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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】面材オープナー及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 13/02 20060101AFI20240123BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E05F13/02
E05F7/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020172211
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063790
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 麻美
(72)【発明者】
【氏名】河合 政志
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-84404(JP,A)
【文献】特開2019-152026(JP,A)
【文献】実開昭63-28776(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110284794(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 13/02
E05F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具の面材オープナーであって、
前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、
前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、
一方の端部が前記押圧部材に接続され、かつ他方の端部に操作入力部を備え、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して移動することにより前記押圧部材を押圧するリンク機構と
を備えたことを特徴とする面材オープナー。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記縦枠に沿って上下に移動するリンクバーを備え、前記リンクバーが上方に移動した場合に前記押圧部材を押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の面材オープナー。
【請求項3】
前記リンクバーは、前記押圧部材から下方に向けて延在し、
前記操作入力部は、前記リンクバーの下端部に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の面材オープナー。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載の面材オープナーが設けられていることを特徴とする建具。
【請求項5】
前記縦枠の見込み面に前記押圧部材及び前記リンク機構が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材オープナー及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸等のように、枠体の横枠に沿って移動可能に配設された面材を備える建具には、面材オープナーを備えるものがある。引き戸等の建具には、面材の戸先側となる表面にハンドルが設けられているのが一般的であり、ハンドルを操作することで面材を開くことが可能となる。面材オープナーは、ハンドルに触れることなく面材を開くことができるように構成されたものである。この種の面材オープナーとしては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この面材オープナーでは、縦枠に押圧部材及びリンク機構が設けられており、操作入力部を介してリンク機構を動作させると、押圧部材が面材の戸先側となる端面を押圧することで面材を開くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-84404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の面材オープナーにおいて、面材と縦枠との間に隙間が生じないように面材を閉じるには、押圧部材及びこれを作動させるリンク機構の一部を縦枠の内部に収容させなければならない。このため、既存の建具に後付けで設置する場合には、煩雑な作業が必要とならざるを得ない。こうした問題を解決するには、面材オープナーが内蔵された新たな縦枠を既存の縦枠に追加することも考えられる。