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特許7424971吻合を形成及び保護するための複合的な外科用装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】吻合を形成及び保護するための複合的な外科用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
A61B17/11
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020522684
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 FR2018052388
(87)【国際公開番号】W WO2019077218
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】1759847
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520134201
【氏名又は名称】セーフヒール
【氏名又は名称原語表記】SAFEHEAL
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】コスロヴァニネジャド,チャラム
(72)【発明者】
【氏名】オズドワ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,セシル
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517255(JP,A)
【文献】特表2014-527854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071780(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265849(US,A1)
【文献】特表2010-502289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0032879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビル(8)及び円形ステープラー(9)と協働して腸内で吻合(101)を形成し、前記腸内の前記吻合を保護するための使用準備の整った部品を有する複合的な外科用装置であって、前記外科用装置は、
(a)前記吻合の上流(100a)にある前記腸の内壁に一時的に固定できる少なくとも1つのステント(1)と柔軟なシース(2)とを有するアンカー部材を含む保護装置(5)であって、少なくとも前記シースの上流端は前記ステントに固定され、前記シースは、前記吻合が保護されることを可能にするために、前記アンカー部材の下流及び前記吻合の下流に延びることができる、保護装置(5)と、
(b)第1のガイドチューブ(12)と呼ばれる少なくとも1つの第1のチューブであって、前記ステント(1)は、前記第1のガイドチューブ(12)の内側で、径方向に圧縮された状態で保持され、前記第1のガイドチューブ(12)は、導入器(10)の一部である、第1のチューブと、を備え、
前記柔軟なシース(2)は、前記第1のガイドチューブ(12)の内部に格納され、前記シースの下流端(2b)は、前記第1のガイドチューブ(12)に接続されていて、前記シース(2)は、前記吻合の形成に使用された前記アンビル(8)及び前記円形ステープラー(9)を含む構造が前記腸から除去されるときに、前記第1のガイドチューブ(12)の近位端を前記構造を介して引っ張ることによって、前記ステントの下流に展開できることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複合的な外科用装置であって、前記保護装置(5)は、少なくとも1つの吸引チューブ(3)を備え、前記吸引チューブは、前記吸引チューブの下流に前記アンカー部材の外側で延びることができ、前記吸引チューブの開放端は、前記アンカー部材と前記柔軟なシースとの間に形成された真空チャンバー(4)に、前記アンカー部材の内側において、開口している、複合的な外科用装置。
【請求項3】
請求項に記載の複合的な外科用装置であって、前記柔軟なシース(2)の下流端(2)及び前記吸引チューブ(3)の下流端は、前記第1のガイドチューブ内に配置されるように構成されている、複合的な外科用装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の複合的な外科用装置であって、前記柔軟なシース(2)の下流端(2)及び前記吸引チューブ(3)の下流端は、接着(2b、3b)又はねじ込みによって、前記第1ガイドチューブの遠位端に接続されていることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の複合的な外科用装置であって、第2の接続部品(12b)は、アダプター(7)にねじ込み、接着、締め付け、又は磁気接続によって、固定されており又は可逆的に固定できることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項6】
請求項に記載の複合的な外科用装置であって、前記第2の接続部品(12b)は、特定ねじ込み部を備え、
前記複合的な外科用装置は、
・第1に、前記特定ねじ込み部と、第2の硬質ガイドチューブ(13)の遠位端に配置された第1の相補的なねじ込み部(13b)と、が互いにねじ込まれた状態をとることと、
・第2に、前記特定ねじ込み部と、前記アダプター(7)の遠位端に配置された第2の相補的なねじ込み部(7a)と、が互いにねじ込まれた状態をとることと、
が可能であることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項7】
アンビル(8)及び円形ステープラー(9)と協働して腸内で吻合(101)を形成し、前記腸内の前記吻合を保護するための使用準備の整った部品を有する複合的な外科用装置であって、前記外科用装置は、
(a)前記吻合の上流(100a)にある前記腸の内壁に一時的に固定できる少なくとも1つのステント(1)と柔軟なシース(2)とを有するアンカー部材を含む保護装置(5)であって、少なくとも前記シースの上流端は前記ステントに固定され、前記シースは、前記吻合が保護されることを可能にするために、前記アンカー部材の下流及び前記吻合の下流に延びることができる、保護装置(5)と、
(b)第1のガイドチューブ(12)と呼ばれる少なくとも1つの第1のチューブであって、前記ステント(1)は、前記第1のガイドチューブ(12)の内側で、径方向に圧縮された状態で保持され、前記第1のガイドチューブ(12)は、導入器(10)の一部である、第1のチューブと、を備え、
前記柔軟なシース(2)は、前記第1のガイドチューブ(12)の内部に格納され、前記シースの下流端(2b)は、前記第1のガイドチューブ(12)から独立した第1の接続部品(11)に接続されていて、前記シース(2)は、前記吻合の形成に使用された前記アンビル(8)及び前記円形ステープラー(9)を含む構造が前記腸から除去されるときに、前記第1の接続部品(11)であって前記シースが固定されたものを前記構造を介して引っ張ることによって、前記ステントの下流に展開できることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項8】
請求項に記載の複合的な外科用装置であって、前記保護装置(5)は、少なくとも1つの吸引チューブ(3)を備え、前記吸引チューブは、前記吸引チューブの下流に前記ステントの外側で延びることができ、前記吸引チューブの開放端は、前記ステントの内壁と前記ステントの内壁を覆う内部フィルムとの間に形成された真空チャンバー(4)に、前記ステントの内側において、開口していて、前記吸引チューブ(3)は、前記第1のガイドチューブ(12)の内部に配置され、前記吸引チューブ(3)の下流端(3b)は、前記第1の接続部品(11)に接続され、前記吸引チューブ(3)は、前記第1の接続部品(11)に可逆的に固定された前記アンビルを前記腸から引き出すことによって、前記ステントの下流に展開されるように適合されていることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合的な外科用装置であって、前記第1のガイドチューブ(12)の遠位端は柔軟な保持部(12a)によって閉じられ、前記保持部(12a)は、プッシャーロッド停止部(15a)による前記第1のガイドチューブ内部における推力がない場合に、前記第1のガイドチューブ内部に前記保護装置(5)を保持でき、前記保持部は、弾性的に変形することができ、前記プッシャーロッド停止部による前記推力の影響下で前記保護装置(5)が抜け出るようにすることができる、複合的な外科用装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合的な外科用装置であって、前記導入器は、プッシャー(15)を備え、前記プッシャー(15)は、プッシャーロッド(15a)と、前記プッシャーロッドの遠位端にあるプッシャー停止部(15b)と、を備え、前記プッシャーは、第2の硬質ガイドチューブ(13)及び前記第1のガイドチューブ(12)の内部においてハンドルから延びていて、前記プッシャーロッド(15a)の近位端は、前記第1のガイドチューブに対する前記プッシャーロッドの相対的な並進を手動で制御することによって、前記ハンドルと協働するように適合されていることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【請求項11】
