(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】オイル劣化センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20240123BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G01N21/59 C
G01N27/04 Z
(21)【出願番号】P 2020151112
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲積 洸人
(72)【発明者】
【氏名】寺島 淳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 流聖
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-035245(JP,A)
【文献】特開平06-281575(JP,A)
【文献】特開2008-139186(JP,A)
【文献】特開2004-293776(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054343(WO,A1)
【文献】特表2013-541710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルの劣化を検出するオイル劣化センサであって、
光を発光する発光部と、
前記発光部で発光された発光光を受光する受光部と、
前記発光光を前記受光部へと導く光路を形成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を支持する支持体と、
前記オイルの抵抗を測定する電極部を有する基板と、
を備え、
前記光路には、前記可撓性部材を分断し、前記オイルの侵入を可能とする間隙部が設けられ
、
前記支持体は、内部に空洞部を有し、
前記支持体の外面には、前記空洞部と繋がる開口が形成され、
前記基板は、前記空洞部内に配置され、
前記可撓性部材が前記基板の外周を囲むように配置される、
オイル劣化センサ。
【請求項2】
前記可撓性部材は、光の進行方向を変える曲げ部を有する、請求項1に記載のオイル劣化センサ。
【請求項3】
前記曲げ部は、前記発光部から当該曲げ部までの区間を構成する第1光路と、当該曲げ部から前記受光部までの区間を構成する第2光路とを、互いに対向させる、請求項2に記載のオイル劣化センサ。
【請求項4】
前記支持体には、前記可撓性部材が延びる方向に延び、前記可撓性部材が配置される溝部或いは孔部が設けられている、請求項
1から3のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項5】
前記支持体は、前記可撓性部材を通す挿通孔を有し、
前記可撓性部材は、前記挿通孔に通されて、一部が前記支持体の外部に配置され、他の一部が前記空洞部に配置される、請求項
1から4のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項6】
前記可撓性部材は、前記支持体の内面に配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項7】
前記基板は、前記可撓性部材を固定する固定部を有する、請求項
1から6のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項8】
前記電極部は、櫛歯状の電極を有する、請求項
1から7のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項9】
前記基板は、温度センサを更に有する、請求項
1から
8のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項10】
前記受光部から出力される第1信号に基づいて前記オイルの劣化状態を判定する判定部を更に備える、請求項1から9のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【請求項11】
前記受光部から出力される第1信号と、前記基板から出力される第2信号との少なくともいずれか一方に基づいて前記オイルの劣化状態を判定する判定部を更に備える、請求項
1から
