(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】少なくとも1つのバリアコート層を有する板紙構造物
(51)【国際特許分類】
D21H 19/44 20060101AFI20240123BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240123BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240123BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240123BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
D21H19/44
B32B27/12
B32B27/28 101
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/30 Z
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2020543917
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 US2019016633
(87)【国際公開番号】W WO2019160706
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504376810
【氏名又は名称】ウエストロック・エム・ダブリュー・ヴイ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジエビン・パン
(72)【発明者】
【氏名】ナターシャ・ジー・メルトン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】テレサ・クリュッグ
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-081695(JP,A)
【文献】特開2001-248097(JP,A)
【文献】特表2015-500927(JP,A)
【文献】国際公開第2017/100316(WO,A1)
【文献】特開昭63-099395(JP,A)
【文献】特表2018-505323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
B32B 1/00 - 43/00
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主側面及び前記第1の主側面の反対側にある第2の主側面を含む板紙基材、並びに前記第1の主側面の上の少なくとも1つのバリアコート層を含む板紙構造物であって、
前記バリアコート層がバインダー及び顔料を含み、前記バインダーが少なくとも20℃のガラス転移温度を有し、前記バインダーの前記顔料に対する質量比が少なくとも1:2である、食品サービス用包装のための板紙構造物。
【請求項2】
前記ガラス転移温度が少なくとも25℃である、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項3】
前記ガラス転移温度が少なくとも30℃である、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項4】
前記バインダーの前記顔料に対する質量比が1:2~9:1である、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項5】
前記バインダーの前記顔料に対する質量比が1:1~4:1である、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項6】
前記バインダーがスチレン-アクリレート、スチレン-ブタジエンゴム、エチレンアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、及びポリエステル分散体のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項7】
前記顔料がクレイを含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項8】
前記顔料がCaCO
3を含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項9】
前記顔料がクレイ及びCaCO
3を含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項10】
20g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供する、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項11】
40℃、0.41MPa(60psi)、24時間で3未満のブロッキング評点を提供する、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項12】
前記板紙基材と前記バリアコート層との間にベースコート層を更に含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項13】
前記ベースコート層がバインダー及び顔料を含む、請求項
12に記載の板紙構造物。
【請求項14】
前記第2の主側面の上に第2のバリアコート層を更に含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項15】
前記板紙基材が102μm(4ポイント)~762μm(30ポイント)の範囲のキャリパーを有する、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項16】
前記キャリパーが330μm(13ポイント)~457μm(18ポイント)の範囲である、請求項
15に記載の板紙構造物。
【請求項17】
前記板紙基材が138.3g/m
2~407g/m
2(3000平方フィートあたり85~250ポンド)の坪量を有する、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項18】
少なくとも80%の再パルプ化率を有する、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項19】
ヒートシール可能である、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項20】
前記第1の主側面の上に第2のバリアコート層を更に含む、請求項1に記載の板紙構造物。
【請求項21】
6g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供する、請求項
20に記載の板紙構造物。
【請求項22】
15g/m
2未満の30分-熱水-Cobb試験を提供する、請求項
20に記載の板紙構造物。
【請求項23】
15g/m
