(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】疎油性ポリアミド微細繊維、方法、フィルター媒体及びフィルター要素
(51)【国際特許分類】
D01F 6/90 20060101AFI20240123BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
D01F6/90 301
B01D39/16 A
D01F6/90 311E
(21)【出願番号】P 2020526602
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 US2018065271
(87)【国際公開番号】W WO2019118636
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-01
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】シェノイ, サレシュ, エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイク, トマス, ムーア
(72)【発明者】
【氏名】ゴーツ, マシュー, ピー.
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-511477(JP,A)
【文献】特表2004-530002(JP,A)
【文献】特表2004-508168(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102953146(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 - 41/04
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 9/04
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形成性ポリアミドと;
微細繊維中に組み込まれたフルオロケミカルウレタン添加剤と
を含む微細繊維であって、
前記フルオロケミカルウレタン添加剤が、1種又はそれ以上のペルフッ素化アルキル基及び/又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を含み、且つそれぞれのアルキル又はヘテロアルキル基が、スルホンアミド(-SO
2NR
2-)基、カルボキサミド(-C(O)NR
3-)基、カルボキシル基(-C(O)O-)又はスルホニル基(-SO
2-)(式中、R
2及びR
3は独立して水素又はアルキルである)に結合しており、
前記微細繊維は10μm
以下の平均直径を有する静電紡糸された繊維である、微細繊維。
【請求項2】
繊維形成性ポリアミドに対する前記フルオロケミカルウレタン添加剤の量が少なくとも10:100である、請求項1に記載の微細繊維。
【請求項3】
前記フルオロケミカルウレタン添加剤が、存在する唯一の添加剤である、請求項1に記載の微細繊維。
【請求項4】
コア相及びコーティング相を含み、前記コア相が前記繊維形成性ポリアミドを含み、且つ前記コーティング相が前記フルオロケミカルウレタン添加剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の微細繊維。
【請求項5】
繊維形成性ポリアミドを提供することと;
フルオロケミカルウレタン添加剤を提供することと;
複数の微細繊維を形成するために有効な条件下で前記繊維形成性ポリアミド及び前記フルオロケミカルウレタン添加剤を組合せ、前記フルオロケミカルウレタン添加剤が前記微細繊維中に組み込まれることと
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の複数の微細繊維の製造方法であって、
前記フルオロケミカルウレタン添加剤が、1種又はそれ以上のペルフッ素化アルキル基及び/又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を含み、且つそれぞれのアルキル又はヘテロアルキル基が、スルホンアミド(-SO
2NR
2-)基、カルボキサミド(-C(O)NR
3-)基、カルボキシル基(-C(O)O-)又はスルホニル基(-SO
2-)(式中、R
2及びR
3は独立して水素又はアルキルである)に結合している、方法。
【請求項6】
濾過基材と、前記基材上の請求項1から4のいずれか一項に記載の複数の微細繊維を含む層とを含むフィルター媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月13日に出願された米国仮特許出願番号第62/598,303号明細書の利益を主張するものであり、この明細書は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーウェブは、静電紡糸、回転紡糸、遠心紡糸、溶融紡糸、押出溶融紡糸、エアレイド加工又はウェットレイド加工によって製造されてきた。そのようなフィルターの濾過効率は濾過媒体の特性を示し、且つ可動的な流体流から除去される微粒子の留分と関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他の各種物質と混合又はブレンドされたポリマー材料を想定する、微細繊維(fine fiber)技術は公知である。ある種の開示された繊維は、軸コア又はポリマー材料を含む。フェノールオリゴマー又はフルオロポリマー成分などのコーティング材料の層で軸コアを取り囲んだものも見ることができる。これらの微細繊維材料の多くは、多くの濾過用途に関して適切な性能を有するが、フィルターが広範囲の環境条件を受ける用途においては、機械的安定性が必要とされ、繊維特性の改良がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の開示は、フルオロケミカルウレタン添加剤を含む繊維形成性ポリアミドから形成されるユニークな微細繊維材料を提供する。
【0005】
一実施形態において、繊維形成性ポリアミドと;微細繊維中に組み込まれたフルオロケミカルウレタン添加剤とを含む微細繊維が提供される。いくつかの実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、そのような添加剤を含まない微細繊維と比較して、微細繊維の疎油性及び疎水性を強化するために有効な量で存在する。本明細書中、「強化(enhancing)」は、既存の疎油性若しくは疎水性を改善すること、及び/又は疎油性若しくは疎水性を生じることを意味する。
【0006】
本明細書の開示は、微細繊維の製造方法を提供する。
【0007】
本明細書の開示の一実施形態において、繊維形成性ポリアミドを提供することと;フルオロケミカルウレタン添加剤を提供することと;複数の微細繊維を形成するために有効な条件下で繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤を組み合わせることとを含む、微細繊維の製造方法が提供される。
【0008】
本明細書の開示は、本明細書に開示された方法に従って調製される微細繊維も提供する。
【0009】
本明細書の開示は、濾過基材と、基材上に配置された本明細書に記載の複数の微細繊維を含む層とを含むフィルター媒体も提供する。
【0010】
本明細書の開示は、本明細書に記載のフィルター媒体を含むフィルター要素も提供する。
【0011】
本明細書においては、「微細(fine)」繊維は、10ミクロン以下の平均繊維直径を有する。このことは、典型的には、本明細書に開示の複数の繊維のサンプルが、10ミクロン以下の平均繊維直径を有するということを意味する。ある種の実施形態においては、そのような繊維は、5ミクロンまで、4ミクロンまで、3ミクロンまで、2ミクロンまで、1ミクロンまで、0.8ミクロンまで又は0.5ミクロンまでの平均直径を有する。ある種の実施形態においては、そのような繊維は、少なくとも0.05ミクロン又は少なくとも0.1ミクロンの平均直径を有する。
【0012】
「繊維形成性(fiber-forming)」ポリアミド(例えばホモポリマー又はコポリマー)は、いずれの添加剤も存在しない時に微細繊維を形成することができるものである。
【0013】
「アルキル(alkyl)」という用語は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を意味する。アルキル基は、線形、分岐、環式又はその組合せであることが可能である。(例えば、「ペルフルオロアルキル」の場合などの基又は部分に対する記載における)「ペルフルオロ-(perfluoro-)」及び「ペルフッ素化(perfluorinated)」は、C-H結合中の全ての水素原子がC-F結合によって置き換えられるように完全にフッ素化された基又は化合物を意味する。別途指定されない限り、アルキルは、20個までの炭素原子、12個までの炭素原子、10個までの炭素原子、5個までの炭素原子を含むことができる。別途指定されない限り、アルキルは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子又は少なくとも3個の炭素原子を含むことができる。
【0014】
「ヘテロアルキル基(heteroalkyl group)」という用語は、NR1(式中、R1はH又はアルキル基である)、O又はSなどのヘテロ原子で置き換えられた少なくとも1個の-CH2-を有するアルキル基を意味する。アルキル基は、線形、分岐、環式又はその組合せであることが可能である。(例えば、「ペルフルオロヘテロアルキル」の場合などの基又は部分に対する記載における)「ペルフルオロ-(perfluoro-)」及び「ペルフッ素化(perfluorinated)」は、C-H結合中の全ての水素原子がC-F結合によって置き換えられるように完全にフッ素化された基又は化合物を意味する。別途指定されない限り、ヘテロアルキルは、20個までの炭素原子、12個までの炭素原子、10個までの炭素原子、5個までの炭素原子を含むことができる。別途指定されない限り、ヘテロアルキルは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子又は少なくとも3個の炭素原子を含むことができる。