9のいずれか1項に記載のオイル劣化センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル劣化センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルの劣化を検出するオイル劣化センサが知られる。例えば特許文献1に、機械に設置されて機械の潤滑油の劣化を検出する潤滑油劣化センサが開示される。当該潤滑油劣化センサは、白色の光を発する白色LEDと、受けた光の色を検出するRGBセンサと、潤滑油が侵入するための隙間である油用隙間が形成された隙間形成部材と、白色LED、RGBセンサおよび隙間形成部材を支持する支持部材とを備える。隙間形成部材は、白色LEDによって発せられる光を透過させ、油用隙間は、白色LEDからRGBセンサまでの光路上に配置されている。隙間形成部材は、2つの直角プリズムによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように隙間形成部材としてプリズムを用いる構成では、支持部材で隙間形成部材を支持するに際して、プリズムを保持するホルダが更に必要となる。すなわち、従来においては、オイル劣化センサを構成する部品の点数が多くなり、オイル劣化センサの構造が複雑となり易い傾向があった。
【0005】
本発明は、部品点数の増加を抑制することができるオイル劣化センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なオイル劣化センサは、オイルの劣化を検出するオイル劣化センサであって、光を発光する発光部と、前記発光部で発光された発光光を受光する受光部と、前記発光光を前記受光部へと導く光路を形成する可撓性部材と、を備える。前記光路には、前記可撓性部材を分断し、前記オイルの侵入を可能とする間隙部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明のオイル劣化センサによれば、部品点数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るオイル劣化センサの概略斜視図
【
図3】オイル劣化センサの電気的な構成を示すブロック図
【
図4A】オイル劣化センサが備えるセンサ本体の構成を示す概略断面図
【
図6A】周面開口の配置について説明するための模式図
【
図8】オイルの劣化と透過光量との関係について説明するための図
【
図9】オイルの劣化と抵抗値との関係について説明するための図
【
図10】第1変形例のセンサ本体の構成を示す概略断面図
【
図11】第2変形例のセンサ本体の構成を示す概略断面図
【
図12】第3変形例のセンサ本体の構成を示す概略断面図
【
図14】第4変形例のセンサ本体の構成を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、矢印の先端となる側はプラス側である。例えば、
図4Aにおいて、左から右に向かう方向が+X方向であり、下から上に向かう方向が+Z方向である。なお、
図4Aにおいて、+Y方向は、紙面奥側から紙面手前側に向かう方向である。これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0010】
<1.オイル劣化センサの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るオイル劣化センサ100の概略斜視図である。
図2は、オイル劣化センサ100の使用例を示す模式図である。オイル劣化センサ100は、オイルの劣化を検出する装置である。
図2に示すように、オイル劣化センサ100は、例えば作動油タンク200に取り付けられ、作動油タンク200内のオイル201の劣化を検出する。
【0011】
図1および
図2に示すように、オイル劣化センサ100は、センサ本体1と、ケーブル2とを備える。センサ本体1は、センサ部11と、螺子部12と、把持部13と、ワッシャ部14と、カバー部15とを有する。
【0012】
センサ部11は、オイルの劣化を検出するためにオイルの中に入れられる部分である。本実施形態では、センサ部11は細長く延びる棒状である。
図2に示す例においては、センサ部11は、作動油タンク200の内部に入れられ、作動油タンク200内に貯められたオイル201に浸けられる。
【0013】
螺子部12は、センサ本体1を取付対象に固定する役割を担う。螺子部12は、棒状のセンサ部11の一端部寄りに設けられる。
図2に示す例では、取付対象が作動油タンク200である。作動油タンク200の壁面には、螺子孔200aが設けられている。作動油タンク200の外側からセンサ部11を螺子孔200aに通し、螺子孔200aに螺子部12を螺合させることにより、センサ本体1が作動油タンク200に固定される。なお、オイル劣化センサ100は、作動油タンク200に限られず、オイルが貯められる機械部品に広く取付可能であってよい。なお、螺子以外の固定手段が利用される場合には、螺子部12は設けられなくてよい。
【0014】
把持部13は、センサ本体1を取付対象に取り付ける際に工具で掴む部分である。本実施形態では、把持部13は、棒状のセンサ部11の一端部側に設けられる。把持部13は、平面視において六角形状である。ただし、把持部13は、八角形状等の他の形状であってよい。
