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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】コンクリートスラブの型枠
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20240123BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E04B5/40 A
E04B5/32 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020130687
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026964
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 邦夫
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-013691(JP,A)
【文献】国際公開第2020/051633(WO,A1)
【文献】特開2007-138418(JP,A)
【文献】実開平03-050110(JP,U)
【文献】特開2009-215775(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02954948(FR,A1)
【文献】特開2017-180058(JP,A)
【文献】特開2000-038709(JP,A)
【文献】特開2013-083104(JP,A)
【文献】特開2002-161604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/32- 5/40
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の板と、
前記木製の板上に互いに間隔をおいて配置された複数のデッキプレートと、
前記複数のデッキプレート上に配置された複数列の鉄筋付きトラスと、
いに隣接する2つのデッキプレート間に配置され前記鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ伸びる板状体であって前記木製の板に固定され該板上に直立する板状体を備える、コンクリートスラブの型枠。
【請求項2】
さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート上の互いに隣接する2つの鉄筋付きトラスに支持され該鉄筋付きトラスの列に直交して伸びる互いに平行な複数の段取り筋を備え、前記板状体は前記段取り筋に固定されている、請求項に記載のコンクリートスラブの型枠。
【請求項3】
前記板状体は、その両表面に固定され前記鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ伸びる棒状又は帯状の上下2対の補強部材により補強されている、請求項又はに記載のコンクリートスラブの型枠。
【請求項4】
さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート上にそれぞれ配置され互いに相対する2列の鉄筋付きトラスの間に該鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ互いに間隔をおいて配置された複数のボイド形成用ブロックを備える、請求項のいずれか1項に記載のコンクリートスラブの型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物のコンクリートスラブの型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブの型枠の1つとして、デッキプレートと、デッキプレート上に配置された複数列の鉄筋付きトラスとを備えるものが提案されている。デッキプレート及び鉄筋付きトラスは、これらの上に打ち込まれるコンクリートが固化しその強度が発現するまでの間、コンクリートの重量を支持する働きをなす。
【0003】
