(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】地下構造物の構築方法およびコンクリート打設システム
(51)【国際特許分類】
E02D 15/04 20060101AFI20240123BHJP
E02D 27/10 20060101ALI20240123BHJP
E04G 21/04 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
E02D15/04
E02D27/10
E04G21/04
(21)【出願番号】P 2020185300
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】戸張 正利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】柑本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 彩永佳
(72)【発明者】
【氏名】赤松 篤
(72)【発明者】
【氏名】万仲 直也
(72)【発明者】
【氏名】新田 直司
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-184045(JP,A)
【文献】特開2007-217906(JP,A)
【文献】特開昭62-160367(JP,A)
【文献】特開平10-220006(JP,A)
【文献】特開昭48-097328(JP,A)
【文献】特開2001-207449(JP,A)
【文献】特開平07-207941(JP,A)
【文献】実開昭53-040638(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/04
E02D 27/10
E04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の構築方法であって、
地盤に形成した立坑内の外周部に補強材を配置する工程と、
前記立坑内にコンクリートを打設する工程と、
を有し、
コンクリートを打設する際、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータを前記立坑内の中央部で架台上に設け、前記ディストリビュータを用いて、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設する
とともに、前記立坑内に吊り込んだバケットを用いて前記立坑内の中央部でコンクリートを打設することを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
地下構造物の構築方法であって、
地盤に形成した立坑内の外周部に補強材を配置する工程と、
前記立坑内にコンクリートを打設する工程と、
を有し、
コンクリートを打設する際、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータを前記立坑内の中央部で架台上に設け、前記ディストリビュータを用いて、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設
し、
前記架台は昇降可能な作業足場を有し、
コンクリートの打設作業の進行に応じて前記作業足場を上昇させることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記架台は十字状の平面を有することを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記補強材として、前記立坑内の外周部に形鋼を配置することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
立坑内にコンクリートを打設するためのコンクリート打設システムであって、
前記立坑内の中央部に配置された架台と、
圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設するためのディストリビュータであって、前記架台上に設けられ、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータと、
前記立坑内に吊り込まれる、前記立坑内の中央部でコンクリートを打設するためのバケットと、
を有することを特徴とするコンクリート打設システム。
【請求項6】
立坑内にコンクリートを打設するためのコンクリート打設システムであって、
前記立坑内の中央部に配置された架台と、
圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設するためのディストリビュータであって、前記架台上に設けられ、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータと、
を有
し、
前記架台は昇降可能な作業足場を有し、
コンクリートの打設作業の進行に応じて前記作業足場を上昇させることができることを特徴とするコンクリート打設システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の構築方法およびこれに用いるコンクリート打設システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深礎基礎は、地盤に立坑を掘削し、立坑の内部に鉄筋篭を組み立ててコンクリートを打設することによって構築されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、立坑の中央部のトレミー管を用いてコンクリートを打設することが記載されており、また特許文献2には、コンクリートの打設を、立坑上のホッパから立坑の中央部のシュートを介して自然流下させる方法により行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-306864号公報
【文献】特開平08-184045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような方法で大規模な深礎基礎を構築すると、コンクリートの打設に大変な手間がかかり、特に配筋の密集した箇所で迅速かつ確実にコンクリートを充填することは難しい。そのため、コンクリートの打設を迅速かつ確実に行い施工作業を効率化できる手法が望まれていた。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工作業を効率化できる地下構造物の構築方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地下構造物の構築方法であって、地盤に形成した立坑内の外周部に補強材を配置する工程と、前記立坑内にコンクリートを打設する工程と、を有し、コンクリートを打設する際、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータを前記立坑内の中央部で架台上に設け、前記ディストリビュータを用いて、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設するとともに、前記立坑内に吊り込んだバケットを用いて前記立坑内の中央部でコンクリートを打設することを特徴とする地下構造物の構築方法である。
第2の発明は、地下構造物の構築方法であって、地盤に形成した立坑内の外周部に補強材を配置する工程と、前記立坑内にコンクリートを打設する工程と、を有し、コンクリートを打設する際、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータを前記立坑内の中央部で架台上に設け、前記ディストリビュータを用いて、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設し、前記架台は昇降可能な作業足場を有し、コンクリートの打設作業の進行に応じて前記作業足場を上昇させることを特徴とする地下構造物の構築方法である。
【0008】
本発明では、大規模な深礎基礎などの地下構造物を構築する際、鉄筋や形鋼などの補強材が配置された立坑の外周部において、上記のディストリビュータを用いて周方向の複数箇所でコンクリートの圧送、打設を行うことが可能になる。これにより、立坑の外周部で密に配筋されている場合にも迅速かつ確実にコンクリートを充填でき、施工作業を効率化できる。
【0009】
第1の発明では、立坑の中央部でバケットによりコンクリートの打設を行うことで、複数系統の打設により立坑内でのコンクリートの打設作業を合理化できる。
【0010】
第2の発明では、昇降可能な作業足場を架台に設けることにより、コンクリートの打設作業の進行に応じて作業足場を上昇させ、締固め等の作業を足場上で行うことができる。
【0011】
前記架台は十字状の平面を有することが望ましい。
これにより、立坑の中央部でバケット等による打設を行う場合のスペースを好適に確保でき、且つ架台の配置も安定する。
【0012】
前記補強材として、前記立坑内の外周部に形鋼を配置することが望ましい。
地下構造物の補強材として強度の高い形鋼を用いることで、多量の鉄筋を配置する場合に比べて配筋作業を省力化することができる。