図2に示す例では、スパナ等の工具で把持部13を掴んでセンサ本体1を回転させることにより、螺子部12を螺子孔200aに容易に螺合させることができる。
【0015】
ワッシャ部14は、環状であり、螺子部12と把持部13との間に配置される。ワッシャ部14は、センサ本体1が取付対象に取り付けられた際にオイル漏れを防ぐシール機能を有することが好ましい。ワッシャ部14は、把持部13と別部材であってもよいが、把持部13と同一部材であってもよい。また、ワッシャ部14は、座金部材と、シール部材(例えば、シールワッシャ)とを別体として構成してもよい。
【0016】
カバー部15は、内部に配置される電子部品等を覆い、保護する役割を担う。本実施形態において、カバー部15は、把持部13とは別部材であり、把持部13に装着される。
【0017】
ケーブル2は、センサ本体1への電力の供給と、センサ本体1で検出した信号(電気信号)の出力とを行うための複数の電線を含む。ケーブル2の一端には、センサ本体1との接続を可能とする接続端子2aが設けられる。ケーブル2は、センサ本体1と電気的に接続される。ケーブル2の他端は、例えば、後述の判定部と接続される。
【0018】
図3は、オイル劣化センサ100の電気的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、オイル劣化センサ100は、発光部20と受光部30とを備える。オイル劣化センサ100は、制御部3と抵抗測定部40とを更に備える。
【0019】
制御部3は、オイル劣化センサ100の全体を制御するコントローラである。制御部3は、ケーブル2を介してセンサ本体1と電気的に接続される。なお、本実施形態では、センサ本体1と制御部3とを別体としてケーブル2で接続する構成としているが、センサ本体1と制御部3とは一体的に設けられてもよい。制御部3は、例えば、カバー部15内に収容されてよい。制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)等を含むコンピュータにより構成される。
【0020】
発光部20は、光を発光する。発光部20は、制御部3からの指令にしたがってオンオフされる。発光部20は、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光素子により構成される。本実施形態では、発光部20は白色LEDにより構成される。ただし、発光部20で発光される光は白色に限定されない。発光部20で発光される光の色や波長は、オイルの劣化の判定ができることを条件として適宜変更されてよい。
【0021】
受光部30は、発光部20で発光された発光光を受光する。受光部30は、発光光を受光することにより光検出信号を制御部3に出力する。受光部30から出力される光検出信号の出力レベルは、受光部30で受光された光の光量に応じて異なる。受光部30は、例えばフォトダイオード等の受光素子で構成される。
【0022】
抵抗測定部40は、オイルの電気抵抗を測定する。抵抗測定部40は、電気抵抗の測定結果(電気信号)を制御部3に出力する。抵抗測定部40の詳細な構成については後述する。なお、抵抗測定部40は、本発明に必須の構成ではなく、設けられない構成としてもよい。
【0023】
制御部3は、受光部30および抵抗測定部40から信号を受け取り、当該信号に応じてオイルの劣化状態を判定する。判定処理は、例えば、制御部3を構成するCPUがROMに格納されるプログラムにしたがって演算処理を実行することにより実現される。換言すると、オイル劣化センサ100は、オイルの劣化状態を判定する判定部3を備える。判定部3により、オイルが劣化していると判定された場合に、オイルの劣化が検出される。
【0024】
<2.センサ本体の詳細>
図4Aは、オイル劣化センサ100が備えるセンサ本体1の構成を示す概略断面図である。
図4Bは、
図4Aに示すセンサ本体1に形成される光路OPを示す図である。
図4Aおよび
図4Bに示すように、センサ本体1には、上述の発光部20および受光部30が含まれる。また、センサ本体1には、発光部20で発光された発光光を受光部30へと導く光路OPを形成する可撓性部材50が含まれる。すなわち、オイル劣化センサ100は、発光光を受光部30へと導く光路OPを形成する可撓性部材50を備える。
【0025】
詳細には、可撓性部材50は光ファイバである。光ファイバは、例えば石英ガラスやプラスチックで形成される細い繊維状の物質であり、中心部を構成するコアと、その周囲を覆うクラッドとを有する公知の構成を備える。発光部20で発光された発光光は、光ファイバのコアを通って受光部30に至る。
【0026】