2未満の30分-熱コーヒー-Cobb試験を提供する、請求項
20に記載の板紙構造物。
【請求項24】
50℃、0.41MPa(60psi)、24時間で3未満のブロッキング評点を提供する、請求項
20に記載の板紙構造物。
【請求項25】
食品サービス用包装のための板紙構造物を製造するための方法であって、
バインダー及び顔料を含むバリアコーティング組成物を調製する工程であって、前記バインダーが乾燥時に少なくとも20℃のガラス転移温度を有する、調製する工程、並びに
前記バリアコーティング組成物を板紙基材に適用して第1のバリアコート層を形成する工程を含む、方法。
【請求項26】
前記第1のバリアコート層の上に第2のバリアコーティング組成物を適用して第2のバリアコート層を形成する工程を更に含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記バリアコーティング組成物を乾燥する工程を更に含む、請求項
25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる2018年2月19日出願の米国特許出願第62/632265号による優先権を主張する。
【0002】
本特許出願はコートされた板紙、より詳細には水性バリアコーティングを有する板紙構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
板紙は種々の包装用途に用いられている。たとえば、コートされた無漂白板紙は飲料容器、冷凍食品、シリアル、並びにその他の広い種類の食品及び非食品の消費財を包装するために用いられている。その他の形態の漂白及び無漂白のコートされた板紙は、食品サービス及び消費者製品における種々の包装の選択肢において用いられている。
【0004】
紙又は板紙を用いる食品用又は食品サービス用の包装には、油、グリース、水、及び/又は水蒸気へのバリア等の強化されたバリア特性が必要なことが多い。更に、多くの紙又は板紙による包装、たとえば食品又は飲料を提供するための紙又は板紙製のカップにおいては、紙又は板紙がヒートシール可能で、それによりカップ製造機でカップを形成することが可能である必要もある。ポリエチレン(PE)押し出しコート板紙は、必要なバリア特性及びヒートシール特性の両方を提供することによって、そのような用途においては現在のところまだ主流である。しかし、PE押し出しコートを用いる紙カップを含む包装は再パルプ化における困難性があり、従来の紙又は板紙のように容易にリサイクルすることができず、これらの包装が埋め立てに回されると環境についての懸念が生じる。PEのコーティング又はフィルム層を含む板紙包装を置き換えるコーティング技術を含む代替の解決策に対する要求が増大している。
【0005】
再パルプ化可能な水性コーティングは、このニーズに対処する有望な解決策の1つである。しかし、水性コーティング中の大部分のポリマーは非晶質であり、PEのような融点を有しない。したがって、水性コーティングの中のバインダー又はポリマーは、水性コート板紙の製造、保存、出荷、又は加工のプロセスの間に高温(たとえば120~130°Fにも達する)及び/又は圧力によって徐々に軟化し又は粘着性になることが多く、実際的な用途におけるPEコートされた板紙では通常起こらないコート板紙のブロッキングの問題を生じる。このブロッキングの問題は、高いバリア特性を必要とし、カップ等の包装への加工においてヒートシールできる必要もある水性バリアコート板紙ではより重大になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当業者らはバリア特性を有する板紙構造物の分野において研究開発の努力を継続している。技術的な課題及び関心としては、種々の目標用途に必要なバリア特性を達成し、かつ板紙製品のヒートシール性とブロッキング耐性を最適化し又はそのバランスを保つことが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、開示した板紙構造物は、第1の主側面及び第2の主側面を含む板紙基材、並びに第1の主側面の上のバリアコート層を含む。バリアコート層はバインダー及び顔料を含んでよく、バインダーは少なくとも20℃のガラス転移温度を有する。
【0008】
別の態様では、開示した板紙構造物は、第1の主側面及び第2の主側面を含む板紙基材、並びに第1の主側面の上のバリアコート層を含む。バリアコート層はバインダー及び顔料を含んでよく、バインダーは少なくとも20℃のガラス転移温度を有し、顔料はクレイ及び炭酸カルシウムのうち少なくとも1つを含む。
【0009】
別の態様では、開示した板紙構造物は、第1の主側面及び第2の主側面を含む板紙基材、並びに第1の主側面の上のバリアコート層を含む。バリアコート層はバインダー及び顔料を含んでよく、バインダーは少なくとも20℃のガラス転移温度を有し、バインダーの顔料に対する質量比は少なくとも約1:2である。
【0010】
別の態様では、開示した板紙構造物は、第1の主側面及び第2の主側面を含む板紙基材、並びに第1の主側面の上のバリアコート層を含む。バリアコート層はバインダー及び顔料を含んでよく、バインダーは少なくとも20℃のガラス転移温度を有し、顔料の少なくとも60質量%は2μm未満の粒径を有する粒子からなる。
【0011】
別の態様では、開示した板紙構造物は、第1の主側面及び第2の主側面を含む板紙基材、並びに第1の主側面の上の複数のバリアコート層を含む。それぞれのバリアコート層はバインダー及び顔料を含んでよく、バインダーは少なくとも20℃のガラス転移温度を有する。
【0012】
1つの態様では、板紙構造物を製造するための開示した方法は、(1)バインダー及び顔料を含むバリアコーティング組成物を調製する工程であって、バインダーが乾燥時に少なくとも20℃のガラス転移温度を有する工程と、(2)バリアコーティング組成物を板紙基材に塗布する工程とを含む。
【0013】
開示した板紙構造物及び方法の他の態様は、以下の説明、付随する図面、及び添付する特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】開示した板紙構造物の1つの態様の断面の概略図である。
【
図2】コートした板紙試料のブロッキングを試験するためのデバイスの説明図である。
【
図3A】繊維断裂を測定するためのピール試験法を説明する図である。
【
図3B】繊維断裂を測定するためのピール試験法を説明する図である。
【
図3C】繊維断裂を測定するためのピール試験法を説明する図である。
【
図3D】繊維断裂を測定するためのピール試験法を説明する図である。
【
図4】開示した板紙構造物の別の態様の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示した板紙構造物は、バリア特性を提供し、ヒートシール可能であってよいが、ブロッキング(板紙構造物と板紙構造物との間の望ましくない接着)の傾向が最小限である少なくとも1つのバリアコート層でコートされている。
【0016】
図1を参照して、開示した全体として10と指定される板紙構造物の1つの態様は、板紙基材100、任意選択のベースコート120、及びバリアコート層110を含む。本開示の範囲から逸脱せずに追加の層が含まれてもよい。