【0015】
本明細書に記載の式中に基が1回より多く存在する場合、特に明記されるか否かにかかわらず、それぞれの基は、「独立して(independently)」選択される。例えば、2個より多いR基が式中に存在する場合、それぞれのR基は、独立して選択される。さらに、これらの基に含まれるサブグループも独立して選択される。
【0016】
「含む(comprises)」という用語及びそれの関連語は、それらの用語が明細書及び特許請求の範囲に表れた場合、限定的な意味を有さない。そのような用語は、記述された工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群を含むが、いかなる他の工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群を排除するものではないことを意味すると理解されよう。「からなる(consisting of)」という用語は、その「からなる(consisting of)」というフレーズの後に続くものを含み、且つそれに限定されるということを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という用語は、そこの列記された要素が、必要とされるか又は必須であり、他のいかなる要素も存在しなくてよいということを示している。「実質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、そのフレーズの後に列挙されたいかなる要素も含み、且つその列記された要素のための開示の中に特定された活性又は作用を妨げないか、又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」というフレーズは、そこに列挙された要素は必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列記された要素の活性又は作用にそれらが物質的に影響をおよぼすか否かに応じて、存在させても、存在させなくてもよいということを意味する。
【0017】
「好ましい(preferred)」又は「好ましくは(preferably)」という用語は、ある種の環境において、その開示された実施形態がある種の便益を与えることができるということを示す。しかしながら、同一の環境又はその他の環境で、他の実施形態も好ましいということはあり得る。さらには、一つ又は複数の好ましい実施形態を取り上げたということが、他の実施形態は役に立たないということを意味する訳でもなく、本開示の範囲から、他の実施形態を排除しようという意図がある訳でもない。
【0018】
本明細書においては、不定冠詞の「a」や「an」、及び定冠詞の「the」という用語は、単数の実体のみを指そうとするのではなく、説明のために使用され得る具体例のタイプ全体を含む。「a」や「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1種の(at least one)」という用語と、言い換え可能に使用される。
【0019】
列記された項目の前にある、「少なくとも1種の(at least one of)」、及び「少なくとも1種の~を含む(comprises at least one of)」というフレーズは、その列挙項目のいずれか一つ、並びに、その列挙項目の二つ以上の任意の組合せを示す。
【0020】
本明細書で使用するとき、「又は(or)」という用語は、一般的に、それが通常使用される感覚で使用され、特に明確に断らない限り、「及び/又は(and/or)」も含まれる。「及び/又は(and/or)」という用語は、列挙された要素の一つ若しくは全部、又は列挙された要素の任意の二つ以上の組合せを意味する。
【0021】
本明細書においてはさらに、すべての数値は、「約(about)」という用語、好ましくは「正確に(exactly)」という用語で修飾されるとみなされる。測定された量に関連して、本明細書で使用される「約(about)」という用語は、測定の対象と使用した測定装置の精度とに対応したレベルの注意を払って、測定を実施した当業者によって予想されるように、測定量における変動を示す。
【0022】
本明細書においてはさらに、終点によって記述した数値範囲には、その範囲内に包含されるすべての数値とともに、その両端も含まれる(たとえば、1~5といった場合、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。本明細書においては、ある数字「まで(up to ~)」(たとえば、50まで)には、その数(たとえば、50)も含まれる。
【0023】
先に示した、本明細書の開示の要約は、開示される実施形態のそれぞれを記載したり、本明細書に開示のすべての実施例を表したりすることを意味するのではない。以下における記述は、説明のための実施形態をより具体的に例示するものである。本明細書を通じて、いくつかの場所で、例を列挙して案内をしているが、それらの例は、各種組み合わせて使用することもできる。それぞれの場合において、列記されたリストは、代表的な群として提供されたものであって、他を排除するためのリストと解釈してはならない。
【0024】
以下の図面を参照すれば、本明細書の開示が、より完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(A)実施例1b(添加剤を含まないNylon樹脂SVP 651「651-対照」)及び(B)実施例6b(疎油性SRC 220フルオロケミカルウレタン添加剤を含むSVP 651)からの繊維に関する繊維形態の比較を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)イメージ。
【
図2】(▲)実施例1b(添加剤を含まないNylon樹脂SVP 651「651-対照」)及び(■)実施例6b(疎油性SRC 220フルオロケミカルウレタン添加剤を含むSVP 651)から得られた微細繊維層効率(%)を示すグラフ。
【
図3】添加剤が存在しないサンプル((▲)実施例16(5分)及び実施例17(10分))と対照した、添加剤(重量比20:100のSRC 220(固体):651)を含むサンプル((■)実施例8(30秒)、実施例9(1分)、実施例10(2分)、実施例11(5分)及び実施例12(10分))における、繊維被覆の関数(紡糸分時間(分)の増加)としての(ミリバール(mbar)での)静水頭のグラフ。
【
図4】後処理されていないサンプルにおける添加剤濃度(SRC 220(固体):651重量比)の関数としての経時的水滴耐性(撥水性)。基材848=基材のみ;0:100=実施例1a;5:100=実施例4a;10:100=実施例5a。
【
図5】125℃で10分間後処理されたサンプルにおける添加剤濃度(SRC 220(固体):651重量比)の関数としての経時的水滴耐性(撥水性)。基材848=基材のみ;0:100=実施例1b;5:100=実施例4b。
【
図6】125℃で10分間後処理されたサンプルにおける添加剤濃度(SRC 220(固体):651重量比)の関数としての撥油性評価。基材848=基材のみ;0:100=実施例1b;1:100=実施例2b;2:100=実施例3b;5:100=実施例4b;10:100=実施例5b;20:100=実施例6b;50:100=実施例7b。
【
図7】後処理されたサンプルにおける微細繊維被覆の関数としての水滴耐性(撥水性)(実施例17に対する実施例8及び10~12)。(A):繊維なし-対照=基材のみ;651-10分=実施例17。(B):30秒の紡糸時間=実施例8;2分=実施例10;5分=実施例11;10分=実施例12。
【
図8】後処理されたサンプルにおける微細繊維被覆の関数としての撥油性評価(実施例17に対する実施例8~12)。(A):繊維なし-対照=基材のみ;651-10分=実施例17。(B):30秒の紡糸時間=実施例8;1分=実施例9;2分=実施例10;5分=実施例11;10分=実施例12。
【
図9】添加剤(添加剤(固体):651=重量比20:100)の種類の関数としての水滴耐性(撥水性):添加剤なし=実施例18(651-対照);SRC 220=実施例19;SRA 250=実施例20;SRA 270=実施例21;AG-E060=実施例22;AG-E800D=実施例23;AG-E090=実施例24;AG-E550D=実施例25;AG-E100=実施例26;AG-E082=実施例27。
【
図10】添加剤(添加剤(固体):651=重量比20:100)の種類の関数としての撥油性評価:添加剤なし=実施例18(651-対照);SRC 220=実施例19;SRA 250=実施例20;SRA 270=実施例21;AG-E060=実施例22;AG-E800D=実施例23;AG-E090=実施例24;AG-E550D=実施例25;AG-E100=実施例26;AG-E082=実施例27。
【
図11】標準セルロース(実施例8)及び疎油性セルロース(実施例28)を使用する基材化学の関数としての撥油性評価。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書の開示は、微細繊維中に組み込まれた(すなわち、それぞれの微細繊維のポリアミド中で混合された)フルオロケミカルウレタン添加剤を含む繊維形成性ポリアミドから形成されるユニークな微細繊維材料を提供する。そのような添加剤は、(そのような繊維が以前に示し得なかった疎油性及び疎水性の特性を含む)強化された疎油性及び疎水性を有する微細繊維を製造するための表面機構を提供する。
【0027】
フルオロケミカルウレタン添加剤
典型的に、フルオロケミカルウレタン添加剤は、そのような添加剤を含まない微細繊維と比較して、添加剤が微細繊維の疎油性及び疎水性を強化する(例えば改善する又は生じる)ように選択される。
【0028】
ある種の実施形態において、適切なフルオロケミカルウレタン添加剤は、特に繊維形成性ポリアミドとの混合物中にある場合、膜形成性ポリマーである。ある種の実施形態において、適切なフルオロケミカルウレタン添加剤は、膜形成の際に繊維形成性ポリアミドとの相分離がわずかに生じるか又は全くないように、少なくとも部分的に相溶性である(例えば少なくとも部分的に混和性である)。相分離がわずかにあるか又は全くない場合、比較的透明な(透明又は半透明の)膜が形成される。