請求項10に記載の複合的な外科用装置であって、前記プッシャーロッド(15a)は、仮想の長手方向の軸(XX’)に沿って螺旋状に巻かれており、同一直径で同軸の互いに接した複数の周回部を有する、鋼のワイヤーで形成された螺旋状のロッドであり、前記互いに接した複数の周回部の前記直径により、ロッドが形成されていることを特徴とする、複合的な外科用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸吻合を形成及び保護するために有用な複合的な外科用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸吻合は約20%の癒合不全率がある。吻合(瘻)の癒合不全は、死亡率が約20%の深刻な合併症である。吻合瘻の有害な影響を軽減するために、一部の患者は、吻合の上流にある皮膚と腸の間の出口(ストーマ)を利用して、消化流を外嚢に迂回させ、吻合と糞便との接触を回避する。ストーマは、吻合が治癒した後の2番目の工程で閉じられる。ストーマの存在とストーマを取り除くための再介入が必要となることは、患者にとって大きな負担であり、高い医療費の要因である。
【0003】
これに関連して、糞便を腸管腔に迂回させ、オストミーを回避することを可能にする、FR2941858及びEP2395942に記載されている吻合保護装置が提供された。この装置は、ステントの下流においてステントに取り付けられた柔軟な外部シースからなり、ステントは吻合の上流に固定されるように意図されている。ステントは腸壁への一時アンカー部材であり、シースを所定の位置に保持する。シースは、吻合の位置にある腸壁に接触することなく、糞便を肛門外口に向けて迂回させ、吻合を保護する。
【0004】
WO2013/014353では、腸壁へのステントの固定又は腸壁からの離脱を制御する手段を追加することにより、この装置がさらに進歩した。これを行うために、装置の固定又は離脱は、内部シースとステント壁との間に区切られたチャンバーの空間に開口するチューブによって強化される。これにより、腸壁をステントに引き寄せることにより吸引効果を生み出して固定を強化するか、逆に空気又は流体を注入してそれを解放することが可能になる。
【0005】
これを行うために、WO2013/014353の外科用装置の本質は、腸の粘弾性を利用して、腸の内壁がステントの外壁に引き付けられることにある。実際、腸の粘膜は柔軟で弾性があり、一方ステントの壁は相対的に硬い。腸壁は、ステントと粘膜の接触面の負圧によってステント外壁に(吸引によって)引き付けられ、接着されうる。この場合、腸とステントとの間の摩擦力はある種の吸引効果によって急速に著しく増大する。その結果、ステントの動きやすさは吸引効果と密接に関連し、その調整は腸内のステントの動作に影響を与える。
【0006】
より正確には、この特許WO2013/014353では、外科用アンカー装置が記載されている。前記装置は、腸の内壁の粘膜にそれ自体を固定することができ、
(a)固定が制御下で修正可能な一時アンカー部材であって、前記一時アンカー部材は、少なくともステントタイプの第1の半硬質中空縦長部材を有し、前記第1の半硬質中空縦長部材は、第1の壁と呼ばれる、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形で複数の穴があいた流動部を備えた、長手方向軸の周りの回転形状の壁を定義し、前記第1の中空縦長部材は、収縮した状態において径方向に圧縮されることができ、径方向の圧縮から解放されると径方向に最大限拡張した前記状態をとることができるように、径方向の弾性特性を付与する材料でできており、前記複数の穴があいた第1の壁の第1の外直径は、
・前記第1の壁の前記径方向に収縮した状態における、20mm以下、好ましくは10mm以下である第1の最小外直径、と
・前記第1の壁の前記径方向に最大限拡張した状態における、好ましくは18mmから45mmにある第1の最大外直径、との間で制御下で変化可能である、一時アンカー部材と、
(b)前記ステントに取り付けられ、その下流端から延びる柔軟な外部シースと、を備え、
前記第1の壁の円筒形の内表面の少なくとも一部、好ましくは全長が内部シースを形成する独立したシール層で覆われており、前記内部シースの長手方向の両端のみが、前記内部シースの前記長手方向の個々の端において、第1の密封手段、好ましくは接合融着又はエラストマー接着剤の環状シールによって、前記アンカー部材に密封されて取り付けられ、これにより真空チャンバーと呼ばれるチャンバーを前記内部シースと前記第1の壁との間に画し、前記一時アンカー部材は、注入-吸引チューブとして呼ばれる、前記アンカー部材の外部に延びる、柔軟な又は半硬質のチューブに連結され、前記注入-吸引チューブの開放端が前記真空チャンバーに開口している。
【0007】
より具体的には、前記注入-吸引チューブは、その長手方向の自由端で好ましくは可逆的に接続末端部材に接続され、該接続末端部材は空気又は液体の注入又は吸引のための注射筒等の装置に可逆的に接続されているか、可逆的に接続することができ、前記接続末端部は遮断装置、好ましくは逆流防止弁と、前記真空チャンバーの真空度を示すことができる真空表示装置とを備え、特に前記真空表示装置は真空アンプル上に配置される。
【0008】
前記チャンバーは、前記アンカー部材が最大限拡張した状態で腸壁の内表面に固定されて静止しているときは、内部シースの密封フィルムと腸壁との間に密封チャンバーを規定している。そして、前記アンカー部材が解放された場合、及び/又は前記アンカー部材が腸内で移動した場合は、前記チャンバーはその密封状態を失う。しかしその場合は、患者の外から前記チューブを通して該チューブの自由端から空気を吸引でき、これにより、前記チャンバーを画している前記第1の壁の外側表面の一部あるいは全部にわたって、前記第1の壁の外側表面に腸壁を引き付け、前記チャンバーの真空を保持し、そして前記チャンバーを密封することによって、アンカー部材の移動を停止する。
【0009】
前記アンカー部材は、後述する「導入器」と呼ばれる器具を用いて、径方向に収縮した状態に保持することができ、アンカー部材が導入器から解放された後には径方向の拡張が起こる。
【0010】
WO2013/014353には、導入器は、その一端にハンドルを備え、その内部に収縮した状態の前記アンカー部材と前記シースとを、好ましくは長手方向に広げた状態で、収容可能な内直径と長さを有する、既知のカテーテルタイプの半硬質ガイドチューブで構成されていてもよい。
【0011】
WO2013/014353では、肛門への挿入のために、前記装置は以下を有する導入器をさらに有する。
・筒状の外部シースであって、前記収縮した状態に圧縮された前記アンカー部材と前記注入-吸引チューブを前記外部シースの遠位端内に収容及び保持することができ、前記シースと前記注入-吸引チューブをさらに収容するのに十分に長く、好ましくは少なくとも70cm、好ましくは少なくとも100cmの長さである外部シースと、
・前記導入器の遠位端を、肛門外口から吻合の上流にある腸内の前記固定位置まで送り込む手段と、
・好ましくは、前記アンカー部材を外部ケーシングから外す手段であって、好ましくは、前記アンカー部材の長手方向の端と必要に応じて接触する停止部を、その遠位端に備えた停止チューブをさらに有し、前記アンカー部材の下流側の前記シースが前記外部ケーシング内部の前記停止チューブを取り囲んでいる手段。
【0012】
吻合は、ステープラーを使用して既知の方法で形成され、吻合の位置の上流にある腸内に「アンビル」と呼ばれる円形断面の部品を挿入し、その後腸の自由端の位置でアンビルシャフトの周りに「巾着」と呼ばれるワイヤーを締め、その後吻合の下流部にあるステープラー本体をアンビルシャフトの位置まで係合させ、円形のステープラーをアンビルと連携させ、組織の切開とステープルの配置をすることによって形成される。
【0013】
したがって、これらの上記で引用された以前の特許のように、吻合がステープラーを使用して、例えばFR2846868に記載されている方法で形成される場合、吻合保護装置が腸内に配置される。肛門外口、次に吻合、そして吻合の上流に位置する腸を通してこの装置が導入されるのは、柔軟な導入器による方法である。導入器を除去した後、ステントは径方向に広がって腸の壁と接触し、一方シースと吸引チューブは、吻合の上流の固定位置から吻合を通って肛門外口までの腸の内腔に展開する。
【0014】
これらの操作の安全性は証明されているが、WO2013/014353に記載されているように、一部の外科医は、新規に形成された吻合を通して物体を導入することに消極的である。
【発明の概要】
【0015】
本発明によれば、吻合が形成される前であっても腸に導入することができる保護装置が提供される。この保護装置によれば、アンビル及びステープラーでの吻合形成を容易にし、外科手術中の工程数を減らし、作業時間を短縮することもできる。
【0016】
この目的のために、原理的には、本発明の対象は、:
・吻合の上流にある腸管腔に吻合保護装置を配置するための手段であって、肛門外口及び新たに形成された吻合を通して導入される器具を必要としないが、ステープラーアンビルの配置に必要な病理学的腸の切除及び腸管腔の上流部の開口を、吻合保護装置の事前の配置に使用する、手段。