詳細には、発光光を受光部30へと導く光路OPには、可撓性部材50を分断し、オイルの侵入を可能とする間隙部51が設けられている。このように構成することにより、発光光が間隙部51に侵入したオイルを通過して受光部30へと至る構成とすることができ、光を利用したオイルの劣化検出が可能となる。本構成では、発光光を受光部30へと導く光路OPの形成に可撓性部材50が利用されるために、光路OPのレイアウトの自由度を高めることができる。この結果、本構成では、光路OPの形成に必要となる部品を極力減らすことができる。すなわち、本構成によれば、部品点数の増加を抑制することができ、経済性に優れるオイル劣化センサを提供することができる。
【0027】
なお、可撓性部材50を分断する間隙部51は、上述のセンサ部11に設けられる。本実施形態では、間隙部51の数は2つである。ただし、間隙部51の数は、少なくとも1つあればよい。間隙部51の数を複数とすることにより、オイルの劣化を精度良く検出することができる。本実施形態のように可撓性部材50を用いて光路OPを形成する構成では、間隙部51の位置や数を必要に応じて簡単に変更することができる。また、本実施形態の構成では、センサ本体1のサイズを大きくすることを避けつつ、間隙部51の数を増やすことができる。
【0028】
また、本実施形態では、一本の光ファイバ(可撓性部材50)を途中で分断して、間隙部51を含む光路OPを形成している。これに限らず、発光光を受光部30へと導く光路は、それぞれ途中に分断された部分を含む複数本の光ファイバ(光ファイバの束)で構成されてもよい。このように構成することにより、受光部30に導く光の強度を高めることができ、オイル劣化の検出精度を向上することができる。なお、複数本の光ファイバで光路を形成する場合には、光ファイバの数に応じて発光部20および受光部30のうちの少なくともいずれか一方の数も複数とする構成としてよい。
【0029】
可撓性部材50は、光の進行方向を変える曲げ部52を有する。曲げ部52を利用することにより、例えば、発光部20、受光部30、および、間隙部51の位置を適切な位置に配置し易くすることができる。本実施形態では、可撓性部材50は、二種類の曲げ部52a、52bを有する。
【0030】
二種類の曲げ部52a、52bのうちの一方の曲げ部(第1曲げ部)52aは、発光部20から当該曲げ部52aまでの区間を構成する第1光路OP1と、当該曲げ部52aから受光部30までの区間を構成する第2光路OP2とを、互いに対向させる。別の言い方をすると、第1曲げ部52aは、第1光路OP1と第2光路OP2とで光の進行方向を互いに反対とする。このような曲げ部52aが設けられることにより、発光部20と受光部30とを近くに配置することができる。この結果、オイル劣化センサ100を小型化することができる。二種類の曲げ部52a、52bのうちの他方の曲げ部(第2曲げ部)52bの詳細については後述する。
【0031】
本実施形態では、発光部20と受光部30とは、同一の素子基板60に搭載される。素子基板60は、平板状であり、発光部20と受光部30とが搭載される面は、X方向に直交する。発光部20と受光部30とは、並んで配置される。詳細には、発光部20と受光部30とは、Z方向に並んで配置される。ただし、発光部20と受光部30とは、異なる基板に配置されてもよい。また、発光部20と受光部30とは、ずれた位置に配置されてよい。例えば、発光部20と受光部30とは、X方向やY方向にずれた位置に配置されてもよい。
【0032】
センサ本体1は、可撓性部材50を支持する支持体10を備える。換言すると、オイル劣化センサ100は、可撓性部材50を支持する支持体10を備える。支持体10が設けられることにより、可撓性部材50の位置を安定させることができる。支持体10は、例えば真鍮やステンレス等の金属で構成される。支持体10には、上述した螺子部12、把持部13、および、ワッシャ部14が設けられる。支持体10の一部は、上述したセンサ部11を構成する構成要素である。
【0033】
本実施形態では、支持体10は、内部に空洞部101を有する。すなわち、支持体10は中空状である。このように構成することにより、支持体10の内部に発光部20および受光部30の少なくとも一部を収容して、これらの保護を行い易い構成にできる。また、このように構成することにより、間隙部51に侵入するオイルの入れ替えを行い易くすることができ、オイルの劣化検出の精度を向上することができる。また、このように構成することにより、抵抗測定部40の構成要素を支持体10の内部に配置することができ、抵抗測定部40を備えるオイル劣化センサ100を小型に構成することができる。
【0034】
詳細には、支持体10は、X方向に延びる筒状である。支持体10は、ワッシャ部14の+X側が円筒状の円筒部10aであり、ワッシャ部14の-X側が六角筒状の把持部13である。発光部20および受光部30は、把持部13内に充填される樹脂部70に覆われ、樹脂部70とともに支持体10に支持される。樹脂部70は、支持体10の-X側の端部からオイルが漏れることを防止するシール部材としての機能も有する。また、本実施形態では、樹脂部70は、例えば、発光部20および受光部30を内部に密封および固定可能な程度の密封性、弾力性、伸縮性を有するゴム組成物、樹脂、化合物により構成され、可撓性部材50の-X側に配置される端部と、発光部20および受光部30との位置関係を一定に維持する機能も有する。すなわち、樹脂部70は、厳密な意味での樹脂で構成されている必要はなく、例えばゴム素材等で構成されてもよい。