【0013】
第3の発明は、立坑内にコンクリートを打設するためのコンクリート打設システムであって、前記立坑内の中央部に配置された架台と、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設するためのディストリビュータであって、前記架台上に設けられ、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータと、前記立坑内に吊り込まれる、前記立坑内の中央部でコンクリートを打設するためのバケットと、を有することを特徴とするコンクリート打設システムである。
第4の発明は、立坑内にコンクリートを打設するためのコンクリート打設システムであって、前記立坑内の中央部に配置された架台と、圧送されたコンクリートを前記立坑内の外周部で打設するためのディストリビュータであって、前記架台上に設けられ、コンクリートの圧送配管を平面において回転させることのできるディストリビュータと、を有し、前記架台は昇降可能な作業足場を有し、コンクリートの打設作業の進行に応じて前記作業足場を上昇させることができることを特徴とするコンクリート打設システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工作業を効率化できる地下構造物の構築方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】深礎基礎10の構築方法について説明する図。
【
図4】深礎基礎10の構築方法について説明する図。
【
図5】深礎基礎10の構築方法について説明する図。
【
図6】深礎基礎10の構築方法について説明する図。
【
図10】コンクリート9の打設について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(1.深礎基礎10)
図1は本発明の実施形態に係る構築方法で構築された地下構造物である深礎基礎10を示す図である。
【0018】
深礎基礎10は、径の大きな大口径深礎基礎であり、橋脚等の基礎として用いられる。
【0019】
深礎基礎10は、地盤1に形成された立坑2内にコンクリート9を打設することで構築される。立坑2および深礎基礎10は円形平面を有する。立坑2の壁面には図示しない鋼製リングが設けられ、吹付材が吹付けられる。あるいは、壁面にライナープレートを設ける場合や、壁面に吹付けを行いロックボルトを設ける場合もある。
【0020】
深礎基礎10の外周部では、外側帯鉄筋5、外側鉄骨6、内側帯鉄筋7、内側鉄骨8等の補強材がコンクリート9に埋設される。なお外側とは立坑2の壁面に近い側をいい、内側とは立坑2の平面の中心に近い側をいうものとする。
【0021】
外側帯鉄筋5は、立坑2(深礎基礎10)の最外部に位置し、立坑2の周方向に沿って配置される鉄筋である。外側帯鉄筋5は、立坑2内の平面において円周状に配置される。外側帯鉄筋5は、鉛直方向に所定の間隔を空けて設置される。
【0022】
外側鉄骨6は、外側帯鉄筋5の内側に配置される鉛直方向の形鋼であり、本実施形態ではストライプH形鋼が用いられる。ストライプH形鋼は、
図2に示すようにフランジ幅方向の凸条aをフランジ表面に設けたH形鋼である。
【0023】
外側鉄骨6は、ウェブの幅方向を立坑2の径方向に合わせ、立坑2の周方向に沿って所定の間隔を空けて複数設置される。また本実施形態では、複数本の外側鉄骨6が添接板63を用いたボルト接合により上下に連結して用いられる。
【0024】
内側帯鉄筋7は、外側鉄骨6の内側に位置し、立坑2の周方向に沿って配置される鉄筋である。内側帯鉄筋7は、立坑2内の平面において内外二重の同心円状に配置される。内側帯鉄筋7は、鉛直方向に所定の間隔を空けて設置される。
【0025】
内側鉄骨8は、内側帯鉄筋7の内側に配置される鉛直方向の形鋼であり、本実施形態ではストライプH形鋼が用いられる。内側鉄骨8は、ウェブの幅方向を立坑2の径方向に合わせ、立坑2の周方向に沿って所定の間隔を空けて複数設置される。また本実施形態では、複数本の内側鉄骨8が添接板83を用いたボルト接合により上下に連結して用いられる。
【0026】
なお、
図1の符号3は外側鉄骨6と内側鉄骨8の設置に用いる設置台3であり、深礎基礎10では設置台3もコンクリート9に埋設される。また
図1の符号4は設置台3の位置を固定するための底部コンクリートであり、上記のコンクリート9は底部コンクリート4の上に打設される。
【0027】
(2.深礎基礎10の構築方法)
次に、
図3~
図6等を参照して深礎基礎10の構築方法について説明する。