【0029】
フルオロケミカルウレタン添加剤は、静電紡糸などのプロセス用のポリアミド材料に関して選択された溶媒中で、それが好ましくは溶解可能又は分散可能であるように選択される。これによって、繊維形成の前に添加剤及びポリアミドが一緒に混合され、そして得られる繊維が、ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤の混合物から製造されるという結果がもたらされる。
【0030】
ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は表面移動剤である。表面移動剤は、典型的に繊維形成の間に、複数のフルオロケミカルウレタン添加剤がそれぞれの微細繊維の本体中に組み込まれているが、微細繊維の表面へと移動することができる化合物である。そのような表面移動は、所望であれば、繊維形成後の熱処理によって強化され得る。
【0031】
ある種の実施形態において、適切なフルオロケミカルウレタン添加剤は、1種又はそれ以上のペルフッ素化アルキル基及び/又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を含み、且つそれぞれのアルキル又はヘテロアルキル基は、スルホンアミド(-SO2NR2-)基、カルボキサミド(-C(O)NR3-)基、カルボキシル基(-C(O)O-)又はスルホニル基(-SO2-)(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合している。ある種の実施形態において、それぞれのアルキル又はヘテロアルキル基は、スルホンアミド(-SO2NR2-)基又はカルボキサミド(-C(O)NR3-)基(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合している。ある種の実施形態において、アルキル及びヘテロアルキル基は、2~12個の炭素原子を含み、ある種の実施形態においては2~6個の炭素原子を含む。
【0032】
フルオロケミカルウレタン添加剤の例は、米国特許第6,646,088号明細書、同第6,803,109号明細書、同第6,890,360号明細書及び同第8,030,430号明細書並びに米国特許出願公開第2003/0149218号明細書、同第2004/0147188号明細書、同第2005/0075471号明細書及び同第2008/0229976号明細書に記載されている。
【0033】
さらに、ある種の実施形態において、そのようなフルオロケミカルウレタン添加剤は、典型的にアクリレート又はメタクリレート官能基を含まない。
【0034】
ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、3000ダルトン未満の重量平均分子量を有する。
【0035】
フルオロケミカルウレタン添加剤の例としては、3M Company St.Paul,MN)からの商品名SRC 220防汚性添加剤及びシーラーで入手可能であるものが挙げられる。これは、それによってコンクリート、天然の石及びグラウトなどの多孔性硬質材料が防汚性となる、建築用塗料及びコンクリートコーティングの製造における使用のために販売される水性ベースのフッ素化ポリウレタン分散体である。
【0036】
ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、存在する唯一の添加剤である。したがって、ある種の実施形態において、微細繊維は、微細繊維中に組み込まれた繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤から本質的になる。すなわち、ある種の実施形態において、微細繊維の表面又はバルク特性を強化する他のいずれの添加剤も存在しない。ある種の実施形態において、微細繊維は、微細繊維中に組み込まれた繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤からなる。すなわち、ある種の実施形態において、繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤以外の他のいずれの成分も存在しない。
【0037】
所望であれば、フルオロケミカルウレタン添加剤の種々の組合せが使用されてもよい。ある種の実施形態において、種々のフルオロケミカルウレタン添加剤は、それらの間に化学結合を形成するように互いに反応しない。
【0038】
典型的に、フルオロケミカルウレタン添加剤は、反応性添加剤を含まない繊維と比較して、繊維の疎油性及び疎水性の特性を「強化する」ように選択される。これは、1種又はそれ以上のフルオロケミカルウレタン添加剤が、フルオロケミカルウレタン添加剤を含まない繊維と比較して、繊維が既に有する疎油性及び疎水性を単に強化するように選択されることを意味する。これは、フルオロケミカルウレタン添加剤を含まない場合にはそのような繊維が有さないであろう疎油性及び疎水性を、得られる微細繊維に提供するように、1種又はそれ以上のフルオロケミカルウレタン添加剤が選択されることも意味する。
【0039】
ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、実施例の項目の撥油性試験法(Oil Repellency Test Method)による少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも6の疎油性レベルを示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる。
【0040】
ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、実施例の項目の水滴試験法(Water Drop Test Method)による疎水性の挙動を示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる。
【0041】
使用されるフルオロケミカルウレタン添加剤の量は、所望の結果が得られるように、当業者によって容易に決定されることができる。典型的に、繊維形成性ポリアミドに対するフルオロケミカルウレタン添加剤の量は、少なくとも2:100又は少なくとも5:100又は少なくとも10:100又は少なくとも20:100(ポリマーに対する添加剤固体の重量比)である。典型的に、繊維形成性ポリアミドに対するフルオロケミカルウレタン添加剤の量は、100:100まで、又は50:100まで(ポリマーに対する添加剤固体の重量比)である。
【0042】
繊維形成性ポリアミドポリマー
繊維を形成することができる多くの種類のポリアミドが本開示の繊維中でポリマー材料として有用である。
【0043】
ポリアミドポリマーの1つの有用な種類はナイロン材料である。「ナイロン」という用語は、すべての長鎖合成ポリアミドの一般名である。典型的には、ナイロンの命名法には、一連の数字が含まれていて、たとえばナイロン-6,6では、その出発物質がC6ジアミンとC6二酸であることを表している(一番目の数字がC6ジアミンを表し、二番目の数字がC6ジカルボン酸化合物を表している)。また別なナイロンは、少量の水の存在下にε-カプロラクタムを重縮合させることによって作製することができる。この反応によって、ナイロン-6(環状ラクタム(ε-アミノカプロン酸とも呼ばれる)から作製)が形成されるが、これは直鎖状のポリアミドである。さらには、ナイロンコポリマーも考えられる。ナイロン物質の例としては、以下のものが挙げられる:ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、それらの混合物又はコポリマー。
【0044】
コポリマーは、たとえば各種のジアミン化合物、各種の二酸化合物、及び各種の環状ラクタム構造物を、反応混合物の中で組み合わせ、次いで、ポリアミド構造の中にモノマー物質がランダムの位置しているナイロンを形成させることにより、作製することができる。たとえば、ナイロン-6,6-6,10物質は、ヘキサメチレンジアミンと、C6二酸及びC10二酸のブレンド物とから、製造されたナイロンである。ナイロン-6-6,6-6,10は、ε-アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンと、C6二酸及びC10二酸物質のブレンド物とを共重合させることによって製造されたナイロンである。本明細書中、「コポリマー(copolymer)」という用語には、2種以上の異なるモノマーから製造されたポリマーが含まれ、且つターポリマーなども含まれる。
【0045】
所望であれば、ポリアミドの種々の組合せを使用することができる。本実施形態の好ましいポリマーにはナイロンが含まれる。
【0046】
典型的に、本開示の繊維中で使用されるそのような繊維形成性ポリアミドは、フルオロケミカルウレタン添加剤と非反応性であるが、反応性が必ずしも除外されるわけではない。したがって、ある種の実施形態において、フルオロケミカルウレタン添加剤は、繊維形成性ポリアミドと化学結合しない。
【0047】
微細繊維の形成
本明細書の開示の微細繊維は、繊維形成性ポリアミドを提供することと;フルオロケミカルウレタン添加剤を提供することと;複数の微細繊維を形成するために有効な条件下で繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤を組合せ、フルオロケミカルウレタン添加剤が微細繊維中(すなわち、それぞれの微細繊維のバルク又は本体中)に組み込まれることとを含む方法を使用して調製することができる。これは、一緒に強力に混合することによってフルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドが組み合わせられ得、次いで別のステップにおいて繊維へと形成され得ることを意味する。代わりに、混合物はなお形成されるが、強力な混合が繊維形成の前に完了し得ないように、フルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドを組み合わせた直後に繊維形成が生じてもよい。したがって、フルオロケミカルウレタン添加剤は、単にそれぞれの個々の微細繊維上にコーティングを形成するものではない。
