に対して屈曲して電極チップ23Cが金属板Mに対して略垂直となる。すなわち、自在継手33は、電極チップ23Cの金属板Mに対する角度を補正可能な角度補正機構として作用して、電極チップ23Cの打角を補正し、これにより引張応力を低減させてLME割れが抑制される。なお、自在継手33は、所定の角度を越えて屈曲しないように構成されている。
【0055】
また、第1シャンク31及び第2シャンク32が、自在継手33により接続されている第3の電極20Cは、軸方向に対して高い剛性を有するため、金属板Mから第3の電極20Cに加圧力が作用しても軸方向位置を一定位置に維持することができ、安定した抵抗スポット溶接が行える。
【0056】
一方、可動側電極である第1の電極20Aでは、弾性部材24の角度補正機構によって第1の電極20Aの打角が補正されて、電極チップ23Aが金属板Mに対して略垂直方向から接触し、打角に起因するLME割れを抑制する。さらに、第1の電極20Aが備える弾性部材24の加圧力吸収機構により、通電時に発生する金属板Mの熱膨張による金属板Mの応力変動が緩和されてLME割れを抑制する。
【0057】
このように、第1の電極20A及び第3の電極20Cの両電極において、電極チップ23A,23Cが金属板Mに対して略垂直方向から接触するため、可動側電極だけでなく、固定側電極においても打角が補正されるため、第1実施形態の抵抗スポット溶接装置10と比較して、更に打角による引張応力に起因するLME割れを抑制することができる。
【0058】
その他の部分については、本発明の第1実施形態に係る抵抗スポット溶接装置10と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る抵抗スポット溶接装置について、
図12を参照して説明する。本実施形態の抵抗スポット溶接装置は、可動側電極及び固定側電極の両電極チップと鋼板とを略垂直に接触させて打角によるLME割れの発生を抑制することを目的とする。
【0060】
図12は、本発明の第3実施形態である抵抗スポット溶接装置の側面図である。本実施形態の抵抗スポット溶接装置10Bは、可動側電極及び固定側電極が共に、第2実施形態で説明した自在継手33を有する第3の電極20Cから構成されている。
【0061】
第3の電極20Cは、弾性部材24を有しておらず、したがって、加圧力吸収機構による金属板Mの応力変動は吸収されない。しかし、可動側及び固定側のいずれにおいても自在継手33による角度補正機構の作用により打角が補正されるため、打角に起因するLME割れの発生を抑制することができる。
【0062】
また、第3の電極20Cの自在継手33は、軸方向に対して、第2の電極20B(
図1参照)と同程度の剛性を有するため、
図7に示す加圧開始から所定の加圧力に達するまでに要する加圧時間及び加圧終了後の残加圧時間が、第1の電極20Aと比較して短縮することができ、全体として短時間での接合が可能となる。
【0063】
その他の部分については、本発明の第2実施形態に係る抵抗スポット溶接装置10Aと同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0064】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る抵抗スポット溶接装置について
図13~
図18を参照して説明する。本実施形態の抵抗スポット溶接装置は、一対の可動側電極の両電極チップと鋼板とを略垂直に接触させて、打角によるLME割れの発生を抑制すると共に、通電時の溶融金属の膨張によって生じる衝撃力を一対の可動側電極で吸収して、LME割れの発生をさらに抑制することを目的とする。
【0065】
図13は、本発明の第4実施形態に係る抵抗スポット溶接装置の側面図である。抵抗スポット溶接装置10Cは、平面視で略C型の形状を呈するフレーム11と、フレーム11の両端に設けられた加圧シリンダ12と、当該加圧シリンダ12に設けられた2つの基台13A,13Bと、2つの基台13A,13Bのそれぞれに設けられた一対の可動側電極である一対の第4の電極20Dを備える。一対の第4の電極20Dは、同軸上において対向するように配置されている。
【0066】
スポット溶接を行う場合、重ね合わせた複数(図では2枚)の被接合体である鋼板等の金属板Mを一対の第4の電極20Dの間に挿入し、加圧シリンダ12により一対の第4の電極20Dを互いに接近させ、金属板Mを一対の第4の電極20Dの間に挟み込む。これにより、弾性部材43の収縮することができ、これにより金属板Mの板厚方向の位置が安定する。この状態で、加圧しながら一対の電極間に通電を行い、スポット溶接を行う。本実施形態では、一対の第4の電極20Dは、全く同じ形式のものを用いている。