ところで、コンクリートスラブの形成においては、コンクリートが打ち込まれたデッキプレート及び鉄筋付きトラスを支持するためにデッキプレートの直下に多数の支保工が設置される。しかし、支保工の設置及び撤去には多大の労力と時間とを要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-31137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、コンクリートスラブの形成時に必要とされる支保工の設置数量を低減し、あるいはその設置を不要にし得る新たなコンクリートスラブの型枠を提供する。また、本発明は、木材面を現しとして、木質感の表出を可能とする新たなコンクリートスラブの型枠を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリートスラブの型枠は、木製の板と、該木製の板上に配置された1又は複数のデッキプレートと、前記デッキプレート上に配置された複数列の鉄筋付きトラスとを備える。
【0007】
本発明にあっては、前記1のデッキプレート、前記複数のデッキプレート、又は、互いに間隔をおかれた複数のデッキプレート及び該デッキプレート相互間に露出する前記木製の板の一部が前記型枠の底部の内表面を規定する。前記型枠は、コンクリートスラブの形成のためにその内部に打ち込まれるコンクリートを受け入れる。本発明によれば、前記コンクリートが固化しその強度が発現するまでの間、前記木製の板に前記コンクリートの重量を支える役割を担わせることができる。このため、コンクリートスラブの形成に際して前記コンクリートの重量を支えるために必要とされる支保工の設置数量を低減し、あるいは、支保工の設置を不要とすることができる。また、前記木製の板の重量は比較的小さく、このために前記型枠全体の重量もまた比較的小さい。このことは、前記支保工の設置数量を低減し又は設置を不要とする上で有利である。また、本発明においては、前記型枠を構成する木製の板、前記デッキプレート及び鉄筋付きトラスは固化後のコンクリートと共にコンクリートスラブを構成し、前記木製の板をもって木材面を現しとして、建築物の天井に木質感を表出することができる。
【0008】
前記複数のデッキプレートについては、これらが互いに間隔をおいて配置されたものとすることができる。これによれば、互いに隣接する2つのデッキプレート間に現れる前記木製の板の表面の一部を前記木製の板の面外剛性を高めるための補強部材の設置面として利用することができる。また、互いに隣接する2つのデッキプレート間の空間を、前記コンクリートスラブをボイドスラブとする場合におけるボイド形成用ブロックの設置空間として利用することができる。
【0009】
互いに間隔をおいて配置された複数のデッキプレートを有する型枠においては、さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート間に配置され前記鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ伸びる板状体を備えるものとすることができる。前記板状体は前記木製の板に固定されかつ該木製の板上に直立した状態におかれ、前記木製の板の面外剛性を高める前記補強部材としての働きをなす。また、前記板状体の構成材料として比較的軽量な例えば木材、プラスチック材料等を選択することにより、前記型枠全体の重量の増加を最小限に抑えることができる。これは、前記支保工の設置数量の低減又はその設置を不要とすることに寄与する。
【0010】
前記板状体を有する型枠の例にあっては、さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート上の互いに隣接する2つの鉄筋付きトラスに支持され該鉄筋付きトラスの列に直交して伸びる互いに平行な複数の段取り筋を含み、前記板状体が前記段取り筋に固定されたものとすることができる。これによれば、コンクリートの打ち込み時における前記板状体の振れ又は傾斜(倒れ)の発生を防止することができる。
【0011】
前記板状体は、その両表面に固定され前記鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ伸びる棒状又は帯状の上下2対の補強部材により補強されたものとすることができる。
【0012】
また、前記型枠において、さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート上にそれぞれ配置され互いに相対する2列の鉄筋付きトラスの間に、前記鉄筋付きトラスの列の伸長方向へ互いに間隔をおいて配置された複数のボイド形成用ブロックを備えるものとすることができる。前記ボイド形成用ブロックは、形成されるコンクリートスラブ中にボイド(中空部)を形成し、前記ボイドは前記コンクリートスラブの重量軽減、断熱性の付与等に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンクリートスラブの型枠の概略的な平面図である。