【0048】
ポリマー材料(例えば単一ポリマー又はポリマー混合物若しくはブレンド)は、溶液又は分散体中でそれらをフルオロケミカルウレタン添加剤と組み合わせることができるように選択される。そのような溶液又は分散体のpHは、好ましくは6~8の範囲内にある。
【0049】
ある種の実施形態において、微細繊維は静電紡糸されるか、又は遠心力を使用して紡糸される。したがって、ある種の実施形態において、ポリマー材料及びフルオロケミカルウレタン添加剤は、静電紡糸のために適切な少なくとも1種の共通溶媒又は溶媒ブレンド中に分散可能であるか、又は溶解可能である。それらは、繊維が形成可能であるように十分な時間に、溶液又は分散体中で実質的に安定であるべきである。
【0050】
適切な溶媒の例としては、極性プロトン性及び非プロトン性溶媒、例えば水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、アセトン、酢酸エチルなどが含まれる。
【0051】
フルオロケミカルウレタン添加剤は表面移動剤であってよく、それによって、フルオロケミカルウレタン添加剤は、(それぞれの繊維の表面上にのみに存在するコーティングとは対照的に、)なおそれぞれの繊維の本体又はバルク中に組み込まれていながらも、それぞれの微細繊維の表面において暴露されるという結果がもたらされる。
【0052】
ある種の実施形態において、それぞれの微細繊維は、コア相及びコーティング相を含むことができ、コア相は繊維形成性ポリアミドを含み、且つコーティング相はフルオロケミカルウレタン添加剤を含む。しかしながら、それぞれの相がポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤の両方を含むことは理解されるべきである。
【0053】
ある種の実施形態において、それぞれの微細繊維は、コア相、コーティング相及び移行相を含むことができる。そのような三相繊維のいくつかにおいて、コア相は主に繊維形成性ポリアミドを含み、コーティング相は主にフルオロケミカルウレタン添加剤を含み、そして移行相は繊維形成性ポリマー及びフルオロケミカルウレタン添加剤を含む。これに関連して、「主に(predominantly)」とは、それぞれの相がポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤の両方を含むが、参照された材料がその領域の材料の主要な量(すなわち、50重量%より多い量)で特定の領域(例えば、コーティング、層又は相)に存在していることを意味する。
【0054】
ここに開示の微細繊維は、広く各種の技術、静電紡糸法、遠心すなわち回転紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法、押出紡糸法、直接紡糸法、ゲル紡糸法などを用いて作製することができる。
【0055】
微細繊維は、例えば、静電又は溶融紡糸形成の間に支持体層(すなわち基材)上に収集され、そしてしばしば繊維製造後に熱処理される。微細繊維物質の層が、透過性の粗い繊維状媒体の層(すなわち、サポート層)の第一の表面の上に、繊維の層として配されるのが好ましい。さらに、透過性の粗い繊維状物質の第一の層の第一の表面の上に配された微細繊維物質の第一の層が、50マイクロメートル(ミクロン又はμm)以下、より好ましくは30ミクロン以下、さらにより好ましくは20ミクロン以下、最も好ましくは10ミクロン以下の、全体の厚み(overall thickness)を有するのが好ましい。典型的且つ好ましくは、その微細繊維層の厚みが、その層を作製するために使用された微細繊維の平均直径の、1~20倍の範囲内(多くの場合1~8倍、より好ましくは5倍以下)の厚みである。ある種の実施形態においては、その微細繊維層が、少なくとも0.05μmの厚みを有する。
【0056】
ここに開示の微細繊維は、好ましくは静電紡糸プロセスを使用して、作製することができる。微細繊維を形成させるのに好適な静電紡糸装置は、その中に微細繊維形成性溶液が収容されているリザーバーと、エミッティングデバイス(一般的に、複数のオフセットホールを含む回転部分からなっている)とを含む。静電場の中でそれが回転するにつれて、エミッティングデバイス上の溶液の液滴が、静電場によって、捕集媒体に向かって加速される。エミッターに面するが、それから空間的に離れたところに、グリッドがあって、その上に捕集媒体(すなわち、基材又は組合わされた基材)が配置されている。そのグリッドの間を通して、空気を引き込むことができる。適切な静電電圧電源の手段によって、エミッターとグリッドとの間に、高電圧の静電電位が維持される。基材が、エミッターとグリッドとの間に位置していて、繊維を捕集する。
【0057】
具体的には、グリッドとエミッターとの間の静電電位が、材料に電荷を与え、それによって、液体が細い繊維としてそれから放出されて、グリッドに向かって引き出され、それらがグリッドに到達して、基材の上に捕集される。溶液中のポリマーの場合においては、基材へ向かって飛行中に、溶媒の一部が繊維から揮散する。溶媒が引き続き蒸発し、繊維が冷えてくると、微細繊維が、その基材繊維に接合される。静電場の強度を選択して、ポリマー物質が、エミッターから捕集媒体へ向けて加速される際に、その加速が、そのポリマー物質が極めて細いミクロ繊維又はナノ繊維構造になるのに十分となるようにする。捕集媒体の進行速度を増減させることによって、放出された繊維の形成媒体の上への堆積量を増減させることが可能となり、それによって、その上に堆積されるそれぞれの層の厚みを制御することが可能となる。
【0058】
別な方法として、微細繊維を形成させるための静電紡糸装置を、ペンダントドロップ装置、すなわちポリマー溶液を充填したシリンジとすることも可能である。シリンジに取り付けた針に高電圧を印加して、所定のポンプ速度でポリマー溶液をポンプ押出しする。ポリマー溶液の液滴が針から出てくるにつれて、静電場の影響を受けて、それがTaylorコーンを形成する。十分に高い電圧では、そのTaylorコーンから、ジェットが放出され、それが、延伸されて、微細繊維が形成され、コレクターとして機能する回転マンドレルに取り付けられた媒体の上に堆積する。静電紡糸プロセスでは通常、固形分濃度(ポリマー規準)5~20%のポリマー溶液を使用する。工業的用途においては、安全且つ容易に使用できる溶媒が望ましい。他方、そのような溶媒を用いて形成された繊維は、しばしば多種多様な環境において存続及び機能する必要がある。
【0059】
ある種の実施形態において、本明細書の開示の繊維は、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、又は少なくとも125℃の温度における繊維形成後の処理プロセスにおいて熱処理される。ある種の実施形態において、本明細書の開示の繊維は、135℃まで、又は130℃までの温度で熱処理される。ある種の実施形態において、本明細書の開示の繊維は、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、又は少なくとも5分の時間で熱処理される。ある種の実施形態において、本明細書の開示の繊維は、15分まで、12分まで、又は10分までの時間で熱処理される。典型的に、繊維は、形成後に5~10分間、125~130℃でそれらを加熱することによって処理される。そのような繊維形成後の熱処理によって、フルオロケミカルウレタン添加剤の表面移動が促進される。
【0060】
ある種の実施形態において、本明細書の開示の微細繊維は、実施例の項目の温水浸漬試験(Hot Water Soak Test)によると少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%の維持された微細繊維層効率を示す。
【0061】
ある種の実施形態において、基材上に提供された同一の一般に低い繊維被覆において(例えば5分までの典型的な静電紡糸プロセス)、フルオロケミカルウレタン添加剤を含む微細繊維は、同一微細繊維であるがフルオロケミカルウレタン添加剤を含まないものと比較して、維持された微細繊維層効率レベルの改善を示す。例えば
図2を参照のこと。
【0062】
ある種の実施形態において、基材上に提供された同一の一般に高い繊維被覆において(例えば少なくとも5分の典型的な静電紡糸プロセス)、フルオロケミカルウレタン添加剤を含む微細繊維は、同一微細繊維であるがフルオロケミカルウレタン添加剤を含まないものと比較して、水滴浸透耐性の改善を示す。さらに、同一フルオロケミカルウレタン添加剤濃度において、微細繊維は、基材上に提供された繊維被覆が増加すると(例えば典型的な静電紡糸プロセスの間)、水滴浸透耐性の改善を示す。例えば
図3を参照のこと。
【0063】
フィルター媒体及びフィルター要素
本明細書に開示の微細繊維を成形して、フィルター媒体のようなフィルター構造体とすることができる。そのような構造体においては、開示された微細繊維物質が、フィルター基材(すなわち、濾過基材又は単なる基材)の上に配される(典型的には、それらが、その上に形成され、付着する)。フィルター基材としては天然繊維及び合成繊維の基材が使用できる。例としては、以下のものが挙げられる:スパンボンド又はメルトブローン法によるサポート又はファブリック。基材は、織布又は不織布を含み得る。押出加工及び穿孔の両方を行ったプラスチックスクリーン様の材料が、フィルター基材の別な例であって、たとえば、有機ポリマーの限外濾過(UF=ultra-filtration)及び精密濾過(MF=micro-filtration)用の膜である。
【0064】
基材としては、合成繊維、セルロース系繊維、ガラス繊維又はそれらの組み合せを含み得る。合成の不織布の例としては以下のものが挙げられる:ポリエステル不織布、ナイロン不織布、ポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレン)不織布、又はそれらをブレンドした不織布。シート様の基材(たとえば、セルロース系及び/又は合成の不織ウェブ)は、フィルター基材の典型的な形態である。しかしながら、フィルター材料の形状及び構造は、典型的には、設計エンジニアにより、特定の濾過用途に合わせて選択される。