【0067】
図14は、第4の電極20Dの斜視図であり、
図15は、
図14の断面図を示す。第4の電極20Dは、第1シャンク(第1の電極用シャンク)41と、第2シャンク(第2の電極用シャンク)42と、電極チップ23Dと、弾性部材43と、導線45と、リング46と、を備える。
【0068】
第1シャンク41及び第2シャンク42は、例えば真鍮のような金属(合金)により構成されており、導電性を有する。本実施形態では、第1シャンク41と第2シャンク42は、全く同じ形式のものを用いている。また、電極チップ23Dは、第4の電極20Dの先端であって、第1シャンク41の第1端に設けられており、金属板Mに直接当接する部材である。
【0069】
弾性部材43は、電極チップ23Dが設けられた第1シャンク41の第1端と逆側の第2端と、第2シャンク42を接続する部材である。弾性部材43は、第4の電極20Dに所定の荷重が加わった際においても、破壊を免れる程度の剛性を有する一方で、荷重の作用により弾性変形可能な性質を有している。本実施形態では、弾性部材43は鋼鉄のような金属製の円筒形ブロックにより形成され、このブロックには弾性変形を促すための切り欠き43aが設けられている。
【0070】
金属製(例えば銅等)の導線45は、第1シャンク41及び第2シャンク42のそれぞれの外周に取り付けられた金属製(例えば銅等)のリング46に接続されている。弾性部材43が金属製であっても、その導電性が十分でない場合(スポット溶接には大電流が必要)、第1シャンク41と第2シャンク42との間に十分な電気的接続を確保することは困難である。このため、導線45が弾性部材43の外側を迂回するように設けられ、第1シャンク41と第2シャンク42とを電気的に接続する。抵抗スポット溶接装置10Cの本体から加圧シリンダ12、基台13Aを経由して供給された電流は、第2シャンク42→リング46→導線45→リング46→第1シャンク41→電極チップ23Dの順に流れ、金属板Mまで到達する。
【0071】
図16は、
図15のS領域の拡大図を示す。
図17は、第4の電極の断面図を示す。第4の電極20Dは電流のみならず、第4の電極20D自体、特に先端の電極チップ23Dを冷却する冷却水を流すための構造を有している。すなわち、
図17に示すように、冷却水を流すための流路Tが、第1シャンク41と、弾性部材43と、第2シャンク42それぞれの内部を貫通するように設けられている。
【0072】
流路Tは、抵抗スポット溶接装置10Cの本体から供給された冷却水を電極チップ23Dに流すための往路T1と、電極チップ23Dを冷却した冷却水を抵抗スポット溶接装置10Cの本体に戻すための復路T2を含む。復路T2は、第1シャンク41と、弾性部材43と、第2シャンク42それぞれの内部を貫通する内部空間Hにより形成される。第1シャンク41及び第2シャンク42は、その中心部分が長手方向に沿って中空になるようにくり抜かれており、くり抜かれた部分が内部空間Hを形成する。弾性部材43も同様に、その中心部分が長手方向に沿って中空になるようにくり抜かれている。ただし、
図17に示すように、くり抜かれた部分の上下端では、第1シャンク41及び第2シャンク42のそれぞれと螺合するホース継手47、及びホース継手47に接続されたホース48がくり抜かれた部分に配置されており、ホース継手47及びホース48の内部が、内部空間Hを形成する。
【0073】
往路T1は、内部空間Hに配置され、第1シャンク41と、弾性部材43と、第2シャンク42を貫通する一体のパイプ49により形成される。なお、パイプ49は、
図15において省略されているが、
図16の一点鎖線又は
図17に示すように、内部空間Hの中心軸上に配置され、例えば樹脂等によって形成された円筒長尺状の部材である。
【0074】
図17の「冷却水IN」の矢印で示すように、抵抗スポット溶接装置10Cの本体から供給された冷却水は、第2シャンク42から、弾性部材43及び第1シャンク41を経由するようにパイプ49の中を流れ、電極チップ23Dに到達する。電極チップ23Dに到達し、温度が上昇した冷却水は、「冷却水OUT」の矢印で示すように、第1シャンク41、弾性部材43、第2シャンク42を経由するように、パイプ49の外側の内部空間Hの中を流れ、抵抗スポット溶接装置10Cの本体に戻り、再び冷却される。このようにして、冷却水は抵抗スポット溶接装置10Cの本体と電極を循環し、常に一定温度以下に冷却された冷却水が電極チップ23Dに供給されるため、第4の電極20D、特に電極チップ23Dの温度上昇を抑制することができ、スポット溶接の接合効率を向上させることができる。なお、スポット溶接用の電流は、