・固定装置を、外部シースを、及び吻合が形成された後にのみ、該当する場合は、吻合を介して吸引チューブを、展開するための手段であって、シース及び吸引チューブの展開は、ステープラーの除去によって、及びステープラーの除去とともに行われ、つまり、以下の工程の後に行われる手段:
・巾着を使ってアンビルの軸における上部の腸を閉じることと、
・肛門外口から腸の下流にステープラー本体を導入することと、
・アンビルをステープラー本体に固定することと、
・ステープラーで留めることと、
・肛門外口からアンビルとステープラーを除去すること。
【0017】
この目的のために、本発明は、より正確には、アンビル及び円形ステープラーを用いて腸内で吻合を形成し、腸内の前記吻合を保護するための使用準備の整った部品を有する複合的な外科用装置であって、
(a)前記吻合の上流にある前記腸の内壁に一時的に固定できる少なくとも1つのステントと柔軟な外部シースを有するアンカー部材を含む保護装置であって、少なくとも前記シースの上流端は前記ステントに固定され、特に、前記吻合が形成され、前記アンビル及びステープラーが除去された後、前記外部シースは、前記吻合が保護されることを可能にするために、前記アンカー部材の下流及び前記吻合の下流に延びることができる、保護装置と、
(b)第1のガイドチューブと呼ばれる少なくとも1つの第1のチューブであって、前記ステントは、前記第1のチューブの内側で、好ましくは前記第1のガイドチューブの遠位端で、径方向に圧縮された状態で保持され、前記第1のチューブは、導入器のガイドチューブの一部であるか、又は導入器に可逆的に取り付け可能であるように適合されていて、前記第1のチューブは、その長手方向の軸(XX’)に対する曲がりの形を変更可能である、第1のチューブと、を備え、
前記柔軟なシースは、前記第1のガイドチューブの内部に、そして場合により部分的又は完全に前記ステントの内部に、格納され、好ましくは折り畳まれ、前記シースの下流端は、前記第1のガイドチューブ又は前記第1のガイドチューブから独立した第1の接続部品に接続されていて、前記柔軟なシースは、前記第1のガイドチューブの近位端又は(ou respectivement)前記第1の接続部品であって前記シースが固定されたものを引き出すことによって、前記ステントの下流に展開できることを特徴とする、複合的な外科用装置を提供する。
【0018】
より具体的には、前記第1のガイドチューブの近位端又は前記第1の接続部品は、前記近位端が前記アンビルに可逆的に固定できるような、可逆的な固定手段を備え、前記柔軟なシースは、前記第1のガイドチューブの近位端に又は前記第1の接続部品に可逆的に固定された前記アンビルを引き出すことによって、前記ステントの下流に展開できる。
【0019】
より具体的には、前記第1のガイドチューブの近位端又は前記第1の接続部品は、接着、ねじ込み、締め付け、又は磁気接続によって、前記アンビルの前面に可逆的に取り付けるための手段を備える。前記アンビルの除去は、その前に前記第1のガイドチューブの前記近位端又は前記第1の接続部品に対して前記アンビルを分離させるという意味を含むことが理解される。
【0020】
既知の方法で、前記導入器は、(i)前記第1の変形可能なガイドチューブと、(ii)第2の硬質ガイドチューブであって、前記第1の変形可能なガイドチューブの近位端は、前記第2の硬質ガイドチューブの遠位端に取り付けられているか、又は取り付け可能である、第2の硬質ガイドチューブと、(iii)前記第2の硬質ガイドチューブの近位端に接続されたハンドルと、(iv)前記第2の硬質ガイドチューブ及び前記第1の変形可能なガイドチューブ内で前記ハンドルから延び、プッシャーロッドとプッシャーロッドの遠位端にあるプッシャー停止部とを備えるプッシャーと、を、少なくとも備える。
【0021】
既知の方法で、前記導入器は、吻合の位置の上流に保護装置を留置することを可能にすることができ、前記プッシャー停止部は、前記保護装置を前記第1の変形可能なガイドチューブの遠位端の外側に押して、腸壁に対する前記ステントの径方向の拡張及び固定を可能にすることができ、前記プッシャーロッドの近位端は、前記第1の変形可能なガイドチューブに対する前記プッシャーロッドの相対的な並進を手動で制御することにより、前記ハンドルと協働することができる。
【0022】
従来技術では、この型の導入器は、吻合が形成された後にのみステントを導入するために使用され、前記第1の変形可能なガイドチューブは、本発明によるものよりも長い。なぜなら、従来技術の前記第1の変形可能なガイドチューブは肛門外口から吻合の上流まで、つまり実際には少なくとも45cmまで、伸びていなければならないからである。
【0023】
本発明によれば、吻合が形成される前に導入器がステントを導入するために使用されるので、吻合の位置の上流にステントを配置するための前記第1の変形可能なガイドチューブの長さは、例えば30cm以下である。
【0024】
したがって、吻合の上流における前記保護装置の固定後の導入器の除去は、吻合の下流にある腸内で部分的に前記シースを展開することを可能にし、前記外部シースの完全な展開は、肛門外口を介するステープラーの除去中に行われる。前記外部シースに取り付けられた導入器の前記第1の接続部品又は前記第1のチューブ以外の、導入器の部品の除去の後、第1の接続部品又は第1のチューブは以下に説明するように、吻合を形成するためにステープラーアンビルに直接又は間接的に、可逆的に取り付けられてもよい。
【0025】
さらにより具体的には、前記シースの下流端が前記第1の接続部品に取り付けられるとき、前記第1の接続部品は前記ステントのすぐ下流に配置され、前記第1の接続部品を可逆的に取り付けるための前記手段は連続的に以下の役割を果たすことができる。
・1)導入の初期段階で前記導入器のプッシャーのストッパーに取り付け、導入の初期段階の終わりに、前記プッシャーの推力の影響下で前記ステントを前記第1のガイドチューブの上流に解放し、したがって、ステントは、腸の上流における、吻合の位置から上流に特定の距離、好ましくは吻合の位置の上流10cmから20cmに見られる。その後、
・2)前記プッシャーと前記導入器の部品との取り外し及び引き出しの後に前記アンビルに固定され、これによりステープラーを用いて前記吻合を形成することが可能となる。オプションでは、前記吻合の形成は、吻合の位置まで前記プッシャーを引き出すことによるステントの下流における前記シースの部分的な展開後、かつ、前記プッシャーの取り外しの前になされる。前記吻合の下流における前記シースの完全な展開は、前記吻合が形成された後に、前記第1の接続部品、前記アンビル、及び前記ステープラーと一体の部品の引き出しによって起こる。
【0026】
さらにより具体的には、前記シースの下流端が前記第1のチューブに接続されるとき、前記第1のチューブは導入器に可逆的に取り付けることができ、前記第1のガイドチューブの近位端において前記可逆的な取り付け手段は連続的に以下の役割を果たす。
・1)導入の初期段階で、ハンドル及びプッシャーと一体の導入器の第2のガイドチューブの端に固定される。その後、
・2)前記第1のガイドチューブを取り外すとともに前記プッシャーの除去を含んだ前記導入器の残りの部分の除去の後、前記アンビルに固定され、これによりアンビル及びステープラーを用いて前記吻合を形成することが可能となる。オプションでは、前記吻合の形成は、ステントの下流における前記シースの部分的な展開後に、前記第1のチューブから吻合の位置に戻ることによってなされる。前記吻合の下流における前記シースの完全な展開は、前記吻合が形成された後に、前記第1のガイドチューブ、前記一体のアンビル及び前記ステープラーと一体の部品の完全な除去によって起こる。
【0027】
本発明は、保護装置が吸引チューブと呼ばれる少なくとも1つの柔軟なチューブを、好ましくは2つの吸引チューブを、備え、前記吸引チューブは、特に前記吻合を形成して前記アンビル及びステープラーを除去した後に、前記吸引チューブの下流に前記ステントの外側で延びることができ、前記吸引チューブの開放端は、前記ステントの内壁と前記ステントの内壁を覆う内部フィルムとの間に形成された真空チャンバーに、前記ステントの内側において、開口していて、前記フィルムは、好ましくは、前記シースの延長部を構成し、前記吸引チューブは、前記第1のガイドチューブの内部に、オプションでは一部又は全体が前記ステントの内部に、収納され、好ましくは折り畳まれ、より好ましくは螺旋状に巻き付けられ、前記吸引チューブの下流端は、前記第1のガイドチューブ又は前記第1の接続部品に接続され、前記吸引チューブは、前記第1のガイドチューブの近位端又は前記第1の接続部品に可逆的に取り付けられた前記アンビルを除去することによって、前記ステントの下流に展開されるようにできることを特徴とする場合に特に有利である。
【0028】
吸引チューブの開放端は、好ましくは、複数の穴によって穴が開いた前記チャンバー内のチューブの末端部分を有する。
【0029】
2本の吸引チューブを使用すると、固定する力が高まり、例えば第1の吸引チューブが詰まった場合に、第1の吸引チューブの故障から保護される。
【0030】
より具体的には、本発明による複合的な使用準備の整った装置は、以下の連続する工程が実行される本発明による複合的な外科用装置を使用して、外科治療方法で実施することができる。
S1)前記外科用装置は、吻合の位置の上流にある腸の一部にある腹部経路によって導入器を使って腸に導入され、導入器は、第1のガイドチューブを備えるか又は第1のガイドチューブに取り付けられ、前記アンカー部材は、前記第1のガイドチューブ内でプッシャーを作動することによって吻合の位置の上流で解放される。