【0065】
本明細書の開示に従うフィルター媒体の構成には、第一の表面を有する、透過性の粗い繊維状物質(すなわち、媒体又は基材)の層を含むことができる。微細繊維媒体の第一の層が、透過性の粗い繊維状媒体の層の第一の表面の上に配されているのが好ましい。
【0066】
透過性の粗い繊維状物質の層には、少なくとも5ミクロン、より好ましくは少なくとも12ミクロン、さらにより好ましくは少なくとも14ミクロンの平均直径を有する繊維を含むのが好ましい。その粗い繊維が、50ミクロン以下の平均直径を有するのが好ましい。
【0067】
さらに、その透過性の粗い繊維状物質は、好ましくは260グラム/(メートル)2(g/m2)以下、より好ましくは150g/m2以下の目付け(basis weight)を有する媒体を含む。その透過性の粗い繊維状物質は、好ましくは少なくとも0.5g/m2、より好ましくは少なくとも8g/m2の目付けを有する媒体を含む。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みは、好ましくは少なくとも0.0005インチ(12ミクロン)、より好ましくは少なくとも0.001インチ(25.4ミクロン)である。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みが、0.030インチ(0.76mm)以下であるのが好ましい。典型的且つ好ましくは、その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みが、0.001インチ~0.030インチ(25~800ミクロン)である。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層が、少なくとも2メートル/分(m/min)のFrazier透過度(差圧設定:水柱0.5インチ)を有するのが好ましい。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層が、900メートル/分(m/min)以下のFrazier透過度(差圧設定:水柱0.5インチ(12.7mm))を有するのが好ましい。
【0068】
好ましい構成においては、その透過性の粗い繊維状物質の第一の層が、Frazier透過度試験によって、その構成物の残りの部分とは分けて評価した場合に、少なくとも1m/min、好ましくは少なくとも2m/minの透過度を示すであろう材料を含む。好ましい構成においては、その透過性の粗い繊維状物質の第一の層が、Frazier透過度試験によって、その構成物の残りの部分とは分けて評価した場合に、900m/min以下、典型的且つ好ましくは2~900m/minの透過度を示すであろう材料を含む。本明細書において、効率又はLEFS効率(低効率フラットシート)に言及した場合には、特に断らない限り、その言及は、本明細書に記載したようにして、ASTM-1215-89に従い、0.78ミクロン(μm)の単分散ポリスチレン球状粒子を用い、20fpm(フィート/分、6.1m/min)で測定した効率を意味する。
【0069】
ある種の実施形態において、濾過基材は、微細繊維の適用前に疎油性の特性を有する。例えば、濾過基材は本質的に疎油性であってよく(すなわち、疎油性繊維から製造されてよく)、且つ/又は、例えば疎油性処理化合物を使用して疎油性になるように処理されてもよい。一般に、疎油性材料は、表面において暴露される高密度の末端CF3ペンダント基を有するフルオロポリマーなどのフルオロケミカルである。ある種の実施形態において、濾過基材、又は表面コーティングとして濾過基材に適用される疎油性処理化合物(例えばフルオロケミカル処理化合物)は、ペルフルオロアクリレート、ペルフルオロウレタン、ペルフルオロエポキシ、ペルフルオロシリコーン、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロジオキソラン又はこれらの材料のコポリマーなどのペルフルオロポリマーから製造されてもよい。
【0070】
本質的に疎油性である材料から製造された濾過基材を使用可能であるが、典型的に、それを疎油性にさせるために、従来の濾過基材上にフルオロケミカル処理化合物がコーティングされる。コーティング材料は、例えば複数のステッププロセスを通して疎油性にさせることが可能である疎油性ポリマー又は別のポリマーであることが可能である。典型的に、液体キャリア(例えば有機溶媒又は水)中に溶解されたか、又は懸濁されたフルオロケミカル処理化合物は、浸漬又は噴霧によって従来の濾過基材に適用される。
【0071】
例示的なフルオロポリマーとしては、Cytonix(Beltsville,MD)から商品名FLUOROPELシリーズ、3M Company(St.Paul,MN)からSRA450又はSRA451、Advanced Polymer Incorporated(Carlstadt,NJ)からADVAPEL 806で入手可能であるものなどの溶媒中に溶解されたペルフルオロアクリレート;Chemours(Wilmington,DE)から商品名TEFLON AFで入手可能であるものなどの溶媒中に溶解されたペルフルオロジオキソラン;Daikin(Orangeburg,NY)から商品名UNIDYNE、Chemours(Wilmington,DE)からCAPSTONE、Huntsman(The Woodlands,TX)からPHOBOL又はAdvanced Polymer Incorporated(Carlstadt,NJ)からADVAPEL 734で入手可能であるものなどの水中に懸濁されたペルフルオロアクリレート乳濁液;及び3M Company(St.Paul,MN)から商品名SRC 220で入手可能であるものなどの水中に懸濁されたペルフルオロウレタンが含まれる。濾過基材は、P2i(Savannah,GA)からのペルフルオロアクリレートコーティングなど、プラズマ重合プロセスによってフルオロポリマーのコーティングを適用することによって疎油性にすることも可能である。
【0072】
ある種の実施形態において、非疎油性コーティングを従来の濾過基材に適用し、次いで疎油性に変性することも可能である。例えば、ポリアルコールポリマーを従来の濾過基材に適用し、そしてペルフルオロシラン又はペルフルオロアシルクロリドをこのポリマーにグラフト化させることも可能である。代わりに、ポリアミンを従来の濾過基材に適用し、そしてペルフルオロアクリレートをこのポリマーにグラフト化させることも可能である。
【0073】
濾過基材を疎油性にするために、いずれの方法も使用され、好ましくは、そのような疎油性濾過基材は、実施例の項目の撥油性試験(Oil Repellency Test)による少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5又は少なくとも6の疎油性レベルを示す。
【0074】
これらの実施形態において、微細繊維の層は、濾過基材の上に複数の微細繊維を形成させ、それによってフィルター媒体を形成させることにより製造することができる。そのフィルター媒体(すなわち、微細繊維層プラス濾過基材)から、次いで、たとえば、フラットパネルフィルター、カートリッジフィルター、又はその他の濾過構成要素も含めた、フィルター要素(すなわち、濾過要素)を製造することができる。そのようなフィルター要素の例は、米国特許第6,746,517号明細書(Bensonら);同第6,673,136号明細書(Gillinghamら);同第6,800,117号明細書(Barrisら);同第6,875,256号明細書(Gillinghamら);同第6,716,274号明細書(Goginsら);及び同第7,316,723号明細書(Chungら)に記載されている。しかしながら、フィルター材料の形状及び構造は、典型的には、設計エンジニアにより、特定の濾過用途に合わせて選択される。
【0075】
使用の間に、微細繊維の存在のため、フィルター媒体の表面上にケークとして典型的にダストが堆積する(表面濾過)。したがって、経時的にフィルター媒体の圧力低下が増加し、それによってエネルギー消費が劇的に増加し、短いフィルター寿命がもたらされる。フィルター寿命を改善する1つの方法は、圧力低下が特定の設定値に到達するように、濾過空気流と逆方向で空気を振動させることによって、(ダストケークによる)表面堆積媒体をクリーニングすることである。振動された空気はフィルター媒体を変形させ、ダストケークを移動させ、より低い圧力低下を有する「よりクリーンな媒体」をもたらし、それによってフィルター寿命が延長される。
【0076】
残念なことに、都市の煙霧、油性又はオイルミストベースのすすによって汚染された環境において、ダストは油状物質を吸収し、そして微細繊維に粘着する。これらの場合、振動された空気によってダストケークを移動させることが不可能となり得る。振動幅(又は圧力)を増加させることによって、微細繊維へのダメージ及び短いフィルター寿命をもたらす可能性がある。本明細書に記載される微細繊維は、適切な放出特性ももたらす疎油性表面特性を有する。この表面化学は、油性又はすす性ダストが微細繊維に粘着することを低減し、それによって振動プロセスの間に移動させることがより容易となるであろう。これによって、より長いフィルター寿命がもたらされる。
【0077】
例示的な繊維の実施形態
1. 繊維形成性ポリアミドと;
微細繊維中に組み込まれたフルオロケミカルウレタン添加剤と
を含む(又はそれから本質的になるか又はそれからなる)微細繊維であって、
フルオロケミカルウレタン添加剤が、1種又はそれ以上のペルフッ素化アルキル基及び/又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を含み、且つそれぞれのアルキル又はヘテロアルキル基が、スルホンアミド(-SO2NR2-)基、カルボキサミド(-C(O)NR3-)基、カルボキシル基(-C(O)O-)又はスルホニル基(-SO2-)(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合している(ある種の実施形態において、それぞれのアルキル又はヘテロアルキル基は、スルホンアミド(-SO2NR2-)基又はカルボキサミド(-C(O)NR3-)基(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合し;ある種の実施形態において、アルキル及びヘテロアルキル基は2~12個の炭素原子を含み、ある種の実施形態においては2~6個の炭素原子を含む)、微細繊維。