図17の「通電経路」の矢印に従って、抵抗スポット溶接装置10Cの本体から加圧シリンダ12及び基台13Aを経由して供給され、第2シャンク42→導線45→第1シャンク41→電極チップ23Dの順に流れ、金属板Mまで到達する。
【0075】
電極チップ23Dは、金属板Mに直接当接する平坦なフラット面23dを有する。第4の電極20Dが、金属板Mに対し略垂直の関係を維持することができる場合、各電極の電極チップ23Dのフラット面23dが金属板Mに面接触する。この結果、金属板Mとフラット面23dとの間で滑りが生じにくく、安定的なスポット溶接を行うことが可能となる。なお、平坦なフラット面23dは、電極チップ23Dの先端部における少なくとも一部に存在していればよく、
図17に示すような、電極チップ23Dにおける金属板Mに対向する面のすべてがフラットな面を有するのはもちろんのこと、電極チップ23Dの先端部のみがフラットな面を有し、その周囲の部分が曲率を有する形状であっても構わない。
【0076】
図18Aは、実際のスポット溶接の場面において、第4の電極20Dと金属板Mが取り得る状態を示す図である。一対の第4の電極20Dが互いに接近し、それぞれが当接点P1,P2において金属板Mに当接することに伴い、各電極には荷重Fが印加される。理想状態においては、2つの電極が接近する方向であって、2つの電極の長手方向に沿った軸Y1,Y2に対して垂直な面Xに対し、金属板Mが平行に配置される。しかしながら、常に金属板Mの配置の精度を正確に保つことは困難であり、図示のように、例えば金属板Mが面Xから所定の角度θ(例えば5°程度)傾いて配置される場合が生じ得る。すなわち、一対の第4の電極20Dが金属板Mに対し、垂直方向から傾いた状態をとっている。
【0077】
そして、本実施形態の第4の電極20Dではない従来タイプ、すなわち上述した弾性変形可能な弾性部材43が設けられていない剛体電極を用い、このような状態のままスポット溶接を行うと、電極チップ23Dのフラット面23dが金属板Mに適切に接触していないため、一定品質のスポット溶接を得ることが難しくなる。品質劣化の一例として、例えばLME(Liquid Metal Embrittlemet;液体金属脆化)割れのような欠陥を生じるおそれがある。
【0078】
続いて
図18Bは、本実施形態の一対の第4の電極20Dの作用を説明するための図である。本実施形態の第4の電極20Dにおいては、上述した弾性部材43が設けられている。このため、2つの電極の先端である電極チップ23Dから発生する荷重Fの作用により、それぞれの弾性部材43が弾性変形し、当接点P1,P2を中心として、両電極チップ23Dが矢印R1方向に回転する。この結果、金属板Mが移動しなくても、二つの電極の長手方向に沿った軸Y1,Y2は、金属板Mに対し略垂直に交わる状態となり、一対の第4の電極20Dは、金属板Mに対し略垂直方向から接触する状態を維持することができる。この結果、一対の第4の電極20Dのそれぞれのフラット面23dが、金属板Mに対し適切に面接触することになり、LME割れの発生を抑制して安定的なスポット溶接を行うことが可能となる。
【0079】
なお、
図18Bの破線で示した通り、上記変形に伴い、一対の第4の電極20Dのそれぞれの長手方向に沿った軸Y1,Y2の間には、少しのずれが生じ得る。しかしながら、このようなずれはわずかなものであり、
図18Aの状態に比べて、良好なスポット溶接を実現することができる。
【0080】
上述した通り、第4の電極20Dが被接合体である鋼板等の金属板Mに傾斜した状態で当接しても、弾性部材43が、先端に設けられた電極チップ23Dからの力を受けて弾性変形し、電極の長手方向に沿った軸と金属板Mが略垂直となる関係を実現し、さらにこの関係を容易に維持することができる。したがって、打角によるスポット溶接の品質の低下を抑制することができる。
【0081】
また、もし電極チップ23Dの金属板Mに接する面が湾曲面により形成されている場合、この湾曲面と金属板Mの間で滑りが生じやすく、溶接が不安定になり得ると考えられる。しかしながら本実施形態では、金属板Mに接する面が平坦なフラット面23dにより形成されており、金属板Mとフラット面23dとの間で滑りが生じにくく、電極チップ23Dから発生する荷重を、確実に弾性部材43に伝達することが可能となる。この結果、弾性部材43の変形を促し、
図18Bに示したように、打角が補正された状態を容易に実現するとともに、この状態を安定的に維持することができる。
【0082】
また、一対の第4の電極20Dに設けられた弾性部材43は、弾性変形することで通電時に溶融金属の膨張による加圧力の上昇を吸収する。これにより、通電時の溶融金属の膨張の衝撃によるLME割れの発生を抑制することができる。
【0083】