S2)前記導入器の、前記第1のガイドチューブ以外の複数の部品又は前記第1の接続部品以外の複数の部品であって、複数の部品のそれぞれに前記シース及び前記吸引チューブが取り付けられている又は複数の部品の一方に前記シースが他方に前記吸引チューブが取り付けられている複数の部品が、腸から除去される。
S3)前記第1のガイドチューブの近位端に又は前記第1の接続部品に可逆的に固定されたステープラーアンビルが挿入される。
S4)吻合領域の腸組織の切開及び吻合の形成は、アンビルと協働してステープラーでステープラー留めすることによって実行される。
S5)アンビルに取り付けられたステープラー、ステープラー自体が前記第1のチューブ又は前記第1の接続部品に取り付けられている、が除去され、それにより、前記シース及び前記吸引チューブが展開する。
S6)肛門外口を通過した後、前記外部シースの下流端及び前記吸引チューブの下流端は、好ましくははさみを用いて、前記肛門外口の外側で、前記第1のガイドチューブ又は前記第1の接続部品から外される。
S7)吸引チューブの下流端は、真空チャンバー内の真空を維持することができ、それゆえ前記アンカー部材の移動を防止することができる、患者の外部の装置に接続される。
【0031】
この方法は、大腸又は結腸、直腸、又は肛門管の吻合を一時的に保護して、吻合瘻のリスクを防止又は軽減するのに特に役立つ。この場合、好ましくは、前記吻合の上流の前記固定位置と前記吻合との間の距離は、少なくとも10cmに等しい。より具体的には、吻合と固定位置との間の距離は最大で20cmである。
【0032】
以下に説明するように、本発明による装置は、吻合が形成される前に装置を留置可能であるので、WO2013/014355等の以前の設計で必要とされたものと比較して、一方では寸法が小さく、それゆえ吻合の位置の上流のより短い距離で留置されるステント及びシースを実装することを可能にする。その距離は、具体的にはわずか10cmから20cmである。
【0033】
ここで使用される「吻合保護」という用語は、腸管通過が再開されたときの吻合の保護を意味する。
【0034】
「下流」及び「上流」は、ここでは、腸管通過の上流から下流への移動方向、及び関連する装置が腸内に配置されて機能を果たすときの位置を指す。前記シースの「下流端」とは、吻合の完了後にステープラーを除去して展開された後、前記ステント内に展開されることが意図された端であり、第1のガイドチューブの内壁に固定されるためにこの下流端が初期に上流端に近づいても、前記ステント内に展開されることが意図された端であることが理解される。
【0035】
「近位」及び「遠位」という用語は、ここでは、患者の体内への初期の導入の位置に関連する、関連する部材内の又は関連する部材の位置を指し、実際には、ここでは、導入器の部材に関する導入器のハンドルにも関連する。近位端及び上流端は、肛門外口又は吻合の下流にある腸の一部を通って導入するための下流端及び上流端にそれぞれ対応する。
【0036】
本発明によるこの場合、導入器の第1の変形可能なガイドチューブ及び前記第2の硬質ガイドチューブの一部のみが、吻合の上流にある腸の一部の管腔に導入され、第2の硬質ガイドチューブの残りの部分及びハンドルは腸の外側に残っている。
【0037】
導入器の「第1の変形可能なガイドチューブ」という用語は、実際には、前記シースよりも厚いエラストマー又はPU材料でできていて、外見上の90°の曲がり(une courbure a 90°externe)を形成できるまでその長手方向の軸に対して曲げることによって変形可能である、半柔軟なチューブを意味する。この第1の変形可能なガイドチューブには目盛が付いており、解放される前に留置位置を確認できる。
【0038】
より具体的には、既知の方法で、前記シースは、前記内部シースの前記長手方向の個々の端で、密封固定手段によって、好ましくはエラストマー接着剤の溶融接合又は環状接合によって、前記アンカー部材に密封状態で固定され、前記内部シースと前記第1の壁との間の真空チャンバーを画するように、前記一時アンカー部材は吸引チューブと呼ばれる前記柔軟な又は半硬質チューブに結合され、前記アンカー部材の外側で延び、前記吸引チューブの開放端は前記真空チャンバーに開口する。
【0039】
第1の実施形態では、前記シースの下流端及び前記吸引チューブの下流端は、前記第1のガイドチューブの遠位端に接続され、前記第1のガイドチューブの近位端(又は下流端)は、前記吻合の位置の上流に前記保護装置を導入するために導入器の第2の硬質ガイドチューブの遠位端(又は上流端)に固定されており又は可逆的に固定でき、その後、前記吻合を形成するために前記アンビルに可逆的に固定できる、第2の接続部品を備える。
【0040】
第2の接続部品は、吻合の位置の上流に保護装置を導入するために前記第1のガイドチューブ及び前記第2の硬質ガイドチューブを接続し、次に導入器を除去するために前記第1のガイドチューブ及び前記第2の硬質ガイドチューブを接続解除してアンビル及びステープラーを使用するために、導入器の第2の硬質ガイドチューブの遠位端に前記第1のガイドチューブが固定されており又は可逆的に固定できる。
【0041】
この第1の実施形態では、近位端に第2の接続部品を備える前記第1のガイドチューブは、吻合の形成中は腸に挿入されたままであり、アンビルとの接続により吻合の形成後にステープラーが除去されると腸から引き出され、これによって、前記ステントの下流における前記シース及び前記吸引チューブの完全な広がり及び展開が、前記第1のチューブとのそれらの接続により実現されうる。
【0042】
より具体的には、この第1の実施形態では、前記シースの下流端及び前記吸引チューブの下流端は、接着又はねじ込みによって、前記第1のガイドチューブの遠位端(又は上流端)に接続されている。
【0043】
この第1の実施形態では、より具体的には、シース及び吸引チューブは、それらの下流部を除いて、全体がステント内に配置されており、具体的には折り畳まれるか巻かれている。これらの下流部は、ステントの下流端においてステントから離れており、ステントの上流の前記第1のガイドチューブの上流端に接合されている。シース及び吸引チューブのこれらの外部部分は、ステントと第1のガイドチューブの内壁との間に挿入されている。
【0044】
より具体的には、この第1の実施形態では、前記第2の接続部品は、アダプターに固定されており又は可逆的に固定でき、アダプター自体がステープラーアンビルに可逆的に固定できる。
【0045】
より具体的には、この第1の実施形態では、前記第2の接続部品は、アダプターにねじ込み、接着、締め付け、又は磁気接続によって、固定されており又は可逆的に固定でき、前記アダプターは、接着、締め付け、又は磁気接続によって、それ自体が可逆的にステープラーアンビルに固定できる。
【0046】
さらに具体的には、この第1の実施形態では、前記第2の接続部品は、
・前記第2の硬質ガイドチューブの遠位端に配置された第1の相補的なねじ込み部と、次に、
・前記アダプターの遠位端に配置された第2の相補的なねじ込み部と、
ねじ込むことによって協働することができるねじ込み部を備える。
【0047】
以下のことが理解される。
・前記吻合が形成される前に前記吻合の位置の上流にある腸内において前記ステントの導入及びその後の固定ができるように、前記プッシャーによる保護装置の導入から解放の間、前記第2の接続部品は前記第2の硬質ガイドチューブの遠位端に可逆的に取り付けられ、
・前記吻合の位置の上流にある腸内において前記ステントが固定された後、前記ステープラーを用いて前記吻合が形成されるように、アンビルを可逆的に取り付けるために前記プッシャーを除去した後に、前記第2の接続部品は前記アンビル又は前記アダプターに可逆的に取り付けられる。
【0048】
より具体的には、前記アダプターの平坦な近位部分は、前記アンビルの平坦な前面への接着による取り付けに適している。
【0049】
第2の実施形態では、前記シースの下流端及び好ましくは前記吸引チューブの下流端は、前記第1の接続部品に接続され、前記第1の接続部品の少なくとも1つの近位端が前記ステントの下流端の外側に配置される。
【0050】
より具体的には、この第2の実施形態では、前記シースの下流端及び好ましくは前記吸引チューブの下流端は、前記第1のガイドチューブから独立した前記第1の接続部品の遠位部分に、好ましくは前記ステントの下流端の内側に配置された又は配置されるよう適合された筒状遠位部分に、接続されていて、前記第1の接続部品の近位部分は、前記ステントの外側及び下流端に配置されていて、前記ステントは、好ましくは前記筒状遠位部分よりも直径が大きい平坦な近位面を有する。
【0051】
したがって、初期及び導入段階の間、前記第1の接続部品は、前記第1のガイドチューブの内側に配置される。
【0052】
より具体的には、この第2の実施形態では、シース及び吸引チューブは、その嚥下部を除いてステントの内側にすべて格納され、嚥下部はその嚥下端でステントから出て、ステントの嚥下端に対して押し付けられた第1の接続部品に接合されている。
【0053】
この第2の実施形態では、保護装置全体及び前記第1の接続部品は、第1のガイドチューブ及び導入器から独立している。
【0054】
より具体的には、前記シースの下流端及び前記吸引チューブの下流端は、接着又はワイヤーによって前記第1の接続部品に接続されている。
【0055】
さらに具体的には、この第2の実施形態では、前記第1の接続部品は、前記保護装置が前記吻合の位置の上流に導入されたときに、好ましくは接着、ねじ込み、締め付け、又は磁気結合によって、前記第1のガイドチューブ内のプッシャーロッドの停止部に可逆的に固定されるように適合されている。