【0078】
2. フルオロケミカルウレタン添加剤が、そのような添加剤を含まない同一の微細繊維と比較して、微細繊維の疎油性及び疎水性を強化するために有効な量で存在する、実施形態1の微細繊維。
【0079】
3. フルオロケミカルウレタン添加剤が、存在する唯一の添加剤である、実施形態1又は2の微細繊維。
【0080】
4. フルオロケミカルウレタン添加剤が表面移動剤である、実施形態1~3のいずれか一項の微細繊維。
【0081】
5. フルオロケミカルウレタン添加剤が繊維形成性ポリアミドに化学結合しない、実施形態1~4のいずれかの微細繊維。
【0082】
6. コア相及びコーティング相を含み、コア相が繊維形成性ポリアミドを含み、且つコーティング相がフルオロケミカルウレタン添加剤を含む、実施形態1~5のいずれかの微細繊維。
【0083】
7. 繊維形成性ポリアミドがナイロンを含む、実施形態1~6のいずれかの微細繊維。
【0084】
8. ナイロンがナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、それらの混合物又はコポリマーを含む、実施形態7の微細繊維。
【0085】
9. ナイロンがナイロン-6-6,6-6,10を含む、実施形態8の微細繊維。
【0086】
10. フルオロケミカルウレタン添加剤が3000ダルトン未満の重量平均分子量を有する、実施形態1~9のいずれかの微細繊維。
【0087】
11. コア相、コーティング相及び移行相を含む、実施形態1~10のいずれかの微細繊維。
【0088】
12. コア相が主に繊維形成性ポリアミドを含み、コーティング相がフルオロケミカルウレタン添加剤を含み、且つ移行相が繊維形成性ポリマー及びフルオロケミカルウレタン添加剤を含む、実施形態11の微細繊維。
【0089】
13. フルオロケミカルウレタン添加剤が、撥油性試験(Oil Repellency Test)による少なくとも3(又は少なくとも4又は少なくとも5又は少なくとも6)の疎油性レベルを示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~12のいずれかの微細繊維。
【0090】
14. フルオロケミカルウレタン添加剤が、水滴試験法(Water Drop Test Method)による疎水性を微細繊維に提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~13のいずれかの微細繊維。
【0091】
15. フルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドが、少なくとも2:100(又は少なくとも5:100又は少なくとも10:100又は少なくとも20:100)の重量比で存在する、実施形態1~13のいずれかの微細繊維。
【0092】
16. フルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドが、100:100まで(又は50:100まで)の重量比で存在する、実施形態1~15のいずれかの微細繊維。
【0093】
17. 10ミクロン以下(又は5ミクロンまで、又は4ミクロンまで、又は3ミクロンまで、又は2ミクロンまで、又は1ミクロンまで、又は0.8ミクロンまで、又は0.5ミクロンまで)の平均繊維直径を有する、実施形態1~16のいずれかの微細繊維。
【0094】
18. 少なくとも0.05ミクロン(又は少なくとも0.1ミクロン)の平均直径を有する、実施形態1~17のいずれかの微細繊維。
【0095】
19. フルオロケミカルウレタン添加剤が膜形成性ポリマーである、実施形態1~18のいずれかの微細繊維。
【0096】
20. フルオロケミカルウレタン添加剤が繊維形成性ポリアミドと少なくとも部分的に相溶性である、実施形態1~19のいずれかの微細繊維。
【0097】
21. フルオロケミカルウレタン添加剤がアクリレート又はメタクリレート官能基を含まない、実施形態1~20のいずれかの微細繊維。
【0098】
22. そのような微細繊維が同一基材上の同一の一般に低い繊維被覆において堆積された場合、フルオロケミカルウレタン添加剤を含まない微細繊維と比較して、フルオロケミカルウレタン添加剤が、維持された微細繊維層効率レベルの改善を示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~21のいずれか一項の微細繊維。
【0099】
23. 同一量の基材上の繊維被覆において、フルオロケミカルウレタン添加剤を含まない微細繊維と比較して、フルオロケミカルウレタン添加剤が、水滴浸透耐性レベルの改善を示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~22のいずれか一項の微細繊維。
【0100】
例示的な方法の実施形態
1. 繊維形成性ポリアミドを提供することと;
フルオロケミカルウレタン添加剤を提供することと;
複数の微細繊維を形成するために有効な条件下で繊維形成性ポリアミド及びフルオロケミカルウレタン添加剤を組合せ、フルオロケミカルウレタン添加剤が微細繊維中に組み込まれることと
を含む、複数の微細繊維の製造方法であって、
フルオロケミカルウレタン添加剤が、1種又はそれ以上のペルフッ素化アルキル基及び/又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を含み、且つそれぞれのアルキル又はヘテロアルキル基が、スルホンアミド(-SO2NR2-)基、カルボキサミド(-C(O)NR3-)基、カルボキシル基(-C(O)O-)又はスルホニル基(-SO2-)(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合している(ある種の実施形態において、それぞれのアルキル又はヘテロアルキル基は、スルホンアミド(-SO2NR2-)基又はカルボキサミド(-C(O)NR3-)基(式中、R2及びR3は独立して水素又はアルキルである)に結合し;ある種の実施形態において、アルキル及びヘテロアルキル基は2~12個の炭素原子を含み、ある種の実施形態においては2~6個の炭素原子を含む)、方法。
【0101】
2. フルオロケミカルウレタン添加剤が、存在する唯一の添加剤である、実施形態1の方法。
【0102】
3. フルオロケミカルウレタン添加剤が表面移動剤である、実施形態1又は2の方法。
【0103】
4. フルオロケミカルウレタン添加剤が微細繊維中で繊維形成性ポリアミドに化学結合しない、実施形態1~3のいずれかの方法。
【0104】
5. コア相及びコーティング相を含み、コア相が繊維形成性ポリアミドを含み、且つコーティング相がフルオロケミカルウレタン添加剤を含む、実施形態1~4のいずれかの方法。
【0105】
6. 繊維形成性ポリアミドがナイロンを含む、実施形態1~5のいずれかの方法。
【0106】
7. ナイロンがナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、それらの混合物又はコポリマーを含む、実施形態6の方法。
【0107】
8. ナイロンがナイロン-6-6,6-6,10を含む、実施形態7の方法。
【0108】
9. フルオロケミカルウレタン添加剤が3000ダルトン未満の重量平均分子量を有する、実施形態1~8のいずれかの方法。
【0109】
10. 各繊維がコア相、コーティング相及び移行相を含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
【0110】
11. コア相が主に繊維形成性ポリアミドを含み、コーティング相がフルオロケミカルウレタン添加剤を含み、且つ移行相が繊維形成性ポリマー及びフルオロケミカルウレタン添加剤を含む、実施形態10の方法。
【0111】
12. フルオロケミカルウレタン添加剤が、撥油性試験(Oil Repellency Test)による少なくとも3(又は少なくとも4又は少なくとも5又は少なくとも6)の疎油性レベルを示す微細繊維を提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~11のいずれかの方法。
【0112】
13. フルオロケミカルウレタン添加剤が、水滴試験法(Water Drop Test Method)による疎水性を微細繊維に提供するために有効な量で選択され、且つ含まれる、実施形態1~12のいずれか一項の方法。
【0113】
14. フルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドが、少なくとも2:100(又は少なくとも5:100又は少なくとも10:100又は少なくとも20:100)の重量比で存在する、実施形態1~13のいずれか一項の方法。
【0114】
15. フルオロケミカルウレタン添加剤及び繊維形成性ポリアミドが、100:100まで(又は50:100まで)の重量比で存在する、実施形態1~14のいずれか一項の方法。
【0115】
16. 微細繊維が、10ミクロン以下(又は5ミクロンまで、又は4ミクロンまで、又は3ミクロンまで、又は2ミクロンまで、又は1ミクロンまで、又は0.8ミクロンまで、又は0.5ミクロンまで)の平均繊維直径を有する、実施形態1~15のいずれか一項の方法。
【0116】
17. 微細繊維が、少なくとも0.05ミクロン(又は少なくとも0.1ミクロン)の平均直径を有する、実施形態1~16のいずれか一項の方法。
【0117】
18. フルオロケミカルウレタン添加剤が膜形成性ポリマーである、実施形態1~17のいずれか一項の方法。
【0118】
19. フルオロケミカルウレタン添加剤が繊維形成性ポリアミドと少なくとも部分的に相溶性である、実施形態1~18のいずれか一項の方法。
【0119】