【0035】
なお、支持体10の-X側の端部には、上述のカバー部15が装着される。発光部20および受光部30を搭載する素子基板60は、カバー部15により覆われる。カバー部15は、例えば樹脂で構成される。
【0036】
円筒部10aの-X方向側の端部の外周面には、螺子部12が形成される。また、円筒部10aには、可撓性部材50を通す挿通孔102が設けられる。すなわち、支持体10は、可撓性部材50を通す挿通孔102を有する。挿通孔102は、円筒部10aをZ方向に貫通し、空洞部101と支持体10の外部とを連通する。本実施形態においては、挿通孔102の数は複数である。詳細には、挿通孔102は、第1挿通孔102aと、第2挿通孔102bと、第3挿通孔102cと、第4挿通孔102dとを含む。
【0037】
第1挿通孔102aおよび第2挿通孔102bは、螺子部12の+X側の近傍に配置される。第1挿通孔102aと第2挿通孔102bとは、Z方向に対向する。第3挿通孔102cおよび第4挿通孔102dは、円筒部10aの+X側の端部の近傍に配置される。第3挿通孔102cと第4挿通孔102dとは、Z方向に対向する。
【0038】
可撓性部材50は、挿通孔102に通されて、一部が支持体10の外部に配置され、他の一部が空洞部101に配置される。このように構成することにより、可撓性部材50の保護を強化しつつ、可撓性部材50を支持体10に取り付ける作業の作業効率を良くすることができる。詳細には、可撓性部材50は、挿通孔102に通されて、支持体10の内部と外部とに交互に配置される。
【0039】
可撓性部材50は、発光部20から支持体10の+X側の端部に至るまでの部分について、次のような構成となっている。可撓性部材50は、発光部20から第1挿通孔102aまで、支持体10の内面に沿って+X方向に延びる。可撓性部材50は、第1挿通孔102a付近の一定の範囲において第2曲げ部52bを有する。可撓性部材50は、この第2曲げ部52bを利用して第1挿通孔102aに通される。可撓性部材50は、第1挿通孔102aから第3挿通孔102c手前まで、円筒部10aの外周面に沿って+X方向に延びる。なお、詳細には、この区間に、可撓性部材50が分断される間隙部51が含まれる。可撓性部材50は、上述した第1曲げ部52aを利用して、第3挿通孔102cに通され、その一部が空洞部101内に配置される。
【0040】
また、可撓性部材50は支持体10の+X側の端部から-X側に存在する受光部30に至るまでの部分について、次のような構成となっている。可撓性部材50は、+X側の端部において、第1曲げ部52aを利用して、第4挿通孔102dに通される。可撓性部材50は、第4挿通孔102dから第2挿通孔102bの手前まで、円筒部10aの外周面に沿って-X方向に延びる。なお、詳細には、この区間に、可撓性部材50が分断される間隙部51が含まれる。可撓性部材50は、第2挿通孔102b付近の一定の範囲において第2曲げ部52bを有する。可撓性部材50は、この第2曲げ部52bを利用して第2挿通孔102bに通される。可撓性部材50は、第2挿通孔102bから受光部30まで、支持体10の内面に沿って-X方向に延びる。
【0041】
本実施形態では、好ましい構成として、支持体10外面および内面には、可撓性部材50の位置を固定する固定部材80が配置されている。固定部材80が設けられることにより、間隙部51を形成するために分断された可撓性部材50同士が、位置ずれを起こすことを抑制することができる。固定部材80は、例えば、可撓性部材50を嵌め込む凹部や孔を有する。固定部材80は、支持体10と別部材でも同一部材でもよい。
【0042】
図5Aは、
図4AのP-P位置における概略断面図。
図5Aに示すように、支持体10には、可撓性部材50が延びる方向に延び、可撓性部材50が配置される溝部103が設けられている。このように構成することにより、可撓性部材50を支持体10に取り付ける際に、可撓性部材50の取り付け位置が分かりやすくなり、作業性を向上することができる。また、このように構成することにより、可撓性部材50の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0043】
詳細には、溝部103は、円筒部10aの外周面に設けられる。溝部103は、円筒部10aのZ方向の両端部に設けられる。+Z側の溝部103は、円筒部10aの外周面に対して-Z側に凹む凹部である。-Z側の溝部103は、円筒部10aの外周面に対して+Z側に凹む凹部である。いずれの溝部103もX方向に延びる。