【0017】
板紙構造物10の板紙基材100は、第1の主側面102及び第1の主側面102の反対側にある第2の主側面104を含む。任意選択のベースコート120は板紙基材100の第1の主側面102に塗布される。バリアコート層110も、板紙基材100の第1の主側面102に塗布される。
【0018】
板紙基材100は、任意選択のベースコート120及びバリアコート層110をコートすることができる任意のセルロース性材料であって(又はこれを含んで)よい。当業者であれば、板紙基材100は漂白しても漂白しなくてもよいことが理解される。適切な板紙基材の例には、段ボール用中芯、ライナーボード、固体漂白硫酸塩(SBS)、非塗工無漂白クラフト(UUK)、及び折り畳み箱用ボード(FBB)が含まれる。
【0019】
板紙基材100は3000平方フィートあたり少なくとも40ポンドの未コート坪量を有してよい。1つの表現では、板紙基材100は3000平方フィートあたり約40ポンド~3000平方フィートあたり約300ポンドの範囲の未コート坪量を有してよい。別の表現では、板紙基材100は3000平方フィートあたり約85ポンド~3000平方フィートあたり約250ポンドの範囲の未コート坪量を有してよい。更に別の表現では、板紙基材100は3000平方フィートあたり約100ポンド~3000平方フィートあたり約250ポンドの範囲の未コート坪量を有してよい。
【0020】
更に、板紙基材100はたとえば約4ポイント~約30ポイント(0.008インチ~0.030インチ)の範囲のキャリパー(厚み)を有してよい。1つの表現では、キャリパーの範囲は約8ポイント~約24ポイントである。別の表現では、キャリパーの範囲は約14ポイント~約18ポイントである。
【0021】
好適な板紙基材100の1つの特定の非限定的な例は、Atlanta, GeorgiaのWestRock Company社製の14ポイントのSBSボードである。好適な板紙基材100の別の特定の非限定的な例は、WestRock Company社製の16ポイントのSBSボードである。好適な板紙基材100の更に別の特定の非限定的な例は、WestRock Company社製造の18ポイントのSBSボードである。
【0022】
板紙基材100は抄紙機で製造してよく、第1の主側面102にコートしてよい。任意選択で、
図1には示していないが、板紙基材100の第2の主側面104はバリアコート層110及び任意選択のベースコート120を含んでよい。
【0023】
任意選択のベースコート120は板紙基材100の第1の主側面102に塗布してよい。ベースコート120は抄紙機の又はオフマシンコーターの1つ若しくは複数のコーター等の好適な方法によって塗布してよい。任意選択のベースコート120はバリアコート層110と同じ(又は同様の)成分、即ちバインダー及び顔料を含んでよい。しかしその比は異なってよく、即ち任意選択のベースコート120におけるバインダーの顔料に対する質量比は約25:100~約45:100であってよい。
【0024】
バリアコート層110は抄紙機の又はオフマシンコーターとしての1つ若しくは複数のコーター等の任意の好適な方法を用いて塗布してよく、それによりバリアコート層110は板紙基材100の露出した最外表面112を形成する。バリアコート層110はヒートシール可能であってよい。加熱すると、ヒートシールコーティングはそれが接触する製品の他の領域と接着する。コートされた側面は包装の外表面に存在し、文字列又は図を印刷することができる。
【0025】
バリアコート層110は板紙基材100に種々のコート質量で塗布してよい。1つの非限定的な例として、バリアコート層110は3000平方フィートあたり約2~12ポンドのコート質量で塗布してよい。別の非限定的な例として、バリアコート層110は3000平方フィートあたり約4~9ポンドのコート質量で塗布してよい。
【0026】
バリアコート層110はバインダー及び顔料を含んでよい。1つの表現では、バインダーの顔料に対する質量比は少なくとも1:2であってよい。別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は約1:2~約9:1であってよい。別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は約1:1~約4:1であってよい。更に別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は少なくとも約1:1であってよい。
【0027】
バリアコート層110のバインダーは水性バインダーであってよい。1つの一般的で非限定的な例として、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)であってよい(即ち、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)「からなる」か、「から本質的になる」)。別の一般的で非限定的な例として、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)を含むバインダーの混合物であってよい。好適なバインダーのいくつかの特定的で非限定的な例をTable 2(表2)に提示する。スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレンアクリル酸(EAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリエステル分散体、及びそれらの組合せ等の他の水性バインダーも意図される。
【0028】
特定の理論に何ら縛られるものではないが、バリアコート層110に用いる水性バインダーの適切な選択、具体的にはバリアコート層110に用いるバインダーの(乾燥時の)ガラス転移温度によって、得られる板紙構造物10のブロッキングが顕著に低減できると、現在のところ考えられる。1つの表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも20℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも23℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも28℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも35℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも20℃から高くとも60℃のガラス転移温度を有する。更に別の表現では、開示した板紙構造物10のバリアコート層110の中のバインダーは、少なくとも25℃から高くとも45℃のガラス転移温度を有する。
【0029】
板紙構造物10のバリアコート層110の顔料は種々の材料であって(又はこれらを含んで)よい。好適な顔料のいくつかの非限定的な例をTable 1(表1)に提示する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の顔料、たとえば合成樹脂顔料、二酸化チタン顔料、タルク顔料、その他を用いてもよい。