図2図1の線2-2に沿って得たコンクリートスラブの型枠の概略的な部分断面図である。
図3】他の例に係るコンクリートスラブの型枠の概略的な部分断面図である。
図4図3の線4-4に沿って得た概略的な部分断面図である。
図5】(a)はさらに他の例に係るコンクリートスラブの型枠の概略的な部分断面図である。(b)は図5(a)の線5(b)-5(b)に沿って得た概略的な部分断面図である。
図6】接合金物の一例であるメタルプレートコネクタの斜視図である。
図7】さらに他の例に係るコンクリートスラブの型枠の概略的な部分断面図である。
図8図7の線8-8に沿って得た概略的な断面図である。
図9】板状体の他の例を示す横断面図である。
図10】さらに他の例に係る板状体の横断面図である。
図11】鉄筋付きトラスの他の一例を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2を参照すると、建築物のコンクリートスラブを形成するための型枠が全体に符号10で示されている。
【0015】
型枠10は、木製の板12と、該木製の板上に配置された、鋼板を角波形に成形してなる複数(図示の例では4つ)のデッキプレート14と、該デッキプレート上に配置された複数列(図示の例では8列)の鉄筋付きトラス16とを備える。型枠10は、木製の板12を介して梁18(図1)上に載置され、これにより梁18上に支持されている。なお、図示の例に代えて、型枠10を複数の柱(図示せず)の頭部で支持することにより、形成されるコンクリートスラブをフラットスラブ構造のものとすることができる。
【0016】
木製の板12は、好ましくは単一の合板又は互いに接合された複数の合板からなり、全体に矩形の平面形状を有する(図1参照)。木製の板12はその上に複数のデッキプレート14を支持する。
【0017】
図示のデッキプレート14は、比較的大きい幅寸法を有する市販のデッキプレートを所要の幅寸法に切断して得られる切断片からなる。配置すべきデッキプレート14の数量、すなわち前記切断片の数量は任意に定めることができる。
【0018】
図示の例において、複数のデッキプレート14は互いに間隔をおいて平行に配置され、互いに隣接する2つのデッキプレート間に木製の板12の表面の一部12aが露出している。複数のデッキプレート14は、木製の板12の表面の一部12aと共に、前記コンクリートスラブの形成のために打ち込まれるコンクリートC(図2)を受け入れる型枠10の底部における内表面を規定する。
【0019】
この型枠10においては、木製の板12が、複数のデッキプレート14及び複数列の鉄筋付きトラス16と共に、コンクリートCが固化しその強度が発現するまでの間、コンクリートCの重量を支える役割を担う。このため、前記コンクリートスラブの形成に際して型枠10の直下でコンクリートCの重量を支えるために必要とされる支保工(図示せず)の設置数量を低減し、あるいは、前記支保工の設置を不要とすることができる。また、木製の板12の重量は比較的小さい。このため、型枠10の全体重量もまた比較的小さい。このことは、前記支保工の設置数量を低減し又は設置を不要とする上で有利である。また、型枠10を構成する木製の板12、デッキプレート14及び鉄筋付きトラス16は、固化後のコンクリートCと共に、前記コンクリートスラブを構成する。このことから、木製の板12をもって木材面を現しとして、前記建築物の天井に木質感を表出することができる。
【0020】
互いに隣接する2つのデッキプレート14間に現れる木製の板12の表面の一部12aは、後述する板状体28の設置面として利用することができる。板状体28は、木製の板12の面外剛性を高めるための補強部材をなす。また、デッキプレート14間の空間は、コンクリートスラブをボイドスラブとする場合におけるボイド形成用ブロック26の設置空間として利用することができる。デッキプレート14及びボイド形成用ブロック26間の木製の板12の表面の一部12aも、また、板状体28の配置面として利用することが可能である。
【0021】
各デッキプレート14上の各列の鉄筋付きトラス16は、三角形状を呈する複数のラチス筋16aと、1つの上弦筋16b及び2つの下弦筋16cとからなる。ただし、図の煩雑を回避するため、2つの下弦筋16cについては図1中への記載が省略されている。鉄筋付きトラス16は型枠10内に打ち込まれるコンクリートC中に埋設され、上弦筋16b及び下弦筋16cはそれぞれ上端筋及び下端筋として、固化後のコンクリートC中の主筋をなす。なお、上弦筋16bについては、その太さを比較的大きいものに設定し、及び/又は、その配置数量を1つとする図示の例に代えて並列配置の2つ以上とすることができる。これによれば、鉄筋付きトラス16によるコンクリートスラブの補強効果を高め、また、コンクリートスラブの曲げ剛性や曲げ耐力を高めることができる。