また、冷却水が流路Tを通じて電極の先端近傍、すなわち電極チップ23Dまで流れるため、溶接時に電極を効率的に冷却することができ、接合効率を向上させることができる。
【0084】
本実施形態において流路Tは、電極の内部空間Hにより形成される復路T2と、内部空間Hに配置されたパイプ49により形成される往路T1を含む。よって、簡易かつコンパクトな構成により、冷却水の循環を実現している。しかしながら、冷却水の流路Tはこのような構成に限定されるものではなく、他の手段によって冷却してもよい。
【0085】
また、第1シャンク41と第2シャンク42を電気的に接続する導線45を、弾性部材43の外側に設けることにより、たとえ弾性部材43が弾性変形しても、電極への通電を円滑に行うことが可能となる。
【0086】
本実施形態では、弾性部材43は鋼鉄のような金属製の円筒形ブロックにより形成され、このブロックには弾性変形を促す切り欠き43aが設けられている。しかしながら、弾性部材43の具体的な形状、構造、材料等は特に限定されない。例えば、弾性部材43を十分な剛性と導電性を両立させた材料で形成してもよく、このような場合は、導線45の線径を細くしたり、又は導線45自体を省略することができる。
【0087】
本実施形態の切り欠き43aは、弾性部材43の周方向かつ長手方向に伸びるように、例えば螺旋状に形成されている。ただし、弾性部材43の弾性変形を促すことができるのであれば、その具体的な態様は特に限定されない。また、バネ等の部材を設け、弾性変形を実現してもよい。なお、弾性部材43に少量の電流が流れることにより、弾性部材43が溶解し、切り欠き43aが埋められてしまう事態が生じ得るが、このような事態を防止するため、切り欠き43aに樹脂、ゴム等の非導電性材料を埋め込んでもよい。
【0088】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した各実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0089】
例えば、本発明の加圧力吸収機構は、第1及び第2実施形態の弾性部材24や第4実施形態の弾性部材43の形態に限定されることなく、例えば、図示しないエアシリンダなどの空圧装置の弾性力を利用することもできる。
【0090】
また、本発明の抵抗スポット溶接装置は、略L字形の一対の長尺電極が溶接装置本体から前方に延び、その先端同士が互いに接近及び離間可能に開閉自在とされた、簡易型あるいは携帯型などの図示しない溶接装置にも適用できる。具体的には、一方の電極を溶接装置本体に固定し、他方の電極を溶接装置本体に設けた軸を中心として揺動自在とすると共に、他方の電極と溶接装置本体の間に、他方の電極の先端を一方の電極の先端方向に付勢するばねを設けた構造であってもよい。この場合、他方の電極と溶接装置本体の間に設けたばねが、加圧力吸収機構として作用して、通電時の溶融金属の膨張による加圧力の上昇を吸収し、その衝撃によるLME割れを防止する。
【0091】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上で、かつ亜鉛めっきされた鋼板を少なくとも1枚有する複数の鋼板をスポット溶接するための抵抗スポット溶接方法であって、
前記複数の鋼板を挟み込んで加圧する一対の電極チップと、前記一対の電極チップのうち少なくとも一方に設けられ、前記電極チップの軸方向への加圧力を吸収可能な加圧力吸収機構と、を備える一対の電極を用いて、
前記一対の電極チップに前記複数の鋼板を挟み込み、かつ、前記一対の電極チップに加圧力を付与した状態で通電することで、前記通電時に発生する前記加圧力の変動荷重を前記加圧力吸収機構により吸収しながら溶接する、抵抗スポット溶接方法。
(2) 前記一対の電極のうち一方は固定式電極であり、他方は可動式電極であって、
前記加圧力吸収機構は、前記可動式電極側に設けられる、(1)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(3) 前記加圧力吸収機構は、弾性部材を用いた機構である、(1)又は(2)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(4) 前記弾性部材は、バネ定数が10N/mm以上1500N/mm以下であるバネによって構成される、(3)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(5) 前記加圧力吸収機構は、空圧を用いた機構である、(1)又は(2)に記載の抵抗スポット溶接方法。
【0092】
(6) C:0.08質量%以上、Si:0.50質量%以上を含み、引張強度が980MPa以上で、かつ亜鉛めっきされた鋼板を少なくとも1枚有する複数の鋼板をスポット溶接するための抵抗スポット溶接方法であって、