【0030】
バリアコート層110の顔料は制御された粒径分布を有してよい。1つの表現では、バリアコート層110の顔料成分は比較的微細な粒子からなっていてよい。別の表現では、バリアコート層110の顔料成分の少なくとも60(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層110の顔料成分の少なくとも70(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層110の顔料成分の少なくとも80(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層110の顔料成分の少なくとも90(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層110の顔料成分の少なくとも95(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。
【0031】
1つの変形例では、バリアコート層110の顔料はクレイ顔料であってよい。1つの例として、クレイ顔料はカオリンクレイ、たとえば微細なカオリンクレイであってよい。別の例として、クレイ顔料は板状クレイ、たとえば高アスペクト比の板状クレイ(たとえばアスペクト比が少なくとも40:1)であってよい。
【0032】
別の変形例では、バリアコート層110の顔料は炭酸カルシウム(CaCO3)顔料であってよい。1つの例として、CaCO3顔料は粒子の約60%が2μm未満である粒径分布を有する粗粉砕CaCO3であってよい。別の例として、CaCO3顔料は粒子の約90%が2μm未満である粒径分布を有する微粉砕CaCO3であってよい。更に別の例として、CaCO3顔料は約0.4μmの平均粒径を有する微粉砕CaCO3であってよい。
【0033】
更に別の変形例では、バリアコート層110の顔料は炭酸カルシウム顔料とクレイ顔料の両方を含む顔料ブレンドであってよい。
【0034】
開示した板紙構造物10を調製するために種々の手法を用いることができる。1つの実施形態では、板紙構造物を製造するための方法には、乾燥したときに少なくとも20℃のガラス転移温度を有する水性バインダーを選択する工程が含まれる。選択した水性バインダーを顔料と混合することによってバリアコーティング組成物を調製する。次いでバリアコーティング組成物を板紙基材の第1の主側面に塗布する。任意選択で、バリアコーティング組成物を塗布する前に、板紙基材の第1の主側面にベースコートを塗布してもよい。したがって、ベースコートは板紙基材とバリアコート層の間に位置することになる。
【0035】
図4を参照して、開示した全体として40と指定される板紙構造物の別の態様は、板紙基材400、任意選択のベースコート420、第1のバリアコート層410、及び第2のバリアコート層430を含む。
【0036】
当業者であれば、本開示の範囲から逸脱せずに追加の層が含まれてもよいことが認識される。
【0037】
板紙構造物40の板紙基材400は、第1の主側面402及び第1の主側面402の反対側にある第2の主側面404を含む。任意選択のベースコート420は板紙基材400の第1の主側面402に塗布される。第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430も、板紙基材400の第1の主側面402に塗布される。
【0038】
開示した板紙構造物40の板紙基材400は、板紙構造物10の板紙基材100に関連して本明細書に記載したように、種々の組成、坪量、及びキャリパー厚みを有し得る。好適な板紙基材400の1つの特定の非限定的な例は、Atlanta、GeorgiaのWestRock Company社製の16.5ポイントで坪量175ポンド/3000平方フィートのSBSボードである。好適な板紙基材400の別の特定の非限定的な例は、WestRock Company社製の18ポイントで坪量185ポンド/3000平方フィートのSBSボードである。
【0039】
板紙基材400は抄紙機で製造してよく、第1の主側面402にコートしてよい。任意選択で、
図4には示していないが、板紙基材400の第2の主側面404は第1のバリアコート層410、任意選択のベースコート420、及び第2のバリアコート層430を含んでよい。
【0040】
任意選択のベースコート420は板紙基材400の第1の主側面402に塗布してよい。ベースコート420は抄紙機の又はオフマシンコーターの1つ若しくは複数のコーター等の好適な方法によって塗布してよい。任意選択のベースコート420は任意選択のベースコート120と同じ(又は同様の)成分、即ちバインダー及び顔料を含んでよく、任意選択のベースコート420におけるバインダーの顔料に対する質量比はたとえば約25:100~約45:100であってよい。
【0041】
第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430は抄紙機の又はオフマシンコーターとしての1つ若しくは複数のコーター等の任意の好適な方法を用いて塗布してよく、それにより第2のバリアコート層430は板紙基材400の露出した最外表面412を形成する。1つの表現では、抄紙機の1つ又は複数のコーターを用いて第1のバリアコート層410を塗布し、オフマシンコーターを用いて第2のバリアコート層430を塗布してもよい。別の表現では、抄紙機のコーターを用いてバリアコート層410、430の両方を塗布してもよい。更に別の表現では、オフマシンコーターを用いてバリアコート層410、430の両方を塗布してもよい。
【0042】
第1のバリアコート層410及び/又は第2のバリアコート層430はヒートシールを促進し得る。換言すれば、加熱すると第1のバリアコート層410及び/又は第2のバリアコート層430は接着することができる。コートされた側面は包装の外表面に存在し、文字列又は図を印刷することができる。1つの表現では第2のバリアコート層430はヒートシール可能であるが、第1のバリアコート層410はヒートシール可能でない。別の表現では、バリアコート層410、430の両方がヒートシール可能であってよい。
【0043】
第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430は、板紙基材400に種々のコート質量で塗布してよい。1つの非限定的な例として、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430は3000平方フィートあたり約1~12ポンドのコート質量で塗布してよい。別の非限定的な例として、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430は3000平方フィートあたり約4~9ポンドのコート質量で塗布してよい。
【0044】