しかしながら、新たな縦枠が追加された建具にあっては、面材を開いた際の開口面積が減少するばかりでなく、新たな縦枠の寸法を上枠と下枠との間の寸法に合致させる作業が必要となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、建具の開口面積が減少する事態を招来することなく容易に設置することのできる面材オープナー及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る面材オープナーは、横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具の面材オープナーであって、前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、一方の端部が前記押圧部材に接続され、かつ他方の端部に操作入力部を備え、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して移動することにより前記押圧部材を押圧するリンク機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である面材オープナーを備えた建具を通路側から見た姿図である。
図2図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は面材が閉じ位置に配置された状態の横断面図、(b)は面材が開き位置に配置された状態の横断面図である。
図3図1に示した建具に適用する面材オープナーを縦枠に対する取付面側から見たもので、(a)は押圧部材が非作動位置に配置された状態の斜視図、(b)は押圧部材が作動位置に配置された状態の斜視図である。
図4図1に示した建具に適用する面材オープナーの押圧部材及びリンク機構を示す分解斜視図である。
図5図1に示した建具に適用する面材オープナーを戸尻側から見たもので、(a)は押圧部材が非作動位置に配置された状態の側面図、(b)は押圧部材が作動位置に配置された状態の側面図である。
図6図1に示した建具に適用される面材オープナーの押圧部材を示すもので、(a)は非作動位置に配置された状態の要部斜視図、(b)は作動位置に配置された状態の要部斜視図である。
図7図1に示した建具に適用する面材オープナーを通路側から見たもので、(a)は押圧部材が非作動位置に配置された状態の姿図、(b)は押圧部材が作動位置に配置された状態の姿図である。
図8図1に示した建具に適用する面材オープナーを通路側から見たもので、(a)は押圧部材が非作動位置に配置された状態の斜視図、(b)は押圧部材が作動位置に配置された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る面材オープナー及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いて説明を行う。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、後述する上枠や下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態である面材オープナーを備えた建具を示したものである。ここで例示する建具は、例えば、屋内において通路と部屋とを仕切る壁体の開口部に設けた片引き戸と称されるもので、枠体10及び扉体(面材)20を備えている。
【0011】
枠体10は、上枠(横枠)11、下枠(横枠)12及び左右の縦枠13,14によって長方形の枠状に構成し、さらに上枠11及び下枠12の相互間において部屋側となる部分に上下に沿って方立15を設けることにより構成したものである。より詳細に説明すると、図2に示すように、通路側から見て左方に位置する縦枠(以下、区別する場合に戸先枠13という)は、通路側から見て右方に位置する縦枠(以下、区別する場合に戸尻枠14という)及び方立15よりも、見込み方向に沿った寸法が大きく構成してある。図からも明らかなように、戸先枠13の見込み面13aは、戸尻枠14の見込み面14a及び方立15の見込み面15aに対向し、かつ戸尻枠14の見込み面14a及び方立15の見込み面15aに対してほぼ平行である。戸先枠13の通路側に位置する見付け面13bは、戸尻枠14の見付け面14b及び下枠12の見付け面12bとほぼ同一の平面上に位置している。戸先枠13の部屋側に位置する見付け面13cは、方立15の見付け面15c及び下枠12の見付け面12cとほぼ同一の平面上に位置している。戸先枠13と方立15との間には、扉体20によって開閉される開口部1が構成してある。戸尻枠14と方立15との間は、部屋側に延長した壁体によって閉塞してある。方立15と戸尻枠14との間の通路側に位置する部分は、開口部1を開いた際の扉体20が配置される戸袋となっている。戸先枠13の見込み面13a及び戸尻枠14の見込み面14aには、互いに対向する部分に凹部13d,14dが設けてある。凹部13d,14dは、見込み方向に沿った幅が扉体20の板厚よりも大きな寸法となるように構成したもので、戸先枠13及び戸尻枠14の長手に沿ってそれぞれの全長に設けてある。