【0022】
複数のラチス筋16aは、デッキプレート14の伸長方向(鉄筋付きトラス16の各列の伸長方向)(図1において上下方向)へ互いに間隔をおいて配置されデッキプレート14の伸長方向に対して直交している。上弦筋16b及び下弦筋16cは、それぞれ、各ラチス筋16aに溶接されデッキプレート14の伸長方向へ伸びている。
【0023】
上弦筋16bは、ラチス筋16aの全体的な平面形状である前記三角形の頂点下に位置する。また、2つの下弦筋16cは、それぞれ、前記三角形の頂点に相対する底辺の近傍において、前記頂点に連なる2辺上に位置する。各ラチス筋16aは、前記三角形の2辺から前記底辺の延長上を互いに反対方向へ伸びる2つの端部16a1(図2)を有し、各端部16a1において、U字釘20により各デッキプレート14及び木製の板12に固定されている。なお、図示の例に代えて、各ラチス筋16aの端部16a1を例えば各デッキプレート14に溶接し、また、各デッキプレート14を例えばビスを用いて木製の板12に固定することができる。
【0024】
図示の型枠10においては、2列の鉄筋付きトラス16が各デッキプレート14上に配置されている。図示の例に代えて、各デッキプレート14上に1列の鉄筋付きトラス16(図3図5参照)を配置しあるいは3以上の列の鉄筋付きトラス16(図示せず)を配置することができる。各デッキプレート14の幅寸法の大きさは、この上に配置される鉄筋付きトラス16の列の数に合わせて定めることができる。
【0025】
また、図示の型枠10においては、前記コンクリートスラブ中に埋設される他の主筋として、複数の上端筋22及び複数の下端筋24とが配置されている。ただし、図の煩雑を回避するため、上端筋22及び下端筋24についても、図1中への記載が省略されている。各上端筋22及び各下端筋24は、それぞれ、各鉄筋付きトラス16の列に対して直交する方向(すなわち各鉄筋付きトラス16の上弦筋16b及び下弦筋16cの伸長方向に対して直交する水平方向)へ伸びている。各上端筋22は各鉄筋付きトラス16の上弦筋16bにその上方位置において結束され、また、各下端筋24は各鉄筋付きトラス16の両下弦筋16cの上方位置において両下弦筋16cに結束されている。
【0026】
図示の型枠10は、また、前記コンクリートスラブをボイドスラブとするために設置された複数のボイド形成用ブロック26を備える。複数のボイド形成用ブロック26は、互いに隣接する2つのデッキプレート14相互間、より詳細には両デッキプレート14上の互いに相対する2列の鉄筋付きトラス16間の空間、さらに詳細には木製の板12の表面の一部12aの上方空間に、鉄筋付きトラス16の列の伸長方向へ互いに間隔をおいて配置されている。ボイド形成用ブロック26は、例えば前記他の主筋である上端筋22及び下端筋24間に位置しまた未硬化のコンクリートC中を浮き上がらないように、適当な固定具(図示せず)を介して木製の板12に固定されている。ボイド形成用ブロック26は、例えば発泡スチロールからなる。ボイド形成用ブロック26は、図示の立体形状を有するものに代えて、例えば球体や直方体のような他の立体形状を有するものとすることができる。
【0027】
ボイド形成用ブロック26は、複数列の鉄筋付きトラス16及び前記他の主筋である上端筋22及び下端筋24と共にコンクリートC中に埋設され、前記コンクリートスラブ中にボイド(中空部)を形成する。前記ボイドは前記コンクリートスラブの重量軽減、断熱性の向上等に寄与する。なお、前記ボイドを有しないコンクリートスラブの形成においては、型枠10はボイド形成用ブロック26を含まない。
【0028】
次に、図3に示すように、型枠10は、好ましくは、木製の板12の面外剛性を高める補強部材としての板状体28を備える。板状体28は好ましくは比較的軽量である木製の板(木板や合板)のような木材、プラスチック材料等からなる。これらの材料は、型枠10の全体の重量の増加を最小限に抑えることに寄与する。但し、板状体28はコンクリート、金属等の他の材料製とすることを妨げない。図示の板状体28は全体に細長い矩形の平面形状を有する合板からなり、互いに隣接する2つのデッキプレート14間に配置され該デッキプレートの伸長方向(鉄筋付きトラス16の伸長方向)へ伸びている。板状体28はその伸長方向における両端面をデッキプレート14の伸長方向に向けられかつその両側面(下側面28a及び上側面28b)の一方である下側面28aにおいて木製の板12上に直立した状態で載置され、かつ、接合金物30を介して木製の板12に固定されている。