第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430のそれぞれはバインダー及び顔料を含んでよい。1つの表現では、バインダーの顔料に対する質量比は少なくとも1:2であってよい。別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は約1:2~約9:1であってよい。別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は約1:1~約4:1であってよい。更に別の表現では、バインダーの顔料に対する質量比は少なくとも約1:1であってよい。
【0045】
第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430のバインダーは水性バインダーであってよい。1つの一般的で非限定的な例として、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)であってよい(即ち、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)「からなる」か、「から本質的になる」)。別の一般的で非限定的な例として、バインダーはスチレン-アクリレート(SA)を含むバインダーの混合物であってよい。好適なバインダーのいくつかの特定的で非限定的な例をTable 2(表2)に提示する。スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレンアクリル酸(EAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリエステル分散体、及びそれらの組合せ等の他の水性バインダーも意図される。
【0046】
特定の理論に何ら縛られるものではないが、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430に用いる水性バインダーの適切な選択、具体的にはバリアコート層410に用いるバインダーの(乾燥時の)ガラス転移温度によって、得られる板紙構造物40のブロッキングが顕著に低減できると、現在のところ考えられる。1つの表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも20℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも23℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも28℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも35℃のガラス転移温度を有する。別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも20℃から高くとも60℃のガラス転移温度を有する。更に別の表現では、開示した板紙構造物40のバリアコート層410の中のバインダーは、少なくとも25℃から高くとも45℃のガラス転移温度を有する。
【0047】
板紙構造物40の第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430の顔料は種々の材料であって(又はこれらを含んで)よい。好適な顔料のいくつかの非限定的な例をTable 1(表1)に提示する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の顔料、たとえば合成樹脂顔料、二酸化チタン顔料、タルク顔料、その他を用いてもよい。
【0048】
バリアコート層410の顔料は制御された粒径分布を有してよい。1つの表現では、バリアコート層410の顔料成分は比較的微細な粒子からなっていてよい。別の表現では、バリアコート層410の顔料成分の少なくとも60(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層410の顔料成分の少なくとも70(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層410の顔料成分の少なくとも80(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層410の顔料成分の少なくとも90(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。別の表現では、バリアコート層410の顔料成分の少なくとも95(質量)%は2μm未満の粒径を有する粒子からなっている。
【0049】
1つの変形例では、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430の顔料はクレイ顔料であってよい。1つの例として、クレイ顔料はカオリンクレイ、たとえば微細なカオリンクレイであってよい。別の例として、クレイ顔料は板状クレイ、たとえば高アスペクト比の板状クレイ(たとえばアスペクト比が少なくとも40:1)であってよい。
【0050】
別の変形例では、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430の顔料は炭酸カルシウム(CaCO3)顔料であってよい。1つの例として、CaCO3顔料は粒子の約60%が2μm未満である粒径分布を有する粗粉砕CaCO3であってよい。別の例として、CaCO3顔料は粒子の約90%が2μm未満である粒径分布を有する微粉砕CaCO3であってよい。更に別の例として、CaCO3顔料は約0.4μmの平均粒径を有する微粉砕CaCO3であってよい。
【0051】
更に別の変形例では、第1のバリアコート層410及び第2のバリアコート層430の顔料は炭酸カルシウム顔料とクレイ顔料の両方を含む顔料ブレンドであってよい。
【0052】
開示した板紙構造物40を調製するために種々の手法を用いることができる。1つの実施形態では、板紙構造物を製造するための方法には、乾燥したときに少なくとも20℃のガラス転移温度を有する水性バインダーを選択する工程が含まれる。選択した水性バインダーを顔料と混合することによってバリアコーティング組成物を調製する。次いでバリアコーティング組成物を板紙基材の第1の主側面に塗布する。任意選択で、バリアコーティング組成物を塗布する前に、板紙基材の第1の主側面にベースコートを塗布してもよい。したがって、ベースコートは板紙基材とバリアコート層の間に位置することになる。
【実施例】
【0053】
種々のバリアコーティング組成物を調製し、ロッドコーター又はブレードコーターを用いて板紙基材に塗布した。バリアコーティング組成物にはTable 1(表1)に示す市販の顔料が含まれていた。特に、以下のTable 4A(表5)及びTable 4B(表6)の実施例では特定の顔料CL-1、CC-1、CC-2、及びCC-3を用いた。Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)の実施例では顔料CC-1、CC-2、及びCL-2を用いた。
【0054】
【0055】