前記複数の鋼板を挟み込んで加圧する一対の電極チップと、前記鋼板に対する前記一対の電極チップの角度をそれぞれ補正可能な一対の角度補正機構と、を備える一対の電極を用いて、
前記一対の電極チップに前記複数の鋼板を挟み込み、かつ、前記一対の電極チップの軸が前記鋼板に対して略垂直となるように接触させながら、前記一対の電極チップに加圧力を付与した状態で通電することで溶接する、抵抗スポット溶接方法。
(7) 前記一対の角度補正機構のうち少なくとも一方は自在継手を用いた機構である、(6)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(8) 前記一対の電極のうち一方は固定式電極であり、他方は可動式電極であって、
前記自在継手を用いた機構は、前記固定式電極側に設けられる、(7)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(9) 前記一対の角度補正機構のうち一方が前記固定式電極側に設けられた自在継手を用いた機構であり、他方が前記可動式電極側に設けられた弾性部材を用いた機構である、(8)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(10) 前記弾性部材は、バネ定数が10N/mm以上1500N/mm以下であるバネによって構成される、(9)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(11) 前記一対の角度補正機構の両方が自在継手を用いた機構である、(7)に記載の抵抗スポット溶接方法。
(12) 前記電極チップは、先端面の曲率半径RがR≦100mmを満たし、かつ、外径φがφ≦16mmを満たす、(1)~(11)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
(13) 前記電極チップは、その先端部の少なくとも一部が前記鋼板に当接するフラット面を有する、(1)~(11)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
(14) 通電終了後、0.01sec以上加圧保持したのち、前記電極の加圧から圧力開放に転じる制御を行う、(1)~(13)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
(15) 溶接電流が交流電流である、(1)~(14)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接方法。
【0093】
(16) 第1の電極用シャンクと、
第2の電極用シャンクと、
前記第1の電極用シャンクの第1端に設けられ、フラット面を有する電極チップと、
前記第1の電極用シャンクの第2端と前記第2の電極用シャンクを接続し、弾性変形可能な接続部材と、を備え、
冷却水を流すための流路が、前記第1の電極用シャンクと、前記接続部材と、前記第2の電極用シャンクそれぞれの内部を貫通するように設けられている、スポット溶接ガン用電極。
(17) 前記第1の電極用シャンクと前記第2の電極用シャンクを電気的に接続する導線が、前記接続部材の外側に設けられている、(16)に記載のスポット溶接ガン用電極。
(18) 前記接続部材は金属製のブロックにより形成され、当該金属製のブロックには、弾性変形を促す切り欠きが設けられている、(16)又は(17)に記載のスポット溶接ガン用電極。
(19) 前記流路は、前記第2の電極用シャンクから前記電極チップに向けて冷却水を流す往路と、前記電極チップから前記第2の電極用シャンクに向けて冷却水を流す復路を含み、
前記復路は、前記第1の電極用シャンクと、前記接続部材と、前記第2の電極用シャンクそれぞれの内部を貫通する内部空間により形成され、
前記往路は、前記内部空間に配置され、前記第1の電極用シャンクと、前記接続部材と、前記第2の電極用シャンクを貫通する一体のパイプにより形成される、(16)~(18)のいずれかに記載のスポット溶接ガン用電極。
(20) (16)~(19)のいずれかに記載のスポット溶接ガン用電極を有するスポット溶接ガン。
【符号の説明】
【0094】
10,10A,10B,10C 抵抗スポット溶接装置(スポット溶接機)
20A 第1の電極(電極)
20B 第2の電極(電極)
20C 第3の電極(電極)
20D 第4の電極(電極)
23A,23B,23C,23D 電極チップ
23d フラット面
24 弾性部材(接続部材、加圧力吸収機構、角度補正機構)
43 弾性部材(接続部材、加圧力吸収機構、角度補正機構)
33 自在継手
M 金属板(鋼板)
R 先端面の曲率半径
φ 外径