【0044】
図5Bは、溝部103に替わる他の形態を示す図である。
図5Bに示すように、溝部103に替えて孔部104とされてもよい。すなわち、支持体10には、可撓性部材50が延びる方向に延び、可撓性部材50が配置される孔部104が設けられてよい。
図5Bに示す例では、孔部104は、円筒部10aのZ方向の両端部に設けられる。孔部104は、円筒部10aをZ方向に貫通する。孔部104は、X方向に延びる。
【0045】
支持体10の外面には、空洞部101と繋がる開口105が設けられている。このように構成することにより、支持体10の空洞部101にオイルを入れることができる。特に開口105が複数設けられることにより、空洞部101におけるオイルの流れを良くして、空洞部101に入ったオイルが同じ箇所に滞留することを抑制できる。
【0046】
本実施形態では、開口105は、端面開口105aと、周面開口105bとを含む。端面開口105aは、支持体10の+X側の端面に設けられる開口である。端面開口105aは、支持体10を軸方向(本例ではX方向)に貫通し、空洞部101と繋がる。周面開口105bは、円筒部10aの外周面に設けられる開口である。周面開口105bは、円筒部10aを径方向(本例ではY方向)に貫通する。
【0047】
本実施形態では、端面開口105aと周面開口105bとは、いずれも円形状であるが、これらの形状は適宜変更されてよい。例えば、端面開口105aと周面開口105bとは、楕円形状、矩形状、多角形状等、円形状以外であってよい。また、端面開口105aと周面開口105bとは、同じ形状である必要はなく、互いに異なる形状であってよい。また、端面開口105aと周面開口105bとの大きさは、適宜決められてよい。これらの大きさは、オイルが円滑に流れる範囲で小さくすることができ、支持体10の強度を損なわない範囲で大きくすることもできる。
【0048】
図6Aは、周面開口105bの配置について説明するための模式図である。本実施形態では、周面開口105bは、円筒部10aの+Y側と-Y側との両側に設けられている。周面開口105bは、+Y側と-Y側とにそれぞれ5つずつ設けられている。+Y側の周面開口105bと、-Y側の周面開口105bとは、円筒部10aの中心を通る中心線CLに対して対称配置されている。
【0049】
ただし、
図6Aに示す周面開口105bの数および配置は、例示に過ぎない。周面開口105bの数および配置は適宜変更されてよい。例えば、楕円形状の大きな周面開口105bが1つのみ設けられる構成であってもよい。
図6Bおよび
図6Cは、周面開口105bの異なる形態を示す模式図である。例えば、
図6Bに示すように、周面開口105bは、円筒部10aの+Y側と-Y側とのうちの一方側に設けられてよい。なお、
図6Bでは、周面開口105bが-Y側に配置される場合を示す。また、例えば
図6Cに示すように、周面開口105bが円筒部10aの+Y側と-Y側との両側に設けられる場合であっても、+Y側の周面開口105bと、-Y側の周面開口105bとは、非対称に配置されてよい。
【0050】
本実施形態では、好ましい形態として、
図4Aに示すように、円筒部10aには、間隙部51と繋がる貫通孔106が設けられる。貫通孔106は、円筒部10aをZ方向に貫通する。貫通孔106が設けられることにより、間隙部51に侵入したオイルの滞留を抑制することができる。すなわち、間隙部51に侵入するオイルを循環させることができる。これにより、オイルの劣化について、オイルの全体の状態を反映した適切な評価を行うことができる。
【0051】
図4Aに示すように、オイル劣化センサ100は、オイルの抵抗を測定する電極部を有する基板41を備える。基板41は、空洞部101に配置される。基板41は、上述の抵抗測定部40を構成する。本構成によれば、光を利用したオイルの劣化検出の他に、オイルの抵抗を利用したオイルの劣化検出を行うことができる。そして、本構成では、基板41が支持体10の内部に配置される構成であるために、オイルの劣化を多様な方法により検出できる装置を小型に形成することができる。
【0052】
本実施形態では、基板41は、可撓性部材50を固定する固定部42を有する。このように構成することで、可撓性部材50の固定をより強固にすることができる。詳細には、基板41は、+X側の端部に固定部42を有する。固定部42は、可撓性部材50の第1曲げ部52aを動かないように固定する。固定部42は、例えば樹脂性材料や接着剤を利用して接着を行う接着部である。固定部42は、可撓性部材50を通す貫通孔や、可撓性部材50の一部を入れる切欠き等であってもよい。
【0053】
図7は、空洞部101に配置される基板41の概略平面図である。
図7は、+Z側から見た図である。