バリアコーティング組成物としてはスチレン-アクリレート(SA)系の市販のバインダーを用いたが、Table 2(表2)に示すようにガラス転移(Tg)温度は様々であった。実験結果により、低いTgを有するバインダーを用いたバリアコーティングは、高温高圧ではブロッキングする傾向が大きいことが示された。特に、Table 3A(表3)及びTable 3B(表4)の比較例並びにTable 4A(表5)及びTable 4B(表6)の実施例では、SA-5、SA-6、及びSA-7の特定のバインダーを用いた。SA-2及びSA-5は、Table 8A(表10)の実施例で用いたバインダーであった。SA-5はTable 8B(表11)及びTable 8C(表12)の実施例で用いた唯一のバインダーであった。
【0056】
【0057】
Table 3A(表3)、Table 3B(表4)、Table 4A(表5)、及びTable 4B(表6)の例で用いた板紙基材は、WestRock Company社製の14ポイント、16ポイント、又は18ポイントの固体漂白硫酸塩ボード(SBS)であった。これらの例で用いる基材を、顔料としてCL-1、CL-2、及びCC-1、バインダーとしてSA-2を含むベースコート配合で、CL-1:CL-2:CC-1:SA-2の質量比を25:50:25:35とし、コート質量を3000平方フィートあたり10~11ポンドとしてコートした。このベースコートの上に、ロッドコーターによって、単層バリアコーティングを塗布した。これらの例の基材の他の側面は、従来の(非バリア)印刷コートを有していた。
【0058】
バリアコーティング組成物の比較例をTable 3A(表3)及びTable 3B(表4)に提示する。比較例C-1及びC-2で用いた板紙基材は14ポイント、比較例C-3、C-6、及びC-9では16ポイント、比較例C-4、C-5、C-7、C-8、及びC-10では18ポイントであった。これらの比較例用の基材をベースコートでコートし、次いでベースコートの上に単層のバリアコート層でコートした。これらの比較例におけるバリアコーティング組成物はバインダーを含んでいたが、顔料は含んでいなかった。比較例C-1~C-6ではSA-5バインダーを用いた。比較例C-7ではSA-6バインダーを用いた。比較例C-8、C-9、及びC-10ではSA-7バインダーを用いた。コートした試料について、本明細書に記載した方法を用いて吸水性、ヒートシール性、及びブロッキング性を試験した。ブロッキングはTable 5(表7)に列挙した格付けを用いて評価した。
【0059】
【0060】
【0061】
本開示によるバリアコーティング組成物をTable 4A(表5)、Table 4B(表6)、Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に提示する。
【0062】
Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)の実施例用の板紙基材は、WestRock Company社製の18ポイントの固体漂白硫酸塩ボード(SBS)であった。これらの実施例用の基材をベースコートでコートし、次いでベースコートの上に単層のバリアコート層でコートした。SBL-1~SBL-4の実施例ではTable 1(表1)で定義するようにCL-1のクレイを、SA-5(バインダー)のクレイ(顔料)に対する比を4:1~1.5:1として用いた。SBL-5~SBL-17の実施例では、SA-5、SA-6、又はSA-7(バインダー)のCaCO3(顔料)に対する比を9:1~1.5:1として用いた。
【0063】
Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)の単層の実施例を本明細書に記載した方法を用いてブロッキングについて試験し、Table 5(表7)に列挙するように格付けした。これらの実施例の全てにおいてブロッキングの評点(40℃/60又は100psi/24時間)は3.0未満、多くの実施例において2.0未満であった。Table 3A(表3)及びTable 3B(表4)の比較例についてのブロッキングの評点は3.7と高かった。
【0064】
Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)に示すように、SBL-16の例外を除いて、全ての実施例は40g/m2又はそれ未満の30分-水-Cobb評点を示した。これはアイスクリーム、冷たい飲み物、コーヒー等への使用に好ましい。3種のバインダーの中でSA-5が最も良い性能を示し、大部分の実施例で10g/m2未満の30分-水-Cobbを有していた。
【0065】
Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)の実施例について、PMC(Paper Machinery Corporation社)のカップ製造機モデルPMC-1250を用いてカップを製造し、ヒートシール性について評価して試験した。Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)に示すように、SBL-10、SBL-16、SBL-17を除くほとんどの実施例が、カップ製造機で優れたヒートシール性能、即ちカップの側壁の継ぎ目の引き裂きにおいて約100%の繊維断裂を示した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
実施例SBL-1~SBL-17の粘度は、EKAフローL-29等のレオロジー改質剤又は増粘剤を利用して調節した。これはEka Chemicals, Inc.社が市販しているアクリルポリマーエマルジョンである。
【0070】
したがって、開示したバリアコーティング組成物を用いることによって、ブロッキングを顕著に低減させることができる。
【0071】
両側面をバリアコーティングでコートした板紙の実施例も調製した。用いた板紙基材はWestRock Company社製の13ポイントの固体漂白硫酸塩ボード(SBS)カップストックであった。Table 6(表8)に示すように、質量でCL-1:CC-1:SA-2=50:50:35のベースコート配合で、コート質量3000平方フィートあたり約9ポンドとして、両側面を最初にブレードコーターでコートした。次いでそれぞれの側面の上にロッドコーターで、Table 4A(表5)のSBL-8と同じ配合のバリアコーティングを塗布した。Table 6(表8)に示すように、バリアコーティングを有する両側面は30分-水-Cobbが10g/m2未満と優れた水バリア性を示した。両側面コートした実施例は、更に85%を超える再パルプ性を示した。18ポイントの固体漂白硫酸塩ボード(SBS)カップストックについて、Table 6(表8)に示すように、同じベースコート及びトップバリアコート層を塗布した。側壁としてコートした18ポイントのカップストック、底ストックとして13ポイントのカップストックを用いることにより、PMC-1250カップ製造機で優れたシール性を有するカップが形成された。
【0072】
【0073】