【0012】
扉体20は、戸先枠13と方立15との間の開口部1を閉塞することのできる大きさに形成した平板状を成す部材である。図には明示していないが、この扉体20は、下端部に設けた戸車を介して下枠12に走行可能に支持してあり、戸先枠13の凹部13dと戸尻枠14の凹部14dとの対向する領域において下枠12の延在方向(図中の矢印B)に沿って移動することが可能である。扉体20の板厚は、戸尻枠14の見込み方向に沿った寸法よりもさらに小さく設定してある。図からも明らかなように、扉体20は、枠体10の見込み方向において方立15に近接する位置に配置してあり、通路側に位置する表面(以下、単に通路側表面20aという)が戸先枠13の通路側に位置する見付け面13bよりも部屋側に位置している。扉体20において通路側表面20a及び部屋側の表面(以下、単に部屋側表面20bという)には、それぞれ戸先側であって高さ方向のほぼ中央となる部分にハンドル21が取り付けてある。
【0013】
この建具には、面材オープナー30が設けてある。本実施の形態で記載する面材オープナー30は、通路側から部屋へ入る際にハンドル21に触れることなく扉体20を開くためのもので、図3図8に示すように、受部材31、リンクバー(リンク機構)32及び押圧アーム(押圧部材)33を備えている。
【0014】
受部材31は、扉体20の通路側表面20aにおいてハンドル21よりも下方となる部分に取り付けたもので、受本体部31a及びカバー部31bを有している。受本体部31aは、縦長の直方体状を成すもので、戸先枠13に近接する側方部分の受面31cが、見込み方向に沿ってほぼ鉛直となる状態で扉体20の戸先側となる部分に固定してある。図からも明らかなように、受本体部31aの受面31cは、扉体20の戸先側に位置する見込み面(以下、戸先面20cという)よりも戸尻側に位置している。受本体部31aの通路側への突出端面31dは、戸先枠13の通路側に位置する見付け面13bとほぼ同一の平面上に位置している。カバー部31bは、受本体部31aの突出端部から戸先枠13の見込み面13aに向けて突出した薄板状を成すもので、扉体20の通路側表面20aとの間に隙間を確保し、かつ扉体20の通路側表面20aに対してほぼ平行となるように延在している。カバー部31bの延在長さは、扉体20を閉じた場合にも、つまり扉体20の戸先面20cが戸先枠13の見込み面13aに当接した場合にも、延在縁部が戸先枠13の見込み面13aに当接することがないように設定してある。
【0015】
リンクバー32は、図3及び図4に示すように、長尺の平板状を成すもので、一方の端部にアーム接続部32aを有するとともに、他方の端部にペダル連係部32bを有している。アーム接続部32aは、リンクバー32の表面に平行、かつリンクバー32の延在方向に直交する枢軸34を介して後述する押圧アーム33に回転可能に接続するものである。ペダル連係部32bは、リンクバー32の表面及びリンクバー32の延在方向に対してそれぞれ直交するように延在した後述の連係軸35を介してペダル(操作入力部)36に連係するもので、リンクバー32の延在方向に対して直交する方向の長孔状に構成してある。またリンクバー32には、アーム接続部32aとペダル連係部32bとの間にスライドガイド孔32cが設けてある。スライドガイド孔32cは、リンクバー32の幅方向の中心となる部分にリンクバー32の長手に沿って延在するスリット状の孔であり、リンクバー32の長手に沿って2つ設けてある。
【0016】
このリンクバー32は、アーム接続部32aが上方となる状態で、レール部材37のネジ挿通孔37a及びスライドガイド孔32cを介して取付ネジSを戸先枠13に螺合することにより、戸先枠13の見込み面13aに取り付けてある。レール部材37は、リンクバー32よりも長さの短い長尺部材であり、ガイド板部37b及び2つの支持突条部37cを有している。ガイド板部37bは、リンクバー32の平板部分よりもわずかに幅の広い平板部材である。2つの支持突条部37cは、平板部の両側縁部からそれぞれ同一の方向に向けて突出したものである。支持突条部37cの突出寸法は、リンクバー32の平板部分の板厚よりもわずかに大きな寸法に設定してある。このレール部材37は、2つの支持突条部37cが戸先枠13の見込み面13aに当接した状態で戸先枠13に取り付けてあり、戸先枠13との間においてリンクバー32を上下方向に移動可能、かつ左右方向の移動を阻止した状態で支持している。
【0017】