【0029】
図6に接合金物30の一例であるメタルプレートコネクタを示す。前記メタルプレートコネクタは、鋼板30aに打ち抜き加工を施して得られた先端鋭利な多数の爪30bを有する。前記メタルプレートコネクタには、多数の爪30bが鋼板30aの片面の側にのみ突出しているもの(これを便宜上、接合金物30(A)と称する。)と、多数の爪30bが鋼板30aの両片面の側にそれぞれ突出しているもの(これを便宜上、接合金物30(B)と称する。)とがある。
【0030】
図3に示す板状体28は、その下部において、接合金物30(B)を介して、木製の板12に固定されている。接合金物30(B)は、全体にU字形を呈するように折り曲げられ、その両片面の一方側の多数の爪30bが板状体28の下側面28aとこれに連なる両表面28c、28dの一部とに突き刺され、また、その両片面の他方側の多数の爪30bの一部が木製の板12の表面の一部12aに突き刺されている。これにより、板状体28がその下部において木製の板12に固定されている。なお、図3においては、図の単純化を図るため、爪30bの記載を省略した。
【0031】
木製の板12への板状体28の固定は、図示の接合金物30(B)あるいは図7に示す接合金物30(A)に代えて、接合金物30の他の一例である、複数のアングル鋼板(図示せず)及び複数の丸くぎ(図示せず)を用いて行うことができる。前記固定は、複数のアングル鋼板を、板状体28の両表面28c、28dの側にその伸長方向へ互いに間隔をおいて配置し、各アングル鋼板の一片とその他片とをそれぞれ板状体28の各表面28c、28dと木製の板12の表面の一部12aとに前記丸くぎで打ち付けることにより行う。
【0032】
図3に示す型枠10は、さらに、互いに隣接する2つのデッキプレート14上の互いに隣接する2つの鉄筋付きトラス16に支持され鉄筋付きトラス16の列に直交して伸びる互いに平行な複数の段取り筋32を備え、板状体28は段取り筋32に固定されている。図示の段取り筋32は、互いに隣接する2つの鉄筋付きトラス16の列を横断する比較的短い長さ寸法を有する。段取り筋32は両鉄筋付きトラス16の上弦筋16bの直下を伸び、その両端部において両鉄筋付きトラス16の上弦筋16bに結束され、これにより両鉄筋付きトラス16に支持されている。
【0033】
他方、板状体28は接合金物30(A)を介して段取り筋32に固定されている。接合金物30(A)は段取り筋32上を湾曲してこれを横断するように折り曲げられ、その爪30b(図4)が板状体28の上側面28bに突き刺され、これにより、板状体28がその上部において段取り筋32に固定されている。これによれば、コンクリートCの打ち込み時における板状体28に水平方向への振れ又は傾斜(倒れ)が生じることを防止することができる。段取り筋32への板状体28の固定は、図示の接合金物30(A)に代えて、接合金物30のさらに他の例であるU字釘、鉤形の釘、かすがい等(図示せず)を用いて行うことができる。
【0034】
また、図3に示す型枠10においては、前記他の主筋の一つである上端筋22が各列の鉄筋付きトラス16の上弦筋16bの直上を上弦筋16bに対して直交して伸び、上弦筋16bに結束されている。また、図4に示すように、上端筋22は段取り筋32に対して水平方向に間隔をおいて配置されている。これによれば、上端筋22と板状体28との間の空間をコンクリートCで満たし、また、必要とされるコンクリートのかぶり厚を確保することができる。
【0035】
図3及び図4に示す例に代えて、図5(a)及び図5(b)に示すように、上端筋22及び段取り筋32の双方が各列の鉄筋付きトラス16の上弦筋16bの直上の同一の高さ位置を上弦筋16bに直交して伸びるように配置することができる。上端筋22は同様に上弦筋16bに結束されている。ここにおいて、上端筋22は、段取り筋32に対して水平方向に間隔をおいて配置されている。また、板状体28にその上側面28bに開放し、上端筋22に相対する溝34が設けられている。溝34は、上端筋22の直下にコンクリートCを受け入れる空間をなす。これによれば、上端筋22の高さ位置を下げかつ十分なコンクリートのかぶり厚を確保することができる。
【0036】
図7及び図8に示すように、板状体28は、その両表面28c、28dに固定され鉄筋付きトラス16の列の伸長方向へ伸びる棒状の上下2対の補強部材38、40により補強されたものとすることができる。補強部材38、40は図示の円形の横断面形状に代えて、例えば矩形の横断面形状を有するものとすることができる。また、前記棒状を呈するものに代えて細長い板状(帯状)を呈するものとすることができる。補強部材38、40は、鋼製、木製、プラスチック製等のものからなる。