二層バリアコーティング組成物の効果をTable 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す。これらの実施例では、ブレードコーターを用いて板紙基材にバリアコートを塗布した。バリアコーティング組成物はTable 1(表1)及びTable 2(表2)に示す市販の顔料及びバインダーを含んでいた。これらの実施例に用いたバインダーの顔料に対する比をTable 7(表9)に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
Table 8A(表10)に示す実施例の板紙基材はWestRock Company社製の16.5ポイントで坪量3000平方フィートあたり175ポンドのSBSであった。顔料としてCL-1、CL-2、及びCC-1、バインダーとしてSA-2を含む配合で、CL-1:CL-2:CC-1:SA-2の質量比を25:50:25:35とし、コート質量を3000平方フィートあたり7.6ポンドとして基材をベースコートした。ベースコートの上に第1のバリアコーティングを塗布し、第1のバリアコーティングの上に第2のバリアコーティングを塗布した。実施例DBL-1~DBL-4については、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に定義したように、バインダーSA-5及び炭酸カルシウムCC-2を用いて2種のバリアコーティングを配合した。SA-5の炭酸カルシウム(顔料)に対する比は第1のコートでは4:1、第2のコートでは1:1であった。
【0079】
Table 8B(表11)に示す実施例の板紙基材はWestRock Company社製の18ポイントで坪量3000平方フィートあたり185ポンドのSBSであった。基材はベースコートしなかった。基材の上に第1のバリアコーティングを塗布し、第1のバリアコーティングの上に第2のバリアコーティングを塗布した。実施例DBL-5~DBL-8については、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に定義したように、バインダーSA-5、クレイCL-2、及び炭酸カルシウムCC-1を用いて2種のバリアコーティングを配合した。SA-5のクレイ(顔料)及び炭酸カルシウム(顔料)に対する比は両方の層において250:35:65であった。
【0080】
Table 8C(表12)に示す実施例の板紙基材はWestRock Company社製の16.5ポイントで坪量3000平方フィートあたり175ポンドのSBSであった。基材はベースコートしなかった。基材の上に第1のバリアコーティングを塗布し、第1のバリアコーティングの上に第2のバリアコーティングを塗布した。実施例DBL-9~DBL-12については、バインダーSA-5、クレイCL-2、及び炭酸カルシウムCC-1を400:35:65の比で用いて第1のバリアコーティングを配合し、バインダーSA-5及び炭酸カルシウムCC-2を1:1の比で用いて第2のバリアコーティングを配合した。これらの上述のバインダー及び顔料はTable 1(表1)及びTable 2(表2)に定義している。
【0081】
Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す二層の実施例を本明細書に記載した方法を用いてブロッキングについて試験し、Table 5(表7)に列挙するように格付けした。Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)の二層の実施例の結果より、第2のバリアコーティング層を塗布することによって、特に第2層のバリアコーティングが第1のバリアコーティングよりも少ないバインダーレベルを含む場合に、コートされた板紙構造物のブロッキング評点(blocking rate)を顕著に低減できることが実証される。たとえば、Table 8C(表12)の試料DBL-12はブロッキング評点1.5を示し、これはコート質量9.3ポンド/3000平方フィートでバリアコーティングBC-3の第1の層のみを有する対照試料(表に示していない)のブロッキング評点2.6より顕著に低い。
【0082】
Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す二層の実施例を本明細書に記載した方法を用いて水の吸収について試験した。Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)の二層の実施例の結果より、第2のバリアコート層を塗布することによって、コートされた板紙構造物のCobbの評点を顕著に低減できることが実証される。これは熱い飲料への応用でより重要になる。たとえば、Table 8B(表11)に示す試料DBL-5は9.5ポンド/3000平方フィートの全コート質量で二層バリアコーティングBC-1を有し、30分後に10.2g/m2の90℃コーヒーCobb値を示した。しかし、同様に9.7ポンド/3000平方フィートのコート質量で単層のバリアコーティングBC-1を有する対照試料(表に示していない)は、30分後に16.4g/m2と高い90℃コーヒーCobb値を有していた。
【0083】
ブロッキング試験法
上のTable 5(表7)はブロッキング試験の評価付けシステムを定義している。試料のブロッキング挙動は、バリアコートした側面と反対の未コート又は従来の(非バリア)印刷コートした側面との接着を評価することによって試験した。ブロッキング試験の単純化した説明図を
図2に示す。板紙を2インチ四方の正方形試料に切断した。それぞれの条件についていくつかの重複試験を行ない、それぞれの重複試験で試料252、254の一対の間のブロッキング性を評価した(たとえば、4回の重複試験を行なえば、4対、8片を用いることになる)。1つの片252の「バリアコートした」側面を他の片254の未コート又は従来の(非バリア)印刷コートした側面と接触させて、それぞれの対を位置決めした。隣り合う対の間に箔、剥離紙、又はコピー用紙でもよいスペーサー256を挟んで、対をスタック250のように積み重ねた。全体の試料スタックを
図2に示す試験デバイス200の中に置いた。
【0084】
試験デバイス200はフレーム210を含んでいる。調節ノブ212がスクリュー214に取り付けられており、スクリュー214はフレームの上面216にねじで通されている。スクリュー214の下端はプレート218に取り付けられており、プレート218は重いコイルスプリング220に押し付けられている。スプリング220の下端はプレート222に押し付けられており、プレート222の下面224は1平方インチの面積を有している。スケール226により、使用者は印加された力(これは1平方インチの下面224を通して試料スタックに印加された圧力に等しい)を読みとることができる。
【0085】
下面224とフレームの底228との間に試料スタック250を置く。スケール226の読み値が所望の100lbf(試料に100psiを印加)又は60lbf(試料に60psiを印加)になるまで、ノブ212を締める。次いで試料を含むデバイス200の全体を40℃又は50℃のオーブン中に24時間置く。次いでデバイス200を試験環境から取り出して室温に冷却する。次いで圧力を解放し、試料をデバイスから取り出す。