図2(b)からも明らかなように、リンクバー32を取り付ける位置は、戸先枠13の見込み面13aにおいて凹部13dよりも通路側であり、受部材31のカバー部31bよりも部屋側である。すなわち、この建具では、戸先枠13の見込み面13aにおいて受部材31の受面31cに対向する見込み範囲内にリンクバー32が上下に沿って移動可能に配設してある。リンクバー32の延在長さ及びレール部材37の延在長さは、図3(a)に示すように、リンクバー32を最も下方となるように配置した場合に、ペダル連係部32bが床面にほぼ当接可能となり、図3(b)に示すように、リンクバー32を最も上方となるように配置した場合にも、アーム接続部32aが扉体20の受部材31よりも下方に位置するように設定してある。
【0018】
このリンクバー32には、図3及び図5に示すように、ペダル連係部32bにペダル36が連係してある。ペダル36は、長さ方向の中央部分に設けた支持軸38を介して支持台39に回転可能に支持させたシーソー式の足踏み型操作入力部材であり、一方の端部が下方に移動した場合に他方の端部が上方に移動するように動作する。ペダル36の一方の端部(以下、区別する場合に作用端部36aという)には、連係軸35が設けてある。連係軸35は、支持軸38と平行となるように延在したもので、端部がペダル36の側面から外部に突出している。このペダル36は、支持軸38が下枠12の長手に沿ってほぼ水平に延在し、かつ連係軸35の端部がリンクバー32のペダル連係部32bに連係した状態で支持台39を介して床面に取り付けてある。図中の符号39aは、支持台39の上部に設けたカバーである。このカバー39aは、ペダル36の作用端部36aを覆う一方、反対側の端部(以下、区別する場合に入力端部36bという)を外部に露出させた状態で支持台39に取り付けられるものである。
【0019】
上記のようにして連係軸35を介してリンクバー32に連係したペダル36は、リンクバー32の重量及び後述する押圧アーム33の重量が加えられることにより、連係軸35を設けた作用端部36aが下方に位置し、入力端部36bが上方に配置された状態となる。この状態から例えばペダル36の入力端部36bに足を掛けて下方に移動させると、リンクバー32及び押圧アーム33の重量に抗してペダル36の作用端部36aが上方に移動し、これに伴ってリンクバー32が上方に移動することになる。ペダル36の入力端部36bから足を外すと、リンクバー32及び押圧アーム33の重量によって再びペダル36の入力端部36bが上方に移動し、作用端部36aがリンクバー32とともに下方に移動することになる。
【0020】
押圧アーム33は、図6に示すように、互いの端部を連結軸40によって回転可能に連結した2つのアーム部材41を備えて構成したものである。アーム部材41は、それぞれ長尺の平板状を成す基板部41aの両側縁部に側板部41bを設けることによって構成したもので、2つの側板部41bにわたって連結軸40を配設することにより、互いに連結された状態となっている。2つのアーム部材41の連結部分には、押圧ローラ(押圧部材)42が配設してある。押圧ローラ42は、連結軸40を中心とした円柱状を成すもので、連結軸40の軸心回りに相対回転することが可能である。この押圧ローラ42は、2つのアーム部材41を直線状に配置した非作動位置から、2つのアーム部材41を屈曲状に配置した作動位置までの間において、常に外周面がアーム部材41の基板部41aから外部に突出した状態となるようにその外径が設定してある。但し、押圧ローラ42の外径寸法は、扉体20を閉じた場合にも、受部材31の受面31cと戸先枠13の見込み面13aとの間に確保される隙間よりも小さく設定してある。この押圧アーム33には、両端となる部分にそれぞれ支持接続部33aが設けてある。支持接続部33aは、それぞれ連結軸40と平行となる枢軸34を介して押圧アーム33を回転可能に支持させるためのものである。
【0021】
この押圧アーム33は、一方の端部が枢軸34を介してリンクバー32のアーム接続部32aに接続してあり、かつ他方の端部が戸先枠13の見込み面13aにおいてリンクバー32の上端延長上となる部分に支持ブラケット43を介して取り付けてある。支持ブラケット43は、基準板部43aの両側に支持板部43bを有し、2つの支持板部43bにわたって枢軸34が貫通されるように構成したもので、基準板部43aを介して取付ネジSを螺合することにより、戸先枠13の見込み面13aに押圧アーム33の端部を回転可能に支持している。
【0022】