【0056】
さらに具体的には、この第2の実施形態では、前記第1の接続部品は、接着、ねじ込み、締め付け又は磁気結合によって、好ましくは接着によって、前記アンビルに可逆的に直接取り付けられることに適している。
【0057】
この実施形態では、吻合が形成される前に吻合の位置の上流に保護装置を導入した後、導入器を腸から完全に除去でき、腸に導入されたままの第1の接続部品のみが吻合を形成する目的でアンビルに固定され、ステープラーとアンビルとの接続により吻合が形成された後にステープラーが除去されたとき、前記第1の接続部品が腸から引き出され、これによって、前記第1の接続部品とのそれらの接続により前記ステントの下流において前記シース及び前記吸引チューブの完全な展開を実現できる。
【0058】
以下のことが理解される。
・前記吻合が形成される前に前記吻合の位置の上流にある腸内において前記ステントの導入及び固定ができるように、前記プッシャーによる保護装置の導入から解放の間、前記第1の接続部品は前記プッシャー停止部に可逆的に取り付けられ、
・前記吻合の位置の上流にある腸内において前記ステントが固定された後、ステープラーを用いて前記吻合が形成されるように、前記導入器を完全に除去した後に、前記第1の接続部品は前記ステープラー又は前記アダプターに可逆的に取り付けられる。
【0059】
さらにより具体的には、両方の実施形態において、前記第1のガイドチューブの遠位端は柔軟な保持部によって閉じられ、前記保持部は、プッシャーロッド停止部による推力がない場合に、前記第1のガイドチューブ内部に前記保護装置を保持でき、前記保持部は、弾性的に変形することができ、前記プッシャーロッド停止部による前記推力の影響下で前記保護装置が抜け出るようにすることができる。
【0060】
さらにより具体的には、本発明による複合的な外科用装置は、前記保護装置と、前記保護装置を前記吻合の位置の上流に留置することを可能にすることができる導入器と、を備え、前記導入器は、固定され、及び/又は前記導入器の以下の2つの部分と協働することができる、ハンドルを備える。
(b1)第1の変形可能なガイドチューブであって、前記第1の変形可能なガイドチューブの内部で、前記第1の変形可能なガイドチューブの遠位端の近くで、前記ステントが径方向の圧縮状態に保持され、前記第1の変形可能なガイドチューブの近位端は、前記ハンドルと一体の第2の硬質ガイドチューブに固定されている、第1の変形可能なガイドチューブと、
(b2)プッシャーであって、前記プッシャーは、前記プッシャーの長手方向の軸に対する曲がりの形を変更可能なプッシャーロッドと、前記プッシャーロッドの遠位端にある前記プッシャー停止部と、を備え、前記プッシャーは、第2の硬質ガイドチューブ及び前記第1の変形可能なガイドチューブの内部において前記ハンドルから延びていて、前記プッシャーロッドの近位端は、前記第1の変形可能なガイドチューブに対する前記プッシャーロッドの相対的な並進を手動で制御することによって、前記ハンドルと協働するように適合されている、プッシャー。
【0061】
より具体的には、前記プッシャーロッドは、仮想の長手方向の軸XX’に沿って螺旋状に巻かれており、同一直径で同軸の互いに接した複数の周回部を有する、鋼のワイヤーで形成された螺旋状のロッドであり、前記互いに接した複数の周回部の前記直径により、前記長手方向の軸に対する曲がりの形を変更可能であり90°の屈曲を形成する曲がりを実現可能な変形可能ロッドが形成されている。
【0062】
さらにより具体的には、前記ステントは、その長手方向の端部の一端に少なくとも1つの引き出し輪、好ましくはその長手方向端部の両端のそれぞれに2つの輪を備える。
【0063】
本発明による複合的な外科用装置の新規な構造的特徴に由来する、ステントを固定し、吻合を形成するための方法の有利で新規な特徴は、
・吻合の位置の上流に保護装置を固定し、外科用ステープラーによって吻合を形成した後、単一の動作でシースと吸引チューブを展開し、ステープラーを除去することと、
・導入器が新規に形成された吻合を通過しないことと、
・手術時間の短縮と、である。
【0064】
より具体的には、前記吸引チューブは半硬質チューブであり、特にPE又はPPでできており、形状を変えずに、患者の肛門外口から前記アンカー部材まで腸内を延びることができる長さを有し、前記注入-吸引チューブの長さは好ましくは少なくとも20cm、より具体的には50cmから150cmにあり、前記吸引チューブの患者の外にある自由端が、後述するように、気体流体もしくは液体流体、特に空気もしくは冷たい液体の吸引又は注入のための装置に接続される。
【0065】
より具体的には、外部シースの長さは前記アンカー部材が固定位置にあり、その下流に展開されているときに、吻合を保護し、肛門外口から突出する。
【0066】
前記外部シースは、エラストマーでできていることによって、腸壁と同様に、前記シースを形作るエラストマー材料の特性である径方向及び長手方向に伸縮自在な特性を有し、シースは、径方向及び長手方向の弾性特性を有する。シースのこれらの径方向及び長手方向への弾性特性は、結腸壁のそれと同様である。
【0067】
好ましい実施形態では、前記第1の壁の前記延在部分は、前記第1の壁の長手方向の上流端から、円筒形の延在部分の直径よりも小さい直径を有する所定外形の(profilee)下流端部分まで延び、前記第1の壁の下流端の径方向の拡張が最大であるときの外直径は20mmから40mmであり、第1の壁の前記所定外形の下流端の長さは10mmから30mm、好ましくは15mmから25mmであり、好ましくは前記端部分の直径は、前記第1の壁の前記延在部と前記下流端との間で徐々に減少する。
【0068】
より具体的には、前記一時的なアンカー部材は腸内プロテーゼであり、アンカー部材の前記第1の壁は螺旋状のワイヤー、好ましくは金属ワイヤーのメッシュで形成される。次に、知られたように、金属ワイヤーの交差角度が変化することによって、前記螺旋状のワイヤーのメッシュの網目のひし形又は平衡四辺形の幅を変化させることができ、径方向の拡張はその結果である。
【0069】
好ましくは、前記アンカー部材は、環境温度20℃に少なくとも等しい温度、特に人体の温度でのみで径方向の弾性によって拡張する材料でできており、前記アンカー部材は、前記環境温度より低い温度、好ましくは5℃より低い温度では前記径方向に収縮した状態にある。筒状の材料は、環境温度に応じて自動的に直径を変化させることが理解される。
【0070】
より具体的には、前記アンカー部材は腸内プロテーゼであり、前記アンカー部材の前記第1の壁は螺旋状の糸、好ましくはニチノール製の糸のメッシュで形成される。ニチノールは環境温度(25℃)以上の温度で、温度に応じて徐々に径方向に拡張する特性を有する合金である。それによって、より低い温度、具体的には保存時の4℃で、収縮した形状を保つことができる。低温で一旦収縮すると、導入チューブ内で収容されて前記導入器によって腸内に導入されるのに十分な時間、収縮した状態にとどまる。腸内に一旦放出されると、より高い環境温度、すなわち人体の温度の効果によって、プロテーゼは徐々に径方向に拡張する。実際に、ニチロール製のステントは、この合金の形状記憶によって、周囲温度に応じて合金の形状と剛性を変えることができる。具体的には、周囲温度が15℃より低いとニチロールは柔軟で柔らかくなる。したがって、真空チャンバーに0℃から15℃の温度の冷たい液体を注入することによってステントを柔らかくすることができ、例えば、それが吻合や狭窄した区間を通過するときに移動を容易にすることができる。
【0071】
好ましくは、前記シースは、壁の厚さが0.01mmから1mmの生体適合性合成材料、好ましくは厚さが0.05mmから1mmのシリコーン又はプリウレタンタイプのエラストマー材料でできており、好ましくは径方向及び長手方向の弾性特性を有し、少なくとも前記外部シースが形状記憶特性と非接着特性を有する。
【0072】
エラストマーでできていることによって、前記外部シースは、腸壁と同様に、前記外部シースを形作るエラストマー材料の特性である径方向及び長手方向に伸縮自在な特性を示し、シースは径方向及び長手方向への弾性特性を示す。外部シースのこれらの径方向及び長手方向への弾性特性は、結腸壁のそれと同様であり、アンカー部材の移動期間、すなわち少なくとも6日から10日の期間にわたって、前記外部シース内の適切な腸管通過を実現する。
【0073】
エラストマー製の外部シースの長手方向の弾性は、何らの困難なく、腸のそれよりも大きくすることができる。それどころか、肛門を通過した外部シースの部分を引っ張って、シースを切除し直腸内に引っ込めて戻すことができるという長所を有する。その径方向の弾性によって、外部シースの前記長手方向端が、径方向への拡張の程度によらず、前記アンカー部材の前記端に固定され続ける。
【0074】
一方、外部シースの厚さの特徴が、その弾性と相まって形状記憶特性を与える。「形状記憶特性」の語は、ここでは、前記外部シースを構成するエラストマー材料が、折り曲げられて変形した後に自然に当初の形状に戻ることを意味する。外部シースは長いので、外部シースが折り曲げられた場合にも、移動の障害物を形成することなく材料が自然に元の縦長の形状に戻るために、これらの形状記憶特性は重要である。これは、アンカー部材解放後の移動中に実際に起こってもよい。
【0075】
「非接着特性」の語は、前記外部シースを構成するエラストマー材料が、折り曲げられた際にも外部シース内壁の対向する2つの表面が互いに接着せず、通過するガスや物質に対する抵抗を生じないような接着係数を有することを意味する。