【0086】
板紙シートのそれぞれの対を分離することによって、試料を粘着性及びブロッキング性について評価した。ブロッキングによる損傷は繊維断裂として目視できる。これは存在すれば通常、試料254の非バリア表面から引き上げられる繊維とともに起こる。非バリア表面が印刷コーティングでコートされている場合には、ブロッキングは印刷コーティングの損傷によって明示し得る。
【0087】
たとえば、
図2に象徴的に示すように、試料252(0)/254(0)は、「0」評点(ブロッキングなし)を表わし得る。試料中の円い形状は加圧されたおよその面積、たとえば試料全体の約1平方インチを示す。試料252(3)/254(3)はブロッキング評点「3」を表わし、特に試料254(3)の未コート表面において加圧された面積のうち最大25%に繊維断裂が起こっていることを表わし得る。試料252(4)/254(4)はブロッキング評点「4」を表わし、特に試料254(4)の未コート表面において25%を超える繊維断裂が起こっていることを表わし得る。
図2の表現は試料の実際の外観を示すというよりは、そのような試験試料の損傷の百分率を近似的に示唆していることを意味するのみである。
【0088】
ピール試験法によるヒートシール性の評価
コートされた板紙試料をヒートシール性について評価した。
図3Aに表わすように、試験すべきコートされた板紙試料から3インチ×1インチの試料301及び305の対を切り出した。301及び305の両方について、バリアコートした側面を下向けにした。次に
図3Bに示すように、試料301、305の一端の部分を2つの表面312、314の間に置き、上の表面312のみを加熱することによってシールした。この例ではSencorp White社のCeratek 12ASL/1 バーシーラーを用い、上のバーのみを加熱した。ヒートシール条件は、シール温度300°F、350°F、又は400°F、滞留時間1.5秒、圧力50psiであった。
図3Cに示すように、1平方インチの面積303(たとえば1インチ×1インチ)をシールした。試料を冷却した後で、
図3Dに模式的に示すように、シールされた試料を手で引き離した。試験した面積303の百分率として繊維断裂面積を推定した。
【0089】
再パルプ化試験手順
AMC社のMaelstomリパルパーを用いて再パルプ性を試験した。110gのコートされた板紙を1インチ×1インチの正方形に切断し、2895gの水(pH 6.5±0.5、50℃)を入れたリパルパーに加え、15分浸漬し、次いで30分間再パルプ化した。次いで300mLの再パルプ化したスラリーを振動するフラットスクリーン(スロットサイズ0.006インチ)を通して濾過した。リジェクト(スクリーンで捕捉されたもの)及び繊維アクセプトを収集し、乾燥し、秤量した。アクセプト及びリジェクトの質量に基づいてアクセプト率を計算し、100%を完全再パルプ化率とした。
【0090】
開示した板紙構造物は少なくとも80%の再パルプ化率を実証した。Table 4A(表5)及びTable 4B(表6)に示すように、試料SBL-2、SBL-5、SBL-6、SBL-8、SBL-9、SBL-10、SBL-11、SBL-13、SBL-15、及びSBL-17は少なくとも85%の再パルプ化率を示し、それらの多くは少なくとも90%の再パルプ化率を示した。両側面にバリアコーティングSBL-8をコートした13ポイントのSBSでも85%を超える再パルプ化率を示した。
【0091】
バリア試験法
23℃の水を用いる水-Cobb(TAPPI Standard T441 om-04)により、30分あたりg/m
2で、コーティングの水バリア性を評価した。換言すれば、Cobb試験は30分後にどれだけの量の水が吸収されるかを決定する。1つの表現では、開示した板紙構造物10(
図1)は約40g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供し、これはアイスクリーム又は同様の製品に適していると思われる。別の表現では、開示した板紙構造物10は約30g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供し、これもアイスクリーム又は同様の製品に適していると思われる。別の表現では、開示した板紙構造物10は約20g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供し、これは大部分の食品及び飲料製品に適していると思われる。更に別の表現では、開示した板紙構造物10は約10g/m
2未満の30分-水-Cobb試験を提供し、これは熱いコーヒー又はその他の熱い製品に適していると思われる。
【0092】
Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す実施例の水バリア性を評価するために、熱水を用いるCobb試験の変形例を利用した。この試験は23℃の水を90℃の水に置き換え、他はTAPPI Standard T441 om-04に準拠して実施した。
【0093】
Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す実施例の水バリア性を評価するために、熱コーヒーを用いるCobb試験の変形例も利用した。この試験は23℃の水を90℃のコーヒーに置き換え、他はTAPPI Standard T441 om-04に準拠して実施した。用いたコーヒーは、12カップのMr. Coffee社のコーヒーメーカーを用い、36gのStarbucks社のミディアムハウスブレンドグラウンドコーヒーを1100mLの蒸留水で抽出することによって得た。次いで磁気撹拌バーを入れたビーカーにコーヒーを注ぎ入れ、55rpmで撹拌しながら90℃に加熱した。Table 8A(表10)、Table 8B(表11)、及びTable 8C(表12)に示す実施例の全てが30分後に15g/m2未満、大部分が30分後に10g/m2未満、いくつかが30分後に8g/m2未満の90℃熱水Cobb評点又は熱コーヒーCobb評点を有していた。
【0094】
開示した板紙構造物及び方法の種々の態様を示し、説明したが、当業者は本明細書を読んだ上で改変することができる。本特許出願はそのような改変を含み、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0095】
10 板紙構造物
100 板紙基材
102 第1の主側面
104 第2の主側面
110 バリアコート層
120 ベースコート
200 試験デバイス
210 フレーム
212 調節ノブ
214 スクリュー
216 フレームの上面
218 プレート
220 コイルスプリング
222 プレート
224 プレートの下面
226 スケール
228 フレームの底
250 試料スタック
252 試料
254 試料
256 スペーサー
301 試料
303 面積
305 試料
312 表面
314 表面
40 板紙構造物
400 板紙基材
402 第1の主側面
404 第2の主側面
410 第1のバリアコート層
420 ベースコート
430 第2のバリアコート層