【0037】
補強部材38、40は、板状体28の各表面28c、28dの上部及び下部において板状体28の長手方向へ互いに間隔をおいて配置された複数の接合金物30(A)を介して、板状体28に固定されている。より詳細には、上方の各接合金物30(A)は上方の補強部材38上を湾曲してこれを横断するように折り曲げられ、その爪30bが板状体28の各表面28c、28dに突き刺され、これにより、各補強部材38が板状体28の上部に固定されている。
【0038】
また、下方の各接合金物30(A)は全体にL形に折り曲げられ、その一片において爪30b(図6)が木製の板12の表面の一部12aに突き刺されている。また、その他片が下方の補強部材40上を湾曲してこれを横断するように折り曲げられ、その爪30b(図6)が板状体28の各表面28c、28dに突き刺されている。これにより、板状体28がその下部において木製の板12に固定され、また、各補強部材40が板状体28の下部に固定されている。板状体28への補強部材38、40の固定も、また、図示の接合金物30(A)に代えて、前記U字釘、鉤形の釘、かすがい等(図示せず)を用いて行うことができる。
【0039】
板状体28は、これを木板や合板からなるものとする前記した例に代えて、例えば、接合金物30(A)を用いて、直径を同じくする円柱状の2つの木材42を一直線上に束ねてなるもの(図9)、直径を同じくする円柱状の2つの木材42と、両木材42間に配置された、木材42の直径と同じ大きさの厚さを有する扁平な直方体形状の木材44とを一直線上に束ねてなるもの(図10)等とすることができる。ここにおいて、接合金物30(A)の多数の爪30b(図6)が2つの木材42の表面に突き刺さり、また、2つの木材42及びこれらの間の木材44の表面に突き刺さっている。図9及び図10に示す板状体28の使用に当たっては、例えば前記したアングル鋼板や、帯状の鋼板(図示せず)と釘(図示せず)とを用いて、板状体28を木製の板12や段取り筋32に固定し、また、補強部材38、40を板状体28に固定することができる。
【0040】
前記したところでは、複数のデッキプレート14が互いに間隔をおいて配置された型枠10の例について説明した。この例に代えて、他の例として、複数のデッキプレート14を互いに間隔をおくことなく互いに接するように配置してなるもの又は1のデッキプレート14からなるものであって、比較的大きい表面積を有し木製の板12の表面を覆うものとすることができる。この他の例においては、ボイド形成用ブロック26又は板状体28の設置空間は、鉄筋付きトラス16の列の配置数量を低減することにより形成することができる。また、ボイド形成用ブロック26及び板状体28は、それぞれ、木製の板12の表面の一部12a上にではなく、デッキプレート14上に設置することができる。
【0041】
なお、型枠10は、その底部の内表面上に鉄筋付きトラス16の一部(上部)を残して打設され固化したコンクリート板(ハーフプレキャストコンクリート板(ハーフPC板))を備えるものとすることができる。
【0042】
また、鉄筋付きトラス16は、図示の例に代えて、例えば図11に示すものとすることができる。
【0043】
図11に示す鉄筋付きトラス16は、2組の一方向へ連続する複数のラチス筋16aと、上弦筋16bと、2つの下弦筋16cとからなる。2組の連続する複数のラチス筋16aは互いに他の一方に向けて傾斜するように配置されている。上弦筋16bは2組の複数のラチス筋16aの頂部間に配置され複数のラチス筋16aが連続する前記一方向へ伸び、2組の複数のラチス筋16aの頂部に溶接されている。また、上弦筋16bと平行に伸びる2つの下弦筋16cは、それぞれ、各組の複数のラチス筋16aにその下部において溶接されている。なお、上弦筋16bについては、その太さを比較的大きいものに設定し、及び/又は、その配置数量を1つとする図示の例に代えて並列配置の2つ以上とすることができる。これによれば、鉄筋付きトラス16によるコンクリートスラブの補強効果を高め、また、コンクリートスラブの曲げ剛性や曲げ耐力を高めることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 型枠
12 木製の板
14 デッキプレート
16 鉄筋付きトラス
18 梁
22、24 上端筋及び下端筋(主筋)
26 ボイド形成用ブロック
28 板状体
32 段取り筋
38、40 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11