【0076】
また、次のことが理解される。
・前記外部シースの直径は、静止状態で、前記中空アンカー部材が径方向に収縮した状態での前記減少した外直径と実質的に少なくとも等しく、静止状態の腸の直径よりも小さく、好ましくは前記外部シースの前記静止状態での直径は静止状態の腸壁の直径に実質的に等しい。そして、
・前記外部シースは、それが固定された前記アンカー部材の端から下流へ、前記吻合の上流の固定位置と好ましくは肛門外口に達する下流位置との間の距離に対応する長さにわたって延びている。
【0077】
知られたように、金属ワイヤーの交差角度が変化することによって、前記螺旋状のワイヤーのメッシュの網目のひし形又は平衡四辺形の幅を変化させることができ、径方向の拡張はその結果である。
【0078】
好ましくは、そして知られたように、ステントの螺旋状のワイヤーのメッシュのデザインと形状は、前記ステントの直径が変化してもその長さの変化が最小になるように、好ましくは径方向に圧縮されたときに実質的に長さが変化しないようになっている。
【0079】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の添付図面を参照して、以下の説明からより明らかになるであろう。以下の説明は、例示的であり網羅的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1A、1B及び図1Cは本発明による保護装置5の概略図を表す。これらの図は、ステント1の下流に展開した、シース2及び吸引チューブ3の側面図(図1A)と、ラッソの輪6bがあるステント1の上流端又は遠位端の正面図(図1B)と、ステント1、シース2及び吸引チューブ3のそれぞれの配置を表し、吸引チューブ3はステント壁とシース2の内部2aとの間の真空チャンバー4に開口している、保護装置5の長手方向の断面図と、を含む。
図2は、分解された導入器10の様々な部品を示す。
図2Aは、腸の上流部100aに挿入された第1のガイドチューブ12を備えた導入器10を示す。
図2Bは、プッシャーロッド15(図2Bでは見えない)の推力による第1のガイドチューブ12からのステントの解放を示す。
図3A及び図3Bは、螺旋形状を有する変形可能なプッシャーロッド15bの詳細を、側面図(図3A)及びプッシャーロッド15bの端部の1つの正面図(図3B)で、示す。
図4Aから図4Cは、アンビル8を配置し、アンビル8と協働するステープラー9を用いて腸の上流部100aと下流部100bとの間で吻合101をステープラー留めする様々な工程を示す。
図5A図5B図6及び図7Aから図7Dは、実施例1の実施形態に関する。
図5A及び図5Bは、第1のチューブ12の遠位端においてステントが圧縮されていて、第1のチューブ12内のステントの内部でシース2及び吸引チューブ3が折り畳まれていて、シース2及び吸引チューブ3の下流端は第1のチューブの遠位端に接着され、保護装置5がプッシャー15の停止部15bによって第1のガイドチューブ12から押し出される準備ができている、保護装置5の概略断面図(図5Aでは部分的に分解)の2つの変形例を示す。
図6は、外側に解放されたステント1を概略的に示しており、シース2及び吸引チューブ3が取り付けられている第1のガイドチューブ12が除去されることによって、ステントが解放されてステント1の下流にシース2及び吸引チューブ3が展開した後に、第1のガイドチューブ12が導入器の残りの部分から分離され、プッシュロッドが退いている。
図7Aから図7Cは、吻合が形成される前に、アンビルを第1のガイドチューブ12の近位端に配置するための様々な工程を示す。
図7Dは、吻合形成後に第1のチューブ12に取り付けられたステープラーを除去することによってシース2が展開できることを示す。
図8A図8B図9A図9B図10Aから図10C図11A、及び図11Bは、実施例2の実施形態を表す。
図8A及び図8Bは、ステント1の下流において第1のガイドチューブから独立した第1の接続部品11に吸引チューブ3及びシース2を取り付けるための2つの変形例を示す。
図9A及び図9bは、ステント1が第1のガイドチューブ12の遠位端にあり、シース2及び吸引チューブ3がアダプター11に取り付けられており、アダプター11自体がプッシャー15の停止部15bに可逆的に取り付けられている、保護装置5を示す。
図10A図10B及び図10Cは、ステント1が解放され、第1の接続部品11に接続されたシース2及び吸引チューブ3が部分的に展開した後、第1のガイドチューブ12を含む導入器10が除去される様々な工程を示す。図10Bは、アンビル8が第1の接続部品11に接近することを示す。図10Cは、吻合がステープラー9で形成される前に腸の上流部10aにおいてアンビル8が固定されることを示す。
図11A及び11Bは、吻合101が形成されるときのシース2の下流端及びチューブ3の下流端にアンビル8が取り付けられたステープラー9を示し(図11A)、吻合101が形成された後、ステープラーを除去し、第1の接続部品11から分離した後のステープラー9を示す(図11B)。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下の実施例1及び実施例2の2つの実施形態において、図2図2A図2B図3A、及び図3Bを参照して以下に記載されるような導入器の一部にパッケージされた、WO2013/014353に記載されるタイプの図1Aから図1Cの吻合保護装置5は、図4Aから図4Cを参照して説明される吻合を形成するために使用される。
【0082】
吻合保護装置5は、ステント1を有するアンカー部材を備え、ステント1の内壁は柔軟な内部シース2aに覆われており、内部シース2aは環状シール4aと4bとの間で環状チャンバー4を画し、環状シール4a及び4bは内部シース2aと穴のあいたステント壁との間を密封する。内部シース2aは、柔軟な筒状の壁を形成する密封フィルムを構成し柔軟な外部シース2によって延ばされ、外部シース2は前記ステントの長手方向において前記アンカー部材の外側に延びる。したがって、ステントの内壁の円筒形の内表面の全長は、内部シース2aを形成する独立したシール層によって2倍になり、前記内部シース2aの長手方向の両端のみが、前記内部シースの前記長手方向の個々の端での溶融によって得られるエラストマー環状シールによって密封されて、前記アンカー部材1に取り付けられる。
【0083】
よく知られたように、特許WO2013/014353に示されているように、好ましくは、ステント1はその上流端及び下流端に末広がり形状のフランジを含む。
【0084】
内部シース2aは、ステントが張らないように過度に伸ばされていないので、前記内部シース2aとステントの最大の外直径との間の距離は、好ましくは0.2mmから10mm、より好ましくは1mmから5mmであり、前記内部シース2aと前記ステント壁との間の空間は、真空チャンバー4と呼ばれるチャンバーを定義することが理解される。
【0085】
本発明による保護装置5は吸引チューブ3と呼ばれる柔軟な又は半硬質チューブをさらに備え、吸引チューブ3は前記ステントの外側にある下流において延び、内部シース2aとステント1の壁との間の真空チャンバー4に開口し、吸引チューブ3の上流部分は複数の穴を備え、該上流部分は装置の長手方向XXにおいて前記チャンバー4の実質的に全長にわたって延びる。吸引チューブ3は、チューブ3が肛門外口を通して導入される場合、内部シース2aの下流端においてエラストマー環状シールを通して密封されて通過することによって前記真空チャンバーに開口する。前記吸引チューブ3及び前記外部シース2は、前記ステントの同じ下流端から前記ステントの外側に延びる。
【0086】
吸引チューブ3はチャンバー4に空気を注入又は吸引することに使用され、腸壁100aをステント1の外側に引き寄せ、より一般的には腸壁100aに対するステント1の固定特性を変更する。
【0087】
チャンバー4内にある吸引チューブ3の一部3aは、ステント1の内側又は前記外部シース2の外側に結合することができる。
【0088】
あるいは、外部シース2は、その上流端において同じエラストマーの融着接合部4a及び4bに取り付けられてもよく、又はその長さの短い部分に重ねることによってステントの長手方向の下流端における外表面に取り付けられてもよい(図示せず)。
【0089】
ステントは、径方向に収縮状態に圧縮されることができ、径方向の圧縮から解放されると径方向に最大限拡張した状態をとることができるように、径方向の弾性特性を付与する、螺旋状のニチノール製の金属ワイヤーのメッシュで形成されたタイプであり、前記複数の穴があいた第1の壁の第1の外直径は、
・前記第1の壁の前記径方向に収縮した状態における、16mmである最小の外直径、と
・前記第1の壁の前記径方向に最大限拡張した状態における、37mmである最大の外直径、との間で制御下で変化可能である。
【0090】
上記の直径の寸法データは、直腸を含む間の様々な位置で、腸内壁の粘膜10に対して装置を固定するのに適当な値に対応する寸法である。ステントは、30°の角度で編まれたニチノール製の0.32mmワイヤーのメッシュでできており、流通部で直径34mm、末広がり形状の端部で直径37mmであり、長さ100mmである。
【0091】
ステントの近位部分及び遠位部分、ならびに該当する場合はフランジ(図示せず)には、引っ張られているステントの直径を小さくするためにラッソワイヤー6a及び6bがそれぞれ備わっている。これらのラッソワイヤー6a及び6bは内視鏡を介して挿入された専用のクランプ又はフックを用いてつかむことができる。
【0092】