20. フルオロケミカルウレタン添加剤がアクリレート又はメタクリレート官能基を含まない、実施形態1~19のいずれか一項の方法。
【0120】
21. 形成後に微細繊維が熱処理される、実施形態1~20のいずれか一項の方法。
【0121】
22. 形成後に0.5~15分間、100~135℃においてそれらを加熱することによって微細繊維が熱処理される、実施形態21の方法。
【0122】
23. 形成後に5~10分間、125~130℃においてそれらを加熱することによって微細繊維が熱処理される、実施形態22の方法。
【0123】
例示的なフィルター媒体及びフィルター要素の実施形態
1. 濾過基材と、基材上に配置された本明細書に開示されたいずれかの実施形態の複数の微細繊維を含む層とを含むフィルター媒体。
【0124】
2. 微細繊維層が0.05μm~30μmの厚さを有する、実施形態1のフィルター媒体。
【0125】
3. 濾過基材が不織基材である、実施形態1又は2のフィルター媒体。
【0126】
4. 濾過基材が合成繊維、セルロース系繊維、ガラス繊維又はその組合せを含む、実施形態1~3のいずれかのフィルター媒体。
【0127】
5. 濾過基材がポリエステル不織物、ナイロン不織物、ポリオレフィン不織物又はそのブレンドされた不織物を含む、実施形態1~4のいずれかのフィルター媒体。
【0128】
6. 濾過基材がポリプロピレン不織物を含む、実施形態5のフィルター媒体。
【0129】
7. 濾過基材がスパンボンド又はメルトブロー支持体を含む、実施形態1~6のいずれかのフィルター媒体。
【0130】
8. 微細繊維層が静電紡糸層である、実施形態1~7のいずれか一項のフィルター媒体。
【0131】
9. 濾過基材が疎油性である、実施形態1~8のいずれか一項のフィルター媒体。
【0132】
10. 疎油性濾過基材が疎油性繊維を含む、実施形態9のフィルター媒体。
【0133】
11. 疎油性濾過基材がフルオロケミカル処理化合物を含む、実施形態9又は10のフィルター媒体。
【0134】
12. フルオロケミカル処理化合物がペルフルオロアクリレート、ペルフルオロウレタン、ペルフルオロエポキシ、ペルフルオロシリコーン、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロジオキソラン及びそのコポリマーから選択される、実施形態11のフィルター媒体。
【0135】
13. 実施形態1~12のいずれか一項のフィルター媒体を含むフィルター要素。
【実施例】
【0136】
この開示の目的と利点を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に記載されている特定の物質及びその量、さらにはその他の条件及び詳細が、不当にも、この開示を限定すると解釈してはならない。他に明記されない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、百分率、比率などは重量によるものであり、且つ実施例において使用される全ての試薬は、例えば、Sigma-Aldrich,Saint Louis,MOなどの一般的な化学薬品供給元から得られたか、又は入手可能であるか、或いは従来法によって合成され得る。
【0137】
【0138】
試験手順
温水浸漬試験
基材上に配置された層の形態の微細繊維のサンプルを、140°Fの温度まであらかじめ加熱された水中に浸漬させた。5分後、サンプルを取り出し、乾燥させて、米国特許第6,743,273号明細書(「Fine fiber layer efficiency retaineed」)に記載される手順に従って決定される、維持された微細繊維層効率の量を評価した。温水試験の前及び後の効率を測定することによって、維持された微細繊維層の量を算出するために、低効率フラットシート(LEFS)を利用する。本明細書中、効率が参照される場合、米国特許第6,743,273号明細書(Chungら)に記載される通り、20fpm(フィート毎分、6.1m/分)で0.78ミクロン(μm)の単分散ポリスチレン球状粒子を用いて測定されたものであった。
【0139】
維持された微細繊維の量は、微細繊維の初期量に対するパーセントとして報告され、「維持された微細繊維層効率(fine fiber layer efficiency retained)」と呼ばれる。これは、達成された架橋度が温水への攻撃/溶解からそのバルク材料を保護するために十分であったかどうかの、良好な指標を与える。
【0140】
撥油性試験(AATCC 118撥油性:炭化水素耐性試験)
その上に微細繊維が堆積されている非波型セルロース媒体のサンプル(セルロース基材LEFS=19.5%)(又はその上に微細繊維が堆積されていない非波型セルロース媒体の疎油性処理されたサンプル、実施例28)を以下の様式で撥油性に関して試験した:下記の表に示す(表面張力を減少させる)炭化水素流体の液滴を複合媒体の微細繊維上に配置し、そして30秒後に視覚的にウィッキング又は湿潤に関して試験した。浸潤又は明らかなウィッキングが観察されなかった場合、次のより高次数の液体を以前の液滴に隣接するように配置した。30秒までの時間で1種の液体が湿潤又はウィッキングを示した場合、試験を中止した。この試験によって定義される油評価は、30秒後に媒体をウィッキング又は湿潤させない最も低い表面張力を有する液体の数である。本質的に、数(油評価)が高いほど、より低い表面張力を有する油に対する撥油性が良好である。
【0141】
示された図面中、フィルター媒体上に配置された液滴は「1」試験液体から開始し、そして不合格になるまで「9」試験液体(左から右へ)までである。
【0142】
【0143】
水滴試験
その上に微細繊維が堆積されている非波型セルロース媒体のサンプル(セルロース基材LEFS=19.5%)を撥水性に関して試験した。撥油性試験で使用された方法論と同様に、複合媒体の微細繊維上に水滴を配置した。撥油性試験とは対照的に、水滴による湿潤又はウィッキングに関して、より長い期間にわたって、すなわち、水滴の配置直後、水滴の配置の5分後及び15分後に媒体を視覚的に試験した。より長い期間にわたって、水滴を蒸発させた。本明細書中、15分間にわたって湿潤又はウィッキングの明らかな徴候がない場合、媒体は撥水性(すなわち、疎水性)であると定義される。
【0144】
水浸透耐性:静水頭
Advanced Testing Instrumentsによって供給されるTexTest InstrumentsからのHydrostatic Head Tester FX3000を使用して静水頭を測定することによって、その上に微細繊維が堆積されている非波型セルロース媒体のサンプル(セルロース基材LEFS=19.5%)を水浸透撥水性に関して試験した。水滴が最初に媒体に浸透する圧力(mbar)は静水頭と呼ばれ、そして水滴浸透耐性の直接的測定である。
【0145】
調製方法
実施例1~7
アルコール(エタノール、190プルーフ)中にポリマーを溶解し、60℃まで加熱して、9%の固体溶液を作成することによって、ナイロンコポリマー樹脂(Shakespeare Co.,Columbia,SCから得られるSVP 651、45%のナイロン-6、20%のナイロン-6,6及び25%のナイロン-6,10を含む21,500~24,800の数平均分子量を有するターポリマー)ストック溶液を調製した。実施例1においては、添加剤を添加しなかった。この651/エタノール溶液は対照として使用された。毎分0.12ミリリットル(mL/分)のフローレート及び34キロボルト(kV)の電圧を使用し、この溶液を静電紡糸して濾過基材上に微細繊維の層を形成した。微細繊維の層を(回転ドラムに取り付けられた)基材材料上に収集した。次いで、微細繊維の撥水性及び撥油性に関して、複合媒体を使用した。典型的に、シリンジ及びニードル並びに10分の紡糸時間を使用する静電紡糸ペンダント液滴システムは、水滴試験及び撥油性試験の間に基材のいずれの影響も完全に被覆及び遮蔽するために十分である。基材材料は、Hollingsworth and Voseからの湿式堆積セルロース媒体(Grade FA 848)であった。
【0146】
実施例2~7に関して、(3M Companyから商品名SRC 220で入手可能な)撥油性(すなわち、疎油性)フルオロケミカルウレタン添加剤を、冷却された651/エタノール溶液に添加した。添加剤は約15%の添加剤固体含有量を有するフルオロケミカルウレタンの水性分散系であった。添加される添加剤の量は、繊維製造のために使用される最終ポリマー配合物中の(撥油性/撥水性を与える)添加剤固体の量が、SRC 220:651=1:100~50:100(重量比)の範囲であるものであった(それぞれ、実施例2、3、4、5、6、7=SRC 220(固体):651=1:100、2:100、5:100、10:100、20:100及び50:100)。非常に穏やかに溶液を撹拌し、次いで、実施例1に記載の通りに静電紡糸した。しかしながら、実施例2~7に関しては、微細繊維層を形成するために46kVの電圧を使用した。実施例1と同様に、10分間紡糸することによって微細繊維を基材上に配置した。実施例1~7のそれぞれにおいて、シートの半分を125℃において10分間、後処理(熱処理)し(本明細書中、それぞれ実施例1b~7bと記載される)、同シートの残りの半分にはいずれの種類の後処理も受けさせなかった(本明細書中、それぞれ実施例1a~7aと記載される)。
【0147】
実施例8~17
実施例8は、紡糸時間が(10分の代わりに)30秒に制限されたこと以外、実施例6b(20:100のSRC 220:651重量比、熱処理された)と同一であった。実施例9~12は、繊維が様々な時間量で堆積されたこと以外、実施例8と同一であり、実施例9、10、11及び12=それぞれ、1、2、5及び10分であった。実施例13は、紡糸時間が(10分の代わりに)30秒に制限されたこと以外、実施例1b(添加剤なし、熱処理された)と同一であった。実施例14~17は、繊維が様々な時間量で堆積されたこと以外、実施例13(添加剤なし、熱処理された)と同一であり、実施例14、15、16及び17=それぞれ、1、2、5及び10分であった。
【0148】
実施例18~27