【0028】
本実施形態では、地盤1を掘削して立坑2を形成した後、
図3に示すように立坑2の底部に設置台3を設ける。設置台3は、H形鋼30と繋ぎ材31を有する。なお、
図3において(a)は立坑2を上から見た図、(b)は立坑2の底部の鉛直断面を示す図である。これは以降の
図4、5においても同様である。
【0029】
H形鋼30は、ウェブの幅方向を鉛直方向に合わせ、立坑2の径方向に沿って配置される。H形鋼30は、立坑2の周方向に沿って間隔を空けて複数本放射状に設けられる。H形鋼30の上フランジには、後述する外側鉄骨6や内側鉄骨8の固定に用いる孔(不図示)が設けられる。
【0030】
繋ぎ材31は、立坑2の周方向に並んだ複数のH形鋼30を連結し、隣り合うH形鋼30同士の間隔を保持する。繋ぎ材31には例えばアングル材が用いられ、立坑2内の平面において内外二重の同心円状に配置される。繋ぎ材31はH形鋼30の上フランジにボルト等で接合される。
【0031】
立坑2の底部では、必要に応じて立坑2の外周部に均しコンクリート33を打設し、不陸を調整する。H形鋼30は均しコンクリート33上に墨出しを行って均しコンクリート33上の所定位置に設置される。H形鋼30は、アンカー34により均しコンクリート33やその下方の地盤1に固定される。
【0032】
本実施形態では、次に、
図4に示すように外側帯鉄筋5と外側鉄骨6を設置する。ここでは、まず立坑2の底部に底部コンクリート4を打設し、設置台3の位置を固定する。底部コンクリート4は、後述する外側鉄骨6や内側鉄骨8の固定作業を考慮して、H形鋼30の上部が露出するように打設する。
【0033】
底部コンクリート4を打設したら、立坑2の外周部に外側帯鉄筋5と外側鉄骨6を配置する。外側帯鉄筋5は、立坑2の壁面に設置した取付材(不図示)に固定して配置する。外側鉄骨6は外側帯鉄筋5の内側に設置する。
【0034】
図4(b)に示すように、外側鉄骨6の下端にはエンドプレート61が設けられており、外側鉄骨6の設置時には、エンドプレート61の孔(不図示)をH形鋼30の上フランジの孔と連通させ、これらの孔に頭付きボルト64の軸部を下から挿入し、エンドプレート61から突出する軸部の先端にナット65を締め込む。これにより、外側鉄骨6がH形鋼30の上フランジに固定される。
【0035】
こうして立坑2の周方向に複数の外側鉄骨6が配置される。これらの外側鉄骨6の上端部同士は、立坑2の周方向に沿って配置された繋ぎ材62によって連結される。
【0036】
繋ぎ材62は例えばアングル材であり、内外二重の同心円状に配置される。内外の繋ぎ材62は、立坑2の周方向に並んだ複数の外側鉄骨6の内側フランジと外側フランジにそれぞれボルト等で接合され、これにより複数の外側鉄骨6の上端部同士が繋ぎ材62により連結される。繋ぎ材62により隣り合う外側鉄骨6同士の間隔が保持され、外側鉄骨6の設置精度が高まる。
【0037】
次に、
図5に示すように、外側鉄骨6から所定の間隔を空けて、外側鉄骨6の内側に内側帯鉄筋7と内側鉄骨8を設置する。内側帯鉄筋7は、外側鉄骨6に設けた取付治具(不図示)に固定することができる。内側鉄骨8は内側帯鉄筋7の内側に設置する。内側鉄骨8の下端にはエンドプレート81が設けられており、当該エンドプレート81を先程と同様に頭付ボルト84とナット85を用いてH形鋼30の上フランジに固定する。
【0038】
内側鉄骨8は、立坑2の周方向に複数配置される。これらの内側鉄骨8の上端部同士は、先程の繋ぎ材62と同様の繋ぎ材82を用いて、外側鉄骨6と同様に連結される。
【0039】
こうして
図6(a)に示すように立坑2内に外側帯鉄筋5、外側鉄骨6、内側帯鉄筋7、内側鉄骨8が設置される。その後、
図6(b)に示すように立坑2内にコンクリート9を打設することで、深礎基礎10の一部が構築される。なおコンクリート9は外側鉄骨6や内側鉄骨8の上端部が露出するように打設し、前記の繋ぎ材62、82はコンクリート9の打設後に取り外して後の工程で転用する。
【0040】
その後、
図6(c)に示すように、先程設置した外側帯鉄筋5、外側鉄骨6、内側帯鉄筋7、内側鉄骨8の上方に、新たな外側帯鉄筋5、外側鉄骨6、内側帯鉄筋7、内側鉄骨8を先程と同様に設置する。ただし、外側鉄骨6、内側鉄骨8の下端は、設置台3に固定されるのではなく、その下段の外側鉄骨6、内側鉄骨8の上端に添接板63、83を用いて連結される。
【0041】
その後、先程打設したコンクリート9の上方に、
図6(d)に示すように新たなコンクリート9を打設する。以下
図6(c)、(d)の工程を繰り返すことで
図1に示す深礎基礎10が構築される。