外に延びる前記シース2は、吻合と上流の固定位置との間の距離をカバーする長さ、すなわち、少なくとも10cmの長さを有する。
【0093】
シース2は放射線不透過性である生体適合性合成材料で作られ、特に18%BaSO4を含むTPU90AEで作られ、その寸法特性は、厚さ100μm、静止長400mm(ステントの内部部分を除く)、外直径37mmである。
【0094】
Pebax(Rマーク)エラストマー材料(ARKEMA社、フランス)で作られた前記吸引チューブ3は、内部シース2aと同じ融着接合部4a及び4bによってステントの両端においてステントに取り付けられ、少なくとも吻合と上流の固定位置との間の距離をカバーする長さ、すなわち、少なくとも10cmの長さを有する。その特徴は、長さ500mm±2mm;厚さ05mm;内直径2mm;及び外直径3mmである。
【0095】
前記吸引チューブ3の長手方向の外部の自由端は、遮断装置を有する接続部品に可逆的に接続され、遮断装置は、チャンバー4内の真空度を示すための装置を備えた逆流防止弁を有する。
【0096】
ステント1、外部シース2、及び注入-吸引チューブ3は、エラストマー材料で作られた変形可能な半硬質プラスチックチューブ11に包まれる。半硬質プラスチックチューブ11は以下、変形可能な第1のガイドチューブ12と呼ぶ。この第1のガイドチューブ12は、以下に説明する導入器10の一部である。
【0097】
ステントは、変形可能な前記第1のガイドチューブ12の上流の遠位端に収縮した状態で(径方向に圧縮されて)導入され、前記外部シース2及び前記吸引チューブ3は、一部がステント内に、一部が導入器10の第1のガイドチューブ12内に、いくつか重ねられた層状に折り返されて配置される。
【0098】
外部シース2及び吸引チューブ3の下流端の固定は実施例1及び実施例2の2つの実施形態で異なり、第1のガイドチューブ11は以下に説明するように2つの実施形態の間で異なる特徴的な実装態様を有する。ステントは、カットアウトタブで作られたチューリップ12aと呼ばれる装置によって第1のガイドチューブ12の内側に保持され、チューリップ12aは第1のガイドチューブ12の上流端又は遠位端の通路を塞ぎ、チューリップ12aは後述するプッシャー停止部による推力がない場合にステントが外れるのを防ぐ。前記タブは前記推力の影響下で弾性変形可能であり、前記推力はステントを第1のガイドチューブ12の外に排出することを可能にする。
【0099】
導入器10は、第2のガイドチューブとも呼ばれる第2の硬質チューブ13に取り付けられているハンドル14を備え、第2の硬質チューブ13の遠位端は第1のガイドチューブ12との接続部13aが末端である。この接続部13aは外側へ凸状に湾曲し、第1の変形可能なガイドチューブ12及び第2の硬質ガイドチューブ13よりも直径が大きく、停止部として機能する。
【0100】
ハンドル14上の圧力ボタン又はプッシュボタン14aによる作動手段は、プッシャー15のプッシャー停止部15bが末端であるプッシャーロッド15aの長手方向の並進を制御する。プッシャーロッド15a及びプッシャー停止部12bは、第2の硬質チューブ13の内部で同軸上に配置される。プッシャーロッド15aの近位端は、ハンドル14のプッシュボタン14aと協働する。プッシャーロッドの遠位端及びプッシャー停止部は、第1の変形可能なガイドチューブ12の内部で相対的に相互作用し、プッシャーロッド及びプッシャー停止部が作動することによって、ステントを第1の変形可能なガイドチューブ12の上流端(遠位端)から押し出すことができる。
【0101】
プッシャー停止部15bは、初期では、第1の変形可能なガイドチューブ12の内部のステントのすぐ下流に配置されている。
【0102】
以下の実施例1及び実施例2の2つの実施形態では、上記のように径方向に圧縮された保護装置5を収容する導入器の第1の変形可能なガイドチューブ12が、腹部において、吻合が形成されるべき位置101で区分された腸の上流部100aに導入される。この場合、留置位置は吻合の上流10cmから20cmの距離にある。
【0103】
この段階では、ステントならびに外部シース2及び吸引チューブ3は、ステントの内部に静止して収納され、少なくとも部分的には第1の変形可能なガイドチューブ12の内部に静止して収納されている。ステント1は、初期の形態では、導入器の中に閉じられて収納されており、ステント1は、変形可能なガイドチューブ11の直径まで、すなわち具体的には10mmまで減少した直径を有する。
【0104】
ステントは、第1の変形可能なガイドチューブ12の外で腸の上流部100aの管腔内に解放されると、徐々に最終的な直径に戻る。外科医が腸壁越しにステントを手で挟むことよって、ステントをしかるべき場所で一時的に保持することができる。その後、導入器の少なくとも一部は、外部シース2及び吸引チューブ3がステントの下流において広がったり展開したりすることなく除去される。しかし、これらの部材は吻合範囲まで部分的に展開できる(ステントはこの範囲よりも大きい10cmから20cmの間で解放される)。これによって、吻合が形成され、その後、外部シース及び吸引チューブがステントの下流においてより十分に広がり展開する。ステントは、徐々に最終的な直径に戻りながら、この段階で第1変形可能ガイドチューブ12の外側で腸の管腔内に解放され、理想的にはその後、吻合が形成される。
【0105】
前記第1の変形可能なガイドチューブ12は、内直径10mm、外直径17mm、及び少なくとも長さ70cm、好ましくは少なくとも長さ100cm、であり、5cmごとに目盛りが付けられている。前記第1の変形可能なガイドチューブ12は、挿入及び除去時の摩擦を制限するPebax(Rマーク)素材で作られている。
【0106】
第2の硬質チューブ13は、長さ176mmであり、直径53mmの突出部を有する凸状に湾曲した接続部13aを含み、長さ46mmのストッパーを形成する。第2の硬質チューブ13は中央ガイド溝13bを有し、中央ガイド溝13bは内部プッシャーロッドの並進を制御する。
【0107】
前記プッシャー15のシャフト15aは、ステンレス鋼で作られ、停止部15bの前方で長さ487mmを有する。ロッド15aは、仮想縦軸XX’に沿って螺旋状に巻かれ、互いに接した複数の周回部を有する、直径1.4mmのワイヤーで形成されたロッドであり、互いに接した複数の周回部の直径は、外直径7mmである変形可能なロッドを形成する。このようなロッド15aは、曲がりの形を変更して最大90°の屈曲を可能にすることができる。
【0108】
図4Aから図4Dは、アンビル8及び円形ステープラー9を用いて吻合を形成することに関する様々な工程を示す。アンビル8は、腸の上流部100aの自由端における吻合の位置101のすぐ上流にある腸の上流部100aに挿入される。次に、腸のこの自由端の結紮は、アンビル8の環状断面部分8aの後ろのシャフト8bの周りにある巾着8’で行われる。次に、ステープラー9は腸の下流部100bに導入され、ステープラー9はアンビルの環状部分8aを覆うために環状断面の中空本体9bを備え、シャフト8b内で軸方向の中空(図示せず)と協働することができる軸方向のフィンガー9aを含み、これによって、図4Dに示すように、アンビル8及びステープラー9の部品を腸から除去する前に、腸の上流部100aと腸の下流部100bとの間の吻合101でステープルを行うために、ステープラー9をアンビル8と連携させることができる。図4Bから図4Dでは、ステープラー9は概略図として、腸の下流部の下流に示されていて、直腸を介して最初に実際に導入されることが理解される。特に、COVIDIEN(フランス)社のEEA(Rマーク)ステープラーが使用され、このステープラーは、ハンドル9dと、ステープルを制御するためのアンビル8と連携するステープラー部品9bにハンドル9dを接続するために腸の湾曲に追従できる変形可能なダクト9cとを備える。
【0109】
より正確には、次の一連の工程が実行される。
1)罹患した腸は、線形ステープラーを使用して切除され、閉鎖部100dを形成し、腸の患部の下流100bにある腸を区分する。
2)巾着8’を患部の上流に位置する腸に当てて、切断する。
3)円形ステープラーのアンビル8が腸の上流部100aに挿入され、巾着8’がその中心軸8bの周りに締められ、結び付けられる。
4)円形ステープラーの本体9bは、その閉鎖端100dまで(肛門外口を通して)腸の下流部100bに挿入される。
5)円形ステープラーの中心軸9aは、貫通によって腸の下流部の壁を通して押し出される。
6)円形ステープラーの中心軸9aは、アンビルの中心軸8bに接続される。
7)互いに接合された2つのピン8a及びピン9aがステープラーの本体に挿入され、これにより、アンビル部分がステープラーの本体部分に取り付けられる。
8)101において互いに接合された2つの腸部位100a及び腸部位100bの壁がステープラーで留められ、円形断面に切開される。プッシャー末端の停止部15bはPebax(Rマーク)素材でできており、直径及びロッドの長手方向の厚さは10mmである。
【0110】
実施例1及び実施例2の2つの実施形態では、ステープラー留めが行われた後にアンビルを除去することによって、外部シース2及び吸引チューブ3が広げられ、ステントの下流に延ばされる。
【0111】
保護装置の除去は、吻合部の治癒後に行うのが理想的である。吻合部の治癒の標準的な期間は14日である。
【0112】
引き出しは2通りの方法で行うことができる。