図7に示すように、基板41は、Z方向からの平面視において矩形状である。ただし、基板41の形状は、楕円形状等、矩形状以外であってよい。基板41は、フッ素樹脂を絶縁層としたフッ素樹脂基板であることが好ましい。基板41をフッ素樹脂基板とすることにより、基板41のオイルに対する耐性を高めることができる。
【0054】
基板41の+Z側の面には、オイルの抵抗を測定する電極部43が設けられる。なお、電極部43は、基板41の-Z側の面に設けられてもよい。電極部43は、例えば銅又はアルミニウム等を用いて構成される。電極部43は、詳細には、第1電極431と第2電極432とを有する。第1電極431と第2電極432とを一組として抵抗値の測定が行われる。
【0055】
第1電極431と第2電極432とは、櫛歯状である。すなわち、電極部43は、櫛歯状の電極431、432を有する。電極431、432を櫛歯状とすることにより、抵抗を測定する電極の表面積を大きくすることができ、抵抗が大きいオイルの抵抗を適切に測定することが可能になる。
【0056】
詳細には、第1電極431は、第1主電極431aと、複数の第1枝電極431bとを有する。第1主電極431aは、X方向に延びる。各第1枝電極431bは、第1主電極431aから+Y方向に延びる。複数の第1枝電極431bは、X方向に等間隔で並ぶ。第2電極432は、第2主電極432aと、複数の第2枝電極432bとを有する。第2主電極432aは、第1主電極431aから+Y方向に離れた位置に配置され、X方向に延びる。各第2枝電極432bは、第2主電極432aから-Y方向に延びる。複数の第2枝電極432bは、X方向に等間隔で並ぶ。第1枝電極431bと第2枝電極432bとは、X方向に同じ間隔をあけて交互に並ぶ。
【0057】
なお、基板41に設けられる電極部43は、抵抗が大きなオイルの抵抗値を測定できればよく、本実施形態の構成と異なる構成であってもよい。例えば、オイルの抵抗を測定する電極部は、渦巻き状の2つの電極により構成されてもよい。
【0058】
図7に示すように、本実施形態では、基板41は、温度センサ44を更に有する。オイルの劣化状態を判定するために用いられるオイルの特性には、温度依存性を有するものがある。このため、基板41に温度センサ44を設けることによって、オイルの劣化検出をより適切に行うことができる。温度センサ44は、例えばサーミスタであってよい。
【0059】
<3.オイルの劣化判定>
次に判定部3によるオイルの劣化判定について説明する。オイルの劣化は、酸化やコンタミネーションもしくは水分含有量の増加(水分の混入)により生じる。コンタミネーションには、例えばゴミが含まれる。オイルが劣化すると、明るさや色味等の光学特性が変化する。また、オイルが劣化すると、電気抵抗や誘電率等の電気特性が変化する。
【0060】
図8は、オイルの劣化と透過光量との関係について説明するための図である。
図8に示すグラフの横軸は温度で、縦軸は透過光量である。実線は、劣化していないオイルのデータを示す。破線は、劣化したオイルのデータを示す。
図8に示すように、オイルが劣化すると透過光量が低下する。また、オイルの透過光量は温度依存性を有する。
【0061】
本実施形態のオイル劣化センサ100では、発光部20および受光部30を利用することにより、オイルの透過光量を測定することができる。判定部3は、受光部30から出力される第1信号により、透過光量情報を取得することができる。判定部3は、取得した透過光量情報に基づいてオイルの劣化判定を行うことができる。例えば、取得した透過光量の値が所定の閾値以下となった場合にオイルの劣化を検出する構成とすることができる。なお、判定部3は、基板41に設けられる温度センサ44からオイルの温度を取得することができる。このために、判定部3は、透過光量情報に加えて温度情報も加味してオイルの劣化判定を行うことができる。
【0062】
図9は、オイルの劣化と抵抗値との関係について説明するための図である。
図9に示すグラフの横軸は水分量で、縦軸は抵抗値である。
図9に示すように、オイルの抵抗値は、オイルに含まれる水分の量が増えると急激に下がる。
【0063】
本実施形態のオイル劣化センサ100では、電極部43を利用することにより、オイルの抵抗値を測定することができる。判定部3は、基板41から出力される第2信号により、抵抗値情報を取得することができる。判定部3は、取得した抵抗値情報に基づいてオイルの劣化判定を行うことができる。例えば、取得した抵抗値が所定の閾値以下となった場合にオイルの劣化を検出する構成とすることができる。
【0064】
以上説明した通り、判定部3は、受光部30から出力される第1信号と、基板41から出力される第2信号との少なくとも一方に基づいてオイルの劣化状態を判定する。このような構成では、第1信号と第2信号とのうち、いずれか一方だけからオイルが劣化していると判定された場合に、オイルの劣化を検出することができる。また、このような構成では、第1信号と第2信号とのうち両方においてオイルが劣化していると判定される場合にのみ、オイルが劣化しているとの判定を行うことも可能である。このような構成では、オイル劣化センサ100の利用手法の幅が広がる。