【0042】
(3.コンクリート9の打設)
本実施形態では、
図7に示すコンクリート打設システム100を用いてコンクリート9を打設する。
図7(a)はコンクリート打設システム100の立面図であり、
図7(b)はコンクリート打設システム100を上から見た図である。
【0043】
コンクリート打設システム100は、架台110、ディストリビュータ(間配り機)120、バケット130、フロート足場140等を有する。
【0044】
架台110は、立坑2内の中央部で底部コンクリート4上に設置される平面十字状の架台であり、その上端は外側鉄骨6や内側鉄骨8の上端より高い位置にある。
【0045】
架台110は、鉛直方向の支柱111と、平面において十字状となるように配置された上下複数段の水平材112を有し、水平材112の両端が支柱111に固定される。上下の水平材112の間には、必要に応じてブレース(不図示)が設けられる。
【0046】
架台110には上下複数段のブラケット113が固定される。最上段のブラケット113上には渡り足場115が載置され、渡り足場115が平面十字状に配置される。他のブラケット113は作業足場114を載置するために設けられる。
【0047】
作業足場114は、架台110の上部のホイストから吊り下げたチェーン(不図示)によって
図7(a)の矢印bに示すように架台110内で昇降可能となっている。作業足場114の両端部は進退可能であり、作業足場114をブラケット113に載置する際には当該両端部を前進させてブラケット113上に載置する。作業足場114を昇降させる際には当該両端部を後退させる。
【0048】
ディストリビュータ120は、立坑2内の外周部にコンクリート9を圧送、打設するための装置であり、架台110上に設けられる。
【0049】
ディストリビュータ120は、旋回部121と圧送配管122を有し、台部125によって架台110上に固定される。
【0050】
旋回部121は水平方向に延びる部材である。旋回部121は、端部に取り付けられたロープ(不図示)を引張るなどして、手動により立坑2の平面中心周りに回転させることができる。
【0051】
圧送配管122はコンクリート9を圧送するための配管であり、旋回部121に沿って取り付けられる。圧送配管122は地上のコンクリートポンプ車(不図示)に接続される。圧送配管122は、旋回部121とともに平面において回転させることができる。
【0052】
圧送配管122の先端の吐出口は、立坑2の壁面付近に配置される。コンクリート9の圧送、打設時には圧送配管122の吐出口にホース124を取り付け、立坑2の外周部に垂下させる。
【0053】
バケット130は、立坑2内の中央部でコンクリート9を打設するためのものであり、コンクリート9を収容した状態でクレーン等の揚重機(不図示)によって立坑2内に吊り込まれる。
【0054】
フロート足場140は、架台110の平面位置を避けて底部コンクリート4上に配置される。
【0055】
また本実施形態では、
図7(b)に示すように、立坑2内の外周部で外側鉄骨6と内側鉄骨8の上に足場板200を円周状に設置し、この足場板200を用いてコンクリート9の打設を行う。
【0056】
足場板200は、平面において外側鉄骨6、内側鉄骨8に重ならない位置に打設孔210を有する。打設孔210は立坑2の周方向に間隔を空けて複数設けられる。なお、特に図示しないが、足場板200と渡り足場115の間には階段が設置され、足場板200と架台110の間の往来が可能である。
【0057】
本実施形態では、ディストリビュータ120とバケット130とを併用し、コンクリート9を複数系統で並行して打設する。
【0058】
ディストリビュータ120による打設では、旋回部121により圧送配管122を回転させてその先端の吐出口を打設孔210の位置に移動させ、ホース124を吐出口に取り付ける。
【0059】
そして、ホース124を打設孔210に通して立坑2の外周部で垂下させ、コンクリートポンプ車から圧送配管122を介してコンクリート9を圧送し、立坑2の外周部にコンクリート9を打設する。
【0060】
これにより、外側帯鉄筋5、外側鉄骨6、内側帯鉄筋7、内側鉄骨8等の補強材の密集した立坑2の外周部に迅速かつ確実にコンクリート9が充填される。ホース124の下端はコンクリート9の天端の上昇に応じて引き上げる。
【0061】
一方、配筋の行われていない立坑2の中央部では、バケット130によるコンクリート9の打設が行われる。このように複数系統でコンクリート9を打設することにより、立坑2内でのコンクリート9の打設作業を合理化できる。
【0062】