実施例18は、実施例1bと同一であり、且つ実施例19は実施例6bと同一であった。実施例20~27は、(表1に記載される)種々の添加剤が利用されたこと以外、実施例19と同一であった:実施例20=SRA 250;実施例21=SRA 270;実施例22=AG-E060;実施例23=AG-E800D;実施例24=AG-E090;実施例25=AG-E550D;実施例26=AG-E100;及び実施例27=AG-E082。
【0149】
実施例28
実施例28は、セルロース媒体基材(Hollingsworth and Voseからの湿式堆積非波型セルロース媒体(Grade FA 848))が疎油性となるように処理されたこと以外、実施例8(20:100のSRC 220:651重量比、熱処理された、30秒の紡糸時間)と同一であった。微細繊維の適用前に、非波型セルロース媒体をフルオロポリマー乳濁液(2-プロパノール中に希釈されたUNIDYNE TG5502フルオロポリマー(Daiki,Orangeburg,NY)の10%溶液)中で浸漬コーティングすることによって処理した。次いで、コーティングされた基材を80℃のオーブン中で10分間乾燥させた。室温まで冷却後、その上に微細繊維が配置されていない基材は、撥油性試験によると8の撥油性を示した。同じく、その上に微細繊維が配置されている基材は、撥油性試験によると8の撥油性を示した。
【0150】
結果
微細繊維のバルク特性
実施例8~12において製造された微細繊維サンプルは、10ミクロン以下の平均繊維直径を有した。走査型電子顕微鏡法(SEM)の測定によると、それらは典型的に200nm~400nmの範囲の平均繊維直径を有した。温水浸漬試験を使用して、いくつかのサンプルを繊維形態及び微細繊維耐水性に関して評価した。加えて、水滴浸耐性に対する微細繊維被覆の影響を理解するために、サンプル上で静水頭測定を実行した。
【0151】
図1は、実施例1bから得られた繊維(SRC 220(固体):651=0:100)及び実施例6bの繊維(SRC 220(固体):651=20:100)のSEMイメージを比較するものである。両繊維層は、同一基材材料上に形成された。明らかに、両方の繊維形成及び得られる繊維直径は極めて類似しており、このことは、651繊維形成に及ぼすフルオロケミカルウレタン添加剤の悪影響がないことを示している。
【0152】
環境耐性
疎油性フルオロケミカルウレタン添加剤の存在によって、表面への疎油性フルオロケミカルウレタン添加剤の移動による繊維表面保護がもたらされる。環境耐性の見地から、微細繊維耐水性は、実施例6b(SRC 220(固体):651=20:100)の微細繊維に対して、実施例1b(SRC 220(固体):651=0:100)繊維の非波型フラットシートセルロース媒体における温水浸漬試験を実行することによって評価された。
【0153】
図2において、温水浸漬後に被覆がより少ない(紡糸時間がより少ない)場合、添加剤を含む微細繊維(実施例1b、正方形)は、対照、すなわち、添加剤を含まない場合(実施例6b、三角形)と比較して、維持された微細繊維層効率のレベルが改善されたことが実証される。
【0154】
図3は、(紡糸時間の増加の結果として)基材上に堆積された微細繊維(SRC 220(固体):651=20:100)の量が増加すると、静水頭(ミリバール)(実施例8~12(正方形))又は水滴浸透耐性における改善があることを示す。
図3は、基材上に提供された同一の一般に高い繊維被覆において(例えば少なくとも5分の典型的な静電紡糸プロセス)、フルオロケミカルウレタン添加剤を含む微細繊維(実施例11及び12(5分及び10分において正方形))は、同一微細繊維であるがフルオロケミカルウレタン添加剤を含まないもの(実施例16及び17(5分及び10分において三角形))と比較して、水滴浸透耐性の改善も示す。
【0155】
撥水性及び撥油性に及ぼす添加剤濃度の影響
実施例1において上記で議論された通り、10分の紡糸時間は、水滴試験及び撥油性試験の間の基材のいずれの影響も完全に被覆及び遮蔽するために十分であることが分かっていた。したがって、撥水性及び撥油性試験は、単に微細繊維の挙動を反映すると考えられる。
【0156】
図4及び5では、水滴試験を使用して、添加剤濃度の影響及び熱処理の影響が比較される。
図4は、後熱処理されない場合の撥水性を得るための添加剤の最小量(SRC 220:651重量比)を示す。
図5は、後熱処理される場合の撥水性を得るための添加剤の最小量(SRC 220:651重量比)を示す。撥水性に関して、添加剤は微細繊維表面上に存在することが必要とされる。撥水性は、典型的に、フッ素化基のより低い表面張力のため生じる。同一効果は、表面移動を促進するサンプルの後熱処理によって、より低い添加剤濃度において達成可能である。
図5は、サンプルが後熱処理される場合の、より低い添加剤濃度での
図4と同一の耐水性効果を示す(10:100(実施例5a)に対してSRC 220(固体):651=5:100(実施例4b))。
【0157】
図6は、後処理されたサンプル(すなわち、後熱処理されたサンプル)(実施例1b~7b)に関しての、撥油性試験を使用する撥油性に及ぼす添加剤濃度の影響を示す。撥水性に関して観察されたものと類似して、撥油性特徴を与えるためには繊維表面上に十分な添加剤濃度が必要とされる。しかしながら、撥油性(SRC 220(固体):651=2:100(実施例3b))に関しては、撥水性((SRC 220(固体):651=5:100(実施例4b、
図5))に関するよりも低い添加剤濃度で十分であるように思われる。
【0158】
繊維形成後の熱処理は添加剤の表面移動を改善し、それによって、撥水性及び撥油性が促進されることの可能性が高い。
【0159】
複合体油評価に及ぼす繊維被覆の影響
10分の紡糸時間は、水滴試験及び撥油性試験の間の基材のいずれの影響も完全に被覆及び遮蔽するために十分であることが分かった。
図7及び8は、撥水性及び撥油性に及ぼす微細繊維被覆の影響を示す(実施例8~12、17)。より具体的には、
図7及び8は、複合体(基材+微細繊維)の(水滴試験を使用する)撥水性及び(撥油性試験を使用する)撥油性評価における微細繊維層の影響を実証する。被覆が高いほど、微細繊維が基材を完全に被覆する。この場合、油評価は、(基材が役割を果たさないか、又は存在しないかのように)微細繊維油評価を反映する。より少ない微細繊維被覆においては、基材が寄与するか、又は支配さえする。以前に、撥油性とは対照的に、それが撥水性に関して、より高い添加剤比であることが観察された。この場合、撥水性は、撥油性(2分)に対して、より高い被覆(5分)を必要とするように思われる。これは、SRC 220添加剤のポリウレタン主鎖によるものであると考えられる。
【0160】
異なる添加剤の影響
図9及び10は、微細繊維(基材上非常に高い微細繊維被覆;紡糸時間=10分)水滴浸透及び撥油性又は油評価における種々の添加剤の影響を比較する。明らかに、SRC 220は疎水性及び疎油性基準の両方を満たす唯一の実証された添加剤である。添加剤AG-E800D及び550Dを含む繊維は、それぞれ疎水性試験(すなわち、水滴試験)に合格するが、それらは疎油性試験(すなわち、撥油性試験)には不合格である。添加剤に関して、疎油性繊維の製造のために有効となるために、添加剤が少なくとも部分的に添加剤ポリマーと相溶性である(著しい相分離が生じない)ことが仮定される。第2に、添加剤はペルフッ素化アルキル基(例えば-(CF
2)
nCF
3(式中、n=2~5))又はペルフッ素化ヘテロアルキル基を有するフルオロケミカルウレタン添加剤であるべきである。フルオロケミカルウレタン添加剤はこの基準を満たす。フルオロケミカルウレタン添加剤は、部分的に又は完全にSVP 651と相溶性である(ポリマー及び添加剤は両方とも水素結合相互作用をもたらすことができるアミド基を有し、これが少なくとも部分的な相容性を導くことに留意されたい)。したがって、試験された他の添加剤(表1参照)は全て不合格であった。
【0161】
それに限定されるように意図されないが、繊維紡糸は、添加剤(この場合、典型的にポリマー)が繊維形成性ポリマーマトリックス中で氷結する、急速プロセスであることと考えられる。焼き鈍し(熱処理)は添加剤移動を補助し、そして繊維上に完全に組織化することができる。しかしながら、添加剤の分子量次第で、それらが表面に移動したとしても、(不相容性による)ドメイン形成の傾向があり、それによって撥水性及び撥油性を提供することができない。フルオロケミカルウレタン添加剤が劇的に油評価を改善する場合、少なくとも部分的な相容性がドメイン形成を防ぐように補助し、そして相対的に低いTgを有するウレタンがより迅速に拡散して、表面に移動し、そして適切に組織化する。
【0162】
複合体油評価に及ぼす基材化学の影響
複合体撥油性を増加させるための疎油性濾過基材の使用は、実施例8と実施例28との比較によって示される。上記で実証された通り、低被覆の微細繊維の適用によって、基礎基材のものと同様の複合体油評価がもたらされる。これは、標準セルロース(実施例8)及び疎油性コーティングされたセルロース(実施例28)への低被覆における微細繊維の適用によって実証された。
図11中、疎油性微細繊維の表面被覆が低い場合、1のみの撥油性評価が生じたことが分かる(実施例8)。対照的に、同一量の疎油性微細繊維を疎油性セルロース基材に適用した場合、8の撥油性評価が生じた(実施例28)。
【0163】
本明細書に引用される特許、特許文献及び刊行物の完全な開示は、参照によって、それぞれが個々に組み込まれるかのように全体が本明細書に組み込まれる。本明細書と、本明細書中に参照によって組み込まれるいずれかの文献の開示との間に何らかの矛盾又は相違がある場合、本明細書を優先するものとする。本明細書の開示への種々の修正及び変更は、本明細書の開示の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本明細書の開示が、本明細書に明らかにされる例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されるように意図されないこと、そしてそのような実施例及び実施形態は一例として提供され、本明細書の開示の範囲は、以下の通り本明細書に明らかにされる請求項によってのみ制限されるように意図されることは理解されるべきである。