支持ブラケット43を取り付ける位置は、リンクバー32を最も下方となるように配置した場合に、2つのアーム部材41が非作動位置となる高さである。このとき、押圧ローラ42の外周面は、戸先枠13の見込み面13aに当接した状態となっている。この状態からリンクバー32を上方に移動させた場合には、2つのアーム部材41が連結軸40を中心として漸次屈曲し、押圧ローラ42が戸先枠13から離隔する方向に向けて突出することになる。また、2つのアーム部材41の長手に沿った寸法は、非作動位置に配置された場合に押圧ローラ42が受部材31の受面31cに対して下方部に対向し、かつ作動位置に配置された場合に押圧ローラ42が受部材31の受面31cに対して上方部に対向するように設定してある。
なお、上述した面材オープナー30を構成する受部材31、リンクバー32及び押圧アーム33としては、外力が加えられた場合にも容易に変形することがないように鋼材等の金属や硬質樹脂等の剛性を有した部材によって構成してある。
【0023】
上記のように構成した面材オープナー30を備える建具では、上述したように、ペダル36を操作していない場合、図3図8に示すように、リンクバー32が下方に配置されるため押圧アーム33が非作動位置となる。従って、扉体20を閉じる方向に移動させた場合にも、押圧アーム33と受部材31とが互いに当接した状態となることがなく、扉体20を閉じ位置に配置することが可能となる。扉体20の閉じ位置とは、図2(a)に示すように、扉体20の戸先面20cが戸先枠13の見込み面13aを超えて凹部13dに収容され、扉体20と戸先枠13との間に見込み方向に沿った直線状の隙間が生じない状態である。扉体20が閉じ位置に配置された状態においては、通路と部屋との間において通気が抑制されることになり、所望の気密性を確保した状態でこれら通路及び部屋を仕切ることができるようになる。なお、この閉じ位置では、必ずしも扉体20の戸先面20cが凹部13dにおいて戸先枠13に当接している必要はない。
【0024】
扉体20が閉じ位置にある状態からペダル36の入力端部36bに足を掛けて下方に操作すると、受部材31に対向する押圧ローラ42が戸先枠13から離隔する方向に向けて移動するため、受部材31の受面31cを介して扉体20を開き方向に向けて押圧することになる。すなわち、この建具では、扉体20に設けたハンドル21に触れることなく、閉じ位置に配置された扉体20を開き位置に向けて移動させることが可能となる。従って、例えばリンクバー32が最も上方となる位置に配置された際に押圧ローラ42が戸先枠13の見込み面13aから100mm程度突出するように設定すれば、戸先枠13と扉体20との間に生じた隙間に身体を入れることで扉体20を全開位置まで開くことも可能となる。この結果、仮に建具が多数の者が出入りする部屋に設けられていたとしても衛生上の問題を防止することができ、また、両手が荷物で塞がっている状況下であっても扉体20を開くことができる等々、使い勝手の点できわめて有利となる。
【0025】
ペダル36から足を外せば、扉体20の開閉状態に関わらず、リンクバー32及び押圧アーム33の重量によってリンクバー32が下方に移動するため、押圧アーム33が非作動状態に復帰する。従って、扉体20を開く際に突出した押圧アーム33が出入りの際に邪魔となることもなく、扉体20を開いた際の開口面積が大きく減少する事態が招来されることもない。さらに、ペダル36から押圧アーム33までの間にバネ等の弾性力を利用した復帰手段を設ける必要がないため、部品点数の削減及び扉体20を開く際の操作力低減を図ることが可能である。
【0026】
加えて、上述した面材オープナー30は、構成要素のすべてが枠体10の外部に露出した状態のままとなる。従って、既存の建具に対して後付けで取り付ける場合にも、煩雑な作業が必要となることもなく、メンテナンス作業も容易に実施可能である。また、面材オープナー30の取付前後において枠体10に対する扉体20の閉じ位置が変化することはなく、面材オープナー30を取り付けた後であっても、元々通路と部屋との間に確保されていた気密性をそのまま維持することが可能である。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、屋内において通路と部屋とを仕切る壁体に設けたものを例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、屋内において部屋と部屋とを仕切る壁体に設けられる建具であっても良いし、屋内と屋外とを仕切る壁体に設けられる建具にも適用することが可能である。この場合、面材としては必ずしも扉体である必要はなく、ガラス板の四周に框を備えたものでも構わない。また、枠体に面材を唯一備えたものに限らず、引き違い窓等、複数の面材を備えたものであっても構わない。さらに、面材は、必ずしも下端部に設けた戸車を介して開閉可能に支持されたものである必要はなく、上吊り式のものであっても構わない。この場合、枠体としては下枠を備えたものである必要はない。
【0028】