図8に示すように、フロート足場140はコンクリート9の天端の上昇に伴って上昇し、常にコンクリート9の天端に配置される。コンクリート9は数段階に分けて打ち継ぎ、作業足場114はコンクリート9の打設作業の進行に応じて適切なタイミングで上昇させ、適切な高さのブラケット113に載置する。例えば
図8に示す天端の位置までコンクリート9を打設する場合、その直上のブラケット113に作業足場114を事前に載置しておく。コンクリート9の締固め作業等は、これらの作業足場114やフロート足場140から行うことができる。
【0063】
ディストリビュータ120による打設は、
図9の矢印で示すように、圧送配管122を回転させて打設孔210の位置を変えながら順次実施する。バケット130による打設は上記打設孔210から離れた位置で行い、バケット130の吊り込みとディストリビュータ120による打設が上下作業とならないようにする。
【0064】
例えば
図10に示すように、立坑2を平面において複数(図の例では4つ)の扇形の範囲に等分割し、ディストリビュータ120による打設を範囲Aで行うときには、バケット130による打設は立坑2の平面中心に関し範囲Aの対称となる位置にある範囲Cで実施する。圧送配管122を回転させてディストリビュータ120による打設を次の範囲Bで行うときには、バケット130による打設を実施する箇所も移動させ、立坑2の平面中心に関し範囲Bと対称となる位置にある範囲Dとする。
【0065】
こうしてディストリビュータ120による打設箇所とバケット130による打設箇所を立坑2の周方向に順次変化させながらコンクリート9の打設を行う。
図10の丸囲み数字はディストリビュータ120による打設順の一例であり、図の四角囲み数字はバケット130による打設順の一例である。
【0066】
以上の作業により、
図6(b)に示すようにコンクリート9が打設される。足場板200はコンクリート9の打設後に撤去し後の工程で転用するが、架台110はコンクリート9中に残置して埋殺しとする。なお
図1および
図6(b)~(d)では架台110の図示を省略している。
【0067】
このように、本実施形態によれば、深礎基礎10を構築する際、鉄筋や形鋼などの補強材が配置された立坑2の外周部では、架台110上のディストリビュータ120を用いて周方向の複数箇所でコンクリート9の圧送、打設を行い、立坑2の中央部ではバケット130によりコンクリート9の打設を行う。これにより、立坑2の外周部で密に配筋されている場合にも迅速かつ確実にコンクリート9を充填でき、施工作業を効率化できる。そうでない中央部については、バケット130による打設を行うことで、複数系統でのコンクリート9の打設により立坑2内でのコンクリート9の打設作業を合理化できる。
【0068】
また昇降可能な作業足場114を架台110に設けることにより、コンクリート9の打設作業の進行に応じて作業足場114を上昇させ、足場上で締固め等の作業を行うことができる。
【0069】
また架台110は十字状の平面を有するので、立坑2の中央部において、バケット130等による打設を行う場合のスペースを好適に確保でき、且つ架台110の配置も安定する。
【0070】
また本実施形態では深礎基礎10の補強材として強度の高い形鋼を用いることで、多量の鉄筋を配置する場合に比べて配筋作業を省力化することができる。
【0071】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限らない。例えば、深礎基礎10内の配筋は前記に限らず、内側鉄骨8を省略すること等も可能であり、外側帯鉄筋5や内側帯鉄筋7の段数も変えることができる。また外側鉄骨6や内側鉄骨8として、ストライプH形鋼以外の形鋼を用いることも可能である。また立坑2の中央部において、バケット130以外の打設方法を適用することも可能である。
【0072】
また本実施形態では、地下構造物として深礎基礎10を構築する例を説明したが、本実施形態の構築方法は、その他の地下構造物を構築する場合にも適用することができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0074】
1:地盤
2:立坑
3:設置台
4:底部コンクリート
5:外側帯鉄筋
6:外側鉄骨
7:内側帯鉄筋
8:内側鉄骨
9:コンクリート
10:深礎基礎
100:コンクリート打設システム
110:架台
111:支柱
112:水平材
113:ブラケット
114:作業足場
115:渡り足場
120:ディストリビュータ
121:旋回部
122:圧送配管
124:ホース
125:台部
130:バケット
140:フロート足場
200:足場板
210:打設孔