a)内視鏡処置中の逆転による除去。この場合、ステントの遠位(又は上流)端にあるラッソの輪6bを鉗子でつかむ。これは、ステントの直径を小さくする効果がある。ステントが十分に径方向に収縮されたら、ラッソワイヤーを引っ張ることにより、ステントをひっくり返すことができる。これにより、ステントが反転又は裏返しされ、組織から徐々に引っ張られる。
b)引き出しの2番目の方法には、引き出しチューブの使用が含まれる。この場合、外部シースと吸引チューブは、引き出しチューブに挿入される。ステントの近位(又は嚥下)端にあるラッソの輪6aを鉗子でつかむ(これは内視鏡の使用によって導かれる)。これは、(径方向の収縮により)ステントの直径を小さくする効果がある。ステントが十分に収縮すると、ステントを除去チューブにスライドさせることができる。収縮チューブを前進させると、組織を緩めてステントを無傷で回収できる。次に、ステントを含む引き出しチューブが肛門経路によって除去される。
【0113】
実施例1及び実施例2の2つの実施形態では、導入器のいくつかの構成部材の接続構成が、互いの間で、又は保護装置1との間で異なり、特に、外部シース3の及び吸引-注入チューブ4の下流の長手方向の端部は、異なる導入器の部材に接続されている。外部シース2及び吸引チューブ3の下流端は、実施例1の実施形態における前記第1のガイドチューブ12の遠位端に、及び第1の接続部品11に取り付けられ、第1の接続部品11は、実施例2の実施形態におけるプッシャー停止部15bに可逆的に取り付けられることができる。
【実施例
【0114】
実施例1
図5A図5B図6図7A、及び図7Bでは、本発明による複合的な装置の第1の実施形態が示され、シース2及び吸引チューブ3の下流端は、第1の変形可能なチューブ12の上流端又は近位端の近くの2b-3bに固定される。
【0115】
図5Aでは、シース2及び吸引チューブ3は、ステント1の内側で折り畳まれ、ステントの下流でシール4bを越えて突出し、第1のガイドチューブ12の上流端を外側から、シース2の端部及び吸引チューブ3の端部と接合させる。そして、吸引チューブ3は、第1のガイドチューブ12の上流端又は近位端の近くの2b-3bにおいて、第1のガイドチューブ12の内壁に接着されている。
【0116】
図5Bは、ステント1の内側にシース2及び吸引チューブ3のいくつかの折り目がある実施形態を概略的に示し、シース2及び吸引チューブ3は、ステント1の外壁と第1のガイドチューブ12の内壁の間に挿入されることによって第1の変形可能なチューブ12の内壁に接合する。図5Bでは、ステント1の外側におけるシース2及び吸引チューブ3の配置を示すために、ステント1と第1のガイドチューブ12の内壁との間の空間を誇張することによって、第1のガイドチューブ12の内側でのステント1の配置が概略的に示されている。しかし、実際には、ステント1は、シース2がこの初期段階でそれらの間に挿入され押し込められている状態で、第1のガイドチューブ12の内壁を押す径方向の圧縮状態にある。
【0117】
この実施形態では、プッシャー15の停止部15bは、ステントの直径よりもわずかに大きい断面直径を有し、したがって、導入器10のハンドル14で作動されるプッシャー15の並進推力の影響下で、第1の変形可能なガイドチューブ12の近位端12aの出口に向かってステントを排出することができる。
【0118】
図6は、図7Aから図7Dに関連して以下で説明される吻合の完了後、第1のチューブ12が腸から除去される状況が図7Dに示されるものであるとき、ステント1の下流のシース2及び吸引チューブ3が完全に展開することを示す。実際には、この除去は、ステープラーが肛門外口から出るまで行われる。この時点で、図7Dに示されるように、シース2及び吸引チューブ3は、それらを第1のチューブ12、第1のチューブ12は第2の接続部品12bによってステープラー9に取り付けられている、の複合的な部品から分離するためにはさみ16で切断される。
【0119】
この実施形態では、図7Aから図7Cに示されるように、第1の変形可能なガイドチューブ12の近位端は、実際には、第2の接続部品12bと呼ばれる部品を備え、第2の接続部品12bは、アダプター7と呼ばれる部品の相補的なねじ込み部7aと協働してねじ込み可能な内部のねじを備える。アダプター7は、例えばアンビル8の前面8cとの可逆的な結合によって固定することができる。
【0120】
この実施形態では、第2の接続部品12bは、図2に示すように、最初に、相補的なねじ込み部13bを第2の硬質ガイドチューブ13の遠位端にねじ込み、図2A及び図5Aの構成に到達することにより、導入器10を受け入れる働きをする。図2A及び図5Aでは、停止部15bは、第1のガイドチューブ12の内部のステント1の下流端のそばにある。このとき、プッシャーロッド15aは、第2の硬質ガイドチューブ13に沿ったくぼみ13cを介して、ハンドル14に対する第2の硬質ガイドチューブ13の相対的な並進によって作動する。この並進は、図2Bに示されるように、第1のガイドチューブ12からステント1を押し出すために、プッシャーロッド14aの作動によって制御される。この時点で、第2の接続部品12bは、腸の上流部100aのほぼ自由端に位置し、それゆえ、図7Aから図7Cに示すように、アダプター7の介在を介してアンビル8を受け入れる位置にある。次に、図4Aから図4Cを参照して説明したように、ステープラー9を用いて吻合を形成する。次に、第1のガイドチューブ12-アンビル8-ステープラー9は、図6及び図7Dに示される構成へと、肛門外口で患者の外側から除去される。図7Dでは、ステープラー9は、直腸を介して腸から実際に除去されているという理解の下、腸の下流部100bの下流で概略図として示されている。
【0121】
この実施形態では、好ましくは、シース2及び吸引チューブ3は、2b及び3bの変形可能チューブ12の端部に直接取り付けられず、縫合糸(図示せず)等の結束を介して取り付けられる。
【0122】
実施例2
図8A図8B図9A図9B図10A図10B図10C図11A、及び図11Bは、本発明による複合的な装置の第2の実施形態の際立った特徴を示す。
【0123】
この第2の実施形態では、シース2の下流端及び吸引チューブ3の下流端は、ステント1の下流端のすぐ外側に配置された第1の接続部品11に取り付けられる。
【0124】
図8A及び8Bは、ステント1内部のシース2及び吸引チューブ3の配置の2つの変形例を示す。いずれの場合でも、シース2及び吸引チューブ3は、初期にはステント内部に配置される。図8Aの第1の好ましい変形例では、吸引チューブ3及びシース2は、第1の接続部品11の遠位端で筒状部分11aに単に取り付けられ、ステント1の内部で折り畳まれ、吸引チューブ3は図8Bの第2の変形例のように筒状部分11a上に巻き付けられない。この第2の実施形態における本発明による複合的な装置の実装の様々な段階は、図8Bのこの第2の変形例に関して示されているが、図8Aの変形例に置き換えることができる。接続部品11の筒状部分11aは、初期にステント1の下流端でステント1の内側にはめ込み、より大きな直径の部品11bは、挿入段階のためのプッシャーロッドの停止部15bの支持体として機能し、その後、ステープラー留めをして吻合を形成する段階のためのアンビル8の前面8cに対する接続部品11の可逆的な固定に機能する。
【0125】
この実施形態では、本発明による複合的な装置は、保護装置5及び第1の接続部品11の部品を備え、第1の接続部品11は第1のガイドチューブ12から独立している。したがって、第1のガイドチューブ12は、図9Aに示すように、導入器10の第2の硬質ガイドチューブ13の遠位端へと、接続部13aにおいて不可逆的に固定することができる。
【0126】
図9A及び図9Bは、初期にプッシャーロッド15aの遠位端の停止部15bが第1の接続部品11の平坦な近位面11bに対して当てられ、プッシャーロッド15の並進によって第1のガイドチューブ12からステント1を押し出すことを示す。次に、図10Aに示すように、導入器10を腸の上流部100aから除去して、吻合の位置101に第1の接続部品11を残す。図10Bに示すように、部品11が吻合の位置に至るまで、導入器10を予備的に部分的に除去する期間において、停止部15aが第1の接続部品11に可逆的に接着され、シース2及び吸引チューブ3を部分的に展開できることが有利である。この時点で、アンビル8は、第1の接続部品11に、例えば可逆的な結合によって、可逆的に固定される。その後、図11A及び図11Bの状態に至るまで、実施例1のように及び図4Aから図4Cに示されるように、吻合が形成される。図11A及び図11Bの状態において、第1の接続部品11-アンビル8-ステープラー9についている部品は除去され、シース2及びキューブ3が肛門外口までステント1の下流及び吻合101の下流で完全に展開され、肛門外口においてシース2及び吸引チューブ3ははさみ16を用いて第1の接続部品11から切り離される。図11A及び図11Bでは、腸の下流部100bの下流におけるステープラー9が概略的に示されているが、ステープラー9は、実際にはハンドル9dを用いて直腸を介して腸から挿入及び除去され、ハンドル9dは直腸の外側に留まっている。
【0127】
簡略化された変形例(図示せず)では、初期に柔軟なシース2と2つの吸引チューブ2が前記第1チューブ12内に配置されているが、完全にステントの外側にあり、ステントの下流において前記ステントは前記第1のガイドチューブ内で径方向に圧縮されている。2つの吸引チューブ2は、前記ステントに対して径方向反対に、及び、シースの外側に、延びることができるように配置される。
図1A
図1B
図1C
図2
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B