【0065】
なお、オイルの抵抗値を測定する電極部43は設けられなくてもよい。このような場合には、判定部3は、受光部30から出力される第1信号に基づいてオイルの劣化状態を判定する構成であってよい。この場合でも、オイルの色味が変化した場合等に、オイルの劣化を検出することができる。
【0066】
<4.変形例>
以下、以上に説明した本実施形態のオイル劣化センサ100の変形例について説明する。
【0067】
(4-1.第1変形例)
図10は、第1変形例のセンサ本体1Aの構成を示す概略断面図である。第1変形例のセンサ本体1Aにおいては、上述の実施形態(
図4A参照)の構成と比較して、可撓性部材50の第1曲げ部52aの位置が-X側にずらされている。すなわち、第1曲げ部52aの位置が円筒部10aの中央側に寄っている。なお、上述の実施形態に比べて、第3挿通孔102cおよび第4挿通孔102dのX方向の位置もずれている。また、基板41には、可撓性部材50を通す基板孔41aが設けられている。基板孔41aは、Z方向に基板41を貫通する。
【0068】
このように構成すると、上述した実施形態の場合と比べて、光路を構成する可撓性部材50の長さを短くすることができる。この結果、オイル劣化センサ100の製造コストを抑制することができる。また、光路が短縮されるために、光路中に不測のノイズが生じる可能性を低減するとともに、発光光の強度の低下を抑制することができる。
【0069】
(4-2.第2変形例)
図11は、第2変形例のセンサ本体1Bの構成を示す概略断面図である。第2変形例のセンサ本体1Bにおいては、可撓性部材50は、円筒部10aの内部に配置されることなく、円筒部10aの外周面に沿って配置される。このよう構成とした場合、円筒部10aに挿通孔102を設ける必要がなく、可撓性部材50を挿通孔102に通す必要がない。このために、オイル劣化センサ100の組み立て作業時の負担を低減することができる。
【0070】
なお、本変形例では、上述の実施形態の構成に比べて、発光部20と受光部30とのZ方向の間隔が大きくなる。また、本変形例において、センサ本体1が基板4を有しない構成とする場合、円筒部10aを円柱部に変更してもよい。
【0071】
(4-3.第3変形例)
図12は、第3変形例のセンサ本体1Cの構成を示す概略断面図である。第3変形例においては、可撓性部材50は、支持体10の内面に配置される。可撓性部材50の、支持体10の内面に配置される部分は、支持体10の外部に存在する物と接触し難くなる。このために、可撓性部材50を内面に配置することにより可撓性部材50が破損する可能性を低減できる。
【0072】
詳細には、可撓性部材50は、その全体が空洞部101に配置される。このために、第3変形例の構成では、可撓性部材50が破損する可能性をより低下させることができる。本変形例でも、第2変形例と同様、挿通孔102は不要となる。
【0073】
図13は、
図12のQ-Q位置における概略断面図である。
図13に示すように、円筒部10aの内面には、X方向に延びる溝部103Aが設けられる。溝部103Aが設けられることにより、可撓性部材50を支持体10の内面に配置しやすくすることができる。また、溝部103Aにより、可撓性部材50の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0074】
(4-4.第4変形例)
図14は、第4変形例のセンサ本体1Dの構成を示す概略断面図である。第4変形例のセンサ本体1Dにおいては、上述の実施形態(
図4A参照)の構成と比較して、支持体10が円筒部10aを有しない構成となっている。オイル劣化センサ100が基板41を有しない構成とする場合、このような構成とすることも可能である。このような構成とすることにより、支持体10の形成に必要な材料を減らすことができ、オイル劣化センサ100の低コスト化を図ることができる。
【0075】
<5.留意事項>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0076】
3・・・判定部
10・・・支持体
20・・・発光部
30・・・受光部
41・・・基板
42・・・固定部
43・・・電極部
44・・・温度センサ
50・・・可撓性部材
51・・・間隙部
52・・・曲げ部
100・・・オイル劣化センサ
101・・・空洞部
102・・・挿通孔
103、103A・・・溝部
104・・・孔部
105・・・開口
431・・・第1電極(櫛歯状の電極)
432・・・第2電極(櫛歯状の電極)
OP・・・光路
OP1・・・第1光路
OP2・・・第2光路