また、上述した実施の形態では、戸先枠の見込み面に凹部を形成し、扉体を閉じ位置に配置した場合に扉体の戸先部分を凹部に収容させるようにしているが、必ずしも戸先枠に凹部を設ける必要はなく、扉体を閉じ位置に配置した場合にその戸先面を戸先枠の見込み面に当接させるように構成しても良い。
【0029】
さらに、上述した実施の形態では、面材の一方の表面にのみ受部材を配設しているが、他方の表面にも受部材を配設するとともに、他方の表面の受部材を押圧するように押圧部材及びリンク機構を設けるようにしても良い。なお、受部材はハンドルとは別の部材として構成する必要はなく、ハンドルを受部材として共用することも可能である。さらに、押圧部材及びリンク機構をそれぞれ縦枠の見込み面に配設しているため、建具の見付け面からの突出寸法が増える事態を防止することができるが、縦枠の見付け面に配設しても良い。この場合には、枠体の開口部に操作入力部(ペダル)が突出しないように構成することも可能である。またさらに、受部材の突出端面を、縦枠の通路側に位置する見付け面とほぼ同一の平面上に位置させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
またさらに、上述した実施の形態では、リンクバーが上方に移動した場合に押圧部材を作動位置に移動させるようにしているため、バネ等のように、押圧部材やリンクバーを元の位置に復帰させる構成が不要となるが、リンクバーが下方に移動した場合に押圧部材を作動位置に移動させるように構成することも可能である。この場合には、リンク機構としてワイヤーやチェーン等のように可撓性のものを適用しても良い。また、操作入力部としては、必ずしも足踏み型のものに限らない。さらに、2つのアーム部材を備えた押圧部材を適用する場合に上述した実施の形態では、非作動位置において互いに直線状に配置させるようにしているが、扉体を閉じ位置に配置することができれば、必ずしも非作動位置で2つのアーム部材が直線状となる必要はない。
【0031】
以上のように、本発明に係る面材オープナーは、横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具の面材オープナーであって、前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、一方の端部が前記押圧部材に接続され、かつ他方の端部に操作入力部を備え、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して移動することにより前記押圧部材を押圧するリンク機構とを備えたことを特徴としている。
この発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。
【0032】
また本発明は、上述した面材オープナーにおいて、前記リンク機構は、前記縦枠に沿って上下に移動するリンクバーを備え、前記リンクバーが上方に移動した場合に前記押圧部材を押圧するように構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、操作入力部の操作力を除去すれば、自重によってリンクバーを下方に移動させて押圧部材を元の位置に復帰させることが可能となる。従って、押圧部材を押圧移動させた後にこれを元の位置に復帰させるための復帰バネ等の部材を不要とすることができ、部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述した面材オープナーにおいて、前記リンクバーは、前記押圧部材から下方に向けて延在し、前記操作入力部は、前記リンクバーの下端部に接続されていることを特徴としている。
この発明によれば、操作入力部として足踏み式のものを適用することができ、例えば、両手が塞がっている状況であっても面材を開くことが可能となる。
【0034】
また本発明に係る建具は、上述した面材オープナーが設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。
【0035】
また本発明は、上述した建具において、前記縦枠の見込み面に前記押圧部材及び前記リンク機構が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、面材オープナーを適用した建具の見込み方向に沿った寸法を抑えることが可能となる。なお、押圧部材及びリンク機構については、建具の見付け面に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 枠体、11 上枠、12 下枠、13 縦枠、13a 見込み面、20 扉体、20a 通路側表面、20b 部屋側表面、30 面材オープナー、31 受部材、31c 受面、32 リンクバー、33 押圧アーム、36 ペダル、41 アーム部材、42 押圧ローラ
図1
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図8